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第1章 絶望ポケット 学級裁判編Ⅱ

 

学級裁判 再開

 

(哀染君に視線が集中する。俺も、彼へ視線を向けた。どうしても、彼に聞きたいことがある。)

 

「……。」

 

「哀染くんは白銀さんと親しかったですし…。…辛いのも無理はありません。」

 

「もしかして、哀染お兄ちゃん。白銀お姉ちゃんのこと…好き、だったの?」

 

「……そうじゃ、ないよ。」

 

「でも、哀染さん…今朝から元気なかった、よね…?」

 

「……。」

 

「哀染君。キミは昨日夜中に白銀さんに会いに行ってましたよね。」

 

「どういうことですか?天海くん。」

 

「俺と哀染君は同じ”野比家”に宿舎があるっす。俺は昨日の夜中に彼が出かけるのに気付いて、後を追ったっす。」

 

「……!」

 

「哀染君が白銀さんの部屋にいたのは20分くらい。その間…何があったのか、話してもらえないっすか?」

 

「……。」

 

「やあやあ天海クン、野暮はおよしよ。」

 

「あ、ああ。真夜中に男と女が1つ屋根の下…やることは決まってーー」

 

 

「……話をしていたんだ。」

 

「話っすか?真夜中に?」

 

「うん…。………つむぎが、怯えてたから。悪夢を見るって言ってたから。ぼくはその相談に乗っていたんだ。」

 

「えぇと、それは…夜中にしなければならない話なんでしょうか?」

 

「つむぎはコスプレイヤーだ…。みんなの前では泣き言を言いたくないって。」

 

 

「……。」

 

(白銀さんが、哀染君にそんな話を…?)

 

(なぜ彼に?……俺にも話してくれればーー…)

 

「蘭太郎お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「……何でもないっす。」

 

「じゃあこれって〜結局痴情のもつれ?だったの〜?ヤダ!みんな不潔よーー!」

 

「まだそうと決まったわけじゃないが…その親密さが動機になり得るな。」

 

 

「そ、それが動機になるなら、さ…。天海さん…。」

 

「?」

 

「天海さんが哀染君の跡を追ったのって…コロシアイを懸念して…なんだよね?」

 

「…そうっすが。」

 

「よ、良かった、僕はてっきり…。」

 

「え!もしかして、らんたろーもつむぎloveだったとか!?」

 

「あらぁ、白銀さんモテモテだったのねぇ。」

 

「えぇと…そういうわけじゃないっすけど。」

 

「…天海くんも白銀さんと親しかったですね。」

 

「アマミ、アイゾメとシロガネのミッカイ見マシタ。それから何を考えマシタか?」

 

 

「……。あの時は、コロシアイの中で…何かあったらどうしようと思ってたっす。」

 

「そうだよ!蘭太郎お兄ちゃんはコロシアイが起きないように頑張ってただけだよ!」

 

「だいたい、何で好きな人殺すんですか!?逆でしょう普通!?」

 

「前谷殿は分かってませんな。本当の愛をまだ知らないと見ました。」

 

「フギャア!」

 

「確かにー。でも、機械に言われたらオシマイだよねー?」

 

「な、何だと…キサマ!?血の通わぬ機械と言えど人間の感情パターンを分析して愛憎劇を演じることは可能なのだぞ!?」

 

「でもねぇ、恋心や恨み妬みは隠せるでしょう?」

 

「そうですね。確かに動機になりますが…犯人を見つけるものにはならないのではないでしょうか。」

 

「哀染さんと天海さんに動機があったかもしれない…。それが分かれば…それでいい。」

 

(俺は…疑われている…のか。)

 

 

「少し違う視点で事件について話し合う必要がありそうですね。」

 

「何だよ、違う視点って…?」

 

「…死体や現場の話は…もうちょっとしなくちゃいけないよね…。」

 

「死体…ミナさん、死体見マシタか?」

 

「正直 きちんと見られなかったわぁ。あまりにも、痛々しくて。」

 

「まさか…犯人の狙いはそれか?」

 

「死体をきちんと調べさせないように…ですか?」

 

「あ?じゃあ怨恨どうの言ってたのはどうなるんだよ!?」

 

「綺麗さっぱり忘れよう!」

 

「えぇと…忘れない方が良いと思うな…。どちらの可能性もあるから…。」

 

「残念デス!私にとって死体はマクラやフトンみたいな物デス!舐るカノごとく良く見マシタ!」

 

「ふわぁ、ローズさんすごいですぅ…!」

 

 

 

ノンストップ議論開始

 

「シロガネはボーリングの球、頭ウシロに当たっテ死にマシタ。」

 

