Round. 1 ひた走る負の走光性 非日常編
『死体が発見されました!』
【東エリア 灯台】
(そんなアナウンスが流れたのは、朝になって みんなで彼を探してた時だった。)
(一昨日 見つけた死体の代わりに、傷だらけの彼が そこにいた。)
(目を閉じて、全く動かない彼は、既に冷たかった。)
(隣にいた河合さんが、静かに彼を呼んだ。)
「高橋…君。」
(ーーそうだ。高橋君が亡くなった…。)
(昨日まで、ずっと一緒にいたのに。話していたのに。笑っていたのに。)
(どうして彼が?)
(……分からない。ゴン太には。いつもゴン太は何も分からなくてーー…)
「はいはい!辛気臭い顔しない!」
(いつの間にか現れたモノクマがモノクマファイルというものを配り始めた。)
「これは そういうゲームなんだから!死んで当然!ジャンジャン死んでください!」
「ーーとか言われると、色々 勘ぐっちゃうよね?蘇るから大丈夫って言われながらも、クローンか何かか?とか思っちゃうよねー!」
「それにしても、可愛い幼馴染みが自分ん家で朝ごはん食べてるっていうのが”平凡な毎日”とか宣う系主人公って どう思うー?」
「ぶっキル!って人は正直に挙手!!」
「一体全体、何の話だ。」
「と、まあ、新作ゲームの話は置いといて、愛も青春もない正真正銘の平凡クンが被害者です!さっさと捜査を始めてください!」
「ゲームって…何 言ってんだよ。」
「んだ。どうせ、オメが高橋さを殺したんだべ?」
「だーかーらー、モノクマは殺人に関与しません!!」
「なら、あの死体は?ここにあった黒焦げの死体…それに、西の灯台にある死体。」
「だーかーらー!それもボクじゃないの!この島にいる誰かがやったんだって!」
「だ、誰かって?」
「ハイハイ!オマエラは、今 目の前の死体に集中すべきです!」
「そうだな…。高橋が…死んじまったんだから…。」
「やっぱ身近な仲間が死ぬとシンミリ倍増だねー。」
「……うん。ショックだよ。高橋の、あの かわい〜真顔…もう見られないんだね。」
「死んだ魚の目も…。」
「そう、ね……。あの何かを諦めた虚無の瞳も…もう見られないわ。」
「とにかく…モノクマファイルを確認すべしだ。皆の者。」
(イーストック君に言われて、さっきモノクマに配られたものを見る。そこには、高橋君の死体が写っていた。)
(被害者は、高橋 実。死体発見現場は、東エリア灯台前。死亡推定時刻は午後11時から午前0時頃。全身に打撲痕があるが、死因は不明。)
「死因は不明…?」
「そうそう。被害者の死因は現在調査中でーす。こちらで分かるのは数時間後とか明日とか明後日とかでーす。」
「……死因も俺たちで探る必要があるみてーだな。」
コトダマゲット!【モノクマファイル】
「では、捜査を始めてください。クロを見つけられなければ…分かってるよね?それじゃ、頑張って!」
(モノクマが変な音と一緒にいなくなった。)
「で?とりま捜査的なのをすればいんだよね?」
「念の為、2人以上で捜査しようか。」
「でも…この中に犯人がいる…んですよね?」
「モノクマが言うには。」
「その犯人と一緒にいる人…危なくないですか?『そうか!みんなに知らせなきゃ!』で殺されるフラグじゃ?」
「……犯人だって見つかりたくないはずよ。口封じなんてした時点で自白しているようなものなんだから。」
「…そう…ですよね。」
(不安そうにする桐崎さんに三途河さんが笑いかける。そして、みんな2人3人で捜査を始めた。)
「……。」
「獄原。」
(動かないでいるゴン太に、星君が声を掛けてくれた。)
「辛いのは分かるが、落ち込むのは後にしな。全員の命が懸かってる。」
「…そうだね。星君、ゴン太と一緒に捜査してくれる?ゴン太は…あまり役に立たないかもしれないけど。」
(ゴン太が お願いすると、星君は小さく頷いてくれた。)
