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第4章 虚の世界で人に問ひて、生かせ、呪う 学級裁判編Ⅰ

 

コトダマリスト

 

【モノクマファイル4】

被害者は、”超高校級のママ” 大場 大吾郎。死体発見現場は、”超高校級のサンタクロース”の研究教室の寝室。死因は不明。

【死体の状態】

死体は男子用寝室にて発見された。手で首を押さえ、苦悶の表情を浮かべている。首に絞殺跡はない。口内は血で汚れている。

【毒薬の瓶】

クリスマスツリー下の赤い包装のプレゼントボックス内にあった毒薬の瓶。瓶は分厚いのにも関わらず、叩き付けられたようだった。

【毒薬の説明書き】

モノクマから渡された毒薬の説明書。『この毒薬は、体内に入ると呼吸器系を破壊する。経口摂取、吸引摂取、静動脈注射等により服用させること。』とある。

【布団の汚れ】

赤いギラギラした蛍光色の汚れが発見現場の布団や床に付着していた。枕元には血痕も残っている。

【大場のジィ-SHOCK】

大場が右手首にはめていた時計。20時過ぎを指していた。学園が雪山に覆われた際、モノクマが用意した。狂いやすく、少しの衝撃で止まりやすい。

【大場のハンカチ】

現場のゴミ箱に捨てられていた。前回の裁判で大場が使っていたハンカチ。黒く変色した血が付いている。

【雪だるま】

“超高校級のサンタクロース”の研究教室に作られていた3段の雪だるま。バケツと腐りかけのニンジンが使われている。事件前、春川たちが探索した時はなかった。

【ゴミ箱の包装紙】

死体発見現場の隣の女子用寝室のゴミ箱に、赤と緑の包装紙が捨てられていた。クリスマスツリーの下のプレゼントの包装紙と思われる。

【空のプレゼント】

クリスマスツリーの下に置かれたプレゼント。赤・青・緑の包装紙と白いリボンで それぞれラッピングされている。赤には毒薬、青には水、緑には睡眠剤が入っているが、赤い包装紙の箱1つは空になっていた。

【色の変わったリボン】

赤・青・緑全てのプレゼント包装に使われている白いリボンのうち、空のプレゼントボックスのリボンは赤く変色していた。リボンは長く、約3mの長さ。

【睡眠剤の瓶】

リビングの暖炉付近に落ちていた。クリスマスツリーの下に置かれたプレゼントのうち、緑の包装紙に入っていたもの。

【キーボの写真】

事件前のクリスマスツリー下にあるプレゼントの写真。1枚目は昼に春川達が出かける直前の写真。プレゼントが15個映っている。2枚目は18時頃 春川達が戻った後の写真。プレゼントは13個になっている。

【ログハウスの造り】

ログハウスのエントツは”超高校級のサンタクロース”の研究教室のリビングと寝室2つの暖炉に繋がっているが、暖炉には降りられないようになっている。エントツの途中に横穴があり、寝室の天井裏と繋がっている。天井裏の穴は人の頭くらいで寝室に入ることは不可能。

【事件時の天候】

モノクマによると、19時頃から雪は止んでいた。

 

 

学級裁判 開廷

 

「では…裁判の前に簡単なルール説明を…と思ったけどー…やる気 出ないから飛ばしまーす…。」

 

(裁判長席のモノクマが捜査時間と同じく、気だるげな声を発している。)

 

「もー!いい加減やる気 出してよ!せっかく犯人見つけるために一生懸命 捜査したのに!!」

 

「あー…そうだね。うん…そうだね。運送業は大変だね。」

 

「ありゃりゃ。ハルマキちゃんが 動機を ぶっ壊しまくっちゃったから、拗ねてるのかな?」

 

「春川さんが壊した動機はカードキーだけですよ。」

 

「……。」

 

「うん。ま、どうでもいいよ。モノクマが うるさくないなら最高だよね!始めよっか。」

 

 

「……被害者は大場。死因も死亡時刻もモノクマファイルにねーが…寝室に毒薬が落ちてたし、あいつの時計は8時過ぎを指していた。」

 

「20時に、毒を飲まされたってこと…だよね。その時…わたし達は寝室のすぐ外で寝ちゃってたよ。」

 

「私はオオダイちゃんの部屋 横の寝室で寝てたよー。」

 

「ワシはログハウスから離れとったのう。」

 

