Round. 6 おこさんは出であはず
学級裁判 開廷
(真実を明らかにしろ。そう言うモノクマの目が怪しく光る。けれど、ゴン太には何を話していいか分からなかった。)
(みんなも同じだったみたいで、暫く重い沈黙が続いた。)
「このコロシアイが行われている理由…か。」
(沈黙の中で、星君が呟いた。)
「この島が どこであれ、俺たち16人を連れ去ってるんだ。巨大な組織がバックにいることは間違いねぇ。」
「大きい組織…。一体…何のために。」
「金でねぇか?反社会的勢力っちやつは、金ある奴が大体トモダチだろ?」
「しかし、施設などを見るに、既に かなりの金が動いています。その運営費に見合う収益があるんでしょうか。」
「コロシアイでお金を取ると言えば、金持ちの見せ物ですよ!海外ドラマのコロシアイは大体これです!」
「このコロシアイを見せ物にして、お金を取ってた…?」
(そんなの…許せない。)
「そいつら ぶっちめっつぁりゃ、このコロシアイは終わるんけ?」
「えっと…あ、ギッタギタのボッコボコにするんですね!」
「そうかもね。この島…この世界から出て、あいつらを半殺しにすれば〜…って、出られへんのや!」
「脱出できない以上、無理でしょうね。我々の悲惨な状況を訴え、終わらせるよう仕向けるのは どうでしょうか。」
「……コロシアイを見せ物として楽しんでいる奴らに効くとは思えねーな。」
(全員が顔を見合わせる。)
「終わらせることなんてできないよ。視聴者に訴えて終わらせても…結局 復活しちゃうからね。」
「くっ…その見てる人がコロシアイ参加すればいいのに…。」
「むりむり!見てるヤツらは凡人も凡人だからね!殺す勇気も死ぬ覚悟もないよ!だから、人のを見て楽しむんだ。」
「…悪趣味な。」
「それより、こんな無駄な話し合いしてていいの?」
「無駄?おかしなことを言うな。あんたがコロシアイの真実を探れと言ったはずだぜ?」
「うーん。違うんだなぁ。見せ物とか視聴者とか、そんなことは もう分かりきってるんだから。」
「例えば、野伏クンが言ってた黒幕について、オマエラ話し合ってないよね?」
「黒幕…?確かに見せ物であるなら黒幕…運営者がいたはずですが…。」
「そいつら島の外にいんべ。」
「野伏クンは島の中にいると踏んでたみたいだけどね。」
「………。」
「ちなみに、この中のヤツにボクは この言葉を贈ることができるよ。」
「これはキミが望んだコロシアイ。だから負けちゃダメだよ。ーーってね!」
(野伏君は彼女が黒幕だと思ってクロに仕立て上げた。メッセージでは、そう言っていた。)
「名前を偽る人間は過去のコロシアイにも何人かいたけど、その中には黒幕的なヤツもいたんだよねー。」
「…名前を偽ってる人が、このコロシアイの黒幕なの?」
「その可能性があるから疑うことを止めないことだね。考えることが紳士の嗜み。疑うことも紳士の嗜みだよ。」
(モノクマも…黒幕には名前を偽ってる人がいたと言っていた。)
(モノクマや野伏君の発言を思い出していると、桐崎さんが口を開いた。)
「あの…ボク……黒幕じゃありません。確かに皆さんを欺いていました。この事件のクロもボク…です。」
「でも…皆さんの命を弄ぶようなマネ…コロシアイの黒幕なんて…ボクは絶対に…していません。」
(桐崎さんの絞り出した言葉。その声は震えていた。)
(それは、”みんなの声”と同じだった。必死な声。生きたいと願う声。信じて欲しいと叫ぶ声。)
「うぷぷ。どうだろうね。オタク枠って、何の役割も果たさず退場できないからさ。黒幕って役割があったのかも?」
(高橋君が言ってた。考え抜くことが紳士の嗜みだって。モノクマが言ってた。疑うことも…紳士の嗜みだって。)
