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第2章 限りない地獄、まだ見えぬ天国 非日常編

 

(プールサイドに置かれた、切り落とされた腕。それを見た瞬間 鳴り響いた死体発見アナウンス。)

 

(どうして…。)

 

(発見アナウンスを聞いた全員が集まったのに合わせて、モノクマが飛び出して来た。)

 

「アーティスティック!今回の殺しは、まさに血みどろフィーバーだね!」

 

「うわ!…モ、モノクマ…。こ、これ、これ…誰の腕?」

 

「そんなの、オマエラ以外の誰かに決まってるでしょ?オマエラは両腕 生えてるんだから。」

 

(全員 顔を見合わせる。ここにいないのは、”超高校級のDIYメーカー” 市ケ谷 保。それに、切り離された腕が握っているのは、市ケ谷のモノパッドだ。)

 

「ではでは、いつもの配りまーす!」

 

(モノクマが明るい声で言った。私は「02」とナンバリングされたモノクマファイルを受け取り、中を確認した。)

 

(死体発見現場はプール内。 死因は不明…。)

 

「何これ。情報が少なすぎるよ。」

 

「少ないというか…皆無だよね。」

 

「それはそうだよ。オマエラはまだ被害者の片腕を見つけただけなんだから。情報が欲しけりゃ自分で探すんだね。」

 

(モノクマが汚く笑って消えた。)

 

「このモノパッドは市ケ谷のもの…なんじゃな?」

 

「い、市ケ谷さんが…!?そんなはずありません!市ヶ谷さんは死んだりしません!雄狩 芳子がお守りすると決めたんですから!」

 

「みなさん、ちつきましょう!茶でも飲んで、ちつきましょう!」

 

「ちつき…?雄狩が落ち着きや。」

 

「とにかく、手分けして腕の持ち主を探すべきなんじゃない?」

 

「そうね。じゃあ、2人か3人で探して、見つけたら全員を呼んでちょうだい。」

 

 

(全員が散って行く。その場に残ったのは……)

 

「……春川とかよ。」

 

「文句 言ってないで探すよ。捜査時間は限られてるんだから。」

 

(羽成田と校舎に入って しばらくして、悲鳴が聞こえた。体育館の方角。絵ノ本の研究教室の辺りからだ。)

 

 

 

【超高校級の絵本作家の研究教室】

 

(その研究教室に入った瞬間、既視感のある血の匂いに迎えられた。)

 

(まず目に入ったのは、1点を見つめて立ち尽くすエイ鮫と絵ノ本の姿。彼女たちの視線の先にはーー)

 

(桜色の羽織にロングスカート。羽織の奥に腕はなく、袖は血で染まっている。しかもーー)

 

「市ケ谷さん…。」

 

「何で…首も腕もないん?」

 

(死体には首から先がなかった。羽織の下の膨らみ方から、両腕もなさそうだ。両腕と首が欠損した状態で、死体は仰向けに倒れている。)

 

「は、春川さん、ピラニアが…!」

 

(視線を移せば、教室隅の水槽のピラニアが何かをついばんでいるのが見えた。白骨と成り果てているものの、それは人の頭と腕であることが分かった。)

 

「……!」

 

「羽成田、みんなを呼びに行くよ!エイ鮫と絵ノ本は ここにいて!」

 

「い、言われなくても分かってるよ!」

 

(弾丸のように教室から飛び出して行く羽成田と別れ、私は校内に散らばる みんなのところに走った。)

 

 

(ほどなくして、モノクマを含めた全員が研究教室に集まった。)

 

「い、市ケ谷…さん…。」

 

「雄狩さん、しっかりして。見なくても…いいから。」

 

(膝から崩れる雄狩を、大場が支える。他の奴らも、なるべく死体を見ないように その場にいた。)

 

「アーティスティック!こんなえげつない死体は久々に見たよ!これぞコロシアイって感じだね!」

 

「テメー、何言ってやがる!?」

 

