Round. 5 教会とカネの音と私 非日常編

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Round. 5 教会とカネの音と私 非日常編

 

(モノクマのアナウンスが島中に反響した。それが漸く聞こえなくなった時、モノクマが現れた。)

 

「はいはい、いつも通り配りまーす。」

 

(事務的にモノクマファイルを配ったモノクマは、機械的でない笑い声を響かせてから消え去った。)

 

「どりあえず…ファイルを確認しておくか。」

 

(薄暗い教会内で、星君が渡されたファイルを起動した。みんな、それに倣ったように動き出した。)

 

(被害者は、”超高校級の修験者” 野伏 茸。死体発見現場は、冬ノ島の教会内。)

 

いつもより情報が少ない…。)

 

コトダマゲット!【モノクマファイル】

 

「…こんだけの情報で、どうすりゃいんだべ。」

 

「で、でも、教会内は情報のバーゲンセール状態です…よね。」

 

「うん。気になるもの…たくさんあるね。」

 

(ーーそうだ。野伏君はシャンデリアの下敷きになっていて、その周りはダンボールや植物等が散らばっている。)

 

「…これだけ証拠が残っているのです。前回と同じく、現場以外は単独で捜査するのも仕方ありません。」

 

「ああ。まず、現場は全員で調べてもいいだろう。」

 

「ボク…これから野伏先生に殺されるとばかり思ってたんですけど…。」

 

(全員が死体に目を向けた時、桐崎さんが呟いた。)

 

「…ああ。放送で言ってたべな。時間切れだっつって。」

 

「…全員、説得に失敗したということですね。」

 

「説得もクソもねぇべ。野伏さに言われて ここ来ただに、野伏さの奴うんともすんとも言わねがっただ。」

 

「俺の時も そうだったな。正面扉は固く閉ざされていた。」

 

「うん。ゴン太の時も…。」

 

「…みんな同じってことですね。返事がない屍のようでした。」

 

「……わたくしもです。最後の放送があり、彼に殺されることも危惧しました。けれど、死んでいたのは彼です。」

 

「この中の誰かが…野伏先生を殺しちゃったって…ことですか?もしかして…ボクらを守るために?」

 

(震える声で彼女は言ったけれど、誰も返答はできなかった。)

 

(この中の誰かが野伏君を殺したなんて…信じられない。でも、ゴン太たちは真実を見つけなきゃいけないんだ。)

 

(ーー昔、誰かに似たことを言われた気がする。)

 

(とにかく、現場を調べなきゃ。)

 

 死体を調べる

 教会内を調べる

全部見たよ

 

 

 

(教会内の真ん中の床に潰れたシャンデリア。そこから首が生えているかのように倒れている野伏君。)

 

(死体の付近を調べていた伊豆野さんと華椿さんが渋い顔をした。)

 

「ひでぇもんだな。頭は潰れてんだろなぁ。」

 

「惨状の割に血痕が少ないのが幸いでしょうか…。」

 

「やっぱり、このシャンデリアが落ちたことが死因かな。」

 

「モノクマファイルには書いてありませんでしたね。獄原さん、シャンデリアを持ち上げることはできますか?」

 

「う、うん。」

 

「や、やめてけろっ。とんでもねぇグロ映像になんべ。」

 

「はっ!申し訳ありません、伊豆野さん。うら若き乙女にグッチャグチャの頭を見せるのは酷でしたね。」

 

「そ、そっか。そうだよね。」

 

(ゴン太もシャンデリアを持ち上げた後に見るものを想像して怖くなってしまった。)

 

「…死体の状態から見るまでもありません。獄原さん、お戻しになって。」

 

(華椿さんが首を振ったのを見て、持ち上げかけたシャンデリアを元に戻した。)

 

「ファイルに書いてなかったとはいえ、頭を潰されているのです。シャンデリアが死因の可能性が高いでしょう。」

 

「あと、気になるのは…死体が濡れていることですね。」

 

「濡れて…?あ、本当だ。」

 

「ええ。乾き始めていますが…まるで頭から水を被ったような。」

 

「この寒さで よく凍らなかったべな。」

 

「うん。教会内は外と同じくらい寒いもんね。」

 

「野伏さん、何故わざわざ教会を立て篭もり場所に選んだのでしょうか。こんなに寒いのに。」

 

「一応、ストーブもあるみたいだけど…。」

 

(チラリとストーブの方を見たら、ストーブ周辺に小さな水溜まりが見えた。)

 

