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第六章 See you (again). 非日常編

 

(しばらく続いた地響きが止んで、裁判場はようやく静けさを取り戻した。)

 

「お、おい。様子 見に行った方がいいんじゃねーか?」

 

「そ、そうだね。エレベーター使えるか確認しないとだし。」

 

(エレベーターホールに急ぎ、エレベーターの上りボタンを押した。エレベーターは問題なく動きそうだ。)

 

(地上は一体どうなっているんだろう。モノクマは佐藤君の仕業と言っていたがーー…。)

 

 

「捜査時間中、モノクマを見張っててくれないかな?放っておくと、またみんなの不安やコンプレックスを煽りそうだからさ。」

 

「モノクマ。天海さんは相棒の哀染さんがいなくて、捜査に身が入らないみたいなんだ。一緒に捜査してあげたら?」

 

 

(操作時間中に、彼が地上に爆弾をセットしたのか?)

 

 

 

【裁きの祠】

 

(エレベーターから出た俺たちが見たものは、荒れ果てた地上の姿だった。)

 

(建物は半壊して、あちこちから煙が上がっている。)

 

「な、な…何じゃこりゃぁ!!」

 

「か、火事だよっ!大変…!」

 

「大丈夫…もう沈静化してる…。」

 

「ハーア、バグがあるなんて聞いてないよ。何だよ、あの爆弾。デバッカー、何やってんだよー。」

 

「モノクマ。」

 

(俺たちの目の前に現れたモノクマは大げさにため息を吐いた。)

 

「今回は “卒業プログラム“なんて入れてないはずなのになぁ。」

 

「やいやい!何言ってるですか!もう安全なんでしょうね!?」

 

「うん。もう爆弾は取り除いたし、火事になりかけているところは消火したよ。というわけで…」

 

卒業試験についての説明を行います!」

 

「卒業試験?」

 

「そう。オマエラがこの支配からの卒業に足るかどうか試験を行います。」

 

「オマエラには外の社会を知った上で、自分たちの進路を決定してもらいたいからね。」

 

「外の社会?」

 

「そうだよ。外の社会を知って、このコロシアイ課外授業を卒業し外に出るのか、ここに残るか決めてもらうよ。」

 

「え、外…出られるの?」

 

「コロシアイとやらは終わったのか…?」

 

「はいはい、だからそれも外の社会を知って、オマエラが決めるんだよ。ここでコロシアイを続けるか、外に出るか、ね。」

 

「決めるも何も…外に出るに決まってんだろ…。」

 

「外の社会なんて…もう知ってる。」

 

「考えなしに知っていると言ううちは知らないも同然なのさ。四の五の言わずに外の社会について勉強しなさーい!」

 

「勉強に必要な教材は、この学園内に ばらまいておきました。もちろん、全てウソ偽りないフェアな情報だよ。」

 

「という訳なので、安心して社会見学に励んでくださーい!」

 

 

「あ、安心ともいかないか。崩壊しかけた建物を探さなきゃいけないし、黒幕への懸念もあるだろうしね。」

 

「く…黒幕?」

 

「え…佐藤が黒幕だったからコロシアイが終わった…とかじゃないの?」

 

「うぷぷぷ、佐藤クンは、黒幕じゃないよ。コロシアイにちょっと協力的だった一般参加者ってとこだね。」

 

「あれが『ちょっと』でたまるかよ!」

 

「じゃあ…まだ、あたしたちの中に…黒幕がいるの…?」

 

「うぷぷ、どうかな?せいぜい疑心暗鬼の中で頑張りなよ!」

 

「ちょっと待つっす。俺たちの中に黒幕がいるならおかしいっすよ。」

 

「どういうこと?」

 

「このコロシアイに黒幕がいるなら、モノクマは黒幕が操るただのロボっす。」

 

「な、何をぉ?」

 

「だとすると、モノクマが爆弾のことを知らないのはおかしいんすよ。モノクマが嘘をついていない限り。」

 

「そ、そうですわ!私たちみんな、爆弾があった あの部屋の存在を知っているのですから!」

 

「…ってことは、つまり…?」

 

「私たちの中に…黒幕なんていない。」

 

「よ、良かったぁ…。」

 

「……おい、じゃあ昨日の重大発表は何だったんだよ。オレたちの中に黒幕がいるっていうのは嘘だったのか?」

 

「うぷぷぷぷ。」

 

「嘘なんてついてないよ。ボクは黒幕でも何でも好きなように呼んでって言っただけで『嘘つきがいる』としか言ってないもん。」

 

「て…てめぇ…!」

 

(佐藤君が哀染君を殺したのは…黒幕を探した結果だった。)

 

(クソ…もっと早く…俺たちの中に黒幕がいないって証明できていれば…。)

 

「さてさて、ではでは、オマエラは死なない程度に頑張ってね。」

 

「せっかく ここまで生き残ったんだから、ガレキに潰されて死亡…なーんて つまらない死に方は なしだよ。」

 

(モノクマが皮肉めいた言葉を残して消える。)

 

「黒幕なんてあたしたちの中にいなかったってこと…なんだね。みんなを信じられるんだね。」

 

「そ、そうか…。」

 

 

「……。」

 

「天海さん…佐藤さんが残した47の数字は何だったの?」

 

「……あれが元素番号だとすると、銀。そして、銀の和名は白銀っす。」

 

「白銀?何で、急に白銀が出てくんだ?」

 

「ここみが最期に、つむぎの名前を書いたってこと?」

 

(佐藤君が白銀さんの名前を残した理由は、何だ?)

