第1章 私とボクの学級裁判 学級裁判編Ⅰ
コトダマリスト
被害者は、”超高校級のアイドル” 哀染 レイ。死体発見現場は校舎1階の教室A。死亡推定時刻は午後6時頃。死因は薬物による急性中毒。睡眠薬の過剰摂取により死亡。
教室Aで発見された死体。血塗れになっているが、被害者の身体に外傷はない。
死体発見現場の隣の教室Bで発見された。血で汚れている。
死体の胸に刺さっていた注射器。”超高校級のDIYメーカー”の研究教室の設備から、市ケ谷の手により取り外された。針を刺すと自動で内容物を注入する。
死体発見現場の隣の教室Bで発見された。”超高校級の幽霊”の研究教室にあったもの。毒ガスと思われる。死体の背後からガスが散布された。
死体発見現場の隣の教室Bで発見された。寒色系の布団カバーで、哀染の個室のものと考えられる。
春川・和戸・キーボが初めに哀染を発見した教室Bには人が隠れられるような場所はない。
死体発見現場の教室Aに落ちていた短い糸。髪の毛のように細いが、頑丈そうだ。
キーボの充電のための充電器。プラグを挿れただけで異常に電力を消費する。図書室のコンセントにプラグが挿されたままだった。
地下1階の図書室、ゲームルーム、AVルームは音漏れ防止のために防音壁を使用している。
ゲームルームのゲームの電源が全て入れられていた。電源を入れたままにすると1時間ほどで地下フロアが停電する。
“超高校級の幽霊”の研究教室に置かれていた輸血パック。事件後、研究教室から消えている。
哀染の個室に衣装の替えは9着あった。各個室に着替えは10着 常備されているらしい。
春川・和戸・キーボが初めに教室Bで倒れた哀染を発見した。その後、春川たちが現場を離れ、図書室から教室Bに戻った時、死体は教室Aに移動していた。教室Bに入った順番は、エイ鮫、春川、壱岐、絵ノ本。
春川・和戸・キーボが教室Bで哀染を発見した同時刻に、裁きの祠付近で哀染を見たという情報があった。発見者は、朝殻と綾小路。
教室Bにガスが散布されている間、校舎を行き来した者はいない。
学級裁判 開廷
「それでは、学級裁判の簡単なルールを説明しておきます。」
(才囚学園の裁判場で、モノクマが学級裁判のルールを語る。以前 聞いたものと同じ。)
(”前回”のキーボの席にキーボに似た男の遺影のような白黒写真が、モノクマの近いところに哀染の白黒写真が置かれている。)
(裁判場の様子も”前回”と同じだ。哀染の隣が空席であること以外は。)
「モノクマ、その席は何?何で空きがあるの?」
「深い意味はないよ?最大16人収容できる裁判場ってだけ。」
(あの空席は…”前回” 白銀がいたところ。やっぱり、あいつは どこかに隠れてる…?)
「春川さん、乗り越えましょう。この命懸けの学級裁判を!」
「耳元で騒がないで。」
(数名が「裁判なんて初めてで分からない」と狼狽え、数名が裁判についての見解を話している。)
(”前回”でも似たようなシーンがあったね。)
「みんな、とりあえず、事件を振り返っておこうか。」
「えーと、殺された…のは、”超高校級のアイドル” 哀染 レイ君だよね。」
「発見現場は、地下に続く階段前の教室Aだったわね。」
「死因は睡眠薬の過剰摂取。注射器が死体の胸に刺さったままだったわね。」
「その注射器はオレが研究お教室の部品を取り外して作ったものだぜ!目標に刺したら自動でご注入してくれる特別性だ!」
「和戸と春川の話によると、初めに死体を見つけたのは、発見現場の隣の教室だったそうじゃな?」
「う、うん…現場の隣の教室Bで血塗れの哀染くんを見つけた時、煙が上がって…毒ガスだと思って地下に逃げたんだ。」
「地下にはウチらもおったぞ。ウチはエイ鮫に誘われて本を読んでおった。壱岐も一緒におった。」
「図書室から現場に戻られた皆さんは、哀染さんを発見したというわけですね。」
「アーバー、カナデ達は同じくらいの時間にレイを宿舎近くで見てるぞー?」
「暗かったけど、あの派手な衣装は間違うはずないね。」
「…死体が移動したっていうのが…怖いポイントだよね。『※びっくりポイントまで○秒』って編集入れなきゃいけないよ。」
「まさか死体が動いて隣の部屋に行く…なんてこともねーんだ。犯人が移動させたんだろ。怯えるな、新始!」