「ストーブ付けてたんなら、こんなに寒いわけねぇだよ。それより、肩に刺さってるモンは死因じゃねーべか?」

 

(伊豆野さんが野伏君の肩口に刺さった物を指差した。)

 

「これは…メスですね。確か本島の医務室にあった物です。」

 

「けど、肩を貫かれたくらいで人は死んじゃうのかな…?」

 

コトダマゲット!【死体の状態】

 

「死体周りに落ってる これも気になんな。」

 

「あ。こ、これ…春ノ島の花畑近くでも見たよ。」

 

「これは…トリカブトの花ですね。」

 

「トリカブトって、3回目の事件で…蔵田さがフグ毒と混ぜて使った毒だべ?」

 

「う、うん。そういえば、野伏君が春ノ島に咲いてたって話してたよ。」

 

「だば、死因が毒っち可能性もあんべな?」

 

「シャンデリアにメスにトリカブトの花…。複雑化しそうですね。」

 

コトダマゲット!【トリカブトの花】

 

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(教会内を見回してみる。ダンボールや積まれた本が乱雑に置いてあるのは、前と変わらない。)

 

(ゴン太は教会らしい椅子が倒れているのを見つめる星君と桐崎さんに近付いた。)

 

「何か見つかった?」

 

「ええ。妙なんですよ。」

 

「妙?」

 

「以前 来た時は、椅子だけは綺麗に並んでいたと思うんです。なのに、今は倒れたり列もバラバラで…。」

 

「シャンデリアが落ちたせいかもしれないね。」

 

「獄原、あんたは1番に ここに来たんだな?」

 

「うん。冬ノ島にいた華椿さん以外で、1番 早かったと思うよ。秋ノ島にいたから。」

 

「…そうか。俺は、ここから1番 遠い夏ノ島にいたから…少し来るのに時間が掛かっちまったな。」

 

「本島にいたボクと同時でしたよね。ゴン太先生が血相変えて教会に立ち入ろうとしてた時、ボク達が来ましたよね。」

 

「うん。教会に着く前に大きな音がしたから…。」

 

「大きな音?」

 

「たぶん…シャンデリアが落ちた音だと思うよ。」

 

「……そうですか。ゴン太先生が教会に着いた時、近くにいたのは華椿先生だけ…なんですよね?」

 

「う、うん…。教会の裏で倒れてたんだ。」

 

「……なるほど。」

 

(呟いて、桐崎さんが黙り込んだ。考え事をしているみたいなので、ゴン太は星君が眺めていた椅子に視線を移した。)

 

(その、不自然に傾いた椅子を。)

 

「この椅子、傾いてるね。」

 

「ああ。椅子の片脚に本が挟まっている。しかも、背面にゴムが取り付けられている。」

 

「……事件に関係があるのかな?」

 

「少なくとも…自然に椅子の足に本が挟まることはねーと思うぜ。」

 

コトダマゲット!【教会の椅子】

 

「獄原先生、これも見てください。星先生が発見したんですが…。」

 

(突然、黙りこんでいた桐崎さんが大声を上げた。その手に握られているのは、太いロープ。)

 

(そのロープを辿ると、シャンデリアに繋がっているらしかった。)

 

「…シャンデリアは天井から吊るされていたらしい。これだけデカいシャンデリアなのに、ロープでな。」

 

「ロープで?いくら太いロープでも、危ないんじゃ…。」

 

「設計ミスじゃなさそうなんですよ。本来は金属で天井とシャンデリアが繋がっていたはずなんです。」

 

「その金属部分は壊されている。…そして、このロープの断面。半分刃物で切れ目を入れたような跡があるんだ。」

 

「犯人がシャンデリアを凶器にするために工作したのかな?」

 

「…さあな。獄原、天井は どう見える?」

 

(星君に促されて、天井を仰ぎ見た。確かに、シャンデリアを繋げる金具の部分が全て壊されているのが見えた。)

 

「天井の接続部の金具も壊されてるよ。とても頑丈そうなのに…。それに、隣の梁に変な跡がある。」

 

「ああ。俺たちにも、そう見えた。」

 

(シャンデリアを繋ぐはずの金属は破壊されていて、隣の梁にヒモが擦れたような跡がある。)

 

「ロープの跡だ。シャンデリアを落とすために金属部分を壊しておき、犯行時にロープを切ったんだろう。」

 

「え?犯人は、あんなに高い所で作業したってこと?」

 

「ええ。ですから…これは綿密な計画殺人だったはずです。」

 

