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第1章 私とボクの学級裁判 非日常編

 

(頭がクラクラした。目の前に広がる血の色に、まるで初めて死体を見たかのように うろたえた。)

 

(始まってしまった。また、コロシアイが…。)

 

(呆然としていると、倒れた哀染の背後から白い煙が巻き上がり、一瞬で部屋いっぱいを満たした。)

 

「下がって、毒ガスだ!」

 

(和戸に引かれ、教室を出る。しかし、ガスは既に教室の外に漏れていた。)

 

「春川さん!下だよ!このガスは空気より軽いから、下に逃げるんだ!」

 

「春川さん早く!」

 

(私たちは そのまま地下までの階段を駆け降りて、目の前の扉を開けて飛び込んだ。)

 

 

 

【校舎地下 図書室】

 

「うわぁ!?って、和戸君と春川さん!?どうしたの?」

 

「顔から生き血を引き抜かれたような顔色よ?」

 

「なんや その恐ろしげな言い方…。」

 

「大変だよ!哀染くんが…っ!」

 

(図書室に入ってすぐ、言いかけた和戸が盛大に咳き込んだ。)

 

「哀染が…殺された。」

 

「え?」

 

(和戸の言葉を私が続けると、全員が私の顔を信じられないように見た。)

 

「春川さん、今なんてーー…」

 

(その時。目の前が暗くなった。いや、室内全体が暗闇に支配された。)

 

停電か?」

 

「…みたいだね。とりあえず、落ち着いてーー」

 

「ッ!!きゃあああああああああああああ!!!」

 

(耳をつんざくエイ鮫の悲鳴。一体どこから出ているのかという大声だ。)

 

「な、何!?」

 

「エイ鮫、落ち着いて。」

 

(手探りでエイ鮫の手を握る。)

 

「は、春川さんんんっ…。」

 

 

「春川さん、ボクにはライト機能も付いてますよ。」

 

「!じゃあ、早くライト点けて。」

 

(肩のキーボを促すと、彼の目玉が光を灯した。)

 

「ぎゃあ!光る目ん玉!!」

 

「おお、不気味な灯りやけど、よくやった。」

 

「これで安心ね。」

 

「うわぁああ!!幽霊!」

 

「うるさい。静かにして。」

 

「ご、ごめん…。手、離さないでね?」

 

(ブルブル震える手が、私の手を強く握った。手と耳がものすごく痛い。)

 

「それで…和戸君、春川さん。哀染君が殺されたというのは?」

 

「で、できれば…壱岐さんは暗闇の中で話さないで…。」

 

「……。」

 

「上の…教室Bで哀染くんが倒れてたんだ。血塗れで。」

 

「本当に死んでたんか?」

 

「あの血の量だと…死んでたと思うよ。」

 

「じゃ、じゃあ、早くここから出ない?上の階は停電してないよね?」

 

「教室Bから毒ガスが出てるから、それはできないよ。」

 

「毒ガス?校舎の外に出た方がいいんじゃないかしら。」

 

「いや…あのガスは空気より軽いみたいだったから…ここは多分 安全だよ。」

 

「多分か…。」

 

「食堂に撒かれたガスと同じなら…15分ほどで収まると思うけど…。」

 

「ガスが収まったように見えても、人体に有害な状態かもしれません。ボクがまず調べに行きますよ。ボクは空気の汚染濃度が分かりますから。」

 

(キーボが言うので、彼を図書室の外に出した。図書室は また闇に包まれた。)

 

「うう…、暗い…。キーボ君、階段上がれるの?」

 

(そういえば…あの大きさだと階段を上るのも一苦労だろうね。)

 

(15分ほどして、少し開けた図書室の外からキーボが叫ぶのが聞こえた。「上がっても大丈夫だ」という声と共に、私たちは図書室を出た。)

 

(階段を上がって すぐのところでキーボを拾い上げ、私は教室まで走った。)

 

 

