第☆章 少&よ、щ意を抱け 非日常編
 「アーハッハッハッ!順調に死体が出てるね!結構結構!」
「アーハッハッハッ!順調に死体が出てるね!結構結構!」
 (死体発見アナウンスにより全員が集まった後、モノクマが現れて高笑いをする。そんな中、みんな彼女の死体を緊張した面持ちで眺めていた。)
(死体発見アナウンスにより全員が集まった後、モノクマが現れて高笑いをする。そんな中、みんな彼女の死体を緊張した面持ちで眺めていた。)
 「クソッ…祝里…!」
「クソッ…祝里…!」
 「祝里先パイ…。」
「祝里先パイ…。」
 (初めて間近で見る、生身の死体。人間の死の匂い。前回以上の絶望感なのだろう。)
(初めて間近で見る、生身の死体。人間の死の匂い。前回以上の絶望感なのだろう。)
 「……?」
「……?」
 (みんなの暗い表情を眺めながら、わたしは自分自身への違和感を募らせていた。)
(みんなの暗い表情を眺めながら、わたしは自分自身への違和感を募らせていた。)
 (コロシアイが始まってテンションが上がるはずなのに、前回ほどの感動がなかったから。)
(コロシアイが始まってテンションが上がるはずなのに、前回ほどの感動がなかったから。)
 「はいはい、それでは、いつもの配りますよっと!」
「はいはい、それでは、いつもの配りますよっと!」
 (モノクマがモノクマファイルを配り始める。わたしは、すぐに受け取ったファイルを確認した。)
(モノクマがモノクマファイルを配り始める。わたしは、すぐに受け取ったファイルを確認した。)
 (被害者は”超高校級の呪術師” 祝里 栞。死体発見現場は北エリアの図書館1階。死亡推定時刻は、午前2時〜2時半頃。)
(被害者は”超高校級の呪術師” 祝里 栞。死体発見現場は北エリアの図書館1階。死亡推定時刻は、午前2時〜2時半頃。)
 (胸に鎌が刺さっている。その他の外傷は見られない。…か。死因は明確に記載されていないね。)
(胸に鎌が刺さっている。その他の外傷は見られない。…か。死因は明確に記載されていないね。)
コトダマゲット!【モノクマファイル】
 「第一発見者は…白銀さんと、ぽぴぃ君、木野さんっすね。」
「第一発見者は…白銀さんと、ぽぴぃ君、木野さんっすね。」
 「うん。ドアガードでドアが途中までしか開かなかったから、こう…覗き見たら、アナウンスが鳴ったんだ。」
「うん。ドアガードでドアが途中までしか開かなかったから、こう…覗き見たら、アナウンスが鳴ったんだ。」
 「自分とローズ先パイは近くにいたので、発見アナウンスの後、すぐ図書館前まで来ました!」
「自分とローズ先パイは近くにいたので、発見アナウンスの後、すぐ図書館前まで来ました!」
 「マエタニがドア壊して、中に入りマシタ。」
「マエタニがドア壊して、中に入りマシタ。」
 「そうっすか。ぽぴぃ君、詳しく聞かせてくれないっすか。」
「そうっすか。ぽぴぃ君、詳しく聞かせてくれないっすか。」
 「う、うん。」
「う、うん。」
 (天海君と ぽぴぃ君が入り口の方へ歩き出したのを合図に、みんなも散り散りに動き出した。)
(天海君と ぽぴぃ君が入り口の方へ歩き出したのを合図に、みんなも散り散りに動き出した。)
 「つむぎ、行こうか。」
「つむぎ、行こうか。」
 (当然のように、哀染君が笑いかけてきた。)
(当然のように、哀染君が笑いかけてきた。)
 「うん、そうだね。」
「うん、そうだね。」
 (死体は血だまりに うつ伏せで倒れている。死体に近付いて、覗き込むと胸近くに鎌が深く刺さっていた。)
(死体は血だまりに うつ伏せで倒れている。死体に近付いて、覗き込むと胸近くに鎌が深く刺さっていた。)
 (鎌に覆いかぶさるような死体の周囲は血に染まり、被害者の手や着物も血で汚れていた。)
(鎌に覆いかぶさるような死体の周囲は血に染まり、被害者の手や着物も血で汚れていた。)
 「栞の死体…階段の方に向かっているみたいに見えるね。」
「栞の死体…階段の方に向かっているみたいに見えるね。」
 「……。」
「……。」
 (死体は2階に続く階段に向かい倒れた状態。図書館中央から階段までの間には、こすれた血の跡が残っている。)
(死体は2階に続く階段に向かい倒れた状態。図書館中央から階段までの間には、こすれた血の跡が残っている。)
 「…これ、自分で這いずった跡…だね。」
「…これ、自分で這いずった跡…だね。」
 「犯人が引きずったんじゃなくて?」
「犯人が引きずったんじゃなくて?」
 「うん…。他の人が引きずるなら、腕や足を支えて引きずるよね?でも、この血の付き方は…手足を それぞれ付いた後、こすれたようになってる。」
「うん…。他の人が引きずるなら、腕や足を支えて引きずるよね?でも、この血の付き方は…手足を それぞれ付いた後、こすれたようになってる。」
 「これは、被害者が四つん這いで体を引きずりながら動いた痕跡…。でも、そうだとしたら、余計おかしいよね。」
「これは、被害者が四つん這いで体を引きずりながら動いた痕跡…。でも、そうだとしたら、余計おかしいよね。」
 「え?」
「え?」
 「鎌が胸に刺さっている状態で、うつ伏せになるのは不自然だよ。即死ならともかく、この這いずり跡からして、祝里さんは即死じゃなかったはず。」
「鎌が胸に刺さっている状態で、うつ伏せになるのは不自然だよ。即死ならともかく、この這いずり跡からして、祝里さんは即死じゃなかったはず。」
 「犯人から逃げようとしていたんじゃないのかな。」
「犯人から逃げようとしていたんじゃないのかな。」
 「正面から鎌を胸に受けて、後ろを向いて逃げられるかな。犯人を前にしてたなら、体を後退させることしかできないと思う。」
「正面から鎌を胸に受けて、後ろを向いて逃げられるかな。犯人を前にしてたなら、体を後退させることしかできないと思う。」
 「つまり、祝里さんが うつ伏せになる理由がーー…」
「つまり、祝里さんが うつ伏せになる理由がーー…」
 「……。」
「……。」
 「ど、どうかした?」
「ど、どうかした?」
 「いや、すごいや。さすが、前回の裁判で大活躍しただけあるね。」
「いや、すごいや。さすが、前回の裁判で大活躍しただけあるね。」
 「……あ。」
「……あ。」
 (しまった。前回の捜査時間までは、ちゃんと大人しくしてたのに。前回 学級裁判を進めちゃったせいか…普通に素で推理しちゃった…。)
(しまった。前回の捜査時間までは、ちゃんと大人しくしてたのに。前回 学級裁判を進めちゃったせいか…普通に素で推理しちゃった…。)
 (でも…正直なところ謎解きは得意じゃない。脱出ゲームも苦手だし。)
(でも…正直なところ謎解きは得意じゃない。脱出ゲームも苦手だし。)
 (これは、今まで見てきたものを参考にした完全なるメタ推理。謎を作るのと謎を解くのは違う脳でーー…。)
(これは、今まで見てきたものを参考にした完全なるメタ推理。謎を作るのと謎を解くのは違う脳でーー…。)
 「……。」
「……。」
 (…わたし、脱出ゲーム苦手なんだっけ。これは…どの記憶?)
(…わたし、脱出ゲーム苦手なんだっけ。これは…どの記憶?)