「図書室に落ちてたよね…。犯人は、倉庫を封鎖する前から殺人を計画してたんだね…。」

 

「顔も体も包丁でたくさん切ります。全部 血、きたナイ。」

 

「…ローズさん、『汚い』じゃなく、『汚れていた』がいいですよ。」

 

「デモ、汚れていた、血だけデス。他は全部キレイでス。信じられるカ、死んでるんだぜ。デス。」

 

【手の汚れ】→頭のウシロ

【手の汚れ】→血だけ

【アーミーナイフ】→血だけ

 

 

 

「アマミの日本語、ワカリマセン。」

 

(しまった、みんなの心象が悪くなってしまった。)

 

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「それは違うっす。」

 

「何だアマミ、モンクあっかぁ。アマミのくせにナマイキだゾー。」

 

「ローズさん、それは悪い言葉ですよ。」

 

「…白銀さんの手にはホコリが付いてたっす。」

 

「ホコリ…?」

 

「アイヤ、視力増強のチューシャしてなかったから分からなかったデスネ。」

 

 

「倒れた時に付いたのかな?」

 

「…いや、町中校内中調べたが、見えるところはチリひとつないほどなんだ、ここは。ただ倒れただけで付着するとは思えない。」

 

「そういえば、見えないところの掃除はあまり行き届いてなかったわねぇ。」

 

「揉み合いへし合い、抵抗された時の跡。」

 

「それなら、後頭部より側頭部や前頭部に一撃を喰らうはずだと、私のデータは言っております。」

 

(白銀さんの手のホコリは気になるな…。)

 

(頭の中に自転車に乗るイメージが湧き上がってきた。俺自身はチャリダーになったことはないのだが…南米へ行った時、自転車で旅をする人々とたくさん出会ったことを思い出した。)

 

 

 

ブレイン・サイクル 開始

 

Q. 白銀の手のホコリはどこから来た?

1.床 2.本棚の下 3.窓の外

 

Q. なぜ白銀の手にホコリが付いた?

1.本棚の下に手を入れたため 2.本を調べたため 3.本を読んだため

 

Q. 殺された時の白銀の体勢は?

1.直立 2.仰向け 3.うつ伏せ

 

繋がった!

 

 

 

 

 

「白銀さんの手のホコリは本棚の下のもの。本棚の下に手を入れたため、付着したっす。殺された時、彼女は床に手をついていたのかもしれないっすね。」

 

「そりゃあ…殴られて倒れてますし…。」

 

「殺された時というか…殺される直前っす。」

 

「日本語のテンス、難しいデス。」

 

「白銀さんはうつ伏せで…本棚の下に手を入れていた。」

 

「…あ。」

 

「あ…だから片方だけ腕まくりした痕があったんだね。」

 

「その状態の時、犯人は白銀さんの後頭部にボーリングの球を打ち付けた…こういうことですか?」

 

「ええ。これなら、7kgもあるボーリング球を上手くコントロールする必要もないっす。」

 

「それだけじゃねぇ。力の強さや体格差すら関係なくなる。」

 

「でも、何でつむぎはそんなポーズを取ったの?何プレイ?」

 

「例えば…犯人が『本棚の下に何か落ちている』と言えばどうっすか?」

 

「そっか…それなら、怪しまれずに白銀さんの体勢を崩せるね。」

 

「その”何か”がなければ、白銀さんも本棚に手を入れないんじゃないかしらぁ?」

 

「現場にそれらしきものはあったのかね?」

 

(本棚の下にあった物…白銀さんはそれを取ろうと手を伸ばしーー実際に掴んだのだろう。彼女の固く閉じられた手のひらに握られていた赤い物。

 

(手のひらには液体も付いていた。本棚の下に落ちていた”何か”とはーー)

 

 

 

閃きアナグラム スタート

 

ト   プ    

                               マ  ト  

                                          チ

 

▼閃いた!

 

 

 

 

 

 

「それは…白銀さんが握っていたっす。彼女が握っていたのは……プチトマトっす。」

 

「プチトマト?」

 

「でも、捜査時間に調理室を見ましたが、プチトマトはありませんでしたよ。それどころか、冷蔵庫は空でした。」

 

「朝食のトマトはみんな残さず食べてたの、あたし覚えてるよー?」

 

(ーーいや、俺は知っている。朝食のトマトを食べたフリして持っていた人物を。)

 

「1人だけ…プチトマトを隠し持っていた人がいましたよ。」

 

 

▼怪しい人を指摘しろ!

 

 

 

 

(しまった…!冷静に考えろ…!)