「お、怯えてないよ。」
「犯人はどうして、死体を移動させたのかしら?」
「殺害現場を隠したかったのではないでしょうか!」
「第1の現場を既に和戸君と春川さんに見られた後に?」
「しかも教室Bは血塗れよ。殺害現場を隠したかったとは思えないわ。」
「犯人が業者よろしく死体移動したかどうかは置いておいて、この事件はそんなに難しくないよ!」
(重々しい口を開く面々とは異なる、明るい声が響く。)
「今の話を聞いて、名探偵みたいに犯人を当てるのは簡単だね!」
「は!?マジかよ?誰が犯人だ!?」
「おもったいつけてねーで、お言いなさい!犯人は一体どこのドイツ人だ!?」
「キミだよ!イチガヤ タモツ!」
「えええ!?」
「だって、イチモツちゃんが作った注射器が死体に刺さってたんでしょ?それなら、イチモツちゃんしか犯人は考えられないよね?」
「誰がイチモツだ!オレは作っただけで、ブツは研究お教室に置きっ放しだったんだよ!」
「うーん、ほんとかなあ?二枚舌男みたいに嘘ついてるんじゃない?」
「でも、研究教室が誰でも入れるんですよ?注射器だけで市ヶ谷さんが犯人というのは、無理があるのでは…?」
「んー、そうかな?私みたいな消しゴムのカスから見ても、イチモツちゃんは怪しいけどな。」
「どうもテメーはブチこまご希望のようでありんす。いいだろう!ブチこんでやんよ!」
ノンストップ議論1開始
「ご希望ロボット達が最初に哀染をご発見した お現場には血がブチまけられてたんだぜ?」
「ご希望ロボット…?ああ、キーボ君のことね。」
「薬物お中毒だけならあんな大量の血は出ねーです。お凶器は他にもあった。」
「つまり、お注射器があったからといって犯人がオレというのはおかしいんだ!」
「え?どこが?イチモツちゃんが注射器と現場にあったナイフを用意したってだけでしょ?」
「イチモツって呼ぶな!おたの申します!アイドル野郎はナイフでぶっ刺されたんだろ!?オレはナイフなんて作ってねーです!」
「あんだァ!?ちょっとお手乗りご希望ロボに懐かれたからってお調子に乗るんじゃねーですよ!?」
「手乗りロボ…ボクのことじゃなさそうですね。ボクは今、春川さんの肩に乗っていますからね。」
(市ヶ谷が涙目になってる…考え直した方が良さそうだね。)
△back
「それは違います!」
「……ちょっと。」
「春川さんが何か否定したそうにしていたので、ボクが空気を読んで発言したまでです。礼には及びませんよ。」
「どうですか!空気の汚染濃度だけでなく、コンテクストを読むことも可能なんですよ、ボクは!」
(耳元で叫ばれたことに対する こちらの不平に、肩に乗ったキーボは胸を張って言った。)
「えっと、それで春川さん。どうかしたんですか?」
「…哀染の死体には、ナイフで刺された跡はなかったんだよ。」
「そうだったのね。怖くて ちゃんと見られてなかったわ。」
「テメーみたいな巨体でも怖いものがあんだな。」
「ああ!?」
「うお!?な、何だよ…。」
「とにかく…哀染には刺された跡も、殴られた跡もなかったよ。」
「僕も確認したよ。彼には外傷が見られなかった。」
「クラークラー!じゃあ、あの教室の血は何だったんだろうねー?」
(教室の血はーー…)
1. 血のり
2. 鼻血
3. 輸血パック
「キーボにとっては、血も血のりもニセモノなんだよねー!」
「血の通わぬロボとでも言いたいんですか!?」
(……考え直そう。)
△back
「輸血パックだよ。”超高校級の幽霊”の研究教室にあった、ね。」
「ええ。1つ なくなっていたわね。」
「犯人が輸血パックの血を教室に撒いたってことか?」
「…たぶんね。」
「つまり…血は偽装だったということじゃな?」
「何のために偽装なんてするん?」
「壱岐さんの研究教室から輸血パックを わざわざ持ってきていたということは…計画的な犯行のはずだね。」
「ワトシン君、ハルマキちゃん。他に最初の発見時のことで思い出したことない?」
「ええと…さっきも言ったけど、僕らはすぐ、死体から離れたんだ。ガスが撒かれたから、毒ガスかもしれないと思って…。」
「図書室に来た時、言ってたね。詳しく教えてくれる?」
ノンストップ議論2開始