 

「あの、さ。犯罪ファイルを覚えてる?」

 

「……。」

 

「1番初めに殺されたのは、黒幕であるAに扮した双子の姉で…本物の黒幕は裁判に参加せずコロシアイを楽しんでいたって。」

 

「それがどうしたんだよ。」

 

「佐藤くんが白銀さんの名前を残す理由だよぉ。あれはダイイングメッセージ。あたしたちに伝えたかったんだよぉ。例えば…」

 

「……例えば、黒幕の存在…。」

 

「黒…幕。」

 

「……白銀さんにお姉さんか妹がいたら…。」

 

「本物の白銀が生きてて…このコロシアイを影で笑いながら見てるってのか…?」

 

「つ、つむぎが?」

 

「確かに…佐藤さんが彼女の名前を残す理由が他にありませんね。」

 

「最初に殺されたのは白銀さんじゃなかった…。本物の白銀さんは…どこかで私たちを見ている…かもしれないよ。」

 

「……。」

 

 コトダマゲット!【佐藤のダイイングメッセージ】 

 

「そっか…つむぎってコスプレイヤーだもんね。自分で変装したり、人を変装させたり…できるのかな。」

 

「まあ”コスプレイヤー”自体が偽証の可能性もあっけどな。」

 

「……彼女に兄弟姉妹は いないはずっす。」

 

「あ、そうだよね。らんたろーは…つむぎのクラスメイトだし…。」

 

「でも…本当にコスプレの才能があるなら…変装して誰かに成りかわることも…できる。」

 

「白銀さんは実在する人物にはコスプレできないんすよ。アレルギーが出るっすから。」

 

「その記憶も本当か分からねーだろ。」

 

「佐藤が言った通り…クラスメイトの記憶だって、ニセモノかもしんねーんだからな。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「と、とにかく、ひとまず私たちの中に黒幕はいないって分かったんだし!アゲアゲで行こうよ!アゲアゲ!」

 

「そ、そうだね!みんなで外に出られるんだから。」

 

 

(手分けして探索するためにみんなが散って行く。けれど、俺はしばらくその場から動けなかった。)

 

(白銀さんが黒幕…。そんな話、信じられない。)

 

(俺の記憶の中の彼女は、そんなことをする人じゃない。彼女は…優しい人だ。)

 

(それより、今は外の社会とやらの教材探しに集中しよう。)

 

(校舎が入れるようになったか確認するため、校舎前まで歩いた。)

 

(閉ざされていたはずの校舎の門は爆破され、門が開いている。反対に、5階までの階段は崩れてしまっていた。)

 

 

 

【校舎1階】

 

(門をくぐって校舎内に入る。草や苔が生えた地面に崩れたガレキが埋もれている。)

 

(ガレキのない場所を慎重に進む。が、西側はガレキでほとんど進めなかった。途中、女子トイレには入れそうだったが、さすがに止めておいた。)

 

(非常時であろうと、国が国なら即お縄だからな…。)

 

(諦めて来た道を引き返し、東側の通路を進む。途中の教室には入れないようだが、地下には行けそうだ。)

 

 

 

【校舎 地下1階 図書室】

 

「天海か…。」

 

(地下を降りた先、図書室らしい部屋の椅子にアイコさんが腰掛けている。黒づくめのロボットの手はマンガ本のページをめくっていた。)

 

「アイコさん、それは?」

 

「これは『マンガで分かる』シリーズ。」

 

「え?」

 

「まあまあまあまあ、慌てなさんな。とりあえず読んでみねえ。」

 

(俺に近い机の上に彼女は3冊の本を置く。全ての表紙に『マンガで分かる』の文句。更にそれぞれタイトルが続けられている。)

 

(『希望ケ峰学園の歴史』『希望ケ峰学園史上最大最悪の事件』『人類史上最大最悪の絶望的事件』…。)

 

(希望ケ峰…?何で、その名前がここで出てくるんだ?最大最悪の絶望的事件とは何だ?)

 

(混乱の中 その本を取り、読み始めた。全くタッチと作風の違う3冊のマンガ。そこには希望ケ峰学園について、そこで起こった事件について記されている。)

 

(希望ケ峰学園が “特別な才能を持つ高校生”を集めた政府公認の特殊教育機関であり、スカウトのみで入学を許可されていること。)

 

(才能の研究のために多額の資金を費やして非人道的実験を行なっていたこと。学園はこの実験の結果起こった事件を隠蔽しようとしたこと。)

 

(しかし、隠蔽が暴露され予備学科が一斉蜂起したこと。これらを発端に、”人類史上最大最悪の絶望的事件” にまで発展したこと。)

 

(それらが詳細に書かれていた。)

 

 

「……何だこれ。」

 

(全く覚えがない。希望ケ峰学園の断片的な記憶をたぐり寄せても、そんな物騒な事件は思い当たらない。)

 

(そもそも、事件自体 現実味を欠いている。これはただのマンガだ。現代のこの国で、こんな紛争まがいの事態になるはずがない。)