「シャンデリアにロープを繋げて梁に通して固定し、シャンデリアを繋げていた金属部を壊す。一晩 掛かるな。」

 

「ボクらは今、ロープを固定してた場所を探してるんです。倒れた椅子かなとも思ったんですが…。」

 

「教会内の椅子じゃ重量が足りねーようだ。」

 

「そっか…。」

 

(天井の梁から伸びたロープを想像しながら固定できそうな物を探す。けれど、縛っておける柱は教会内にない。)

 

「ダンボール…シャンデリアより軽そうだから無理ですね。全ての物とロープを繋げたってことはなさそうですし。」

 

「あ。窓の格子にもロープの跡があるよ。」

 

(教会内の縦長の窓。その鉄格子の高い所にロープが強く擦れた跡が見えた。)

 

(鉄格子の奥の窓は少し開いているようだった。)

 

「あ!本当だ。でも、あの鉄格子の部分には手が届きそうにないですよ。」

 

「うん。ゴン太でも届かないよ。」

 

「……窓が開いてるってことは、ロープは外に固定されていたのかもしれねぇな。」

 

「…というかロープの跡が残ってるとか見えるってのも、ご都合主義ですよね。よくある話ですけど。」

 

(窓の外を見渡す。と、地面に打たれた杭を2つ見つけた。その正面に大木があり、切れたロープが縛られている。)

 

「シャンデリアのロープは地面に打った杭を通して…あの木に固定されていたんじゃないかな。」

 

「…なるほどな。木の低い位置にロープが残ってる。」

 

「あの場所…華椿先生が倒れてた所の近くですね。ボク、ちょっと見てきます。」

 

(桐崎さんが教会から出て行って、すぐに窓から見える木の近くに現れた。)

 

「このロープ…太さといい間違いありません!シャンデリアのものと同じです。」

 

「刃物で切られたような切れ目があるのも一致しています。」

 

コトダマゲット!【シャンデリアのロープ】【教会裏の木】

 

「そういえば、桐崎さんは裏口を見つけたって言ってたよね。」

 

(窓から彼女に声を掛けると、桐崎さんは頷いて教会の裏側方面を指差した。)

 

(どうやら、正面玄関とは反対側の壁に扉があるらしい。でも、ダンボールが積まれていて教会内からは見えない。)

 

「こっちからは塞がれてるみてーだな。」

 

「はい。さっき渾身の力で押しましたが、ビクともしませんでした。やはり、この教会は密室だったんです。」

 

「…扉を引いてみたか?」

 

(星君が尋ねると、桐崎さんは驚いた顔をして、)

 

「え。でも、海外の扉って、だいたい内開きでーー…」

 

(言いながら、ゴン太たちの視界から消えた。しばらくして裏口があるであろう方の壁からガチャガチャ音がした。)

 

「あ、開きました!?あれ?開いてたんですか、この扉。」

 

(ダンボールの山の奥から冷たい空気と鮮明な彼女の声が届いた。)

 

「どうやら…鍵も掛かっちゃいなかったようだな。」

 

「海外の建物で外開きドアって珍しくないです?ほら、ゾンビから逃げてバリケード作るってあるじゃないですか。」

 

「こんな外開きドアだと、ゾンビ来たら大変ですよ!?ボクらの国も外開きドア主流だから、いつも不安です。」

 

「ゾンビの襲撃が日常茶飯事ってことはねーだろうから安心しろ。」

 

「………はっ!!そ、そういえば…!」

 

「な、何!?何かあったの?」

 

「……ゾンビって腐ってるのに、歩いたり噛んだりする筋肉は衰えないの、何ででしょうね?」

 

(そんな発言をした桐崎さんは裏口を閉めて、また正面扉から教会内に戻ってきた。)

 

「なるほど…現場は密室ではなかったということですね。」

 

コトダマゲット!【教会の裏口】

 

「さすが星先生。ホームズもビックリの洞察力です。星先生にはコナンやアガサ派より横溝派でいて欲しいですが。」

 

「やれやれ。…引いてみろと言っただけなんだがな。」

 

「ゴン太先生も。持ち前の推理力を頼らせていただきますね。」

 

(桐崎さんがゴン太に笑いかけてくれた。けれど、その笑顔は不安気だった。)

 

「ゴン太は…推理力なんてないよ…。」

 

「そうですか?探偵といえば養蜂ですから、ゴン太先生は向いてると思いますよ。それに、今までだってーー…」

 

