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第六章 See you (again). 学級裁判編Ⅱ

 

学級裁判 再開

 

(俺たちが共に過ごした哀染君は、白銀さんのコスプレだった。)

 

(俺がそう言うと、その場をしばらく沈黙が支配した。)

 

「信じられないかもしれないっすけど…白銀さんのコスプレなら、俺たちが気付かないほど似た存在になれるんすよ。」

 

「クラスメイトの記憶では、彼女は声もそのキャラクターそっくりにすることができてたっす。」

 

「それに、白銀さんと哀染君は身長も同じだったしーー」

 

「ま、待って待って?今まで あたしたちと一緒にいたのが、レイじゃなくて つむぎだったって言ってるの?」

 

「う…うっそだぁ。そんなのムリだよぉ!」

 

「あ、ああ。それはさすがに…な。」

 

「…天海さん。根拠があるの?」

 

(白銀さんと哀染君が入れ替わっていた根拠。それは、前回の裁判で謎のまま終わった”あれ“。)

 

(そして、代わりに佐藤君の部屋で発見されたものだ。)

 

 

【白銀のモノパッド】

【実験レポート】

【希望ケ峰学園公式資料集】

 

 

 

「それが根拠になるの?」

 

「……ならないっすね。」

 

 

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「もちろん、白銀さんの映像が入った白銀さんのモノパッドっす。」

 

「哀染さんが白銀さんの事件の時に回収して…佐藤さんに殺された時、佐藤さんが回収した…はず。」

 

だったんすよ。」

 

「え?えっと、レイ…じゃなくてつむぎが、ここみ?しんや?に殺されたんじゃないってこと?」

 

「あーー!ややこしい!その名を隠してここに現れた奴 多くてややこしいーー!」

 

「白銀さんは1回目の事件前夜に哀染君にコスプレし、哀染君と入れ替わった。」

 

「その間に本物の哀染君が白銀さんとして殺された。だから、白銀さんは殺された哀染君のモノパッドを回収したっす。」

 

「え?えっと?」

 

「……最初の事件、本当は哀染さんが殺された。哀染さんに扮した白銀さんが、事件現場から本物の哀染さんのモノパッドを回収した…?」

 

「そっか。校則で貸し借りできないってあったし、入れ替わってたとしてもお互いのモノパッドは本物なんだ。」

 

「って、ホントに?ボクたち、わたしたち、入れ替わってるー!?」

 

「哀染のモノパッドは哀染の部屋で見つかったんだよな?」

 

「はい。前回の裁判で、哀染君がモノパッドを携帯していなかったことが論点になったっすね。」

 

哀染君のモノパッドは携帯する必要がなかった。俺たちが哀染君だと思ってたのは、白銀さんだったんすから。」

 

「それが本当なら…佐藤さんは、哀染さんの姿の白銀さんを殺し…彼女のモノパッドを回収して部屋に置いていたってこと…だね。」

 

 

「でも、さすがに…コスプレの達人といえど道具やメイクがないと別人になるのは難しいっしょ?」

 

「1つ目のステージの宿舎…俺の部屋には旅行雑誌や簡単な旅の道具があったっす。」

 

「妹尾さんの部屋には、詩集や文房具があったそうっすよ。」

 

「あ、あたしの部屋にも、ロウソクとかワラ人形とかあったよ?五寸釘は… なかったけど。」

 

「私の部屋…本とリトマス試験紙があった…。」

 

「私の部屋は、ウイルスのバスターCD-ROMがあったな。私はCDを受け付けないから使わなかったが。」

 

「オレの部屋はマンガと、このヘッドホンがあったくらいだったな。」

 

「うぷぷぷ、あれは才能溢れる若者へボクからのプレゼントだよ。永本クンはテキトーに高校生が喜びそーなもの用意しただけだったけどね。」

 

「何で音楽媒体なしのヘッドホンとアメコミマンガが喜びそーなものなんだよ。」

 

「高校生なのにマンガ好きじゃないの?スイーツ嫌いのOL、チャンコ嫌いの相撲取り、クマ嫌いのロンパファンみたいだね?」

 

「……これ以上ワケ分かんねーこと言わないでくれ…。」

 

「とにかく、1つ目のステージの宿舎には、一応それぞれの才能に合わせた道具がいくつかあったんす。」

 