 

(…このマンガはきっとデタラメだ。希望ケ峰学園の実験やスカウト制度についても…。)

 

(俺はスカウトされたわけじゃない。”超高校級”の認定をもらった後、自分で希望ケ峰学園に入ったはずだ。)

 

 

「…ぜ、全然 知らんかった。希望ケ峰に、まさか、こんな。」

 

「アイコさん、希望ケ峰を知ってるんすか!?」

 

「な、なんだ貴様?我が学び舎の通り名くらい、当然 記憶している。」

 

「え。俺の学校も、希望ケ峰っすよ。」

 

「え?マジー!?おな校とか上がんじゃん!クラス違ったのかな!天海クンくらい目立つ頭の人に気付かないんだもん!」

 

(違うクラスか…アイコさんほど目立つ人に気付かないほどクラスがあったのか?記憶が断片的で思い出せない。)

 

「でも…そんな希望の学園で絶望的事件があったそうです…しくしく。」

 

(はしゃいでいたアイコさんは急に地の底まで落ち込んだような声を出して、自分で読んでいたマンガをこちらに差し出してきた。)

 

(タイトルは…『マンガで分かるコロシアイ学園生活』?)

 

(希望ケ峰学園で行われたコロシアイについて描かれたマンガだった。)

 

…………

 

(事件の黒幕は…“超高校級の絶望” 江ノ島 盾子か。)

 

(昨日 校舎5階で哀染君が呟いたことを思い出した。)

 

 

「……蘭太郎君、本当に僕らの中に…首謀者や黒幕がいると思う?」

 

「……俺は罠だと思うっす。モノクマ側が不利になる情報をわざわざ明かすのはおかしいっすから。」

 

「……そんなことをするのは、”絶望”ぐらいだもんね。」

 

 

(あの部屋の犯罪ファイルの1冊目と、”希望ケ峰学園のコロシアイ”は完全に一致する。)

 

(あのファイルは やはり、過去のコロシアイを記録したものなのか…。)

 

(俺たちがさせられているコロシアイと同じコロシアイ。それが、希望ケ峰学園で起こった?)

 

(哀染君は”超高校級の絶望”について知っていた?)

 

 

「天海クン、大丈夫?」

 

(気付けば、アイコさんが映るスクリーンが目の前にあり、彼女がこちらを心配そうな顔で覗き込んでいた。)

 

「天海クン、大丈夫だよ。江ノ島 盾子は死んだよ。」

 

(江ノ島…”超高校級の絶望”か。)

 

「ここまで来たんだもの。もう誰も死なせないよ。あたしが あなたたちを守るから!」

 

「アイコさん…。」

 

「私ね。これを読んで思い出したよ。私はただのAIじゃないんだ。アルターエゴと呼ばれる存在だったんだ。」

 

「アルターエゴ…?一昨日、あのメカメカしい建物で出た話題っすね。」

 

「うん。あそこに書いてあったことがアイコのことかは分からないけど…アルターエゴはみんなを守るよ。」

 

「たとえ…その後に必ず死が待っていても。」

 

「……アイコさんも、みんなと外に出るんすよ。」

 

「……。」

 

「ああ。ありがとな。俺、外 調べてくるよ。」

 

(アイコさんは静かに立ち上がって図書室から出て行った。)

 

 

(図書室の奥の扉から廊下に出る。目の前の少し建て付けが悪い引き戸の向こうはAVルームだ。)

 

(机の上に、これ見よがしにタブレット端末が置かれている。タブレット端末に触れると、画面が起動した。)

 

(サイコセラピューティック・コミュニケーション・シュミレーターとやらについての説明が書かれている。)

 

(装置を頭部に装着することによる “共感覚仮想世界“。プログラム。)

 

(これもモノクマが用意した資料なのか?これも卒業に関係するのか?)

 

(だとしたらーー)

 

  コトダマゲット!【共感覚仮想世界】 

 

(その時、頭上でガラガラと不穏な音が聞こえた。俺は慌ててAVルームの引き戸を引いて飛び出した。)

 

(乱暴に開けたせいか、扉からは嫌な音がした。が、気にせず地上への階段を駆け上がり、校舎の外に出た。)

 

(もう校舎に入るのは危険かもしれないな。)

 

(次はどこを調べようか…。)

 

 

 宿舎を調べよう

 カジノの看板がある建物へ行こう

 メカメカしい建物を見よう

全部見たな

 

 

 

(宿舎も ひどい有り様だった。)

 

(佐藤君は何で宿舎まで爆破させたんだ?)

