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学級裁判 再開

 

(シンと静まり返る裁判場。ここまで話し合っても分かった事実が少なすぎる焦り。)

 

(誰もが緊張の面持ちで口をつぐんでいた。重い雰囲気の中、口を開いたのは…)

 

「あのさ。」

 

「アイコさんが言ってた動機は犯人を探す手がかりかもしれないよ。」

 

「せやろ!祝里が黒幕で今回のクロなんやて!」

 

「違うってば!!」

 

「祝里さんが…という話は置いておいて。」

 

「哀染君はコロシアイを止めようとしていたっす。彼は、黒幕を探そうとしていた…。」

 

「黒幕を探っていた哀染を邪魔に思っていたヤツが犯人…か。」

 

「じゃ、じゃあ、やっぱり今回は黒幕がクロ?黒幕を探せばいいんだね!」

 

「でも…黒幕をどうやって…探す?」

 

「探すのは正確に言うと黒幕じゃないよ。」

 

「え?」

 

「どういうことだよ?」

 

「正確に言えば、哀染さんが黒幕だと疑っていた人物だよ。」

 

「…哀染さんが疑ってた人物?」

 

「結局 黒幕じゃねーか。」

 

「えっと、レイが疑ってたからといって、黒幕とは限らないってこと?」

 

「黒幕じゃねーヤツを疑ってた…なら、そいつは哀染を殺す理由はねーんじゃ…?」

 

「犯人が黒幕かどうかは置いておこうよ。哀染さんが最も疑ってたのは、どんな人物だと思う?」

 

(哀染君が疑ってた人物…。)

 

 

1. イリーガル

2. イリュージョン

3. イレギュラー

 

 

 

「天海さん、今は言葉遊びをしているわけじゃないよね?”ir”や”il”が付く言葉を挙げてたら日が暮れちゃうよ?」

 

(しまった…視線がとても冷ややかだ…。)

 

 

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「”イレギュラー“。」

 

「これまで俺たちと違う行動を取っていたイレギュラー。哀染君はその人物を黒幕だと疑ってたっす。」

 

「そういや、そんなこと言ってたな。」

 

「じゃあイレギュラーとやらを探してみようじゃないかー!」

 

 

「えっとぉ、最初のステージは町だったね。白銀が殺されてぇ、妹尾が殺った。」

 

「確か…つむぎは這いつくばって本棚の下を見る体勢だったから、いもこみたいな小っちゃい子でも殺せたって話だったよね。」

 

「うん。そのステージで、イレギュラーが何をしたか覚えてる?」

 

(最初のステージでのイレギュラーの行動は…。)

 

 

1. 体育倉庫を封鎖した

2. シャワーシーンを覗いた

3. 凶器を隠した

 

 

 

「あーまーみーくん、何の話をしているのかな?」

 

(まずい…考え直そう。)

 

 

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「1つ目のステージで、イレギュラーは…凶器を町中に隠していたっす。」

 

「小学校の校舎にも隠してたんだよな。」

 

「クロだった妹尾様は凶器を隠したのは自分じゃないと仰っていましたね。」

 

「イレギュラーが隠した凶器を いもこが見付けて、つむぎを…殴ったってことだよね。」

 

「凶器を隠すことができたのは…誰?」

 

「そいつを特定するのは難しくねーか?誰かが凶器を隠したところなんて見てねーし。」

 

「ああ…。もし誰かが見てたらみんなに言うはずだ。」

 

「夜時間なら…みんなができたことだもんね…。」

 

「そうだね。夜時間の行動については、誰もが可能だから次に考えるべきは、妹尾さんと接触した人物かな。」

 

「接触した人物?」

 

「うん。彼女はどうして、1回目の事件を起こせたのかな?」

 

「んむむ?」

 

「”超高校級のポエマー”が、あんな風に身長差のある相手を襲う術を知っていたと思う?」

 

「思わねーけど…。何かの拍子に思い付いたってこともあるんじゃねーか?」

 

「何かの拍子って?」

 

「え?あー、自分より身長の高いヤツが屈む瞬間を見た…とかか?」

 

「そっか。妹尾さんと2人になったことがある人が怪しいかもしれないね。」

 

「でも、いもこと2人で話をした人なんて、いっぱい いるよ。」

 

「そうかもしれないね。特に怪しいのは図書室で妹尾さんと2人になった人だけど、根拠にはならないかもね。」

 

「……。」

 

 

「2回目のステージはどうだったっけ?」

 

「2回目のステージは牧場とか町があったよね。それで、鉱山でつよしが…ぽぴぃに殺された。」

 

(イレギュラーがしたこと といえば…。)

 

 

1. メモでぽぴぃを呼び出した

2. メモで永本を呼び出した

3. 昼食会でショーを主催した

 

 

 

「らんたろーって記憶力あんまり良くないんだね。」

 

「祝里さんが良すぎるんすよ。」

 

(記憶力には自信があったんだけどな…。)

 

 

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「イレギュラーは、永本君を鉱山に呼び出すメモを出したっす。」

 

「ああ。オレの才能を知っているから、教えて欲しければ鉱山に来い。そんな内容だった。」

 

「うん。確か文面は…『お前の才能を知っている。知りたければ深夜に鉱山に1人で来い』だったね。」

 

「ぽぴぃさんは死ぬ前…メモを書いたのは自分じゃないって言ってた…。」

 

