第二章 少年よ、殺意を抱け 非日常編
「またまた殺人が起こったね!昨今のキレやすい若者には、のんびり牧場ライフを楽しむなんて無理だったかー!」
(モノクマが笑いながら、前回と同じファイルを配る。アナウンスで集まった全員、無言で受け取った。)
(被害者は”超高校級のジムリーダー” 郷田 毅。)
(死亡推定時刻は午前1時頃。死因は胸部を刺された出血によるショック死。側頭部に打撃痕がある。)
(ーー本当に、また殺人が起きてしまったんだ…。)
(被害者の死体に目を向ける。)
(胸から腹まで血に塗れ、岩に寄りかかった体。その手には、何故か引きちぎられたヘビの人形が握られていた。)
「さあ、ではでは!はりきって捜査を開始してね!」
「あ、そうそう。もう今回の動機について、クラスメイト以外と共有してもいいよ!」
「ただし、直接モノパッドを見せるのは禁止!」
(そう言い残して、モノクマは上機嫌に去って行った。)
コトダマゲット!【モノクマファイル】
「けい、大丈夫なの?」
「あ、ああ…。犯人に何かで殴られたんだけどよ…。」
「犯人の顔を見たのかしらぁ?」
「いや…。郷田の姿を見た時、後ろから殴られたからさ…。」
「………。」
「……本当に、君は被害者なのかね?」
「は?」
「この扉、中カラ、鍵ありました。」
「完全 密室、完全 密閉。」
「外にいた人間に、郷田さんを殺すのは不可能ですわ。」
「え?いや、な、何言ってんだよ!?」
「な、永本さん、もしかして…郷田さんを……?」
「ち、ちげーぞ!?オレじゃねーよ!?」
「…みなさん。とりあえず、今は情報を集めるのが先決です。また手分けして捜査しましょう。」
「また、4人コウドウですカ?」
「今回は、きっといないね、共犯者。」
「フム。今回は確かに共犯者がいる可能性は低いね。」
「では…2人か3人で行動しても問題ないでしょうね。」
「あ…みんな、その前に…みんなのクラスメイトについて教えてほしいんだけど。」
「今回の動機でやんすな!」
(クラスメイト…今回の動機…。この事件にも、動機が関わっているのかな…。)

「……。」
「ぼくは、光太君と…あと、妹子とクラスメイトだったよ。…ね、光太君。」
「はい!!自分は哀染先輩と妹尾先パイとクラスメイトでした!」
「クラスは “超高校級”の生徒ばかりで、デザイナーやパイロット、花屋、Vチューバーなんかがいましたね!」
「私は、松井君とローズさんと同じだったのよねぇ。」
「そうだね。僕らのクラスも全員 “超高校級”だ。探偵、ゲーマー…あと毎年1人選ばれる”超高校級の幸運”もいたね。」
「ユガミネとマツイの言う通りデス。」
「わたしのクラスメイトは、この中にいませんでした。ですが、やはりクラスは全員が “超高校級” でしたね。」
「この場所に合いそうな…”超高校級の農家”という人もいました。」
「俺っちのクラスメイトもいねぇやぁ。でも、だが、しかし、みんな “超高校級” だったのは同じでぇ。」
「ボクも。天涯孤独、孤軍奮闘。クラスメイト、ここにナシ。クラス全員 “超高校級”。」
「あたし達…けい、ここみ、ことは、あたしがクラスメイトだよ。動機を見る前は初めましてだと思ってたけど…。」
「ああ。そうだな。」
「う、うん…。僕らは、間違いなくクラスメイトだったよ。」
「………うん。」
(みんなのクラスメイトも、全員 “超高校級” ?そんなに “超高校級”を集めた学校が たくさんあるのかな…。)
「そんなに政府の認定数は多いものなのかね?」
