第一章 絶望ポケット 学級裁判編Ⅰ

創作
 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル】
被害者は”超高校級のコスプレイヤー”白銀 つむぎ。死体発見現場は小学校3階にある図書室。死亡推定時刻は午前10時〜11時頃。死因は後頭部の外傷。頭蓋骨の陥没骨折により即死。死亡後、ナイフによって全身を激しく損傷。
【死体の損傷】
死体はナイフにより激しく損傷を受けている。特に顔は判別が付かないほどに損傷が激しい。
【ボーリングの球】
致命傷となった後頭部への一撃に使われた凶器。プロ用のもので7kg以上ある。2日目に封鎖された体育倉庫から運ばれたと思われる。
【アーミーナイフ】
死体を激しく損傷させた小型ナイフ。刃の部分全体に血が付着している。
【死体を包むシーツ】
死体を包んでいたシーツ。血で染まり、ナイフの穴が無数に空いている。
【手の汚れ】
白銀の手は血ではない液体とホコリで汚れていた。潰れた”何か”を握っていた。
【佐藤の証言】
佐藤は朝から小学校校門前にいた。朝からアナウンスまでに小学校を出入りしたのは天海のみ。アナウンス時に小学校にいたのは、天海、哀染、永本、第一発見者の松井、夕神音、アイコと考えられる。アナウンスの外から中に入ったのは、その他の9人。
【共犯の可能性】
モノクマの示した動機により、事件のクロの他に共犯者がいた可能性がある。
【永本のヘッドホン】
ノイズキャンセラー付きのヘッドホン。耳に つけていると外界の音がほぼ聞こえなくなる。
【給食のシステム】
食品ロスを考慮して毎食前にその時 使う分ピッタリの材料だけ仕入れ、残り物が出ないようになっている。地球に優しいが食欲旺盛な高校生の腹に優しくない。
【中庭の様子】
焼却炉で何かを燃やした跡がある。その他は一昨日と変わりはない。中庭を取り囲む外壁に穴が空いている箇所がある。
 

 

学級裁判 開廷

 

「ではでは、最初に学級裁判の簡単なルールを説明しておきましょう!オマエラの中には殺人を犯したクロがいます。 」

 

「この学級裁判では”誰が犯人か”を議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます。 」

 

「正しいクロを指摘できれば、クロだけが おしおき。もし間違った人物をクロとしてしまった場合は……」

 

「クロ以外の全員おしおきされ、クロは晴れて卒業できます!」

 

「それでは張り切って~…クレイジーマックスな学級裁判の開廷です!!」

 

(モノクマが楽しげに笑う。俺の左隣には、悪趣味な白銀さんの白黒写真が飾られている。)

 

(みんな裁判場の異様な雰囲気に呑まれて、言葉を失っているようだった。俺は、全員の顔を見回して言った。)

 

「とにかく…まずは事件の整理から始めましょうか。」

 

「そう…ですね。事件について、改めて共有しておきましょう。」

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「被害者は、白銀 つむぎ。”超高校級のコスプレイヤー”。死亡推定時刻は、今朝10時から11時の間。」

 

「…アナウンスがあったのは、11時すぎ…。」

 

「私と松井君、アイコさんで図書室に行った時…発見したのよねぇ。」

 

「みんな、バラバラで探索してた時だよね。」

 

「ああ。この中にデカメガネを滅多刺しにして殺したヤローがいるんだよな。さっさと出てきやがれ!!」

 

【モノクマファイル】→11時すぎ

【モノクマファイル】→滅多刺しにして殺した

【アーミーナイフ】→滅多刺しにして殺した

 

 

 

「あ?テメー、ふざけてんのか?メガネ女は殺されてんだぞ?マジメに考えやがれ。」

 

(しまった。違ったみたいだ。)

 

 

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「それは違うっす。」

 

「ああ?」

 

「白銀さんの死因は、現場に落ちていたボーリングの球っす。」

 