「そっか、つむぎの部屋にはコスプレの道具があったのかも。」

 

「ええ。おそらく、カラコンや毛染めの類があったんでしょうね。」

 

「それでも、入れ替わってたら気付かねーか?顔も違うし。」

 

「元々 顔立ちが似てたんすよ。眼鏡を外した彼女は…白銀さんは、哀染君に少し似てたっす。」

 

「白銀と哀染が似ていた…?」

 

(1つ目のステージで、彼女が眼鏡を外した姿。あれを見た時の既視感は、哀染君によるものだったんだ。)

 

 

(白銀さんの裸を完全に見てしまった。)

 

「………?」

 

(白銀さんの眼鏡をかけていない姿に既視感がある。…誰かに似てるのか…?)

 

 

(それが偶然なのか設定だったのかは知らないが。)

 

「そういえば…時々、レイ…みんなを呼ぶ時 いつもと呼び方が違ったりしてた、よね?」

 

「1回目の事件前日…白銀さんの顔色 悪かったけど、次の日は入れ替わるように哀染さんの顔色が悪くなってたね…。」

 

「3つ目のステージで…哀染さん、自分はAB型じゃないって言ってた。」

 

「佐藤が殺したのは…哀染にコスプレしてた白銀…だから あの死体は女で、白銀と身体的特徴が似てたのか…?」

 

(みんなが「そういえば」と口々に言う。わずかながら、みんなも哀染君の様子に違和感を抱いていたらしかった。)

 

(ーーどうやら、間違いないようだ。他にも決定的な根拠がある。俺たちが哀染君だと思っていた人物は…)

 

 

1. オタク臭かった

2. パスワードを知っていた

3. オネエ口調だった

 

 

 

「えーと、失礼じゃない?価値観の違いやダイバーシティを無視した発言は極刑だよ。」

 

(世界を廻る者として…価値観の違いをリスペクトする必要があるな。)

 

 

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「2人が入れ替わっていたとすると、俺たちが哀染君と思っていた人物がパスワードを知っていたのも納得いくっす。」

 

「パスワードって、あのつむぎの映像の?」

 

「はい。映像の中で白銀さんは言ってたっすね。『夢の中にパスワードのヒントがある』って。」

 

「俺たちが行動を共にした”哀染君”が、もし本物の哀染君なら…あのパスワードに辿り着けなかったはずっす。」

 

「哀染さんじゃなくて…白銀さん本人だったから、パスワードが分かった?」

 

「はい。そして、俺にパスワードを託したんす。」

 

(俺は、昨日 受け取ったペンダントのシルバータグをみんなに見せた。)

 

「白銀さんは、この数字を夢で見て、万が一のために俺たちに残したんす。」

 

「そ、それで、情報量の違いで佐藤に殺された?」

 

「佐藤さんは…知ってたの?」

 

「おそらくは。佐藤君が残した47…白銀さん。あれは、自分が殺した人物を指していたんす。」

 

「それに、“哀染君”と前谷君の手紙の筆跡…見覚えがあったんすが、あれは記憶の中の白銀さんの字と同じだったと思うっす。」

 

 

「いや、でも待てよ。もし本当に入れ替わってたとして…何で白銀が哀染になり変わってたんだよ!?」

 

「それは…分からねーっす。」

 

「ハアア?」

 

(なぜ白銀さんは俺たちに正体を明かさなかった?せめて、俺にだけでも打ち明けてくれれば…。)

 

(ーー死なせることには…ならなかったはずだ。)

 

「どうしてかは分からないっすが、白銀さんは ずっと哀染君にコスプレしていた。」

 

「つまり、哀染君はフィクションの存在っす。」

 

「ーーいや、彼だけじゃない。白銀さん自身も、俺も、みんなも。この世界自体がーー」

 

 

「オッホン!」

 

(俺が言うのを遮って、クマらしからぬ咳払いが裁判場に響く。)

 

「超理論をもっともらしく並べてるところ悪いけどね。白銀さんはオマエラのコスプレはできないよ。」

 

「というか、最初のいくつか以外はできないはずなんだなぁ。」

 

「……最初のいくつか?」

 

「こっちの話。それより天海君、よーく思い出してみなよ?白銀さんが誰かのモノマネをしたことはない?それから、どうなった?」

 