「それだ!永本、そのメモを出せそうなのは誰でぃ!?」

 

「分かんねーよ。メモは筆跡が潰されてたしな。」

 

「どうして…イレギュラーはぽぴぃさんと郷田さんが会うことを知っていたの?」

 

「たまたま知ったのかもしれないし、ぽぴぃさんの表情から察したのかもしれないね。」

 

「ここでも怪しいのは、ぽぴぃと接触した人物ってことだね!」

 

「うーん、でも、みんなが ぽぴぃと話してたと思うよ?ほら、宿屋1階のレストランが溜まり場みたいになってたでしょ?」

 

「うん。でも、ぽぴぃさんは現場にレイピア2本にクワまで持って行ってた。”念のため”にしては、少し過剰だよね。」

 

「ぽぴぃさん本人でも気付かないような、不安を煽るようなことをイレギュラーが彼に言ったのかもしれないね。」

 

「そんな話をするなら…2人で話す…と思う。」

 

「……。」

 

「食事に行く時、ぽぴぃと話しながら行ったりもあったけど…もしかして、それで疑われちゃうの?」

 

「…オレも2人で話したことあったぞ。遠くに他のヤツもいたけど。」

 

 

「うー…次だ次!3つ目のステージでのイレギュラーの行動は?」

 

「3回目の事件…イレギュラーに目立った動きはなかった…はず。」

 

「前谷と夕神音が松井に殺された事件だな。」

 

「夕神音さんは安楽死薬を飲まされて、前谷さんは寝技の練習中に撲殺されました。」

 

「そうだね。確かにイレギュラーに目立った動きがない。でも謎は残ってるよ。松井さんが知っていた情報について。」

 

(松井君の情報についての謎?それは…。)

 

 

1. 木野が薬を持っていると知っていた

2. 永本のヘッドホンの機能を知っていた

3. 手紙の書き方を知っていた

 

 

 

「それは…みんな知ってる。」

 

(1回目の事件で永本君のヘッドホンについては話していたな。)

 

 

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「俺は、松井君が…木野さんが薬を持っていると知っていたことが気になるっすね。」

 

「……うん。」

 

「モノクマに聞いたんじゃないの?」

 

「3回目の裁判中、モノクマは”誰に薬を渡したか”までは話さなかったよ。」

 

「松井さんは木野さんが殺しに使える薬や劇物を持っていると確信して、宿屋に盗みに入ったんだよ。」

 

(そのために、手紙で夕神音さんに子守唄を歌わせて俺たちを眠らせたんだったな。)

 

(でも、モノクマは松井君に安楽死薬の存在は話しても、所在までは話していなかったはずだ。)

 

「モノクマは”誰に薬を渡したか”までは話さなかったはずっす。そんなことをしたら、学級裁判がすぐ終わる可能性があるっすからね。」

 

「そっか!もし木野が薬を使ってクロになったら、松井の証言でイッパツ解決になっちまうもんな!」

 

「私は…殺人なんてしないよ…。」

 

「大丈夫、分かってるよ。でも、それなられーのすけは どうやって知ったんだろ?」

 

「もしかしたら…松井さんは盗みに入った時点では、木野さんの持つ薬が安楽死薬だとは知らなかったのかもしれないね。」

 

「いや、でも盗みにまで入ってるんだぞ?」

 

「彼は木野さんが何かしらの劇物や毒を作っていると踏んで宿屋に盗みに入ったんじゃないかな?」

 

「作っていると踏んで…って、何故 踏めるんです?あの時はFチームとBチームにチーム分けされて、お互い話すこともできなかったんですよ?」

 

「Fチームの松井にはBチームの木野が実験していたか なんて分かんねーはずだべ?」

 

「…うん。私…宿屋からほとんど出なかった…。松井さんと接触は…ない。」

 

(そうだ。Bチームの人間なら気付くことは できても、松井君が確信を持つことは難しかったはずだ。)

 

「うーん、永本クンと祝里さんは、松井クンに木野さんのこと話したりした?」

 

「オレは松井にそんな話してねーぞ?」

 

「私もしてないよ。」

 

「うん。じゃあ、彼はいつ知ったのかな?たくさん人が集まった時かな?」

 

(みんなが集まった時…それはーー)

 

 

1. BチームFチームのチーム分けの時

2. 動機発表の時

3. 永本が子守唄で倒れていた時

 

 

 

「あれ?その時そんな話したっけ?」

 

(してなかったな。)

 

 

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「……永本君が子守唄で倒れていた時っすね。」

 

「え?そうなのか?」

 

「あの時…Fチームのみんなが永本君を運ぶのを見送っていた時、俺たちは…俺と哀染君と佐藤君は木野さんについて話していたんすよ。」

 

「うん。木野さんは劇物を作っているかもしれないって話をしたよ。」

 

「……そう。」

 

「そういえば、あの時 ことはとアイコ、美久はいなかったよね。」

 

「あっしらは宿屋の酒場で天海の旦那たちを待ってたんでさぁ。」

 

「うん。永本さんの一件があって、僕らBチームもすぐ宿屋に入ったよね。でも、僕 見たよ。」

 

「松井さんが永本君を運ぶみんなから離れて、教会に入って行ったところ。」

 

「たぶん彼は僕らの会話を聞いて、夕神音さんの手紙に書き足したんだ。『みんな寝不足だね』って。」

 