「僕と春川さんが哀染くんの死体を発見した時、急に煙がまき上がったんだ。」
「それで、慌てて図書室まで逃げて来たのね。」
「煙は誰が出したんだー!?」
「やはり犯人ではないでしょうか!」
「何のために、そんなことをするんだい?」
「うーん…和戸君たちが哀染君を発見した時、まだ犯人は教室にいた…というのは、どうかしら?」
「なるほどのぅ。犯人はまだ逃げていなかった。それで、煙を出して和戸たちを追っ払ったってことじゃな。」
「春川さんの『間違えた』って顔、絶妙にイイよね…!」
(だから、オッサン臭いんだって…。)
△back
「それは違います!」
「あの教室には、机と椅子くらいしかないから、人が隠れられるような所はないよ。」
「サンタくらいの大きさなら教室の机に詰まって隠れるくらいワケないんやないか?」
「フォッフォッフォッ。ワシが詰まるのはエントツくらいじゃよ。」
「本当に詰まるんだ!?…えっと、教室Aならエントツじゃないけど、通気口があったよね。」
「でも、僕らが1番最初に彼の死体を見たのは隣の教室Bなんだよ。」
「さすがに、いくら小柄でも、あの教室に隠れる場所はないわね。」
「それに もし毒ガスなら犯人も死んじゃうねー。」
「毒ガスじゃなかったということじゃないですか!?」
「どちらにせよ、あの時 犯人が隠れていて春川さん達を遠ざけたのなら、その場から離れればいいだけです。死体を移動させる理由がありません。」
「さ…さすが、ご希望ロボット…。ご発言が合理的…!」
「……だとすると、犯人は二択に絞られそうね。」
「どういうことだ?犯人が分かったのか?」
ノンストップ議論3開始
「そのガス缶も私の研究教室に置かれていたものよ。」
「あれはタイマーをセットできるようなものじゃなかったわ。ガス缶の栓を抜くとガスが噴射するタイプなのよ。」
「イチモツちゃん、時限装置とか作ったりした?」
「イチモツって呼ぶな!ンなモン、ホイホイ作れっかよ!ご発明家じゃねーってんです。」
「でも…春川さん達が あの部屋に入った時に、タイミング良くガスが噴射したんですよね?」
「ええ…つまり、教室にいた和戸君か春川さんしかできないはずなのよ。」
「はあ?新始が!?ンなワケねーだろ!」
「シンジかマキが犯人かー!?」
「新始が殺人なんてするワケねー!オレには分かるんだよ!」
「盲信は危険ですよ。」
「うるせぇぞ!この…鉄!」
「素材で呼ばないでください!」
△back
「それは違います!」
「私と和戸にも、ガスを出すことはできないよ。」
「煙は、死体の後ろから上がったんだよ。和戸がガス缶を投げたとしたら私が気付くし…」
「春川さんが投げたとしても、僕が気付いたはずだね。」
「それなら…お互い そんな動きはなかったってことだよな?」
「では、一体どうやって煙が散布されたんだい?誰かが天井裏から投げたとでも?」
(誰かが あの教室でガスを撒いた。それができる奴なんて…いるの?)
「春川さん、あの教室にいたのはボクたち3人と、もう1人だけです。」
(……。)
▼ガスを教室に撒いたのは?
「なるほどね。でも、それだと『どうやって その人がガスを撒いたか』という疑問が湧き上がるわね。」
「湧き上がった疑問を解く真実があるはずですね。」
(……そんなものはない。)
△back
「彼しかいません!」
「哀染だよ。」
「哀染?」
「あの場でガスを撒けるのは、あいつしか…いないよ。」
「アイレイちゃんが生きてたっていうの?それとも…虫の息で、そんなことをした?」
「……哀染君が死の淵から甦り、煙を噴出させた…ということかしら…?」
「それだと、オカルト地味た話に聞こえるわね。」
「あ…あなたが それを言うの?」
「フム。そういえば…僕が見たのは霊の類なのだろうか…。」
「はあ?何だそりゃ?」
「僕は見たんだよ。和戸君と春川さんが彼の死体を見たという18時前に中庭で、彼の姿をね。」
「見間違いなんじゃねーですか?」
「哀染クンを発見した時は、ボクもいました。こちらは午後6時前で間違いありません。」
「僕の方も6時前で間違いないよ。日の入り時間を確認する癖があるからね。」
(私たちが1階のB教室で見たのは、間違いなく哀染だった。同じ時間に哀染が違う場所にいた…?)