 

【校舎1階 教室B】

 

(先に教室に入ったエイ鮫に続き、哀染が倒れていた教室Bに入った。中は先ほどと同じく血塗れでーー)

 

「えっと、哀染君はどこ?」

 

(哀染の死体は、消えていた。)

 

「見間違えたのではないかしら?」

 

「確かに、さっきは ここにあったんです。」

 

「では、死んでなかったんやないか?ご機嫌で散歩してるんかもしれんよ。」

 

(絵ノ本がのんびりした声を出した時、隣の教室に続く扉から声がした。)

 

「みんな、こっちだ!」

 

「!?隣?」

 

(教室Bと教室Aを繋ぐ中途半端に開いた引き戸。その引き戸から教室Aに向かった。)

 

 

 

【校舎1階 教室A】

 

(そこには、哀染が やはり血塗れで倒れていた。)

 

「き、きゃああ!」

 

「哀染…君?」

 

「死んでるんか?」

 

(3人が教室Aの哀染を視認した、その時。)

 

 

『死体が発見されました。オマエラ、発見現場である校舎1階教室Aに集まってください!』

 

死体発見アナウンスが鳴り響いた。)

 

…………

……

「いやあ、待ちわびたよ!ようやく念願のコロシアイ再開で!クマ!Soハイ!」

 

(全員が教室に揃った時点で、モノクマが現れてハイテンションにまくし立てた。)

 

「さて、早速、哀染クンを殺した犯人に名乗り出てもらおうかな!初回特典を受け取るのは誰だー!?」

 

…………

 

(誰も、何も言わなかった。名乗り出る者は いなかった。)

 

「あれれ?恥ずかしがってるのかな?いいの?締め切っちゃいますよー?」

 

(モノクマが促しても、手を挙げる奴はいない。)

 

「どうやら、今回のクロは初回特典なんていらないみたいだね!では、一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!」

 

(全員が困惑の表情を見せるのを無視して、モノクマは ひとしきり笑い、モノクマファイルを配り始めた。)

 

(どういうこと…?これも、”前回”と同じ…?)

 

 

「さてと、どうしようか?みんなバラバラに捜査する?」

 

「おい、この中に犯人がいるなら危険だろ。証拠隠滅されちまう。誰が敵か分かんねーんだ。監視し合いながら捜査するぞ。」

 

「単独にならないように捜査するのは賛成だよ。でも…全員を信じないのは危険だと思う。」

 

「どういうことですか?」

 

「たった1人の犯人のために、全員を疑うのは良くないよ。『目の前の人を信じるために疑う』という心づもりがいいんじゃないかな。」

 

「ホウ。でも、それは 結局 疑うということだよ。何も変わらない。」

 

「そうね。確かに変わりないけど、猜疑心は目を曇らせるわ。必要以上に周りを敵視しないことね。」

 

「よーし!頑張るぞー!」

 

(それぞれが2、3人ずつに分かれて散っていく。)

 

(私は、再度 教室の奥に横たわる哀染の姿を見た。)

 

(”前回” 最原と赤松は通気口がある この教室Aにいて、天海は図書室で殺された。今回は…ここで哀染の死体が見つかった。)

 

(これは…偶然?)

 

(湧き上がる既視感に頭をおさえる。)

 

 

「大丈夫ですか?春川さん。」

 

「……あんたを肩に乗っけてるから、肩こりと頭痛があるのかもね。」

 

「キーボくん、時々は自分で歩いてあげなよ。春川さんだって、か弱い女性なんだから。」

 

「え!?春川さんって、か弱いんですか?ボクを平気で持ち上げてるのに?」

 

(……やはり、こいつらは いつの間にか当然のように私と捜査するつもりでいるらしい。)

 

 

「キーボ。”内なる声”は犯人を見つけろって言ってるの?」

 

「もちろんです!そうしないと、全員死んでしまいますから!」

 

「……。」

 

