第△章 絶望□жット 学級裁判編Ⅰ
コトダマリスト
被害者は、”超高校級のAI”aiko-112358132134。死体発見現場は、小学校の中庭。死亡推定時刻は、11時から11時半。頭と心臓を同時に打たれたことにより機能停止後、再起不能になった。ロボット部分もバラバラで修復不能。
4階 音楽室の鏡が割れたことで用意された新しい鏡が、割れた状態で中庭に ばら撒かれている。被害者の体の下からも発見された。
発見現場の傍らに落ちていた。クレーン車で運ばれる4階の鏡を覆っていたもので、クレーンにロープで繋がれていた。
アイコのロボット部分の服に入っていた。特徴的な筆跡で『中にわにコイ』と書かれていた。
体育倉庫は数日前に封鎖されたが、事件当日の朝には開けられていた。小学生が体育で使うとは思えない物騒な道具が揃っているが、使われた形跡はない。
校舎校門から中庭に続く道はクレーン車が通ったことで、ぬかるんでいた。死体発見アナウンス直後に校門から中庭までの道に残っていたのは、佐藤と祝里の足跡のみ。
中庭を取り囲む壁に空いた穴。小学校低学年ぐらいなら通れそうだが、一般的な高校生が通ったらハマって動けなくなる未来しか見えない。穴は11時頃から11時半頃に掛けてモノクマが塞いだ。それまでの時間も抜け穴前には大鏡が立て掛けられていた。
中庭の奥に設置されており、使われた形跡がある。焼却炉の目の前には、草履と思しき泥の足跡が残っている。捜査時間にクレーン車が目の前に停められていた。
モノクマが鏡を4階に運ぶために小学校の中庭に停めていた。死体発見時には、校舎と中庭を繋ぐ扉前、焼却炉を塞ぐように停められていた。排水しながら進む。
校舎内にいた人間が寝てしまったという11時頃から11時半頃までの夕神音の寝言が録音されている。
ノイズキャンセラー付きのヘッドホン。耳に つけていると外界の音がほぼ聞こえなくなる。
モノクマの示した動機により、事件のクロの他に共犯者がいた可能性がある。実行犯はクロ、共犯者はシロ扱いとなる。
モノクマがモノパッドに追加した証明書。”超高校級”の才能は確実に発揮されるとモノクマによって保証されている。
学級裁判 開廷
「えー、ではでは!最初に学級裁判の簡単なルールを説明しておきましょう!オマエラの中には殺人を犯したクロがいます。 」
(円形の学級裁判場で、モノクマが お馴染みのルール説明を始める。みんなの緊張した顔も、もはやお馴染みだ。)
(裁判のルールは今までの『ダンガンロンパ』と全く同じ。これまでのセオリー通り、主人公キャラにクロが暴かれるって展開になるはず。)
(V2の主人公は誰だったんだっけ…?天海君?)
(隣の席の天海君を横目で見る。みんなと同様に、彼も緊張した面持ちだった。天海君が裁判場にいるのは新鮮なような、そうでもないような感じがした。)
(それにしても…わたしは今回、クロについて全く知らされてない。カメラの映像を見ることもできなければ、隠し部屋とかの場所も教えられていない。)
(今回は、みんなと同じ目線でコロシアイを見守れってことなのかな。)
(……うん。それは それで、いいかもしれない。久しぶりに、視聴者目線で楽しめるんだから!)
「とにかく…まずは事件の整理から始めましょうか。」
(モノクマが説明を終えても、不安げな顔で黙っているみんなを天海君が促した。)
(うん。やっぱり、天海君は”みんなを引っ張っていく主人公”タイプだよ。)
「そうですね。今回の事件について、改めて振り返っておきましょう。」
「…クソ!ぜってー犯人 見つけんぞ!」
ノンストップ議論1開始
「被害者は、”超高校級のAI”アイコだ。」
「死亡推定時刻は、今日の11時から11時半頃だったね。」
「発見現場は校舎の中庭だね。第一発見者は、ボクとつむぎ。4階の窓から発見したんだ。」
「うん。白銀お姉ちゃんの声で、あたしと蘭太郎お兄ちゃんも5階の窓から中庭を見たんだ。そしたら…アイコお姉ちゃんがバラバラに…。」
「……アイコさんの画面は割れていて…ロボットも…壊されていた。」
「鉄のカタマリ、みじん切りデス。」
「みじん切り…じゃあ、アイコは刺されて死んだってこと?」
…………
……
…
(誰も、何も言わない。)
(え?何で…誰も何も言わないの?誰か論破してよ!)