「……今までゴン太が学級裁判を頑張れたのは、みんながいたからだよ。」

 

「それに…ゴン太なんかより、探偵が相応しい人がいるから。」

 

「……。」

 

「?そうなんですか?」

 

(怪訝そうな顔をする桐崎さんに言いながら、ゴン太は”彼”のことを思い出していた。)

 

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「現場の状況は、大体 分かったな。」

 

「え、ええ。シャンデリアの下敷きでメス刺さってて、トリカブトが近くに敷き詰められていて…オンパレードです。」

 

「うん。どれが死因かも考えなくちゃ…。」

 

「こん中、色んなモンがあっぺから、見つかってねぇ凶器なんかもあんでねぇか?」

 

「あ、じゃあ…ボク、もう少し ここで探しますよ。」

 

「では、わたくしも残りましょう。現場は2人で調べた方が良いでしょうから。それに…気になることもあります。」

 

「えっ。」

 

「…何か?」

 

「あ…いえ、何でも。」

 

「…2人 残るなら、マイクも探しておいてくれ。」

 

「マイク?」

 

「野伏がモノクマから渡されて、放送に使っていたマイクだよ。」

 

「そういやぁ、見てねぇだな。」

 

「犯人が持ち去ったのでしょうか。」

 

(マイクの所在。毎回、野伏君はゴン太たちに合図を送っていた。あの最後の放送の時もーー…)

 

(そこまで考えた時、星君が教会を出ていくのが見えた。)

 

「俺は、今から各島を廻ってくる。」

 

「え?」

 

「各地で爆発音がしてただろ。」

 

「んだべなぁ。いっちゃん最初の夏ノ島で爆発音がして、耳が壊れるかと思っただよ。」

 

「え、ええ。ボクも冬ノ島以外の各島で爆音がして…その度に爆発物確認のために走り回りました。」

 

「ええ、わたくしもです。しかし、あれはレコーダーではありませんでしたか?」

 

「ああ。だから、そのレコーダーについて調べておく。特に、俺が最後にいた夏ノ島…よく調べておきてぇ。」

 

「星先生は、最終地点ここから1番 遠い夏ノ島にいたんですよね。ボクは本島でした。」

 

「ゴン太は秋ノ島にいたから、ここには すぐ来られたよ。」

 

「ええ。獄原さんが1番 早かったですね。伊豆野さんは春ノ島にいらしたのでしょう?」

 

「んだな……。」

 

「伊豆野さん?」

 

「何でもね。オラは本島の倉庫ば行ってみっぺよ。レコーダーあったんは倉庫だかんな。」

 

「じゃあ、ゴン太も他の島に変わった所がないか、調べてみるよ。」

 

「ああ。あんたは冬ノ島全体と秋ノ島を頼む。俺は夏ノ島と春ノ島を見てくる。」

 

(星君と伊豆野さんが足早に教会から出て行った。)

 

(ゴン太も出ていこうとしたところで、思い当たった。)

 

(野伏君の、最後の放送の時…時計みたいな音が聞こえた。ーーけど、ここには時計はない。)

 

(ゴン太は教会内を見回して、いくつかのダンボールを開けて中を覗き見た。)

 

(乱雑に置かれたストーブの傍のダンボール内に、”彼”はいた。)

 

「あ…。」

 

(箱の中に、小さな黒い虫さん。キリギリスの仲間のカネタタキさんがいる。寒さで弱ってるみたいだ。)

 

(ゴン太は彼を掌に包んで温めた。早く暖かい所に連れていってあげないと。)

 

(もう1度、箱の中を覗き見た。同じ箱にマイクらしきものが入っている。そして、レコーダーも。)

 

「桐崎さん、華椿さん!ここにマイクとレコーダーがあるよ!」

 

「え?どうして…そんな所に?」

 

「ダンボールの中に…よく気がつきましたね!?」

 

「カネタタキさんが教えてくれたんだ。けど…」

 

(カネタタキさんは12月くらいでも鳴いてくれる虫さんだけど…暖かい所に住んでいるはずだ。)

 

(少なくても…温度が低い時に鳴くことはないはずなのに。)

 

コトダマゲット!【マイク】【教会のレコーダー】

 

(2人に冬ノ島のことは任せて、ゴン太は秋ノ島へ走った。早くしないと、カネタタキさんが死んでしまう。)

 

(一昨日、カネタタキさんの声を聞いた。あの時、カネタタキさんがいたのはーー…)

 

 