「彼…彼女…彼の枕元には血痕が残っていた。布団には毒薬と思しきシミも付着していたね。」

 

「大場さん…わたしたちのために…たくさん頑張ってくれたんだよね。」

 

「そうだね。絶対 犯人を見つけないとね。」

 

「ね?なぜかオオダイちゃんの寝室で寝ていたハネゾラちゃん?」

 

「ああ!?オレを疑ってんのかよ!?」

 

「だって、この事件を起こせるのは、キミしかいないよ?」

 

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「マリユーちゃんがログハウスに戻ったのは20時前くらい。そこでは、みんながスヤスヤ寝てた。」

 

「オオダイちゃんの時計的に、犯行って それくらいの時間なんだよね?その時、ハネゾラちゃんはオオダイちゃんの寝室に2人きりだったじゃない。」

 

「あのな!オレは大場を部屋に運ぶために寝室に入っただけなんだぞ!」

 

「じゃあ、どうしてオオダイちゃんの部屋でスヤスヤ眠ってたの?」

 

「知るかよ!」

 

「わたし達も、ログハウスに戻ってからすぐ寝ちゃったよね。あれって、疲れてたからなのかな…。」

 

「…お前さんらは、まるで睡眠薬でも盛られていたかのように眠っておったぞ。」

 

 

【大場のジィ-SHOCK】→ログハウスに戻ってからすぐ

【睡眠剤の瓶】→睡眠薬を盛られていた

【布団の汚れ】→睡眠薬を盛られていた

 

 

 

「何だ?テメーもオレを疑ってんのか?適当なことばっか言ってると、その鉄 溶かすぞ。」

 

「ボクを見ながら物騒なことを言うのはやめてください!」

 

(あの意見に賛成してみよう…。)

 

 

back

 

 

 

「それに賛成です!」

 

「ツリーの下にあったプレゼント…その内の1つ…緑の包装に入ってた睡眠剤の瓶が暖炉前で見つかったよ。」

 

「そういえば、あったねー。」

 

「なるほど。犯人が睡眠剤を使って僕らを眠らせ…その間に大場さんを殺害したんだね。」

 

「大場のしていた時計は、あんま正確じゃねぇ。犯行時間が20時ぐらいだっただけだろ。つまり、オレだけが怪しいってわけじゃねー。」

 

「わー、本当だ。ごめんね?」

 

「でも…どうして、みんな眠っちゃったんだろう。わたし達、飲み物とか飲んでなかったのに。」

 

「そうじゃな。摂取していなければ眠ることはあるまいて。」

 

(確かに…犯人が全員に睡眠剤を飲ませるような機会はなかった。それなのに、ログハウスにいた人間が寝てしまったのは……)

 

 

1. 催眠術にかかっていたから

2. 疲れていたから

3. 睡眠剤の揮発性が高かったから

 

 

 

「わー!ハルマキちゃんの冗談って面白いね!お茶の間の爆笑王みたい!」

 

(冗談を言ったつもりはないんだけど…。)

 

 

back

 

 

 

 

「睡眠剤は…揮発性が高い薬品だったんじゃないかな。だから、部屋全体に撒かれていたことで、睡眠剤を吸って眠ってしまった。」

 

「そっか そっかー!前の火事で使われた睡眠薬とは、ちょっと違ったんだねー!」

 

「………。」

 

「タマ…お前さん、今は元気そうに見えるが…体の調子は本当に良くなったんじゃな?」

 

「うん、みんなの看病のおかげで全快したよー!ありがとう!!」

 

「そうみたいだね。本当に良かったよ。」

 

「……。」

 

「睡眠剤が使われたってことは、ログハウスにいた人みんな眠っちゃったってことだよね。」

 

「揮発性の高さを利用したということは、犯人も睡眠剤を吸う可能性が高いはずです。」

 

「ログハウスにいた奴は犯人じゃない…そういうことになるかもしれんのう。」

 

 

「いや…いるだろ。」

 

「えっ?いる?」

 

「ログハウスにいた人間の中に睡眠薬が効かないヤツがいる。」

 

「睡眠薬が効かない人…?」

 

「前に宿舎が火事になった時も、睡眠薬が使われたろ。」

 

「……そうだね。僕らは、火事の火災報知機が鳴り響く中、熟睡していた。その中に睡眠薬が効かない人がいた。」

 

(睡眠薬が効かない人間。その内、今回ログハウスにいたのはーー…)

 

 

▼ログハウスにいた中で睡眠薬が効かないのは?