(「それは違うよ!」って!初回の論破でお馴染みの分かりやすい論破ポイントあるでしょ!?)
(天海君、あなた主人公じゃないの!?パンツ集める権利があるんだから、義務を全うしよう!?)
「……。」
(永本君、あなた”幸運”でしょ!アンテナは小さいけど、きっとポテンシャルあるから!とりあえず言ってみよ?「それは違うぞ!」って言ってみよ?)
「……。」
(哀染君、それアンテナかもしれないよ!アイドルの周りに吹きがちな謎の風による無造作ヘアじゃなくて、アンテナかもしれないんだよ!?)
「……。」
…………
……
…
(地獄のような時間。社会人のわたしにとって、意見を求められる会議での沈黙ほど気まずいものはない。)
(うう…でも、わたしにはアンテナないから…「それは違うよ」なんて言うわけにはいかない。そもそも、首謀者が裁判を引っ張るわけにはいかないから…!)
「白銀さん。何か…気付いたことがあるんじゃないっすか?」
「えっ!?」
「俺も手助けしますんで、白銀さん、気付いたことを話してもらえないっすか?」
「いや…ちょっ…」
「みなさん、今の話、もう1度お願いできないっすか?白銀さんが何か気付いたみたいなんで。」
(わたしの戸惑いが見えていないかのように、みんなに天海君が呼び掛けた。そして、またノンストップ議論が始まった。)
RE:ノンストップ議論1開始
「被害者は、”超高校級のAI”アイコだ。」
「死亡推定時刻は、今日の11時から11時半頃だったね。」
「発見現場は校舎の中庭だね。第一発見者は、ボクとつむぎ。4階の窓から発見したんだ。」
「うん。白銀お姉ちゃんの声で、あたしと蘭太郎お兄ちゃんも5階の窓から中庭を見たんだ。そしたら…アイコお姉ちゃんがバラバラに…。」
「……アイコさんの画面は割れていて…ロボットも…壊されていた。」
「鉄のカタマリ、みじん切りデス。」
「みじん切り…じゃあ、アイコは刺されて死んだってこと?」
「……もう1度、考えてみてください。」
(論破ポイント分かってるなら、あなたが論破してよ…!)
△back
「それは違うっす。」
「………。」
(わたしの選択に合わせて、なぜか天海君が例のフレーズを放つ。)
(え、わたしの思考 読まれてない?大丈夫?…っていうか、みんな寸分違わぬ文句でノンストップ議論をリピートしてくれたね。さすがゲーム…。)
「アイコさんは刺殺されたわけじゃないっす。そうっすよね、白銀さん?」
「……うん。モノクマファイルによると…アイコさんは、頭部と心臓部を打たれたことにより機能停止後、再起不能になったんだよ。」
「……あ。そう、だったね。」
「……。」
(わたしは、そっとモノクマを盗み見た。)
(コロシアイを仕掛けた首謀者が論破するなんて前代未聞…どころか、ただの自作自演になりかねない。そんな展開にして減給とかならない?大丈夫?)
「うぷぷ。ぷぷぷぷぷ…。」
(モノクマは…笑ってる。それはもう、楽しそうに。)
(どうして?わたしが論破してもいいってこと?だから…わたしにクロの情報が一切なかったの?)