ノンストップ議論4開始
「僕が見た哀染君は、中庭にて形容し難い奇天烈な動きをしていたよ。」
「カナデも見たよー!レイはキテレツなステップ踏んでたねー。」
「キテレツといえば…34話の花ムコ占いとか53話の恐怖の九官鳥回だよね。」
「最近の人気商売は奇抜さも必要なのだ…と彼らの生存競争について深く考察したものさ。」
「ナーヤー。コサックとベリーダンスとマツケンサンバを足して3で割ったようなダンスだったよー。」
「それは…想像が全く付かないね…。」
「何で同時刻に別の場所で哀染が目撃されてるんだよ?」
「まさか、本当に幽霊なのかしら…。そのダンスには、彼が遺したかった何かがあるんじゃないかしら?」
「ゆ、幽霊なんて いないよ!…僕らが発見した哀染くんが人形だった…ってわけでもないだろうし…。」
「じゃ、中庭の哀染がニセモノだったんじゃろうて。フォッフォッフォッ。」
「ニセモノか…。」
「なぜ…ボクを見ながら その言葉を繰り返すんですか…?」
(今のうちに…あの意見に賛成しておこう。)
△back
「それに賛成です!」
「哀染の部屋には、替えの衣装が9着しかなかったよ。」
「部屋に全く同じ着替え、用意されてるよね。わたしは部屋の着替え数えてなかったけど…。」
「私の部屋は10着だよ。朝 新しいのが足されてるから、常に10着ストックが用意されてるみたい。」
「私や和戸もそう。だから、全員そうなんじゃない?」
「ボクの着替えはありませんが…。」
「あんたは着替えないでしょ。…とにかく、哀染の部屋から替えの衣装が1着なくなってるんだよ。」
「哀染君に 成りすました人物が中庭にいたってことね。」
「一体 誰が…?」
「ンなもん!ご犯人に決まってるぜ!」
「綾小路、朝殻。中庭にいた奴の顔は見なかったの?」
「ああ、それが…見えなかった。いや、顔がなかった…という表現が正しいか。」
「顔がない……カオナシ?」
「そーそー。レイの顔はツルリと真っ白だったよー。まるで のっぺらぼうだねー。」
「顔がないニセモノ…これはどういうことでしょうか…?」
(顔がない…か。)
▼綾小路と朝殻が見た哀染とは?
「春川さん!今、ボクのことをニセモノだと思いませんでしたか!?」
「思ってないから、叫ばないで。」
△back
「キミしかいません!」
「みんなが見た哀染は…あんただったんじゃないの?雄狩…。」
「ぬぇ!?」
「フム。なるほどね。僕が見たのは、彼女の面だったのか。」
「いえ、違います!雄狩 芳子の光を全反射する特別性の面などではありません!」
「あ?そういや、雄狩にお面を作ってやったな。光のご反射でキラキラしたお面。」
「はぜっ!?」
「ちなみに、光の反射については私がアドバイスしたわ。」
「ふぐっ!?」
「あんたは面を着けてても闘えるんだよね?面を着けたまま そんな奇抜な動きができるのなんて、あんたしかいないんじゃない?」
「あじふらいっ!?」
「そうなの?ハルマキちゃんの才能も分かってないから、ハルマキちゃんも実はできたかもだよ?」
「……私はその時、キーボや和戸と一緒に哀染を発見したところだったんだよ。」