「……でも、春川さんの思うように選択するべきだとも言ってますね。」

 

「……そう。」

 

 

(……まずは、モノクマファイルを確認しておこう。)

 

(被害者は、”超高校級のアイドル” 哀染 レイ。死亡推定時刻は午後6時頃。死因は急性中毒。睡眠薬の過剰摂取による薬物中毒…か。)

 

 コトダマゲット!【モノクマファイル】 

 

「モノクマファイルの情報は…やっぱり こんなものだね。まずいな…。ここはミステリーで言うところのクローズドサークルだ。」

 

「それは何ですか?」

 

「閉鎖空間ってことだよ。孤島とか、雪山とか、外に出られない状況で事件が起こると…まずいんだ。」

 

「何が まずいの?」

 

「警察が呼べないことだよ。本来、被害者と犯人に何らかの関係があるなら…現代の科学捜査で犯人が分からないなんてことは、まずないからね。」

 

「警察が見つけられなかった犯人を探偵が言い当てるなんて、フィクションだけの話だし。」

 

「……。」

 

「ここは、探偵が活躍する場所としては、うってつけかもしれないね。」

 

(ため息混じりに言う和戸はコートの袖をまくって「探偵はいないけど頑張ろう」と言った。)

 

(まずは、どこを調べようか。)

 

 

 死体の周辺を調べる

 隣の教室に行く

全部見たね

 

 

 

(死体は、教室Aの奥に倒れこむように横たわっている。隣の教室Bへの引き戸 すぐ近くだ。)

 

「おかしいな…僕らが彼を発見したのは隣の教室Bだったはずなのに…。」

 

(そうだ。死体は私たちが最初に発見した時と体勢も違えば、教室も違う。)

 

(死体を正面から見ると、死体の胸に注射器が刺さっていた。)

 

「これ、市ヶ谷さんの研究教室にあったものだね。」

 

「研究教室に備え付けのものを外したんだったね。」

 

(後で市ヶ谷に話を聞かなきゃならない。)

 

 コトダマゲット!【注射器】 

 

「哀染くん、いつもの服装と違うね。」

 

「あの派手な上着を着ていませんね。」

 

(哀染は今朝まで着ていた派手な上着を脱いだ状態だった。中の服は血の色に染まっている。)

 

「…おかしいね。」

 

「え、何が?」

 

「この血の量なのに、哀染自身には刺し傷がないんだよ。」

 

「では殴られたんですね。」

 

「ううん、殴られた跡もないよ。」

 

「えっ?じゃ、じゃあ、この血は…?」

 

「……。」

 

 コトダマゲット!【死体の状態】 

 

「哀染の持ち物は…部屋の鍵とモノパッドだけだね。」

 

「一応、哀染クンの個室は後で見ておきましょう。」

 

「は、春川さん…名探偵もびっくりの手際の良さだね。」

 

「本当、頼もしいわ。私たちなんて、死体が怖くて近付けもしないもの。」

 

(死体から離れると、部屋の隅にいた2人が話しかけきた。)

 

「仕方ないよ。慣れてない人は無理しないで、他の手掛かりを見つければいいんだよ。」

 

「……私だって、慣れてるわけじゃないけど。」

 

「あ、そ…そうだよね。」

 

「ごめんね。役に立つか分からないけど、この部屋に手掛かりないか探してるから。」

 

「何か見つかりましたか?」

 

「見ての通り、何もない教室よね。せめてホコリの跡や髪の毛がないか目をダンボにしてるんだけど…」

 

「目がダンボになったら大ごとだよ。虫眼鏡かざして見てたら まさしく探偵モノって感じだけど…。」

 

「一応 僕、ルーペを持ってるよ。使う?…実際 使ってる探偵は見たことないけどね。」

 

「う…やっぱり そういう探偵像ってフィクションだけなんだね。いいや、ありがとう。…えーと、髪の毛は いくつか見つけたよ。」

 