 「つむぎ?」
「つむぎ?」
 「あ、何でもないよ!えっと、わたしなんて素人ヘッポコ推理だから!ただミステリなら割と何でも好きなんだ。映画とかドラマとか小説とかも。」
「あ、何でもないよ!えっと、わたしなんて素人ヘッポコ推理だから!ただミステリなら割と何でも好きなんだ。映画とかドラマとか小説とかも。」
 「そっか。シャーロック・ホームズがいるなら心強いよ。」
「そっか。シャーロック・ホームズがいるなら心強いよ。」
 「いやいや、それは恐れ多すぎるよ。わたしなんて緋色の研究もピンクの研究もできないからね。」
「いやいや、それは恐れ多すぎるよ。わたしなんて緋色の研究もピンクの研究もできないからね。」
コトダマゲット!【死体の状態】
 (もう1度、祝里さんの胸に刺さった鎌を覗き込む。刺さった位置からして、やはり即死じゃなさそうだ。モノクマファイルにも即死とは書かれていないし。)
(もう1度、祝里さんの胸に刺さった鎌を覗き込む。刺さった位置からして、やはり即死じゃなさそうだ。モノクマファイルにも即死とは書かれていないし。)
 「これは、“道具”携帯のルールでモノクマに待たされた鎌だね。」
「これは、“道具”携帯のルールでモノクマに待たされた鎌だね。」
 「うん。そうだね。祝里さんの鎌…なのかな。」
「うん。そうだね。祝里さんの鎌…なのかな。」
 「どうだろう…。この鎌…持ち手に血は付いてないよね。」
「どうだろう…。この鎌…持ち手に血は付いてないよね。」
 (モノクマファイルには鎌が死因だって記載もない。…ということは、鎌はミスリードの可能性もある。)
(モノクマファイルには鎌が死因だって記載もない。…ということは、鎌はミスリードの可能性もある。)
 (祝里さんの死因は他にあるのかもしれない。)
(祝里さんの死因は他にあるのかもしれない。)
コトダマゲット!【鎌】
 「一応、祝里さんの持ち物も確認しておこうか。」
「一応、祝里さんの持ち物も確認しておこうか。」
 (そっと彼女の着物の袖や帯元を確認する。けれど、そこには何もなかった。)
(そっと彼女の着物の袖や帯元を確認する。けれど、そこには何もなかった。)
 「あれ?何も持ってないね。自室の鍵も持っていなかったのかな。」
「あれ?何も持ってないね。自室の鍵も持っていなかったのかな。」
 「机にモノパッドが置いてあるよ。」
「机にモノパッドが置いてあるよ。」
 「モノパッド携帯は校則で決まってたもんね。」
「モノパッド携帯は校則で決まってたもんね。」
 (机には、確かにモノパッドが置かれていた。少し血の付いた液晶に触れると、祝里さんの名前と共に起動した。)
(机には、確かにモノパッドが置かれていた。少し血の付いた液晶に触れると、祝里さんの名前と共に起動した。)
 (その後 画面に表示されたのは、彼女の”クラスメイト”の写真。祝里さんと前回のクロである永本君が前面に、後ろに佐藤君と木野さんも映り込んでいる。)
(その後 画面に表示されたのは、彼女の”クラスメイト”の写真。祝里さんと前回のクロである永本君が前面に、後ろに佐藤君と木野さんも映り込んでいる。)
 「栞は最期に…この画像を見ていたのかな…。」
「栞は最期に…この画像を見ていたのかな…。」
 「……。」
「……。」
 (モノパッドを眺めていると鼻がツンとする感覚があった。)
(モノパッドを眺めていると鼻がツンとする感覚があった。)
△back
 (図書館内を調べようとしたところで、死体すぐ近くの階段を熱心に見る姿が目に留まった。)
(図書館内を調べようとしたところで、死体すぐ近くの階段を熱心に見る姿が目に留まった。)
 「ローズさん、床とゼロ距離で何を見てるの?」
「ローズさん、床とゼロ距離で何を見てるの?」
 「いい質問デスネェ!」
「いい質問デスネェ!」
 「い、池上さん!?」
「い、池上さん!?」
 「シロガネ、アイゾメ!ここ!ここ、見ロ!」
「シロガネ、アイゾメ!ここ!ここ、見ロ!」
 「え?」
「え?」
 「えっと、何かな?」
「えっと、何かな?」
 「見えませんか?」
「見えませんか?」
 「えっ、何が?」
「えっ、何が?」
 (ローズさんは階段すぐの床を指差すが、そこには何もなかった。)
(ローズさんは階段すぐの床を指差すが、そこには何もなかった。)
 「そのメガネは伊達男かァ!」
「そのメガネは伊達男かァ!」
 「それを言うなら、伊達男じゃなくて伊達メガ…」
「それを言うなら、伊達男じゃなくて伊達メガ…」
 「ローズさん。みんなも。」
「ローズさん。みんなも。」
 (ローズさんにツッコミを入れようとした時、彼女の後ろから木野さんが顔を覗かせた。)
(ローズさんにツッコミを入れようとした時、彼女の後ろから木野さんが顔を覗かせた。)
 「琴葉。どうかした?」
「琴葉。どうかした?」
 「みんなの部屋の鍵、貸して。」
「みんなの部屋の鍵、貸して。」
 「えっ?鍵?」
「えっ?鍵?」
 (戸惑っていると、木野さんの後ろから佐藤君も顔を覗かせた。)
(戸惑っていると、木野さんの後ろから佐藤君も顔を覗かせた。)
 「うん。みんなの”道具”を確認したいから、部屋を見せて欲しいんだ。鍵を貸してくれないかな?」
「うん。みんなの”道具”を確認したいから、部屋を見せて欲しいんだ。鍵を貸してくれないかな?」
 「”道具”?モノクマが携帯しろ言いマシタ?」
「”道具”?モノクマが携帯しろ言いマシタ?」
 「そう。この現場には、鎌しかないから…。あれが祝里さんのものでなければ、犯人の”道具”が欠けてたり重複してたりするかもしれない…。」
「そう。この現場には、鎌しかないから…。あれが祝里さんのものでなければ、犯人の”道具”が欠けてたり重複してたりするかもしれない…。」
 「僕と木野さんは、それを確認してるんだ。さっき、ぽぴぃさんや天海さんの分も鍵を預かったよ。」
「僕と木野さんは、それを確認してるんだ。さっき、ぽぴぃさんや天海さんの分も鍵を預かったよ。」
 「あ、うん。分かった。はい、これ。」
「あ、うん。分かった。はい、これ。」
 「これはボクの鍵だよ。」
「これはボクの鍵だよ。」
 「持ってけドロボウ。」
「持ってけドロボウ。」
 (わたし達が差し出した鍵を佐藤君は右手で受け取り、ニッコリ笑った。)
(わたし達が差し出した鍵を佐藤君は右手で受け取り、ニッコリ笑った。)
 「ありがとう。ちなみに…みんな、今 持っているのは野菜の種かな?」
「ありがとう。ちなみに…みんな、今 持っているのは野菜の種かな?」
 「うん。これが1番 小さいからね。」
「うん。これが1番 小さいからね。」
 「わたしも、ほら。ここに。」
「わたしも、ほら。ここに。」
 「右に同じです。」
「右に同じです。」
 「……そっか。分かった。ありがとう。」
「……そっか。分かった。ありがとう。」
 「じゃあ、また後で…。ローズさん、夕神音さん達が呼んでたよ。」
「じゃあ、また後で…。ローズさん、夕神音さん達が呼んでたよ。」
 「ああ、そうデス。ワタシ、クラスメイト共と捜査しマス。」
「ああ、そうデス。ワタシ、クラスメイト共と捜査しマス。」
 (木野さんと佐藤君、ローズさんは図書館入り口から出て行った。)
(木野さんと佐藤君、ローズさんは図書館入り口から出て行った。)
 「つむぎ、捜査を続けよう。」
「つむぎ、捜査を続けよう。」
 「うん。」
「うん。」
 (図書館の1階には、死体の他にも気になるものがある。それは、室内の壁に打ち付けられていた。)
(図書館の1階には、死体の他にも気になるものがある。それは、室内の壁に打ち付けられていた。)
