Round. 1 ひた走る負の走光性 学級裁判編Ⅰ
学級裁判 開廷
(席が丸く並んだ裁判場。みんなモノクマに言われた自分の席について、緊張した顔を見せている。)
(ゴン太も…そう。どうしていいのか分からない。高橋君が亡くなった…悲しい気持ちで押しつぶされそうだ。)
(どうして、彼が死ななくちゃいけなかったんだろう。)
「努力ができる人間は…バカじゃない。”超高校級”を与えられた人間がバカだなんて…そんなはずないんだよ。」
「キミには才能がある。自分はバカだって決めつけて考えるのを止めたらダメだよ。きっと、ゴン太くんにしか気付けない発見があるんだから。」
「……。」
(ーーうん。高橋君。ゴン太は頑張るよ。みんなのために。高橋君のために。)
(ルール説明を終えたモノクマが楽しげに裁判の始まりを告げた。)
「とにかく…もう1度 状況を振り返っておきましょう。」
(隣の席の三途河さんが声を掛けてくれた。けれど、彼女の肩が小刻みに震えているのが見えて、申し訳なく思った。)
「被害者は高橋 実殿。」
「死体の発見現場は東の灯台でしたね。」
「東の灯台といえば…他の死体も出てたよねー?」
「そうだね。焼け焦げた死体が発見された。」
「西の灯台には、臓器が取り出された死体だったっしょ?」
「け、けど、その死体は高橋の事件とは関係ねぇんじゃねぇか?」
「んだ。モノクマのワナだ。オラたつは高橋さの件に すーつーすべぎだぁ。」
「…高橋さんの死因は よく分かっていませんでしたね。」
「けど、彼の身体には無数に打ち付けられたような跡が残っていたね。」
「モノクマファイルにも情報はなかったな。」
「死因が分からない。…ので、死因を考えるべき。」
ノンストップ議論1開始
「モノクマファイルに載ってなかったら分からなくない?斬られたとかではないんだっけ?」
「高橋さの身体にゃケガあったろ?だば、決まっつる。ぶっちめっつぁれただ。」
「ぶん殴られた…そう言いたいんだね、ベイビー。」
「よく分かったな。」
「フフ…ウチの店には色んなお客様がいるからね。」
「オラも、よぐ お師匠にぶっちめっつぁれた。高橋さのケガから見て、間違いね。」
「何者かに撲殺された…ということか。」
「どうした?何か言いたかったじゃねぇのか?遠慮するな。思ったことを言ってやんな。」
「……星君。ありがとう、そうするよ。」
△back
「それは違うよ!!」
「え?」
「ご、ゴン太?どうしたんだよ?」
「………。」
(1番 近くにいた虫さんが教えてくれた。今の議論と捜査中に知ったことの違うところ…。)
「ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「はぁ?」
「…虫さんが?」
「何 言ってんの、ゴン太。かわい〜。」
「うぷぷぷぷ。視聴者の皆さん、怒っていいよ。今、オマエラ 虫って言われたんだから。」
「視聴者…?」
「モノモノ〜、視聴者って何ぞや〜?」
「うぷぷぷぷ。」
「言う気はないようだ。」
「モノクマのことは放っておきましょう。それよりゴン太先生、何が違うんです?」
「高橋君の身体を調べたんだけど、致命傷になるほどの傷は見当たらなかったんだ。そうだよね…星君。」
「…ああ。」
「そんなこと、見て分かったのかい?」
「高校生の私たちに そんな技術はないはずよ。どうして そう言えるのかしら?」
「人の死に立ち会った経験があるのさ。どれくらいの殴打で人は死ぬのか…そいつを俺は知ってただけだ。」