【秋ノ島 図書館】

 

(カネタタキさんを連れて、図書館に入る。中は暖かい。)

 

(カネタタキさんが小さい声で鳴くのを聞いて、ほっとした。安全な所に下ろして、図書館内の研究室に入った。)

 

(一昨日、この隠し部屋の中にカネタタキさんがいた。ドアが開きっぱなしだったからだろう。)

 

(室内には変わった様子がない。机の上には相変わらず乱雑に薬や小瓶が置かれていた。)

 

(そういえば、ここで拾ったブラックライト…桐崎さんに返すのを忘れてた。後で返さなきゃ。)

 

(ブラックライトが置かれていた棚ーー今は何もない棚を見て、拾ったまま部屋に置きっぱなしの物を思い出した。)

 

(それから、もう1度 奥にある本に目を向けた。)

 

死者の書。これを見て、イーストック君は蘇りの薬の実験を始めた。そして…虎林さんを殺したクロになった。)

 

「……。」

 

 

「前回、獄原君を殴ったのは私だ。…そう言ったのです。」

 

 

(イーストック君が実験でゴン太を殴ったと聞いてたけど、野伏君が言ったことは…どういうことだったんだろう。)

 

コトダマゲット!【死者の書】【前回の裁判】

 

 

【冬ノ島】

 

(カネタタキさんを送った後、また冬ノ島に戻ってきた。)

 

(冬ノ島内も全体的に調べなきゃ。)

 

(そう思って探索を開始したものの、手がかりと言えるものは教会以外にはなさそうだった。)

 

(他の島にあった爆発音が流れるレコーダーも、冬ノ島だけにはなかった。)

 

(大方 調べ終えて、倉庫も自分で見ておこうと思い、本島の寄宿舎を目指して走った。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 倉庫】

 

「獄原さ。」

 

(倉庫に入ると、伊豆野さんが迎えてくれた。)

 

「伊豆野さん、何か見つかった?」

 

「んにゃ、これといって。けど、なくなったモンは色々ありそうだべ。大量にあったレコーダーもなくなってるだ。」

 

「レコーダー…。2回目の事件前には野伏君が電池を抜いてたよね。」

 

「んだなぁ。だから、プラネタリウム放送は録音じゃねってなっただ。録音かどうかは一耳瞭然だべが。」

 

「そうだったね。ここにあったレコーダー全てが各島の爆発音に使われていたのかな。」

 

「そっだろな。みんな爆発音を調べてレコーダーを見っけたら、電源を切っただろっし。」

 

「そうだね。ゴン太も、見つけたレコーダーの電源を切ったよ。」

 

「あのレコーダーを仕掛けたんも、野伏さだったべか?」

 

「多分…。野伏君が電池を持っていたわけだし…野伏君の合図の放送の時は、爆発音がしなかったよね。」

 

「なるほどな。爆発音で放送が遮られねぇように、計算されてたんかもしんね。」

 

(伊豆野さんは思い出すように右手を口元に当てた後、躊躇いがちな声を出した。)

 

「……なあ、野伏さは…いつ死んだんだろな?」

 

「え?」

 

「野伏さの最後の放送…その時、獄原さは秋ノ島。オラは春、星さは夏、桐崎さは本島にいただな。」

 

「うん。」

 

「……。」

 

「伊豆野さん?」

 

「いや…何でもねぇ。」

 

(ひと通り、2人で倉庫を見て外に出ようとしたところで、星君が廊下を駆けていくのが見えた。)

 

「星君?」

 

(ゴン太が声を掛けると、星君は 振り向いた。)

 

「ゴン太、伊豆野。春ノ島と夏ノ島は調べ終わった。爆発音のレコーダーが山の頂上まで仕掛けられてた。」

 

「山の頂上って…この短時間で夏ノ島の山頂まで登ったべか?そこ知れねぇ体力だべな…。」

 

「死体発見前も登ったがな。山頂の小屋でレコーダーを見つけた直後、野伏の最後の放送を聞いたんだ。」

 

「山頂にいただに、オラより冬ノ島に着くん早かったんだなぁ…。」

 

「他に変わったことはあった?」

 

「山頂近くの遊園地も見たが、髪の毛がないマネキンがあった。」

 

「髪の毛が?」

 

「確かに、あっこにゴロゴロしてたマネキンはウィッグ被ってただな。だども、そんなモンが事件に関係するだか?」

 

「さあな。それより、俺は野伏の個室に向かってたんだ。」

 