 

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「妹尾さん…プチトマトを持っていたのは、キミっす。」

 

「えっ…。」

 

「はああ!?」

 

「キミは朝食で出たプチトマトをパーカーのポケットに隠していたっすね。」

 

「や、だなぁ…そんなこと、してない、よぉ?」

 

「……その時確実ボクもいた。膨れたポケット。丸く濡れ。あれはきっとちっちゃな赤い実。」

 

「……。」

 

「だいたい、何でプチトマトなのさ?」

 

「たまたま持っていたから、ということかしら。」

 

「ある程度光沢があって…シルエットでは分からない。」

 

 

「み、みんな…何言ってるの?あたしが、白銀お姉ちゃんを殺せるわけ、ないよ…。」

 

「そう…だよな。妹尾みたいな小さい女が白銀を殺せるはずねーよ。」

 

「ンなこたナイ。ハイつくばったシロガネ目がけてボール落とす。できないナイ。」

 

「いや、落とすっつーか、叩きつけたんだろーな。力の入り的に。」

 

「あのボーリングの球はプロ用で重量がありましたが、女性でも持ち上げられなくはないっす。球を重力に任せる形で振り下ろせば…。」

 

「蘭太郎…お兄ちゃん…?」

 

「……妹尾さん。」

 

「ひどい…ひどいよ、あたしを、疑うなんて…。」

 

「お…おい!ピンクチビが泣いちまったぞ緑頭!?」

 

(…俺だってこんなこと言いたくない。妹の面影がある妹尾さんを追い詰めるなんて。したくない。)

 

 

 

ノンストップ議論開始

 

「で、でも、プチトマトを持ってたからといって妹尾先パイを疑うのはどうなんでしょうか…?」

 

「妹尾さんがたまたま落としたトマトを誰かが使った…という可能性もあるのではないでしょうか?」

 

「そうだよ、あたしは…クロじゃ、ないよ。」

 

「でもさー”たまたま落ちてたトマトを使う”より”たまたま持ってたトマトを使った”の方がしっくりくんじゃね?」

 

「そうだよ…それに、妹尾さんのポケットはそう簡単に物が落ちるようには…思えないよ。」

 

「捜査時間に調理室には何もなかったが、すでに誰かが持ち出した可能性もある。」

 

 

【給食のシステム】→ポケット

【給食のシステム】→誰かが持ち出した

【手の汚れ】→誰かが持ち出した

 

 

 

 

「あ、天海さん…?大丈夫?まさか、妹尾さんが犯人かもしれないショックでおかしくなっちゃったんじゃ…!?」

 

(違ったようだ。もう一度考えてみよう。)

 

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「それは違うっす。」

 

「給食は食品ロスがないように毎食前にぴったりの食材が届くらしいっす。」

 

「え?どういう仕組み!?超ハイテクじゃん!?」

 

「環境に優しいね〜。」

 

「いや、輸送コストを考えるとあまり地球に優しいとは言えないだろう。」

 

「出入り口もないのにどこから届くのかしらぁ。」

 

「それは後々考えましょう。つまり、プチトマトを今日の犯行時間に持っていたのは、妹尾さんだけということですね。」

 

「そんなはずないよ、他の人も残してたかも、しれないじゃん…。」

 

「機械女、テメーカメラとか付いてねーのかよ。」

 

「そんなサービス、AIアイコにはNAIKO★」

 

 

「あたし覚えてるよ?」

 

「は?全員の分か?」

 

「うん。さっきも言ったじゃん。確かに、今日みんなは皿に乗ったプチトマトを全部食べてたよ。でも、いもこだけは食べたとこを見てないんだよね。」

 

「祝里先パイすごいです!!!」

 

「あれは確か…らんたろーとレイが給食室入って来た時…うん、きみらが入って来る前はいもこの皿にトマトがあったけど、次見たらなくなってたね。」

 

(祝里さんが俺と俺の右隣の哀染君を見ながら言った。)

 

「…すごい。映像記憶だね。」

 

「おいチビ!!どういうことだ!?テメーが白銀を殺したのか!?」

 

「あたしじゃ…ないよ…あたし、あたし…。」

 

 

「で、でも、妹尾さんは小学校の外にいたんだよね…。…妹尾さん、もしかして共犯者…とか…?」

 

「…っ!違うよ…。」

 

(そうか…この事件にはクロの他に共犯者がいるかもしれない…。彼女が小学校の外にいたとしたなら、彼女は…共犯者、なのか?)