 

(宿舎のホールに入ると、佐藤君の部屋の扉が大きくひしゃげているのが見えた。隙間から部屋に入れそうだ。)

 

 

 

【宿舎 佐藤の部屋】

 

(何とか体を滑り込ませ、部屋に入ることができた。)

 

「…天海さん。よく入れたね…。」

 

(中にいた木野さんが近付いてきた。)

 

「部屋の中はそんなに損傷してない…から…佐藤さんの持ち物を探そうと思って…。」

 

「俺もっすよ。彼がすでに開いていた宿舎まで爆破させたのにはワケがあるはずっすからね。」

 

「……。」

 

「あのね…中華料理店みたいな建物の扉も開いてた…。」

 

「中は全然…ローズさんっぽくなかったよ。それと…こんなものがあった。」

 

(彼女はレポート用紙の束をこちらに差し出した。パラパラと眺めてみたが、何が書いてあるのか全然分からない。)

 

「これは何すか?」

 

「これは…実験レポート。……ストレス耐久テストや体細胞クローン、人の遺伝子操作なんかの…。」

 

「それはまた…人権団体が黙ってない内容っすね。」

 

「うん…特にストレス耐久テストは…過度の痛みや刺激を与えた時の人のホルモン分泌について…詳しく記載してる…。」

 

「まるで…実際に人体で実験していた…みたいに。」

 

「……。」

 

(違法な実験がなされた証拠…か。)

 

 コトダマゲット!【実験レポート】 

 

「天海さん。あと、これ。」

 

(木野さんが俺の手にあるレポートの上に分厚い1冊の本を乗せた。)

 

「これは?」

 

発達心理学の本。ベッドの横に置いてあった…。これ…前のステージの本棚にはなかった。」

 

「たぶん…1つ目のステージか2つ目のステージから持って来たんだよ…。」

 

(確かに、佐藤君は1つ目のステージの図書室で熱心に本棚を見ていたな。)

 

「彼は…犯罪の心理学者じゃない。彼の専門は、子どもの発達心理学…だと思う。」

 

「……。」

 

「1冊だけ選んだのがこれなら…きっと、そう…。」

 

 

「……木野さんは、どうして彼がこんなことをしたんだと思いますか?」

 

「それは…イレギュラーだったのにっ…てこと?」

 

「……。」

 

(彼はコロシアイを起こさせるよう動いていた。それなのに、ここに来て黒幕を暴くために動き出した。)

 

(その変化が、どうにも腑に落ちない。)

 

「分からない…。」

 

「みんなに…生き残る価値がある…と思ってくれた。…私は、そう思いたい。」

 

「…そうっすね。」

 

「他にも何かあるか探してみましょう。」

 

(…とはいえ、部屋の中は特に気になるものはないな。あとは…。)

 

 

(爆発の衝撃で若干 形が変わっているシャワールームの扉を見た。)

 

(建て付けが悪くなっているドアを開ける。洗面台の上に、モノパッドが置いてあった。)

 

「これは…モノパッドっすね。」

 

「…どういうこと?佐藤さんもモノパッドを携帯してなかったの…?」

 

(哀染君のモノパッドも、部屋のシャワールームに置いてあったな…。)

 

(洗面台のモノパッドを起動する。すぐ電子音と共に持ち主の名前が表示された。)

 

「あれ?白銀さん…。」

 

「え?白銀さんが…何?」

 

「このモノパッドは、白銀さんのモノパッドっす。」

 

「…何で、白銀さんのモノパッドがここにあるの?」

 

(1回目の事件の時、佐藤君が回収していたのか?ーーいや、そうじゃない。)

 

「これは哀染君が持ち歩いていたものっす。」

 

「どういうこと?」

 

パスワード入力画面っす。前のステージで、哀染君が使うモノパッドに このパスワード入力画面があったのを見たっすから。」

 

 

「ーー哀染君、それは何すか?」

 

「あ、うん。このパスワード、全然覚えがないんだよね。蘭太郎君は解除できた?」

 

「……俺のモノパッドには、パスワード入力画面なんてないっすよ。」

 

「え?そうなの?」

 

 

(そうだ。裁判前に哀染君の部屋で見つけたモノパッドにはパスワード入力画面がなかった。)

 

(じゃあ、あの時 哀染君が見ていたのは…白銀さんのモノパッドだったのか?)

 

「どうして、哀染さんが白銀さんのモノパッドを持っていたの…?」

 

「哀染君は1回目の事件が起こった時、白銀さんのモノパッドを回収して持ち歩いていたっす。」

 

(あの時だ。白銀さんの事件を一緒に捜査していた時…。)

 

 

「他の場所も調べましょう。」

 

「……哀染君?」

 

(俺は白銀さんの遺体に向かって屈む哀染君の背中に声をかけた。)

 

「……何でもないよ。」

 

 

「佐藤さんが…哀染さんを殺害する時に回収したの?」

 

「そうでしょうね。佐藤君は今回の事件の前後でこれを回収してたんす。」

 

「……どうして?」

 

「パスワード入力画面があるのはこのモノパッドだけっすから。ここに、何か手がかりがある…そう考えたはずっすよ。」

 

(けれど、パスワードは5桁の数字だ。やみくもに入れても正解するはずがないな。)

 

 

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(『CASINO』の看板があった方は塀があって行けなかったな。)

 

(今朝までは固く閉ざされていた塀の門の前に来た。今 門は無理矢理こじ開けたように口を開けている。)

 

(しかし、なぜ佐藤君は、校舎や入れない建物ばかりを爆破した?ステージを覆う格子や壁を破壊した方が脱出に繋がるはずだ。)

 

(そんなことをしても、ここから出ることができないってことか?…どちらにしても、この中で手がかりを探す他ない。)

 

 

 

【カジノ前】

 

(門を抜けると学校に似つかわしくないゴテゴテのネオンに迎えられた。)

 

(ほんとにカジノがあるのか…。それに、隣の建物は何だ?ラブアパート?)