「つむぎ、どうかした?」
「……何でもないよ。」
「アイコさんは打撃で死んだってことだよね。」
「殴られて死んだ…機械の場合も、そう言うんでしょうか?」
「ンなことはどーでもいい。とりあえず、小学校にいたヤツが犯人だろ!!」
「小学校外の人間も、後から小学校に入ることはできたはずだがね。」
「死体発見アナウンス時の全員の位置関係を、もう1度 確認しておきましょう。」
「オレは、町の南エリアにいた。筋肉ダルマと一緒だった。」
「はい、自分は郷田先輩と一緒でした!鏡の壁を何とかできないかと…。」
「アナウンス時、ボクは東エリアを旅する大道芸人。アナウンス1時間前に松井クンとバッタリ遭遇。」
「ああ。僕も1人だったが、確かに、ぽぴぃ君と会ったよ。彼と別れた後は小学校へ向かったんだが、突然 睡魔に襲われ、校外で倒れてしまったよ。」
「ローズさんと木野さん、わたしは、町の西エリアにおりました。」
「ヤマトナデシコの言う通り。」
「……うん。」
「オレは1人で小学校1階の玄関にいた。アナウンスには気付かなくて、後から哀染に起こされた。」
「私も1人だったわぁ。放送室で寝ちゃっててねぇ。」
「さっきも言った通り、つむぎとボクは校舎の4階にいたよ。アイコを発見する直前までボクらも寝てたね。」
「あたしは…蘭太郎お兄ちゃんと一緒だったよ。3階にいた。あたし達も寝ちゃってたんだよ。」
「あたしと ここみは、校門近くにいたよ。11時くらい…中庭に行く途中で寝ちゃって、アナウンスの時は校門から中庭へ行く道で倒れてたんだ。」
「うん。現場に1番近かったのも、僕らだよ。校門から中庭までの道は ぬかるんでて、泥だらけになっちゃったんだ。」
「ちなみに、発見アナウンス後、中庭に行って現場を確認してから校内への出入りを確認してたけど、今みんなが証言した通りで間違いないよ。」
「小学校にいたのは、天海妹尾ペア、白銀哀染ペア、佐藤祝里ペア、それに単体で夕神音サンと永本クン。」
「おい、ペラペラ名前 言うな!まだ覚えてねーんだよ!」
「えー、まだ覚えてないの?そろそろ覚えといてよね。ま、覚えたところで、大半はいなくなるのですけども!」
「とにかく、小学校にいた方々は、異変に気付きやすかったはずですね。」
「でも、みんなの発言に、特に不自然なところはないわよねぇ。」
(……明らかに、不自然なことがあると思うけど。)
「白銀さん。小学校の不自然な事象は、一応 説明ができるっす。それを起こしたのは誰っすか?」
(……また、わたしが答えるの?)
(もう1度モノクマの様子を確認する。けれど、モノクマは やはり笑っているだけだった。)
▼小学校内での不自然な事象を引き起こしたのは?
「つむぎはボクと一緒だったよね。これは、覚えてる?」
(…なんか、記憶 失いがちな人って思われてない?)
△back
「夕神音さん。小学校や近くにいた人が突然 寝ちゃったのは、明らかに不自然だよ。」
「あらぁ?」
「やっぱり、あたし達が寝ちゃったのって…。」
「夕神音の子守唄…か。」
「不思議ミラクルシンガー。摩訶不思議アドベンチャー。」
「ずっと校内放送で、美久の歌が流れていたんだ。それで、子守唄の時に、みんな寝てしまったようだね。」
「ええ、そうよ。子守唄で、みんな よく眠れたようで良かったわぁ。」
「え、えっと、校内の人を眠らせたってことですか!?ど、どうして、そんなことを!?」
「みんなを眠らせている間に犯行を行った。そういうことかね?」
「やーねぇ、違うわよぉ。私も寝ちゃってたもの。」
ノンストップ議論2開始
「ショーコは、いるカ?」
「……寝ていたという証拠を示すことは難しいかもしれません。」
「うーん、そうねぇ。寝ていたことを証明はできないわぁ。寝てたから覚えていないもの。」
「けれど、怪しい実行犯。」
「あらぁ。実行犯だなんて、何もしてないわよぉ。」
「何もしないのに、みんなを眠らせたの?目的…本当になかったのかな?」
「小学校や近くにいた人間を眠らせて…放送室から中庭に向かった…アイコさんを殺すために。」