(ーー高橋君が死んでしまった。その犯人が ゴン太たちの中にいるなんて信じられないけど…。)
(ゴン太にできるだけのことはしよう。)
(高橋君に近付いた。高橋君の目は閉じられていて、開くことはない。)
「血が出た痕跡がないね。」
「ああ。全身に小さな傷はあるが…。死因は これなのかな?」
(高橋君の近くにいた平君と河合さんが話し掛けてきた。少し離れたところに蔵田さんもいる。)
「さっき配られたモノクマファイルとやらによると死因は不明だったね。この打撃痕が死因の可能性もある。」
「…いや、それはどうかな。」
(星君が静かに言った。)
「確かに高橋には無数の傷跡があるが…これが致命傷になったとは思えねーな。」
「高橋君は撲殺じゃないということかい?」
「そこまでは言えねーが…少なくとも、この打撃痕が死因ってことはないと思うぜ。」
(星君…すごいなぁ。ーーでも、どうして そんなことが分かるんだろう。)
コトダマゲット!【死体の状態】
「高橋の荷物も確認しておいた方がよさそうだな。」
(そう言って、星君は高橋君の懐を探る。)
「……何だ こりゃ。」
(星君が高橋君の制服ポケットから取り出したのは、小さい紙だった。)
「……獄原。覚えはあるか?」
(星君がゴン太に紙を見せてくれた。)
「えっと…。たい…へんなことに…き、きづいたんだ…ごぜん0じ…にしの……あ!とうだいかな?」
「『大変なことに気付いたんだ。午前0時に西の灯台で待ってるね。獄原』最後に あんたの名前があるようだが。」
「え、ゴン太が!?書いた覚えがないよ!」
「……いくつかの文字が右下に擦れてるな。」
「えーと、うん。ペンが乾いてないうちに擦れちゃった跡だね。」
「獄原…あんたの利き手は右手か?」
「利き手?えっと…?」
「食堂で見かけたが…あんたは左手で箸を使うんじゃねーのか?」
「あ…うん。いつも、こっちの手で お箸を持つよ。」
(ゴン太が言うと、星君はメモを見ながら黙ってしまった。)
「星君、本当なんだよ。ゴン太は このメモを知らないんだ。」
「……そうらしいな。」
「えっ。」
「安心しな。俺は信じるぜ。…あんたがメモを書いていないってことはな。」
「あ、ありがとう!!」
コトダマゲット!【高橋のメモ】【獄原の利き手】
△back
「……。」
(高橋君から少し離れた所にいた蔵田さんが、じっと地面を見ている。)
「蔵田さん、何か見つかった?」
「……これ。」
(蔵田さんが指差した地面には、青っぽい色の小瓶と花があった。)
「それは…?高橋君の持ち物かい?」
「……いや、この花は生花じゃなくて飾りだね。どこかで見たことがある。校舎か宿舎の建物にあったものかもしれないね。」
「どうして そんなものが…?」
「被害者が持っていたのかも…。」
「高橋君が…?な、何でだろう。」
「犯人が高橋の持ち物と見せかけた可能性もあるな。」
コトダマゲット!【死体近くの花飾り】
「この小瓶の中…少量 液体が残っているね。」
「…中身を確認してみる。」
「…ペロ。これは、セーサンカリ!」
(蔵田さんがフタを開けた瞬間、どこからともなくモノクマが出てきた。蔵田さんから瓶を取り上げて舐めるフリをしている。)
「青酸カリ?…は、本当?」
「まさか!でも、難易度調整のため、申し上げられまって〜ん!これまでのことがヒントだから自分たちで考えてね!」
「舐めたら分かる。…から、返して。」
「そうそう!”超高校級”の舌があるから、なおさら返せまて〜ん!」
(そう言ったモノクマは小瓶ごと消えた。)
「持っていっちゃった…。」
「…仕方ない。他の手掛かりを探そう。」
コトダマゲット!【死体近くの小瓶】
△back
「ーー本当に…ボク達の中に犯人がいるのかな。」
(高橋君と周囲を見終わった時、平君が小さく呟いた。)
「ゴン太も…信じられないよ。」
「いや、ボクが信じられないのは…犯人の決断が早すぎることさ。」