「いや、だから何で知ってんだー!って話ーーwww」
「いーじゃん、いーじゃん!違うって分かったならラッキー!!あ、今日のラッキーアイテム、サンバイザーだったのかも!」
「いやいや。早合点は危険なり。」
「被害者の身体、傷だらけだった。…けど、血はなかった。」
「……わたくしも、星さんの意見に賛成です。」
「ベイビーも、あの打撲痕では死に至らないと言いたいんだね?」
「ええ。わたくしも家の事情で そういった勉強をする機会がありましたから。」
「ぶっちめっつぁれたんでねーなら、高橋さ何で逝っつまったんだ?」
「何で亡くなったんだろうね。死に至る外傷がないなら、死因は限られているよね。ベイビー。」
「毒殺、溺殺、感電殺、絞殺、呪殺、笑殺…可能性は無限大です!」
「やれやれ…死因の特定には時間がいるんだったな。」
「そうそう。司法解剖に回してますからね。」
「そんな施設があったようには思えぬが。」
「てか〜、高橋、何で あんなとこで殺されてたのかな?」
「確かに…あの辺りは夜は真っ暗だ。一体、あんな所で何をしていたのだろう。」
「たまたま散歩してたんじゃね?」
「真夜中にか?」
「…それは、不可解。」
「たまたま暗い道を歩いていて、たまたま犯人に遭遇した。…そういうことかしら?」
「……獄原、あんたは どう思う?」
(たまたま灯台近くにいた。どうなんだろう。)
1. それは違うぞ!
2. それに賛成だ!
「ゴン太、かわゆ〜!でもさ、かわい〜だけじゃダメなんだぞ?紳士になるならね!」
「そっか!ありがとう!!考え直してみるよ!」
△back
「高橋君は たまたま灯台に行ったんじゃない…はずだよ。」
「どうして そんなことが言えるんだい?」
「虫さんも そう言ってるんだ。」
「いや、虫さんのことは知らんしww」
「ゴン太かわわ〜〜!それで?かわい〜虫さんは何で言ってるの?」
「うん!これ、高橋君が持ってたんだ。灯台に来てほしいってメモだよ。」
(ゴン太がメモを見せると、みんなの顔が固まった。)
「『大変なことに気付いたんだ。午前0時に西の灯台に来てね。獄原』…これは。」
「うん。ゴン太から高橋君への手紙だね。」
「お前が呼び出したんじゃねぇか!」
「ぷげらww何ソレ、ゴンちゃんの自供タイム??」
「そうか…自供してくれて ありがとう。ゴン太君。キミのことは忘れないよ。」
「ち、違うんだ。おかしいんだよ。ゴン太は、こんな手紙 書いてないのに…!」
「なぬ?獄原殿は書いていないとな?」
「オメ、まぎらわしい言い方すんでねぇ!」
「ご、ごめん!」
「虫さんは悪くない。…ので、謝らなくていい。」
「とにかく、獄原は高橋を呼び出したわけじゃない…つまり。」
「犯人がメモを偽装した。」
「うん。ゴン太は犯人なんかじゃないよ!」
「……そんな風に弁明されると、余計 怪しく見えますよ。」
「確かに。残念ながら、ゴン太クンがメモを書いていないって証拠はないんだよね。」
「まさしく悪魔の証明ですね。」
ノンストップ議論2開始
「ゴン太君は このメモを書いていないと主張するわけだね。」
「書いてねぇって言うなら信じてやりてーけどさ。」
「信じたいことと信じられることは別と考える。」
「えー、信じたげようよ!信じる者は救われる!サンタを信じる子供は救われるけど、信じない子は死ぬんだよ?」
「そんな極端な話なのか!?」
「ゴン太君かどうかは置いておいて…とにかく、犯人は高橋君を西の灯台に呼び出したってことよね。」
「……疑わしきは罰せよ。そんな中世の裁判理論が小生の頭の隅を過ぎった。」