(それなら、ゴン太はーー…)
1. 桐崎を信じる
2. 桐崎を疑う
「オタクってのは、マンガみたいに涙で蘇ったり、ゲーム世界でチートこいたり、模倣犯したりするんだよ。」
「あと、脳を壊すアニメ作ったりね。オタクこわ。オタクに優しいギャルもオタク扮するギャルもフィクションだよ!」
(……ゴン太は、ゴン太が信じたいものを信じる。)
△back
「桐崎さん、ゴン太は桐崎さんを信じるよ。」
「ゴン太先生…!」
(ゴン太が言うと、桐崎さんの顔がパッと明るくなった。)
「ああ。初めてコロシアイの黒幕がいるんじゃないかと3回目の裁判で言及したのは桐崎だからな…。」
「星先生…!」
「黒幕なら黒幕が島内にいるなんて話は避けそうですからね。わたくしも別に疑っているわけじゃございません。」
「桐崎さは黒幕だと思われて野伏さにハメられただけだろ。」
「華椿先生…伊豆野先生。ありがとうございます。」
「甘いなぁ。オマエラって、マジパンのように甘いよ。」
「マジパンは甘いというか独特な味ですけど。」
(モノクマが「やれやれ」と肩をすくめる。それから、何でもない風に こう言った。)
「ま、いっか。どうせオマエラの中に運営者側の人間なんていないけどね。」
(一瞬 何を言われたのか分からなくなるくらい、軽い口調だった。それに苛立ったように、星君が低い声を発した。)
「…それなのに わざわざ議論させたのか?」
「いや〜、青春サツバツとかアオハルギスギスとかが見たくてさ〜。」
「相変わらず趣味が悪いべ。」
「……相手にしていたらキリがありませんね。」
「うう…クマに踊らされる人生になるとは…。」
「うん。ま、ここに運営者ロールしてるのはいないよ。死んだヤツらの中にもね。それは、次回のお楽しみ。」
「次回…?」
「さて、黒幕がいないってことで、このコロシアイにおいて、オマエラは皆イーブンな関係!」
「win-winの関係と言っても過言ではないよ!今度は、このコロシアイが何だったのか。それを解き明かす時間だね。」
「解き明かすって…」
「さっきも言っていたように…見せ物だったのでしょう。クロ候補生と他の高校生を集めてコロシアイをさせる…。」
「うぷぷぷぷ。」
「何が おかしいんだ。これで正解なんだべ?オラたつはコロシアイになんて乗らね。家に帰せ。」
「うぷぷ。知らないことは、幸せだね。」
「……。」
「どういうこと…?まだゴン太たちが知らないことがあるの?」
(モノクマのニヤケ顔に投げかける。モノクマは反応しなかったけれど、違う方向から冷静な声が飛んできた。)
「モノクマが言ったイーブンな関係ってのは引っかかるな。俺には どうしてもwin-winとは思えねーんだが。」
「星君、どういうこと?」
「どう考えても、このコロシアイの16人はイーブンじゃねー。まず、クロ候補生と他の8人の持つ情報に差がある。」
「ボク達…クロ候補生は、初日から他の皆さんとは異なる情報を持っていました。」
「ああ。それに、殺人の前科があるクロ候補生とない候補生じゃ、明らかに有利不利がある。」
「…ええ。わたくしや野伏さん、高橋を名乗っていた殺人鬼と他のクロ候補生では違いがありますね。」
「華椿さは脅威でねぇから安心しろ。」
「そっか。全然 対等とは言えないんだ。」
「それは仕方ないよねぇ。平均的で平凡な高校生と殺人鬼を一緒に囲うのも慣習というかー。」
(またモノクマが訳が分からない言葉を被せてきたけど、星君は構わず続けた。)
「そして…明らかに16人がイーブンじゃねー理由。1人、確実に他とは違う…特別扱いを受けた奴がいるだろ。」
(星君がゴン太を見つめる。ゴン太の答えを待っているのだと分かった。)
▼星が言う特別扱いされた者とは?