「……”超高校級”のバーゲンセールだな。」
「えっと…天海さんは?」
「……俺は、白銀さんとクラスメイトだったっす。」
「白銀先パイと…?」
「そうっす。うちも”超高校級”を集めたようなクラスで…探偵やピアニスト、宇宙飛行士…」
「変わったところだとロボット、悪の総統、マ…法使いなんかもいたっすね。」
「何だ、それは。君のクラスは、世界観が統一されてないな。」
「ってか、同じ年に”超高校級の探偵”が2人も政府認定されてんの?そんなに探偵って必要?米花町じゃねーんよ!」
「とにかく、ありがとう。これで捜査がしやすくなったよ…。」
「……?」
(みんな、いくつかのグループになって散っていく。遅れて動き出した背中に声を掛けた。)
「蘭太郎君。一緒に調査してもいいかな?」
「……はい、もちろん。」
「まずは、ここから調べようか。」
(被害者の死体が目に入る。彼は口が悪くて ぶっきらぼうだったけど……誰よりも友人想いだった。)
(そんな彼を殺した人物…見つけなきゃ。絶対に。)
(被害者の死体は、鉱山の奥の岩に寄りかかるように そこにあった。胸から出血したのか、お腹まで汚れている。)
「……毅君、かなり出血したみたいだね。」
「これは…郷田君の血だけじゃないみたいっすよ。」
「え?」
「郷田君が持っているヘビの人形っす。」
(言われて、もう1度 被害者を見る。彼の両手に握られた引きちぎられたヘビの人形。)
「これって、そこにある大蛇や牛の人形と同じだよね?」
(初めて来た時に見た大きなヘビの人形は、依然として舌だけを動かしながら、とぐろを巻いている。)
(握られたヘビの人形は小型で別の種類のものなのだろう。血の汚れから覗く模様の色は派手なものだった。)
「このヘビも血塗れだね。…そっか。ヘビの血もあるんだ。」
「牧場の牛からは大量の血が出ましたからね。このヘビが引きちぎられた時も、血が出たんでしょう。」
「毅君がヘビの人形を引きちぎった…のかな?」
コトダマゲット!【ヘビの人形】
「…それにしても、凶器の刃物は どこに行ったんすかね?」
「そういえば…。」
(もう1度、よく被害者の胸を見る。彼の胸は細く鋭利な刃物で刺された痕があるだけだ。)
「凶器は…ここにクワは落ちてるけど…。」
(付近に落ちている凶器となりそうな物は、モノクマに渡されていたクワだけだ。)
「クワは、頭の打撃痕を作ったものっすね。クワの先端に血が付いてるっす。」
(そうだ…。被害者の側頭部の傷はクワで殴られたもの。死因にはならなかったようだけど、十分 痛々しい。)
(モノクマが”道具”を持つことを強要したせいで、彼は この苦痛を受けることになったんだ…。)
「…あれ?毅君は道具を携帯してなかったのかな?彼の道具が見当たらないけど。」
「いえ、恐らく、犯人がクワの代わりに持っていったんすね。鉱山を出た後も、何か携帯する必要があるっすから。」
「あ、そっか。」
「他にも彼の持ち物がないか確認してみましょう。」
(彼は死体の懐を探りーー…1枚の紙を取り出した。)
「紙が入ってたっすね。手書きのメモ…みたいっす。」
「何が書いてある?」
「『話がある。午前1時に南エリア鉱山に来い。』……犯人からの呼び出しっすかね。」
(特徴的なクセ字で書かれたメモ。…どこかでこの筆跡を見た気がする。)
コトダマゲット!【郷田のメモ】
△back
(鉱山内をグルリと見回す。…と、死体から少し離れた所に何かが落ちているのが見えた。)
「モノパッドだ。」