「あ、そっか!ごめん、忘れてたよ。私の記憶力って生まれたてのニワトリレベルだから…。」
「生まれたてのニワトリはヒヨコじゃない?」
「そんなことより!雄狩!オレの命も懸かってんだぞ!?よろしくお頼もうします!」
「うう……。」
「……分かりました。認めます。中庭で醜く舞っていたのは、この雄狩 芳子です。」
「被害者の殺害時刻に被害者の服を着て目撃させる…それが とても怪しいことだと、気付いているかい?」
「安い推理小説みたいに殺害時刻を誤認させようとしたのかな?」
「ということは、犯人はヨシコなのかー?」
「ち、違いますよ!」
「雄狩 芳子は ただ…アイドルの衣装を手に入れたなら、アイドルらしいキラキラ面を身に付けて光の下で舞わなければ!そう思っただけです!」
「どういうこと!?」
「理解不能です。なぜ哀染クンの衣装を持ってたんですか?」
「あの衣装は…もらったんです。」
「もらった?誰にだよ?」
「……哀染さんです。」
「被害者本人に?」
「何で黙ってたのよ?」
「それが事件に関係するとは思わなかったですし…雄狩 芳子のアイドルの舞は皆さんに お知らせできるレベルではなかったものですから…。」
「そんなことで?殺人事件が起きているのよ?」
「表現者とは納得いかんものを世に出したくないもんや。」
「それより、雄狩。あんたが哀染から衣装を借りたってのは間違いないんだね?」
「ええ。和戸さんや春川さんたちと話していたことを聞いたようで、貸してくださったんです。」
「ああ、そんな話もしたね。」
「舞闘家 死しても仮面は取らず!寝る時だって面は外しませんよ!そして面に合わせた服装をする!常識です!雄狩 芳子は男装の麗人なんですよ!」
「自分で麗人って言っちゃうんだ。…じゃあ、アイドルの哀染くんの服なんかも似合いそうだね。」
「ほあ!?た、確かに、アイドル衣装は気になりますが、雄狩 芳子が心身ともにアイドルになれるか…アイドルらしく舞えるか自信はありません…。」
「そんな自信はいらない気がするけど…うん、まあ…もういいや。」
「それで…哀染が衣装を渡してきたのは、いつ?」
「発見アナウンスの1時間ほど前です。哀染さんは衣装を手に『是非アイドルの舞を完成させてほしい』と、雄狩 芳子に想いを託したのです。」
「けれど、雄狩 芳子には成せなかった!自分なりにアイドルの輝かしさと青春と汗と涙を表現して舞ってみたのですが…」
「やはり、アイドルを表現するに至りませんでした…それで、寄宿舎に逃げ帰ったというわけです。」
「いや、とても興味深い踊りだったよ。雄蜘蛛が雌蜘蛛に喰われる瞬間を表したようで。」
「一体どんなダンスだったの!?」
「じゃが…それが事件と関係あるのかの?」
(事件の前に、哀染が雄狩に衣装を渡していた。これは…偶然?)
「春川さん。哀染クン自身は、あの派手な上着を脱いでいたこと。教室に撒かれた血やガスについて考えれば、答えは見えてくるはずです。」
(頭の中に道路とオープンカーが現れた。)
(…なるほど、“ゲームらしい”。最原が “前回”の裁判中、挙動不振だった場面を思い出しながら、ハンドルを握る。)