 

「共犯者…?」

 

「……。」

 

「この事件にはいるいる、クロともひとり共犯者。」

 

「妹尾さんを共犯者にして、誰かがクロになった。なるほど。妹尾さんを怪しむことまでクロの目論見だったのかね。」

 

「オレらが妹尾選んで全滅する…そのためにトマトを使ったってのか!?」

 

「あたし、あたしは…違うよ。共犯者じゃないよ…。」

 

「ウソくせーな。臭う…臭うぜ…陰謀の匂いがプンプン香ってくらぁ!」

 

 

「じゃケッキョク、クロはダレですカ?」

 

「元の議論に戻りますね。実際に犯行が可能なのは、小学校にいた人だけです。」

 

「それもこのシロクロチビの言うことを信じりゃの話だがな。」

 

「私様はチラチラ彼の姿を見てたのよ。…まあ、天海さんが来られた時を知りませんから、その後は知らないですが。」

 

「…僕がクロなら天海さんに会った後、彼に見つからないように玄関に行って階段を駆け上がって図書室まで行って、また外に戻らないとだよ…。」

 

「オレは天海と会ってからもしばらく玄関調べてたけど、佐藤は見なかったぞ。」

 

「中庭側の入り口から入ることはできたろ?」

 

「俺っちは中庭と校門近くを見てたんだぜ?校門側から佐藤が来たらすぐ分からぁ!」

 

「僕が共犯者じゃない限り、僕の言葉を疑っても無意味だよ…。」

 

(共犯者が妹尾さんだとしたら、クロは小学校校内にいた誰かなのか…?)

 

「共犯者が妹尾さんなら僕と夕神音さんの疑いは晴れたということでいいだろうか。」

 

「そうねぇ、私たちは行動を共にしていたからお互いのアリバイを知っているわ。そして、クロと共犯者でもないし。」

 

「おお…じゃあ怪しいのは……オレもか。」

 

「けいとアイコとらんたろーとレイだね。」

 

「永本クン、アイコサン、天海クン、哀染クンの4人。」

 

 

「ひとつ…確認したいんだけど、天海さん。」

 

「何すか?」

 

「小学校の外から中に入った時、持っていたのは何…?」

 

「!」

 

「なになにー?」

 

「アナウンスの20分くらい前…天海さんは小学校に入ったんだ。何かが入った給食袋を持って…。」

 

「ほぉ…アナウンスの20分前か。10時40分頃だね。」

 

「…あれは、包丁っす。」

 

「……え?」

 

「西エリアの犬小屋にあったものを調理室に戻したんすよ。誰かが隠した凶器でしたから。」

 

(周囲が息を呑むのが分かった。俺を怪しんでいるのは明白だ。)

 

 

 

ノンストップ議論開始

 

「は、犯行時刻と思われる時間に小学校に包丁を…持って行ったの…?」

 

「西エリアの犬小屋。確かになかった何にもね。犬小屋空っぽ。頭も空っぽ。」

 

「しかしそれは、隠していた包丁を持って小学校へ向かった、とも推理できるね。」

 

「そういや、玄関来た時も持ってたな。……まさか、その包丁で白銀を刺したのか?」

 

 

【モノクマファイル】→犯行時刻と思われる時間

【死体の損傷】→犬小屋空っぽ

【アーミーナイフ】→包丁で白銀を刺した

 

 

 

 

 

「クンクンクンクン、天海クン。キミは犬じゃなくて人間だ。大丈夫だよ、やり直せる。」

 

(しまった…。適当なことを言ったせいで余計疑われている。)

 

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「それは違うっす。」

 

「俺が持っていたのは料理用の包丁であって、現場に落ちていたアーミーナイフとは違います。」

 

「しかし、給食袋は中が見えなかったはずです。天海君が持っていたのが包丁かどうかは天海君にしか分からないのでは?」

 

(やはり…そこを突かれるよな…。どうしようか。)

 

「あ…、待って。そういえば、天海さんが持っていた巾着の膨らみ方からして、あれは…包丁だったよ。」

 

「間違いないんですか?」

 

「う、うん…。だって現場に落ちてたアーミーナイフは小型だし…。そうだったよね、永本さん?」

 

「え?お、オレはンなこと覚えてねーけど……。」

 

「おいおい、じゃ結局天海はただ怪しい行動取ってたシロってことかよ。紛らわしいな!」

 

「…すみません。」

 

「で、結局犯人は誰なんだよ!?ピンクチビ!言いやがれ!」

 

「……お、落ち着いて…。」

 

 

「あのさ、もし本当に妹尾さんが共犯者なら…クロはよっぽど妹尾さんを守りたかったってことだよね…。」

 

「ほうほうほうほう、その心は?」

 

「2人の共犯関係を作れたとしても、どうやって『どちらがクロになるか』決めたんだろう…って思って…。」

 