「うぷぷ、どうしたの羽成田クン?キミは全員 殺す〜とか息巻いてたじゃない。あれって、ただの強がり?」

 

「……クソが。」

 

(吐き捨てる羽成田の様子をひとしきり笑って、モノクマは姿を消した。「モノクマファイルを更新した」とだけ言い残して。)

 

(モノクマファイルは…死体は頭と両腕を切り取られている。左腕の発見現場はプール内。その他の発見現場は”超高校級の絵本作家”の研究教室。)

 

(頭と右腕はピラニアの水槽に入れられて喰われている。死因は不明。死亡推定時刻は午前2時半頃…か…。)

 

 コトダマゲット!【モノクマファイル】 

 

(死因も自分たちで調べる必要があるってことだ。それに…死体がピラニアに喰われた状態…。これは、星の事件と同じ…。)

 

(また、頭にチクリと痛みが走った。)

 

 

「春川さん、どうしましたか?みんな調査を開始していますよ。」

 

「…早く調べるぞ。」

 

「……あんたと一緒に?」

 

「しゃーねーだろ!さっきと同じ組み分けなんだよ!」

 

(……このまま…調査しても…『ダンガンロンパ』を終わらせることには…ならない。でも……)

 

「どうしましたか、春川さん。時間がありませんよ。」

 

「……そうだね。」

 

 

 死体を調べる

 研究教室内を調べる

全部見たね

 

 

 

「……死体、調べるのか?」

 

「別に、あんたは遠くで見ててもいいよ。」

 

「あ?テメーが犯人だったら証拠 隠されちまうかもしんねーだろ!」

 

(羽成田は吐き捨てて、顔を青ざめさせながら死体に近付いた。)

 

「クソ…グロいな…。頭と両腕が切り取られて……。」

 

「頭と右腕はピラニアに喰われてるから、状態が分からないね。」

 

(”前回”も、星が殴られた跡すらピラニアが喰い尽くしてしまった。)

 

「しかし、こんなことができるのは殺しや死体に慣れているということではないでしょうか。考えたくはありませんが、その手のプロかもしれません。」

 

「いや、この切り口…殺しに慣れてるとは…とても思えないよ。」

 

(切り口は不揃いで、プロの犯行とは思えない。)

 

「えーと…何で そんなことが分かるんですか?」

 

「……何で…だろうね。」

 

「けどよ、首や腕を切断するなんて結構 力がいるだろ。一体どうやってこんなこと……もしかして、あれか?」

 

(羽成田の視線の先には、刃にベットリと血が付いたギロチンがある。)

 

 

「ちゃうで。あれじゃニンジンも切れへん。」

 

「え、そ、そうなの?」

 

(教室内にいた絵ノ本とエイ鮫が近付いて来た。エイ鮫は だいぶ顔色が悪い。)

 

「ギロチンで切れないというのは?」

 

「これはマジックなんかで使われるフェイクや。」

 

(言いながら、絵ノ本は教室内の不気味なヌイグルミをギロチン台に置き、ギロチンの刃を引き上げた。)

 

「お、おい、何する気だ?」

 

「ちょっ…」

 

(2人の声を無視して、絵ノ本がギロチンの刃を下ろす。刃は一直線にヌイグルミに向かうがーー)

 

「あれ?切れてない?」

 

(ヌイグルミは少し凹んだだけで、傷ひとつ付いていない。刃に残った血は付いたけれど。)

 

 コトダマゲット!【ギロチン】 

 

「えーと、じゃあ…犯人は どうやって市ケ谷さんの頭や腕を切断したんだろう?」

 

「……これかもしれないね。」

 

(私は、ギロチンのそばに置いてある串刺しの棺桶のようなものを指差した。)

 

「棺桶に刺さってる剣か?」

 

「違うよ。これ。この1本だけ、違う。これは…ナタ。3階の武器庫みたいな教室にあったよ。」

 

「確かに。血を拭いたような跡がありますね。」

 

 コトダマゲット!【ナタ】 

 