ブレインドライブ 開始
Q. 哀染が雄狩に服を貸した理由は?
1. 雄狩を陽動役にするため
2. ドキドキドッペルゲンガー体験のため
3. 気まぐれのプレゼント
Q. 哀染が欺こうとした相手は?
1. モノクマ 2. みんな 3. キーボ
Q. 哀染の目的は?
1. 演技の練習でオスカー賞受賞
2. 死んだフリをしてコロシアイを影で操る
3. 死んだフリでタイムリミットを無効化する
▼繋がった
「もしかすると…哀染はモノクマを騙そうとしていたのかもしれないね。」
「どういうことですか?」
「モノクマは言ったよね。『死体発見アナウンスが開始の合図』だって。だから、死んだフリで発見アナウンスを流そうとした。」
「タイムリミットまでに、モノクマに死体発見アナウンスを流させる。これが…哀染クンの狙いだったんです。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。死んだフリって…哀染が死んでなかったって言ってるのか?」
「僕らが捜査した時、彼は確実に死んでいたよ。」
「確かに…私たちがエイ鮫たちと哀染を発見した時、哀染は死んでいた。はじめに発見した教室Bじゃなくて、隣の教室Aで。」
「でも、私と和戸が教室Bで発見した時は…まだ生きてたんだよ。」
「お、おい…そもそも、おタイムリミットって…ありゃ大丈夫だって、テメーが言ったんじゃねーですか!」
「私は みな殺しなんてあり得ないって思ったけど…哀染は、そう思わなかったんだよ。」
「えっと、それと雄狩 芳子が衣装をもらったことは関係が?」
「哀染はモノクマの監視を避けるために、雄狩を陽動に使ったんだよ。」
「ねー、ハルマキちゃん。モノクマって私たちを監視してるの?」
「そうだね…。やっぱり、隠しカメラとかがあるのかな?」
「まあ、モノクマは僕たちがいるところに突然現れたりするし、僕らがどこにいるのか見ていてもおかしくないよね。」
「うーん、私が気になったのは、ハルマキちゃんが『監視されてる』って知ってるみたいな言い方だったからなんだよね。」
「……知ってるとかじゃなくて、もし事件が起きた時モノクマは何があったのか知っておかなきゃいけないんでしょ。…だから、そう思っただけだよ。」
「そっか。そうなんだね。」
「確かに、学級裁判のルール上、どこかに隠しカメラがあると考えるのが合理的ですね。」
「モノクマが監視していたとして…2人同じ人物がいたら、余計 注目するんじゃないかしら。」
(それは…現場にあった“アレ”が答えだろうね。)
2.【ナイフ】
3.【ガス缶】
「春川さん、さすがにキーボ君をずっと肩に憑けているのは良くないわ。肩の荷を降ろしてリラックスしてちょうだい。」
「荷って言わないでください!」
(確かに、肩の荷が重い。)
△back
「現場にあった布団カバーだよ。哀染は、個室の布団カバーを頭から被っていたんじゃないかな。あいつの個室のものはなくなってたよ。」
「モノクマの監視を欺くため、闇に紛れる作戦ですね。」
「そして、モノクマの目を他に向けるために、雄狩に自分の格好をさせた。」
「そ…そうだったんですか…。」
「布団カバーを被った人物がいたら目立ちそうなもんじゃが…。」
「うーん…哀染君ってアイドルだから、監視カメラがありそうな所から映りにくいアングルで移動することもできたのかもね。」
(実際のカメラは…みんなが思ってるようなものじゃないから、モノクマの目を欺けなかったはずだけど…。)
「監視を避けて1階の教室Bに来た哀染は、死体のフリをした。血塗れで倒れている人物がいたら…普通は死んでると思うからね。」
「ガスを散布させたのは、どこかからか監視しているモノクマの目を ごまかすため…ですね。」
「あのガスは…本当に毒じゃなかったんだ…。」
「つまり…和戸君と春川さんが見たのは間違いなく哀染君。でも、彼は生きていて、自分で煙を発生させて、和戸君たちを遠ざけた。そういうこと?」
「なぜ死んだフリしとった奴が本当に死ぬんや?」
「そ、そうだ。死んだフリしてた哀染が隣の部屋で本当に死んだのは何でなんだよ。」
「……まさか…。」
「まさか、何だー!?」
「いや…僕らは死体のフリをした哀染くんを発見したのに、死体発見アナウンスは鳴らなかった。」
「フリだってバレてたんじゃないかしら?」
「そもそも、あれは3人が発見したら鳴るんだろう?和戸君と春川さん2人では鳴らなかっただけじゃないかな?」
「ボクもいましたよ!」
「うん…キーボくんを含めるにせよ含めないにせよ…哀染くんは思ったはずだよ。『発見アナウンスは鳴らなかった。失敗だ。』って…。」
「どうかな?春川さん。もし…彼がそう思ったとしたら…。」
(哀染は自分の計画が失敗したと思った。だとしたら…あいつはーー)
1. 自殺
2. 事故死
3. 憤死
「……ここまで言っても分からないんだね。」
「聞いたことあるような、ないようなセリフですね。」
(和戸が言いたいことはーー)
△back
「あいつは、自分で死んだ。和戸が言いたいのは…そういうことだよね。」
「え!?」
「…そう…か。」
「どういうことや?」
「哀染くんは、死体発見アナウンスを流すために、死を選んだのかもしれない。」
「何ですって?」
「自殺だったということ?」
「た、確かに…その時間、図書室にいた人が哀染君を殺すことはできないし…校舎にいた人って、他にいないんだよね?」
「全員の証言を信じるならね。」
(裁判場が静寂に包まれる。緊張感のある空気の中で、モノクマが楽しそうに こちらを見ていた。)
学級裁判 中断