 

 

 

「春川さん!よく思い出してください!」

 

(火事の前に私は全員に睡眠薬を盛った。それでも、起きてきた奴が2人いた。その中で、今回ログハウスにいたのはーー…)

 

 

back

 

 

 

 

「キミしかいません!」

 

タマ。あんたは…睡眠薬は効きにくいって言ってたね。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……春川、オレが言ってんのは、テメーのことだよ。」

 

「……!」

 

「あの火事…タマさんが起こしたんだよね?タマさん、睡眠薬 飲まなかったんじゃない?」

 

「あの火事の日、睡眠薬が効かずに起きたのは…ワシと春川じゃったな。」

 

「……そう、だったね。」

 

「睡眠薬は成分によって効きにくい体質というものもあるからのう。」

 

「フム。確かに、ログハウスにいて睡眠薬が効かなかったのは、春川さんということになる。」

 

「けれど、僕は春川さんに賛成だよ。僕らが寝かされていた間…タマさんだけは、起きていた。」

 

「…どういうことじゃ?」

 

「根拠があるんですか?」

 

「タマさんが起きていた根拠…それは現場のログハウス前にあったものだよ。」

 

(タマが起きていた?その根拠は…。)

 

 

1.【雪だるま】

2.【空のプレゼント】

3.【死体の状態】

 

 

 

「それが『タマさんが』という根拠になるかい?」

 

(違うなら、さっさと答えてくれればいいのに。)

 

 

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「綾小路が言ってるのは…ログハウスの外にあった雪だるま…だね。」

 

「ああ、あの雪だるま。鼻がニンジンの…。」

 

「あの赤鼻の雪だるまか…。」

 

「え?あのニンジン、結構 黒ずんでたよね?」

 

「そうそう。飲みすぎて急性アルコール中毒になったオッサンみたいな土気色だったよね!」

 

「いや、あれは雪だるま…じゃない。スノーマンだよ。」

 

「あ?スノーマン?」

 

「わが国の雪だるまは達磨が元になってる。多くは胴と頭の2段だ。けれど、ログハウスの外にあったものは3段だった。」

 

「あれは欧米のスノーマン…欧米では3段にするらしいからね。僕が考えるに、麻里亜君以外であれを作れたのは1人だ。」 

 

「……ワシはスノーマンなんて作ってないのう。」

 

「ん?それで、私が作ったって言いたいんだ?」

 

「でも…タマさんは高熱で倒れてたんだよ。わざわざ雪だるまなんて…」

 

「高熱は嘘だった。そして、我が国の雪だるまを作ったつもりで、自国風の雪だるまを作ってしまった。これでQED.だ。」

 

「そんな!私の出身地域も知らないくせに分かったようなこと言わないでよ!確かに、私のは仮病だったけれども!」

 

「……今、何と言いましたか?」

 

「だから、確かに私のは仮病で、スノーマンも私が作ったけれども!って言ったんだよ!」

 

「さっきよりも情報が増えてます!」

 

「仮病だと?マジで仮病使ってたのかよ!?」

 

「本当に熱もあったのに……!?」

 

「わざと骨 折ったり、脱臼すれば熱くらい出るんだよ。学校ズル休みしたい時の便利な裏ワザだね!」

 

「その状態では、もうズル休みと言えないのでは…?」

 

「ていうか、骨 折ったの!?」

 

「大丈夫!ちょっと肩 脱臼させただけ。もう元に戻したから。」

 

「それは…『だけ』なのか…?」

 

「……何で、そんな嘘ついたの?」

 

「理由なんてないよ!雪の中 探索するの嫌だからサボってただけ!」

 

 

 

ノンストップ議論2開始

 

「私、暖かい地域 出身だから、雪の中 外に出るの嫌だったんだ。…ごめんなさい。」

 

「そう言ってくれれば良かったのに…。」

 

「いや、嘘だろう。あのスノーマンは作り慣れた人が作ったものだよ。」

 

「私、器用なんだ。慣れてなくても雪祭り級の作品 作れるくらいには。」

 

「さすがに、雪祭り級は おこがましいよ。それに、雪の中 外に出るのが嫌なら、何故わざわざスノーマンを作ったんだい?」

 

「もー、アヤキクちゃんは揚げ足取りばっかの良い夫になりそうだよね!今は私の仮病よりも、誰が睡眠剤なんて撒いたのかって話でしょ?」

 