「え?」
「……。」
「決断とは…どういうことだい?」
「……高校生が殺人を犯すのに、こんなに早く覚悟を決められるかな?おかしくないかい?もともと殺人鬼だったとかなら ともかく。」
「…フッ。そうかもな。」
(平君を見て星君が小さく言った。)
「さて、ベイビー達。現場は だいたい調べられたんじゃないかな?」
「……うん。」
「では、移動しようか。ゴン太君、星君、また後で会おう。」
(河合さん達は歩いて行くのを見送っていると、星君が灯台を見上げて言った。)
「……誰かが灯台の上にいるらしいな。行ってみるか?」
(ゴン太が頷くと、星君は灯台外側のハシゴを登っていった。)
【東の灯台 屋上】
「あ!ゴン太先生に星先生!世界一の凸凹コンビですね。」
「……。」
「あんた達だったのか。」
(灯台を登った先にいたのは三途河さんと桐崎さんだった。)
(灯台の上は灯りの周りをグルリと狭い通路が囲う形で、意外にも灯台の灯りは握り拳大の小さなものだった。)
「高橋先生の身体には一見して無数の傷跡がありましたから。高い所から落ちたんじゃないかと思いまして。」
「な、なるほど…。」
「……だが、こっちの灯台は、夜 灯りがなかったはずだ。暗闇の中、高橋は どうして灯台に登ったんだ?」
「う…。そ、それは…考えてもみませんでした。」
「確かに昨日の夜、私たちが見た時はこの灯台は暗かったわ。けれど、そこから灯りが灯った可能性もあるかもしれないわ。」
「いや、ないよ。」
「うぉわ!?モノクマ!」
(狭い通路内に、どこからともなくモノクマが現れた。)
「上は真っ暗、下も真っ暗、なーんだ!それは、この灯台なのさ!」
「ここの灯りは絶対つかねえ。そういうことか?」
「そうそう。光があると虫がワラワラ寄ってくるからね。」
「えっ、虫さん?」
「そうそう。灯台の光が好き、甘いものが大好きな虫が集まりすぎると灯台ついててもついてなくても同じになっちゃうのさ。」
「あ、前に会った虫さんだね。」
「……前に会った?」
「うん。ここに初めて来た時、甘いものが好きすぎる虫さんに会ったんだ。群れから逸れちゃったらしくて。」
「その虫さんは、3000匹くらいの家族と一緒に押しくらまんじゅうするのが好きだったんだけど、迷子になって困ってて…。」
「………。」
「ゴ、ゴン太先生…その辺で。三途河先生が震え出しました。ボクも想像して鳥肌です。」
「え?寒いの?大丈夫?」
「そんな迷える小虫と大男のために、わざわざボクがゴン太君に教えてやったんだよ。虫の巣を。ちなみに その虫は昨日も5000の群勢と押しつ押されつしていたよ。」
「……増えたわね。」
「や、やめてください!何ですか、ガッツイシマッ虫ですか!!」
(よかった。あの虫さんは家族に会えたんだ。きっと今ごろ、5000に増えた家族と一緒に眠ってるんだろうな。)
(そんなことを考えていると、星君たちが何とも言えない顔でゴン太を見ていることに気が付いた。)
「みんな、急に顔色が悪いけど…どうかしたの?大丈夫?」
(ゴン太が言うと、星君はため息を吐きながら「何でもない」と言った。)
(少し元気がない桐崎さんと震える三途河さんを残して、ゴン太と星君は灯台のハシゴを降りた。)
(地面に下りると、高橋君の周りには誰もいなかった。物のようにポツンと高橋君が置いてある。本当に彼が死んでしまったんだと実感した。)
「…何だ?さっきは こんなもん、なかったはずだが。」
(そんな高橋君に近付いて、星君が彼の足の上に置かれたものを指差した。)
「これ…モノクマからもらったモノパッドだね。」
「ああ。俺たちが持っているものと同じだな。持ち主は…」
(星君がモノパッドを確認して、顔を上げた。)
「ーー高橋だ。このモノパッドは高橋のものらしい。」
(さっきまではなかったのに…どうして、いきなり現れたんだろう?)