「えーっと、ジャンケンとか?」

 

「…それは、ない。」

 

「クロは見つかれば処刑。共犯者はクロではないから処刑されることはないんですよね?」

 

「そうですね…。確かに、クロのリスクの方がずっと高いはずです。」

 

「どうしてクロはそんなリスクを負えたのか?ということだね。」

 

「カワイサ余ってニクさ500倍デス。シロガネを殺したカッタからヤッたです。」

 

「ちっげーよ!そのウルトラどチビを逃すためだろぅがよい!俺が必ずお前を外に出す!みんなと自分の命に換えても!!と!」

 

「うーん、でもねぇ、出会って間もない私たちが、そんな自己犠牲を発揮できるかしら?」

 

「もしかして…クロはそのリスクに今まで気が付かなかった…とかじゃねーよな?」

 

「殺人だぞ!?ンなワケあるかよ!」

 

「でもあたしくらいバカだったら気が付かなかったかもよ?」

 

「じゃあ君がクロなのかね?」

 

「んなわけないっしょー!あたしに殺人とかむつかしーこと分かんないし。」

 

「クロが本当にそのリスクに気付いてなかったなら、今…精神的にかなりキてるでしょうね!皆さんの中に動揺された方はいらっしゃいませんか!」

 

「そんな『お客様の中に』みたいな言い方で出てくるわけねーだろっ。」

 

「そもそも、共犯者はあくまで可能性の話でした。」

 

「や~ん、アタシたちぃ、もしかして誘導されちゃった系?」

 

 

「……。この話題になってから…顔色、明らかに変わった人がいたよ…。」

 

「え?」

 

「オイ!誰だよそりゃあ!?」

 

「ッ…!」

 

「…郷田さん…離さないと話せない。」

 

「うるせーな!早く言え!!」

 

 

「………妹尾さん…だよ。」

 

「……。」

 

「えーと?じゃあ…もしかして、いもこがリスクに気が付かずクロになったかんじ?ん?いや、いもこが共犯者だったよね?」

 

「だって…あたし、クロでも…共犯者でもないもん…。」

 

(妹尾さんは手に顔を埋めてまた泣き出す。しかし、チラリと見えたその顔色は確かに悪かった。)

 

(そういえば…妹尾さんは共犯者の可能性にずっと肯定的だった。彼女が共犯者なら、その可能性を示唆することは避けるんじゃないか…?)

 

(妹尾さんの狙いは…もしかして?)

 

 

1. 本当は共犯者だが、クロだと思わせる

2. 本当はクロだが、共犯者だと思わせる

3. 本当は共犯者だが、シロだと思わせる

 

 

 

「うぅ、ひっく、違うよ…みんなだって、蘭太郎お兄ちゃんがムラムラ変なコト言ってるって、思ってるよ…。」

 

(しまった…ムラムラ変なことなんて考えてないのに女性陣の目が冷たい…!)

 

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「妹尾さんにとって…『共犯者の可能性』は最後の砦だったんじゃないかな…。」

 

「最後の砦?」

 

「たとえ自分が怪しまれても、共犯者認定されてしまえば、クロとは見破られません。」

 

「じゃあピンクチビが青い顔してんのは…?」

 

「『共犯者がいる』こと自体間違いだと気付かれそうだから…ということかね?」

 

「そんなの…顔色で決められても困るよっ!あたしはクロでも共犯者でもないもんっ!」

 

「プチトマト…他の人は持ってなかった。」

 

「それに…妹尾さんが共犯者でクロの誤認のため自分を怪しく見せるなら…プチトマトより妹尾さんの私物を実行犯であるクロに渡せばいいんす。例えば、ヘアゴムの飾りとか。」

 

「蘭太郎お兄ちゃんひどいよ。ひどいよぉ…!」

 

(……本当に彼女が犯人なのだろうか。けど、彼女に犯行が可能な状況証拠が揃っている。)

 

(身長が高い白銀さんを狙って得するのは、捜査線から外れやすい小柄な人間だということ。それに…妹尾さんが小学校の外にいたということ。)

 

「ちょいとお待ちのタメゴロウ!」

 

(裁判が始まってからの流れを思い出していると、ぽぴぃ君の声が響いた。)

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「ノンノン!みんなお忘れかい?」

 

「実際に犯行が行えるのは小学校にいた人だけ!」

 

「ボクは小学校の外で妹尾さんに会っているのさ!」

 

「西エリアから小学校まで走れば5分っす。それは問題にならないっすよ。」

 

 

「いやいやいやいやいやりんぐ!」

 

「大事なことをお忘れよ。」

 

