「見る(他動詞)」と「見える(自動詞)」の違い
外国人には区別が難しい「見る」と「見える」。どのような違いがあるのでしょうか。まずは、「見る」と「見える」の意味、文法や活用を見てみましょう。
「見る」の意味・活用・例文
「テレビを見る。」「映画を見る。」「患者の様子を見る。」
「見る」とは、意図的に目を使って何かを観察する行為を指します。
文法用法・活用:他動詞。2グループ(上一段活用動詞)
「見える」の意味・活用・例文
「富士山が見える」「海が見える部屋。」
「見える」は自然に目に入ってくる状態を表す自動詞。意識せずとも何かが視界に入る状況を指します。
文法用法・活用:自動詞。2グループ(下一段活用動詞)
「見る」と「見える」は自動詞と他動詞の違い
自動詞とは、行為がそのまま完結し、特定の対象を必要としない動詞です。他動詞は、行為の対象が必要で、その対象に対して行動を行う場合に使われます。
「見える」は自動詞で、何かが自然に視界に入ることを表します。「見る」は他動詞で、意図的に視線を向ける行為を示します。
「見える」が使われる例と英語翻訳
「見える」は、自分の意思に関係なく視界に入ってくる状況や、感覚的に知覚できることを表す際に使われます。以下はその具体例です。
(ビデオ通話などで)見えますか?
ビデオ通話などで確認するシーン。あなたはビデオ通話で相手に電話しましたが、カメラがオンになっているか分かりません。こんな時に使うのが、「見えますか?」(Can you see me?)これに対し、「見えます/見えません」と答えますね。
山が見える
新幹線に乗って、窓を見たあなたは、高い山を見ました。そんな時 「窓から山が見える」(I can see the mountain from the window.)と言うことができます。
星が見える
山に来たあなたは空を見上げました。その空には星が輝いています。 「星がきれいに見える」 (The stars are visible in the sky clearly.)
未来が見える
あなたは彼/彼女に結婚を申し込みました。彼/彼女はうれしい返事をくれました。 「彼女の言葉から明るい未来が見える」(I can see a bright future from her words.)
気持ちが見える
友だちが落ち込んでいます。 「彼の表情から悲しみが見える」 (I can see sadness in his expression.)
「見る」「見える」と 「見られる」の違い
日本語を勉強する外国人(特にヨーロッパ言語が母語の人)にとって間違えやすいのが「見える」と「見られる」の区別。ここで、「見られる」の文法用法と「見える」と「見られる」の違いを確認しましょう!
「見られる」可能形
「今なら映画が1000円で見られる。」 (I can watch the movie now.)
「今日は晴れているから、富士山が見られるはずだ。」(We can see Mt. Fuji, because it’s sunny today. )
ここでは「見られる」が可能動詞として使われており、「~することができる」という意味です。「見られる」は、英語の「can see」や「can watch」に相当します。
「見られる」受身形
「隠していたテストを見られた。」(My mom found the test I was trying to hide.)
「彼に見られるかもしれない。」 (I might be seen by him.)
ここでは、「見られる」は受け身を意味しており、誰かに自分または自分のものが見られる状況を指します。英語では「be seen by」に対応します。
「見える」と「見られる」の違いと使い分け
英語ではどちらも「can see」で表されるため、日本語を勉強する外国人には区別しにくい「見える」と「見られる(可能形)」。外国人に説明する時は、以下のように説明するとわかりやすいでしょう。
見られる:見よう!見たい!と思って、見ることができる。
見える:見よう!見たい!という気持ちは少ない/ない。自然に目に入る。
「見る」「見える」と「見せる」の違い
「見せる」は、他人に何かを意図的に見させる行為を指す他動詞です。これは「見える」や「見る」とは異なり、他人に対しての行為です。相手に見てもらうことが目的で行う行動であり、英語では、「to show」に当たりますね。
「友達に写真を見せる」(I show a photo to my friend.)
「新しい服をみんなに見せる」(I show my new clothes to everyone.)
「他人に対して」の「見せる」と「見させる」も実は違いがあります。
外国人への「見える」「見る」「見られる」の教え方
特に英語やヨーロッパ言語を母語とする人々は、「見る」という言葉をその注目度で区別します(see, watch, look atなど)。そのため、日本語における区別の仕方は理解しにくく、教え方に工夫が必要です。
それでは、どのような工夫をすれば良いのか?ここで、外国人への教え方のポイントを見ていきましょう。
視覚的な例を使う
絵や写真を見せながら、「見る」と「見える」の違いを示します。
例えば、「この写真を見てください(look at this picture)」と指示し、その後、「写真の中に何が見えますか?(what can you see in the picture?)」と質問します。
英語との比較で理解を深める
「見る」は「to see」や「to watch」に対応し、「見える」は「can see」や「is visible」に相当することを示します。「見られる」は「can see」「can watch」または「be seen by」に対応します。
文法的な構造を意識する
自動詞と他動詞の違いを説明し、具体例を使って練習します。「見る」は意図的に行う行為であり、「見える」は自然に視界に入ることだと理解させます。
『みんなの日本語』では、「見える」を勉強するのは27課。しっかり自動詞と他動詞を勉強するのは29課ですね。
「見る」と「見える」の違いは例文や英語、自動詞他動詞で理解
「見る」と「見える」の違いは、日本語の学習者にとって難しいポイントですが、英語との比較や自動詞・他動詞の理解、視覚的な説明や例文を使うことで理解しやすくなります。
また、可能形や受け身形の「見られる」についても、具体的な文脈を通して教えることで、より深い理解が得られるでしょう。
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