「シロガネの言いていマスこと、分かりマセン。もう1度オネガイシマス。戦場カメラマンくらい、ゆっくり。」
「キモいブツブツが出そうだから、勘弁して…。」
△back
「それは違うっす。」
「放送室の音声は録音されてたんだよ。犯行時間の11時から11時半の間も夕神音さんの寝言が ずっと録音されてて…」
「『コロシアイと、この試合って似てるわね』と言ってたよ!」
「白銀さん、寝言の内容まで詳しく言わなくてもいいんすよ。」
「恥ずかしいわぁ…。」
「つまり、夕神音さんは放送室を離れていないということですね。」
「うん。録音装置を見たところ、時刻は正確だと思うよ。」
「でも…夕神音お姉ちゃんも放送室で寝てたってことだよね?」
「みんな本当に寝てたとしたら、殺人なんて起こるはずなかったんだけどね。」
「あ!?子守唄 聞いたらマジで眠っちまうって話だったろ?全員 寝てたっつーなら、殺人は無理じゃねーか。」
「本当に、殺人…だったのか。こういうのは、議論として、どうだろうか?」
「確かに…殺”人”ではねーよな。」
「そういうことではない。例えば、眠ってしまったことによる事故…というのは どうかね?」
「一理あるある!事故、巫女、インコ。」
(一理…あるのかな?たとえ事故でも、殺意がなくても『ダンガンロンパ』はクロにしそうだけど。)
「……この事件は事故の線も考えた方がいいってことっすね。」
「ことっすね…っていいわけあるかー!そんな初っ端から事故でたまるかって話だよ!」
「確かに小学校にいた人ほぼ寝てたけど、確実にクロは起きて犯行を遂行したんだよ!」
「……クロは起きてたんすね?」
「ハッ…!言ってしまった!」
(モノクマが口に手を当てて焦った様子を見せた。けど…絶対わざとだ。)
「小学校にいた人…みんな寝てた。機械のアイコさんも…。」
「うん。アイコも寝るって言ってたね。」
「機械なのに!?」
「クロだけ起きてたの?どうやって?夕神音お姉ちゃんの歌 聴いただけで、グースカ寝ちゃうのに。」
「手で耳栓してたんじゃねーか?」
「美久の歌は放送されていたから、耳を塞ぐくらいじゃ聞こえなくはならないよ。」
「そうだな。耳栓になりそうなモンもねーし…子守唄を聴かない方法がない。」
(…そうなのかな?子守唄を聴かない方法はあったよね。)
1.【才能証明書】
3.【クレーン車】
「ふふ。白銀さん、いい夢が見られたかしら?」
(今、この状況が夢みたい…とは口が裂けても言えないね。)
△back
「ノイズキャンセラー付きのヘッドホンなら、子守唄を聴かないってこともできるんじゃないかな?」
「north can seller?」
「ノイズキャンセラーっす。永本君は、ノイズキャンセラー付きのヘッドホンを持ってるっすね。」
「…あ、ああ。」
「永本お兄ちゃんは…小学校の1階にいたんだよね。」
「では、永本君だけは、小学校にいた人間が全員 寝ている中で起きていられたというわけかね。」
「永本君、どうだったかしらぁ?貴方が歌ってくれって言ってたから、歌ってみたのよぉ。」
「あ、ああ。ありがとな。」
「えっ…つまり、永本先輩が夕神音先パイの歌で小学校の人を眠らせたってことですか?」
「その中で永本くんは眠らないための道具を持っていた…ということになりますが…。」
「おい、地味ヤロー!テメーが機械女を殺しやがったのか!?」
「いや、機械は”殺す”っつーか、”壊す”じゃねーか?」
「コワス…ワル…オル…この国のbreak、フクザツです。」
(キーボ君が聞いたら遺憾の意を表明しそうなフレーズが聞こえた。…のは置いておいて、裁判場の視線が永本君に集まった。)
(…そうそう、この疑心暗鬼の雰囲気。学級裁判って感じだよね。)
「うぷぷ、またまた”超高校級の幸運”が疑われてるね。ま、1章から疑われるのは、ある意味 幸運ってね!」
(…生存フラグ的な意味で?確かに、”幸運”は1章で疑われやすかった気がする。…っていっても、いくつかの『ダンガンロンパ』の記憶しかないけど。)
(他にも、生存フラグを立てるには“成長する”ことが必要だったような気もする。)