(そう言って、エイ鮫はあちこちを指差した。けれど、ここに入った奴は多い。…役に立ちそうにないね。)

 

「あれ?これ、髪の毛じゃないよ。だ。」

 

「糸?」

 

「うん。細いけど丈夫そうだよ。倉庫にあったのかな。」

 

 コトダマゲット!【短い糸】 

 

「それにしても、死体が動いたっていうのは、どういうことなの?」

 

「今、大場さんに発見時の話をしてたんだ。」

 

「そうなんだ。僕と春川さんは隣の教室で最初に哀染くんを発見したんだ。」

 

「ボクもいましたよ。その後、哀染クンの背後からガスが噴き出て、図書室に避難したんです。」

 

「それで、わたし達と合流したんだよね。みんなで図書室から隣の教室Bに行ったら死体はなくて…。」

 

「エイ鮫さんが1番最初に教室に入りましたね。ボクと春川さんも、そのすぐ後ろにいました。」

 

「最初に哀染くんを発見した教室Bに死体はなくて、この教室Aで、死体を発見したんだよね。」

 

 コトダマゲット!【発見時の様子】 

 

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【校舎1階 教室B】

 

(死体がある教室Aの隣、教室Bに来た。初めに哀染を発見した教室。教室Aと比べて、血塗れで凄惨な状況だ。)

 

「ボクらは初め、ここで死体を発見しました。それが、図書室にいる間に死体が移動していた…。」

 

「こ、怖い言い方しないでよ!きっと僕らが図書室に行った間に、犯人が死体を移動させたんだよ。」

 

「でも、毒ガスが撒かれていたんですよ。犯人はガスが平気だったということですか?」

 

「…まさか、ボクが哀染クンを移動させたと言いたいんですか!?」

 

「何も言ってないよ!それに、キミの大きさじゃ、そんなこと無理だろ。」

 

「バカにしないでください!ボクだって、時間をかければできなくないんですからね!8時間程いただければ、移動させる手立ても見つかるはずです!」

 

「結局できないってことじゃないか!」

 

(騒いでいる2人は無視して、血塗れの床に落ちているものに近付く。)

 

(初めに哀染が倒れていた辺りに、血で汚れたナイフと何かの空容器が落ちている。)

 

「このナイフは…食堂のキッチンにあったものだね。」

 

「この空き容器はなんでしょうか?」

 

「あ…これは毒ガスの容器だよ。壱岐さんの研究教室にあったものだ。」

 

「哀染の死因は、睡眠薬の急性中毒だったね。あの研究教室には睡眠薬もあった。」

 

「後で見に行った方が良さそうですね。」

 

 コトダマゲット!【ナイフ】【ガス缶】 

 

「あ、この布団カバー…寄宿舎の部屋のものじゃないかな。」

 

(死体から少し離れたところに、暗い寒色の布団カバーが無造作に落ちている。それに近付いて和戸が言った。)

 

「…私の部屋のと違うけど。」

 

「男女で違うのかな。僕の部屋の色と同じだよ。」

 

(そういえば…”前回”、部屋の外から見た男子の部屋の色合いは、私の部屋のものと違っていた。)

 

「これが誰の部屋のものか確認すれば、犯人が分かるのではないでしょうか!」

 

「犯人が素直に部屋を見せてくれるとは思えないけど…誰が怪しいか、分かるかもしれないね。寄宿舎にも後で行こう。」

 

 コトダマゲット!【寄宿舎の布団カバー】

 

「現場はだいたい調べられたかな?どう?春川さん、何か分かりそうかな?」

 

「…分からないよ。私は探偵じゃないからね。」

 

「しかし、犯人は なぜ毒ガスを撒いたり、死体を動かしたんでしょうか。理解不能です。」

 

「死体を動かす必要があって、僕らを遠ざけたのかな。」

 

「……それなら、あのガスは毒ガスじゃなかったってことになるよ。」

 

