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Round. 1 ひた走る負の走光性 学級裁判編Ⅱ

学級裁判 再開

(被害者の自殺だったかもしれない。その意見に、みんな黙り込む。裁判場内での音はモノクマの溜め息だけだった。)
「また このパターンかよー。書いてるヤツの風呂敷 狭すぎて、お財布も入りゃしないよね。」
(そこで、静かな声が裁判場に響いた。)
「そいつは…どうだろうな。」
「え?星クン?これ書いたヤツを擁護してくれるの?さすがに聖人君子のフリしすぎじゃない?」
「やれやれ…うるせーな。俺が疑問に思ってるのは、本当に睡眠薬を使えたのが高橋だけだったのかって話さ。」
「えー?どういうこと?」
「犯人が高橋君が睡眠薬を使ったと見せかけるために…って思ってるのね。ぷふ…ッ。見た目とのギャップすごっ…。」
「なーに言ってんだべ?もっと分かりやすく言ってくろ。」
「犯人は高橋にだけは睡眠薬を飲ませなかった。それができれば、高橋の自殺なんて無茶苦茶な推論は下げられるってことさ。」
「まあ…確かに、自殺して私たちを無理心中に追いやったというのは…いささか疑問が残るね。」
「けれど、事実から考えると高橋さん以外いません。」
「そうだな。みんなで配膳して…全員 座った後、睡眠薬 仕込む時間なんてなかったはずだぜ?食べ物も飲み物も。」
「そんな中、どうやって高橋さんだけに睡眠薬を飲ませないようにしたと言うんですか?」
「獄原。」
「えっ?」
「あんたは、どう思うんだ?」
(星君がゴン太を見た。けれど、ゴン太には何の考えも浮かんでこない。)
(こんなことじゃダメなのに。高橋君はゴン太を励ましてくれたのに…やっぱり、ゴン太はバカだっ…。)
(悔しくて手を握った時、頭の中に文字が浮かんできた。)
(これ、何だろう。虫さんには分かるかな…?)

閃きアナグラム スタート

       ス
  ト
     ー             ロ
ストロー?」
「……は?」
「何?ゴンちゃん。ストローが どうかした?」
「あ!溺れる者はストローも掴むということですか?」
「それを言うならばワラ…いや、間違いではないな。英語ならワラもストローもストローだ。」
「で、どした?ゴン太ー?」
「あ…いや、ごめん。ゴン太にも何のことか分からないんだけど…。」
「…それは、虫さんが教えてくれてる?」
(ゴン太を見る蔵田さんに頷いたら、隣の三途河さんの肩が震えた。)
「ぶくッ…。ゴン太、君は…ブフ…ストローを使えば…高橋君以外に睡眠薬を飲ませられるッ…って言いたいのよね?」
「えっと…ゴン太が言いたいというわけじゃないんだけど…。」
「そういえば、高橋クンはストローを使っていたね。」
「ストローに睡眠薬さ塗ってただか?」
「それだと高橋だけ寝ちまうよな?」
「…いや。ストローを使わせることで、その人物だけ眠らないよう仕組むことは可能かもしれない。」
(ストローを使わせれば…?一体、どういうことだろう?)
「はあ?何 言ってんだよ、ゴン太。大丈夫か?」
「あ…。やっぱり違ったかな。」
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「そっか!ストローを使えば、下の方を飲むことになるから、上の方に睡眠薬を混ぜておくんだ。」
「んー?犯人は飲み物の上層部に睡眠薬さ仕込んでオラたつに飲ませただ?」
「えーと、アタシ達が飲んだのは〜…あ、抹茶ラテだね〜!クリームたっぷりの。」
「抹茶とクリームのラテ。…なので、上層部はクリームの部分。」
「なるほどな。クリーム部分に睡眠薬を仕込んでおけば、ストローを使う者以外を睡眠薬で眠らせることができる。」
「しかし…高橋殿がストローで混ぜて飲む可能性もありやなしや。」
「結果的に…そうはならなかったがな。」
「けどよ、最後には上の方も飲んじゃうだろ?」
「あ!違いますよ!あの睡眠薬は10分以内に胃に入らないと効かないそうですから!」
「何だよ、その意味の分からねぇ効果。」
「推理モノにありがちな、ご都合アイテムです!」
「だから、んだばもんが なじょして存在してんだべ?」
「まあまあ。あるというなら仕方ないさ。ベイビー。」
「で?ゴンちゃん。」
「え?」
「そこまで言ってんなら分かってるんでしょ?教えてよ、この事件の犯人…タカちゃん以外に…オレらにクスリ盛ったヤツ。」
「……えっと。」
▼高橋以外に睡眠薬を盛ったのは?

「大草原っすわ。」
「え?え?草原?」
back
「キミしかいない!ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「みんなのジュースに睡眠薬を入れたのは…華椿さんだよね。」
「……。」
「あ…あなたが!?」
「私が見てた時に怪しいところはなかった。…けど、材料のクリーム自体に混ぜることなら可能だった。」
「おかげさまで深夜の天体観察ができなかったわ。」
「……。」
(華椿さんは黙っている。仲間を疑うのは嫌だけど…虫さんがゴン太に教えてくれた。)
(ーーでも、もし間違ってたら…どうしよう?これが…何も悪くない仲間を疑うことになっていたら?)