「え?野伏君の?」

 

「高橋さが死んだ時、モノクマは個室なんざ開けてくんねかったべよ。」

 

「ああ。だが…3回目の事件前に、死んだ奴らの個室が開放されたろ。もしかしたら…と思ってな。」

 

「そっか…!行こう!」

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 野伏の個室】

 

(星君、伊豆野さんと野伏君の部屋の前まで来た。)

 

(ゴン太が扉のノブを回すと、抵抗なく扉が開いた。)

 

「開いた…。」

 

「調べんべ!」

 

(ゴン太たちは手分けして、室内を調べ始めた。暫くして、)

 

「これ、見てくろ!」

 

(クローゼットを調べていた伊豆野さんが声を上げた。その手に握られているのはーー…)

 

「パツキンのウィッグだべ。」

 

「……!まさか、遊園地から持ってきたモンか?」

 

「さっき星君が言ってた…マネキンのウィッグ?」

 

「なじょして こったらモン…。オシャレのためってワケでもねーべ?野伏さ、いつも傘被ってたからな。」

 

「……ああ。恐らく、前回の事件に関係があるんだろうな。」

 

(星君が冷静な声で言う。ゴン太は、その短髪のウィッグを見つめた。前回のクロの髪に似た、そのウィッグを。)

 

コトダマゲット!【マネキンのウィッグ】

 

「俺の方も1つ見つけた。」

 

(そう言って星君は机の引き出しから紙を持ち上げて見せた。)

 

「何だべ?それ?」

 

「恐らく、イーストックの遺書だ。字が細々しすぎて読みにくいんだがな。」

 

「イーストック君の?」

 

「な、何で、イーストックさの遺書が野伏さの個室に?」

 

「前回の事件で、野伏がモノクマよりも早く回収してたってことだろう。」

 

「な、何て書いてあったの?」

 

「言った通り、所々 俺には読めねー。後で桐崎に読んでもらうのがいいと思うぜ。」

 

(星君から遺書を受け取り開いてみた。けれど、彼が言う通り、小さい字や難しい漢字が多くて読みにくい。)

 

(ここに来て漢字も勉強したけど…ゴン太には難しすぎるみたいだ。)

 

「オラもイーストックさの細い字は読めねぇ。あん人、新聞部のくせに読ませる気ねぇ書き方してんだよ。」

 

「う、うん。」

 

「遺書で読み取れるのは…やはり前回、虎林を殺害したのはイーストックだったということ。そしてーー…」

 

(言いながら星君はベッドに近付き、サイドボードに取り付けられた箱を開けた。中は空だった。)

 

(ゴン太の部屋では何をしても開けられなかった箱。ここでは、簡単に開いた。)

 

「この箱に手掛かりがありそうだ。イーストックの個室に行くぞ。」

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 イーストックの個室】

 

「イーストック君の部屋の箱は…開く。」

 

(3人で来たイーストック君の部屋。彼の部屋の箱は簡単に開けることができた。)

 

「……やはりな。」

 

「え?」

 

「…全員、箱は開かないと言っていたはずだが。」

 

「…嘘だったっちことけ?」

 

「いや、死んだ人間の箱が開くということかもしれねーが…。」

 

「でも、前に確認した時…三途河さんの箱は開かなかったよね。」

 

「それに、最初の事件前に見つかった死体2人分の箱も開いてなかったべ。」

 

「ああ…。その時点で既に三途河は死んでいたがな。あの後…モノクマが『特別に』と言って開けていたな。」

 

(そうだ。)

 

(『平』と書かれた貝殻が入っていた。2枚貝の半分が。)

 

「とにかく、これまでに死んだ奴らの箱、俺たちの箱も確認しておくぞ。」

 

(そして、各部屋の箱を確認していった。)

 

(以前 見た通り、高橋君、河合さん、平君の箱は開く。中は空だ。三途河さんの箱には変わらず貝殻があった。)

 

(死体で見つかった2人…狩野さんと野伏君に殺された人の部屋の箱は開かないまま。)

 

(高橋君と野伏君に殺された焼死体の人の名前が箱にないのも、変わらない。そしてーー…)

 

(ゴン太と星君と伊豆野さん。今ここにいる3人の箱も開かないことを それぞれ確認した。)

 

(それから、3回目の事件の被害者だった火野君、前回の被害者だった虎林さんの箱は開かない。)

 

コトダマゲット!【各個室の箱】

 

「最後は蔵田の個室だな。」

 