「そう…だよね。毒ガスの中で犯人が死体を動かすことができたとは思えないし…そもそも、この教室に隠れる場所なんてないもんね。」

 

  コトダマゲット!【第一発見現場の教室】

 

「隣の教室と違って、こっちは血のアートって感じだね。」

 

「何がアートだよ。ふざけてんなよ。」

 

「2人とも、何か見つかった?」

 

(教室内を見回す2人に、和戸が話しかけた。)

 

「何も。でも、名前も知らない木くらいには、気になる証言ができるかもしれないよ。」

 

「気になる証言?」

 

「うん。発見アナウンスがあるちょっと前まで校舎から煙が出てたのを、外から見てたんだ。」

 

「この教室で発生したガスのことですね。」

 

「うん。そこに落ちてるガス缶から出てたんだよね?校舎の玄関からモクモク出てたから何だろうと思って見てたんだ。」

 

「オレもその場にいた。新始とトレーニングした後 部屋に戻って、食堂行こうと思ったら煙が上がってたんだ。」

 

「ハネゾラちゃんが中に入ろうとするから、私が止めてたんだ。前に”希望”君が殺された時みたいな煙だったから、一応ね。」

 

「ハネゾラってオレのことか?」

 

「それで、校舎から出る人はいたかな?」

 

「ううん、煙が出てる間、少し離れて見てたけど、校舎から出る人はいなかったよ。もちろん入る人も。」

 

「食堂側から出入りするヤツもいなかったな。玄関ホールを通ったヤツもいねー。」

 

(私たちが図書室にいる間、校舎への出入りは なかった…か。)

 

  コトダマゲット!【タマの証言】 

 

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「だいたい現場は調べられたかな。次はどこを調べようか。」

 

「気になるのは、凶器があった”超高校級の幽霊”の研究教室。それに布団カバーもありましたから、寄宿舎も見ておきたいですね。」

 

「…図書室も…もう一度 見ておきたいかな。」

 

「え?図書室も?」

 

「……停電が起こったのが偶然なのか確認したいから。」

 

「そうですね。事件の中で起こったことですから、気になります。では、どこから行きましょうか?」

 

 

 図書室に行く

 研究教室に行く

 寄宿舎に行く

全部見たね

 

 

 

【校舎地下 図書室】

 

(図書室に戻って来た。停電は回復しているらしい。)

 

「あ、テメーら!ご希望ロボットとランデブーとは良いご身分だな!」

 

「市ヶ谷さん。ちょうど良かった。聞きたいことがあったんだ。」

 

「ああ?テメーの聞きたいことなんて知るかってんです。一昨日お越しくださいませ!」

 

「哀染クンの死体に刺さってた注射器はキミが作ったものですよね。」

 

「ああ、そうだ。オレの研究お教室の設備から取り外してな。人体に刺したら自動で内容物を注入してくれる優れモンだ。」

 

「すごく素直に話したな…。」

 

「それよりテメーらか?ご希望ロボットのお充電器 挿しっぱなしにしやがったのは?」

 

「充電器?」

 

「ああ、そこのコンセントに挿しっぱなしになってたんだよ。」

 

「これは ご充電中じゃなくても、プラグ挿れただけでお電力をアホほど喰うエコ・アンフレンドリー商品だ。挿れっぱなしはもったいねーです。」

 

(市ヶ谷は図書室 入り口近くのコンセントを指差して言った。)

 

「いや、僕たちじゃないよ。キーボくんの充電器がこんなところにあったの?」

 

「図書室でご希望ロボットのご充電中のお姿を見たかったんじゃねーですか?」

 

「図書室は本を読むところですから、ボクは図書室で充電なんてしませんよ。」

 

「あ?じゃあ誰かが持って来たのか?意味分かんねーです。」

 

「充電器は あんたの研究教室にあったんだよね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

(研究教室への出入りは…誰でもできたはずだね。)

 