「華椿さ、なんとか言っだら どっだ?」
「貴殿が皆に一服 盛ったと、そう申すか?」
「……。」
「オレはテメーを信じるぜ。テメーは嘘ついてる顔をしてねー。」
(ふと、頭の中で誰かの声がした。)
(みんなに疑われる時の息が詰まるような気持ち。その中で、信じると言ってくれた人がいる気持ち。そんなものを思い出した。)
(これは…記憶?でも、誰なんだろう。)
(ーーそうだ。やっぱり、友だちを疑うなんて…よくないことだ。)
「華椿さん、疑って ごめん!ゴン太が間違ってるなら教えて!考え直すから!!」
(ゴン太が言うと、華椿さんが こちらを見た。)
「……。」
(そして、彼女は静かに言った。)
「……確かに、皆さんを眠らせ、高橋さんを呼び出したのは…わたくしです。」
「キミが…?」
「マジかよ。」
「んー、おかげで よく眠れたけどー。勝手に薬なんか盛ったら犯罪だぞー?」
「……キミが…高橋君を殺したのか。」
「……それは違います。」
「その主張には無理がある。」
「んだ。おめさ、高橋さ ぶっキルしたんでろ?」
「わたくしは彼を殺していません。」
「いや、無理だって。言い逃れできねーっしょ?wwとりま認めちゃお?」
「いや、待ってください!ここから驚きの真相が飛び出て弾け飛ぶかもしれません!」
「弾け飛ばしちゃダメ。…だから、大切にする。」
「ブッ…。そうね…、華椿さん。とりあえず、ぶっ飛ばせて頂戴。」
(みんなが華椿さんを見る中で、彼女は言った。)
「わたくしは…確かに彼を殺そうとしていました。」
「ほら見ろ、やっぱりじゃ〜〜ん!…って、うん?」
「殺そうとしていた?殺した…ではなく?」
「わたくしは獄原さんの名を騙り、高橋さんを灯台に呼び出しました。」
「え…。ゴン太の名前を書いたのは、華椿さんだったの?」
「ええ。」
「それでも…犯人は別にいると?」
「ええ。彼以外に睡眠薬を盛ったのですから、彼の自殺の可能性が高いと思います。」
「あなたは怪しい。…と、思う。」
「そうだね。そこまで認めておいて無実というのはムシがよすぎる。」
「ムシ?」
「無条件にムシに反応すんなしww」
「…クールじゃねーな。華椿、話してもらおうか。あんたの言い分をな。」
「ここまで来た以上、そのつもりです。確かに、わたくしは彼を殺すつもりで西の灯台に呼び出しました。けれど…彼は来なかったのです。」
「まさか東の灯台近くで死んでいるなんて、思いもしませんでした。」
「待て。指定の時間に高橋が来なかった。その後、あんたは何をしていたんだ?」
「…わたくしは一晩中、西の灯台の中にいました。」
「一晩中?」
「いや…あそこ死体あったじゃねぇか。とんでもねぇ臭いだったぞ。」
「んだ。そんな場所に一晩中なんて、ありえねーべ。」
「高橋が来ないのに探しに行ったりしなかったの?ずーっと待ってたの?」
「ぶふっ、おかしいわね。どうして?」
「………。」
「そんなことは どうでもいいでしょう。犯人を見つけるのが先決です。」
「だから、その犯人が お前じゃねェって疑ってんだよ。」
「……。」
(華椿さんが黙って そっぽを向いた。その時、華椿さんの後ろ髪に差された花が見えた。)
(ーーあれ、なんか…昨日と違う?)
「何ですか?レディをジロジロ見るのは紳士的じゃありませんよ。」
「ご、ごめん。華椿さんの髪に違和感があったから、つい…。」
「……。」
(ゴン太が言うと、華椿さんはゴン太を真っ直ぐ見た。)
「いいでしょう。そんなに疑うのなら、わたくしも反論させていただきます。」
反論ショーダウン 開始
「わたくしは犯人ではありません。」
「わたくしは皆さんに睡眠薬を盛り、彼に殺意があったことまで認めているのです。」
「今、わたくしに嘘を吐く理由はございません。」
「えーっと、ど、どうして高橋君を殺そうとしたの?」
「……それは、今 重要ではないでしょう。」
「大事なことは…わたくしを信じないのであれば皆さん死ぬということ。」
「御身が大切であるなら、わたくしの言葉を信じてください。」
「高橋さんは西の灯台に現れなかった。そして、わたくしは ずっと西の灯台にいたのです。」
【西エリアの足跡】→ずっと西の灯台にいた
【花飾り】→ずっと西の灯台にいた
【高橋のメモ】→ずっと西の灯台にいた
「言っとくけど、反論した人が次回 死ぬ人ってわけじゃないからね。そういう本家の共通項つきつけられても困るからね。」
「確かに退場前に見せ場的なものを作らなきゃだから2章被害者の1章反論ショーダウン率は上がるんだろうけどさ…ブツブツ。」
(……何を言ってるんだろう?)