「あの…絵ノ本さん…まだ、ここ調べるの?」

 

「ウチの研究教室やからな。嫌ならええで。エイ鮫は教室の外で待ってても。」

 

「う、ううん。わたしも…ここにいるよ。」

 

(エイ鮫が青い顔のまま教室の調査を再開させる。死体から かなり離れたところの床を見て、何か見つかるとは思えないけど。)

 

「市ケ谷の持ち物は…自分の部屋の鍵だけだね。」

 

「モノパッドは、プールサイドにありましたからね。」

 

「春川さんって…本当にすごいんだね。……あ。」

 

「何だ?何か見つけたのか?」

 

「この脚が折れたテーブル…。これにも血が付いてるよ。」

 

(夢野の研究教室にもあった小ぶりなテーブル。それにもベッタリと血が付着している。)

 

 コトダマゲット!【テーブル】 

 

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(所々に血痕がある研究教室を見回す。教室の隅のピラニア水槽の中には、まだ被害者の骨が残っていた。)

 

「春川さん、水槽の中も しっかり見ておきましょう。水槽の水などを排除できたらいいですが…難しそうですね。」

 

(”前回”は、茶柱と獄原がキーボを投げつけてピラニアが泳ぐ水槽を割ったって言ってた。この水槽に…このキーボを投げつけたら…)

 

「どうしましたか?見にくいようならボクが光で照らしますよ。」

 

(……止めとこう。)

 

「オレらが ここに入った時、すでに市ケ谷の頭と腕はピラニアの腹ん中だったな。」

 

「そうだね。ピラニア用のエサなんてないし…お腹すいてたんじゃない。」

 

「グロい考察すんな!」

 

(沈んだ骨は、確かに人の頭部と腕のものだ。けれど、その中に まだ肌の色を保つ部位が見えた。)

 

「…あれ、指の先だね。喰い残されてる。」

 

「さすがに、ピラニアも爪は食べないんですね。」

 

「爪と肉の間に何か挟まってねーか?何だ あれ?」

 

「そんなの見えるの?」

 

「パイロット舐めんなよ。オレは目がいいんだよ。」

 

「ボクは目が光りますよ。」

 

「ああ、なら ちょうどいい。鉄、テメーあそこ照らせ。」

 

「だから、素材で呼ばないでください。」

 

(キーボが水槽の中を照らす。)

 

「やっぱり よく分かんねーな。道具 使って水槽から取り出しゃ、なんか分かるかもな。」

 

「でも、そんな道具ありませんよ。」

 

 コトダマゲット!【ピラニア水槽】 

 

「……ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、向こうに何かあるぞ。あれは…髪の毛か?」

 

(水槽奥の目立たないところに、確かに黒く長い髪の毛が沈んでいる。)

 

「……黒くて長い髪の毛、だな。これで犯人が絞れるんじゃねーか?」

 

(羽成田は こちらを見て、ニヤリと笑った。)

 

 コトダマゲット!【長い黒髪】 

 

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(現場は…だいたい調べられた。)

 

「春川さん。プールも、もう1度見ておきましょう。」

 

「寄宿舎の市ケ谷の部屋も見ておいた方が良くねーか?鍵は死体から くすねたんだろ?」

 

「そうだね…。」

 

 

 プールへ行く

 寄宿舎へ行く

全部見たね

 

 

 

【プール】

 

(プールサイドには さっきと同じように、被害者の左腕が置かれている。)

 

「……こっちは こっちでグロテスクだな。」

 

「この左腕は、モノパッドを握っていますね。」

 

(私たちはモノパッドのGPSを頼りに、市ケ谷を探して ここへ来た。)

 

「でもよ、本当に市ケ谷のモノパッドなのか?…って、うわ!?」

 

(腕に触れないようにモノパッドを抜き取ろうとした羽成田が足を滑らせたのか、後ろに倒れこみそうになった。)

 

「危ない!」

 

(とっさに それを支えたのは、プールを調査していて近くにいた雄狩だった。)

 