(……などと思っていると、声が上がった。)
「でも僕、子守唄で自分が倒れる前、永本さんが寝てるの見たよ。彼は玄関ホールで倒れてたんだ。祝里さんと中庭に行く時だったけど…」
「あ…うん。あたしも見たよ!けいは確かに、校舎内で倒れてた。」
「では、ナガモトも寝てマシタ。」
「それは どうかな。かなり怪しいが。夕神音さんを歌うよう唆したのは、彼だろう。」
「そうねぇ。でも、『いつか歌ってくれ』って言われただけで、今日 放送室で歌ったのは偶然なのよねぇ。」
「そういえば、みんなに聞こえるようにってリクエストしていたのは、アイコだったよね。」
「ええ。それで、放送室で歌おうと思ったのよねぇ。」
「じゃあ、偶然だよね。けいが疑わしいとは言えないんじゃないかな?」
「えーと…永本お兄ちゃんも、校舎内でスヤスヤ寝てたってこと?」
「ちょいと お待ちのタメゴロウ!」
ノンストップ議論3開始
「寝る演技なら誰でもできる。」
「うん。寝たフリも死んだフリも…忍耐強い人なら結構できるかもしれないね。」
「でも…永本さんは血塗れだった…。」
「ああ。マジで傷もあったし、あれは演技じゃねーぞ。」
「自傷行為は結構カンタン!オモイヤリ良くヤレ!」
「ローズさん、思い切り良く…ですよ。」
「倒れたフリしてノイキャンホンで子守唄回避!祝里サン達 寝た後、校門側から中庭 回った可能性あり!一理あり!」
「ヘイヘイヘイヘイヘイスティングス!」
「よくよくよくよく考えよう。」
「小柄な おヒゲのベルギー人探偵コスプレ…やらないか!?」
△back
「それは違うっす。」
「校門から中庭への道は、ぬかるんでたでしょ?わたし達が現場に行く前、そこには佐藤君と祝里さんの足跡だけだったよ。」
「永本君の足跡はなかったっすね。」
「確かに、局地的に ぬかるんでいたね。」
「お陰様で、一張羅、ドロドロ。」
「うぷぷぷ。あのクレーン車は、排水しながら進むから。ナメクジのような粘液を残し走行する特別性なのさ。」
「ンだよ、それ。買い替えやがれ。」
「仕方ないだろー!謎解きには、便利で不便なアイテムが必要なんだ!謎解きはご都合アイテムの下で!」
(…確かに。多少 強引でも、そういうアイテムやルールは必須だよね。ものすごく金箔が剥がれやすいとか、夜時間の遊泳禁止とか…)
(置物にしか見えない時計とか、電池がなくなるまで踊り狂う警察マスコット人形とか、序審法廷制度とか。)
「圭クンは、校門側の中庭通路を通らなかったってことだよね?」
「校舎の裏口前にクレーン車が止まっていたから、そっちからの出入りもできなかったはずだよね。」
「そうだね。中庭の石畳の乾き方からして、11時にはクレーン車は裏口前に移動していたはずだ。」
「犯行時間に校舎反対側の裏口扉はクレーン車で塞がれていたってこと…だね。」
「じゃあ、けいが犯人ってことはないんだよね。けいは玄関にいて、その時 裏口は通れなかったんだから…。」
「じゃ、じゃあ、小学校にいた人は全員 寝てたってことですか?小学校の外から来た人でしょうか!?」
「それもないっす。小学校の校門前の地面も ぬかるんでいて、死体発見アナウンスの後すぐは、小学校外の人の足跡はなかったっすから。」
「やはり、容疑者は小学校にいた人間だ。しかし、全員が子守唄で眠っていたとなると、目撃証言なども期待できないね。」
「ごめんなさい。私のせいねぇ…。」
「ううん、美久のせいじゃないよ。悪いのは犯人だ。」
「犯人は、どうやって眠ることを回避したのでしょうか。永本くんのヘッドホンが盗まれていた…ということもないんですよね?」
「ああ。ずっとヘッドホンは首に掛けてたぞ。」
「耳コワス、ワタ入れる。できないナイ。」
「そうだね。小学校にいた人の中に犯人がいるなら、耳を一時的に聞こえないようにしたんだよ。例えば、鼓膜を破ったり。」
「クレイジーティーパーティー!エターナルノーサンキュー!」
「他の可能性…みんなが子守唄で寝ている間に、誰かが小学校で犯行を行った…。」
「でも、蘭太郎お兄ちゃんが言った通り、校門前の足跡はなかったんだよ?」