「撲殺された後、斬り刻まれたということだね。」

 

「ひどいわねぇ。一体 誰が…。」

 

「でもさ、さすがに死んじゃってても斬り刻んだりしたら血が飛ぶよね。血が付いてた人なんていなかったよ?」

 

「…本当に、この中に犯人がいるんですか?モノクマが犯人なのでは…。」

 

「校則にもあったでしょー!ボクは殺人に関与しません!!」

 

(犯行後、着替えに戻る時間は少ないし、状況的に難しい。)

 

(犯人は返り血を防ぐために“あるもの”を使ったんだ。犯人が使ったものはーー…)

 

1.【死体を包むシーツ】

2.【ボーリングの球】

3.【永本のヘッドホン】

 

 

 

「純粋な疑問なんだけどさ、それで どうやって返り血を防ぐの?」

 

(しまった。違ったか…。)

 

 

back

 

 

 

 

「現場にあったシーツっす。」

 

「ああ…。白銀に掛けられてたヤツか。」

 

「犯人は随分と用意周到なようだね。」

 

「ボールにナイフにシーツ。その他、たくさん凶器の山。」

 

「校内だけじゃなく、町中に凶器が隠されていたよね…。」

 

「クソッ…!せっかく体育倉庫を封鎖したってのによ。誰だよ…!誰がやったんだ。」

 

「それを正直に話す犯人はいないよ。」

 

「凶器を隠した人が分かれば、犯人も分かるかな?」

 

「いるかな、いるかな?凶器を隠した人の目撃者?」

 

「昼間は人目もありましたし…難しいのではないでしょうか。」

 

「犯人は、夜 凶器を移動させたってことですね!?」

 

「夜 凶器を移動させた…そんな用意周到な犯人を見つけられるのか…?」

 

「…全員の今日の動きを確認しておいた方がいいっすね。」

 

「そうですね。みなさん、今日は どちらにいましたか?」

 

「俺は朝食後、町の西エリアを探索してたっす。その後、1度 小学校に戻って調理室を調べました。」

 

「オレは1人で町を見てた。」

 

「私は、ローズさんと町の東エリアを調査していました。」

 

「ヤマトナデシコの言うトオリ。」

 

「あたし、こーたと2人だったよ。ね、こーた。」

 

「ハヒィ…!自分は!祝里先パイと!!一緒でした!!!」

 

「あたしは、町を見てたよ。町に出て すぐ、芥子お兄ちゃんと会って、その時 蘭太郎お兄ちゃんにも会ったよね。」

 

「そうそう!ボクも1人で行動さ!途中 妹尾さんと会ったのさ。」

 

「僕は、夕神音さんと学校内を探索していたね。3階を調べていた時、血の匂いがして図書室へ行ったのだよ。」

 

「そうねぇ。松井君と一緒にいたわ。途中でアイコさんに会って、一緒に図書室に入ったの。」

 

「んだ。オラ、最初1人で校門近くの中庭いただ。そん後、校舎 入っで、夕神音さ達と合流しただよ。」

 

「ぼ、僕は、朝食後から…ずっと校門前にいたよ…。」

 

「私は…1人で東エリアを見てた。」

 

「オレも1人だったな。小学校校内を見てた。」

 

「…ぼくも、小学校の校内を調べてたよ。」

 

「小学校 調べてたのは、アイコ、けい、レイ、れーのすけ、みく。その内 2人行動は…れーのすけと、みく。」

 

「校門に、ここみ。町歩きで2人行動は…あたし、こーた。あと、なでしこ、ローズ。他は、ボッチだね。」

 

「おい!誰の話してやがんだテメーは!?会ったばっかのヤツの下の名前ペラペラ言われても分かんねーっつの!」

 

「うぷぷ。他の人も、きっと そう思ってるよねー。何なら上の名前も怪しいはずだよ。」

 

「だから分かりやすい名前と絵を付けたけど、どうだろね?」

 

「本編でも、やっと3章後半で全員の名前が言えるレベルの弱小プレイヤーもいるからね。しょうがないね。」

 

「モノクマが何を言ってるかは分からないけど、これで犯人候補は絞られたんじゃないかしらぁ?」

 

(……本当に、そうか?)