「え…えっと、よく分からないけど…もっと考えろってことかな?」
△back
「それは違うよ!ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「うわっ!だから、何なんだよ。」
「急にテンション上げられるとバビるわーww虫さんが言ってるって、何なの的な。」
「それこそゴン太クンのチャームポイントだよ、ベイビー。」
「チャーミングとチャーミーグリーンって似てるよねー!」
「今は裁判中。…なので、どうでもいい。」
「一生どうでもいいべ!」
「やれやれ…。獄原の言う通り、この呼び出しのメモは おかしいな。」
「どこがだい?」
「あ!メモでは西の灯台に来てと書かれてるのに、死体は東の灯台近くで発見されたのは おかしいですね。」
「ああ。それに、東エリアには高橋のものらしき足跡が残っていたが、西エリアにゃなかった。」
「高橋は西に呼び出されたのに、東に行っちゃったってこと?西か東か分かんなくなっちゃったとか?」
「まさか。高校生にもなって そんな人、いるわけないじゃないですか。ゴン太先生は左右が分からない ご様子でしたがーー…」
(そう言いながら桐崎さんがゴン太を見て、表情を変えた。)
「ーーやっぱり、ゴン太先生が…?」
「え?」
「このメモを書いたのは、推定懲役348年の喧嘩屋みたいなゴン太先生です!カンサイ処刑課師匠を呼び出す感覚で高橋先生を呼び出したんです!」
「えっ?えっ!?ゴ、ゴン太、喧嘩屋さんなんてできないよ!喧嘩は売り物じゃないもの!」
「いや、喧嘩は売るもんであり買うもんである。」
「紳士は喧嘩なんてしないんだ!喧嘩なんてしたら、怪我しちゃうよ!相手が!」
「相手がなんかーいww」
「ぶふぉっ!!!」
「ふむ。桐崎君が言いたいのは、ゴン太君はメモの東西を間違えて書いてしまった。ゴン太君ならあり得る…といったところか。」
「だとしたら、高橋も待ち合わせの場所を間違えたことになるぞ。」
「高橋さんも間違えた可能性もなくはないでしょう。」
「東西を間違える…か。夜遅くて暗かったからとしてもあり得る…だろうか?」
「西の灯台は夜ライトが点いて、あり得ない。」
「ああ。灯台が灯ってりゃ、暗くてもどっちが西の灯台かくらいは分かるよな。東の灯台辺りは適当に歩いたら海に落ちそうなくらい暗かったし。」
「ライトなんてなくても、星を見れば方角は分かるわよ。」
「それは一般的じゃないんですよ。とにかく、どちらが東西か分からなかったら、どちらが光り輝いているかなんて覚えられないでしょう?」
「左右が分からないゴン太先生は東西も分からなくて…それで呼び出しのメモも訳が分からないまま書いて、最終的にワケ分からなくなっちゃったんですよ!」
「さすがに、ワケ分からなくなりすぎじゃないかな。ベイビー。」
「無計画な計画殺人だべ。」
「左右が分からないってギャグみたいだね~。」
「左右…か。ゴン太、あんたが書いてない根拠を教えてやれ。」
「えっ、えっ?ゴン太が書いてない根拠…あったかな。」
1.【獄原の利き手】
「ほら、やっぱり!ヤッちまったならヤッちまったと白状した方がいいですよ!英国紳士としてはね!!」
「ご、ごめん!!ゴン太は紳士を目指してはいるけど…英国紳士ではないんだ!」
△back
「そ、そうだ!ゴン太、お茶碗を持つ時いつも こっちの手で、お箸は こっちの手なんだ!」
「右手で持つ…と。なるほど。左利きということだね、ベイビー。」
「それも虫さんのアドバイス?」