 

「あ、そうそう。ご飯はみんなで食べようって郷田君が言ってたから2人も呼びに来たんだよ。」

 

「郷田君が?」

 

「『こんな辛気クセェ空気でボッチ飯なんてしてたら精神がイカれちまう!他のヤツら呼んでみんなでメシ食うぞコノヤロー!』だって。」

 

「……似てるっすね。さすが”超高校級のコスプレイヤー”っす。」

 

「……天海君、コスプレとモノマネは違うんだよ。わたし、フィクション以外のコスプレするとアレルギー出るから…そういうこと言わないでね…。」

 

「えっ?す、すみません…?」

 

「うう…コスプレしてないのに、急に喉がイガイガしてきたよ…。」

 

 

「……白銀さんは…郷田君の真似をして、アレルギーが出ていたっす。」

 

「うぷぷぷ、思い出した?」

 

「郷田の真似?」

 

「それは、えっと、コスプレとは違うの?」

 

「白銀さんは…郷田君のコスプレはできない…。」

 

「どういうこと?」

 

「この世界がフィクションだから、白銀は哀染と入れ替わったんだろ?」

 

「はーあ、白銀さんにも困ったもんだね。どうやったか知らないけど『ここがフィクション』なんて言うのは最悪だよ!」

 

「レイヤーはレイヤーでも、もはや “超高校級のネタバレイヤー”だよ!」

 

(俺たちが哀染君だと思っていた人物は白銀さんだった。これは間違いないはずだ。)

 

(白銀さんは哀染君にコスプレすることができた。)

 

 

「みんな。最初のステージでの哀染君について、覚えていることを話してくれないっすか?」

 

「それって、白銀と入れ替わる前までの哀染 レイってことだよな?」

 

「はい。どんな些細なことでもいいっす。」

 

「……白銀さんじゃない哀染さんは…よく笑ってたし、こんな状況でも顔色 良かった…。」

 

「いつでも どこでもアイドルスマーイルって感じだったよね。」

 

「初対面でも割と馴れ馴れしかったな。女子は名前で呼び捨てだったし。」

 

「つむぎじゃない方のレイは、ここみのことも呼び捨てだったよね。あと、”Great Leo“っていうアイドルユニットだって言ってたよ。」

 

「俺は国内の有名人をあまり知らないんすけど…みんなは彼を知っていたっすか?」

 

「え?えっと、あたしもテレビあんまり見ないから…。」

 

「私も…。哀染さんのことは知らなかった。」

 

「オレは割と音楽 好きなんだけどさ、哀染のグループのことは知らねーな。」

 

「…わたくしも存じ上げません。」

 

(……白銀さんは彼を知っていたようだった。彼はーー)

 

 

1. 週末ヒロイン

2. 崇拝の対象

3. やっぱりフィクション

 

 

 

「アイドル…ハンドル…グラブル…英語から この国の言葉となったカタカナ語は、外国人学習者にとって難解なんですよ。」

 

「はっ!今、ボク憑依されてた?前ステージで自己犠牲という名の自殺を止められ惨殺された彼女に!?」

 

(……不愉快だ。間違えないようにしよう。)

 

 

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「白銀さんは、哀染君にはコスプレできて郷田君の真似はできなかった。」

 

「それは、哀染君はフィクションの存在で、郷田君はフィクションじゃなかったからっす。」

 

「レイはフィクションで…つよしは違う?」

 

「77期生…ジャバウォック島のコロシアイを思い出してほしいっす。」

 

「あれも…プログラムの中だった。」

 

「確か、77期生は1人以外、現実世界からアバターとしてコロシアイの仮想空間に入ったんだよな?」

 

「1人はNPC…ノンプレイヤーキャラクターだったね。哀染君はNPCだったってこと?」

 

「えっと、えっと、待って?レイはフィクションで…」

 

「郷田さんはフィクションじゃない?」

 

「……なら、オレたちは?」

 

「そうだよ!あたしたちは!?あたしたちもレイと同じなの?」

 

(俺たちは…?俺たちは……どう、なんだ?)

