【見せる】と【見させる】の違いとは
日本語には、「見せる」と「見させる」という似た表現があります。【見せる】【見させる】を区別して使っている日本人はそこまでいないかもしれません。しかし、これらには微妙な意味の違いが存在し、正しい使い分けが求められる場面もあるかもしれません。
本記事では、「見せる」と「見させる」の違いを徹底解説し、ビジネスシーンでも使える正しい表現方法を紹介します。「見せる」「見させる」の他「見せられる」「見させられる」についてもわかりやすく解説。明日外国人に聞かれてもアドバイスできますね!
【見せる】の意味と例文
「見せる」は、相手に何かを見させる行為を示しますが、強制的ではありません。この動詞は、自分の意思で相手が何かを見ることを促すときに使います。
下二段活用動詞/2グループ(~ないの形にしたときエ段で終わる)
①見るように促す: 相手が自発的に見る行為を導く。
②表現する: 内面的な感情や態度を外に表す。
③理解させる: 相手に何かを実感させるために見せる。
例文:①見るように促す(強制的ではない)
「子どもに英語ビデオを見せる。」
「生徒にニュースを見せて、考えさせる。」
「病気の彼女に月を見せる。」
「え、何それ、見せて。」
例文:②表現する
「時間を気にする様子を見せる。」
例文:③受けさせる/分からせる/理解させる
「格の違いを見せる。」
【見させる】の意味と例文
「見させる」は、「見る」の使役形であり、相手に強制的に何かを見させる行為を示します。こちらは、相手の意思に関わらず、何かを見させる場合に使用されます。
五段活用動詞(~ないの形にしたときア段で終わる)【見る】の使役形
①目で認識させる(強制的)
②判断させる
③調べさせる
例文:①目で認識させる(強制的)
「嫌がる子どもに教育テレビを見させる。」
例文:②判断させる
「学生同士でレポートを見させる。」
例文:③調べさせる
「研究者に月の結晶を見させる。」
【見せる】と【見させる】の違いは強制力
【見せる】と【見させる】の違いは、その強制力にあります。
「子どもに映像を見させる。」
「子どもに映像を見せる。」では、子どもは嫌がっていません。主体的に子どもは映像を見ていることになります。
「子どもに映像を見させる。」では、子どもはあまり乗り気ではないかもしれません。親が無理矢理させている意味が強くなります。
許可・容認の【見させる】【見せる】の場合
ここまでで「バッチリ分かった!もう十分!」な方は、ここは読み飛ばして下さい。少しこんがらがることを言います。
これは、強制的ではないですよね?このような場合、使役形は「許可や容認」の働きを持ちます。使役形は強制だけでなく、以下のように許可や容認の意味を付けることができます。
「今日休ませていただきたいのですが…。」
「すみません、ちょっと本を取らせてもらってもいいですか?」
「娘をアメリカ人と結婚させる。」
「子どもを大学に入らせる。」
【見せる】【見させる】を英語訳は?
英語訳するとより分かりやすいかもしれません。英語の使役形には【let】や【make】を使いますね。
show
let A see / let A look at /let A watch
(Aに見せる)
make A look at /make A watch/force to look at /force to watch
(無理に見させる)
ただし、「見させる」の認識によっては、英語訳が「let A see」の形になっていることがあります。
「I let him watch an English program. 英語の番組見せてるの。」
泣くほど嫌な太郎くんですから、お母さんは【見させる】が正しいはずです。が、「見せる」になっています。
編集者は英語のスペシャリストで、日本語の「見せる」と「見させる」の違いについては言及しなかったからかもしれないし、母親は強制でないと思っているのかもしれません。または、単に意味の違いを知らなかったのかもしれませんね。ちなみに、太郎くんからすると、「英語番組を見させられている」状態です。
【見せる】【見させる】と【見せられる】【見させられる】の違い
「見せられる」「見させられる」という言葉もよく聞きますね。どのような意味があると思いますか?
【見させられる】の意味と例文
【見させられる】=見させる(強制)+られる(受身)
つまり、「ムリヤリ誰かによって見ることを強要される」ということ。受身形を取ることで、「より強制された」という印象が強い言葉です。
「昨日ママに英語のDVD見させられたんだ。」
「あの人と付き合うとホラー映画ばっかり見させられるよ。」
「彼の嫌なところばっかり見させられて、ウンザリ。」
【見せられる】と【見させられる】
【見せる】の受身形→【見せられる】
【見る】の使役形→【見させる】の受身形→【見させられる】
それぞれ、受身形ですが、【見させられる】は使役形+受身形です。
「見させられる」は、強制されてウンザリした気持ちが強く、「見せられる」は、そこまで強制されたわけではありません。
「見さされる」は間違い!その理由は?
日本語の使役受身形を学んでいると、「見さされる」という表現を聞いたことがあるかもしれません。しかし、この表現は文法的に間違っています。では、なぜ「見さされる」が間違いであるのかを詳しく解説します。
使役受身形の基本ルール
まず、基本的な日本語の文法ルールとして、「見させる」は「見る」の使役形で、「~させる」という形になります。そして、その使役形を受身形にすると「見させられる」になります。
書きます→書かせます→書かせられます/書かされます
撮ります→撮らせます→撮らせられます/撮らされます
上一段/下一段活用動詞(2グループ):
見ます→見させます→見させられます
覚えます→覚えさせます→覚えさせられます
カ行/サ行変格活用動詞(3グループ):
します→させます→させられます
きます→こさせます→こさせられます
なぜ「見さされる」の間違いが多い?
「見さされる」の誤用は、五段活用動詞(1グループ)の動詞の使役受身形が変化することに起因します。
しかし、この使役受身形の「せら」を「さ」と言ってもいいというルールがあります。
行かせられます→行かされます
急がせられます→急がされます
買わせられます→買わされます
払わせられます→払わされます
撮らせられます→撮らされます
※「話します」のような「ます」の前が「し」の時は変えられない
これと同じように「見ます」→「見させます」→「見させられます」→「見さされます」にすると間違い。
なぜなら「見ます」は上一段活用動詞(2グループ)の動詞で、活用形が異なるからです。「見ます」の使役受身形は、「見させられます」が正解です。
「見せてください」「見させてください」は正しいビジネス敬語?
「見せてください」「見させてください」は、ビジネスやフォーマルシーンで使える正しい日本語でしょうか?
文法的に、間違いはありません。しかし、捉え方によっては誤解を招くので、ビジネスシーンや目上の人に使わないのが無難。ビジネスやフォーマルな場面では、「見せてください」や「見させてください」は適切でない場合があります。
理由は、①イヤミに感じる人がいる②フランクすぎると感じる人がいるため。さらに、「見させてください」だと、見たくもないのに見ようとしている感じがするからです。特に、敬意を欠く表現と受け取られることもあるため、慎重に使用する必要があります。
謙譲語を使用: 「拝見させていただけますでしょうか?」
尊敬語を使用: 「お見せいただけますでしょうか?」
これらの表現は、相手に対する敬意をしっかりと示すため、ビジネスシーンにおいても安心して使用できます。「拝見させてください」「拝見します」などの謙譲語を使うか、相手を主語にして「お見せください」などの尊敬語を使うのが良いでしょう。
まとめ
- 【見せる】は、強制的でない。
英語では、show/let A see(look at/ watch)
【見せられる】は【見せる】の受身形
- 【見させる】は、強制的な意味を持つ場合がある。
英語では、make A look at(watch)/force to look at(watch)
【見させられる】は【見させる】の受身形
- 「見せてください」「見させてください」はビジネスNG
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