「虫さが言ったからなんだべ?無視すろっちことけ?」
「……ゴン太君、いつも どちらの手で字を書くのかしら?」
「書く時も同じだよ。いつも こっちの手で書くんだ。」
(ゴン太が手を挙げると、星君が小さく笑った。)
「…獄原の利き手は左手だ。だが、このメモは右利きの人間が書いた跡があるだろ?」
「へー?ああ。右下側に擦れた跡があるね。これは確かに、右利きの人が書いたモンだわww」
「…獄原さんが敢えて右手を使ったのかもしれませんよ。」
「そんなはずありません!ゴン太先生は左右が分からないんですから!そんな調整もできないし犯人でもありません!」
「今の今までゴンちゃん疑ってたのにww」
「それはゴン太先生が左右が分からないという事実に基づいた推理です!メモが右手で書かれたものならゴン太先生が書いたセンは消えました!」
「獄原さんが本当に左右が分からないかなんて、わたくし達には知りようがありません。」
「えっ!嘘なんて吐かないよ!」
「フム。それが演技かどうかは我々に判断できないな。」
「ゴン太クンが嘘を言ってるようには見えないけど…この世には無邪気に嘘吐く残酷な小悪魔もいるからね。」
「だが、そのメモ。もう1つ、気になっていることがある。」
「……気になっていること?」
「差出人の名だ。ゴン太殿の苗字が書かれている。『獄原』と。」
「それが何だい?」
「あ!ゴン太は『獄』の漢字が書けねぇんじゃねぇか!?自己紹介の時に どんな字書くか聞いたら分かんねぇって言ってたし。」
「う、うん…。ごめん。」
「あ、謝らなくていいんですよ!これでメモは犯人による偽装と分かりました!」
「そうだねー。漢字って可愛くないしー。かわい〜ゴン太は書かないよー。」
「そんなことはない。ひらがなを可愛く感じるのは丸いからだろう。だが、丸いものが可愛いというのはーー…」
「そんなことは どうでもよろしい。漢字が書けないというのも、ハッタリかもしれません。」
「獄原クンは、確かに可愛らしいベイビーだけどね。左右が分からないとか、漢字が書けないとか、少し信じがたいかな。」
「ゴ、ゴン太は嘘は言ってないよ!なんなら拷問してくれたっていいよ!」
「そげな時間はねぇ。」
「時間があったらするんかーいww」
「全く…。話が進まねぇな。獄原。」
「え?」
「筆跡を確認すれば簡単だ。同じ文を書いてくんな。」
「あ、ボク、メモ帳とペン持ってますよ!」
(桐崎さんからペンとメモ帳を受け取って、高橋君が持っていたメモを見よう見まねで書いた。)
(漢字が難しい…。横、横、ななめ、縦、横、横……。できた!)
「ど…どうかな。」
「うーーん…。」
「とても似てる。」
「ああ、似てるべな。筆跡。」
「いやww見ながら真似して書いたら、そりゃ似るっしょwww」
「ハッ!!!そ、そうかぁ!しまったァ!」
「あ、でも、ゴン太先生は間違いなく左利きだということは分かりましたよね。」
「うーむ。両利きの可能性もあるからなぁ。」
「確かに。左利きの人間が矯正されることも多々ある。中世の騎士も右利きに矯正された。ちなみに、中世の螺旋階段が時計回りなのはーー…」
「…その話は今度にして。」
(みんながゴン太が書いた字とメモを見比べて困ってる。見ながら書いたから、字の書き方が似ちゃったんだ。)
(どうしよう。ゴン太のせいで…みんな困ってる…!)
「どこかに筆跡鑑定でもできる人がいればね。」
(ひっせきかんてい…虫さんが さっきから教えてくれている。)
▼筆跡鑑定ができそうな人は?