 

 

1. フィクション

2. ノンフィクション

 

 

 

「……そう。」

 

「やっぱり…あたしたちは…そうなんだね。」

 

(…また、俺の言葉で絶望させてしまった…。)

 

 

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「俺たちは…フィクションじゃない…。」

 

「俺たちはジャバウォック島の参加者たちと同じっす。」

 

現実世界から共感覚仮想空間に入ったアバターってこと?」

 

「はい。この世界は、確かにプログラムっす。でも…俺たちは、アバター。現実世界の俺たちが、この世界に入っただけなんすよ。」

 

「じゃ、じゃあ、あたしたちはフィクションとかじゃないんだね?実在する人間なんだよね?」

 

「よ、よかったぁ!オイラも人間なんだね!」

 

「……アイコさんは…どうだろう…。」

 

「な、何だよ。オレたちは…ちゃんと存在するんじゃねーか…。びっくりさせんなよ。」

 

 

(裁判場の雰囲気が一気に安堵で満たされる。)

 

(俺の存在は、嘘や設定なんかじゃない。妹たちの記憶も。世界を旅した記憶も。クラスメイトとの記憶も。)

 

(ようやく、地に足が着いた気分だ。これで、自分の足で歩いて行ける。)

 

(……俺には一生、宇宙飛行士の真似は無理だろうな。)

 

 

「でも…それなら、哀染1人がフィクションキャラだったってこと?」

 

「哀染と前谷…あと妹尾はクラスメイトだったんだよな?」

 

「あ…。こーたは確かに、レイをクラスメイトだって言ってたよね?」

 

「前谷君の知る哀染君と、ここに存在した哀染君は姿が違ったはずっす。」

 

「……2人の手紙に、そう書いてあったね。」

 

「ここにいた”哀染 レイ”はフィクションキャラクターだった。」

 

「ふむふむ。哀染くんには中の人もしくはモデルがいたんだね。だから白銀さんは哀染くんにだけはコスプレできたんだね!」

 

 

「あのさ、白銀が哀染にコスプレできたってのは分かったけどよ…哀染はどうなんだ?」

 

「本物の哀染さんが白銀さんのフリができたのは何で?」

 

「あ!そ、そうだよ!1回目の事件の死体、顔はグチャグチャだったけど…間違いなくつむぎだったもん。」

 

「それに、その日の朝の”つむぎ”もレイだったんだよね?レイもつむぎに変身できたってことになっちゃうよ。」

 

「そうね。哀染君が白銀さんの声と見た目を完全に真似るのは無理じゃないかしら。」

 

「前回の死体が女性だったのは白銀君だったからだろう!それなら、哀染君は男性だったということだ!」

 

「女性が胸を潰して、肩パッド入れて、ウエストサイズを調整することはできても、男性が女性のラインになることは難しいものですぞ。」

 

「いやに詳しいな。」

 

「やっぱりレイがつむぎに変装するのは無理じゃないかな?」

 

(1回目の事件の遺体…腕の細さといい、確かに男のものとは思えなかった。)

 

 

「哀染が男だったっていうのは、合ってんのか?」

 

「……もし、哀染さんが女性だったら?」

 

「哀染がやっぱり女で…白銀と入れ替わって殺された…?」

 

「白銀さんと哀染さん…似てたんだよね?」

 

「何か…聞いたことある話になるな。」

 

「希望ケ峰学園のコロシアイ…黒幕は双子で、入れ替わってたよね?」

 

「えっ、それって…哀染と白銀が絶望シスターズってこと?」

 

「……もし2人が黒幕なら、2人が入れ替わった理由も…あるよ。」

 

「白銀が死んだと見せかければ、本物の白銀は動きやすくなんのか。」

 

「えっと…でも、黒幕は裁判を引っ張っていかないって話だったよね?」

 

「そこなんだよなぁ。今回の黒幕は積極的だったとか?」

 

 

「……。」

 

(ーーいや、白銀さんも哀染君もコロシアイの中で殺されている。2人のどちらも黒幕とは思えない。)

 

(哀染君が白銀さんに成り替われた理由は他にないのか?)

 

(哀染君はフィクション。NPC…か。)

 

 

 

閃きアナグラム 開始

 

G    r    e    a    t     L    e    o

 

閃いたっす!