「壊されてるっすね。血が付いてるから…クワで叩き割られたんだと思うっす。」
「えっと…誰のかな。」
「郷田君以外、考えられないっすよ。俺たちは校則でモノパッドを常に携帯しなきゃなんねーっすから。」
「そっか。どうして犯人は…わざわざモノパッドを壊したんだろう。」
「モノパッド…。」
「どうかした?」
「いえ…。何でもないっす。」
コトダマゲット!【破壊されたモノパッド】
「わひゃ!?」
(俯いて考えていると、小さく悲鳴が聞こえた。)
「ぽぴぃ君、どうしたの!?」
「びっくりビックリ。ヘビの人形、ここにも ここにも。」
(彼の視線の先、小型のヘビの人形が不規則な動きを繰り返している。)
「全部 人形です!大丈夫ですよ!!」
「大蛇は、全然 動かない。けれど、結構 動くよ、小さいの。這いずる音が、キモチワルイ。」
「大きい機械を動かすのは大変すからね。」
(じゃあ、何で牧場の牛は動いてたのかな。)

(そんなことを考えながら、もう1度 辺りを見渡した。)
「えっと…とりあえず、鉱山内で気になるのは、壊されたモノパッドくらいかな?」
「ーーいや、明らかにおかしいことがあるっす。」
「おかしいこと?」
「郷田君を刺した凶器っすよ。見たところ、郷田君の傍にも鉱山内にも凶器がありません。」
「あ、そうか。鉱山内にはないってことは…犯人が持ち出したのかな。」
コトダマゲット!【現場の凶器】
△back
「“彼”の話は聞いておきたいっすね。」
(ーーそうだ。この鉱山内で死体と一緒に発見された彼。彼なら、何か知ってるはず。)
(鉱山の隅で、クラスメイトに付き添われて休んでいる彼に向き直った。)
「……。」
「圭君、大丈夫?」
「あ、ああ。大して血も出なかったみたいだしな…。」
「ホント、びっくりしたよ。けいが死んじゃったかと思ったんだから。」
「圭君、事件について教えてくれる?」
「…何だよ、お前らもオレを疑ってんのか?」
「そういうわけじゃないよ。でも圭君が無実なら、それを証明するためにも情報が必要なんだ。」
「ああ、そっか…。そうだな。」

(決まりの悪そうな顔で少し黙ってから、彼は呟いた。)
「オレは…ここに呼び出されたんだよ。」
(彼の懐からメモ用紙が取り出される。そこには筆跡が読み取れない線を重ねたような字が並んでいた。)
「『お前の才能を知っている。知りたければ深夜に鉱山に1人で来い。』…これ、いつ どこで受け取ったんすか?」
「昨日、いつの間にか部屋のドアに挟まれてたんだよ。」
「けいの才能?そっか……。」
「圭君は自分の才能について記憶がなかったもんね。」
「あ、ああ。だから、気になってさ。」
コトダマゲット!【永本のメモ】
「……それで、キミは ここに来たんすね。」
「ああ。深夜、ここに来たら郷田が倒れててよ。」
「彼の死体を発見したってこと?」
「そうだよ…。けど、おかしいんだ。」
「おかしい?」
「オレが見た時、郷田はヘビなんて持ってなかった…と思う。」
「ヘビ…毅君が掴んでた人形のことだね。じゃあ、それは犯人の仕業ってこと?」
「いや、殴られた後も少し意識があったんだけどさ…。犯人が立ち去る音、扉が閉まる音は聞いたんだ。…たぶん。」
「えっと、犯人がしたわけじゃないってこと?じゃあ…被害者が自分でヘビを掴んだってこと…だよね。」
「それで引きちぎったの?まだ その時…つよし、死んでなかったんだね。」
「毅君は即死じゃなかったんだ…。それで…ヘビを掴んで引きちぎった。」
「ああ…たぶんな。」
「……。」
(でも、何で そんなことを…?)