△back
「それは違うよ!ーーって虫さんが言ってるよ!」
「華椿さん、これ…。華椿さんの…だよね?」
(ゴン太が高橋君の近くで拾った花飾りを見せると、華椿さんは息を呑んだ。そのまま黙ってしまった彼女の代わりに、その周りで声が上がった。)
「ああ、そうか。どこかで見たと思ったら…。確かに華椿さんの髪を彩っていた一品だね。上等な品だよ。」
「そりゃ、菖蒲だな。華椿の頭に くっついてた花だ。そういえば、今朝からなかったな。」
「ふむ。男性陣の方が喰いついているな。私も もっと女性の小物を褒めるよう心掛けるかな。」
「死体の近く。…に、落ちていた。」
「かわい〜!華椿の髪にピッタリだねー!」
「それが現場に落ちてたワケ?よっ、ハナちゃん!何か一言!」
「……。」
「本当に、高橋さんの近くに落ちていたのですか?」
「ああ。高橋の死体の下敷きになってたがな。」
「そんな…馬鹿な。」
「オメ、やっぱし東の灯台にいたんでねーか!」
「使われた睡眠薬の瓶も死体近くに落ちてた。…ので、言い逃れできない。」
「そうですよ!睡眠薬の瓶と髪飾り!!華椿先生が現場にいたのは何というか、こう…明白です!」
「……皆さん。落ち着いてください。」
「いやww誰のせいだっつーの。」
「わたくしは本当に東へは行っていないんです。」
「では、何故に現場に貴殿の持ち物が?」
「…睡眠薬が入っていた瓶は西の灯台から海に放り投げたんです。その時、誤って髪飾りも落としてしまいました。」
「それが、何故か現場近くに…と言いたいのかな?」
「はい。」
「それは…不思議ね。……って、ぷっ、さっさすがに、その嘘、は、無理がある…わよ。ぷくく。」
「……それには同感だな。昨日 東の灯台にあった死体を調査した時に落としたとでも言われた方が、まだ納得できたさ。」
「いえ。ですから、わたくしは何ひとつ嘘を吐いていないのです。昨日の夕食時、髪飾りも身につけていましたから、嘘を言っても すぐ分かりますから。」
「あー確かに、昨日の夜は菖蒲ひっついてたぞ?」
「間違いなく…瓶も髪飾りも西の灯台付近の海に落ちたんです。それが現場にあったなんて…おかしいとしか…。」
「おかしいといえばさー…。」
「黙っててけれ。今はオメの連想ゲームに付き合ってるヒマねんだ。事件に関係あることさ話せ。」
「いや、高橋が言ってたことなんだけど、変だなーって。」
「変…?」
「うん。2人分の死体見つけた時、高橋 言ってたでしょ?警察の目を欺くために焼いたり臓器取ったりしたって。」
「それが どうかなされたか?」
「アタシだったら海に落としちゃうけどなーって思って。」
「えっ…。」
「だって、警察にバレたくないなら、海に死体 落とした方が早くない?」
「確かにww焼いたり臓器出すより、だいぶラクーーww」
「フッ…大方、モノクマが俺たちに見せるために用意したんだろう。それより…事件についてだ。」
「あ…ま、待って!」
「どうかしたのかい?」
「虫さんが…何か言ってるんだ。」
「ぶごふっ!また、それ、なのね!」
「…虫さんは、何を言ってるの?」
(これまで以上に、虫さんが必死に何かを訴えてる。虫さんに向かって、耳を すませた。)
バグズブレインピッキング 開始
Q. 高橋の死体、髪飾り、睡眠薬の瓶以外で東の灯台前にあったものは?
1.焦げた死体
2.内臓を抜かれた死体
3.モノクマ
Q. 髪飾り、睡眠薬の瓶と死体の共通点は?
1.華椿が触れた
2.おいしい
3.海に落ちた
Q. 高橋の死体が東の灯台にあったのは?
1.東の灯台で殺された後、放置された
2.海に落ちた後、東の灯台に送られた
3.西の灯台から東の灯台に移動された
▼繋がったんだね!
「東の灯台から発見されたのは…焦げた死体に華椿さんの髪飾り、睡眠薬の瓶…それから、高橋君の死体だよね。そして、華椿さんは髪飾りや瓶を海に捨てた。」
「華椿さの言うこと信じればの話だべ。」
「虫さんが言ってるんだ。もし、焦げた死体も海に落とされていたなら…って。」
「ど、どういうことだ?」
「不法投棄防止システム…か。」
「不法投棄防止システム?」
「モノクマが言ってたのさ。海への不法投棄を防止するシステムがあるってな。」
「あー、なるなる。黒焦げ死体も海に落とされてて〜それが何ちゃらシステムで戻ってきたやつ?」
「そ、そんなシステム…どうやって?」
「うぷぷ。企業秘密だよ。この島のどこからでも、海に投棄されたゴミは東の灯台前に集積されるんだ。生ゴミ含めてね。」
「け…けど…あの黒焦げ死体……濡れてなかったし、焦げた臭いがしたぞ?海に落ちた跡なんてなかったろ?」
「海に浸かった痕跡がなかったのはシステムのおかげです。海に落ちる前の状態で東の灯台前ゴミ集積所に送られるのです。」
「今回 海に浮かぶ高橋クンはキレイキレイしましょ!されてから集積所送りになったのさ。」
「『高橋クン』と書いて『ゴミ』と読むな。」
「よく分かったね!?さては模倣犯と書いてコスプレイヤーと読むタイプか!?」
「しかし…海に落ちたものを戻すシステムなど本当に可能なのか?」
「…絶対、無理。」
「うるさいなー!できるの!!もう視聴者には分かってるところなんだからスルーしてよね!」
「じゃ、モノクマの気になる発言はスルーするとして…。」
「つまり…高橋君は…。」
「どっかから海さ落っこって、東の灯台に運ばれたんだべ。」
「…ま、まさか、犯人により海に落とされたため東の灯台前に送られた…と?」
「いや…事故の可能性もある。誤って足を滑らせ海に転落。その後、溺死してしまったのではないか?」
「事故か殺人…どっちなんだろうねー。」
ノンストップ議論1開始
「呼び出しは西の灯台だったのに、死体は東の灯台で発見されました。その理由は…西の灯台近くから転落したから!これでQ.E.Dですよ!」
「なるほど。一理ある。」
「待ってください。彼が近くにいたなら.わたくしが気付くはずです。」