「いたのさ。佐藤クンが校門に。外にいる人知っている。」

 

「妹尾サンが小学校に入ることはムリムリ不可能!」

 

 

【モノファイル】→小学校に入ることはムリ

【中庭の様子】→小学校に入ることはムリ

【佐藤の証言】→小学校に入ることはムリ

 

 

 

「ほらほらほらほら御覧なさい!妹尾サンにはムリムリムリムリカタツムリ!」

 

(しまった…違ったみたいだ。)

 

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「その言葉…斬る!」

 

「ポピィー!?」

 

「小学校の外から中に入る方法はあったっす。」

 

「お?まさかまさか?中庭の抜け穴かい?小学生たち御用達と思われる、あれかい?」

 

 

「ええ。高校生では通ることは難しいっすが…妹尾さんはかなり小柄です。難なく通り抜けることができたでしょう。」

 

「オーゥ、ワタシ中庭と校門を行ったり来たりシテマシタからMs. セノオに気付きマセンデーシター!」

 

「マジかよ…本当に……妹尾が?」

 

「……信じられませんが…トマトを持っていたのが妹尾さんだけなら…。そうとしか…。」

 

「妹尾がトマト取るの忘れてなかったら…間違ってたよね。」

 

(……もしかしたら、取りたくても取れなかったのかもしれない。死んでも離さない、と言うように…白銀さんの手は固く閉じられていたから。)

 

「……本当に、あなたが…?」

 

「……そんなわけない!」

 

「…え。」

 

(妹尾さんは眼に涙をためて俺を睨み付けた。そして、矢継ぎ早にまくし立てた。)

 

 

 

理論武装 開始

 

「あたしは犯人じゃないよ!」

 

「あたしが殺すはずない!」

 

「白銀お姉ちゃんを殺す理由がないでしょ!?」

 

「犯人は白銀お姉ちゃんに恋してた人だよ!」

 

 

「間違ったらみんな死んじゃうんだよ!?」

 

「このままじゃ…お兄ちゃんも死んじゃうよ!」

 

「あたし…あたし…せっかくお兄ちゃんを見つけたのに…。」

 

 

  ×ケ △の ○手 ◻︎ガ

 

これで終わりっす!

 

 

 

 

 

 

「…じゃあ、キミの袖をまくって、手を見せてもらえないっすか?」

 

「え?」

 

(そうだ…あの時感じた違和感。)

 

 

 

「他の場所も調べましょう。」

 

(俺が言うと、妹尾さんと哀染君が歩き出す。白銀さんの遺体をもう一度視界に入れて、前を行く妹尾さんと哀染君を見た。)

 

(…?)

 

「どうしたの?早く行かないと…。」

 

(ふと感じた違和感。何だろうと考えていると、廊下へ続く引き戸に手をかけた妹尾さんが小さく声を上げた。)

 

 

 

(あれは、甘えん坊な妹に手を取られなかった時の違和感に似ていた…。妹尾さんが前を行く時、いつも手を引っ張られていたから…。)

 

「キミは捜査時間に一度、手の痛みを訴えましたね。あれはドアで傷付けたんじゃなくて…犯行時に痛めたものだったんじゃないっすか?」

 

「……。」

 

(妹尾さんの瞳からスッと涙がひいた。そのまま妹尾さんはニコリと笑って右手を見せる。その白く小さい手の指は分かりやすく腫れ上がっていた。)

 

「たぶん…ボーリング球を振り下ろす時…球の指の穴に指を入れてたのかな。それで痛めたんだね…。」

 

「あらぁ?その時手を痛めたとしたら、ナイフでめった刺しになんてできないんじゃない?」

 

「いや、おかしくないです。興奮状態の人間は痛みに気付きにくいことがあります。アドレナリン出まくってたら痛みを感じずに一連の犯行が可能です。」

 

(……自分で推理してきたが、信じられない。他の人たちも、同じようだった。自分を、彼らを納得させるために、事件を振り返っておこう。)

 

 

 

クライマックス推理

 

「事件が起きたのは今日の午前中。全員がバラバラに探索している時だったっす。」

 

「犯人はまず町の西エリアを探索する様子をぽぴぃ君や俺に目撃させ、小学校に向かった。朝食時の会話で門の辺りにずっと佐藤君がいることを知っていた犯人は、裏庭の抜け穴から小学校校舎に入った。」

 

「そして、校内で探索していた人に見つからないように図書室で用意を整えたはずっす。持っていたプチトマトを本棚の下に入れて、あらかじめ図書室に隠しておいたボーリングの球やアーミーナイフを取り出しやすいところに移動した。」