「それで…夕神音さんは子守唄を歌って…私たちを寝かせた…。」

 

「その間に松井は木野の部屋から薬を盗んだんだな。」

 

「つーか、佐藤。オメー何でそんなこと黙ってたんだよ?」

 

「ごめんね。その時はまだ、分かってなかったんだ。」

 

「えっ、あ。はい。そうですか。」

 

「……。」

 

「なあ、この話はイレギュラーと関係あるのか?」

 

「たまたま…松井さんが私の話を聞いて…薬を盗んだ。…そうだよね?」

 

「そうだね。たまたまかもしれない。」

 

「そ、そうだよ。1回目の事件で凶器を隠したのが…考えたくないけど…ぽぴぃかつよしだったら…さ。」

 

「ぽぴぃがオレにメモを送ってないってのは…嘘かもしれねーよな。」

 

「それを言ったら、『凶器を隠してない』っていう妹尾ちゃんも疑わしくなってくるかな?」

 

「その場合、イレギュラーは3回目4回目の事件の時、すでに死んでいたことになりますね。」

 

(ーー違う。死を目前にして…そんな嘘をつく理由はない。)

 

(妹尾さんが言ったこと…ぽぴぃ君が言ったことは…事実のはずだ。)

 

 

「そうだな…。4回目の事件は…山門が自殺しようとした…それを阻止したローズが殺した。イレギュラーは何もしてねー。」

 

「そうかもしれないね。じゃあ…どうして山門さんは、あのトラップを選んだのかな?」

 

(山門さんが自殺に使おうとしたのは天井が落ちてくるトラップ。それを使った理由は…。)

 

 

1. プレスされたかったから

2. 即死のトラップだったから

3. 1番近くにあったから

 

 

 

「……そんな理由で、アレ使おうと思うか?」

 

「……俺なら思わないっすね。」

 

 

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「あのトラップが最も苦しまずに死ぬことができる即死のトラップだから…っすね。」

 

「それは見りゃ分かるだろ。イレギュラー関係あんの?」

 

「関係ないと思う…。」

 

「ふむ。やっぱ この時点でイレギュラーは生きてなかったんじゃないの?凶器が隠されたりもしてなかったし。」

 

「……言ったんすよ。」

 

「ん?何を?」

 

「山門さんは『このトラップなら即死する』という言葉を聞いて、自殺に使う計画を立てたんす。」

 

「え…?それを言った人が…イレギュラーってこと?」

 

「え?え?イレギュラーが『即死トラップ』って言った…言っただけ?」

 

「そんなことで…山門さんが自殺するなんて、思えない…。」

 

「どうかな?他人の言葉で決意を固めたとも考えられるよ。自分で分かっているだけと、人の言葉もあるのとでは大きく違うからね。」

 

「イレギュラーは山門が自殺したがってるって分かってたってことか?そんなことーー」

 

「山門さんだけに向けて言ったんじゃなかったのかもしれないし、山門さんの体調の悪さに気付いていたのかもしれないよね。」

 

(あの時…山門さんは『あのトラップなら苦しまず死ねる』と確信した。『即死トラップ』と言った人がイレギュラー…。)

 

(……だとしたら、おかしい。イレギュラーがこの中にいるとしたら、明らかにこの裁判の流れは変だ。)

 

 

「それで、イレギュラーは何がしたかったんだよ?」

 

「そ、そうだよ。凶器を隠したりしても、イレギュラーには何の得もないじゃん。」

 

「……。」

 

「天海さん。」

 

「……何すか?」

 

「イレギュラーの狙いって何だったんだと思う?イレギュラーの目的って何だろうね?」

 

(イレギュラーの狙い…それはーー)

 

 

1. コロシアイ促進

2. コロシアム観光

3. コロシアイ阻止

 

 

 

「僕は真面目に聞いてるんだよ?」

 

(真面目に返そう。)

 

 

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「コロシアイを起こすことっす。」

 

「ほわっ!?」

 

「イレギュラーは自分の手を汚さず、殺人事件を起こす もしくは複雑化させようとしていたっす。」

 

「それって…完全に黒幕っぽいじゃん!やっぱりイレギュラーが黒幕?」

 

「……。」

 

「でも、イレギュラーが今も生きてるかは分からないんじゃ、ないかな?」

 

「おい、佐藤。イレギュラー探しはもう無意味だろ。」

 

「じゃあ、天海さん。」

 

(佐藤君は彼らの言葉が聞こえないかのように、こちらを見て笑っていた。)

 

「今までの振り返りを踏まえて、イレギュラーって誰だったんだろうね?」

 

(これまでの話から…イレギュラーと思われる人物は1人しかいない。)

 

(…が、そうだとするとおかしい。)

 

(イレギュラー自身が、この場を誘導して自供しているようなものだ。)

 

 

▼イレギュラーは誰?