 

 

 

 

Alter Ego…哀染君は、アルターエゴ枠と呼ばれる存在だった…?」

 

「えっ。」

 

「アルターエゴ…。」

 

「それって、過去のコロシアイにも出てきたよね。」

 

「設定とルールにもあるよな。『参加者たちが記憶を共有する人物に変更が可能』か…。」

 

「アルターエゴ枠は姿を変えられる。哀染君は白銀さんに姿を変えることができたんじゃないっすか?」

 

 

「ピンポンピンポーン!」

 

(突然、モノクマが飛び上がって大声を上げた。)

 

「今回のアルターエゴは、哀染クンでしたー!」

 

「それでは、哀染クンと白銀さんが最初のステージの密会で何を話したのか?2人の血痕前夜…”源家”シャワールームの映像を見てみましょう!」

 

「え!?シャ、シャワールームの映像!?」

 

「……シャワールームにもカメラがあったんすね。」

 

「分かりやすいカメラはないけど、撮ってないなんて言ってなかったでしょ?」

 

「大丈夫 大丈夫。一応 未成年のプライバシーを守る最低限の配慮はしてるからね。」

 

「うぷぷぷ、4つ目のステージのシャワールームで事件を捏造しようとしてた人もいたけど、実はムダだったのでしたー!」

 

「あの時は笑えたけどね!”超高校級のアイドル”がバスルームに逃げ込んで刺されるなんて、何の再現VTRだよ!ってね。」

 

「……。」

 

(裁判場に大きなスクリーンが現れた。そこには、白銀さんの寄宿舎だった”源家”が映っている。)

 

(確かに、”源家”のバスルームだ。そこで話す白銀さんと哀染君が映し出された。)

 

 

『夢を…見たんだ。』

 

『……夢?』

 

『うん…。でも、ただの夢じゃないの。夢じゃなくて…前にあったこと…なんだと思う。』

 

『うん。詳しく聞かせて。』

 

『前にも…こんなコロシアイを強要されて…殺人が起きて、学級裁判が行われて…。1人、また1人と死んでいって…。』

 

『最後に…わたしと、もう1人が生き残って…そんな夢。』

 

『違うの。夢だけど、夢じゃなくて、違う世界の現実って感じで…。』

 

『きっと、わたしは前にも こんなコロシアイに参加させられてたんだ…。』

 

『こんな現実離れした話…信じられないと思うけど……哀染君は、哀染君なら信じてくれると…思ったんだ。』

 

『そうか。つむぎ、辛かったね。』

 

『ごめんね。こんな…わけの分からないこと言って…。』

 

『かまわないさ。それより…今の話…キミのことは、隠しておいた方がいい。』

 

『……。』

 

『キミは間違いなく、モノクマ側にとって邪魔な存在だ。』

 

『このコロシアイの中で…キミが狙われやすくなってしまうかもしれない。』

 

『……。』

 

『心配しないで。ボクが必ず守るから。』

 

『つむぎ、ボクにコスプレするといいよ。ボクになら、キミはなれるでしょ?』

 

『え?』

 

『ボクらが入れ替わっていることは、モノクマ側にとってイレギュラーな事態になる。』

 

『これが、何かの役に立つことがあるかもしれないよ。』

 

『キミはボクにコスプレできる。ボクもキミの姿になることができる。良いアイデアだと思うよ?』

 

『哀染君が、わたしの姿に?』

 

『ボクはバーチャル世界の偶像だからね。つむぎの姿に変身だって、できるんだよ。』

 

『……。』

 

『ボクはキミとしてコロシアイの実態を探るよ。』

 

『だめだよ!もし、わたしが本当に”狙われやすい存在”だったら…。』

 

『つむぎ。キミがボクを知っていてくれて、ボクは救われたんだ。恩返しがしたい。』

 

『でも、』

 

『つむぎ。もし、お互いに何かがあっても、素性を明かさないこと。約束できるね?』

 

 

「………。」

 

「哀染クンは何者だったのか?正解は、バーチャルアイドルでしたー!」

 

「バーチャルアイドル?」

 

「最近はそういう存在もあるんだよ。バーチャルな世界にしか存在しないアイドルがね。」

 

「中の人は別にいて、アイドル自体はバーチャルってやつか。」

 

「やっぱり…本当に…レイは、つむぎに替わって殺されちゃったんだ…。」

 