 

 

ノンストップ議論2開始

 

今日の全員の行動によって、容疑者は絞られたよ。」

 

「容疑者をシボル?容疑者の油売りマスカ?」

 

「1人で行動、本当か?2人で行動、アリバイあるある。2人の人は怪しくない。」

 

「…1人行動の人間が怪しいってことか?」

 

「そっか そっか!じゃ、1人で行動してた人が犯人だね!」

 

【共犯の可能性】→今日の全員の行動

【共犯の可能性】→アリバイ

【佐藤の証言】→アリバイ

 

 

 

「君は何が言いたいんだね?」

 

(みんなの冷たい視線が痛いほど突き刺さる…。考え直そう。)

 

 

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「それは違うっす。」

 

「残念ながら、モノクマの動機によって、そのアリバイには意味がないっす。」

 

「えー!?何で何で?」

 

共犯の可能性…ですね。」

 

「そう…だね…。クロと共犯者がいたら、2人行動の人たちだって…。」

 

「そっか。いくらでも、コソコソ2人で話を合わせられるんだね。」

 

「困ったわねぇ。それじゃあ、どうすれば良いのかしら。何について話せば、犯人が分かるのかしら。」

 

「何か…犯人を絞る手掛かりになるものはないでしょうか。」

 

(何について話し合うか。裁判に時間制限があるとしたら、これも重要なことだな。)

 

 

ノンストップ議論3開始

 

共犯関係になりそうな2人は、誰かな?誰かな!?」

 

「何で白銀お姉ちゃんが殺されちゃったのか…動機は、どうかな?」

 

「……犯行時刻…詳しいことが分かってない。」

 

鈍器を扱えるかどうか!これも、絶対 考えなきゃなんねーぜ!?」

 

小学校にいた人が犯人…ってことはないですか?」

 

「どれも考えるべきことですが、確実に容疑者を絞れるものはあるのでしょうか…?」

 

【佐藤の証言】→動機

【ボーリングの球】→鈍器を扱えるかどうか

【佐藤の証言】→小学校にいた人が犯人

 

 

 

「あの…その意見について、詳しく教えていただけますか?私には理解しかねるところがありまして…。」

 

(しまった。みんなの心象が悪くなる前に考え直そう…。)

 

(…あの証言が本当なら、容疑者を絞れそうだな。)

 

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「それに賛成っす。」

 

「小学校の外にいた人が小学校内に入ることはできなかった。佐藤君によると、そうっすね?」

 

「うん。僕…ずっと校門にいたけど小学校に入ったのは天海さんだけで、他に出入りした人はいなかったよ。」

 

「でもよ、それも『ずっといた』ってのが、嘘じゃなかったらの話だよな?」

 

「もし、サトウがクローやキョーハンだったら、どうしマス?」

 

「オレが中庭いた時は、佐藤の匂いしてたけどな。ま、ずっといたかは分かんねーや。」

 

「ぼ、僕、嘘なんて言ってないよ…。」

 

(確かに、俺と会ってはいるが、ずっといたという証拠はない。)

 

「だが、全てを疑っていてはラチが明かん。もし彼の言うことが嘘なら、そのうち矛盾も出てくるだろう。」

 

「とりあえず…本当だったとして話すといい…かも…。」

 

「えーと、小学校にいたのは…アイコ、けい、れーのすけ、みく。それと…レイ、らんたろーだね。」

 

「だから、誰と誰と誰なんだよ!?」

 

「史上最強のAIアイコサンに、お掃除大好き松井クン。至宝の歌姫 夕神音サンに、人気アイドル哀染クン。」

 