 

 

 

 

 

「どういうことだ!リンタロウ!」

 

「……蘭太郎っす。」

 

「ピンポンパンポーン!こちらのコロシアイは某携帯裁判ゲームよりずっと良心的です。殺人をするかどうかは任意となっております。」

 

 

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「イレギュラーは…佐藤君。キミっすね。」

 

「え!?」

 

「そ…そんなはずないよ!」

 

「……。」

 

「え、何で黙るの?ここみ?」

 

「佐藤さん…何か言って…。」

 

(周りが狼狽する中でも、佐藤君 本人は笑顔を崩さずこちらを見つめていた。)

 

「ちょっと待てよ。」

 

(彼の声が低く響いたのは、裁判場が静かになりかけた時だった。)

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「それはおかしいぞ。」

 

「ぽぴぃと郷田の事件を思い出してくれよ。」

 

「郷田がぽぴぃを呼び出したのは、互いがクラスメイトだと思い出したからだ。」

 

「つまりオレ宛てのメモは、クラスメイトを確認してから書かれたもんだろ?」

 

「けど、メモには『お前の才能を知りたければ、深夜に鉱山に1人で来い』ってあったんだぞ?」

 

「文字通り受け取るなら、永本君の才能を知っている人が書いたと考えるのが自然っす。」

 

 

「だから、それ自体おかしいんだって!」

 

「メモは、オレが自分の才能を知らないかのように書いてあったんだ。」

 

「メモを書いたヤツは、オレが才能を思い出してないと思ってたヤツだ!」

 

「オレが才能を隠してるって知った佐藤が、このメモを送るのはおかしいだろ!」

 

「こんなメモ、”超高校級の幸運”の才能を知っている人間は送らないはずだ!」

 

 

【モノクマファイル】→才能を知っている人間は送らない

【超高校級の幸運の才能】→才能を知っている人間は送らない

【哀染と前谷の手紙】→才能を知っている人間は送らない

 

 

 

「どうせお前も…こんなの才能だと思ってないんだろ。」

 

(そんなことは言ってないんだけどな…。)

 

 

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「むしろ、キミの才能を知らない人間がメモを書いたら、あんなメモにはならないんすよ。」

 

「は?」

 

「天海さん、どういうこと…?」

 

「鉱山に永本君が呼び出されたそのメモ。時間が書いてないっす。」

 

「確かに『深夜に来い』だけだったよね…。」

 

「え?あ!確かに!何で?ただ深夜に呼び出すだけじゃニアミス…それどころか事件を止めることになるかもしれないのに!」

 

「イレギュラーがしたいことと合わないじゃん!」

 

「イレギュラーは知ってたんす。永本君、キミなら必ず事件が起こるタイミングで鉱山に現れるって。」

 

「キミにはそういう才能があるって。」

 

「……は?」

 

「何だよ…それ。そんなの幸運でも何でもねーじゃねーか。」

 

(彼は消沈した瞳を見せて、うな垂れた。)

 

「ずっと考えてたよ…。オレがもっと早く鉱山行ってたらぽぴぃを止められたって。」

 

「けい…。」

 

「オレが惚れ薬を見つけたって みんなに言っておけば、たぶん松井は2人も殺さなかったよな…。」

 

「……。」

 

「破れたオレの服をローズが追わなければ…山門の自殺現場を目撃してクロになることもなかった。」

 

「えーと、えーと、タラレバ男はやめようよう。」

 

「何が幸運だよ…。何が…才能だよ…。」

 

(絞り出したような声だった。そして、黙った彼の代わりに口を開いたのは、微笑を浮かべた佐藤君だった。)

 

 

「試してみたんだよ。永本さんの才能が本物なのか。」

 

「時間の記載がないメモを見て、永本さんが事件に立ち合うことになるのか。場所は人通りの少ない山側だって分かってたからね。」

 

「永本さんが鉱山へ向かえばどこかで鉢合うだろうと思ってたけど、まさか鉱山内で事件が起こるとは思わなかったよ。」

 

「郷田さんもヘビ嫌いなのに、何で あえて鉱山の中で待ち合わせたんだろうね?」

 

(淡々と語る佐藤君の声には全く感情が入っていない。)

 

「……佐藤、お前…。」

 

「ここみ…嘘だよね?」

 

「……。」

 

「え、えっとぉ…イレギュラーがやってるコロシアイ促進…黒幕っぽいけどぉ…佐藤が黒幕だったってこと、なの…?」

 

「どうかな?僕が黒幕なのかな?」

 

(彼はコロシアイを起こそうと画策していた。やっていることは…黒幕だ。)

 

(でも…違和感が拭えない。黒幕なら最後の2人になるまでコロシアイをさせたいはずだ。)

 

(それに、彼は この裁判を誘導していた。まるで、自分の行動を暴かせるように。)

 

 

「キミの目的が分かんねーっす。」

 

「そうかな?本当に思い付かない?」

 

「才能をしっかり思い出さなくても…体に染み付いたモノがあったんだろうね。」

 

「僕には “才能が見たい風景“が、記憶なんてなくても分かったんだよ。そのために、イレギュラーを生み出した。」

 

「…何、言ってるの?分かんないよ…。」

 

「”才能が見たい風景”だか”終わりの風景”だか知んねーけどよ!」

 

「さ、佐藤さんの才能って…結局 何なんですかぁ…?」

 

(彼の目的と才能…これまでの彼の言動から予測できるのか?)

 

 

 

ブレインサイクル 開始

 

Q.コロシアイを起こすため画策した理由は?

1.シロ全員をみな殺しにするため

2.コロシアイで大儲けするため

3.コロシアイの中で実験するため

 

Q.コロシアイで得られる実験データとは?

1.仲間との絆と未来への誓い

2.極限状態の人間の行動や心理

3.絶望により育つ希望

 

Q.佐藤の才能は?

1.犯罪心理に関わるもの

2.希望マニア

3.チームプレイのスポーツ

 

繋がった!