「気付いたから、オメが ぶっちめったんじゃねっだか?」
「なるほど。一理ある。高橋殿が西の灯台に現れたところで海に向かって突き落とす。か弱き女性でもできようぞ。」
「呼び出された高橋が0時に西の灯台に行って…華椿が突き落としたってことか…?」
【西の灯台のろうそく】→0時に西の灯台に行った
【西エリアの足跡】→0時に西の灯台に行った
【】→0時に西の灯台に行った
「ゴン太クン。キミのチャーミングさは十分 伝わったよ。そろそろ真面目に議論しよう。」
「ご、ごめん…ゴン太は ふざけたりしてないんだ…!」
△back
「それは違うよ!ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「えーと…西エリアには足跡が全然なかったんだ。東エリアには高橋君の足跡が残ってたけど…。」
「午後11時半から降り出した雨により、土が ぬかるんでいたな。」
「華椿、あんたは何時に西の灯台に向かったんだ?」
「11時半には西の灯台に着いておりました。以降は朝まで西の灯台から出ておりません。」
「西の灯台にあったロウソクは お前が持ってったのか?」
「ええ。寄宿舎の倉庫から拝借して一晩中 灯しておりました。」
「うーん、いまいち信じ難いね。待ち合わせ相手が来なかったのに、どうして ずっと灯台から離れなかったんだい?」
「………。」
「けど、確かに西の灯台付近には誰の足跡もなかったんだろ?死亡時刻にも華椿が灯台から出てないってことじゃねーか?」
「じゃ、西の灯台が現場じゃなかっただけじゃね?」
「一理ある。東エリアに高橋殿の足跡が残されていた。もちろん舗装された所や、木が多く ぬかるみができなかった所には残っていなかったが…」
「ふむ…犯人が舗装された東の灯台で待ち伏せして、やって来た高橋君を殺害した可能性は十分あり得る。」
「だが…犯人が寄宿舎に戻るにも足跡を残るはずだ。3時まで雨は続いていたそうだぞ。」
「だから、一晩中 灯台にいたんじゃないかね?」
「……わたくしが一晩おりましたのは西の灯台です。」
「華椿さんの言うことを信じるなら…高橋先生は事故死じゃないですか?待ち合わせに向かう道中、何らかの理由で海に転落したとか。」
「え〜wwおかしくね?モノモノ言ってたっしょ?殺人が起こったって。タカちゃんが すってんころりんして事故死っても、殺人とは呼ばなくね?」
「…それは、そう。」
「ってかさー、おかしくない?」
「何がだい?ベイビー。」
「今んとこ、高橋は睡眠薬で寝てなくて、東の灯台付近に足跡があった。つまり、高橋が東の灯台にいたのは間違いないってこと?」
「そうね。最初の方にも話したけど…東の灯台辺りの足跡が高橋君のものなら…妙よね。」
「なぜ高橋さんは東の灯台に向かったのでしょうか。わたくしが送ったメッセージには確かに西の灯台と記しました。」
「うん。高橋君の持ってた手紙には西の灯台って書いてあったよ。」
「まさか東西を本当に間違えた?まさかな?」
「そんなはずはないだろう。西の灯台は宿舎から左手。間違える方が難しい。」
「殺した後に高橋君にメモを握らせた…というのは どうかね?」
「…どういうこと?」
「華椿君は我々が ここまで推理すると読んでいた。だから敢えて『西の灯台』のメモを握らせた。議論を混乱させるためにね。」
「やべーww”超高校級の先読み”じゃんwww」
「残念ながら先読みは我が一族の苦手とするところです。でなければ多額の負債を抱えて没落していません。」
「自慢することであろうか、いや そんなことは決してない。」
「やれやれ…。高橋が海に落ちたらしいことは確実だ。それなら、犯人が敢えてメモを死体に握らせる必要はねーと思うがな。」
「モノクマ。海の不法投棄防止システムとやらを俺たちの誰かに話したか?」
「……んー?話したっけかなぁ?」
「教えてくださいよ!不公平があったかなかったか!公正な裁判をするための情報ですよ!」
「んー?…ま、そっか。うん。」
(モノクマは暫く独り言を言ってから、ゴン太たちを見た。)
「教えてないよ。聞かれてない重要機密を話すのはフェアじゃないからね。」
「なるほど…誰も海に落ちた物が戻ってくるとは知らなかった。」
「もちろん、わたくしも思ってもみませんでした。知っていたら睡眠薬の瓶も捨てませんでしたし、わたくしが犯人なら敢えてメモを握らせるよりメモを破棄します。」
「確かに〜華椿、メモ書いたのは自分だって、すぐ認めてたもんね〜。犯人だとしたら、肝 座りすぎて、足 痺れちゃうよー。」
「物理的に肝を座らせるでねぇ。」
「ブフォ!」
「いやーwwワケ分かんなくなってきたねー!」
(野伏君の明るい声に、みんなが黙ってしまった。)
(高橋君は 何で東にいたんだろう。ゴン太にとっては左右や東西が分かるのは凄いことだけど…高橋君にとっては難しいことじゃないはずだ。)
「あの…発送を逆転してみませんか?」
(ゴン太が考えを巡らせていると、みんなに桐崎さんが呼びかけてくれた。)
「どういうことだい、ベイビー?」
「『どうして高橋先生が東に行ったのか』を考えるのではなく『どのような状況なら高橋先生が東に行くのか』考えるんですよ。」
「おんなじこってねーか?」
「いいえ違います!この『逆転するぞ』という強い思いが、真実へとプレーヤーを導くのです!」
「どのような状況。…なら、被害者は東の灯台に向かうのか。」
「宿舎から東の灯台に向かうなら、校舎側へ向かって北上し、右手側の光のない灯台へ向かうことになるわ。」
「反対に西の灯台に行くなら…左手側の明るい灯台へ向かう。」
「………。」
(もう難しすぎてゴン太には分からない…。でも、虫さんが教えてくれている。)
1. 高橋は宿舎から左手側に進んだ
2. 高橋は校舎から左手側に進んだ
3. 高橋は左右がよく分からなかった