 コトダマゲット!【キーボの充電器】 

 

「どいつもこいつもオレの研究教室に勝手に出入りしやがって。」

 

「珍しいものも多いから、みんな見たいんじゃないかな?」

 

「見るだけならいいけどよ、デアゴスティーニ盗られたんだよ。」

 

「デアゴスティーニ?何を盗られたの?」

 

「覚えてねーです。けど、何かが なくなってんのは確かなんだ。」

 

「誰かが挑戦したのかもしれませんね。」

 

「フォッフォッフォッ。デアゴスティーニとやらに聖杯や聖骸布や聖剣があれば、良いクリスマスプレゼントになりそうじゃな。」

 

「最近の子どもの要求はエゲツないんやなぁ。」

 

(少し離れた場所を調べていた2人が近付いて来た。)

 

「ここは停電しとったそうじゃないか。お前さんらは大丈夫じゃったか?」

 

「ウチは全然や。エイ鮫は死にそうやったけど。」

 

「う、うん。あの悲鳴にはびっくりしたよね…。外にも聞こえるんじゃないかってくらいの声だったから。」

 

「フォッフォッフォッ。じゃが図書室は防音されてるんじゃろ?外には聞こえまいて。」

 

「そういえば、隣のゲームルームやAVルームも防音壁で作られてるんだっけ?」

 

 コトダマゲット!【地下の壁材】 

 

「隣のゲームルームといえば、モノクマが妙なことを言っておったのお。」

 

「妙なこと?」

 

「停電した時、ゲームルームのゲーム機の電源が全部 入っとったらしいんや。」

 

「へえ、ゲーム機が付いてたら1時間ほどで地下が停電するって言ってたけど、図書室の停電はそのせいだったのかな?」

 

 コトダマゲット!【ゲームルーム】 

 

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【超高校級の幽霊の研究教室】

 

「あら、和戸君、春川さん。キーボ君も、いらっしゃい。」

 

「どうぞ ごゆるりと!」

 

(教室に入ってすぐ、壱岐と雄狩に迎えられた。)

 

「相変わらず薄暗い部屋だな…。エイ鮫さんが入ったら、また絶叫モノだよ…。」

 

「そうですね。音声認識の受容体が壊れるかと思いましたから。」

 

「……そうね。」

 

「壱岐、ここに睡眠薬があったよね。」

 

「そう!雄狩 芳子たちも、それを確認するために参上つかまつったわけです!」

 

「ええ。確かに、液状の睡眠薬の瓶がなくなっているわね。」

 

「あんたは今朝ここにいたけど、その時はあったの?」

 

「ええ。今朝は確かに。3時頃から ここを空けていたから、なくなったのはその後ね。輸血パックもなくなっているわ。」

 

「輸血パックも?」

 

「春川さん、哀染クンの体には外傷がなかったんですよね。」

 

「…ということは、現場の血は輸血パックで間違いなさそうだね。」

 

 コトダマゲット!【輸血パック】 

 

「あの凄惨な現場!あの血が輸血用の血液だったということですか!なぜ犯人は、そんなことを!?」

 

「分からないな。この事件の犯人は、一見 無意味に思えることばかりしてるんだ。」

 

(確かに。血やナイフの偽装は、死体を調べれば すぐに分かる。なぜ犯人は、あえて血を撒いたり、ナイフを残したりしたんだろう。)

 

(それに、死体の移動……。)

 

「みなさんは一緒に図書室にいたんですよね。その間 死体が移動された…図書室にいた人はアリバイありということですね!」

 

「うん、まあ…。ちなみに、雄狩さんは6時頃どこにいたのかな?」

 

「……。」

 

「え?」

 

「……。」

 

「どうかしましたか?」

 

「部屋にイマシタヨ?」

 

「え、何。今の間は…。」

 

「渇いた井戸の底のような沈黙だったわね。そこから何が引きずり出てくるのかしら。」

 