コトダマゲット!【高橋のモノパッド】
「現場は だいたい調べられたな。」
「う、うん。これから どうしようか?」
「……そうだな。もう少し この辺りを見ておくべきだと思うぜ。」
(そう言って、星君は海岸に向かって歩き出した。)
【東エリア 海岸】
(森を歩いて行くと、海の匂いと音が強くなってきた。と、思ったら、目の前は崖。その下に海が広がっていた。)
「気を付けな。柵も何もねーからな。落ちたら ひとたまりもねーぞ。」
「う、うん。」
(木が たくさんの場所を抜けたらすぐ崖だった。高さは25mくらいありそうだから、ここから海に飛び込むのはゴン太でも無理だろう。)
「そうそう。みんなの海だよ。海にゴミを捨てたりしてはいけません。」
「モノクマ…。」
「…ゴミを捨てちゃなんねーって校則はなかったはずだが?」
「そうだね。だから処刑したりはしないよ。ボクはオマエラに心構えを伝えにきたんだ。海はみんなのもの。ゴミは持ち帰りましょう!」
「海に何か捨てた人間がいるのか?」
「そうそう。結構 頻繁にゴミを捨てられてるから困ってるんだよ。まあ、独自の不法投棄防止システムがあるから、海の美しさは保ててるけどね。」
「不法投棄防止システム?」
(星君がモノクマに問いかけるけれど、モノクマは「うぷぷ」と言いながらいなくなった。)
「獄原殿。星殿。」
(あっけに取られてると、木々の間からイーストック君と野伏君が現れた。)
「キミらも来てたんだwwゴンちゃん気を付けてよ?こっから落ちて死んだヤツは5万人にも上るらしいから!」
「ええ!?た、大変だ!そんなに危ないなら柵を作らなきゃ!!」
「獄原殿。嘘偽りである。」
「wwww」
(よく分からないけど野伏君は楽しそうだ。星君も野伏君の楽しげな顔とイーストック君の普通の顔を見上げた。)
「何か見つかったか?」
「んーにゃ?何も。足跡くらい?」
「足跡?」
「ほら、そこに。男性のものと思しき革靴の足跡なり。」
(そう言って、イーストック君は木が少ない離れた地面を指差した。)
「高橋君の…かな?」
「この島に潜む殺人鬼のかもしんないねww」
「……。」
「冗談冗談!ホシちゃん、そんなカッコいい顔で睨まないで⭐︎」
「足の大きさと靴から見て、高橋殿のものと思われる。」
「……足跡があったってことは、昨夜は雨でも降ってたのか?」
「モノクマによると、11時半頃から3時頃まで降っていたそうだ。」
「寄宿舎から校舎までの道は舗装されてるから、そんなんなかったけどね〜。」
「11時半…昨日 俺たちが解散してから1時間半だな。」
「高橋君は宿舎から出て…この近くにいたってことだよね?」
「フッ、そうらしいな…。」
コトダマゲット!【東エリアの足跡】
「さて…西側の灯台も見ておくかな。」
「え?」
「高橋が持っていたメモには『西の灯台に来い』とあったんだぜ?西も調べとかなけりゃな。」
「そ、そっか!」
(足早に歩く星君の後ろ姿を追った。)
【西の灯台】
(西の灯台付近には虫さんが たくさんいた。)
「…この臭いで集まってきたみたいだよ。」
「…灯台内の死体のせいだな。」
(この灯台の中には、女性の死体があった。高橋君とゴン太が見つけた死体。高橋君たちの話だと内臓が取り除かれているらしい。)
「…どうする?」
「え?」
「灯台の中を調べるのは、あんたにとって辛くねーか?」
「……。」
「中を調べるのは俺だけでも構わねーが…どうする?」
「……ゴン太も調べるよ。」
「そうかい。」
(星君は言いながら帽子を押さえて俯いた。)
(ゴン太を心配してくれたのかもしれない。ゴン太が調べたところで何かが変わるとは思えないけど…せめて、きちんと調べなきゃ。)
「よ、ゴン太、星。」
「貴方様方も…いらっしゃったんですね。」
(中には鼻を押さえた火野君とモノパッドで辺りを照らす華椿さんがいた。)
「凄ェ臭いだよな…。この死体の弔いもできねェなんてよ。」
(火野君は悔しそうな顔で手を握り締めている。)
「あんた…随分 今日は冷静なんだな?」
「ヱ?」
「一昨日、東の灯台で死体を見つけた時は真っ青でしたよね。」