コトダマゲット!【永本の証言】
「あ!お二人とも!今日1時頃、何をしてましたか!?」
「みんなのアリバイ確認中。」
(鉱山奥にいた2人が話しかけてきた。)
「午前1時頃だよね?宿舎で寝てたよ。誰も証明してくれる人もいないし、アリバイなしかな。」
「右に同じっす。」
「あ!疑ってるわけじゃないですよ!?犯人を見つけるためですから!!」
「う、うん。分かってるよ。…それで、アリバイがあった人はいた?」
「いえ!永本先輩以外は、みなさん自室で休んでいたそうです!!」
(午前1時だし…。それは そうだよね…。)
コトダマゲット!【全員のアリバイ】
△back
「鉱山内は、ある程度 調べたっすね。後はーー…」
(言いながら出口に向かう彼に倣って、扉に近寄る。扉の内側には、折れた木の板が転がっていた。)

(暫く眺めていると、後ろから落ち着いた女性の声が掛けられた。)
「この折れた木の板は閂ですね。」
「かんぬき…?」
「ええ。扉は木の板を錠にした閂タイプです。この木の板を閂、これを掛ける金具を閂かすがいといいます。」
(鉱山の扉は、内開きの左右の扉に閂…1枚の木の板を、閂かすがい…L字の金具に上から掛けて施錠するものだ。)
「俺たちが来た時、内側から閂が掛かってたっす。ぽぴぃ君と俺、女性陣だけでは突破できなかったっすね。」
「みんなが言ってたように…密室だったってことだよね…。」
「そうっすね。……ただ、外にいた人間に犯行が不可能とは言えないっす。」
「どういうこと?」
「密室は、結構 簡単に作れるんすよ。特に、こんな簡易なタイプの扉なら。」
「え!?ど、どうやって?」
「それは…まだ分からないっすね。とりあえず扉を調べましょう。」
「…うん。あれ?」
「どうしたんすか?」
「ここ…閂かすがい?閂を掛ける金具の突起より ちょっと上、穴が空いてるんだ。」
「本当だ。……こっちにもあるっすね。」
(閂かすがいの上部に直径1、2cmほどの小さい穴が空いている。両開きの扉の左右両方だ。)
(そういう仕様なのかな?それとも…。)
「…1つの穴には血が付着してるっす。」
「え。何で そんなところに?」
「……事件に関係ありそうっすね。」
コトダマゲット!【扉の穴に付いた血】
「ひとまず、だいたい現場は調べられたっすね。……でも、刺殺の凶器が見つかってないっす。」
「凶器…鍛冶屋か、レストランキッチンのものなのかな。」

(そんな話をしていると、)
「あ、天海さん、哀染さん。ちょっと、いい…かな?」
(小柄な少年が申し訳なさそうに、会話に入ってきた。)
「…あ、あのね、2人の”道具”を見せて欲しいんだ。」
「え?」
「……そうっすね。俺の宿舎に先に行きましょう。」
【南エリア 西牧場】
「今、俺が携帯してるのは野菜の種っす。残りは、ここに全部ありますね。」
(彼の部屋は、他の宿舎と同じくシンプルなものだった。壁には、立て掛けられた”道具”が全て並んでいる。)
「うん。全部 揃ってるね。ありがとう…。」
「えっと…何で それを見たいの?」
「現場にあったのは、クワだけだったっす。」
「あれが犯人の物なら、犯人は郷田さんの道具を代わりに携帯して帰らなきゃいけないからさ…。」
「あ…そっか。犯人の道具が揃ってなくて重複してる可能性があるんだね。」
「まあ…あれが郷田さんのものだったり、犯人も郷田さんもクワを携帯していたなら意味がないんだけどね…。」
「他の人たちの道具は どうだったんすか?」
「今のところ、みんな揃ってるよ。現場で倒れてた永本さんが持ってたのも、野菜の種だけだったし…。」
「一応、後で永本さんの部屋も行ってみるけど…。」
「じゃあ、その時、ついでに ぼくの部屋の道具も見せるよ。」
「う、うん。じゃあ、また後でね…。」

「俺たちも捜査を続けましょう。とりあえず…凶器がありそうな所を見ておきたいっすね。」
(小柄な背中を見送って、牧場から町へ進んだ。)