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「しろがーねーのーやーいばに変える♫おーいてきたものーがたりとー」
(ど…どうして急に歌い出したんだろう。)
「あれ?知らない?やっぱり刃は白銀より鉄だよね。」
△back
「……。」
「ゴン太しか…いないよね。モノクマに“イレギュラー”と言われたゴン太。星君は、そのことを言いたいんだよね。」
「ああ。」
(星君の瞳を見つめる。そこに、迷いはない。)
(けれど、ゴン太を見る眼差しに疑いや敵意がないことも見てとれた。)
(”森の両親”の瞳を思い出した。星君はゴン太を信じてくれている。そう思えた。)
「…ありがとう、星君。ゴン太は”イレギュラー”。まずは、これについて考えていこう。」
(ゴン太が言うと、星君は安心したように笑ってくれた。)
「…ああ。」
「獄原さんが”イレギュラー”。この情報はモノクマの罠だったのではなかったのですか?」
「だべ。獄原さが野伏さに殴られたんも、モノクマのせいだべ。」
「”イレギュラー”だったとしても、特別な訓練を受けたヒト科だったってだけですよね?」
「『このコロシアイにおいて…ゴン太が”イレギュラー”』…それなら、何のイレギュラーなのか。」
「もし本当に、このコロシアイがイーブンだったとすると…ゴン太は”イーブンではない何か”だったってことだ。」
「運営者が俺たちをカテゴライズした中での”イレギュラー”。どういう可能性が浮上してくる…?」
「残念ながらゴン太クン、ここの運営者がヒイキを作って特別扱いすることはないんだ。」
「主人公もヒロインも容赦なく!コロシアイをリスタートして前回生き残りも容赦なく!それがモットーだからね。」
「……。」
△back
「そっか…。クロ候補生だけじゃなく、他の人も何かのグループだったんだ。」
「ああ。…もしゴン太が そのグループにも属さないなら、その意味で”イレギュラー”だったのかもしれない。」
「えっと…えっと…?」
「クロ候補生や獄原さん以外の皆様方もカテゴライズされていたと…?」
「何だべ?オラや星さに共通点があったっちことけ?」
「そうだ。三途河、火野、虎林も、最初に死んでいた2人も。」
「死体で発見された狩野さんと…」
「野伏先生が殺し、ボクが焼いた…本物の高橋 実先生…ですね。」
「この7人に共通点があったということですか…?性格も才能も全く違いますが…。」
「んだなぁ。オラと星さに共通点があったっつーだけでも、ピンとこねぇ。」
「ああ…。外見や才能だけじゃ、俺も そう感じただろうさ。」
(死んだ5人と、星君や伊豆野さんの共通点?)
「虫にも人にも避けられる人生だわ、アハハハハ!」
「実は…俺ァ、火が怖ェんだ。」
「今までは夜、余計なこと たくさん考えて、眠れなくなってたんだ。」
(もしかして、みんな…抱えているものがあったのかもしれない。)
1. 夢や希望
2. 金銭トラブルや借金
3. トラウマや辛い過去
「フッ…人間 何かしら抱えて生きてるもんさ。十数年も生きてりゃな。」
「星先生の場合、十数年だけとは思えないんですよね…。」
(2人が遠い目をしている…。考え直そう。)
△back
「そっか…。」
(ゴン太は呟いてから、星君と伊豆野さんを見つめた。すると、星君が口の端だけ持ち上げて笑った。)
「…俺は、過去の過ちに縛られている。何なら、いつ死んでも構わねー。」
「え…星先生…。」
「クロ候補生が犯罪に長けた集団で、殺人の知識や動機も十分。それなら…俺たちのグループは狩られるだけか?」
「生きたいのに狩られるだけ。それじゃwin-winとは言えねぇ。俺たちは…生存意欲が薄い集団だったんじゃねーか?」
「……。」
「せ、生存意欲が薄いって、何なんですか?死にたいと思ってるグループ…そんな風に聞こえるんですが…。」
「月が綺麗ですね。死んでもいいわ!なのか。ひゃっほーゴミ人間で〜す、死にた〜い!だったのか!?」