「私、そんなことしてないよ!私が使った証拠はないでしょ?」

 

 

【ゴミ箱の包装紙】→タマが使った証拠はない

【毒薬の瓶】→タマが使った証拠はない

【大場のハンカチ】→タマが使った証拠はない

 

 

 

「憶測でばかりモノを言うでない。お前さんのAIが泣いとるぞ?」

 

「いえ、ボクは泣けない仕様です。泣く必要性がありませんから。」

 

 

back

 

 

 

「それは違います!」

 

「あんたが使ってた寝室…あそこのゴミ箱に、プレゼントの包装紙が捨ててあった。」

 

「え、そんなの…朝にはなかったよ?」

 

「ハッ!タマ…テメーがオレらを眠らせて…大場を殺したのか!?」

 

「んー、普通に考えれば、そうなっちゃうよねー。」

 

「……待て待て。なぜ、タマが殺人を犯したとまで言われるのじゃ。」

 

「女子部屋にあった包装紙が赤いきつねと緑のたぬき、どちらもだったからだよね?」

 

「何じゃと…?」

 

「どちらもって…。」

 

「緑は睡眠剤。赤は毒…だったね。」

 

「どういうことじゃ?なぜ両方の色の包装紙が…?」

 

「私が睡眠剤と毒を持っていたってことだよね、ハルマキちゃん?」

 

「でも…その推理は、超クレーター級の顔を持つサラリーマンみたいに穴だらけだよ!」

 

 

 

ノンストップ議論3開始

 

「朝、包装紙はゴミ箱に入ってなかったんでしょ?」

 

「う、うん。朝、ご飯 運んだ時、ゴミ箱は空だったよね。」

 

「でも、そこから捜査時間まで、誰も確認してない。私が寝てる間に誰かが捨てに来たのかもしれないよ。」

 

「仮病だったくせに、よく言うぜ…。」

 

「私以外でも女子なら部屋に出入りできたよ?エイリオちゃんやハルマキちゃんが使ったのかも!」

 

いつ捨てられたか分からないゴミ箱の包装紙で私を疑うのはおかしいよ。犯人が偽装しただけだよ!」

 

 

【睡眠剤の瓶】→ゴミ箱は空だった

【キーボの写真】→いつ捨てられたか分からない

【事件時の天候】→いつ捨てられたか分からない

 

 

 

「え?わたしゴミ箱について思い違いしてる…?ゴミ箱ってゴミを捨てる あの箱のことでいいんだよね?」

 

「春川さんが変なことを言ったせいで、エイ鮫さんが大混乱に陥ってますよ。」

 

(…考え直そう。)

 

 

back

 

 

 

「それは違います!」

 

「いつ捨てられたか。それは…ある程度 絞れるよ。」

 

(私はキーボの写真を手に取った。)

 

「えっと…それ、クリスマスツリーの下のプレゼントの写真?」

 

「はい。1枚目は春川さん達が今日 出掛ける直前の写真、2枚目は帰宅後すぐの写真です。」

 

「私たちが出掛ける前、プレゼントは全部で15あった。でも、帰って すぐの写真を見ると…2つなくなってるんだよ。赤と緑のプレゼントの箱が…ね。」

 

「つまり、包装紙をゴミ箱に捨てることができるのは、みなさんが外にいた時間に単独行動を取っていた人物…被害者を除けば、キミしかいません!」

 

「キーボーイもじゃない?」

 

「えっ…。」

 

「私だけじゃないよ。その時、なぜか不自然にスリープ状態になってたっていうキーボーイ。キミだって、それができたよね?」

 

「ボクは…おそらく犯人によってスリープ状態にさせられていたんです。」

 

「嘘 言ってない?証拠は?」

 

「それは……」

 

「キーボーイって、いつも ここぞという時を見落としてるみたいだけど…どういうこと?何で?どうしてなの?」

 

「……。」

 

「そ、そんなに言ったら可哀想だよ。キーボ君は結局、機械なんだもん。仕方ないって。」

 

「……。」

 

(エイ鮫の一言がトドメとなって、キーボのアンテナ部分が うなだれる。すっかり落ち込んでしまったらしい。)

 

 

「タマ。あんたは、睡眠剤を撒いてないって言うんだね?」

 

「あ、ううん。やったのは私だよ。」

 