「ゴン太先生、左右が分からないからって悲観することはありません!ボク、常々 思ってたんです!左利きだから犯人ってのは変だって!」
「利き手が確実になるのはペンやハサミや拳銃の場合ですよね。”左手で開けた跡”で犯人探すのはムリがあると思うんです。そう思いません!?」
「ご、ごめん…。何を言ってるのか、よく分からないよ。」
△back
「高橋君は…校舎から灯台に向かった…?」
「え?どういうことだ?」
「ええと…。」
「なるほど!場所の入れ替えですね!現場の入れ替えトリックだったり、読者をミスリードさせたり、事件解決のヒントとして よくあります!」
「男女の部屋の入れ替えが起こったことにより決定的証拠が上がるのは、なかなかに秀逸…」
「それって、高橋は校舎にいて、校舎から左手側…東に向かったってこと?」
「高橋さんに自分がいる場所を宿舎だと勘違いさせた。そう言いたいのですか?」
「そんなことできるかァ?」
「タカちゃんを宿舎辺りで軽く殴り倒して、校舎に運んで転がしとけばよくね?」
「軽く殴り倒す…。うら若き乙女たちには難しそうだな。」
「校舎と宿舎の建物は同じ造りでシンメトリーだったから、可能性がなくはない…かもしれないね。」
「そ、そっか。反対側から灯台に向かったから、方角を間違えちゃったんだね!」
「なして言い出しっぺが後から納得してるだ。」
「ーーいや。獄原、それは おかしい。高橋が校舎側にいて方角が反対になっていたとしても、灯台の灯りがある。」
「そうね。昨日も西の灯台が灯っていたのは、みんなが見ているわ。まさか高橋君が その辺りの記憶もゴチャゴチャになったとは…ブフッ思えない…わ。」
「自分で言って自分で笑うなよ。ゴン太、虫さん達は何か言ってねぇのか?」
「ぶふーっ!」
(そういえば…西の灯台の虫さん達が言ってた。)
(あれって…どういうことだろう。)
1. 虫で被害者を殺した
2. 虫で灯台を作った
3. 虫で灯台の光を遮った
「あははははは!!ごめんね、ゴン太君ッ!私と隣のせいで、虫さんが逃げちゃうかもしれないわ!!」
「だ、大丈夫だよ!ずっとゴン太の近く…それこそ、耳元で囁き続けてくれてる虫さんがいるから!」
「ぶふぁ!それはっ…いや、いい…わね!!」
△back
「ーーそっか。もしかして、西の灯台の光は遮られていたのかも…。」
「何ですって?」
「捜査時間に西の灯台に登った時…灯りの周りにいた虫さん達が言ってたんだ。『こっちの水は甘いぞ』って。」
「蛍みたいぷすね。」
「けど…そんな虫が覆ったくらいで光が届かないなんてあるか?」
「あの虫は、この島の固有種でね。甘味に対して貪欲だからウン千匹が折り重なり蠢き連なり甘い汁すすろうとしてたのかもね。」
「気色悪い言い方やめれっ!想像すっでろ!」
「鳥肌モノ。」
「つまり…犯人は灯台に虫が集まるように細工したというのかい?」
「…どこまでも手の込んだことをッ!」
「でもさー、そんな この島の固有種のことなんて、ゴンちゃん以外 知らなくね?やっぱりゴンちゃんが犯人なのー?」
「え…ゴ、ゴン太じゃないよ!」
「虫を使ったからといってゴン太君を疑う理由にはならないさ。犯人が事前にモノクマから聞いていたのかもしれない。」
「ねーねー、つまり、どういうこと?」
「つまり…高橋殿は西の灯台と勘違いして東の灯台に向かった。なぜなら、西に灯っているはずの光が虫によって遮られていたためだ。」
「しかも、自身が校舎にいる中、高橋殿は自分は宿舎にいると信じ込んでいた。それで、左右、東西が反転したのだ。」
「西の灯台の光もなかったから…東の灯台に行っちゃったってこと?真っ暗な中?」
「東の灯台は元々灯りがない。…ので、暗闇。…の中で歩くのは、変。」
「そうね。雨が降り始めてたら、星の明かりもない状態よ。前の死体の殺人鬼もいるかもしれないのに…。」
「やはり…高橋君が校舎側にいたというのは無理があるのか…?」
「東の灯台に蛍光塗料が塗られいたとかは どうでしょう?」
「倉庫にあった消耗品は特に変わってねがっただ。」
「ーーいや。」
(不意に星君に見上げられた。)
「倉庫なら、高橋の動向を操る道具があるかもしれねーぞ。」
(星君が言うのを聞いて、数日前に倉庫に行った時のことを思い出した。)
(色々なものを見たけど…何か使えそうな物はーー…)
1. 南京玉すだれ
2. チェス
3. ドローン
「そんなモン何に使うんだべ?都会モンは意味わかんねぇ。」
「トカイモン?ごめん。ゴン太、まだ見たことないや。」
△back
「ドローン…。」
「あ!確かに!倉庫にドローンがありました!激しく強いライトのせいでバッテリー駆動時間が異様に短い仕様の!」
「それが西の灯台の灯りだと高橋殿は思った…?」
「ドローンが東の灯台に置いてあったから…被害者は東と西を勘違いした…。」
「ーーいや、それより簡単な方法がある。」
「簡単な方法?」
「ドローンを海の上で飛ばしておくのさ。暗闇で高橋は光を目指すしかないんだからな。」
「なるほど、暗闇で距離感も掴めず、高橋君は海に転落してしまった…。」
「光に寄ってったってことか?」
「人も虫も光に集まる。この国のコンビニも、人が集まるように他より明るくしているという。」
「うん。みんな虫さんと同じなんだよね。」
「ぶふーーっ!」
「虫と一緒にすんでねぇ!」
「ゴン太ってマジかわい〜。」
「え?ゴ、ゴン太、変なこと言った?」
「その発言は悪口に聞こえるんだよ。」
「えっ!?」
(みんな、どうしたんだろう。そんなことを考えていると、星君の落ち着いた声がした。)
「雨の中、ドローンを飛ばすことは簡単なことじゃないはずだ。それができた奴が…犯人ってことになるな。」
(星君がゴン太を真っ直ぐ見ている。その目は、ゴン太なら分かるだろうと言ってるみたいだった。)
(ゴン太は また、虫さんの言葉に耳を澄ませた。)
▼この事件のクロは?