「準備を終えて、犯人は白銀さんを図書室に呼び出したっす。おそらく『図書室で何かを発見した』と言って。なぜ白銀さんだったのかは分かりませんが…たぶん、身長が高いけど華奢で非力そうな彼女なら…と思ったんでしょうね。」

「図書室に着いた白銀さんは犯人の『本棚と床の隙間に何かが落ちている』という言葉に従い、本棚の下を覗き込み、プチトマトに手を伸ばしたっす。這いつくばる形でね。」

 

「そんな白銀さんに、犯人はボーリングの球を打ち付けた。重力に手伝わせる形で振り下ろせば、力もコントロールもいらないっすから。これなら、高身長の白銀さんの後頭部を打ち付けて、自分が犯人候補から外れることもできる…。」

「犯人はその後、白銀さんにシーツを掛けた上で顔や体をナイフでめった刺しにした。おそらく、これが怨恨による殺人の可能性を偽装するためっす。」

 

「その後、犯人はアイコさんが裏庭にいないタイミングで裏庭から出た。そして、死体発見アナウンスが流れたのを聞き、校門から校内に入ったっす。」

 

「”超高校級のポエマー” 妹尾妹子さん、キミがこの事件の犯人っす。」

 

 

「……。」

 

「何か反論はないっすか?」

 

「…間違い、あるよ。」

 

「…あなたが、犯人じゃないってこと…?」

 

「…白銀お姉ちゃんを選んだ理由だよ。あたしが白銀お姉ちゃんを選んだのは……憎かったからだよ。」

 

「……!」

 

「あぁ!?」

 

「おかしいわねぇ。白銀さんがあなたに恨みを買うようなことなんてーー…。」

 

 

「おやおや、結論が出たようですね?ではでは、はりきって参りましょう!シロとクロの運命を分ける投票ターイム!」

 

(話の途中でモノクマに急かされ、俺は投票画面を見据えた。ボタンのひとつを震える指で押さえる。そしてーー。)

 

(票は妹尾さんに集まり、それをモノクマが「大正解!」と楽しげに発表した。)

 

 

 

学級裁判 閉廷

 

「クソ!クソッ!!何でだよ!?何で白銀を殺しやがった!?」

 

「ニクカッタ?肉買ったデスカ?」」

 

「つむぎが妹子に何したって言うの?」

 

「……何のために、あなたは白銀さんを殺害したんですか?」

 

(みんなの問いに、妹尾さんはニッコリ笑ってーー)

 

「……蘭太郎お兄ちゃんのためだよ。」

 

 

「………は?」

 

「あたしが、蘭太郎お兄ちゃんを町から出してあげるって決めたの。あたしが白銀お姉ちゃんを殺せば、蘭太郎お兄ちゃんはここのことを忘れて、あたしのお兄ちゃんになれるんだよ。」

 

「何を…言って…。」

 

(この異常な状況で屈託なく笑う妹尾さんは、一種異様な雰囲気だった。)

 

「ねぇ、天海お兄ちゃんは何で白銀お姉ちゃんが良かったの?おっぱい大きいから?背が高いから?髪が長いから?」

 

 

「あたしのお兄ちゃんなのに、ひどいよ…だから、殺したの。邪魔な白銀お姉ちゃんを殺したの。蘭太郎お兄ちゃんのためだもん、これくらいするよ!」

 

(何を…言ってるんだ?俺は…そんなこと、全く、望んでない。)

 

「でも…失敗しちゃった。ごめんね、せっかくお兄ちゃんになってくれたのに。」

 

(これが…彼女の望む兄…なのか…?)

 

「もっとお兄ちゃんと一緒にいたかったなぁ…。」

 

(妹尾さんが寂しそうに笑った。その表情が、妹の1人と重なる。)

 

(俺のせいで、白銀さんが死んだ?妹尾さんが殺した…?そんな絶望感と…)

 

 

「さーて、ではではおしおきタイムに参りましょうかー!!」

 

(妹尾さんがこれから処刑される絶望感。)

 

「……モノクマ。」

 

(考える前に、口が動いていた。)

 

 

「……俺が代わりに処刑されるっす。」

 

「っ!?」

 

「な、何言ってやがる!?」

 

「ら、蘭太郎お兄ちゃん…?」

 

「妹尾さん、キミをこのまま見送ったら…一生後悔しそうなんで。」

 

「だ、だからって何で、そんな…。」

 

「だ、ダメだよ、蘭太郎お兄ちゃんは死んじゃ…、」

 

「ーー代わりに、絶対残りの全員で生きて…ここから出てほしい…。」

 

「天海くん…。」

 