(蔵田さん。3回目の事件のクロだった、彼女。美味しい ご飯を、たくさん作ってくれた。)

 

(彼女のことを思い返しながら、ドアに手を掛けた。その時だった。)

 

『時間になりました。学級裁判を始めます!オマエラ、至急 本島北エリアの校舎まで集まってください。』

 

『至急だよ。10分以内に校舎へ来ないと、ただじゃおかないからね!』

 

「時間切れ…か。」

 

「とにかく急ぐべ。」

 

 

【本島北エリア 校舎】

 

(校舎に辿り着いた。まだ華椿さんと桐崎さんは来ていないようだ。)

 

「あの箱…死んだ奴らの中でも、クロだった奴の箱が開くというわけじゃなさそうだな。」

 

「高橋さと野伏さは事件の被害者だべかんなぁ。」

 

「俺たち3人の箱は開かなかった。…何か関係があるのか…?」

 

「生きてる奴のは、全部 開かねぇとかか?」

 

「う、うん。華椿さんと桐崎さんも、箱は開かないって言ってたよね。」

 

「……ああ。」

 

「わっがんねーだな。そもそも、あん箱の何が重要なんだべ?」

 

「遺書に箱についての記述があるみてーなんだ。」

 

(そう言って、また星君はイーストック君の遺書を眺めた。そんな時、)

 

「お待たせしました!」

 

「申し訳ありません。わたくし共の全力疾走はナポレオンに山を越えさせたロバの歩みのようで…」

 

「鈍足を良いように言うでね。」

 

(息を切らせた2人が合流した。)

 

(ゴン太たちは いつも通り校舎の玄関近くにある赤い扉からエレベーターホールに向かった。)

 

(その間に、星君が桐崎さんに向けて手を掲げた。)

 

「桐崎、裁判場に向かいながらで悪いが、この文を読んでくれねーか?」

 

「……?これ、何ですか?」

 

「イーストックの遺書らしい。」

 

「ええ!?わ、分かりました。」

 

(それから、ホールでエレベーターを待つ間、エレベーターで裁判場に向かう間、彼女は遺書を読み上げてくれた。)

 

 これは、裁判が起きた時を鑑み、ここに記すものなり。事件の真実は、小生が殺人犯である。今宵、死者蘇生の薬品作りに没頭し、遂に完成した興奮に囚われ、些細を記憶できてはいない。覚えているのは、虎林殿が小生に詰め寄り押しつ押されつする内、頭に衝撃走りけり。気が付けば、図書館の外で虎林殿は虫の息。小生は今こそ薬品の効能を試す時と、彼女に薬品を飲ませた。
ーーが、その瞬間、彼女は苦しみ…生き絶えた。我が薬品は蘇生の薬ではなく、紛うことなき毒であった。己が力で死者の蘇生が叶うなどという我が傲慢が彼女を殺しめた。否、彼女を実験体にせし我が欲が彼女を殺した。それをここに告白し、我が命の最期の文としよう。
 小生はパンドラの箱を開けてしまった。否、箱は開いていたのだ。ちなみに、パンドラの箱、知恵の実を食べてしまったイヴ…神話において女性を災悪の元にする記述はよくあるが、これは男性が女性を扱うに便利だったからというのが通説である。原始期の女性の強さが恐れられていた証拠であろう。
 話は逸れたが、我が一族は古より人々に偽の情報を掴ませ混乱に貶めし忌むべき存在であったが、小生にとっては唯一無二の家族であったのだ。我が一族に魔の手が伸びぬことを切に願う。

 

「要約すると…死者の蘇り薬を作っていたら虎林が来て、揉み合いになってる内、気絶した。」

 

「は、はい。前回の裁判で推理した通りですね。多分、『押しつ押されつ』の時にゴルフクラブを踏んだのかと…。」

 

「…裁判での推理と食い違う箇所もあると思うがな。」

 

「死にかけていた虎林さんに薬品を飲ませ殺してしまった。その罪を認めて自殺…まで正しかったはずです。」

 

「でも…イーストック君は、やっぱり虎林さんを助けようとしたんだよ。実験とかじゃなくて…。」

 

「だども、実験体にしたとも書いてあんべ?あと、家族についても書いてあんな。忌むべきとか…。」

 

「……クロ候補生と関係があるかもしれねーな。」

 

「……えーと。途中、謎の神話ウンチクも挟まれてましたね。」

 

「パンドラの箱…あ、だから星君は箱を調べようって言ったんだね。」

 