 「こ、これ、ワラ人形…ですよね。」
「こ、これ、ワラ人形…ですよね。」
 「光太クン、妹子。何か分かった?」
「光太クン、妹子。何か分かった?」
 「あ!哀染先輩!!」
「あ!哀染先輩!!」
 「……。」
「……。」
 (壁を凝視する大小の体。前谷君は打ち付けられたワラ人形を見て、顔を こわばらせている。その横で妹尾さんが不機嫌そうな顔をしていた。)
(壁を凝視する大小の体。前谷君は打ち付けられたワラ人形を見て、顔を こわばらせている。その横で妹尾さんが不機嫌そうな顔をしていた。)
 「妹子、どうかしたの?」
「妹子、どうかしたの?」
 「……蘭太郎お兄ちゃん、サッサと行っちゃうんだもん。」
「……蘭太郎お兄ちゃん、サッサと行っちゃうんだもん。」
 「そういえば、天海君たち、もういないね。」
「そういえば、天海君たち、もういないね。」
 (わたしが言うと、妹尾さんは一瞬こちらに目をやって、またプイとそっぽを向いた。その首元には何も身に付けていない。)
(わたしが言うと、妹尾さんは一瞬こちらに目をやって、またプイとそっぽを向いた。その首元には何も身に付けていない。)
 (やっぱり、あげたペンダントは付けてくれないか。天海君と お揃いにしたんだけどな。身に付けてくれてる人も多いから、ちょっと残念かも。)
(やっぱり、あげたペンダントは付けてくれないか。天海君と お揃いにしたんだけどな。身に付けてくれてる人も多いから、ちょっと残念かも。)
 「ねえ、前谷お兄ちゃん。早く行こうよ。ここ、ちょっと怖いから。」
「ねえ、前谷お兄ちゃん。早く行こうよ。ここ、ちょっと怖いから。」
 「ハヒィ!で、でも、ちょっと待ってください!!哀染先輩!これ!どう思いますか!?」
「ハヒィ!で、でも、ちょっと待ってください!!哀染先輩!これ!どう思いますか!?」
 (彼は勢い良く右手でワラ人形を指差した。人形には長くて太いクギが打ち付けられている。『祝里』と名前が書かれた小さい紙と一緒に。)
(彼は勢い良く右手でワラ人形を指差した。人形には長くて太いクギが打ち付けられている。『祝里』と名前が書かれた小さい紙と一緒に。)
 「これって…祝里さんがやったのかな。」
「これって…祝里さんがやったのかな。」
 「どう見ても、呪いの儀式だよね。」
「どう見ても、呪いの儀式だよね。」
 「ま、まさか…これで…祝里先パイは…!?」
「ま、まさか…これで…祝里先パイは…!?」
 (現場にクギ…か。連続殺人鬼カエル男ならぬ連続密室殺人鬼クギ男みたいな…。)
(現場にクギ…か。連続殺人鬼カエル男ならぬ連続密室殺人鬼クギ男みたいな…。)
 「いやー!これが学級裁判で良かったよ!普通の刑事裁判じゃ、呪いは裁けないからね!」
「いやー!これが学級裁判で良かったよ!普通の刑事裁判じゃ、呪いは裁けないからね!」
 「うわっ。モノクマ…。」
「うわっ。モノクマ…。」
 「うわっとは何だー!ボクは役立つ過去の事例を話に来てやったんだぞー!」
「うわっとは何だー!ボクは役立つ過去の事例を話に来てやったんだぞー!」
 「過去の事例?」
「過去の事例?」
 「むかーしむかし、あるところに、夫の不倫相手を丑の刻参りで呪った主婦がいました。主婦は逮捕され、被害者側は殺人未遂での起訴を望みました。」
「むかーしむかし、あるところに、夫の不倫相手を丑の刻参りで呪った主婦がいました。主婦は逮捕され、被害者側は殺人未遂での起訴を望みました。」
 「しかし…その後 行われた裁判で下された判決は脅迫罪。呪いが殺人罪として裁かれないことを決定付けてしまったのです。」
「しかし…その後 行われた裁判で下された判決は脅迫罪。呪いが殺人罪として裁かれないことを決定付けてしまったのです。」
 「……。」
「……。」
 「……。」
「……。」
 「それのどこが、役立つ情報なんですか!!」
「それのどこが、役立つ情報なんですか!!」
 「役立つだろーっ!明日 合コンで使えるウンチクランキング552位ぐらいだろー!」
「役立つだろーっ!明日 合コンで使えるウンチクランキング552位ぐらいだろー!」
 「そんな微妙な話、誰も使わないよ!」
「そんな微妙な話、誰も使わないよ!」
 「……それより、モノクマ。このクギとワラ人形なんだけど、このステージにあったの?」
「……それより、モノクマ。このクギとワラ人形なんだけど、このステージにあったの?」
 「はて?ここのステージに、ワラ人形なんてなかったですよ。」
「はて?ここのステージに、ワラ人形なんてなかったですよ。」
 「え?じゃあ、このワラ人形は?」
「え?じゃあ、このワラ人形は?」
 「知らないよ!このステージに持ち込んだり、作ったりした人がいたんじゃないの?ワラ人形愛好家による持ち込みでしょうね。」
「知らないよ!このステージに持ち込んだり、作ったりした人がいたんじゃないの?ワラ人形愛好家による持ち込みでしょうね。」
 (面倒臭そうに答えたモノクマは、すぐにいなくなった。)
(面倒臭そうに答えたモノクマは、すぐにいなくなった。)
 「ワラ人形は、祝里さんのもの…なのかな。」
「ワラ人形は、祝里さんのもの…なのかな。」
 「……そういえば、このステージに来る前、栞は前のステージから何かを持ってきたいって言ってたよね。」
「……そういえば、このステージに来る前、栞は前のステージから何かを持ってきたいって言ってたよね。」
 「うん。前のステージの宿舎、一応 才能に合わせたような道具もあったもんね。」
「うん。前のステージの宿舎、一応 才能に合わせたような道具もあったもんね。」
 「じゃあ、ワラ人形もクギも、祝里先パイの私物ということですね!」
「じゃあ、ワラ人形もクギも、祝里先パイの私物ということですね!」
 「どうして、祝里お姉ちゃんがノコノコ持ってきた可愛くない私物が現場にあるんだろうね?」
「どうして、祝里お姉ちゃんがノコノコ持ってきた可愛くない私物が現場にあるんだろうね?」
コトダマゲット!【現場のワラ人形】
 (ワラ人形の周りを照らすように、1本の ろうそくが置かれている。半分くらいまで溶けた ろうそくには火はなく、役目を終えたように佇んでいた。)
(ワラ人形の周りを照らすように、1本の ろうそくが置かれている。半分くらいまで溶けた ろうそくには火はなく、役目を終えたように佇んでいた。)
 「この ろうそく…鉱山内のものだね。そういえば、ここの電気は付かなかったんだっけ?」
「この ろうそく…鉱山内のものだね。そういえば、ここの電気は付かなかったんだっけ?」
 「うん。夜だったら真っ暗だよね。」
「うん。夜だったら真っ暗だよね。」
 「どうして栞は、こんな夜中に図書館にいたんだろう。呪いの儀式の跡が気になるね。」
「どうして栞は、こんな夜中に図書館にいたんだろう。呪いの儀式の跡が気になるね。」
 「……。」
「……。」
 「つむぎ。発見時、図書館の扉は鍵が掛かっていたんだよね?」
「つむぎ。発見時、図書館の扉は鍵が掛かっていたんだよね?」
 「ううん、鍵は掛かっていなかったよ。ただ、このドアガードが掛かってた。」
「ううん、鍵は掛かっていなかったよ。ただ、このドアガードが掛かってた。」
 (1階の正面ドアに向き直る。一般的なマンションのドアのような鍵が付いている。つまみ式の鍵と、その上に黒ずんだ鉄製のU字のドアガード。)
(1階の正面ドアに向き直る。一般的なマンションのドアのような鍵が付いている。つまみ式の鍵と、その上に黒ずんだ鉄製のU字のドアガード。)
 「ドアガード?鍵は開いてたんだね?」
「ドアガード?鍵は開いてたんだね?」