「そして、才能不明 能力未知数の永本クン。さらに、世界を股にかけた冒険家の天海クン。」

 

「や〜ん、あたしぃ、疑われてるぅ〜。こんなに非力なのにぃ。お箸より重いものしか持ったことないのにぃ。」

 

「お、オレは犯人じゃねーぞ!?」

 

「……。」

 

「困ったわねぇ。私は、ずっと松井君と一緒にいたから、彼が犯人でないことは分かるけれど…。」

 

「フム。共犯の可能性がある以上、潔白を証明するのは難しいだろうね。」

 

「みなさん、今日の行動を詳しく話してください。」

 

「あ…みんな、良かったら…発見アナウンスの時間から逆順に遡って話してくれないかな?」

 

「……?」

 

「えっと、アナウンスの時、俺は1人で調理室にいたっす。」

 

「その前は町の西エリアを探索してたっす。小学校で佐藤君と永本君に会ったっすね。」

 

「図書室に入る前は、3階の階段近くの教室を調べていたね。妙な匂いがして図書室に入ったのだよ。」

 

「3階の階段でアイコさんと会って図書室に向かったのよねぇ。3階を調べる前は4階の教室を調べていたわぁ。」

 

「警察気取りの取調べ乙。アナウンス時:図書室。その前:校舎で夕神音たちと遭遇。その前:中庭辺り。」

 

「アナウンスがあった時…どうだったかな?たぶん、2階の廊下にいた…。いや、教室の中か?」

 

「えっと、その時、殺人があったって聞いて…すぐ図書室に向かった。」

 

「その前は…えぇと、1階 玄関辺りにいたな。…その前は、1階の教室を調べてた。」

 

「ぼくは…アナウンスの時、2階の廊下を調べてたよ。その前は、2階の教室を1つずつ調べてた…。」

 

「……怪しいヒト、いますね。」

 

「………。」

 

(何だ…?ローズさんが確信めいた顔をしている…?)

 

「ポリ公エテ公、こーゆー質問シマス。記憶力検査?誘導尋問?クソ喰らえデスよ!!」

 

「えっと…というか、明らかに…みんなが分かるウソを言ってる人いるよね…。」

 

 

▼ウソを言っている人は?

 

 

 

「アマミ!テメーの血のイロ、何イロだぁ!?」

 

(違ったみたいだ…。)

 

 

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「……永本君。キミは何か隠してるんすか?」

 

「…は?」

 

「そーデス!ウソツキ、前のコト言えマセン。」

 

「…聞いたことがあります。尋問の際、現在から遡って過去の話をさせると。」

 

「う、うん…。本来は、時系列に言わせてから、今度は逆に言わせるらしいけどね…。」

 

「上手く話せてねぇ地味ヤローが犯人か!?おい!テメー、何でメガネ女を殺しやがった!!?」

 

「ちょっ、ちょっと待てよ!?オ、オレは、犯人じゃねーぞ!」

 

「じゃあ、ナンで話せない?正直のコト、言いてください!」

 

「そ、それより、永本先輩がすぐ分かる嘘を言ったことの方が気になります!何でですか!?」

 

(永本君の嘘。それはーー…)

 

1. すぐ図書室に向かった

2. アナウンス時は2階にいた

3. アナウンス前は1階を調べていた

 

 

 

「天海先輩!自分は分かってます!”超高校級の冒険家”の先輩が、そんな簡単なことに気が付かないはずがない!!」

 

「つまり…それは、自分たちを和ませる冗談ですよね!!!?」

 

(二重の意味で耳が痛いな。)

 

 

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「永本君。キミが図書室に来たのは、アナウンス後、随分 経ってからっす。」

 

「え。そ、そんなに時間 経ってたのか?」

 

「アナウンスがあってから、何をしてたの?」

 

「べ、別に何をしてたわけでもねーけど…。」

 

 

 

ノンストップ議論4開始

 