「だから、怖い言い方しないでよ。」

 

「何も引きずりまろび出ませんよ!雄狩 芳子は、確かに部屋にいました!」

 

「あ、そ…そう。」

 

 

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【寄宿舎】

 

(寄宿舎は静まり返っている。)

 

「男子の部屋は後で見せてもらうとして…とりあえず哀染くんの部屋を見てみようか。」

 

「春川さんが先ほど死体の懐から拝借した鍵がありますからね。」

 

(人聞きの悪い言い方しないでほしい。)

 

(哀染の部屋のドアのノブに鍵を差し込み鍵を開け、中に入った。)

 

(部屋はやはり私の部屋と色合いが違う。全体的に寒色系の色の部屋だ。)

 

「あれ…ベッドの上のこの服…哀染くんの上着だね。」

 

「死体は上着を脱いでいました。ここで脱いでいたんですね。」

 

「それに、現場にあった布団カバーはどうやら…哀染くんのものみたいだよ。」

 

(和戸がベッドの掛け布団をつまむ。確かに、そこにはカバーが掛かっていない。)

 

「現場の布団カバーは、この部屋のもの…では、他の男子の部屋を調べても意味がありませんね。」

 

 

「他にも手掛かりがないか調べてみよう。」

 

(和戸がクローゼットを開ける。中には、哀染の派手な衣装が掛けられていた。)

 

「……9着しかないね。僕の部屋には着替えが10着 常備されているんだけど…。」

 

「春川さんの部屋の着替えもそうでしたよ。10着の着替えがありました。」

 

「え?キーボくん、春川さんの部屋に泊まったの?」

 

「私の部屋のクローゼットにね。」

 

「はい。今朝も春川さんが着替えをしている間、クローゼットの着替えはいつの間にか補充されて10着になっていました。」

 

「え!?春川さん、キーボくんの目の前で着替えてるの?」

 

「そんなわけないでしょ。私が着替えてる間、キーボはクローゼットの中にいたよ。」

 

(視聴者のカメラに映してたまるか。)

 

「そっか。えーと…いつの間にか着替えが補充されてるから、ずっと不思議だったんだよね。」

 

「哀染クンの衣装も、おそらく同じはずです。けれど、ここには9着しかストックがないですね。」

 

1着が消えているってことだね。)

 

 コトダマゲット!【哀染の衣装】 

 

 

【寄宿舎前】

 

(寄宿舎を出ると、綾小路と朝殻がこちらに歩いて来た。)

 

「らりほー!マキー!」

 

「君たち。少し話を聞いてもいいかな?」

 

「うん。何?」

 

「君たちが1番初めに哀染君を見たというのは何時頃だい?」

 

「教室Bでのことですか。あれは6時前でしたね。」

 

「確か、55分頃だよ。」

 

「間違いないかい?間違いなく、彼だったかい?」

 

「…何で、そんなこと聞くの?」

 

「カナデ達も同じ時間にあっちでレイを見たんだよー!」

 

(朝殻が裁きの祠の方を指差して言った。)

 

「哀染を見た?本当に?」

 

「そうだね。薄暗かったけれど、あの姿は哀染君だったよ。それも、5時55分のことだね。」

 

「ど、どういうこと?同じ時間に…哀染くんが2人?」

 

「らりほー!ドッペルゲンガーだねー!きっとレイはドッペルゲンガーに殺されたんだねー。」

 

「そんなものいるはずない。あれは…生霊の類じゃないかな?」

 

「生霊だって いるはずないよ!」

 

「しかし、哀染君があの辺りにいて、その後 宿舎に入って行ったのを見たんだ。だから、教室にいたというのが信じられなくてね。」

 

(どういうこと…?私たちが見た哀染は、間違いなく哀染 レイだったはずなのに…。)

 

 コトダマゲット!【哀染の目撃情報】 

 

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『さーて、お待ちかねの学級裁判の時間だよ!中庭にある“裁きの祠”に集合してください。緑の壁に囲まれた赤い扉の奥だよ。』