「……伊豆野さん。貴女様は?死にたいだなんて…嘘ですよね?」
「……オラ、死にてぇなんて思ってね。」
「誤解するな。俺も無駄に命を差し出す気はねー。そうすべき理由があるなら死んでも構わねーと思ってるだけさ。」
「……。」
「そ、そんな…おかしいですよ。デ、デスゲームってのは、生存意欲が強い人間が集まるからこそなんですよ?」
「そんな希死念慮集団がいたら…見せ物として成り立ちません!」
「うん。そうだね。だから、死にたい気持ちは消去したんだ。」
「え!?」
(モノクマが事もなげに言った言葉が、裁判場に響く。唖然とするゴン太たちを無視してモノクマは続けた。)
「7人の強い希死念慮は邪魔だから消させていただきますた。今は死にたい気持ちを忘れてるってだけなんだよね。」
「……何を言ってる?」
「どういうことだべ。」
「だーかーらー、オマエラが死にたいと願った記憶や気持ちは消しちゃったの!」
「消しちゃったって…そんなフィクションじゃあるまいし…。」
「ま、それに関しては、ご想像に お任せします。」
「お待ちなさい。死にたがっている人間を見つけて拉致し、記憶を消去したなど…本気で言っているのですか?」
「そうです!いくら大金はたいてコロシアイ見たい変態がいたとしても!そんな…どこまでも手の込んだことを!!」
「…ああ。現実的じゃねーな。」
「うぷぷ。現実的じゃないのは当たり前なんだけどね。ま、いいよ。捕まえて島に放り込むことも可能だけどさ…」
「わざわざしないよ、そんなこと。だって、このコロシアイはwin-winで成り立っているんだ。」
「まさか、星君たちのグループはーー…」
2. 賞金目当てで参加した
3. 自分の意思で参加した
「オーディションみてぇなもんがあったとでも言うのけ?」
「あり得ませんね。却下です。」
「ご、ごめん。もう1度 考えるよ!」
△back
「7人は…この島に自分の意思で来た?」
(ゴン太が信じられない気持ちで言葉を吐き出すと、モノクマは手を叩いて喜んだ。)
「せいか〜い!!7人は死にたい気持ちが弾けて混ざって、死に場所を求めて ここに来た渡り鳥でした〜!」
「俺たち7人が…自殺志願者だって言いてーのか?」
「うんうん。びっくりだよねー!キミは生きるのに消極的なだけ…じゃなくて、積極的に死にたい人だったんだよ!」
「周囲の人々を殺され、復讐を果たして絶望していた星君。その絶望を少しだけ消しておいたんだ。」
「例えば、贖罪として刑務所にいたって記憶の上書きをしてね。」
「………。」
「親であり師匠の虐待じみた教育に追い詰められてきた伊豆野さんの記憶も、多少 上書きして明るくしたよ。」
「本当は もう限界で、でも監視下に置かれてるから死ぬことも許されず、誰かに殺してもらうために島に来たんだよ?」
「………。」
「えっと…2回目の事件の被害者の三途河先生も?3回目の火野先生、前回の虎林先生も…ですか?」
「うん。人間関係を笑いで誤魔化す人も、過去の失敗がトラウマの人も、気を遣いすぎて身も心も壊れちゃった人も。」
「……そんな。」
「みーんな、募集かけたら自分から応募して来てくれたんだよ!死ぬために、ね!」
「ちなみに、最初に死んでた狩野さんとAI枠も、そういう設定です!」
「死にたがりさんの死にたい記憶は薄く伸ばしてパリパリにしてるから、死にたいなんて言い出す人いないけどね。」
「……。」
「……。」
「ありゃ?死にたい2人は絶望顔だね?思い出しちゃった?死にたい気持ち。」
「皮肉だよねー。死にたかったから この島に来たのに、死にたくない状態にされて死ぬなんて。」
「7人は死にたがりさん。8人のクロ候補生は殺したがりさん。死にたい人と殺したい人とのマッチングの場。」
「それが、このコロシアイだったんだよ。デスマッチというより、デスマッチングだったのでーす!」
「……お待ちなさい。殺したがりとは何ですの。わたくしは依頼でもないのに殺しは致しません。」
「…依頼であっても殺せたことはありませんが。」