「けいが図書室に来たのは、モノクマよりも後だったよね。」

 

「アナウンスから20分くらい後だった…。」

 

「1階からなら5分でも来れらぁ!20分も何やってたんでぃ!」

 

「ま、まさか…。手に付いた血を洗い流してた…とかじゃない、よね…?」

 

「ちっげーよ!そんなことしてねー!」

 

「まさか、アナウンスを聞き逃すはずないわよねぇ。何をしてたの?」

 

【永本のヘッドホン】→20分くらい後

【永本のヘッドホン】→聞き逃すはずない

【ボーリングの球】→聞き逃すはずない

 

 

 

「そんなワケの分かんねぇイチャモンつけんなよな…。」

 

(しまった…。視線が驚くほど冷ややかだ。)

 

 

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「それは違うっす。」

 

「永本君、キミは発見アナウンスの時、ヘッドホンをしていたんじゃないっすか?」

 

「あ…。」

 

「ヘッドホン?永本お兄ちゃんが首に掛けてる?」

 

「ええ。ヘッドホンにはノイズキャンセラー機能があって、つけてたら、外の音が聞こえない。違いますか?」

 

「あ、ああ。そうだ。そういえば…調査の時、ヘッドホンしてたな…。」

 

「なーんで、調査中にヘッドホンなんてしてんの?」

 

「その方が集中できんだよ!アナウンスがあるなんて思いもしなかったしな。」

 

「じゃあ、永本先輩が遅れたのには、変な理由はなかったってことですよね?ね?」

 

「ああ。悪ぃな。モノクマに言われて慌てて図書室に行ったんだ。」

 

「殺人があったと聞いて すぐ…は、モノクマから聞いて すぐ?」

 

「紛らわしいんだよ!無実の罪 被るようなことすんじゃねー!」

 

「まだ無実とは限らんよ。」

 

「そうですね。佐藤くんの話によると、犯行が可能なのは、小学校の校内にいた人だけですから。」

 

「アイコサン、哀染クン、天海クン、永本クン、松井クン、夕神音サン。怪しいのは誰かな誰かな。」

 

「僕目線、僕と夕神音さんは絶対に犯人ではないのだが。どうしたら信じてもらえるかね。」

 

「そうねぇ。まさか殺人が起こっていたなんて…。こんなことなら、先に図書室を調べておけば良かったわぁ。」

 

「そもそも、どうして白銀お姉ちゃんが殺されっちゃったんだろう…。」

 

「白銀さんは、みんなに分け隔てなく話しかけてくれてた…よね。そんな人を…あんな風に殺すなんて…。」

 

「あんなフワフワで綺麗な人の顔を…あそこまでグチャグチャにするなんて!許せないです!」

 

(白銀さんが殺された理由…?)

 

1. 怨恨の可能性

2. 無差別の可能性

3. 愉快犯の可能性

 

 

 

「あらぁ、じっくり考えた上で、その答えなのかしら。それなら、何も言わないわぁ。」

 

(しまった…。もう1度じっくり考えよう。)

 

 

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「犯人は白銀さんを撲殺した後、斬り刻んだっす。現場に残る時間が長いほど見つかるリスクもあるのに…。」

 

「誰でもヨカッタ、ないですか?」

 

「白銀さんは女性にしては身長が高かったっす。」

 

「華奢だったとはいえ、犯人が誰でも良かったのなら…彼女よりも狙われやすい人がいたはずっす。」

 

「…!」

 

「…!!」

 

「緑頭テメー、クソチビ共を脅かすんじゃねぇよ!!!」

 

「あんな殺し方…。よほど白銀さんに恨みがあったとしか…思えないよ。」

 

「良くないね!人を呪わばケツ2つだよ。」

 

「呪術師が言うのかよ?つーか、穴2つだろ。」

ブッ

「な、何だ?白銀っちを包丁の後攻攻撃でブッ刺したのは、白銀っちが憎くて憎くて仕方なかったからだべか!?」

 