 

 

 

「キミはコロシアイの中で実験してたんじゃないっすか?」

 

「実験…?」

 

「……。」

 

「佐藤君は不安をよく口にしていたっすね。」

 

「ああ…確かに。いつもは小動物みたいにちっこくなって震えてたよな。」

 

「けど…それは自分が不安だったからじゃない。俺たちの不安を煽っていたんすよ。」

 

「え…。何それ。」

 

「極限状態で、俺たちがどんな行動を起こすか。どういう心理状態になるか。キミはそれが見たかった。」

 

「……。」

 

「キミの才能は、犯罪や心理に関わるものーー違うっすか?」

 

(俺をじっと見ていた彼の視線が、一瞬モノクマの方へ移動した。そして…。)

 

「正解だよ。」

 

(そう言って、また笑った。)

 

「嘘だよ。嘘。ここみはそんなことしない、よ。」

 

「また分からないフリしてるの?」

 

「…っ。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「考えない。聞かない。言わない。キミたちって、頭の悪いサルみたいだね。じゃあ、真実を教えてあげるよ。」

 

 

「最初のステージ。天海さんがアイコさんに連れて行かれた時、図書室で妹尾さんと2人になったんだ。」

 

「妹尾さんはその時、すでに天海さんをかなり気に入ってたみたいだね。『白銀さんのところに行ったのかな』って言ったら結構 動揺してたよ。」

 

「そんな話をしてたら、彼女が凶器を見つけたみたいだったから、見せてみたんだ。」

 

「僕が本棚の下に手を入れて、彼女でも殺せそうな姿を。そしたら彼女、何も言わずに凶器をまた隠してたよ。」

 

「……。」

 

「次の事件の時はね、ぽぴぃさんの顔色が悪かったから探りを入れたんだ。誰かに呼び出されたんだろうってすぐに分かったよ。」

 

「だからね。ほんの少し種を蒔いた。『何でクラスメイトがコロシアイの動機なのかな?クラスメイトを殺したい人がいるのかな?』」

 

「『それが怖いから…僕は念のためカマを携帯してるんだ。でも、体格差があったら全然意味ないよね』ってね。」

 

「……それで ぽぴぃは…念のためクワとレイピアまで、持って行ったの?」

 

「3つ目のステージでは、みんなに聞こえるように木野さんの劇物の話をしたんだ。誰かが殺人を起こすと踏んでね。」

 

「松井さんは驚くぐらい決断が早かったよ。劇物の存在を聞いたその足で、それを盗み出すプランを実行したんだから。」

 

「まあ、松井さんは2つ目のステージからヘビの人形を持って来てたぐらいだし、ずっと機会をうかがっていたのかもしれないね。」

 

「4回目の事件は予想外だったかな。山門さんの具合が悪そうなのは分かってたし、何としてでも外に出るか自殺か…とは思ったけど…」

 

「まさか、ローズさんが無理矢理 犯人になるとは思わなかったよ。……それも、すごい発明で、ね。」

 

「……。」

 

「山門の体調に気付いてたなら…何で言ってくれなかったんだよ…そしたら…。」

 

「気付いてたら何?何もできないよ。こんな閉鎖された空間で。」

 

「と、とにかくイレギュラーが誰かは分かったでやんす。で、結局 佐藤クンが今回のクロってことで良いんでやんすか?」

 

(佐藤君が哀染君を…殺した?それなら、なぜ彼はわざわざ俺たちを誘導した?)

 

(彼はまた一瞬 俺たちから視線を移し、それからニコリと笑った。)

 

 

「僕がイレギュラー。そして、哀染さんはイレギュラーを探していた。それで、答えは分かるでしょ?」

 

「くそ…。」

 

「う、嘘だよ!」

 

「……。」

 

「嘘なんかつかないよ。僕には動機があったんだから。」

 

(佐藤君がイレギュラーなら、哀染君を殺した理由も頷ける…はずだ。)

 

(けれど…どこか腑に落ちない。)

 

「それでも、キミのしていることはよく分かんねーっす。」

 

(このステージに来てからの彼は…不安を煽るようなことは言わなかった。)

 

「分からない?ここまで言っても分からないの?哀染さんを殺したのは、僕だって。」

 

「俺が分からないのは…キミがこの裁判を誘導していることっすよ。」

 

「哀染君 殺害のクロを見つけることは難しかったはずっす。それを、イレギュラーを持ち出してまで暴かせた。」

 

「そ、そうだ!イレギュラーを探させたのは佐藤じゃねーか!」

 

「あはは。実験が行きすぎた結果かな?失敗だよ。」

 

「このステージに来てからのキミは実験をしてるようには見えなかったっす。」

 

「……何 それ。そんなの、根拠にならないよ。」

 

「とにかく、犯人が分かったなら投票タイムだよ。僕が黒幕なら、僕が処刑されて”コロシアイ”が終わるよね?」

 

「ええ…?佐藤くん黒幕は考えてなかったんですけど…。」

 

(佐藤君が黒幕だとは思えない。裁判を、まるで自供のために誘導したクロが…黒幕のはずがない。)

 

(彼は…何をしようとしている?どうして哀染君を殺害した?)

 

(クロが裁判を誘導して正しい推理をさせるのは…俺たちシロがおしおきされないようにするため…だ。)

 

(彼は俺たちを生かそうとしている…?)