「そ、そうです!ボクだって殺人なんてしたくない…!……したくなかったです!」
(楽しそうな演説に抗議した華椿さんと桐崎さん。2人の顔を交互に見たモノクマは、やはり嫌な笑顔で言った。)
「自分から島に来たのは、死にたがりグループだけだと思ってる?」
「なっ…」
「ど、どういう?」
「ーー!も、もしかして…。」
「そう!クロ候補生も応募したら集まった人材なんだよ!『殺したい人、集まれ!』ってね!」
「そんなはずありません!ボクは殺したい気持ちなんて…!」
「殺したい気持ちも薄く伸ばしてパリパリにしてるんだよね〜。」
「盗人猛々しい桐崎さんは、死体から拝借から死体を作って拝借する人にキャリアアップしたかったらしいよ。」
「そんな…はず…。」
「失敗続きの華椿さんは、この島を修行と捉えて参加したんだよ。『上手に肉を削げるようになりたい』んだって。」
「……。」
「他の候補生たちも、そう。家業だけじゃやってけなくなって、ワラを掴む想いでコロシアイに参加したんだよ。」
「野伏クンとか、殺人鬼クンとか、天性の殺し人みたいな人もいたから、みんながレベル1じゃなかったけどね。」
「……。」
「……。」
「うぷぷぷぷ。言ったでしょ?これはキミが望んだコロシアイっす。だから負けちゃダメっすよ。って!」
「ゴン太クンがイレギュラーってのは、そういう意味だよ。キミだけ、自分にも他人にも殺意はなかった。」
「……。」
「いつもと違うって、再三 言ったけどね。一応、動機もルールも既に組み込まれていたのさ。」
「人間関係も、思い出も、欲望も、裏切りも、全部…既に仕込み済みだったからね。」
「3章でありがちな分断も、4章で よく見る自己犠牲も、スタート時点で仕込まれてたんだ。」
「いつもと違うコロシアイと言っても、伝統は守らないとね。今まで受け継がれたものってのがあるからさ。」
「地獄先生に憧れて小学校の先生に。殺せない先生に憧れて中学校の先生に。」
「ボクに憧れて学園長に。意志は受け継がれていくのさ。」
(みんなは黙り込んで俯いている。裁判場内を支配するのは、楽しそうなモノクマの声だけ。)
(そんな様子に満足したように、モノクマは更に笑い声を響かせた。)
「うぷぷぷぷ…アーッハッハッハッ!!…というわけで、いつもの2択を迫りましょうか。」
「2択…?」
「オマエラをこの島から解放してやるよ。ただし、クロ候補生は それ以外の誰かを殺した後に。」
「なっ……」
「桐崎さんも。残った3人の中から選んで殺せたら、特別の特別で、おしおき免除の上 解放してやるよ?」
「……っ!」
「何を…。島から出るために…更に2人を犠牲者に出せと…?」
「うんうん。昨今のコロシアイに2人の犠牲者は付きものだからね。」
「……そんなの…。」
(桐崎さんが「できるわけない」と呟いてから、裁判場が鎮まりかえった。重い沈黙の後、口を開いたのはーー…)
「……俺は犠牲になっても構わねーぜ。」
「星…君…っ!」
「桐崎…華椿。あんた達が外に出るために この命を使うなら…悪くねーさ。」
「うんうん。昨今のコロシアイでは命を使うのがトレンドだからね。」
「特に桐崎は そうでもしねーと、おしおきを受ける。あんたは俺を殺すべきだ。」
「そんなの…っ、できるわけ……。」
「それ以外、あんたが生き残る方法はねー。」
「嫌です!絶対に嫌です!!お父さんみたいな星先生を殺せるわけ、ないじゃないですかっ!」
「……華椿、あんたは どうだ?」
「……。」
(耳を塞いで黙り込んだ桐崎さん。星君は溜め息を吐いて、華椿さんを見やる。けれど、)
「冗談じゃね。」
(伊豆野さんが口を挟んだ。彼女は至極 不機嫌そうに短く言った。)
「華椿さは殺したくても殺せねー人だ。星さのことなんて、余計 殺せね。星さを殺させるくれぇなら…」
「オラを殺せ。」
「なっ…、伊豆野…さん!」
「オラは生まれた時から師匠のマリオネットだ。こん島から出ても自由にはなんね。分がってた…はずなんだ。」