「……わりぃな。」

 

「何をしてるんですか!これはっ!市ヶ谷さんの遺品とも言えるもの!大事に扱ってください!」

 

(雄狩が市ケ谷のモノパッドを大切そうに抱えた。)

 

「雄狩さん、それは間違いなく市ケ谷さんのモノパッドですか?」

 

「ええ、この通り。」

 

(雄狩がモノパッドの起動画面を見せる。そこには確かに、市ケ谷の名前があった。)

 

 コトダマゲット!【市ヶ谷のモノパッド】 

 

「そりゃそうよ。あたし達のモノパッドにも『ここに市ケ谷さんがいる』って表示されてるんだから。」

 

「…テメーも ここにいたのかよ。」

 

「悪い?あんまり つっけんどんにするとキスするわよ。」

 

「絶対やめろ!!」

 

(プールの説明書きを見ていた大場に脅され、羽成田は顔面を青ざめさせた。)

 

「何か見つかった?」

 

「そうね。そこに、何かを燃やした跡があるのよね。」

 

「燃やした跡?」

 

「うーん、この感じ…細い糸状のものがたくさん…なんだと思うんだけど…。」

 

(大場が指差す先には、黒く焦げた”何か”があった。焼け焦げた異様な匂いが残っている。)

 

「犯人が ここで何かを燃やしたんでしょうか?」

 

 コトダマゲット!【プールサイドの焼け跡】 

 

「あ?でも、宿舎には火災報知機があったんだろ?プールもそうじゃねーのか。」

 

「では、昨日の夜も火災報知機が鳴り響きながらも、雄狩 芳子たちは起きられなかった…ということですね。」

 

「いやいや、プールみたいな水気の多いところで、それはないよ。」

 

「うぉ!?な、何だよ。」

 

プールには火災報知機がないんだ。火事になることは まずないだろうし、いざという時はプールに飛び込めばいいからね。」

 

「ちなみに、夜時間にプールに入るのは禁止。だから、夜の火事でプールに飛び込んだら即処刑。八方塞がりだね!」

 

(確か…”前回”も夜時間にプールに入ることは禁止されていたね。)

 

 コトダマゲット!【プールの規則】 

 

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【寄宿舎前】

 

「君たちも来たか。」

 

「ずーっと あの血みどろ研究教室にいたら気分悪くなるもんね!」

 

「その割に、タマさんは現場を見たがってたわよね。」

 

「うん!後で一緒に行こうね!絶対だよ!」

 

「……遊園地に行くんじゃないんだよ。」

 

(宿舎の前にタマと綾小路と壱岐がいた。)

 

「春川さん達も、ここを調べるのね。」

 

「僕たちは、ここの火事が事件と関係があると踏んで調べているんだよ。」

 

「確かに、事件 前夜の火事は何か関係がありそうですね。」

 

「……。」

 

「でも聞いてよ。火事の時、すごい火災報知機の音が鳴ってたのに、アヤキクちゃんもイキリョウちゃんも聞いてないって言うんだよ?」

 

「オレも気付かなかったな。」

 

「おかしいねー?九官鳥の断末魔みたいな音だったのに。」

 

「たとえが分かりにくいっつーの…。」

 

 コトダマゲット!【火災報知機】 

 

「やっぱり…私たちは睡眠薬を飲まされていたのかもしれないわね。私の研究教室から2つなくなっていたから。」

 

「何だって?」

 

「それなら、火事の中で起きたのが私たちだけなのも納得かな。」

 

「睡眠薬2つも使ったってことか?」

 

「いえ、おそらく火事の夜に使ったのは1つよ。……今回の事件に、なくなった もう1つの睡眠薬が使われているのかしら…?」

 

「……どうだろうね。」

 

「壱岐さんの研究教室の物は、よく持ち出されていますね。」

 

「ええ…。そういえば、私の研究教室のマネキンも…カツラがなくなっていたわ。」

 

「模造人形が?いつからだい?」

 