「ううん…校門を通らなくても良かったのかもしれない。」
ノンストップ議論4開始
「僕らが眠った後なら校門側から普通に入って来られたけど…。足跡は僕と祝里さんのものしか残ってなかったんだよ。」
「中庭の壁の穴…。穴から出入りした人がいたかも…。」
「確かに!あそこから侵入して、中庭に入ることができた人はいらっしゃいませんか!」
「あの大きさでは、かなり小柄でないと通れません。妹尾さんや、ぽぴぃくんは通れるかもしれませんが…。」
「ポピィ!?」
「壁の穴に手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ殺しマス。できないナイ。」
「穴から殺すのは無理だろ。バラバラになんかできねーし。」
「…………。」
(間違った時は、ボケるかツッコむかして欲しいな。)
(ここは賛成してみよう。)
△back
「それに賛成っす。」
「中庭の抜け穴は、確かに今朝まであったけど、11時頃にはモノクマが塞いだんだよ。」
「それまでの時間も、クレーン車の鏡が立て掛けられていたらしいから、今日あそこから出入りできた人はいないよね。」
「……そう。」
「それなら、小学校にいなかった人物が中庭に入ってアイコさんを殺害することは不可能だね。」
「うん。僕と祝里さん以外の足跡はなかったからね。」
「それに…モノクマファイルによると、アイコさんは頭部と心臓部を同時に打たれているっす。そんな攻撃を穴からできるとは思えません。」
「…その頭部と心臓部を同時に打たれたって どういうことだよ?」
「そんなこと、できるのかな?」
「妙な書き方だよね。」
「うん。ケンシロウ様みたいに…こう、秘孔をついた、みたいな書き方だよね。」
「えっ…そんな殺し方できますか!?」
「きっと犯人にウデ4〜6本ありました!」
「手毬の鬼や三つ目なのに地球人と言い張る元鶴仙流じゃないんだから!」
「白銀さん…落ち着いてください。また何言ってるか分からなくなってるっす。」
「あ…ごめん。つい…。」
「頭と心臓を同時に…これは…1人では難しいと思います。」
「筋肉ダルマならできんじゃねーのか?」
「できませんよ!」
「できたところで、それをする意味がない。そんなことをしなくても前谷君ならアイコさんを壊せるだろう。」
「だ、だから、壊しませんって!!」
「頭と心臓を同時に…の意味は、よく分からないよね。」
「けれど、事実は そうなってるっす。モノクマの情報が正しければ…の話っすけど。」
「ムキー!ボクが提供した情報は100%事実だよ!!ボクのおへそを賭けてもいい!」
「そんなの誰もいらないよっ!」
(…でも、どうなんだろう?モノクマファイルに関して、情報に間違いはないはず。アイコさんが頭と心臓どちらも殴られたというのは…)
1. 犯人が2人いる
3. 犯人は超人
「キミは実にバカだな。」
(……!誰か黄色い服と紺の短パン持ってきて!今なら目を3にできるから…!)
△back
「犯人が2人いたとしたら…どうかな?」
「はあ?2人?」
「どういうことだよ…?」
「アイコサンを殺した悪行、2人のはじめての共同作業。」
「……可能性はあるっすね。」
(今までのコロシアイで共犯はなかった。……ううん、似たケースはあったけど2人で1人…1体を殺すパターンは初めてだ。)
(でも、今回は、その可能性がある。)
「それってモノクマが言ってた動機があるから?クロは、もう1人を選んで一緒に卒業できるっていう…?」
「ええ。その動機で犯人が殺人を計画したなら…共犯者がいても、おかしくはないっす。」
「中庭近くにいて、2人だったのは…佐藤君と祝里さんだね。」
「え!?あ、あたし達じゃないよ!」
「確かに、僕たち以外は中庭に入れなかっただろうね。足跡なかったし。校舎裏口は塞がれていたし。」
「ちょっ…ここみ!?」
「自供、自白、自認?」
「テメーらが、グルになって機械女を殺したのか!?」
「……どうやって?」
「ああ。2人って言っても、小柄な佐藤と女子の祝里が機械をバラバラに壊すようなことできねーだろ。」