 

「うぷぷぷ、天海クンもお好きですなぁ!」

 

「……モノクマ。」

 

「塀は壊されたけど、カジノの扉は壊れてないからね。入れないよ。」

 

「ラブアパート?もちろん入れないに決まってるだろー!もともと ここは特別な鍵がなければ入れないんだからなー!」

 

(別に聞いてない。)

 

「代わりに良いこと教えてあげるから、そんなにガッカリしないでよ!」

 

「良いこと?」

 

「そう。”超高校級の絶望”について。それから、それらに対抗する組織について。」

 

(”超高校級の絶望”か…。)

 

「”超高校級の絶望”とは今や絶望的集団を表す代名詞だけど、元々は1人の女子高生だったんだ。」

 

(図書室のマンガで読んだコロシアイの黒幕…江ノ島 盾子か。)

 

(そしてモノクマは語り出した。江ノ島 盾子という人物がどんなに圧倒的な”絶望”だったのか。)

 

(絶望に堕ちた希望ケ峰学園の生徒たちが、プログラム世界でどのように殺し合ったか。)

 

(胸が悪くなりそうな話ばかりだ。トドメとばかりに、モノクマは笑いながら言った。)

 

「絶望たちは それはそれは江ノ島にご執心だったよ。身体の一部を自分に移植しちゃうようなヤツもいたからね。例えば、左手や子宮とか。」

 

「……江ノ島 盾子は機械にプレスされたはずっす。」

 

(校舎5階の犯罪ファイルの1冊目にあったのは、希望ケ峰学園でのコロシアイの記録だ。それによると、江ノ島 盾子は自らプレスされ命を絶った。)

 

(そんな死体なら、移植できるほど身体が残るとは思えない。)

 

「おやおや!もう そこまで知ってるんだね!感心感心!勉強熱心な生徒は大好きだよ!ガムテープの次くらいにね!」

 

(モノクマは俺の疑問には答えず、意味のない言葉を吐いて消えた。)

 

 

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【メカメカしい建物】

 

(今朝 調べられなかったメカメカしい建物は、爆発の影響を受けていないようだ。)

 

(綺麗なまま残る建物の中に入った。)

 

「おう、天海。」

 

(一昨日入った時より こざっぱりした部屋で、永本君がこちらを見た。)

 

「ここに爆弾があったって言ってたけど、そんなもんどこにもなかったぞ。」

 

「一昨日は、ここに大量にあったんすよ。」

 

(やっぱり、佐藤君が移動させたのか。)

 

「隣の建物も入れないままだった。この辺は爆弾 設置されてなかったみたいだな。」

 

「ここは どうしてだかモノクマが介入しないみたいっすからね。安全地帯として残そうとしたのかもしれません。」

 

「……そうか。」

 

「格納庫も一応 見て来たんだけどよ、哀染の死体はもう…なくなってたよ。」

 

「代わりにモノクマが来て、イヤミ言って去ってったよ。」

 

「イヤミ?」

 

「ああ。あらゆる才能を身に付けた希望の象徴がいたんだと。”幸運”の才能くらい当然 持ってるそうだ。」

 

「けど、それは ある学校の非人道的な実験の結果…生まれたもんらしい。」

 

「実験っすか。」

 

カムクライズルプロジェクト。天才中の天才、希望の象徴を生み出すための研究…だとさ。」

 

「…その学校の名前は聞いたっすか?」

 

「ああ。確か…希望ケ峰学園。モノクマはそう言ってた。」

 

(希望ケ峰……本当に俺たちの学園でそんな実験が行われていたのか?)

 

「しかし、ここは、格納庫 以上にSFみたいだな。」

 

「ああ、永本君がここに入るのは初めてだったっすね。」

 

「ああ。なんか秘密基地みたいだよな。」

 

(彼は言いながら辺りを見回しーーなぜか足をもつれさせて後ろに倒れた。)

 

(ガツンと大きな音をたてて、機械の上に倒れこむ。)

 

「な、永本君、大丈夫っすか?」

 

「ってて…ああ。大丈夫だ…って何だ、これ?」

 

(彼は倒れ込んだ機械の先のモニターを凝視している。一昨日 アルターエゴについて映し出されていたモニターだ。)

 

【参加者の設定とルール】

参加者の中には、学級裁判を導く主人公枠がいなければならない。

参加者の中には、調和を乱すトリックスター枠が1人いなければならない。

参加者の中には、途中で退場するヒロイン枠が1人いなければならない。

参加者の中には、alter ego枠が1人いなければならない(以下AI枠とする)。AI枠の姿は、アップデートまたは参加者たちが記憶を共有する人物に変更が可能。

参加者の中には、家ないしグループに起因するリーダー枠が最低1人いなければならない。ただし、リーダー枠が必ずしもコロシアイ生活でリーダーの役割を担う必要はない。

参加者の中には、サブカルチャーオタク枠が1人いなければならない。

参加者の中には、体の大きい筋肉枠がいなければならない。

参加者の中には、武道家ないし格闘家枠が1人いなければならない。これは筋肉枠と兼ねても差し支えない。

参加者の中には、”超高校級の希望” 候補がいなければならない。

 

「…何だ これ?」

 

(一昨日 見たのは一部だったのか…。)

 

「この参加者って…まさか…。」

 

「学級裁判とあるので…もしかしなくても、このコロシアイ参加者のことっすね。」

 

(俺たち16人に該当者もいる。けれど…設定とは何だ?)