「でもねぇ。私たち、まだ出会って間もないのよ?殺したくなるほど憎いなんてこと…あるのかしら?」

 

「ないとは言い切れんよ。この閉鎖空間。本来なら殺意にまで発展しなかったはずだが…環境が整いすぎている。」

 

「白銀先パイのような可憐な女性を、一体 誰が恨むっていうんですか!?」

 

「………。」

 

痴情のモツレ、ありマスカ。」

 

「痴情の…もつれ?」

 

「……白銀お姉ちゃんを好きだった人がフラれて…とか、そういうこと?」

 

「…そういった事件は、残念ながら世界中で起こっていますね。」

 

「いや、でも、オレら高校生だぜ?しかも、こんな短期間で…。それで殺人とかあるか?」

 

「分かってないなぁ、けい。高校生だろうが短期間だろうが、愛の力は恐ろしいんだよ!」

 

「……。」

 

(こんなこと、考えたくなかったが……。)

 

“彼”は、誰より白銀さんの死を嘆いているようだった。この学級裁判でも、ほとんど言葉を発しないほどに。)

 

「ね、ねぇ、哀染さん…。学級裁判が始まってから…ほとんど話してないけど、大丈夫?」

 

「……え?」

 

(まさか……彼が。そんな考えが頭から離れない。)

 

(哀染君に視線が集中する。俺も、隣の彼へ視線を向けた。どうしても、彼に聞きたいことがある。)

 

「……。」

 

「哀染くんは白銀さんと親しく話していましたよね。…辛いのも無理はありません。」

 

「もしかして、哀染お兄ちゃん。白銀お姉ちゃんのこと…好き、だったの?」

 

「……そうじゃ、ないよ。」

 

「でも、哀染さん…今朝から元気なかった、よね…?」

 

「……。」

 

(昨日の夜、彼は白銀さんの家に行った。その白銀さんが殺された。考えたくはないが、何か関係があるのか?)

 

「哀染君。キミは、昨日夜中に白銀さんに会いに行ってたっすね。」

 

「……!」

 

(俺の言葉に、哀染君は息を呑んだ。哀染君に向けられていた視線も一気に俺に集中した。)

 

「どういうことですか?天海くん。」

 

「俺と哀染君は、同じ”野比家”に宿舎があるっす。俺は昨日の夜中に彼が出かけるのに気付いて、後を追ったっす。」

 

「哀染君が白銀さんの部屋にいたのは20分くらい。その間…何があったのか、話してもらえないっすか?」

 

「……。」

 

「やあやあ。天海クン、野暮は およしよ。」

 

「う、うん。真夜中に男女が1つ屋根の下ってことはーー…」

 

「……話をしていたんだ。」

 

「話っすか?真夜中に?」

 

「……つむぎが、怯えてたから。悪夢を見るって言ってたから。ぼくは…その相談に乗ってたんだ。」

 

「えぇと、それは…夜中にしなければならない話なんでしょうか?」

 

「つむぎは、コスプレイヤーだ。みんなの前では泣き言を言いたくないって…。」

 

「………。」

 

(白銀さんが、哀染君にそんな話を…?)

 

(ーーなぜ、彼に?)

 

「蘭太郎お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「……何でもないっす。」

 

「じゃ、これって〜、痴情のモツレによる愛憎劇的なヤツだったの?ヤダ!みんな不潔よ~!」

 

「まだ そうと決まったわけじゃないが…その親密さが動機になり得るな。」

 

「そ、それが動機になるなら、さ…。天海さん…。」

 

「何すか?」

 

「天海さんが哀染さんの後を追ったのって…この”コロシアイ”を懸念して…なんだよね?」

 

「……そうっすけど…。」

 

「よ、良かった。僕、てっきり…。」

 

「え!もしかして…らんたろーも、つむぎのこと狙ってた感じ?」

 