「どうして そいつが犯人なんだ?虫さんは何て言ってんだ?よし、聞かせてくれ!」
(火野君がキラキラした目をしているけど、虫さんは何も言ってくれない…。)
△back
「キミしかいない!ーーって、虫さんが言ってるよ!!」
「河合さん。河合さんは…ドローンを飛ばせるんだよね?」
「何だって?」
「マジで?出島?まじでじま??」
「………。」
「ハハッ、何を言ってるんだ?ゴン太君。こんな時に冗談は よしておくれよ。」
「河合さん…ドローンが使えるんだよね。」
「……ああ。簡単なものさ。5歳児だって使える。」
「小学生一年生の少年探偵団もプロ並みの操縦してましたもんね…。」
「ドローンっていうのは、性能がいいんだ。高度維持システムや自動制御装置が搭載されているから、初心者だって飛ばせるんだよ。」
「雨の中では そうはいかねーはずだ。」
「確かにね。けれど、経験者だからといって疑われるのは心外だな。それに、経験者が私だけとは限らんだろ?」
「うぷぷ。そうだとしたら既に視聴者向けの情報開示があるはずなんですけどね。」
「こったら時にワゲ分がんねことばっか言うでね!!」
(裁判場が静かになる。みんなの顔の緊張が強くなるのを感じた。)
(河合さんはゴン太をジッと見つめている。その目が怖くて、ゴン太は思わず叫んだ。)
「疑ってごめん、河合さん!違ったら反論してくれたらいいから!!もう1度 考えるから!!」
「………。」
「ーーそうか。それでこそ紳士だ。」
「それでは、ひとつキミ達の推理の穴を突かせてもらおうか。」
反論ショーダウン2開始
「そもそも、ドローンが使われたとキミ達が考えるのは『高橋君が西の灯台と東の灯台を間違えるよう仕向けられたから』だろう?」
「その推理からして、疑問が残るように感じるな。」
「キミ達の考えなら、私が高橋君を殴り校舎へ連れて行き、西の灯台の灯りを消し、東にドローンを飛ばした。」
「ならば何故、西エリアに私の足跡は残っていなかったのかね?」
「えっと…それは……河合さんが西の灯台に行ったのは雨が降り出す前だったからーーって、虫さんが言ってるよ!」
「しかし…そんなの、計画と呼ぶには杜撰すぎんとは思わないか?高橋君が どう動くか、私に分かるはずないさ。」
「この計画は高橋君が勘違いしなければ始まりもしないんだ。彼がモノパッドを見た時点で計画はオジャンだ。」
「モノパッドにはGPSのような機能があった。高橋君は自身が どこにいたか、位置が分かっていたはずだよ!」
「モノパッドは死体近くにあったんじゃないかい?つまり、彼が死の間際まで携帯していたということだよ。」
【死体近くの小瓶】→死の間際まで携帯していた
【西の灯台のろうそく】→死の間際まで携帯していた
【高橋のモノパッド】→死の間際まで携帯していた
「さて、大柄な眼鏡の紳士君。キミは熟考の上で私に反論しているのかな?」
「も、もう1度 考えるよ!」
△back
「その言葉、斬らせてもらう!ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「河合さん。確かに、高橋君の近くにモノパッドがあったんだけど…。最初はなかったんだ。」
「何だって?」
「高橋のモノパッドは最初に俺たちが死体を確認した時は見なかったが…灯台を登った後、降りてきた時 見つけたんだ。」
「……!」
「そういえば…ボクと河合さん、蔵田さんが一緒に捜査していた時には見なかったね。」
「……うん。」
「大方、宿舎前で高橋を殴った時に回収していたんだろうが…時間差があった。」
「時間差…?」
「雨が降り始めたことで、あんたは足跡が残ることを恐れて、明け方 土が乾いてからモノパッドを海に捨てたんじゃないのか?」
「なるほど。0時頃 海に落ちた高橋君より後に東の灯台前に送られたのね。」
「………。」
「河合さん…。本当に…貴女様が?」
「全く困ったものだ。最近の若い人は想像ばかり口にして、論拠やデータがないんだから。」
理論武装 開始
「いいかい?西の灯台から光を消し、東を輝かせて高橋君を誘導した。」
「これが もし本当だったとしよう。そして本当にドローンが使われたとしよう。」
「しかし、イコール私が犯人ということにはならないのさ。さっきも言った通り、ドローンなんて幼い子どもでも飛ばせるんだ。」
「ドローンを操れる人間は私以外にもいるはずだ。」
「私が一連のことをやってのけたという根拠にはならないだろう。」
「私が犯人だと言うなら、私以外にはない、確固たる根拠を述べたまえ!」
○り△い×香◻︎甘
▼これで終わりだよ!