「地味なあの子が着替えたら、派手なアイツ…なんて、オタクが好きそうな設定だよねー!」

 

「哀染さんは白銀さんを守るために…?どうして…?」

 

「さあね〜?アルターエゴはそういう風にできてるとしか言えないよ。」

 

「……また設定っすか。」

 

「まあね!2人がボクに見つからないように行った作戦は、ボクらの設定のために上手く働いてくれたのさ!」

 

「しかし、今回の白銀さんのコスプレは随分 粗かったようですなー。”完全再現“なんて、夢のまた夢ですなー。」

 

 

「……でも、これでハッキリしたっす。」

 

「何がだよ?」

 

「これまでの学級裁判には、モノクマの不正があったってことっす。」

 

「失礼な!学級裁判はクリーンなイメージを大切にやってるんだ!不正なんて行われてないよ!」

 

(ーー白銀さんと哀染君が入れ替わっていたことが確定した今、学級裁判の判決が覆る。)

 

(モノクマの不正はーー)

 

 

1. クロの名前が違った

2. 被害者の名前が違った

3. 殺人は起こっていなかった

 

 

 

「オブジェクション!今のは裁判長の印象を故意に操作する発言です。」

 

「弁護側の異議を認めます。」

 

(裁判長なのか弁護士なのか被告なのか…一体何役なんだ…?)

 

 

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「1回目と前回の裁判の被害者の名前っす。」

 

「そ、そうか。モノクマは1回目の被害者が白銀、前回が哀染だって言ったな。」

 

「前回の本当の被害者は…白銀さん。1回目の被害者は…哀染さんだった。」

 

「モノクマは被害者の名前が違ってるのに、クロを処刑したってことだよね?」

 

「どうなの、モノクマ!」

 

「…………。」

 

「モノクマ、お前は3回目の裁判で言った。『被害者とクロの名前が一致して初めて正解』と。」

 

「でも、最初の事件と前回の事件の被害者とクロの名前は一致していなかった。」

 

(細かいルール。過去のコロシアイ。これまでのモノクマの言動。)

 

(…このコロシアイも、過去のものと同じはずだ。それなら、これでモノクマを追い詰めることができる。)

 

「学級裁判には明確なルールがあったのに、この不正。どう責任を取るんすか。」

 

「……。」

 

(モノクマは、しばらく微動だにしなかった。がーー)

 

 

「…うぷぷぷぷぷぷぷぷ。あーはっはっはっは!」

 

「それでボクを追い詰めたつもりでいるなら、お気楽すぎて笑っちゃうよ!」

 

「……この学級裁判は誰かが見てるんでしょう。だからルールがある。それなのに、ルールを破ってもいいんすか。」

 

「えっ、誰かが見てる?そ、そうなのかい!?」

 

「希望ケ峰学園のコロシアイも…見ている人がいた…。」

 

「そ、そうだね!モノクマも変なこといっぱい言ってたもん。」

 

「だからルールが細かく決まってたのか。」

 

「まあね。ゲームってある程度 公平さがないと見てて楽しくないでしょ?ま、チートが勝ち続ける方が好きな『強くてニューゲーム』好きもいるだろうけど。」

 

「誰が…見てるの?」

 

「うぷぷぷ、それはオマエラが卒業するかどうかには、直接 関係ないよ。」

 

「お前の不正には関係あるっす。学級裁判で被害者の名前が違うのにーー」

 

 

「そんなこと、校則にないけど?」

 

「は?」

 

「被害者とクロの名前が一致して初めて正解っていうのは、3回目の事件だから決めたことで、ずっと守るべきルールじゃないよ?」

 

「そんなの ずるいよ!」

 

「ボクを縛るルールは、校則だよ。校則には、そんなルールはないでしょう?」

 

「ルールルールルールルールうっせぇわ!キタキツネかよ!ルールは破るためにあるってチョーさんが言ってたんだぞ!」

 

「ルールがない世界なんて地獄だよ?何やってもいいです!なんて世界に放り込まれたら悲惨だよ?命も貞操も いくつあっても足りないからね?」

 

「清く正しいルールを設定したボクに感謝することだね。」

 

「……ルールと設定は絶対なんすね?」

 

(モノクマはルールや設定に不必要なほど こだわっている。)

 

(なら、1つルールと設定に生まれた矛盾はどう説明する?)