「ああ。そっちが関係があるかは分からねーがな。」

 

コトダマゲット!【イーストックの遺書】

 

(そんな会話をしている間に、エレベーターが止まった。足取りは重いものの、ゴン太たちは裁判場へ足を向けた。)

 

(野伏君はゴン太たちを脅して教会に立て篭もった。『自分を殺さないと全員殺す』と言って。)

 

(彼の不可解な行動。)

 

(真実を見つけないと、みんなのために。)

 

(ゴン太は、もう自分で考えられる。みんなと一緒に真実を見つけてみせる。)

 

(生き残るために。”みんな”に報いるために。)

 

(この…命懸けの学級裁判で。)

 

 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル】
被害者は、”超高校級の修験者” 野伏 茸。死体発見現場は、冬ノ島の教会内。
【死体の状態】
メスが肩に刺さった状態でシャンデリアの下敷きになっていた。頭はシャンデリアに潰されていると思われる。全身濡れていて冷たくなっている。
【トリカブトの花】
死体の周りに落ちていた。春ノ島の花畑近くに咲いていたもの。
【マイク】
全島に放送を流すためにモノクマが野伏に貸したマイク。ダンボールの中から発見された。
【教会のレコーダー】
ダンボールの中から発見。カネタタキが同じダンボールから発見された。倉庫にあったもの。
【シャンデリアのロープ】
高い窓枠に固定した跡がある。刃物で少し切られていたようだ。
【教会の椅子】
教会の椅子は事件後、整列が乱れていた。1つは本が挟まって傾いている。さらに、背面にゴムが取り付けられていた。
【教会の裏口】
教会内からはダンボールに埋もれて見えないが、教会正面扉とは反対側に外開きの裏口がある。鍵は掛かっていなかった。
【教会裏の木】
切れたロープが低い位置に残っていた。ロープは教会内のシャンデリアに繋がれて固定されていたと考えられる。死体発見前、華椿が木の前で倒れていた。
【死者の書】
前回の事件前にモノクマが秋ノ島の研究室に用意していた怪しい本。蘇りの薬についての記述がある。
【前回の裁判】
死者の書が見つかってから、イーストックは蘇りの薬を研究し始めた。その結果、事件が起きた。前回の裁判では、イーストックが蘇りの薬の失敗作を飲ませたことで虎林は死に、イーストックがクロとなった。殺意はなかったと思われる。
【イーストックの遺書】
野伏の部屋から発見された。前回の事件でイーストックが死にかけた虎林に”蘇りの薬”を飲ませて殺したと告白している。
【マネキンのウィッグ】
野伏の部屋から発見された金短髪のウィッグ。夏ノ島の遊園地にあったマネキンのものと思われる。
【各個室の箱】
箱が開くのを確認できたのは、高橋、河合、平、イーストック、野伏。最初に死体で発見された2人、三途河、火野、虎林、獄原、星、伊豆野の箱は開かない状態だったが、三途河の箱はモノクマによって開かれ『平』と書かれた2枚貝の半分が見つかった。高橋と焼死体の人物の箱には、名前と才能の記載がない。
 
学級裁判編へ続く
 

コメント

  1. 年度末のお忙しい中の更新本当にありがとうございます。
    続きが気になりすぎてゴクハラロンパ1話から読み直してたところでした…!

    死因になりそうなものだらけな上に前回の裁判の内容も絡んでて学級裁判めちゃくちゃ難しそうですね(TT)
    全員バラバラに動いてたからアリバイもへったくれもなさそうだし、ほんとゴン太達どうするつもりなんだろう…虫さんの囁きがなくても論破できるようになったゴン太ならきっと大丈夫だから頑張ってくれーー!

    あと読み返してて気がついたんですけど、野伏くん初期から不審な行動とりまくってて「もうお前が黒幕だろ…あ違うすでに被害者になってた意味わからん」となりました笑
    前回の事件の最後、モノクマがゴン太を殴ったクロについては言及してないのも全然気がついてなくてしてやられた感満載です、、

    モノクマはやたらいつもと違うを強調してますが、物語が大きく動きがちな5章の学級裁判ドキドキです。
    次回も楽しみにしています♪

    • 1話から読み直しを…!?ありがとうございます!5章で気合いを入れた割に書いてる本人が時々ポカーンとしてて進まなかったのですが、ご感想を励みに最後まで駆け抜けられそうです。本当にいつもありがとうございます。最後までお楽しみいただけるよう頑張ります!

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