「……。」
「…どうしたの。」
「虫さんが言ってたよ!ーーは?どったの?」
「ゴン太、虫さんは何て言ってんだ?」
「虫の言葉じゃなくても…獄原、あんたの言葉を聞かせてやんな。」
「……。」
「思い出したんだ…虫さんが言ってたこと。」
「虫さんが?」
「河合さんは虫さんに好かれてるんだけど…みんな言ってたんだ。『こっちの人は甘いぞ』って…。」
「……。」
「それって…。」
「…西の灯台の虫さんと同じ?」
「うん。西の灯台の虫さんは『こっちの水は甘いぞ』って言ってたんだ。」
「確かに、河合さんは甘くていい匂いがするけれども。」
「うん。だから…ゴン太は思うんだけど…。」
(ゴン太は、河合さんの顔が どんどん青くなっていくのを見た。)
「西の灯台の虫さん達…光を遮るほど集まった虫さんに”何か”あげたのは…河合さんなんじゃないかな。」
「……。」
「ご、ごめん!違うかも…しれないんだけど。」
「……。」
「ゴン太さ、自信持っていいべ。きっと それが正解だ。」
「信じられないような話だが…一応 線になった。」
「かなり無理矢理だけどねー。でも、いいのです。ぜーんぶ嘘、なんだからね!」
「……。」
「違うなら言って!ゴン太、もっと考えるから!だって、河合さんはゴン太の紳士なかーー…」
(「ま」と言いかけた時、河合さんが楽しげに笑い始めた。その笑い方が いつもと違って、びっくりしてしまった。)
「ーー紳士を語るなら…私には その資格はないさ。金銭面でも。人間的にも。」
「ど…どういうこと?」
「高橋君に死の道を走らせたのは…この私だってことさ。」
「そう、その名も絶望のデスロード!」
「畜生よ、少々お黙りなさい。」
「そうか…高橋君のモノパッドは死体と一緒に発見されたものとばかり思っていた。不覚だったよ。」
「せっかく死体周りを調べていたというのに…気が動転していたな。」
(ポツリポツリと話す河合さんは続けて言った。)
「殺人は初めてで…気が動転していたよ。」
「それって…」
「認めるってことか?」
「ああ。私は華椿君が高橋君を殺そうとしているのに気付き…便乗させてもらおうと思ったのさ。」
「ーー何ですって?」
「たまたまキミが皆の飲み物のクリームに何かを混入しているのを発見してね。しばらく口を付けていなかったんだ。」
「それでも、全く飲み物が減っていないと目立つからね。皆が見ていない間に、ストローで下の部分を飲んでいたんだ。」
「お前…ストローなんて持ってたか?」
「馬術部たるもの、馬の寝ワラを常に懐に忍ばせているのだよ。」
「ま、まさにマイストローってことですね!?」
「ストローの語源はワラのstrow。その昔、人々は藁をストローにしていたのだ。」
「だから、昨夜は皆と同じタイミングで眠くなった演技をして自室に戻り、部屋の外を伺っていた。」
「その時、華椿君が高橋君の部屋にメモを入れて寄宿舎を出ていったのを見たのさ。」
「そのメモを覗き見させてもらって、彼女が高橋君を殺そうとしているのを知ったんだ。」
「その割には…準備がよかったようだ。」
「最初は単純に部屋を出る高橋君を殴り殺そうとしたのさ。けれど…恐ろしくなった。」
「一撃で殺せなかったが、2撃目を喰らわせる勇気が…私にはなかったんだ。」
「勇気って…。」
「殺人の勇気なんていらねーだろ…。」
「……クールじゃねーな。」
「だから、高橋君の”足を借りた”のさ。華椿君に気付かれないように西の灯台に上り、香水代わりにしていたスプレーを振りかけた。」
「後は高橋君を校舎へ連れて行き、ドローンを東の海上に飛ばしたのさ。」
「へーww意識ない人間って滅茶苦茶 重いのに、カワちゃん頑張ったんだねーww」
「ハハッ。馬術部は力仕事も多いんだ。高橋君なんて、私の愛馬に比べたら羽根のようだったよ。」
「馬と比べる。…なら、それは そう。」
「どうして?貴女、そんなに外に出たかったの?」
「当然さ。早く ここを出て稼がないと…私の姫君たちが刺身にされてしまう。」
(それから河合さんはゴン太の方を見て笑った。)
「ゴン太君、紳士たるには何が必要か知ってるかい?」
「えっと…。」
「ーー金だよ。」
「紳士をやるには金がいる。覚えておくといい。」
「さて、事件について、まとめの時間だ。ゴン太君、お願いするよ。後は…そうだな。星君、手伝ってやってくれないか?」
「……やれやれ。」
(みんなの視線がゴン太に集まる。戸惑っていると、星君が始めてくれた。)
クライマックス推理
「事件が起きたのは昨日の夜のことだ。」
「えっと…高橋君はゴン太からの手紙で呼び出されて、西の灯台へ向かおうとしていたね。」
「…手紙を書いたのは獄原じゃなくて華椿だったがな。華椿は高橋を殺すため、計画を立てていた。まず、全員に睡眠薬入りの茶を振る舞った。」
「茶の上層に睡眠薬を混入させ、高橋にはストローを使わせた。それで、高橋以外の人間は睡眠薬を摂取し、朝まで熟睡してたってわけだ。」
「けど…そんな華椿さんの計画を知った人がいた。」
「もちろん…犯人だ。華椿の計画を察した犯人は宿舎を出た高橋を殴り、北の校舎の前に放置した。」
「えーと…校舎と宿舎は同じ造りだったから、高橋君は目醒めた時、自分が宿舎にいるんだと勘違いしたんだったよね。」
「ああ…。しかも、ご丁寧なことに西の灯台には虫が集まる匂いをスプレーし、その光を遮った。」
「虫さんが大好きな匂い…お酒と果汁とを混ぜたものかな?それで、高橋君は校舎前から西の灯台と間違えて、別の光がある東の灯台に行ってしまったんだ。」
「そう、東の灯台周辺は暗闇だったが、海の上を飛ぶドローンの光だけが頼りだった。」
「高橋君は真っ暗な中、ドローンの光だけを目印に歩いて…海に落ちてしまったんだ。そして、彼の死体は不法投棄防止システムによって島に戻ってきた。」
「高橋の行動を操り、死の道を走らせた犯人…」
「……それは、河合 絵馬さんだよね。」
「これが、虫さんが教えてくれた…事件の真実だよ。」
(ゴン太と星君が話し終わると、一瞬 裁判場内が静かになった。けれど、すぐに河合さんの笑い声が響いた。)
「はっはっは!素晴らしいよ、ゴン太君。紳士たるもの、そうでなくては。」
「……どうして、キミは そんなに短時間で殺しを実行する気になったんだい?」