「今朝 早く、自分の研究教室で目を覚ましたんだけれど、その時には もうなかったわね。」

 

「目を覚ました?どういう状況ですか?」

 

「寝ぼけて朝方 校舎に入っちゃったのね。」

 

「寝ぼけて そんなことになるか!?」

 

「……市ケ谷は昨日の修繕の時、ドアにピッキング防止加工を施していたね。」

 

「うん、確かに生きてる人の部屋 全部ピッキング防止加工してるみたいだよ。鍵を使わなきゃ入れないみたい。」

 

「それなら、市ケ谷さんの部屋に侵入して殺すことは難しそうですね。」

 

 コトダマゲット!【寄宿舎のドア】 

 

 

【寄宿舎内】

 

(市ケ谷の部屋の前に立つ。死体の鍵を彼女の部屋の鍵穴に入れる。ーーが。)

 

開かない。」

 

(扉の鍵穴に鍵が入らない。)

 

「え?市ケ谷さんの部屋の鍵ですよね?」

 

「どういうことだよ?…って、開いてんじゃねーか。」

 

(ドアノブを引いた羽成田が そのまま部屋の中に入って行く。)

 

「おー、マキにソラー!」

 

「ボクもいます。ボクも呼んでください。」

 

「おー、マキにソラにキーボ!」

 

「フォッフォッフォッ。お前さんらも来たんじゃのう。」

 

「…あんた達が ここの鍵を開けたの?」

 

「もともと開いてたんだねー!」

 

「不用心ですね…。」

 

「で、なんか変なモンはあったのか?」

 

「ネー!変なモンはネーんだねー!」

 

「何もないことが手掛かりと言える。そんな感じの部屋じゃよ。」

 

「そりゃ、どういうことだよ?」

 

(……市ケ谷の個室は片付いていて、事件とは関係がなさそうに見える。)

 

「布団なぞ、寝ている跡すら分かるようじゃろ。」

 

「確かに、掛け布団の膨らみ…体を入れていたのが分かるほどですね。市ケ谷さんは、ヘビの脱皮のようにズルリと起きる習慣があったのでしょうね。」

 

「気持ち悪りぃ習慣だな。」

 

 コトダマゲット!【市ヶ谷の個室】 

 

「アーバーアーバー、カナデは宿舎でタモツの悲鳴を聞いたぞー!」

 

「何じゃと?」

 

「あれは午前2時頃だねー。ドアがバタン!って開く音と一緒に、タモツが泣き叫んで走って行く音でカナデは起きたんだねー!」

 

「カナデの部屋のドアは閉まってたけど、火事のせいで隙間があったからねー。聞こえたんだねー!」

 

「それで、あんたは どうしたの?」

 

「叫びながら宿舎を出るタモツの足音の後に、追っかけるような他の足音がしたから、カナデは外を覗いてみたんだねー。」

 

「でも、その時は誰もいなくて、また寝ちゃったんだねー。」

 

「追いかけたのは犯人の足音じゃねーのか!?何でテメーは追わなかった?」

 

「ミューデミューデ、ネムネムだったんだねー。ごめんねごめんねー。」

 

「起きぬけじゃ誰だって判断が鈍るじゃろうて。気にするでないぞ。」

 

「麻里亜クンは起きぬけに消化活動をしたと聞きましたが…。」

 

 コトダマゲット!【朝殻の証言】 

 

「そうじゃ。枕の下に、こんなものがあったぞ。」

 

(麻里亜が市ヶ谷の枕をどける。そこには、見覚えのある機械があった。)

 

「市ヶ谷の動機ビデオじゃねーか。」

 

「なるほど。デザインは、みんな同じなんですね。」

 

「手掛かりがあるかもしれないぞー!」

 

「そうじゃな。……ん?」

 

「どうしたの?」

 

「起動せんぞ。起動しようとしてもエラーになる。」

 

(動機ビデオの画面には、確かに『エラー』の文字が出ている。)

 

「電池切れなどではなさそうですね。」

 

「……。」

 