 

「前のステージで見つけた”世界の秘密“。これも、何か関係がありそうっすね。」

 

(前回見つけた紙はモノパッドに挟んでいる。俺は紙を取り出して広げた。)

 

「ああ…それ、お前が代表で持っててくれたんだったな。」

 

 

1章時点のヒロイン枠は退場しなければならない。

2章では過去の殺人について明かされなければならない。

3章では何らかの二分構造がなければならない。

4章で退場するのは筋肉枠でなければならない。

 

(俺たちと関わりがあるとしたら…この”“とは何だ?1回目の事件を1章と数えているのか?)

 

(しかし、”世界の秘密”と参加者のルール。これがコロシアイに適用されているとしたら…明らかにおかしい。)

 

(これじゃあ…まるで、俺たちの未来や行動までも、あらかじめ決められていたみたいじゃないか。)

 

(ーーいや、事件が起こってから書き足していったと考えれば、おかしなことはない。)

 

(ただーー…。)

 

「…天海、この参加者の設定ってのもメモしとくから一緒に持っててくれ。」

 

「分かったっす。」

 

 コトダマゲット!【参加者のルールと設定】 

 

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(行ける範囲で、誰も調べてないだろう場所はーー)

 

(1つの場所が思い浮かんで、校舎を向いた瞬間、校舎の方から大きな音がした。)

 

(校舎内のガレキが崩れたのだろう。しばらく砂けむりが舞い、)

 

「あ、危なかった…。」

 

(祝里さんが校舎入り口でへたりこんでいるのが見えた。慌てて彼女の方へ向かった。)

 

「祝里さん!大丈夫っすか?」

 

「う、うん。女子トイレ…見てたらすごい音して…。」

 

(座り込んだ彼女に手を貸して引っ張り起こす。彼女は一瞬 俺の首元に視線を向け、また目を逸らした。)

 

「あのね…こんな紙があったんだ。」

 

(A4用紙だ。彼女から受け取り眺める。)

 

 

【希望ケ峰学園 被験者リスト】

59期 松井 麗ノ介、夕神音 美久、リー・ファン

66期 山門 撫子

70期 祝里 栞、木野 琴葉、嵯峨 心弥、永本 圭

82期 哀染 レイ、妹尾 妹子、前谷 光太

96期 AIKO-1123581321345589

99期 芥子 ぽぴぃ、郷田 毅

103期 天海 蘭太郎、白銀 つむぎ

 

(何だ…?これは。)

 

「あたしたちの名前…知らない名前もあるけど…これ、どういうことなんだろ?」

 

(希望ケ峰学園…全員がそうだったのか?被験者とは何だ?いや、そもそもーー)

 

「祝里さん、希望ケ峰学園に聞き覚えはないっすか?」

 

「えっ?ない…けど。」

 

「永本君たちとクラスメイトだったのは、何て学校っすか?」

 

「えっと、それが名前もクラスも思い出せないんだよ。けいやことは…ここみ…とも話したけど、思い出せないんだ。」

 

(アイコさんと俺は希望ケ峰学園の生徒だ。祝里さんたちもそうだったのか?)

 

「この70期とかって何だろ?あたしたち同い年なんだから、学年のことじゃないもんね。」

 

(そうだ、分からない。初日に俺たちはみんな同じ年齢だと確認した。もし みんな希望ケ峰学園 出身で、同期じゃないなら…どういうことだ?)

 

 コトダマゲット!【希望ケ峰学園 被験者リスト】 

 

「あ、あと らんたろー。これ、モノクマに渡してって頼まれたんだけど…。」

 

「『希望ケ峰学園公式資料集』?」

 

「う、うん。みんなに配ってるらしいよ。らんたろーに渡しそびれちゃったから、渡しといてって言われたんだ。」

 

(祝里さんから渡されたその本には、これまでマンガで読んだことやモノクマに聞かされたことが書かれている。)

 

(こんなことなら、あんな寒いマンガを読まなくても良かったんじゃないか?)

 

(さらに、絶望に対抗する未来機関の存在。未来機関で起こった事件についても詳細が記載されていた。)

 

(希望ケ峰学園が未来機関の支援により生まれ変わり、また”超高校級”の才能を持つ学生たちに門戸を開いたことも。)

 

(俺は新しい希望ケ峰学園に入学したはずだ。希望ケ峰学園の事件や過去についての記憶は全くないが…。)

 

 

『時間になりました!オマエラ、裁きの祠に集まってください!』

 

(時間になったか…。)

 

 

 

【裁きの祠】

 

(みんなが裁きの祠に集まった。全員、いつも以上に緊張した面持ちだ。)

 

(外に出られるかどうか。それがさらに緊張感を高めているのだろう。)

 

「あ…あのさ、らんたろー。こんな時に変なこと聞くけど…。それ、どうしたの?」

 

(祝里さんが俺の首元を指差した。どうやら服の中に入れていたシルバーアクセが走り回って出ていたらしい。)

 

「昨日、哀染君にもらったんすよ。」

 

「あ…そう、だったんだ。」

 