 「うん。ぽぴぃ君によると、図書館の鍵を持ってるのは彼だけで、図書館は夜時間いつも鍵を開けていたらしいよ。」
「うん。ぽぴぃ君によると、図書館の鍵を持ってるのは彼だけで、図書館は夜時間いつも鍵を開けていたらしいよ。」
 「ぽびぃクンの宿舎は、ここの隣だったね。確か、2階で繋がっている。行ってみようか。」
「ぽびぃクンの宿舎は、ここの隣だったね。確か、2階で繋がっている。行ってみようか。」
コトダマゲット!【図書館1階の正面ドア】
【北エリア 図書館2階】
 「白銀さん。哀染くん。」
「白銀さん。哀染くん。」
 「あ?誰のこった?…なんだ、デカメガネにチャラ男か。」
「あ?誰のこった?…なんだ、デカメガネにチャラ男か。」
 (2階に上がると、山門さんと郷田君がいた。郷田君は山門さんの言葉に訝しげな顔をした後、わたし達の愛称?を呼んだ。)
(2階に上がると、山門さんと郷田君がいた。郷田君は山門さんの言葉に訝しげな顔をした後、わたし達の愛称?を呼んだ。)
 「…郷田君。絶対わたしが眼鏡 外したら、分からなくなるよね。」
「…郷田君。絶対わたしが眼鏡 外したら、分からなくなるよね。」
 「たりめーだろ!特徴 削ぎ落とされて分っかよ!」
「たりめーだろ!特徴 削ぎ落とされて分っかよ!」
 「毅クン、ボクはチャラ男じゃないよ。顔と名前は結び付けて覚えるといいんじゃないかな。」
「毅クン、ボクはチャラ男じゃないよ。顔と名前は結び付けて覚えるといいんじゃないかな。」
 「ほら、よく見て。つむぎは目が丸くて鼻筋が通っている。目は緑がかった深い青。唇は…」
「ほら、よく見て。つむぎは目が丸くて鼻筋が通っている。目は緑がかった深い青。唇は…」
 「……哀染君。そういうの、チャラ男っていうかプレイボーイっぽいよ。」
「……哀染君。そういうの、チャラ男っていうかプレイボーイっぽいよ。」
 「えっ。」
「えっ。」
 「顔と名前を結び付けて覚えられんなら苦労しねーっつの。ンなことより、今は誰が祝里を殺したかだろ。」
「顔と名前を結び付けて覚えられんなら苦労しねーっつの。ンなことより、今は誰が祝里を殺したかだろ。」
 「そうですね。みなさん、ここは密室だったようです。」
「そうですね。みなさん、ここは密室だったようです。」
 「密室?」
「密室?」
 「ええ。この2階の扉はぽぴぃくんの宿舎に繋がっているそうですが、わたし達が来た時、ドアガードが図書館側から掛けられていました。」
「ええ。この2階の扉はぽぴぃくんの宿舎に繋がっているそうですが、わたし達が来た時、ドアガードが図書館側から掛けられていました。」
 「ドアガードだけ?鍵は?」
「ドアガードだけ?鍵は?」
 「鍵は、ぽぴぃくんの宿舎側から掛ける仕様のようですね。」
「鍵は、ぽぴぃくんの宿舎側から掛ける仕様のようですね。」
 「たりめーだろ!でなきゃ、誰でも図書館から芥子の部屋に入り放題になっちまう。あいつが危ねーだろ!」
「たりめーだろ!でなきゃ、誰でも図書館から芥子の部屋に入り放題になっちまう。あいつが危ねーだろ!」
 「でも、ドアガードは図書館側からしか掛けられないんだね。」
「でも、ドアガードは図書館側からしか掛けられないんだね。」
 「ええ。そして、わたし達は誰よりも先に2階に上がりましたから…現場は密室だったということになります。」
「ええ。そして、わたし達は誰よりも先に2階に上がりましたから…現場は密室だったということになります。」
 (夜時間、図書館には誰でも入れたけど、誰もいないはずの現場のドアガードだけは掛かっていた…か。)
(夜時間、図書館には誰でも入れたけど、誰もいないはずの現場のドアガードだけは掛かっていた…か。)
 (『中途半端な密室』だね。)
(『中途半端な密室』だね。)
コトダマゲット!【図書館2階のドア】
 「にしても…芥子のヤツ、何で起きなかったんだ。」
「にしても…芥子のヤツ、何で起きなかったんだ。」
 「あ、そうだね。ワラ人形でクギを打ち付けたりしたら、結構 大きい音がしたはずだよね。」
「あ、そうだね。ワラ人形でクギを打ち付けたりしたら、結構 大きい音がしたはずだよね。」
 「どうやら、この図書館の壁は分厚いようです。」
「どうやら、この図書館の壁は分厚いようです。」
 「防音壁を使っているのかもしれないね。図書館の外の音を遮断して、中の音を外に漏らさないように。」
「防音壁を使っているのかもしれないね。図書館の外の音を遮断して、中の音を外に漏らさないように。」
 「あ、そういえば。昨日の昼、ここで話してた人たちの声、外からは全然 聞こえなかったよ。」
「あ、そういえば。昨日の昼、ここで話してた人たちの声、外からは全然 聞こえなかったよ。」
コトダマゲット!【図書館の防音壁】
△back
 「だいたい、図書館内は調べられたね。次は、どこを調べようか?」
「だいたい、図書館内は調べられたね。次は、どこを調べようか?」
 「…一応、祝里さんの部屋と宿屋のキッチンの凶器がなくなってないか確認しとこうか。」
「…一応、祝里さんの部屋と宿屋のキッチンの凶器がなくなってないか確認しとこうか。」
 (鎌以外が凶器の可能性もあるし。)
(鎌以外が凶器の可能性もあるし。)
 「…うん。あと、クギが どこから出てきたのかも調べるべきだよね。」
「…うん。あと、クギが どこから出てきたのかも調べるべきだよね。」
 「えっ、クギ?」
「えっ、クギ?」
 「…うん。モノクマは、『ワラ人形は』このステージになかったと言っていたよ。クギについては、しっかり話さなかった。何かあるはずだよ。」
「…うん。モノクマは、『ワラ人形は』このステージになかったと言っていたよ。クギについては、しっかり話さなかった。何かあるはずだよ。」
 「…つむぎは、どう思う?ワラ人形は、呪いの儀式に使われたのかな。」
「…つむぎは、どう思う?ワラ人形は、呪いの儀式に使われたのかな。」
 「どうだろう。犯人が そう見せかけた可能性もあるよ。」
「どうだろう。犯人が そう見せかけた可能性もあるよ。」
 (『ダンガンロンパ』のトリックが呪殺っていうのは考えられないし。それに…)
(『ダンガンロンパ』のトリックが呪殺っていうのは考えられないし。それに…)
 「わたし、このステージに来た日の夜、祝里さんと話したんだ。祝里さんの才能についても教えてもらったんだよ。」
「わたし、このステージに来た日の夜、祝里さんと話したんだ。祝里さんの才能についても教えてもらったんだよ。」
 「このハーブティー、美味しいね。知らなかったな。こんなお茶が置いてあったなんて。つむぎ、お茶 詳しいの?」
「このハーブティー、美味しいね。知らなかったな。こんなお茶が置いてあったなんて。つむぎ、お茶 詳しいの?」
 「…知り合いにお茶を淹れるのが上手い人がいて、それで知ってただけだよ。」
「…知り合いにお茶を淹れるのが上手い人がいて、それで知ってただけだよ。」
 「そうなんだ。覚えておくよ。あたし、記憶力だけはいいからね。」
「そうなんだ。覚えておくよ。あたし、記憶力だけはいいからね。」
 「映像記憶があるって言ってたね。…でも、祝里さんって呪術師だったよね?」
「映像記憶があるって言ってたね。…でも、祝里さんって呪術師だったよね?」
 「うん。人の顔と名前を覚えることが必要だから…それで鍛えられたのかもしれないね。」
「うん。人の顔と名前を覚えることが必要だから…それで鍛えられたのかもしれないね。」
 「鍛えられたからって得られるものじゃないと思うけど…。えっと、それで…人を呪う才能、なんだよね?」