「虫さんが そう言っている。…とは、思えない。」
「虫さんだと思ったんだけど…違ったのかな。」
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「キミしかいない!ーーって、虫さんが言ってるよ!」
「おし!虫さんは何て言ってんだ?」
「適応能力 高スギーーww」
「うん。虫さんが、ひっせきかんてい?できる人を知ってるんだ。」
「筆跡鑑定?そんな才能の人はいませんが…。」
(みんながゴン太を見る中、ゴン太は隣に声を掛けた。)
「三途河さん。お願いできないかな?星座の角度や位置が正確に分かるって言ってたよね。それなら…同じように文字を見比べることもできるはず…」
「………。」
「ーーって、虫さんが言ってるんだけど…。」
「……。」
(ずっと彼女が小刻みに震えているのは知っていた。不安になっている女性を名指しして お願いするのは申し訳ない。でも、彼女に頼るるしかないんだ。)
「……。」
(黙ったまま震える肩を抑えた彼女は顔を上げーー…)
「ーーぶはっ!」
(吹き出した。)
「あーっはっはっはっは!もうダメ、ずーっと我慢してたけど、ダメ!緊張感ある空気とか笑いの沸点低くなるの!!」
「おい…何が おかしい?」
「だってっ!む、虫さんが言ってたよって!!ひひっ、筆跡鑑定、専門家もいないのにっ!ひー、あはっ、真似して書かせて…っ!あはははは!」
「おい!人が死んでんだぞ!?」
「ごめんなさいっ…!楽しいわけではないのよ!ただ、笑いが、止められない!!ぶあっはは!『もう高橋の真顔が見られない』ってところから我慢してたの!」
「…最初から。」
「三途河がいると、その場がパッと明るくなるねー!」
「かしましくなるの間違ぇだろ。」
「えっと…それで、三途河さん。筆跡鑑定…お願いできるかな?」
「いひひひっ!いひわよ!やって、みるっ!ぐひひひひっ。」
「レディにあるまじき笑顔だな。」
「お見せできないのが残念です!」
(それから、しばらく笑って、落ち着いたらしい三途河さんはゴン太の字とメモを見比べ始めた。)
(そして、顔を上げた。)
「ーーこれは…全然 違うわね。」
「本当かい?ベイビー。」
「ええ。ゴン太君…真似て書いてはいるけれど、典型的な左利きの人の書き方よ。対して、メモを送った人間は右利き特有の角度や特徴があるわね。」
「聞いたことがある。ローマ字だろうと漢字だろうと、文字は左部から書き始めるため左利きは動かしにくいと。」
「右利きと左利きは見え方も違う。包丁を使う時も同じ。」
「……断言できるわ。これは、ゴン太君の筆跡と異なる。」
「っても、シロウト鑑定だよね〜wwww」
「あはははっ!そうねっ!真面目な顔しちゃったわあはははは!」
「うぷぷぷぷ。アーハッハッハッハ!!」
「へーってくんでねぇ!」
「さてと…そろそろ話を進めてくれねーか?」
「ゴン太クンは高橋クンを呼び出していない…ということかな?」
「私みたいなシロウトの話をッ信じるならねえへへへへ!」
「三途河さんが嘘を吐く可能性は…。」
「仮に三途河が犯人だとしたら…獄原をシロだと言う理由がねーと思うがな。」
「そうね。プッ…私はシロだから、なおさら嘘吐く理由はないわプスプス。」
「信じてもいいってことか…?」
「筆跡鑑定についてシロウトってこと以外はね。」
「少なくとも、筆跡も違うし利き手も違うんです。ゴン太先生じゃないんですよ!」
「容疑が晴れたわけではない。獄原殿が両利きの可能性もある故、全員が等しく怪しい状態に戻ったわけだ。」
「いや、すまないね。ゴン太君。キミを犯人だと決めてかかってしまった。」
「ううん!気にしてないよ!」
「ゴン太、さすが〜!」
「さて…ここから、最速でクロを見つけるには…。三途河、あんたの その才能を信じることが必要かもしれねーな。」