「ドンキ使えば、できないナイ。」
「そうですね。道具があれば…できなくはないはずです。現場からは発見されていませんでしたが…。」
「道具って何だったのかしらぁ?」
「アイコサンのカラダボロボロ。大根のサラダ諸々。」
「ロボットの身体はバラバラになっていたっす。よほど大きな力がなければ、そんなことは難しいはずっすね。」
「アイコお姉ちゃんをバラバラにする凶器って…?」
ノンストップ議論5開始
「封鎖した体育倉庫にあったんだろ。犯人は、そこから凶器を持ち出しやがったんだ!」
「体育倉庫?確か…郷田君たちが封鎖した後、開けられていたと言っていたね。」
「そうそうそうそう。送検後、起訴。ボクと郷田クン、前谷クン、天海クンで体育倉庫をガッチリ封鎖。」
「その後、自分と郷田先輩、ぽぴぃ先輩で封鎖した錠の鍵を川に捨てたんです。」
「けれど…今朝、その鍵が開けられていましたね。」
「ああ!だから、体育倉庫にあった凶器使って、アイコをぶっ殺しやがったんだ!」
「…お姉ちゃん。何をブツブツブツブツ言ってるの?」
「あ、ごめん。ツイートしてた?某社が色々 変わっちゃったこと、未だに引きずってるんだよね…。」
△back
「それは違うっす。」
「体育倉庫の凶器には、アイコさんをバラバラにできるようなものはなかったはずだよ。」
「誰かが既に隠した後だったのじゃないかね?校舎や町中から凶器が見つかっていたという話じゃないか」
「ううん。体育倉庫の凶器は使われてない。そうだよね?祝里さん。」
「…うん。体育倉庫、事件前後で違うところなんてなかったよ。」
「それに、初日以降 隠されてた凶器も、ここみが回収して厨房に入れてたので全部だよ。」
「何でンなこと覚えてんだよ。」
「あたし、記憶力はいいんだよね。見たものは思い出せるっていうか…。」
「映像記憶というやつかね?」
「すごいわねぇ。」
「デモ、それ、ヨーギシャの話デス。」
「そうだね…。祝里お姉ちゃんが疑われてるから…。」
「ええ!?で、でも、本当のことだよ!」
「……他に、体育倉庫の中を確認した人はいるよね?非力な僕たちでもバラバラ殺人ができそうな凶器はあった?」
「一応、俺も見たっすね。ザッとしか見ていないので、何とも言えないっすけど…。」
「あ、体育倉庫を封鎖した時、自分は じっくり見ました!アイコ先パイをバラバラにできるようなものはなかったと思います!」
「テメー!何で それを早く言わねぇ!?」
「え!?郷田先輩こそ、一緒に体育倉庫 調査したじゃないですか!!何で覚えてないんですか!」
「うるせぇ!オレは人の顔 覚える次に、在庫管理が苦手なんだよ!」
「ボクも記憶は遙か彼方。実は あんまり見えてない。」
「…祝里さんと佐藤さんが共犯で犯人の可能性は…低い。」
「そもそも…アイコは殴られてバラバラにされたのか?」
「モノクマファイルに『打った』と書きてアリマス。ヒットアンドランです。」
(確かに…あのモノクマファイルの書き方は ちょっと変だった。頭部と心臓部を同時に打たれて…被害者が人間じゃないからだと思ってたけど…。)
(ミスリードするために、ファイルの書き方を ああしたのかも…。)
(でも、『ダンガンロンパ』がモノクマファイルでミスリードさせるなんて…わたしが知る限りではなかったはず。)
「人の頭部と心臓部を同時に打つなら、2人は必要です!」
「けど、その打ったっての、ひっかからないか?」
「…アイコさんは人じゃないからね。」
「……アイコさんの後ろの人はロボット…そう言ってた。」
「ロボットが胸に提げていた電子パッドがアイコの本体だったね。」
「そっか。そういえば、そう言ってたね。」
「本体はコレ。これが私様のブレインであり心臓部なのよ。」
(アイコさんとの会話を思い出していると、頭の中にサイクリングロードが現れた。)
(え。これって『ロジカルダイブ』とか『ブレインドライブ』みたいなもの?言っちゃ悪いけど…ちょっとダサ……)
(考えている間にカウントダウンが始まり、わたしの乗る自転車が動き出した。)