 

(それが…彼の目的なのか?)

 

 

 

理論武装 開始

 

「実験してるって言ったでしょ?」

 

「今回の事件だって、この裁判だって、実験にすぎないんだよ。」

 

「このステージに来てからは実験してるようには見えなかった?」

 

「そんなの天海さんの単なる主観だよ。」

 

 

「僕は知りたかっただけだよ。」

 

「犯人の立場から追い詰められた時の心理状態を。」

 

「”超高校級の犯罪心理学者”としてね!」

 

「哀染さんを殺した理由なんて、邪魔だったから以外 他にないんだよ!」

 

 

△殺害 ◻︎黒 ×幕 ○の

 

これで終わりっす!

 

 

 

「いや、キミが哀染君を殺したのには違う理由があったはずっす。」

 

「キミは…黒幕を殺そうとしていたんじゃないっすか?」

 

「……。」

 

「キミは、哀染君が黒幕だと思って…それで殺害した。」

 

「え?レイを?」

 

「何で哀染?確かに様子は変だったけど…。」

 

「……情報量の違い。」

 

「情報量?どういうこと?」

 

「哀染さんは僕らとは明らかに違う情報を持っていた。この”コロシアイ”についての情報をね。」

 

「だから、モノクマ側だと疑われて僕に殺された。」

 

「……天海さんはそう考えてるみたいだよ。」

 

「いやいや、でも佐藤はイレギュラーで、これまでのコロシアイのきっかけ作ってたんだよな?」

 

「ならなら〜、コロシアイの黒幕を見つけようとするのは変だよ〜。」

 

「うん。天海さんの言ってることは間違いだからね。」

 

「僕はイレギュラーだ。哀染さんにそれを暴かれそうになって殺した。それだけだよ。」

 

「ついでに、犯罪者側の心理を体験したかったしね。」

 

「サイコパスなの?しれっと才能明かしてたけど、マッドサイエンティストなの?」

 

(彼の言葉に反論する証拠はない。けれど…彼の様子が変わったのは前回の裁判からだ。)

 

(彼は変わった。コロシアイを起こさせるイレギュラーから…黒幕を見つけてコロシアイを止めようとするほどに。)

 

(前回裁判の記憶を辿るーーしかし。)

 

「天海さん。哀染さんは僕が殺しちゃっていないから、いつもの事件のまとめをお願いしてもいいかな?」

 

「動機の部分はキミの妄想のままでもいいからさ。」

 

(彼の言葉によって、まとまりかけていた思考は四散した。)

 

 

 

クライマックス推理

 

「事件が起こったのは夜時間。モノクマが黒幕の存在をちらつかせたこともあり、哀染君はコロシアイを終わらせるための方法を探っていたっす。」

 

「5階のノスタルジックな部屋を調べていた哀染君は犯人に頭を殴られ気絶してしまった。」

 

「犯人は気を失った彼を格納庫まで連れて行ったっす。哀染君は身長の割にそんなに重くなかったから、移動は可能だったんでしょう。」

 

「格納庫に到着して、犯人はトイレに哀染君を閉じ込め、爆発物をトイレ内にセットした。」

 

「どうしてそんなことをしたのか。それは、犯人が哀染君をこのコロシアイの黒幕だと考えたからっす。」

 

「おそらく、犯人は目を覚ました哀染君に尋問したっす。爆弾を脅しにして、格納庫の外の小窓から。」

 

「哀染君を黒幕だと思って殺害したものの、哀染君はコロシアイの黒幕でも首謀者でも…裏切り者でもなかった。」

 

「犯人の推理は外れ、学級裁判が開かれた。仕方なく犯人は、自らがイレギュラーだと俺たちに暴かせるよう裁判を誘導したっす。」

 

“超高校級の犯罪心理学者” 佐藤ここみ君!キミがしようとしてることは何なんすか?」

 

 

「あはは。本当にキミの妄想を取り入れたんだね。しかも、尋問という妄想もプラスして。」

 

「確かに、それなら わざわざ格納庫に被害者を運んだのも説明できなくはないね。一応、トイレの窓が開いてたのも納得できるのかな?」

 

「まあ、どちらにせよ、犯人は決まってるんだ。だから、とっとと始めてほしいかな。」

 

 

「……。」

 

「……私…は、佐藤さんに投票できない…。」

 

「え?木野ちゃん何言ってんの?」

 

「クラスメイトの記憶が…ある。だから…投票できない。」

 

「へえ。情が移っちゃったんだね。クラスメイトの記憶がある分、長く一緒にいた気持ちになるもんね。」

 

「それだけじゃ…ない…。」

 

「あなたが言ってくれなきゃ…気付かなかったことがあった…から…。」

 

「何 言ってんの?」

 

「……そう、だね。ここみが言ってくれなきゃ…あたし、ずっと自分の罪に向き合うことはなかった。」

 

「……。」

 

「あたしも…投票できないよ。」

 

「……モノクマ。」

 

「あー、ハイハイ。投票タイムでは必ず誰かに投票してね。誰にも投票しない人には、死が与えられちゃうんだからね。」

 

「えっ…。」

 

「……。」

 

(モノクマの無機質な言葉に、木野さんと祝里さんは顔を曇らせた。)

 

「お、おい、お前ら、マジ変なこと考えんなよ?」

 

 

「……はは。」

 

「あはははは!」

 