「…どうせ捨てようとした命らしいかんな。華椿の初めての殺人。オラで そいつを成し遂げでみれ。」
「な、にを…馬鹿な…そんなことならっ、わだぐじ、ごの島から ずっと出られなくてもいい!!」
「そう…ですよ。皆さん、この島で仲良く暮らしましょう。外の世界が辛いというのなら、出なきゃいいんです!」
「ダメだ。あんたは それができねー。俺を殺すしかねーのさ。」
「それでも!2人犠牲になるなら、ボク1人の方がいいでしょう!?」
「………。」
(ゴン太は何も言えなかった。島で生きるか、島から出るか。どちらにも、犠牲者が必要だったら。)
「意見が真っ二つに割れてますな〜!じゃ、マッチング余りのゴン太クン。」
(息が詰まって喋れないゴン太を見透かしたように、モノクマは「どう思う?」と笑った。)
「もしキミ以外が犠牲者に選ばれたなら、キミも島から解放されるよ!」
(ーーこの島から出られる。それは…星君と伊豆野さんを犠牲者にした時。)
「キミだけは好きで ここに来たワケじゃない…という設定だからね!島から出られる方がいいでしょ?」
(ーーこの島に住み続ける。それは…桐崎さんのおしおきの後。)
「そんなの…」
(そんなの…選べるわけないよ。)
「ゴン太。俺は死にたいわけじゃねー。誰かのためなら命を差し出すってだけだ。無駄な死ではねーはずだぜ。」
「無駄死にですよッ…!ボクなんて助けたって…!ただの盗人…何の得にもなりません!」
「オラは島から出たって、いずれ師匠に ぶっちめっつぁれる。あいつらにされるくれーなら、華椿さにされてぇ。」
「や、やめてくださっ…伊豆野さん。わたくしは…貴女様に生きてて、ほしい…。」
「どうするー?島から出たいなら前者。死人を減らしたいなら後者だよねー!」
(ブヒャヒャヒャヒャとモノクマが笑った。)
(ゴン太はーー…)
1. 犠牲者を選出して島を出る
2. この島で永遠に暮らす
3. 放棄する
「絶対 殺しませんから!ボクは不殺の誓いをーー…立てたことはありませんが、何か そんな感じですから!」
「ええ。わたくしが人様を殺したら…アイデンテテーがなくなります。わたくしは 殺せずの誓いがありますから。」
「……。」
△back
「よく考えてみろ。あんただって、島から出たいだろ?ここは命を使う時だぜ?」
「簡単な話だろ?死にてぇ奴が死んで、死にたくねぇ奴が生き残るだけだ。『モチついて胃もたれつ』だべ。」
「……。」
△back
「ゴン太は…ゴン太には…分からないよ。」
(ゴン太が やっと絞り出した答えは、そんなものだった。)
「フッ…。ここに来て、考えることを放棄するのか?あんたらしくねーな。」
「考えられない。選べない。紳士的じゃないかもしれない…でも、今から死ぬ人を選ぶなんて、できない!」
「死ぬのはボク1人でいいでしょう?島暮らしも悪くないですよ!ほら、ボクら、みんな島国出身なんですから!」
「ゴン太は、誰の命も諦めたくない!紳士的じゃなくても!みんなを守りたいんだ!!」
「守りたい人間が…死にたい人間だったら どうすっだ?」
「分からない。どんなことがあれば生きていられないくらい本当に辛いのか。でも…ゴン太は そんな人も守りたいよ。」
「多数決は過去の紳士が勝ち得た権利。はっきり貴方様の意見を仰って!」
「………。」
(みんながゴン太を見つめる。必死に訴える目。誰かを守りたい想い。)
(この目を、ゴン太は知っている。)
「ここから出たら、みんなで友だちになろうよ!」
「アタシは…何をしてでも、ここから出なきゃなんねーんだ。」
「オレは、まだゴン太を信じるぞ!」
「ゴン太はバカだなー。」
「ゴン太くん、キミはキミが思ってるよりも凄い人だよ。」
「ゴン太は…もう考えないよ。犠牲者も選ばないし、桐崎さんも死なせない。」
「思考を放棄するな。あんたはーー…」
「ゴン太は、みんなを守る!絶対に!何をしてでも!」
「ゴン太先生…無理です。ボク、は…も、死ぬ覚悟…できてーー…」
「自分に吐く嘘は止めてよ!桐崎さんのおしおきは…絶対 阻止するから!」