 

(哀染君がアルターエゴ枠と呼ばれる存在だったとすると、1人…ルールと設定から外れるイレギュラーが発生する。)

 

 

▼ルールと設定から外れる人物は?

 

 

 

「急に何?国際会議で米大統領の名前 絶叫する某国首相のマネかな?」

 

(違う…哀染君の正体を知るまで、俺は他の人をアルターエゴ枠だと思ってた。)

 

 

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「アイコさん。」

 

「ん?」

 

「哀染君がアルターエゴ枠だとすると…キミは何なんすか?」

 

「え?」

 

「ど、どうしたの、らんたろー?」

 

「キミは自分がアルターエゴだと言ったっすね。でも、アルターエゴ枠は哀染君だった。」

 

「それなら…キミは何者っすか?」

 

「何者って…アイコはアイコであって それ以上でもそれ以下でもねーゾ?」

 

「お、おい。アルターエゴっつーのはコンピュータみたいなもんなんだろ?アイコもそうなんじゃねーか?」

 

アルターエゴ枠は1人。これが設定っす。」

 

「そんな設定は…」

 

「モノクマはルールと設定にこだわってる。設定から外れるアイコさんは”イレギュラー”なんすよ。」

 

「イレギュラーって…わ、私は凶器を隠したり、永本君にメモを送ったりしてないよ?」

 

「そ、そうだよ。アイコは変なことなんてしてないじゃん。」

 

「じゃあ、どうして自分をアルターエゴだと言ったんすか?」

 

「え?だって、思い出したから。」

 

「佐藤が言ってたよな?思い出した記憶が正しいとは限らない。モノクマが変なことをしたかもしれねー。」

 

「設定とルールにこだわるモノクマが、設定とルールを無視した記憶の操作を行ったって言うんすか?」

 

「……そ、そんなこと言われても…。思い出したんだからしょうがないよ。」

 

「アイコさん、大丈夫。…信じるから、詳しく話して。」

 

「話してって言われても…思い出した。で、終わりなんよ。」

 

「そう…なの?モノクマのミス…?」

 

「それはないはずっす。」

 

「…プログラムであるアイコさんに嘘は付けない…はず。」

 

「ソウダヨ?キカイ、ウソ ツカナイ!」

 

「……キミは、匂いが分かるし、眠ることもできるみたいっすが……本当に、機械なんすか?」

 

「馬鹿にすんな!ここが そういうプログラムなら、オレ様だって五感もあるしウンコもできんだよ!…そ、そんな目で見るのはやめろよぉ…!」

 

「アイコさん、キミは白銀さんの映像を見た後も冷静だったっすね。もしかして…この世界のことを最初から知ってたんじゃないっすか?」

 

「最初から…知ってた?」

 

「そうなの…?アイコさん。」

 

「た、ただ壊れてただけだろ?機械なんだから不具合も起こる。な、アイコ?」

 

 

「…………。」

 

「それはロボット差別ですか?ボクが冷静だったのは、ボクがもともとプログラムだからです!」

 

「僕ね、ご主人たまと違うのは寂しいって…いつも思ってたんだぁ。」

 

「私は みんなも、そうなら嬉しい……と思うよ。この世界がプログラムで…みんなも……」

 

「みみみみんなもももももももも…」

 

「ア、アイコ?」

 

「みんなみんなみんなもも…」

 

「な、何だ?マジで壊れた…のか?」

 

「アイコさん、しっかりして…。」

 

(アイコさんからピー、ガーという嫌な機械音が鳴り響く。そして、)

 

 

「みんなも、絶望してたら…嬉しいってね!」

 

(高らかに言った彼女の後ろの黒い影が動いた。ロボットだというそれは、身にまとう黒い服を投げ、その姿を現した。)

 

「うそ…。」

 

「…お前、は…。」

 

「初めましてじゃないけど、初めましてー!”超高校級の絶望“でーす!」

 

「ア…イコさん…?」

 

(アイコさんの映る電子パッドを首からさげる その人物は、資料にあった人物と全く同じ容姿だった。)

 

(全ての絶望の現況であり、黒幕である、彼女。)

 

 

(ーー江ノ島 盾子と。)

 

 

 

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