(堰を切ったような笑い声が木霊する。そして、佐藤君はこれまでにない声量で言い放った。)

 

「ここまで成功するとは思ってなかったよ!」

 

「お前らマジで完全に騙されてたんだな!オレがお前らにかけた言葉なんて全部 実験だったんだよ!」

 

「オレは見たかっただけだ!」

 

「過去の過ち、身勝手な欲望、抱き続けるコンプレックスを突いたら、どんな反応するかってな!」

 

「……。」

 

「好奇心で追い詰めたオレに感謝してるんだ?面白すぎるよ!」

 

「予測と違う結果こそ、実験の醍醐味だからね!実験は大成功。お前らのバカさ加減にこっちが感謝するよ!」

 

「バカさ加減で思い出したんだけどさ。クラスメイトの記憶が本物か分からないって話したよね?覚えてる?」

 

「……。」

 

「オレが黒幕で、お前らを隠れ蓑にクラスメイトを名乗ってただけかもよ?」

 

「そしたら、お前らバカは黒幕のために投票放棄で死ぬことになるんだね!」

 

「ここ、み…。」

 

「今までのコロシアイはオレのせいで起こった。オレがみんなを死に追いやったんだよ?」

 

「『自分のせいで人が死んだ』なんてウダウダ言ってないで、よく考えろよ!」

 

「さて、最後の実験だ。投票でどんな結果が出るのか…見させてもらうよ。」

 

(裁判場に響く彼の声が消えた頃、モノクマが投票を促した。)

 

(いつもより長い時間をかけた投票時間を経て、モノクマは投票結果を告げた。)

 

(6人分の票が、佐藤君に集まっていた。)

 

 

 

学級裁判 閉廷

 

「またまたまたまたまた大正解ー!哀染 レイクン?レイさん?を殺したクロは、佐藤 ここみクン?ここみさん?なのでしたーー!」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「へえ、さすがに投票放棄を選ぶバカはいなかったようだね。」

 

「そうそう。投票放棄を選ぶのはバカだけだよ。大事なことだから二度言うね。投票放棄を選ぶのはアルティメットバカ!!」

 

「佐藤君、今のキミの目的は…何となく分かったっす。でも、イレギュラーだったキミが変わったのはどうしてっすか?」

 

「天海さん、まだその妄想引きずってるの?」

 

「冒険家ってやっぱり、非日常的な刺激がないと生きていけないのかな?」

 

「……。」

 

「とにかく、ここからはキミたち自身で真実を見つけなきゃならない。」

 

「まあ、大丈夫でしょ。頭のいいキミならーーキミたちなら真実に辿り着けるはずだよ。」

 

(裁判席から、自分でモノクマの方へ歩み寄る彼がこちらを振り返って笑った。)

 

「ここみ…。」

 

「そうそう、祝里さん。本当は僕もキミの呪いについては半信半疑だよ。」

 

「…え。」

 

「キミがまず考えるべきは、本当に呪いがあったのかどうか、だね。」

 

(彼はそのまま裁判長席の前へ立った。)

 

「モノクマ。僕は何も言ってないよ。これで、僕がしたことに対してお前が振りかざしてる物騒なモノは使わないよね?」

 

「うぷぷぷ。まあね。これはボクだって使いたくないからね。」

 

「約束できるね?」

 

「いいよ。ボクは約束は守るクマだからね!」

 

「うん。じゃあ、これを見ている人 全員が証人だ。約束は絶対 守ってもらうよ。」

 

「おい…何を冷静に話してんだよ…。お前…これからーー」

 

「永本さん。キミの才能は実験で実証済だ。”使える”ってね。」

 

「は?」

 

「生まれ持った才能なんて、信じられなかったけど…実験結果はないがしろにできないからね。僕はキミの才能を信じてるよ。」

 

「その力を信じて、みんなを守ってね。」

 

「さてと、モノクマ。そろそろ始めたら?」

 

「はいはーい、では”超高校級の犯罪心理学者”(仮)佐藤ここみクンのために、スペシャルなおしおきを用意しましたー!」

 

「と思ったけど、せっかくだから、こっちの おしおきを使わせてもらうよー!」

 

「”超高校級の???” 佐藤ここみクンのためにスペシャルなおしおきを用意しましたー!」

 

(モノクマの声をBGMにするように、彼はまた全員へと振り返った。)

 

「オレが死ぬところ、ちゃんと見ててね。化学者さん。」

 

 

 

おしおき

 

“超高校級の???” 佐藤ここみの処刑執行

応え合わせ

 

“佐藤 ここみ”は、暗い道を1人で歩いている。自分の存在すらも認識できない暗闇。

生理的な恐怖に歪みそうになる口の端を引き上げて歩けば、頼りない光が2つ見えた。小さな光が、道しるべの文字を照らしている。

左には『仲間』、右には『知的探究心』。

恐らく、謎かけだ。『お前にとって大切なものは何か』?簡単だ。

迷うことなく、右に進んだ。すると。

ブザー音と共に、背中と肩に鋭い痛みが襲った。手探りで形を確認するに、小学校にあったのと同じタイプのボーガンの矢だ。

 

次の分岐点まで、血を流したまま進む。

左には『大切な人を笑顔にする方法』、右には『恐怖に染まる人々の顔』。

『知的探究心を満たすものは何か』?これも簡単だ。

右に進むと、今度はブザー音と共に、腹に鈍痛。見れば、鋭利な槍が腹部を突き刺していた。重いし、痛い。

重力に負けないように持ち上げた口の端に、温かいものが伝った。

 