「獄原さん…。気持ちは分かりますが…わたくし達がモノクマに勝てるとは思えません。」
「ゴン太は自分が信じたいものを信じる!そうしたら…不可能も可能になるはずだから!」
「…上手くいったとしても…島の外に夢も希望もねぇだ。ほっといてけろ。」
「それじゃあ…ここから出たら、みんなで友だちになろうよ!」
「……っ!」
「外に出たら、ゴン太と友だちになってよ!毎日 色んな所へ行って、色んなものを見て、聞いて、食べて…楽しもうよ!」
「ゴン太の仲間が…仲間たちが、そう言ってくれたんだ。」
「………。」
「真実から逃げちゃダメだって。死んだ人たちを思うなら、精一杯 生きなきゃダメだって。」
(ゴン太が話し終えると、裁判場が一瞬だけ静かになった。その後、星君が静かに言った。)
「…奇遇だな。そういう奴らを…俺も知っている気がする。」
「……。」
「……。」
「……。」
「フッ…どうやら、思考放棄してたのは俺の方らしい。」
「星先生…?」
「モノクマの提示した2択に従う必要はねーさ。俺たちで最善の選択をしちまえばいいんだからな。」
「最善の…選択?」
「ボク1人が死ぬのが最善じゃないですか?」
「いや、誰も犠牲者は出させねーし、桐崎も処刑させねー。ここから出て、華椿の家族全員も救い出す。」
(そんなことを言って、星君はニヤリと笑って見せた。その目には強い光が宿っている。)
「そんなこと…」
「できねーと思ってちゃ、できねーのさ。」
「うん、そうだよ!みんなで力を合わせれば、きっと…!」
(ゴン太が叫ぶと、みんなが顔を上げてくれた。)
「……。」
「……。」
「……。」
(その顔が妙にスッキリして見えて、少し安心した。)
「あー、終わった感じ?ふー、やれやれ。長くも短くもない、ありふれた演説だったね。」
(モノクマは鼻に指を入れて横になりながら面倒臭そうな声を出した。)
「最近、希望っぽい演説 聞くだけで鳥肌が立っちゃうんだよね。」
「…クマのくせに鳥肌立たないでしょう!いい話に水を差さないでください!」
「んだんだ。ようやく、みんな気持ちが1つになってきただに。」
「そうです。今ここで『希望』は何よりも必要です。」
(女性陣はモノクマに反発して、それからゴン太を見た。)
「ええ〜!?ゴン太クンが希望!?イレギュラーだから?うわー、ご愁傷様。みんなと違うだけで担ぎ上げられて。」
「それで?どうなの?どうするの?」
(モノクマは嘲笑を浮かべながら、こちらを見やる。ゴン太は みんなと頷き合って、答えた。)
「ゴン太たちは…犠牲者を選ばないよ。」
「いいの?星クン、伊豆野さん。死ぬチャンスだよ?」
「フッ…。どうやら最善が変わったからな。俺の命の出番じゃねー。」
「島の外に生きたい理由ができっかもしんね。できる予感がすんだ。」
「いいの?華椿さん。キミは誰も殺してないから、一家は大変な目に遭うよ?華族の家族がー!?ってなるよ?」
「……助け出します。皆様がいれば、できる気がします。」
「いいの?桐崎さん。キミには、おしおきを受けてもらうよ?」
「……だ、いじょうぶです。そのつもりでしたから。」
「…大丈夫、桐崎さん。ゴン太は桐崎さんも、絶対に死なせない。」
「オッケー!じゃ、お待ちかねの投票タイムに参りましょう〜!」
「………。」
(裁判場に緊張が走る。ゴン太は目の前の投票画面に手を伸ばした。)
学級裁判 閉廷
「大正解〜!!」
「”超高校級の修験者” 野伏 茸クンを殺したクロは…”超高校級のミステリー研究部” 桐崎 ゴンベーさん(仮)でした〜!」
「…これで、父だけは助かるんですね。」
「うん。野伏クンはクロ候補生だったからターゲットじゃないけど、1人は殺したことだし、家長は助けてやるよ。」
「……。」
(桐崎さんの肩から少し力が抜けたのが見えた。)
「桐崎…くどいようだが、あんたも死なせる気はねーよ。」
(言って、星クンが身構える。)
「先延ばしちゃったけど、ようやく罪を償えるね?それでは、お待ちかねの時間です!」