「鍛えられたからって得られるものじゃないと思うけど…。えっと、それで…人を呪う才能、なんだよね?」
 「…やだなぁ、そんな才能じゃないよ。あたしは、人の顔と名前を覚えて、その人が元気になる”おまじない”をするの。風水とか気休めみたいなものだよ。」
「…やだなぁ、そんな才能じゃないよ。あたしは、人の顔と名前を覚えて、その人が元気になる”おまじない”をするの。風水とか気休めみたいなものだよ。」
 「そっか。どうやって、おまじないするの?」
「そっか。どうやって、おまじないするの?」
 「午前2時に名前を書いた紙とワラ人形に五寸釘を打ち付けるんだよ。」
「午前2時に名前を書いた紙とワラ人形に五寸釘を打ち付けるんだよ。」
 「それは、”お呪い”じゃなくて”呪い”だよ!って、口の先まで出掛かったよ。」
「それは、”お呪い”じゃなくて”呪い”だよ!って、口の先まで出掛かったよ。」
 「そっか。栞の呪術は、人を呪い殺すものじゃないってことだね。…でも、五寸釘にしては、現場のクギは大きかったよね。」
「そっか。栞の呪術は、人を呪い殺すものじゃないってことだね。…でも、五寸釘にしては、現場のクギは大きかったよね。」
 「…確かに、そうだね。とりあえず、クギの出所も探そう。クギがありそうなところ…鍛冶屋かな?」
「…確かに、そうだね。とりあえず、クギの出所も探そう。クギがありそうなところ…鍛冶屋かな?」
 「うん。鍛冶屋、被害者の部屋、宿屋のキッチン。どこから見ようか?」
「うん。鍛冶屋、被害者の部屋、宿屋のキッチン。どこから見ようか?」
【南エリア 鍛冶屋】
 「あ、白銀さん。哀染君。」
「あ、白銀さん。哀染君。」
 「よく来た、よく来た。キタキリスズメ。」
「よく来た、よく来た。キタキリスズメ。」
 「天海君、ぽぴぃ君。」
「天海君、ぽぴぃ君。」
 「哀染先輩、白銀先パイ!またお会いしましたね!!」
「哀染先輩、白銀先パイ!またお会いしましたね!!」
 「……。」
「……。」
 「あ、光太クンと妹子も移動していたんだね。」
「あ、光太クンと妹子も移動していたんだね。」
 (鍛冶屋の中は少し賑やかだった。天海君たちが捜査する中、妹尾さん達が合流したんだろう。)
(鍛冶屋の中は少し賑やかだった。天海君たちが捜査する中、妹尾さん達が合流したんだろう。)
 (みんなは、この鍛冶場に存在する”明らかな異物”を囲んでいる。)
(みんなは、この鍛冶場に存在する”明らかな異物”を囲んでいる。)
 「えーと、蘭太郎クン。それは?」
「えーと、蘭太郎クン。それは?」
 「ワラ人形っすね。図書館と同じように、ここにも打ち付けられてるっす。」
「ワラ人形っすね。図書館と同じように、ここにも打ち付けられてるっす。」
 (鍛冶場の柱で存在感を放つワラ人形。図書館と同じく、大きめのクギで柱に打ち付けられている。ワラ人形には『祝里』と書かれた紙片が貼られていた。)
(鍛冶場の柱で存在感を放つワラ人形。図書館と同じく、大きめのクギで柱に打ち付けられている。ワラ人形には『祝里』と書かれた紙片が貼られていた。)
 「えっと…何で、ここに図書館と同じものがあるんだろう。」
「えっと…何で、ここに図書館と同じものがあるんだろう。」
 「こ、ここでも呪いの儀式が行われたんでしょうか!?」
「こ、ここでも呪いの儀式が行われたんでしょうか!?」
 「ここは郷田君の宿舎だったっすね…。」
「ここは郷田君の宿舎だったっすね…。」
 「……。」
「……。」
コトダマゲット!【鍛冶屋のワラ人形】
 「あま…」
「あま…」
 「……。」
「……。」
 「……ぽぴぃ君たちが ここに来たのは、やっぱりクギの出所を探して?」
「……ぽぴぃ君たちが ここに来たのは、やっぱりクギの出所を探して?」
 (天海君に向き直ったところ、妹尾さんに睨まれたため、ぽぴぃ君の方に近付いた。)
(天海君に向き直ったところ、妹尾さんに睨まれたため、ぽぴぃ君の方に近付いた。)
 「そうそうそうそう。曹操無双。」
「そうそうそうそう。曹操無双。」
 「クギもワラ人形も祝里さんが前のステージから持ってきた可能性もあるっすけど、一応 見てるんすよ。」
「クギもワラ人形も祝里さんが前のステージから持ってきた可能性もあるっすけど、一応 見てるんすよ。」
 「このステージで祝里お姉ちゃんがワラ人形やクギを作ったってこと?」
「このステージで祝里お姉ちゃんがワラ人形やクギを作ったってこと?」
 「…栞が作ったとは限らないけどね。」
「…栞が作ったとは限らないけどね。」
 「でも、少なくともワラ人形は、このステージになかったってモノクマが言ってたよ。」
「でも、少なくともワラ人形は、このステージになかったってモノクマが言ってたよ。」
 「そうっすか。なら、調べる手間が省けたっすね。牧場のワラから作った可能性も考えていたので。」
「そうっすか。なら、調べる手間が省けたっすね。牧場のワラから作った可能性も考えていたので。」
 「それで、ここにクギはあったのかな?」
「それで、ここにクギはあったのかな?」
 「ないないないない内野ゴロ。」
「ないないないない内野ゴロ。」
 「このワラ人形のクギ以外…ここにもないっすね。」
「このワラ人形のクギ以外…ここにもないっすね。」
 「図書館のクギも、結構 大きいものだったよね?あんなの今まで見なかったと思うけど…。」
「図書館のクギも、結構 大きいものだったよね?あんなの今まで見なかったと思うけど…。」
 「そうっすね。それに、このステージには家具からクギを引き抜く道具もないっす。」
「そうっすね。それに、このステージには家具からクギを引き抜く道具もないっす。」
 「それじゃあ、やっぱり”超高校級の呪術師”である祝里先パイが作ったんじゃないでしょうか!?」
「それじゃあ、やっぱり”超高校級の呪術師”である祝里先パイが作ったんじゃないでしょうか!?」
 「あっ…でも、クギなんて作れるものでしょうか!?」
「あっ…でも、クギなんて作れるものでしょうか!?」
 「うーん…確かに。クギを作るなんて、元になる金属がなければ難しいよね。」
「うーん…確かに。クギを作るなんて、元になる金属がなければ難しいよね。」
 「……。」
「……。」
△back
【北エリア 民家】
 (被害者である祝里さんの宿舎は、図書館すぐ近くの民家。家の扉は鍵が掛かっておらず、難なく中に入れた。)
(被害者である祝里さんの宿舎は、図書館すぐ近くの民家。家の扉は鍵が掛かっておらず、難なく中に入れた。)
 「あ、白銀さんに哀染さん。」
「あ、白銀さんに哀染さん。」
 「……。」
「……。」
 (中には、既に佐藤君と木野さんがいた。)
(中には、既に佐藤君と木野さんがいた。)
 「ここみ、琴葉。”道具”は調べられたのかな。」
「ここみ、琴葉。”道具”は調べられたのかな。」
 「うん、だいたいは。」
「うん、だいたいは。」
 「祝里さんの”道具”も見に来た…。死体の近くに、鍵があったから。」
「祝里さんの”道具”も見に来た…。死体の近くに、鍵があったから。」
 「鍵はキミ達が持ってきてたんだね。」
「鍵はキミ達が持ってきてたんだね。」
 「それで、祝里さんの”道具”は どうだったの?」
「それで、祝里さんの”道具”は どうだったの?」
 「全部あるよ。鎌以外はね。」
「全部あるよ。鎌以外はね。」
 「そっか…。他の人の”道具”も揃っていたんだよね?」
「そっか…。他の人の”道具”も揃っていたんだよね?」
 「うん。欠けも重複もない…。」
「うん。欠けも重複もない…。」
 「じゃあ、現場の鎌は祝里さんの…なのかな?」
「じゃあ、現場の鎌は祝里さんの…なのかな?」