(さて、どこから行こうかな。)
【南エリア 鍛冶屋】
「やあ、君たちも来たか。」
「天海様に哀染様、ご機嫌うるわしゅう。」
「麗ノ介君、アイコ。何か見つかった?」
「いや、見つからないのだよ。おかしなことに。」
「そうなんだよ!!てぇへんだ!てぇへんだ!!」
「おかしなこと?」
「昨日も言ったはずだがね、ここにあったはずの物がなくなっているのだよ。」
「な、何かって、何なんだろうねぇ?」
「壁に掛かっていた…恐らくは、刃物。」
「え…。どんなのだったか覚えてる?」
「いや。悪いが、壁よりも炉やカマド、金床の汚れが気になっていてね。」
「壁の刃物なんざ、気にも留めてなかったってことだな!」
(昨日 見た時も、カマドや炉は新品みたいだった。何をしたら、あんなに綺麗になるんだろうというくらいに。)
「とにかく、一昨日の朝から昼、刃物がなくなったのは事実だよ。」

「……。」
コトダマゲット!【松井の証言】
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【中央エリア 宿屋1階】
「アイゾメ、アマミ、ゴブサタ!」
「貴方たちも凶器を探しているの?」
「うん。なくなってるものを確認しに来たんだ。」
「ありませんデス。」
「え、何かなくなってる!?」
「いいえ、なくなっている物がないのよ。このチェックリストも調べたんだけど。」
(入り口に貼られた備品チェックリストを見て、彼女たちは言った。)
(確かに、昨日 来た時と、何も変わったところはなさそうだ。)
(調理器具は揃っているし、細く鋭利なシュラスコ串も、昨日と同じように そこにあった。)
「……昨日の昼、夕神音さんとキッチンで会ったっすね。あれから暫くレストランにいたんすか?」
「ええ。頭が痛くて、夕食までレストランに座ってたの。レストランの掃除に来た松井君も一緒だったわぁ。」
「その時、誰かキッチンに入った人は?」
「いなかったわぁ。」
「……キッチンの器具が凶器の可能性は低いっすね。」
「えっと、どうして?今は確かに、全部 揃ってるけど、犯行前に犯人が持ち出してたのかもしれないよ。」
「キッチンは、夜時間 封鎖されるっす。そして、持ち出した物は20時間以内に返さなければならないっす。」
「あ、そっか。朝1番の8時に凶器を返すにしても…昨日の昼12時から夜時間までに持ち出してなきゃいけないんだ。」
「けど、夕食まで、キッチンには誰も入ってないわぁ。夕食から夜時間も人通りがあったから難しいはずよぉ。」
「今朝、ワタシとヤマト先生は1番ノリ。8時ピッタリでした。でも、オダイドコロ行った人いマセン。」
「その後、複数人で手分けして永本君たちを探してたっすから、犯人単独でキッチンに入ることはなかったはずっす。」
「昨日キッチンから刃物を持ち出したとしても…返すタイミングがないね。」
「それに、シロートが血のショリしますデモ、すぐ分かりマス!オダイドコロの道具、凶器じゃないデス!」
(シュラスコ串が凶器かと思ったけど…キッチンの刃物が犯行に使われた可能性は低い…か。)
コトダマゲット!【宿屋のキッチン】
【中央エリア 宿屋2階】
「あ、哀染さん。ちょうど良かった…。」
「……。」
「ここみ君、琴葉。圭君の部屋を見てたの?」
「うん。アイコさんに鍵も借りて、アイコさんの部屋も見たよ。」
「全員…道具 揃ってる…。」
「そっか。じゃあ、僕のところも見せるね。」
(部屋の鍵を開ける。中は朝と変わりなく、壁に立て掛けた”道具”も揃っていた。)
「ちなみに、今 持ってるのは野菜の種だよ。」
「今日は、ほとんどの人が野菜の種を携帯してたみたいだね。」
「重くないし、かさばらないからね。」
「うん、ありがとう…。これで、道具が欠けてる人も重複してる人もいないね。」
「永本さんのクワ…。」
「そうだね。変わったところといえば、永本さんのクワが折れていたことくらい。…無駄なことしちゃったね。」