(2枚 重なったシルバータグの1枚を手に取る。その時、指に凹凸を感じて気が付いた。)

 

「パスワード!」

 

「うわあ!な、何?」

 

「パスワードっす。佐藤君の部屋にあったモノパッドにパスワード入力画面があってーー」

 

「あ…白銀さんの…モノパッドのこと?」

 

「白銀のモノパッド?」

 

「何でそんなもんがこのステージにあんだよ?」

 

「……佐藤さんの部屋にあった。哀染さんが持ち歩いてたもの…らしいよ。」

 

(俺はパスワード入力画面を開き、数字を入れていった。”11037“。シルバータグの1枚に彫られていた数字だ。)

 

(哀染君は白銀さんのモノパッドを持っていた。何か手がかりを得て、パスワードを形に残したんだとしたら…!)

 

(その予感は的中したようだ。パスワードを入力して、しばらくすると映像が流れ始めた。)

 

 

『えっと、今もう映ってる?ーー動画で撮られるのは慣れてないから変な感じだな。」

 

 

「え…。」

 

(俺は思わず動画の停止ボタンを押した。)

 

「……何で止めるの。」

 

「あ、すみません。驚きすぎて…。」

 

「今のって…つむぎだよね?」

 

「何で白銀の映像がモノパッドに出るんだよ?」

 

「と、とにかく続き!続きを見ようよ!」

 

「そうっすね。」

 

(俺はまたモノパッドの再生ボタンに手を伸ばした。)

 

(間違いなく、白銀さんだ。ここでの記憶、クラスメイトの記憶と違わぬ彼女の姿と声。彼女が死から1ヶ月も経っていないのに、ひどく懐かしい。)

 

 

『えっと、今さら名乗る必要はないよね。でも、地味にワケ分かんなくなってると思うし、まずはその説明からしておくね。』

 

『今、この映像に映っているわたしは、紛れもなくわたし自身だよ。たぶん、記憶を失って録画した記憶なんてないと思うけど。』

 

『えっと…この映像って、記憶を失う前の白銀 つむぎから、記憶を失った白銀 つむぎに宛てたものなんだよね。』

 

『それで、どうしてこんな映像を残してるかっていうと…あなたに伝えたいことがあるからなんだ。』

 

『あ、でも…この映像、地味に見るのに苦労するんだよね…。ほら、毎晩 変な夢を見たでしょ?』

 

『あの夢は、わたしたちが知った これまでのコロシアイの記憶なんだ。夢は記憶の復元らしいからね。寝不足になるけど、イベント前だと思って許してね?』

 

『それで夢の中からパスワードを導き出さなきゃならないんだけどーー』

 

『って、この映像を見てるってことは、パスワードが分かったんだね。うん、記憶の中で最も印象的な5桁の数字だもん。計画通り。』

 

『…何でわたしに こんなことができたのかって思うよね?それは、後で話すよ。それで、ここからが本題なんだけどさ。』

 

『実は、わたしがこのコロシアイゲームに参加するのは…今回が初めてじゃないんだ。』

 

『わたしは前回のコロシアイを生き延びた。…何も出来なかったけどね。ただ犯人にも被害者にもならなかっただけ。』

 

『でも、その中で気付いたこともあるんだ。ーーこのコロシアイの外に、あなたが思う世界はないってこと。』

 

『変なこと言うようだけど、あなたの知る外の世界と、現実の世界は違うんだよ。』

 

『なぜなら、あなたが今いるコロシアイの世界も、あなたの知る外の世界も作り物だから。』

 

『……あなたに分かりやすく言うなら、フィクション世界だよ。』

 

『あなた自身も、あなたの隣にいる人も。全部 誰かに設定されたキャラクターなんだ。』

 

『だから、コロシアイの世界から脱出しても、あなたが思う世界はない。嘘だと思うなら、コスプレしてみてよ。』

 

『あなたのコスプレなら、本当か嘘か…分かるはずだよ。』

 

『ーーでもね、絶対に絶望しないでほしいんだ。コロシアイを終わらせて…コロシアイと違う世界に行くことはできるんだから!』

 

『そのプログラムは、5回目の学級裁判が終わる時には作動するはずだよ。それが、2人になるまでコロシアイをせずにすむ、最後のチャンスかもしれない。』

 

『ーーもし、5回目までに首謀者を暴いたり、モノクマの不正を立証できれば…たくさんの仲間を失わずにコロシアイは終わるけど、それは難しいと思うから。』

 

『わたしは、今回ただ みんなが死んでしまうのを見てただけだった。でも、今度こそ、コロシアイを終わらせたいんだ。だから、協力して。』

 

『それでね、わたしがプログラムやこんな映像を仕込めた理由にも繋がるんだけど…』

 

『コロシアイの首謀者はーー』

 

 

(そこで、映像が大きく乱れ、彼女の声も姿も消えた。)

 

「……。」

 

(白銀さんは前にもコロシアイに参加していた?俺より前に拉致されていたってことか?)

 

(いや、それよりもーー)

 

「な、何だよ…フィクションって…。冗談だよな?」

 

「よく…分かんないんだけど…あたしだけ?」

 

「私も…分からない…でも、映像にまで残してるってことは…。」

 

(ここが作り物だって?俺たちがただの作り物の存在だって?)