 コトダマゲット!【市ヶ谷の動機ビデオ】 

 

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『時間になりました!学級裁判を始めます。オマエラ裁きの祠に集まってください。』

 

(時間になって付近のスピーカーから響いたモノクマの声。)

 

「クソッ…もう時間かよ。水槽の爪の喰い残し…ちゃんと見ときたかったんだがな。」

 

「プールサイドに残っていた燃えカスも…大場さんは糸状のものと言ってましたが…もしかして、髪の毛でしょうか?」

 

「髪の毛?犯人のか?」

 

「いえ…校舎から持ち出された髪の毛がありましたから…もしかすると…。」

 

(プールサイドの焼け跡。あの異様な匂いはーー)

 

 

 

【裁きの祠】

 

(アナウンスに従い、全員が裁きの祠に集まった。)

 

(全員が揃ったところで、エレベーターへの道が現れ、エレベーターに乗り込んだ。)

 

(頭と両腕を切断された被害者…。)

 

(”前回”でも、そんな死体を見ることはなかった。)

 

(まさか…『ダンガンロンパ』が「コロシアイを盛り上げるため」に…?)

 

 

(…『ダンガンロンパ』は、今度は私に”超高校級の生存者”を演じさせようとしている。)

 

(そんな思惑には乗らない。私は、『ダンガンロンパ』を終わらせる。)

 

(首謀者の白銀を…この裁判で、引きずり出して…。)

 

(終わらせてやるんだ。)

 

(この、嘘ばかりの学級裁判を……!!)

 

 

 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル2】

死体は頭と両腕を切り取られている。左腕の発見現場はプール内。その他の発見現場は”超高校級の絵本作家”の研究教室。頭と右腕はピラニアの水槽に入れられて喰われている。死因は不明。死亡推定時刻は午前2時半頃。

【ナタ】

“超高校級の絵本作家”の研究教室で発見された。校舎3階の教室から持ち込まれたと思われる。血が拭き取られた形跡がある。

【ギロチン】

“超高校級の絵本作家”の研究教室に置かれた大型のギロチン。刃に血が付いているが、実際に何かを切断することはできない。

【テーブル】

“超高校級の絵本作家”の研究教室にある小型のテーブル。脚の部分が折れていて、血が付着している。

【ピラニア水槽】

“超高校級の絵本作家”の研究教室にあるピラニア入りの水槽。被害者の頭と右腕が入れられてピラニアに喰われていた。被害者の爪の部分は喰い残されている。

【長い黒髪】

ピラニア水槽の目立たない所に落ちていた黒くて長い髪の毛。

【市ヶ谷のモノパッド】

プールサイドで発見された。被害者の左腕に握られていた。市ヶ谷 保のもの。

【プールサイドの焼け跡】

左腕が発見されたプールサイド付近に糸状の何かを焼いた痕跡がある。

【プールの校則】

夜時間はプールでの遊泳は禁止されている。校則違反があった場合は校内中にサイレンが鳴り響き、違反者は八つ裂きにされてしまう。

【寄宿舎のドア】

寄宿舎のドアは火事による修繕がされた。修繕中、寄宿舎にいたのは市ヶ谷とモノクマのみで、他の生徒は立ち入り禁止だった。市ヶ谷が施したピッキング防止加工により、他人の部屋に入ることはできない。

【火災報知機】

火事の際、寄宿舎で火災報知機が鳴った。プールには火災報知機はない。

【市ヶ谷の個室】

市ヶ谷の個室は、荒らされたり争った形跡はない。市ヶ谷が布団で寝ていた跡も残っている。

【市ヶ谷の動機ビデオ】

市ヶ谷の個室の枕の下から発見された。起動しようとしてもエラーになるため、動機ビデオは再生されない。

【朝殻の証言】

朝殻は午前2時頃、市ヶ谷の悲鳴と彼女が走って寄宿舎を出て行く物音、それを追う足音を聞いたらしい。

 

学級裁判編へ続く

 

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