「…そうだったか?」
「ゴン太も気持ちは分かるよ。高橋君のことも、他の2人も…とても辛いことだから…。」
「いや、俺が言いたいのはーー…」
「そりゃ、あの時 初めて死体を見たんだから青くもなんだろ!ッつーか、俺の顔色なんて どうだっていいだろ?捜査しようぜ!!」
(火野君は大きな声で言って、辺りを見回した。)
「そこの蝋燭台、ちっちェろうそく残ってんじゃん。これが灯りになんじゃねーか?」
「……。」
「……妙だな。」
「え?妙って?」
「覚えてねーか?昨日 俺たちが調べた時、ろうそくなんざなかったはずだ。」
「ご、ごめん…!ゴン太は覚えてないや。でも、ろうそくは宿舎の倉庫にあったものだと思うよ。」
「フッ…。事件前後でろうそくに光が灯されたってわけだ。」
「じゃ、事件に関係あるかもな!」
「…その形と長さですと、一晩中火がつけられていたようですね。」
コトダマゲット!【西の灯台のろうそく】
△back
(周辺も見ておこうという星君の提案により、灯台の近くを見てまわる。でもーー…)
「何もないや…。星君は どう?」
「いや…何もねーな。だが、何もないことこそ おかしいとは思わねーか?」
「え?」
「高橋は西の灯台…こっち側に呼び出されていた。だが…こっち側を高橋が歩いた痕跡がねえ。向こうにはあった痕跡がな。」
「えーっと…あ!足跡のこと?」
「フッ…分かってんじゃねーか。」
(星君は意味ありげな顔をして、灯台を見上げた。)
「獄原、こっちにも登っておくぞ。」
【西の灯台 屋上】
(こっちの灯台も、あっち側と何も変わらなかった。拳大の小さい灯りを囲むような狭い通路があるだけ。けれど、違うところはーー…)
「虫さんが たくさんいるね。」
「…死体のせいか?」
(たくさんの虫さんが楽しげに蠢いていた。)
「獄原、こいつらが何で こんな所にいるのか分かるか?」
「うん。えーと…『こっちの水は甘いぞ』って言ってるよ。」
「……そうか。」
「何か分かったの?」
「……あんた。自分で考えた方がいいんじゃないのか?」
「でも、ゴン太はーー…」
「それより、獄原。あんた、ずいぶん目が良さそうだが…ここから地上が見えるか?」
「え?う、うん。見えるよ。」
「ここから見える範囲に足跡は見えるか?雨でぬかるんだ後に残ったような足跡だ。」
「えっと…木で隠れてるところは分からないけど…見えるところにはない…かな。」
「…なるほどな。」
コトダマゲット!【西エリアの足跡】
△back
「こっちも だいたい見たな。」
「うん…。犯人…分かりそう?」
「…さあな。一応、寄宿舎も見ておくか。」
(星君が足早に宿舎に向かうのを追いかけた。)
【寄宿舎 廊下】
(宿舎に入ると、廊下の向こうに虎林さんと伊豆野さんが見えた。)
「ゴン太ー!星ー!」
「オメたつも ここ調べんのけ?」
「ああ。何か見落としがあっちゃなんねーからな。」
「んー、でも、ここはハズレっぽいよー。保健室も倉庫も事件前と様子が変わってる感じないし。」
「んだな。キッチンや食堂にも何もねぇ。テレビもねぇ。ラジオもねぇ。」
「高橋君の部屋は どうかな?」
「それが、開かないんだよね。あたしのローリングサンダートラベルゴルゴスマッシュでもドア壊さなくって。」
「むしろ良かったべ。器物破損は処刑されるべ。」
「モノクマに頼んだけど開けてくんないの。ケチだよね。」
「モノクマが出てきたのか?」
「んだ。『故人の部屋は見せられません』とかなんとか抜かしてただ。」
「それでケチんぼ!って怒ってたの。あれ?そういえば、ケチんぼって最近 聞かないよね。少なくなったからかな?やっぱり一応家庭の生活水準が上がってーー…」
「……とりあえず ひと通り見て回るぞ。」
(虎林さんが話し出すのを聞いて、星君は倉庫の方に歩いて行く。ゴン太も慌てて ついていった。)
(それから、日用品や園芸用品、運動器具、蛍光塗料に南京玉すだれにチェス盤、ドローンまである倉庫や薬が並ぶ医務室。)
(それからゴン太たちの個室の前を探したけれど、特に手掛かりは見つからなかった。)