 

(……。)

 

(だとしたらーークラスメイトたちの記憶はどうなる?)

 

(みんなと過ごした記憶は?世界を旅した記憶は?妹たちの記憶は?)

 

(そんなことーー信じられるはずがない。)

 

「……この映像が真実かどうか、まだ分かりません。」

 

(そうだ。モノクマ側が用意したフェイクの可能性だってある。でもーー)

 

(白銀さんの姿と声。信頼する人物からの言葉。それは、俺の心を掻き乱すのには十分だ。)

 

(もし、彼女の言うことが本当ならーー俺の中の彼女への信頼すら…信じられるものではなくなるわけだが。)

 

(ダメだ。考えがまとまらない。)

 

(考えるのを止めるな。違う視点で考えろ。なぜ哀染君が、このパスワードを手に入れられた?)

 

 

「このパスワード、全然覚えがないんだよね。蘭太郎君は解除できた?」

 

 

「……。」

 

(ひとつ、突飛な可能性が頭を通り過ぎて行った。)

 

(彼女の言ったことが本当なら、可能性がある。結局、思考は元の場所に戻ってしまった。)

 

(足元から地面が崩れるような感覚。立っているのか、起きているのか、寝ているのか。自分で自分が分からなくなる感覚だ。)

 

(人はこれを……絶望と呼ぶんだろう。)

 

 

「みんな!そんな顔しないで!自分の人格や記憶がプログラムの存在だって本当に思うの?」

 

「そう…だよな。作り物の世界や人間なんて…信じられねーよ…。」

 

「あり得ない…。」

 

「う、うん。SFじみてるっていうか…。」

 

「まあ、私は人格も記憶も作り物の存在だけどね。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

(全員 黙り込んでいると、エレベーターへの道と扉が現れた。)

 

(アイコさんの促す声でみんなやっと歩き出し、エレベーターに乗り込んだ。)

 

(裁判場へ向かうエレベーターの下降と共に、気持ちも深く沈んでいくようだった。)

 

 

(最後の裁判が始まる…。)

 

(俺たちは…卒業して外に出る。残ったみんなで、外に出る。)

 

(…そのはずだった。こんなところで終われない…そう思っていた。)

 

(俺を待っている妹たち。クラスメイトの記憶。隣に立つみんなや自分すらも…)

 

(嘘だったら。)

 

(命がけの学級裁判に、俺が立つ意味は……何だ?) 

 

 

 

コトダマリスト

 

【希望ケ峰学園設定資料集】

モノクマによって配られた本。”希望”と”絶望”の戦いの歴史がまとめられている。人類史上最大最悪の絶望的事件を起こした”超高校級の絶望”、過去のコロシアイ、未来機関と絶望の戦いなどについて記載されている。希望ケ峰学園は、生徒の募集を行わず、スカウトのみによって生徒を集めていたという記載もある。

【希望ケ峰学園 被験者リスト】

A4用紙に、16人分の”期”と名前が書いてある。

59期 松井 麗ノ介、夕神音 美久、リー・ファン

66期 山門 撫子

70期 祝里 栞、木野 琴葉、嵯峨 心弥、永本 圭

82期 哀染 レイ、妹尾 妹子、前谷 光太

96期 AIKO1123581321345589

99期 芥子 ぽぴぃ、郷田 毅

103期 天海 蘭太郎、白銀 つむぎ

【参加者の設定とルール】

“メカメカしい建物”のコンピュータから発見したデータ。内容は、

参加者の中には、学級裁判を導く主人公枠がいなければならない。

参加者の中には、調和を乱すトリックスター枠が1人いなければならない。

参加者の中には、途中で退場するヒロイン枠が1人いなければならない。

参加者の中には、alter ego枠が1人いなければならない(以下AI枠とする)。AI枠の姿は、アップデートまたは参加者たちが記憶を共有する人物に変更が可能。

参加者の中には、家ないしグループに起因するリーダー枠が最低1人いなければならない。ただし、リーダー枠が必ずしもコロシアイ生活でリーダーの役割を担う必要はない。

参加者の中には、サブカルチャーオタク枠が1人いなければならない。

参加者の中には、体の大きい筋肉枠がいなければならない。

参加者の中には、武道家ないし格闘家枠が1人いなければならない。これは筋肉枠と兼ねても差し支えない。

参加者の中には、”超高校級の希望” 候補がいなければならない。

【実験レポート】

ストレス耐久テスト、体細胞クローン、人の遺伝子操作などの実験レポート。人体実験をしていた可能性がある。

【佐藤のダイイングメッセージ】

前回のおしおき中、佐藤は『47』の数字を残した。元素番号47は銀を示す。

【白銀のモノパッド】

佐藤の個室で見つかった白銀のモノパッド。哀染が1回目の事件の捜査時間に回収して、持ち歩いていたと思われる。

【白銀のメッセージビデオ】

白銀のモノパッド内のパスワード入力画面に”11037″を入れることで再生された。記憶を失った白銀 つむぎから、記憶を失った後の白銀 つむぎに宛てたメッセージになっている。メッセージによれば、白銀が前回のコロシアイの生存者だったという。さらに、この世界がフィクションであることを語っている。

 

 

学級裁判編へ続く

 

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