 「犯人も鎌を持ち歩いていて…祝里さんを刺してから、祝里さんの鎌を持ち出した可能性も…ある。」
「犯人も鎌を持ち歩いていて…祝里さんを刺してから、祝里さんの鎌を持ち出した可能性も…ある。」
コトダマゲット!【全員の道具】
 「でも、みんなの部屋の鎌に目立って おかしなところはなかったよ。あと、服も。」
「でも、みんなの部屋の鎌に目立って おかしなところはなかったよ。あと、服も。」
 「え?服?」
「え?服?」
 「あ、実は、血が付いた服を処分した人がいないか、みんなの着替えも確認したんだ。」
「あ、実は、血が付いた服を処分した人がいないか、みんなの着替えも確認したんだ。」
 「え!?勝手にクローゼット開けたってこと?」
「え!?勝手にクローゼット開けたってこと?」
 「大丈夫。女性のクローゼットは木野さんが開けたから。」
「大丈夫。女性のクローゼットは木野さんが開けたから。」
 (そういう問題じゃない。)
(そういう問題じゃない。)
 「誰も服を処分したりしてないよ。モノクマによると予備の着替えは10着になるように毎朝 用意されるらしいけど、全員のクローゼットに10着あったから。」
「誰も服を処分したりしてないよ。モノクマによると予備の着替えは10着になるように毎朝 用意されるらしいけど、全員のクローゼットに10着あったから。」
 「モノクマが毎朝クローゼットに着替えを置いているってことかい?」
「モノクマが毎朝クローゼットに着替えを置いているってことかい?」
 「さあ…自動的に、とか言ってたけど。」
「さあ…自動的に、とか言ってたけど。」
 「不思議な自動化だね。」
「不思議な自動化だね。」
 (自動化というより、そういうゲームのギミック…だね。)
(自動化というより、そういうゲームのギミック…だね。)
 「血まみれの服を隠してる人も…いない。」
「血まみれの服を隠してる人も…いない。」
 「そっか。じゃあ、犯人は返り血を浴びない工夫をしていたのかもしれないね。」
「そっか。じゃあ、犯人は返り血を浴びない工夫をしていたのかもしれないね。」
コトダマゲット!【着替えのシステム】
 「そういえば、2人は栞とクラスメイトだったよね。」
「そういえば、2人は栞とクラスメイトだったよね。」
 「うん…。」
「うん…。」
 「図書館にワラ人形があったけど、どう思う?」
「図書館にワラ人形があったけど、どう思う?」
 「あれは、祝里さんの呪術と同じだよ。クラスメイトの記憶でも、彼女は言ってたよ。午前2時にターゲットの顔と名前を覚えてワラ人形にクギを打ち込む。」
「あれは、祝里さんの呪術と同じだよ。クラスメイトの記憶でも、彼女は言ってたよ。午前2時にターゲットの顔と名前を覚えてワラ人形にクギを打ち込む。」
 「わたしも、それ聞いたよ。でも、人が死ぬようなものじゃないんだよね?」
「わたしも、それ聞いたよ。でも、人が死ぬようなものじゃないんだよね?」
 「……僕が知る限りでは、祝里さんの呪殺のターゲットになった人は全員 死体で発見されてるよ。胸に穴を空けてね。」
「……僕が知る限りでは、祝里さんの呪殺のターゲットになった人は全員 死体で発見されてるよ。胸に穴を空けてね。」
 「え!?」
「え!?」
 「栞は、人を呪い殺すことができたってこと?」
「栞は、人を呪い殺すことができたってこと?」
 「……そんなはず…ない。」
「……そんなはず…ない。」
 「…そうだね。科学的ではない。でも、クラスメイトの記憶では、彼女のターゲットは みんな死んでいる。」
「…そうだね。科学的ではない。でも、クラスメイトの記憶では、彼女のターゲットは みんな死んでいる。」
 「クラスメイトの記憶が本当なら…の話だけどね。」
「クラスメイトの記憶が本当なら…の話だけどね。」
 「……。」
「……。」
 「祝里さんは”おまじない”って言ってたけどね。呪殺の条件はターゲットの名前と顔を覚えて、ワラ人形に五寸釘を打ち込むことらしいよ。」
「祝里さんは”おまじない”って言ってたけどね。呪殺の条件はターゲットの名前と顔を覚えて、ワラ人形に五寸釘を打ち込むことらしいよ。」
 「現場にあったのは、五寸釘より大きかった。祝里さんじゃないと…思う。」
「現場にあったのは、五寸釘より大きかった。祝里さんじゃないと…思う。」
 「…そっか。ありがとう。」
「…そっか。ありがとう。」
コトダマゲット!【呪殺の条件】
△back
【中央エリア 宿屋1階 キッチン】
 (宿屋に戻り、キッチンに入る。中には、3人の先客がいた。)
(宿屋に戻り、キッチンに入る。中には、3人の先客がいた。)
 「シロガネ、アイゾメ!また会ったが百年目!」
「シロガネ、アイゾメ!また会ったが百年目!」
 「ローズさん、言葉が混ざってるよ。」
「ローズさん、言葉が混ざってるよ。」
 「白銀さん達も、ここを調べに来たのかしら?」
「白銀さん達も、ここを調べに来たのかしら?」
 「うん。3人はクラスメイトで調査しているんだね。」
「うん。3人はクラスメイトで調査しているんだね。」
 「ええ。クラスでは話す機会は少なかったけれど、こうして仲良くなれて良かったわぁ。」
「ええ。クラスでは話す機会は少なかったけれど、こうして仲良くなれて良かったわぁ。」
 「照れマスなぁ。ここに来たのは、みんなにハーブティー淹れるのタメです。緊張状態よろしくない。」
「照れマスなぁ。ここに来たのは、みんなにハーブティー淹れるのタメです。緊張状態よろしくない。」
 「ここのハーブティーは、なかなかどうしてリラックスできるからね。裁判前に全員で飲めたらと思って来たんだよ。」
「ここのハーブティーは、なかなかどうしてリラックスできるからね。裁判前に全員で飲めたらと思って来たんだよ。」
 「それは良い考えだね。緊張状態だと、頭が働かない可能性もあるから。」
「それは良い考えだね。緊張状態だと、頭が働かない可能性もあるから。」
 (裁判前にハーブティーでリラックス…その絵面、視聴者的に面白いんだろうか…。)
(裁判前にハーブティーでリラックス…その絵面、視聴者的に面白いんだろうか…。)
 「白銀さん達は捜査で来たの?」
「白銀さん達は捜査で来たの?」
 「わたし達はキッチンの凶器になりそうなものがなくなっていないか、見に来たんだけど…。」
「わたし達はキッチンの凶器になりそうなものがなくなっていないか、見に来たんだけど…。」
 「何故だい?凶器は鎌で決まりだろう。」
「何故だい?凶器は鎌で決まりだろう。」
 「一応だよ。モノクマファイルに凶器が書いてなかったし。」
「一応だよ。モノクマファイルに凶器が書いてなかったし。」
 「なるほどねぇ。」
「なるほどねぇ。」
 「それで、ここに来たわけか。凶器が鍛冶屋から持ち出された可能性はないから、良い判断だよ。」
「それで、ここに来たわけか。凶器が鍛冶屋から持ち出された可能性はないから、良い判断だよ。」
 「ナニ様ですか?どうして言い切れマス?」
「ナニ様ですか?どうして言い切れマス?」
 「僕は初日に郷田君に張り付いて、彼と同時に鍛冶屋に入ったからね。その時2人で凶器になりそうなものをリストアップしていたのさ。」
「僕は初日に郷田君に張り付いて、彼と同時に鍛冶屋に入ったからね。その時2人で凶器になりそうなものをリストアップしていたのさ。」
 「先程 鍛冶屋も覗いたが、凶器になりそうなもので、なくなっているものはなかった。…妙なものは追加されていたが。」
「先程 鍛冶屋も覗いたが、凶器になりそうなもので、なくなっているものはなかった。…妙なものは追加されていたが。」
 「妙なモノ?」