次に見た分岐点の明かりは小さい。自分の視界が霞んでいるせいだろう。

何とか読み取れる文字は、左に『超高校級のセラピスト』右に『超高校級の犯罪心理学者』。

これが、”超高校級”を思い出せない人間へのおしおきか。アホらしい。とんだ茶番だ。どちらを選んだところで、結果は変わらない。

足を止めることなく右に進む。が、足はそれ以上 動かなかった。ブザー音と共に噴射したガスが足をその場に縫い付けた。ーー毒ガスが撒かれたのか。

 

そのまま、重力に任せて身体が地に伏した。まだ、死ぬな。意識を手放す前に、するべきことがある。

唇を引き上げて、あの会話を思い起こす。

 

「あの情報量で永本さんの才能を言い当てられるのは、モノクマ側の人間だけだよ。」

 

「……。」

 

「それに、キミの様子は4日目の朝からずっとおかしかった。」

 

「僕に対しても、キミが焦った時 みんなに対してもーー」

 

「あ…そっか…。それだけで分かっちゃうなんて…すごいね。」

 

「まあ他にも色々 理由があるんだけどね。……認めるのかな?」

 

「確かに、みんなより情報が多かったのは認めるよ。でも、モノクマ側なんかじゃない。」

 

「全部、話すよ。これまでのこと。」

 

…………

 

「その話は、キミがモノクマ側じゃないという証明にはならないよ。黒幕なら、何だってできる。」

 

哀染「うん。だから、ここで…殺してくれていいよ。」

 

「本気で言ってるの?僕は頭おかしい奴だから、本当に殺すよ?」

 

「もし、それでもこのコロシアイが終わらなかったら……信じてくれるよね?」

 

「……。」

 

「佐藤君。これはチャンスなんだよ。」

 

「この裁判で、コロシアイを終わらせるんだよ。」

 

「……いいよ。僕はキミがモノクマ側って確信してるからね。乗ってあげるよ。」

 

「うん。それでも学級裁判が始まったら…コロシアイが終わらなかったら…さっき言った通り、裁判の不正を訴えて。」

 

「それできっと…コロシアイは終わるはずだよ。あなたも、おしおきされなくて済む。」

 

「……分かった。」

 

(恐らく…モノクマは ここでの出来事を見てる。だから…あいつがみんなを人質にしたら、この約束は守り切れない。)

 

(その時は、別の策を用意すればいいだけだけど。)

 

 

自分の腹の血を指にのせ、地面に這わせた。『47』の数字をできるだけ明るいところに、大きく描く。さて、彼らはこれをどう取るか。

意識が途切れる瞬間、誰かの笑顔が見えた気がした。

 

 

「……。」

 

「ああ…。」

 

「くそ…。」

 

「もう、やだよ…。」

 

「……。」

 

(笑顔のまま死んだ彼の顔が頭にこびりついて離れない。)

 

 

「オレが死ぬところ、ちゃんと見ててね。化学者さん。」

 

 

(その言葉の通り、みんながしっかり彼の最期を見ていた。)

 

(前回おしおきされたローズさんの分も。これまで起こってきたコロシアイのおしおきを思い起こしながら。)

 

(……?)

 

(なぜ彼は、木野さんじゃなく、化学者と言ったんだろう。)

 

(そんなことを思った瞬間だった。)

 

 

(すさまじい地鳴りと共に、裁判場が大きく揺れた。)

 

「な、何だ何だ!?」

 

「じ、地震!?」

 

(ーーいや、地震じゃない。頭上から鳴り響く轟音は、何かが爆発するような音だ。)

 

「佐藤クンの仕業だね。」

 

「オマエラが地下にいる間に上を爆破して、何か手がかりを残そうって魂胆かな?」

 

(その言い方…やはり黒幕は佐藤君じゃない。)

 

(いや…そもそも、黒幕が俺たちの中にいるなら、明らかにおかしいことがある。なぜ、こんなことに気が付かなかったんだ。)

 

「ホント馬鹿だなー!ここを破壊しても、行けない場所には何もないのに!」

 

「でも、またデータをぶっ壊されたら かなわないから、ボクは爆弾処理でもして来るよ。」

 

(モノクマは苛立ったような顔をして、その場を去った。)

 

(残された俺たちは、轟音の中で立ちすくんでいた。)

 

(……ダメだ。考えるのを止めるな。佐藤君の行動には全部理由があるはずなんだ。)

 

「木野さん!」

 

(俺は地鳴りの中でも聞こえる程度の声で、黙り込んでいる木野さんへ呼びかけた。)

 

「47の数字に心当たりは ないっすか?」

 

「……。」

 

(彼女は一瞬だけ考えるそぶりを見せて、告げた。)

 

「47は…の元素番号。」

 

(その言葉に、とある記憶が蘇った。もうすでに死んでしまった2人と会話した記憶だ。)

 

 

「ふふ、白銀さんの名前も素敵ですよ。『白銀』は”銀“の和名でしょう?白銀 つむぎ…美しいしらべです。」

 

「うはあ…名前褒められると地味に照れるなぁ…。」

 

 

「……47は銀…。」

 

「銀……白銀さん?」

 

 

 

第五章 047は二度死ぬ 完

第六章へ続く

 

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