「あらぁ、白銀さんモテモテだったのねぇ。」

 

「………。」

 

「えぇと…。そういうわけじゃないっすけど。」

 

「だよな。こんな状況で、そんな能天気なヤツいるかよ。」

 

「生存本能が危ぶまれると種の保存本能が刺激されるから、恋愛したくなるのは理論としてあると思うが。」

 

「…天海くんも、白銀さんと よく話していましたよね。」

 

「アマミ、アイゾメとシロガネの密会を見マシタ。それから、何を考えマシタ?」

 

「……あの時は、コロシアイの中で何かあったら…と思ってたっす。」

 

「そうだよ!蘭太郎お兄ちゃんは、コロシアイが起きないように頑張ってただけだよ!」

 

「だいたい、何で好きな人を殺すんですか!?逆でしょう、普通!?」

 

「分かってませんな、前谷 光太殿。まだ本当の愛を知らないと見ましたぞ。」

 

「フギャア!」

 

「確かにー。でも、機械に言われたらオシマイだよねー?」

 

「な…キサマ!?血の通わぬ機械と言えど、人間の感情パターンを分析し愛憎劇を演じることは可能なのだぞ!?」

 

「でもねぇ、恋心や恨み妬みは隠せるでしょう?」

 

「そうですね。確かに動機になりますが…犯人を見つけるものにはならないでしょう。」

 

「哀染さんと天海さんに動機があったかもしれない…。それが分かれば…それでいい。」

 

(……俺は…疑われているのか。)

 

「少し違う視点で事件について話し合う必要がありそうですね。」

 

「何だよ、違う視点って…?」

 

「…死体や現場の話は…もっと しなくちゃいけないよね。」

 

「死体…ミナさん、死体を見マシタか?」

 

「正直、きちんと見られなかったわぁ。あまりにも、痛々しくて。」

 

「まさか…犯人の狙いは、それか?」

 

「きちんと死体を調べさせないように…ですか?」

 

「あ?じゃあ、怨恨どうの言ってたのは どうなるんだよ!?」

 

「綺麗さっぱり忘れよう!」

 

「えぇと…忘れない方が良いと思うな…。どちらの可能性もあるから…。」

 

「残念デス!ワタシにとって死体はマクラやフトンみたいな物!舐るカノごとく見マシタ!」

 

「ふわぁ、ローズさん、すごいですぅ…!」

 

 

ノンストップ議論5開始

 

「シロガネは、ボーリングの球、頭ウシロに当たって、死にマシタ。」

 

「図書室に落ちてたよね…。犯人は、倉庫を封鎖する前から殺人を計画してたんだね…。」

 

「顔も体も包丁でイッパイ切ります。全部 血、きたナイデス。」

 

「…ローズさん、『汚い』じゃなく、『汚れていた』がいいですよ。」

 

「デモ、汚れていた、血だけデス。他は全部キレイ。信じられるか、死んでるんだぜ。デス。」

 

【手の汚れ】→頭のウシロ

【手の汚れ】→血だけ

【アーミーナイフ】→血だけ

 

 

 

「ピー、ガガガ…。アナタのコトバ、分析不能。」

 

(しまった。みんなの心象が悪くなってしまった。)

 

 

back

 

 

 

 

「それは違うっす。」

 

「何だぁ!アマミ、モンクあっかぁ。アマミのくせにナマイキだゾー。」

 

「ローズさん、それは悪い言葉ですよ。」

 

「…白銀さんの手にはホコリが付いてたっす。」

 

「ホコリ…?」

 

「アイヤ。視力増強のチューシャしてなかったから、分からなかったデスネ。」

 

「倒れた時に付いたのかな?」

 

「いや、町中 校内中、見えるところはチリひとつない。ただ倒れただけで付着するとは思えない。」

 

「でも、見えないところはあまり綺麗じゃないわよねぇ。」

 

「揉み合いへし合い、抵抗された時 付いたかな。」

 

「抵抗して殴られたなら、後頭部より側頭部や前頭部に一撃を喰らう可能性が高い。私のデータは言っております。」

 

「ホコリなんざ、何か拾っただけの話だろ。」

 

(そういえば、ホコリの付いた彼女の手に握られていた赤いもの…。あれは何だったんだ?)