「妙なモノ?」
 「ワラ人形がーー…いや、鍛冶屋へ行って見るのが早いよ。お茶の準備ができたら見に行くといいさ。」
「ワラ人形がーー…いや、鍛冶屋へ行って見るのが早いよ。お茶の準備ができたら見に行くといいさ。」
 (3人がハーブティーを用意する横で、わたし達はボードに油性マジックで書かれたチェックリストを見ながらキッチンの備品を確認していった。)
(3人がハーブティーを用意する横で、わたし達はボードに油性マジックで書かれたチェックリストを見ながらキッチンの備品を確認していった。)
 「なくなっているものは…ないね。チェックリストの通りだよ。心配しすぎたかな?」
「なくなっているものは…ないね。チェックリストの通りだよ。心配しすぎたかな?」
 「念を入れるに越したことはないさ。そういえば、光太クンがシュラスコ串が少ない気がするって言っていたけど…。」
「念を入れるに越したことはないさ。そういえば、光太クンがシュラスコ串が少ない気がするって言っていたけど…。」
 「シュラスコ串?チェックリストは…えーと…13本になってるよ?ここにあるのも13本だよね?」
「シュラスコ串?チェックリストは…えーと…13本になってるよ?ここにあるのも13本だよね?」
 「うん。そっか。なら、いいんだ。」
「うん。そっか。なら、いいんだ。」
 (哀染君は持ち手までシルバーのシンプルなシュラスコ串を眺めて肩をすくめた。)
(哀染君は持ち手までシルバーのシンプルなシュラスコ串を眺めて肩をすくめた。)
コトダマゲット!【キッチンの様子】
 「このキッチン、鉄の串ありマスのに、ヒモありません。ケシカラン。」
「このキッチン、鉄の串ありマスのに、ヒモありません。ケシカラン。」
 「ヒモ?」
「ヒモ?」
 「チマキを縛りますのヒモ、チャーシューを縛りますのヒモです。これでは、美味しいの料理できマセン。」
「チマキを縛りますのヒモ、チャーシューを縛りますのヒモです。これでは、美味しいの料理できマセン。」
 「確かに…料理用のタコ糸ないね。」
「確かに…料理用のタコ糸ないね。」
 「なくてもいいだろう。料理は自動的に作られているのだから。」
「なくてもいいだろう。料理は自動的に作られているのだから。」
 「そういえば…ヒモ状のもの、ここで見ないわねぇ。」
「そういえば…ヒモ状のもの、ここで見ないわねぇ。」
 「そのとぉーーーり!!」
「そのとぉーーーり!!」
 「タケモトピアノ!?…って、モノクマ。何しに来たの?」
「タケモトピアノ!?…って、モノクマ。何しに来たの?」
 「このステージにはヒモがないんでげすよ。1つの場所を除いてはね。」
「このステージにはヒモがないんでげすよ。1つの場所を除いてはね。」
 「ヒモがない?何故だい?」
「ヒモがない?何故だい?」
 「それは忘れもしない第うにゃうにゃ作目…」
「それは忘れもしない第うにゃうにゃ作目…」
 (…忘れてるじゃん。)
(…忘れてるじゃん。)
 「この状況で、首を括る若者が出てねぇ…。」
「この状況で、首を括る若者が出てねぇ…。」
 「首を括る?首吊り自殺したってこと?」
「首を括る?首吊り自殺したってこと?」
 「そう…それからボクは…このステージにヒモを置かぬと誓ったのです…。それで、このステージには安全対策としてヒモがないのです。」
「そう…それからボクは…このステージにヒモを置かぬと誓ったのです…。それで、このステージには安全対策としてヒモがないのです。」
 「コロシアイをさせているのに安全対策とは、どういうことだい?」
「コロシアイをさせているのに安全対策とは、どういうことだい?」
 「ヒモがない家ナンテない。ないワケがない。」
「ヒモがない家ナンテない。ないワケがない。」
 「ないんだよー!ボクが言ったらないの!全然ないの!ヒモもワイヤーも!ロープもテグスも!未来も希望も!!」
「ないんだよー!ボクが言ったらないの!全然ないの!ヒモもワイヤーも!ロープもテグスも!未来も希望も!!」
 「ちょっと!未来と希望までなくさせないでよ!」
「ちょっと!未来と希望までなくさせないでよ!」
 「とにかく、そういうことだから。」
「とにかく、そういうことだから。」
 (モノクマは「うぷぷ」と、いつもの笑いを漏らして消えた。)
(モノクマは「うぷぷ」と、いつもの笑いを漏らして消えた。)
 「とりあえず…このステージには1カ所を除きヒモがないということか。」
「とりあえず…このステージには1カ所を除きヒモがないということか。」
 「ヒモない。不便デス。鍵を掛かりません。」
「ヒモない。不便デス。鍵を掛かりません。」
 「1カ所って、どこかしらぁ?病院?」
「1カ所って、どこかしらぁ?病院?」
 「病院にはなかったよ。」
「病院にはなかったよ。」
 (初日にヒモを見た場所があったけど…そのヒモは、もう その場にない。モノクマがあんなこと言うってことは、重要そうだね。)
(初日にヒモを見た場所があったけど…そのヒモは、もう その場にない。モノクマがあんなこと言うってことは、重要そうだね。)
コトダマゲット!【モノクマの安全対策】
 「しかし、ヒモみたいなものが全然ないなど信じられんね。」
「しかし、ヒモみたいなものが全然ないなど信じられんね。」
 「モノクマの冗談かしら?」
「モノクマの冗談かしら?」
 「それはないよ。モノクマは嘘が言えない状態だから。」
「それはないよ。モノクマは嘘が言えない状態だから。」
 「そうデシタ!サトウと契約していマシタ。オドシもナイフも要らない契約、初めて見マシタ。」
「そうデシタ!サトウと契約していマシタ。オドシもナイフも要らない契約、初めて見マシタ。」
 「それは、普段 見ている風景が物騒すぎるね…。」
「それは、普段 見ている風景が物騒すぎるね…。」
 「でも、そうだね。モノクマは嘘は言ってないはずだよ。」
「でも、そうだね。モノクマは嘘は言ってないはずだよ。」
 「ボクが嘘を吐いたり校則を破った時点で、コロシアイは即終了!オマエラは自由の身だよ!」
「ボクが嘘を吐いたり校則を破った時点で、コロシアイは即終了!オマエラは自由の身だよ!」
 (もう…即終了なんて約束して…本当に大丈夫なのかな。)
(もう…即終了なんて約束して…本当に大丈夫なのかな。)
コトダマゲット!【コロシアイの終了条件】
△back
『時間になりました!オマエラ、中央エリアの広場に集まってーーと、思ったけど、お茶の準備をしてる人もいるし、ハーブティータイムしてからでもいいよ。』
【中央エリア 宿屋1階】
 (モノクマのアナウンスにより全員が宿屋のレストランに集まった。ローズさん、松井君、夕神音さんが、みんなの前に用意したハーブティーを置いた。)
(モノクマのアナウンスにより全員が宿屋のレストランに集まった。ローズさん、松井君、夕神音さんが、みんなの前に用意したハーブティーを置いた。)
 「君はハチミツ入りだったね。僕や夕神音さんと同じだ。さあ、召し上がれ。」
「君はハチミツ入りだったね。僕や夕神音さんと同じだ。さあ、召し上がれ。」
 「ありがとう、松井君。」
「ありがとう、松井君。」
 (松井君は丁寧な所作で わたしの前にカップを置き、1番 端の席に座った。)
(松井君は丁寧な所作で わたしの前にカップを置き、1番 端の席に座った。)
 (……今までの『ダンガンロンパ』で裁判前にティータイムなんてなかったけど、大丈夫?この場で毒を盛られて誰か死ぬ…とかないよね?)
(……今までの『ダンガンロンパ』で裁判前にティータイムなんてなかったけど、大丈夫?この場で毒を盛られて誰か死ぬ…とかないよね?)