「……。」

 

「はああああ?!」

 

「そうそう。赤と緑のプレゼントを開けて、緑のプレゼントに入ってた睡眠剤を撒いたのは、私。」

 

「ついでに、みんなが出かけてる間、キーボーイがスリープ状態になっちゃったのも、私のせい!」

 

「また!キミは どうして、そう…!」

 

「だって、みんな出て行った後 見たら、キーボーイのガラ空きの背中があったから。」

 

「くっ…それで、ボクのうなじのボタンを押したんですね!やっぱりキミの仕業じゃないですか!」

 

「でも、その後…ハルマキちゃん達が帰って来て、オオダイちゃんが死んだ時にスリープ状態にしたのは私じゃないよ?」

 

「私はただ、みんなが帰って来てから、みんな寝たか確認しただけ。その時、みんなと同じようにキーボーイも転がってたよ。」

 

「それで、暇だからスノーマン作りに外に出たの。キーボーイが肝心な時に見張りもできない役立たずだったのは事実だよ?」

 

「……いえ、その時、キミがスリープ状態にした可能性があります。」

 

「えー、本当なのになー。」

 

「……しかし、また唐突な自供だったね。」

 

「ごめんね?びっくりさせないように小出しに自供しようと思って。」

 

「十分びっくりしてるよ!何で、そんなことしたの!?」

 

「やだなー、エイリオちゃん。事件前に、そんなことする理由なんて1つでしょ?」

 

「オレらを眠らせて…その隙に大場を殺したってことだな!」

 

「待たんか。タマみたいな子どもが、そんなことをするわけなかろう。」

 

「もー、マリユーちゃん。いつまでも子ども扱いしないでよね!」

 

「サンタを信じとる内は子どもじゃよ。子どもは守られるべきでーー…」

 

「あー、ごめんね。私、実はサンタさんって信じてないんだ!私のところに来たこともないしね。」

 

「………。」

 

「タマさん。そ、そんな…はっきり…。」

 

「フッ…そうかい。分かったよ。」

 

(麻里亜は、これまで裁判場では見せたことのないニヒルな笑みを浮かべた。)

 

 

「えっと、それで…タマさんは…殺人のために、わたし達を眠らせたってこと?本当に?」

 

「そうだな。睡眠剤に毒のプレゼントも開けてんだ。現場に落ちてた毒は、こいつが開けたもんだろ。」

 

「そのために、仮病を使って1人ログハウスで寝ていたのか…。」

 

「半分正解だけど、半分違うかな。私が睡眠剤を使ったのは、殺人のためだけど、私が誰かを殺すためじゃないよ!」

 

「誰かの殺人をしやすくしてあげようとしたんだよね。」

 

「信じられっか!」

 

「えー?何で信じてくれないの?本当のこと言ってるのに。」

 

 

 

ノンストップ議論4開始

 

「テメーが睡眠剤を撒いたんだろ!それでログハウスにいたヤツは寝ちまってんだ。」

 

全員が寝てたとは限らないんじゃない?」

 

「ああ。だが睡眠剤の中で起きてられたヤツも限られてる。」

 

「それより、テメーが赤と緑の包装紙を捨ててんのは間違いねーんだ。」

 

「毒薬の入ったプレゼントで開けられたのは、タマが開けたモンしかなかったんだからな!」

 

 

【モノクマファイル4】→全員が寝てたとは限らない

【毒薬の説明書き】→タマが開けたものしかなかった

【空のプレゼント】→タマが開けたものしかなかった

 

 

 

「毒薬も睡眠剤もタマが持ってたんだろ。じゃあ、タマしか犯人は考えられねーはずだろ。」

 

「……。」

 

(キーボは落ち込んでいる。…仕方ないね。)

 

 

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「それは…違います…。」

 

「あれ?キーボーイ、ずいぶん元気ない『それは違います』だね?」

 

「テメーのせいだろ。」

 

「クリスマスツリーの下のプレゼント…その中の1つ…赤い包装の中身はなくなってたよ。」

 

「そうそう。だって、私が開けた毒薬は、ここにあるもん。」

 

「何?」

 

(タマが小瓶を手に掲げて見せた。確かに、毒薬の瓶だ。)

 

「じゃあ、タマさんは毒薬を開けたけど使ってなかったってこと?」

 

「嘘に決まってんだろ。使った瓶に水でも入れてるんだ。」

 