ブレインサイクル 開始
Q. アイコの頭部とは?
1.ロボットの頭部
2.胸の電子パッド
3.ロボットの帽子
Q. アイコの心臓部とは?
1.ロボットの心臓部
2.胸の電子パッド
3.ロボットの臀部
Q. “頭部心臓部を打たれた”とはどういうこと?
1.ロボットの頭部心臓部が同時に破壊された
2.胸の電子パッドを破壊された
3.アイコには心臓が7つ、脳が5つあった
「アイコさんの頭部と心臓部が同時に打たれた…これって、電子パッドが壊されたってことじゃないかな?」
「どういうこと?」
「……なるほど。アイコさんの頭部と心臓部、どちらも電子パッドだったってことっすね。」
「ええ!?ロボットの頭部と心臓部のことじゃないんですか!?」
「あえて誤解させるように、モノクマファイルが書かれていたということですか?」
「ずるいわねぇ。」
「モノクマは事件に関与しないと言ってたはずっす。ミスリードさせるような書き方は不正なんじゃないっすか。」
(確かに…大事な情報を書かないことはあっても、ミスリードさせるように書くなんて…今までの『ダンガンロンパ』ではなかったはずなのに。)
「ズルくも不正でもないよ!嘘は書いてないからね!でも…もし、それで誤解を生んでしまったのだとしたら…」
「どうも、トゥイマテーン!」
「……。」
「どうやら、白銀さんの推理は正しいみたいっすね。」
「ハッ!?謀ったな!?天海クン…!恐ろしい子ッ!!」
(天海君がモノクマの様子から推理するのを、モノクマ自身はブルブル震えながら悔しがっている…ように見せている。)
(本当に…モノクマファイルでミスリードさせようとしたんだ…。どうして?より裁判を盛り上げるため…?)
「では、頭部と心臓部を同時に破壊…というのは、アイコさんが映っていた電子パッドが壊されたということか。」
「それなら、イワサトとサトウもできマス。」
「え!?ちょっと待ってよ!」
「ごめんね、栞。疑いたくはないけど、現場に足跡が残っていない以上、キミ達 2人を疑う他ないんだよ。」
「あたし達は絶対 違うよ!」
「現場にいて、足跡 残ってイマス。殺すのカンタン。」
「簡単ではねーよ。」
「テメーらが殺ったんだな!?」
「違うってば!」
「……現場が中庭じゃなかったとしたら…どうかな?」
「中庭じゃない?」
「え!?でも、アイコ先パイの死体は中庭にあったんですよ!」
「そうだよ!もし死体を校舎から移動させるには、やっぱり校門側に行かなきゃなんだから!」
「その足跡も残ってなかったし、犯行時刻にはクレーン車が裏口前に停まっていて出入りもできなかったはずだよ。」
「いや、簡単な方法があるだろう。その場合…アイコさんの壊れ方も頷ける。」
「ど、どういうことだよ?」
(簡単な方法…。確かに、あの現場を見た時、真っ先に似た事件を思い出したんだよね。アイコさんの死因って、やっぱり…。)
1. 憤りによる憤死
2. プレス機による圧死
3. 高所からの転落死
「それ、どのくらい自信を持って言ってることなのかな?」
「100…いや、80…じゃなくて、7…50%くらいかな?」
(……視線が冷ややかだ。)
△back
「アイコさんは、高い所から落ちて”頭部心臓部を打たれた”。松井君が言いたいのは、そういうことだよね。」
(現場を見た時、真っ先に過去の事件を思い出した。『スーパーダンガンロンパ2』の4回目の事件を。)
「そう。彼女のロボット部分はバラバラになっていた。まるで、高い所から落下したかのように。」
(……これ、大丈夫かな。あの時は、凶器が”大きな謎”で面白かったから良いけど…。もう視聴者は飽きてるんじゃない?)
(対角線上にいるモノクマを見たけれど、モノクマは相変わらず笑みを浮かべているだけだった。)
「高い所…ね。でも、アイコは『中庭に来い』っていう呼び出しのメモを待ってたよ。」
「事件現場を誤認させるために犯人が持たせたのかもしれんよ。」
「そうだね。アイコさんの懐に入れて転落させたり、捜査時間に偽装したりできたのかも…。」
「……。」
「……。」
「……ねぇ、お姉ちゃん。今、お姉ちゃんが言ったことが どういうことか、気付いてるよね?」
「え?」
「そうねぇ。アイコさんが高い所から落ちたのだとしたら…。」
「はい。落とされたとしたら、容疑者は絞られます。」
▼転落死の場合の容疑者は?
「ふざけているのかね?」
(ふざけてるわけじゃないけど、せっかくだから楽しまなきゃ!)
△back
「容疑者は、校舎の3階と4階にいた わたし達…だね。」
「小学校の3階4階にいたのは、天海・妹尾バラエティペアと白銀・哀染エンタメペア。」
(裁判場の視線が、一気に わたし達に集まった。)
(疑心暗鬼に陥った みんなの顔。隣の天海君が小さく息を呑む音が聞こえた。)
学級裁判 中断