 「ハチミツは美味い!ボーイズビーマーダラス!カレーを食え!」
「ハチミツは美味い!ボーイズビーマーダラス!カレーを食え!」
 「テメー!出やがったな!」
「テメー!出やがったな!」
 「クラーク先生といえばカレー。カレーといえば、ハチミツだよね。思い出すよ、幼い我が子にやってた頃を。」
「クラーク先生といえばカレー。カレーといえば、ハチミツだよね。思い出すよ、幼い我が子にやってた頃を。」
 「カレーの隠し味って、家庭に よらない?」
「カレーの隠し味って、家庭に よらない?」
 「オマエラがニョキニョキ育ったのも、赤子の時からハチミツを与えられたからだろ?」
「オマエラがニョキニョキ育ったのも、赤子の時からハチミツを与えられたからだろ?」
 「人間の赤ん坊にハチミツやっちゃいけないなんて常識でしょ。」
「人間の赤ん坊にハチミツやっちゃいけないなんて常識でしょ。」
 「え!?そうなんですか!?」
「え!?そうなんですか!?」
 「このクニの常識、世界の非常識デス。自分の常識がミンナの常識じゃありマセン。」
「このクニの常識、世界の非常識デス。自分の常識がミンナの常識じゃありマセン。」
 「そうですね。国によって常識は変わります。」
「そうですね。国によって常識は変わります。」
 「常識なんて、人それぞれ。18歳くらいまでに見聞きしたもの それぞれ。」
「常識なんて、人それぞれ。18歳くらいまでに見聞きしたもの それぞれ。」
 「うぷぷぷぷ。その18歳まで、オマエラは生きていられるかな?オマエラの大半は十数年の命…儚い人生だね。」
「うぷぷぷぷ。その18歳まで、オマエラは生きていられるかな?オマエラの大半は十数年の命…儚い人生だね。」
 「あ、でも、元気 出してね!オマエラがコアラなら大往生だよ!張り切って参りましょう〜!」
「あ、でも、元気 出してね!オマエラがコアラなら大往生だよ!張り切って参りましょう〜!」
 (ていうか…キャラは生まれて十数年たってないけどね。)
(ていうか…キャラは生まれて十数年たってないけどね。)
 「…やっぱり、そうやって不安を煽るのが目的っすか。」
「…やっぱり、そうやって不安を煽るのが目的っすか。」
 「わざわざティータイムを取らせた割に、何がしたいのか分からないね。」
「わざわざティータイムを取らせた割に、何がしたいのか分からないね。」
 「ハイハイ!そろそろマターリの時間は終わり!ティータイムの時間はゼロです!今は日常ではなく非日常編なのです!」
「ハイハイ!そろそろマターリの時間は終わり!ティータイムの時間はゼロです!今は日常ではなく非日常編なのです!」
 「学級裁判を始めるよ。オマエラ、中央エリアの広場に集まってください!」
「学級裁判を始めるよ。オマエラ、中央エリアの広場に集まってください!」
 (モノクマは言いたいことだけ言って消えた。)
(モノクマは言いたいことだけ言って消えた。)
 「…行きましょうか。ティータイムの時間はないらしいっすから。」
「…行きましょうか。ティータイムの時間はないらしいっすから。」
 「うん。天海君はゼロっていうかヒロだもんね。」
「うん。天海君はゼロっていうかヒロだもんね。」
 「はい?」
「はい?」
 「わたしは最強カラテ家の日常も見てみたいんだよね。打倒 蘭丸に燃える空手部の後輩としては。空手?で銃弾を避けられる人に勝つのは難しそうだけど。」
「わたしは最強カラテ家の日常も見てみたいんだよね。打倒 蘭丸に燃える空手部の後輩としては。空手?で銃弾を避けられる人に勝つのは難しそうだけど。」
 「…白銀さん。ハーブティー、全部 飲んでから行った方がいいっすよ。」
「…白銀さん。ハーブティー、全部 飲んでから行った方がいいっすよ。」
 (暗に「落ち着け」と示されて、わたしはティーカップを空にした。)
(暗に「落ち着け」と示されて、わたしはティーカップを空にした。)
【中央エリア 広場】
 (全員で広場に向かうと、だだっ広い場所の真ん中に赤い扉が現れた。)
(全員で広場に向かうと、だだっ広い場所の真ん中に赤い扉が現れた。)
 (前回裁判と…これまでの『ダンガンロンパ』と同じように、その先はエレベーターホール。全員が乗り込めば、ゆっくりエレベーターは下降していく。)
(前回裁判と…これまでの『ダンガンロンパ』と同じように、その先はエレベーターホール。全員が乗り込めば、ゆっくりエレベーターは下降していく。)
 (下に沈む感覚は、わたしに『V3』を思い出させた。それと共に、気持ちが深く沈んでいく。)
(下に沈む感覚は、わたしに『V3』を思い出させた。それと共に、気持ちが深く沈んでいく。)
 (また『ダンガンロンパ』の裁判が始まる。)
(また『ダンガンロンパ』の裁判が始まる。)
 (”超高校級の呪術師” 祝里さんを殺した犯人は誰なのかーー……。)
(”超高校級の呪術師” 祝里さんを殺した犯人は誰なのかーー……。)
 (ーー前回ほどの高揚感がない。…のは、きっと前回が1回目だったから。ワクワクもドキドキも、何度も経験すれば慣れるから。それだけ。)
(ーー前回ほどの高揚感がない。…のは、きっと前回が1回目だったから。ワクワクもドキドキも、何度も経験すれば慣れるから。それだけ。)
 (動機とは…”クラスメイト”の記憶なんかとは関係ない。)
(動機とは…”クラスメイト”の記憶なんかとは関係ない。)
 (『ダンガンロンパ』が終わったと思った。でも、わたしは今、ここにいる。)
(『ダンガンロンパ』が終わったと思った。でも、わたしは今、ここにいる。)
 (それは、視聴者が まだ『ダンガンロンパ』を求めているということ。『ダンガンロンパ』の希望を見たいということ。)
(それは、視聴者が まだ『ダンガンロンパ』を求めているということ。『ダンガンロンパ』の希望を見たいということ。)
 (わたしの仕事は、そんな人たちを楽しませること。わたしの全てを懸けて、楽しめるものにするんだ。)
(わたしの仕事は、そんな人たちを楽しませること。わたしの全てを懸けて、楽しめるものにするんだ。)
 (……この、命懸けの学級裁判を。)
(……この、命懸けの学級裁判を。)
コトダマリスト
被害者は”超高校級の呪術師”祝里 栞。死体発見現場は北エリアの図書館1階。死亡推定時刻は、午前2時〜2時半頃。胸に鎌が刺さっている。その他の外傷は見られない。
死体は図書館2階への階段に向かってうつ伏せに倒れている。階段まで自ら這いずった跡があった。
被害者の胸に刺さった鎌。モノクマが”道具”携帯ルールを決めた時、全員に配られたもの。
発見現場である図書館1階の壁にワラ人形が釘で打ち付けられていた。ワラ人形には『祝里』と書かれた紙片も付いていた。
図書館1階の正面ドアは常に開けられているが、死体発見時にドアガードのみが掛けられていた。ドアガードはU字で鉄製。
図書館2階は芥子の宿舎に繋がっている。捜査時間、図書館側からはドアガードが、芥子の宿舎側からは鍵が掛けられていた。
図書館内は防音壁が使われているのか、外に音を通さない。
郷田の宿舎である鍛冶屋の柱にワラ人形が釘で打ち付けられていた。ワラ人形には『祝里』と書かれた紙片も付いていた。
佐藤によると、呪殺の条件は人の顔と名前を覚えてターゲットの名前の付いたワラ人形にクギを打ち付けること。
捜査時間、全員の”道具”は、欠け・重複なく揃っている。
モノクマによると、予備の着替えは10着になるように用意される。捜査時間、全員のクローゼットに10着の着替えがあった。
キッチンの備品はチェックリストで管理されている。チェックリストとキッチンにある備品は一致している。キッチンは夜時間封鎖される。備品の持ち出しは20時間まで。
首吊り防止のため、ステージ内は1ヶ所を除いてヒモが置かれていないらしい。
学級裁判編へ続く
 
  
  
  
  
コメント