「”超高校級のミステリー研究部” 桐崎 ゴンベーさん(仮)のために、スペシャルなおしおきを用意しました〜!」
「…ゴン太、桐崎を守れ!」
(瞬間、星クンが席を飛び越え、弾丸のような速さでモノクマに向かっていく。ゴン太も桐崎さんの元へ走った。)
「星先生!ダメです!!」
「おしおきタ〜イム!…ありゃ?」
(桐崎さんの星君を制する声と、モノクマの楽しげな声は ほぼ同時だった。)
(モノクマが握るハンマーの先には何もない。)
「このスイッチがなけりゃ、おしおきはできねーんじゃねぇか?」
(素早く桐崎さんの元に降り立った星君の手には、おしおきの時いつもモノクマが押していたスイッチがあった。)
「…あ!」
「そ、そうです!あれが、おしおき装置の起動に必要なのですから!」
「奪っちまえば、こっちのもんだべ!」
「……。」
「……。」
(星君とモノクマ。対峙する両者の間に緊張感が漂っている。モノクマが顔を歪ませてーーそして、笑った。)
「うぷぷぷぷ。」
「…何を笑ってる?」
「バカだなぁと思って。そんなスイッチ、ただのパフォーマンスだよ。サイコポップな雰囲気を出してるだけ。」
「…ッ。やっぱりか。」
「それでは、改めまして〜おしおきターイム!!」
(明るいモノクマの声と共に飛んできた鎖。クロを連れていく鎖だ。それは真っ直ぐ こちらに向かいーー…)
(弾かれたように、モノクマの方へ飛んでいった。)
「う、うわぁ、なにをする〜。」
「スイッチがなくてもいいことくらいは想定内だぜ?」
(星君の手には、クロ候補生について書かれていた冊子。それを使って、彼は鎖を跳ね返したみたいだ。)
「むむむ…。神聖なクロ候補生の書物をテニスのラケット代わりにするなんて!いけないんだぞ〜!」
「ちっ。獄原!」
「うん!」
(モノクマが言うやいなや、無数の鎖が桐崎さん目がけて飛んできた。星君が それを打ち返す。)
(いつもの鎖。カラフルな鎖。奇妙な動き方で飛んでくる鎖。鉄球の重りが先端に付けられた鎖。)
(様々な鎖を星君が返し、取りこぼされた鎖を壊しながらゴン太は桐崎さんを守った。そして、)
(やがて、鎖は飛んでこなくなった。)
「フッ…。どうやら底を尽きたようだな?」
「むむむむむむ…。こんなのズルいよ!よってたかって、いたいけなクマの仕事を邪魔しちゃってさ。」
「何を言ってるのです。人の命を奪おうとしているくせに。」
「あんまりだよ。ボクは”みんな”のために頑張ってるだけなのに。」
「なーにが頑張ってる、だ。もっと真っ当に頑張れねーだか。」
「もう…もう…ルールを守らないんなら、モノクマ怒っちゃうんだからねー!!」
「な、何がルールですか!ただの独裁者のくせに!」
「校則違反をモノともしない生徒たち怖い!助けて〜グングニルの槍〜!!」
(プルプル震えていたモノクマが大声で叫んだ。)
「しまっ…!」
(ゴン太が気配を感じたのと、星君が叫んだのは、同時だった。)
(”それ”は、深く深く彼女を突き刺した。)
round. 6 おこさんは出であはず 完
第零章に続く















コメント
更新ありがとうございます♪
殺したい人と死にたい人のマッチングってそんな…わざわざ死にたい気持ちを薄くしてみたり、誰か犠牲にしないと出られないって言い出したりするモノクマの性格の悪さが憎いです(TT)
でもそれでこそモノクマであってダンガンロンパなんですけど、やっぱり憎たらしいーー!
星くんはともかく、伊豆野踊子ちゃんは悲壮感があんまりなかったのもあって何のためのコロシアイなのかなかなか分からなくて面白かったです。
あと少し、残りも楽しみにしています◎
コメントありがとうございます!モノクマの性格の悪さや憎たらしさは研究頑張っているので、そう言っていただけて嬉しいです^_^ゴン太の相棒を星君にした時点でオチが決まってしまった本作も、残すところはエピローグのみとなりました。本当に最初から最後まで応援いただきありがとうございました。ラストまでお楽しみいただければ幸いです◎