「そ、そうですよ。一大決心…というか、かなりの覚悟が必要でしょう?」
「…つまり、人の命は重くない?」
「……。」
「モノクマ、どうやら おしまいのようだよ。」
「おや?では、エンモタケナワですが、ここらでイットク?キシベイットク?」
「投票ターイム!!」
(モノクマが言って、みんなが席にあらる投票画面を見た。みんなの写真と名前がボタンになっている。)
(そのひとつを、ゴン太は押した。)
学級裁判 閉廷
「だいせいかーい!!えーと、高橋 実クンだっけ?名前合ってる?印象薄すぎて忘れちゃった。…うん、合ってるね。オッケーオッケー。」
「えー、その、なんとかクンを殺したのは、”超高校級の馬術部” 河合 絵馬さんでしたーー!」
「ヒトも虫も、結局 同じ。光と甘い香りに寄って集っていくわけだね!」
「んで?カワちゃんが爆速でハナちゃんの殺人計画に乗っかってタカちゃん殺したのって、何で?キミが殺人に慣れてるって感じはしないけど?」
「……野伏君、誰が誰か分かりにくっ…いわ…。」
「えーと、河合が華椿の殺人計画に乗って、高橋 殺したのって何でー?ってことだよね?」
「……。」
「そんなことより、華椿君が東の灯台に現れなかったことの方が不思議じゃないかい?」
「……。」
「高橋君が来なかったら、反対側の灯台にいるかもしれないとでも思って見に行かないかい?」
「た、確かに…。そんで、外に出たら灯台の光の異常にも気付くよな。」
「華椿君。キミは西の灯台に私が行った時も気付いていたんじゃないか?」
「そうなのかい?」
「……。」
「まさかとは思うが…私はハメられたのかな?」
「え!?」
(河合さんが言うことに驚いて華椿さんを見たけれど、華椿さんは黙ったままだった。)
「私が睡眠薬に気付いたこと。高橋君宛ての呼び出しメモを見ること。便乗して彼を殺すこと。全て。キミの思い通りだったんじゃないか?」
「……。」
「華椿君は私を使って高橋君を排除した。そういうことじゃないかな?」
「何だって?」
「高橋君を操っていたつもりが…私も また、走らされていただけなのかもしれないのさ。」
「華椿さ、どうなんだべ?」
「……。」
「まあ…いいさ。とにかく、みんな気を付けてくれよ。この島には、私の他にも殺人鬼がいるようだからね。」
「………。」
「さてと、長々ダラダラ続いてますが、ここらでサクサク終わらせるよ!これは いつものコロシアイと違うからね!」
(モノクマが よく分からないことを叫んだ瞬間、河合さんの首に錠が繋がれた。)
(そして、彼女は どこかに連れ去られてしまった。)
おしおき
“超高校級の馬術部” 河合 絵馬の処刑執行
『生存競争』
河合 絵馬は、数日ぶりに馬に乗っていた。ーーいや、数年ぶりかもしれないし、昨日ぶりかもしれない。馬上から見るコースは一直線。所々に障害物が設置されている。その先のゴールには、『出口』と書かれた札。
大丈夫。難しいコースじゃない。この子と、あの出口を目指そう。
馬が駆け出す。同時に、馬が緊張したのが伝わった。背後から轟く音によるものだ。肉食・雑食動物より優秀な視界で、この馬はいち早く危険を察知したのだ。
顔だけで背後を確認すると、巨大なモノクマが追いかけてきていた。正確にはモノクマ型の肉食獣のような4足歩行のバケモノだ。それはガチンガチンと口の部分を開閉させ、鋭い爪を見せながら走ってくる。
ーーと、突然 目の前の障害物が高くなった。恐らく160cm。オリンピックレベルじゃないか。
しかし、今日のパートナーは優秀だった。突然 変わった障害物の高さにも、私の動揺にも影響されず、天高く駆けた。
安定した着地。そして、障害物をどんどんと越えていく。
ーーすばらしい。この相棒に出会えたことに感謝しないとな。
そんなことを思った時、ガクンと馬がバランスを崩した。落とし穴だ。大した深さではないが、突然の落下に馬はパニックに陥ってしまったようだ。背後からバケモノの忍び寄る音が大きくなってきた。
まずい。何とかして、この子だけでも助けなければ。この子は足にケガを負っていないだろうか?
そう思った瞬間だった。馬が上体を持ち上げ揺さぶり私を振り落とした。そして後ろ足で強かに私を蹴り飛ばした。
私が思っていたより、百倍 賢い馬だ。クマに私を捧げて走り去る算段を立てたらしい。何はともあれ、あの子がケガしていなくてよかった。
意識が薄れる中で そんなことを考えているうち、背後のモノクマの鋭い牙に頭を捕えられた。
…………
……
「アーハッハッハッ!弱肉強食とはよく言ったものだよね!ボク、お肉は あんまり食べないけどね。なんたってボクはアルティメットクマだから!」
「レッサーパンダが『パンダ』の座を奪われたように、モノクマが『クマ』になって普通のクマが『ジャイアントベア』になる日も近いね!!」
「……。」
「あれれ?どったの?」
「こんなの…こんなの、ひどいよ!!」
「確かに、河合は殺人を犯した。だからって、こんな惨たらしい死に方をさせられていいわけがねー…。」
「ダメなの?オマエラも、戦争の責任を他のヤツに背負わせて悪者だって言うフレンズなのに?」
「ヒトラーが悪い、東條が悪い、ビッツが悪い。そうやって、オマエラは歴史を学んできたんだろ?」
「だったら簡単さ。〇〇が死んだから××が悪い。悪いことしたヤツは どんな酷い目にあってもいいんだろ?」
「そんなことないよ!」
「あれー?総統閣下を色んな死に方させて楽しむゲームを嬉々としてプレイしてるヤツがいるって聞いてたのに。あれれー、おっかしいなー。」
(言いながら消えたモノクマ。けれど、ゴン太たちは しばらく動くことができずにいた。)
「……行くぞ。」
(星君が言ってくれて、やっと身体が動いた。涙でボヤける視界のまま、エレベーターに向かった。)
高橋「考え抜くこと…これも紳士の嗜みってやつじゃないのかな。」
「紳士をやるには金がいる。覚えておくといい。」
(エレベーターで地上に戻るまで、繰り返し高橋君と河合さんの言葉が思い出された。)
Round. 1 ひた走る負の走光性 完
Round. 2に続く

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