 

(付近のスピーカーから、モノクマの声が鳴り響く。何人かがモノパッドを確認しながら、裁きの祠へ向かうのが見えた。)

 

「……春川さん。僕らも行こう。」

 

「そうだね。」

 

(私たちも、裁きの祠へ向かった。裁きの祠も、”前回”と同じ様子だった。)

 

(全員が揃ったところで現れた道を進み、エレベーターに全員が乗り込んだ。)

 

(エレベーターの下降を感じながら、私は ただ”前回”を思い出していた。)

 

 

(私は、どうしてか生き残っている。)

 

(最原…夢野……キーボ…。あいつらと『ダンガンロンパ』を終わらせようと思った。)

 

(思っていたのに…キーボに似た男が殺され…哀染が殺されたことでコロシアイが また始まってしまった。)

 

 

(『ダンガンロンパ』は、今度は私に”超高校級の生存者”を演じさせようとしている。)

 

(そんな思惑には乗らない。私は、『ダンガンロンパ』を終わらせる。)

 

(”前回”の最初の裁判。その本当のクロは、首謀者の白銀だ。この裁判で、白銀を引きずり出す。)

 

(それで、終わらせてやるんだ。)

 

(この、嘘ばかりの学級裁判を……!!)

 

 

 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル1】

被害者は、”超高校級のアイドル” 哀染 レイ。死体発見現場は校舎1階の教室A。死亡推定時刻は午後6時頃。死因は薬物による急性中毒。睡眠薬の過剰摂取により死亡。

【死体の状態】

教室Aで発見された死体。血塗れになっているが、被害者の身体に外傷はない。

【ナイフ】

死体発見現場の隣の教室Bで発見された。血で汚れている。

【注射器】

死体の胸に刺さっていた注射器。”超高校級のDIYメーカー”の研究教室の設備から、市ケ谷の手により取り外された。針を刺すと自動で内容物を注入する。

【ガス缶】

死体発見現場の隣の教室Bで発見された。”超高校級の幽霊”の研究教室にあったもの。毒ガスと思われる。死体の背後からガスが散布された。

【寄宿舎の布団カバー】

死体発見現場の隣の教室Bで発見された。寒色系の布団カバーで、哀染の個室のものと考えられる。

【第一発見現場の教室】

春川・和戸・キーボが初めに哀染を発見した教室Bには人が隠れられるような場所はない。

【短い糸】

死体発見現場の教室Aに落ちていた短い糸。髪の毛のように細いが、頑丈そうだ。

【キーボの充電器】

キーボの充電のための充電器。プラグを挿れただけで異常に電力を消費する。図書室のコンセントにプラグが挿されたままだった。

【地下1階の壁材】

地下1階の図書室、ゲームルーム、AVルームは音漏れ防止のために防音壁を使用している。

【ゲームルーム】

ゲームルームのゲームの電源が全て入れられていた。電源を入れたままにすると1時間ほどで地下フロアが停電する。

【輸血パック】

“超高校級の幽霊”の研究教室に置かれていた輸血パック。事件後、研究教室から消えている。

【哀染の衣装】

哀染の個室に衣装の替えは9着あった。各個室に着替えは10着 常備されているらしい。

【発見時の様子】

春川・和戸・キーボが初めに教室Bで倒れた哀染を発見した。その後、春川たちが現場を離れ、図書室から教室Bに戻った時、死体は教室Aに移動していた。教室Bに入った順番は、エイ鮫、春川、壱岐、絵ノ本。

【哀染の目撃情報】

春川・和戸・キーボが教室Bで哀染を発見した同時刻に、裁きの祠付近で哀染を見たという情報があった。発見者は、朝殻と綾小路。

【タマの証言】

教室Bにガスが散布されている間、校舎を行き来した者はいない。

 

 

学級裁判編へ続く

 

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