 

(手のひらには、液体も付いていた。あれはーー…)

 

 

閃きアナグラム スタート

 

          ト  
 プ
                               マ        ト  
                                        チ

 

▼閃いた!

 

 

 

「白銀さんの右手は、固く握られていたっす。彼女が握っていたのは…プチトマトっす。」

 

「プチトマト?昨日と今日、朝食に出たアレか?」

 

(ーーそうだ。あの赤い物は…朝食で話題にも出ていた。)

 

 

「妹尾サン、野菜が苦手?赤いの怖い?丸いが嫌い?」

 

「えっと…。うん、どうしても食べられないんだ。」

 

「ボクはピエロじゃないけれど、赤鼻ないと悲しいの。そのちっちゃな赤い実、ボクにくださいな。」

 

「ゴラァ!ピエロ!甘やかすな!!」

 

 

「妹尾さん、今日は残さず食べたんですね。偉いですよ。」

 

「えへへ。山門お姉ちゃんって、おばあちゃんみたいだね。」

 

「……せめて、お母さんみたいでありたかったです。」

 

「ほらほら、けいも。野菜、全部 食べなよ。」

 

「……本当に おせっかいだな、お前。」

 

 

(あのプチトマトが、現場にあった。白銀さんが握っていた。)

 

「でも、捜査時間に調理室を見ましたが、プチトマトはありませんでしたよ。それどころか、冷蔵庫は空でした。」

 

「朝食のトマト、みんな残さず食べてたの、あたし覚えてるよー?」

 

(ーーいや、俺は知っている。朝食のトマトを食べたフリして持っていた人物を。)

 

「1人だけ…プチトマトを隠し持っていた人がいましたよ。」

 

(全員が こちらを見た。あのプチトマトを持っていた人物はーー…)

 

 

▼プチトマトを隠し持っていた人は?

 

 

 

「…………。」

 

(しまった…!冷静に考えろ…!)

 

 

back

 

 

 

 

「妹尾さん…。プチトマトを持っていたのは、キミっす。」

 

「えっ…。」

 

「はああ!?」

 

「キミは朝食で出たプチトマトをパーカーのポケットに隠していたっすね。」

 

(朝食後の町での会話を思い出しながら、妹尾さんを見た。彼女は、驚いた顔を俺に向けている。)

 

 

「妹尾さん、パーカーが汚れてますよ。」

 

「え…?あ。」

 

(妹尾さんのパーカーのポケットが濡れている。丸く歪に膨らんでいる、それは…)

 

「もしかして、朝食…全部 食べたっていうのは嘘っすか?」

 

「えー?何のこと?ウッカリ分かんないっ!」

 

 

「や、だなぁ…。隠したりなんて、してない、よ?」

 

「その時、ボクもいた。天海クンの指摘に、妹尾サンたじたじ。あれは、きっと動揺の声色。」

 

「……。」

 

「現場に…妹尾さんが持っていたトマトが落ちてたってこと…?」

 

「ピンクチビ!テメーが犯人なんだな!?」

 

「み、みんな…何 言ってるの?あたしが、白銀お姉ちゃんを殺せるわけ、ないよ…。」

 

「でも、現場に妹尾さんが持っていた物が落ちてたんすよ。無関係とは…思えないっす。」

 

「蘭太郎…お兄ちゃん…?」

 

(妹尾さんが青ざめた顔で、俺の名を呼ぶ。胸が激しく痛んだ。)

 

(生き別れの妹が俺の言葉に絶望している。ーーそんな光景を思わせたから。)

 

 

学級裁判 中断

 

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