「…ぷっ、あははは!全員分の筆跡鑑定でもする気!?」
「それは彼女の筆跡鑑定能力に全幅の信頼を置くということか?」
「それは危険。…なので、おすすめしない。」
「そっだねー。もはや賭けになってくるっつーかww」
「そんなことをしなくても、犯人を見つける手掛かりはあるはずです。」
「どんな手掛かりだべ?」
(一瞬、その場が静かになった。けれど、すぐにスッと手を挙げた河合さんが発言した。)
「諸君、昨日の夜から今朝にかけて、変わったことはなかったかな?」
ノンストップ議論3開始
「変わったこと…か。いや、いつも通りの平和な朝だったさ。」
「孤島に閉じ込められてなくて、タカちゃんの死体を発見しなければねww」
「うーん。いつもよりスッキリ目が覚めたよ!寝る前って、あれこれ余計なことばっか考えて寝るの遅くなるけど、昨日は それもなかったかなぁ。」
「……俺もだ。昨日は珍しいほど快眠だったよ。」
「睡眠薬でも盛られたのかしら?」
「あはははははははは!!」
「ち、違うかな。やっぱり…。」
△back
「それに賛成だよ!ーーって虫さんが言ってるよ!!」
「高橋君の近くには、青い小瓶が落ちていたんだ。あれは睡眠導入剤だって、虫さんが言ってるんだ。」
「青い小瓶…確かにあった。」
「その小瓶に、睡眠薬 入ってたのか?虫さんが そう言ってるのか?」
「ぶふっ…虫さんについて もう誰もツッコまない…。」
「ああ。睡眠薬らしき液体が瓶に入っていたな。青というより、藍色に近い色だった。」
「藍色の小瓶なら医務室にあったよね。高橋が睡眠薬だって言ってたよ。」
「開封後10分以内に飲まないと効力を失うとかいうやつだべな。」
「もはや使われなければ不自然なほど都合の良い眠剤ですね!」
「それで、ボクらは朝まで熟睡していたということだね。それを使って誰かが僕らを眠らせたということだね。」
「誰かというより、犯人濃厚。」
「だども、なじょして高橋さは灯台にいたんだ?高橋さは部屋で寝なかったんけ?」
「眠剤を飲んだのは全員だったのか…。獄原、あんたは どう思う?」
1. 全員が飲んだ
2. 高橋だけが飲んだ
3. 高橋以外全員が飲んだ
「虫さんとやらは、ちゃんと考えてくれているのかい?ベイビー?」
「ご、ごめん!ゴン太が聞き間違えただけなんだ!虫さんは たくさん考えてくれてるよ!」
△back
「高橋君は睡眠薬を飲んでいなかったんじゃないかな。」
「確かに…。夜空の観測会の時、彼はピンピンしていたよね。」
「つまり、犯人は高橋さにだけは睡眠薬を盛らねかったっちことか?」
「ミステリではターゲットに盛ること多いのに…逆転の発想ですね。」
「ねー、犯人も睡眠薬を飲んだのかな?犯人もグッスリ寝ちゃったら高橋のこと殺さなくない?」
「んなもん、犯人も飲まなかったはずだろ。高橋と自分以外の全員に盛りやがったんだ。」
「そして、ボクらに合わせて眠たい演技をしていたということだね。」
「…全員に薬を盛れるタイミングなんざ限られているな。」
「……夕食の時。」
「えー、じゃあクラちゃん怪しくね?だって、夕食 作ってくれたのってクラちゃんじゃん?」
「だば、配膳は みんなでしてただ。蔵田さが作るそばから配膳してたべ?蔵田さは変なことしてなかったっち思うだ。」
「確かにね〜。じゃ、あらかじめ材料に仕込んでたんじゃね?」
「え?でも、睡眠薬は10分以内に胃袋に入れるのが必須なんですよ?」
「みんながキッチンに入ったから…配膳の手伝いと見せかけて睡眠薬を混ぜたのかもしれないね。」
「全員が着席したのは、食器類も全て揃えてから。座る席は決まっていなかったから、高橋殿 狙いうちは不可能なりや。」
「じゃ、ハナちゃんじゃね?抹茶ラテ作ってくれたっしょ?」
「…わたくしではありません。蔵田さんに手伝っていただきましたから。」