「…いえ、これで、郷田君も犯人もクワを持っていたまたは現場のクワは郷田君のものだと分かったっす。」
「そうだよ。重要な気付きかもしれないよ。」
コトダマゲット!【全員の持つ道具】
「あの、郷田さんの胸の刺し傷…。あれって、細い刃物で刺された跡だよね。」
「う、うん。何か凶器に心当たりがあるの?」
「うん…。最近、五寸釘で人を殺す…。そんな方法を見たから、さ。」
「……。」
「どういうことっすか?郷田君の胸の傷…五寸釘にしては刺し傷が大きかったと思うんすけど。」
「うん。それに、釘じゃ体から引き抜きにくいよね。」
「死体から引き抜く必要はないんだよ。遠隔で殺せるって話だしーー…」
「……佐藤さん。」
「あ…。ご、ごめん。五寸釘も、家具から釘を抜く道具も、どこにもなかったんだけどね。」
「……そ、それに、そんな殺し方なんて、あり得ないよね。ごめんね。じゃあ、哀染さん、天海さん。後でね。」
(そのまま2人は立ち去った。)
(五寸釘…?遠隔で殺せる…?そんなこと、あり得るのかな…。)
「哀染君、そろそろ移動しましょう。」
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『時間になりました!オマエラ、中央エリア広場まで集まってください!』
【中央エリア 広場】
(ーー時間になってしまった。)
(広場に全員が集まると、広場中央から赤い扉のプレハブの建物が現れた。)
(建物の中はエレベーターホールになっている。)
(全員がエレベーターに乗り込めば、エレベーターは ゆっくり下降していった。)
(エレベーターの揺れは前回の事件を思い出させた。)
(前回は何もできなかった。……考えることさえも。でも、それじゃダメだ。)
(みんなのためにも、被害者のためにも、そして…あの人のためにも。)
(闘わなきゃ…いけない。)
(この命が懸かった学級裁判で…!)
コトダマリスト
被害者は”超高校級のジムリーダー”郷田 毅。死体発見現場は鉱山内。死亡推定時刻は午前1時頃。死因は胸部を刺された出血によるショック死。側頭部に打撃痕がある。
鉱山内で発見されたのは血の付いたクワだけ。刺殺に使われた刃物は見つかっていない。
鉱山入り口の内開きの扉。左右の扉に1枚の木の板を上から掛けて施錠する簡易な閂タイプ。扉の左右に直径1、2cmほどの穴が空いている。
扉の穴の片方には少量の血が付着している。
死体が握っていた小型のヘビの人形。引きちぎられ、血塗れになっている。
死体から少し離れた地点に落ちていた。郷田のモノパッドと思われる。故意に壊された跡があり、少量の血が付いている。
死体から発見されたメモ。内容は『話がある。午前1時に南エリア鉱山に来い。』というもの。特徴的な筆跡で書かれている。
永本が持っていたメモ。『お前の才能を知っている。知りたければ深夜に鉱山に1人で来い。』と定規を使って書かれている。
死亡推定時刻の午前1時頃、永本以外は自室で休んでいたと証言。アリバイがある者はいない。
モノクマから渡された”道具”は、全員分が欠けること、重複することなく揃っている。永本のクワだけは破損している。
永本が倒れた郷田を発見した時、郷田はヘビを握っていなかった。
一昨日の午前中から昼の間に鍛冶屋から刃物が消えている。山登りの前は鍛冶屋の刃物は揃っていた。
夜時間 封鎖され、備品は20時間以内に返さなければならない。備品は捜査時間には揃っていた。夕神音によると、昨日の12時頃から夕食まで立ち入った者はいない。夕食後、夜時間までレストランに人通りがあった。
モノクマに与えられた”道具”を最低1つ携帯しなければならない。道具はクワ・カマ・じょうろ・野菜の種・乳搾り器・オノ・ハンマー・釣竿の8種類。
学級裁判編へ続く
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