『時間になりました!オマエラ、南エリアの校舎の玄関に集まってください!開かなかった赤い扉の前集合だよ!』
(そんな中、モノクマの声が島中のモニターから聞こえてきた。)
「時間らしいな。」
「うん…。ゴン太…あまり役に立てなくて…。」
「…それは、これからの学級裁判で決まるんじゃねーのか?」
「でも…ゴン太は…」
(「バ」と言いかけた時、星君が鋭い目でゴン太を見た。)
「おっと、その言葉は高橋に止められてなかったか?」
「え?」
「昨日の夜、聞こえてきたのさ。あんたに高橋が言ってたことをな。」
「……あ。」
「その口グセは止めた方がいいんじゃないかな。」
「え?」
「だって、キミは昆虫学者なんだよね?学者といえるレベルで勉強してきたんだよね。」
「ゴン太は…ただ新種の虫さんを見つけただけだよ。」
「新種発見には、少なくとも既存の虫を全て知ってる必要があるよ。それは途方もない努力の結果の功績だ。そんな努力ができる人間は…バカじゃない。」
「”超高校級”を与えられた人間がバカだなんて…そんなはずないんだよ。」
「高橋君…。」
「キミには才能がある。自分はバカだって決めつけて考えるのを止めたらダメだよ。きっと、ゴン太くんにしか気付けない発見があるんだから。」
「考え抜くこと…これも紳士の嗜みってやつじゃないのかな。」
「…そうだね。ゴン太は自分のことを決めつけて…。ありがとう!星君!ゴン太、頑張るよ!」
(ゴン太が星君に言うと、星君は「そうか」と言って少し笑った。)
【北エリア 校舎玄関】
(アナウンス通り校舎の玄関に来た。ゴン太たちが来てから数分で全員が集まった。)
(みんなが集まったのを待っていたように、玄関にあった開かない赤い扉が開いた。)
(その中にエレベーターホールがあり、ゴン太たちはエレベーターに乗り込んだ。)
(この島で2人が亡くなっていた。そして、高橋君も死んでしまった。)
(この中に高橋君を殺した犯人がいる。そんなの…信じられないけど。)
(犯人を見つけないと、みんな死んじゃうんだ。)
(高橋君…ゴン太も、ちゃんと考えるよ。生き残るために。)
(この…命懸けの学級裁判で。)
コトダマリスト
被害者は、高橋 実。死体発見現場は、東エリア灯台前。死亡推定時刻は午後11時から午前0時頃。全身に打撲痕があるが、死因は不明。
無数に打ち付けたような傷があるが、致命傷になるものは見当たらない。
高橋が持っていたメモ。『大変なことに気付いたんだ。午前0時に西の灯台で待ってるね。獄原』と書かれている。右下に掠れた跡がある。
画面が割れている。死体発見時はなかったが、捜査時間に獄原と星が灯台頂上へ登っている間に死体近くに置かれていた。
高橋の近くに落ちていた青っぽい色の小瓶。中に少量 液体が残っている。
高橋の近くに落ちていた花飾り。青っぽい色で、どこかで見たことがある。
東エリアの舗装されていない道に高橋のものと思しき足跡が発見された。モノクマによると11時半頃から3時頃まで雨が降っていたため、足跡が残ったと思われる。
西の灯台内で発見された、寄宿舎の建物内の倉庫にあった ろうそく。一晩 使われた痕跡がある。昨日の調査時にはなかった。
西エリアの舗装されていない道には人の足跡と思われるものはない。
獄原は左利きである。
学級裁判編に続く
続き更新されてる!嬉しい!!…え?主人公オーラ纏ってた高橋くん……?と感情がジェットコースターで楽しかったです!
ゴン太捜査も推理も苦手そうだけど高橋くん無しでいけるのか?と思ってたら星くんナイスアシスト…!しっかり論破の非日常編になってて読んでて楽しかったです。
次回の裁判パートもゆっくりのんびりお待ちしてますので、負担にならない程度に更新してくださると嬉しいです♪
ご来乗ありがとうございます書きにくそうな人で書いてみたいと思ってゴン太主人公にしましたが、おっしゃる通り捜査も推理もできるのか?状態で書くのが難航しております笑 マイペース更新ですが、コメント頂けて励みになります!本当にありがとうございました◎
PS.HN笑いました笑