「あと…できれば誰か行方不明の俺の妹を捜してくれないっすかね…。俺としては、永本君なら見つけてくれるような気がしてるんすけど…。」

 

「オレにはそんな力ねーけど………分かったよ。名前、教えておいてくれよ。」

 

「天海クンの勇姿はボクが語り継ぐ、全部。」

 

「…天海君、貴方のために歌を歌うわ。毎日。」

 

「お、お兄ちゃん…!」

 

(俺は妹尾さんに笑いかける。白銀さんを殺してしまったことを許すことはできない。けれど、彼女を見殺しにすれば、きっと俺は俺自身を許すことができなくなる。……これでいいんだ。)

 

 

「…ねえ。天海クン。」

 

(モノクマが俺を見て嘲るように笑った。)

 

「何で身代わりOKみたいな空気に勝手になってんの?ダメに決まってるじゃん。」

 

「あ……。」

 

「当たり前だろー!?白銀さんを殺したのは妹尾さん!凶悪な殺人犯は妹尾さんなんだよ?そんな殺人鬼とこれから閉じ込められる他の人の身にもなってよねー!?」

 

(怒鳴り散らしたかと思うと、皮肉たっぷりな笑顔を見せた。)

 

「うぷぷ…最後に希望をチラつかせて、結局ダメでした〜なんて、究極的な絶望だよね〜!天海クンは分かってらっしゃる!キミは見事妹尾さんの絶望を深めることに一役買いました!いよっ!いらんことしぃ!!」

「というわけで、淡い希望を掴み損ねて絶望のドン底にいる”超高校級のポエマー” 妹尾妹子さんのために、スペシャルなおしおきを用意しましたー!!」

 

「ま、待て…!!」

 

「蘭太郎お兄ちゃん、もう1つ違うことがあるの!」

 

(モノクマが手元のスイッチを叩くと、どこからか伸びてきた首輪が妹尾さんを捉えて引っ張る。)

 

「凶器を隠したのは…あたしじゃない…!誰か、他の人だよ!だから…気を付け…っ」

 

(俺が彼女に伸ばした手は届かない。彼女のこちらに伸ばされた手は空を掴み…絶望に染まった表情で、彼女は裁判場から連れ去られてしまった。)

 

 

 

おしおき

“超高校級のポエマー” 妹尾妹子の処刑執行

『ろうどくかい』

 

妹尾さんが体を固定された状態で舞台上に立たされる。客席にいる大量のモノクマたちからポエムを聞かせろとヤジが飛び、彼女は詩を朗読し始めた。

 

その愛の詩に感動したように身を震わせる者、胸を撃たれたように手を心臓に持っていく者。

彼らのそばから現れたキューピッドのような扮装をしたモノクマたち。奴らは一斉に妹尾さんへ矢を放つ。

固定されて動けない彼女の顔へ、腕へ、足へ、キューピッドの矢が突き刺さる。何十、何百というキューピッドの矢。

彼女の口から発せられるのは愛の詩ではなく、悲痛な叫び。

 

それを聴いて再び心を打たれたモノクマの傍らに現れたキューピッド。それは、一際大きな弓矢で彼女を狙いーー彼女のハートを的確に貫いた。

 

 

(妹尾さんの悲鳴が聞こえなくなった裁判場は静まり返っていた。誰もが何も言えなかった。俺も、胃からせり上がってくるものを必死に耐えることしかできなかった。)

 

(誰かが言った。「帰ろう」と。どこへ?どうやって?帰る場所はあるのか?)

 

(足元がふらつく。それでも、裁判場から早く出たいという思いを原動力に動き出した。)

 

 

「……あなたは何も悪くない。白銀つむぎはあなたを恨んだりしない…。悪いのは……、この、コロシアイだよ。」

 

(小さく語りかけてきた哀染君の言葉がやけに遠くに聞こえた。)

 

 

 

【東エリア”野比家”】

 

(どうやって部屋に戻ってきたんだろう。)

 

(分からない…。)

 

(グルグルと、同じシーンが頭の中で繰り返されている。ここに来てからみんなと話したこと。見たこと。)

 

(白銀さんの物言わぬ遺体。冷たくなった指。妹尾さんの絶望の表情。)

 

(俺が原因になった…?俺のせいで…2人とも…?)

 

(俺が何もしなければ…関わらなければ…。)

 

(妹尾さんの最期の言葉が頭の中に木霊する。凶器を隠した人は他にいる……一体、誰が?)

 

(ーーいや、もう余計なことを考えるのはやめよう。俺は…何もしてはいけないんだ。)

 

(余計なことはしない…もう、何も。)

 

 

 

第1章 絶望ポケット 完

第2章へ続く

 

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