「それぞれのカップに彼女がラテを淹れるのを見てた。ので、変なことはなかった。」
「蔵田君が見ていない内に、材料に睡眠薬を仕込んでいたという可能性もあるんじゃないかね?」
「もし材料に睡眠薬が混ざってた。…ら、全員 寝てしまう。被害者も。」
「食事と同じく、皆さん無作為に お持ちになりましたからラテの中というのもあり得ません。」
「じゃ、高橋さ以外の全員に睡眠薬 盛るなんてできねーべ。」
「好き嫌いを知ってた…とかなら可能でしょうけど。ボク達、まだ そんなに付き合い長くないですもんね。」
「そうね。そんなこと知ってった、ら…怖いわ…プス。」
「たまたま高橋クンが睡眠薬が効きにくかったなども考えられないかい?」
「いや、タカちゃん何者ってハナシ〜ww」
「あ、じゃあさ。たまたま高橋だった…ってのは、どうだ?」
「…つまり、誰でもよかった?」
「なるほど…自分と もう1人分に睡眠薬を仕込まないようにして、結果的に眠らなかった高橋君をターゲットにした。それは考えられるな。」
「でもさ、でもさ、例えば体のおっきーいゴン太がハズレで眠らなくても、犯人はゴン太を殺そうとしたのかな?」
「睡眠薬入りをアタリみてぇに言うな。」
「えー、だって…犯人だって、殺しやすい方が殺しやすいでしょ?」
「すごい頭悪そうな言い方ですが…確かに。」
「ターゲットが身体的・体力的に自分より上の場合、困るであろう。」
「身体的に誰と当たっても勝てる自信があったとか?」
(……?野伏君、ゴン太を見てる?)
「そういうところからの推察も必要かもしれねーが…事実から考えた方が早いんじゃないか?」
「はーいww」
「皆さん。もう答えは出ているでしょう。」
「どういうことだい?」
「睡眠薬の瓶は死体近くにあったんですよ。睡眠薬を使った人は他に考えられません。」
(そう言って、華椿さんもゴン太を見た。)
(華椿さん…何が言いたいんだろう…。虫さんは分かるかな。)
▼睡眠薬を使ったのは?
「虫に責任転嫁するのは おやめなさい!巨大ミミズの檻に放り込みますよ!」
「え!?あ、ありがとう!!」
「喜ばないでください!」
△back
「彼しかいない!ーーって虫さんが言ってるよ!」
「華椿さんは…高橋君 本人が、睡眠薬を飲んだって言いたいんだよね。」
「…ええ。食事で全員が集まるとはいえ、誰に配膳されるか分からない中、高橋さん1人を避けて睡眠薬を盛ることは不可能です。」
「誰か1人に毒を盛るのは不可能〜の逆みたいだね〜。」
「盛ることも避けることも同じです。この状況で睡眠薬を避けられるのは、高橋さん本人だけでしょう。」
「高橋さんは配膳するフリをして特定の料理に睡眠薬を仕込んだんです。」
「確かに…睡眠薬を混ぜたものを食べなきゃいい話ですからね。」
「わたくし達が口にした何かに睡眠薬を仕込んでいたのは高橋さん。そういうことになります。」
「しかし…何故?被害者が我々を眠らせる理由があろうか。」
「いや…ないよね。被害者がボクらを巻き込んで無理心中しようとしない限り。」
「は?俺らを巻き込んで無理心中?」
「あー、オレらに間違った犯人指摘させて、みんなゲームオーバー。実は犯人は被害者でした〜的な?」
「迷惑すぎんべ。無理心中じゃなくて森三中くらいにしといてほしいべ。」
「ふぐぅっ!」
「いやいや、高橋が無理心中する理由なんてねぇだろ。」
「絶望しちゃったのかなー。こんな絶海の孤島で。テレビもねぇラジオもねぇ!って。」
「…そんなっ!ゴン太が もっと話を聞いておけば…!」
「獄原…いちいちモノクマの言うこと間に受けてたら、もたねーぞ。」
「何にせよだ。被害者以外、睡眠薬で寝ていたとすると…やはり、被害者自身を殺害できるのも被害者ということになる。」
(みんなが驚いた顔で押し黙る。静かな中、ゴン太は前の席に立つ星君が息を吸った音を聞いた。)
学級裁判 中断