「えー、じゃあ現場に落ちてた瓶は何?この毒薬は、本当に ずっと持ってただけだよ。誰かが私を殺す用に、枕元に置いてたんだ。」

 

「…どういうことだい?」

 

「食料に困ってる状況で危険な暗殺者が弱ってる…絶好の殺人チャンスだからね!」

 

「テメーは…何がしてーんだ?」

 

「えー?分かんない?」

 

「もしかして…タマさん、みんなのために犠牲になろうとしたの?」

 

「…あはは。お人好しらしい推理だね!うん、そういうことにしとこっかな!」

 

「…そりゃ真実じゃねぇってことか…?いい加減、真実ってヤツを話してくれよ。」

 

「真実だよ。睡眠薬が効かない誰かが、私を殺してくれるだろうと思って待ってたの。でも、いくら待っても誰も来ないし、外出たら みんな寝てるし。」

 

「せっかく、美しい自己犠牲の精神で、私を殺させて事態を収めようとしたのにね。」

 

「ハッ…だとしたらクロも道連れだろうが。どこが自己犠牲なんだか。」

 

「自己犠牲なんて所詮 自己愛ってことだよねー…。戦争は平和というようにー。自由は隷従というようにー。無知は力というようにー。」

 

「そんなに無気力にオーウェルのディストピア小説を語らないで欲しいな。……けれど、現状 タマさんが容疑者と言わざるを得ない。」

 

「ああ。毒薬の瓶をタマが2つ開けたってだけだろ。」

 

 

「……タマ。お前さん、何か他に反論できる材料はねーのか?」

 

「うーん。そうだなぁ。キーボーイ、みんな寝ちゃってる間の画像はない?」

 

「…え?」

 

「だから、みんな眠っちゃった直後のツリー下のプレゼントの写真だよ。みんなが眠るよりはキーボーイがフリーズしたのは遅かったんでしょ?」

 

「……あ、はい。綾小路クンがツリー近くで倒れましたから、プレゼントも見ていますね…。」

 

(うなだれたアンテナの下で、キーボの口から写真が排出された。ルーペを使って それを確認すると、プレゼントの箱が10個 映し出されていた。)

 

「10個…しかない。」

 

(ルーペと写真を隣に回す。)

 

「おかしいな。僕らがログハウスを出る前は15あったプレゼント。タマさんが睡眠剤と毒薬の箱2つを持って行き、13…3個は どこへ行った?」

 

「誰かが水を飲んだ…わけじゃなかったな。だが、赤青緑3個がなくなってるみてーだな。」

 

「ああ。さらに おかしいのは…捜査時間に その3個が戻って13個あったってことだな…。」

 

「みんなが帰って来た時13個だったプレゼントが、眠った直後には10個になっていた。部屋にいた私には無理だよ。私の容疑は晴れるよね?」

 

「チッ…。」

 

「そっか。これって重要な証拠だね。キーボ君、ありがとう。」

 

「そ、そうですか。…そうですか!」

 

(キーボのアンテナが再び元気を取り戻した。)

 

「つまり、こういうことですね。タマさんは確かに緑と赤、2つのプレゼントボックスを持ち出しましたが、赤い箱の中の毒薬は使われず…」

 

「犯人は赤い箱を含めた3つを、春川さん達が帰って来てから寝るまでの間に持ち出し、毒薬で大場さんを殺害後、ツリー下に戻した。」

 

「何でそんなこと?」

 

「寝ているフリをしていた人間が、そうやって殺人を犯したのかもしれないね。」

 

「そうだね。被害者の1番近くにいた人とか怪しいんじゃない?」

 

「テメー!ふざけんな!!テメーの疑いが完全になくなったワケじゃねーんだぞ!」

 

 

「寝ているフリ…もしかして、犯人って何とか眠気に耐えながら殺人を犯したんじゃないかな?」

 

「どういうこった。」

 

「だって、みんな寝てる中 大場さんに毒を飲ませるだけなのに…犯人は布団に たくさん零したり、毒薬の瓶を割ったりしてたんだよ。」

 

「大場さんが抵抗したんじゃないかな。彼女の時計は8時過ぎで止まっていただろう。」

 

「抵抗した時の衝撃でジィ-SHOCKが止まったのかもね。」

 

「しかし…大場さんは、かなり弱っていました。その上、タマさんの睡眠剤を吸っていたとしたら、そんなに抵抗できるものでしょうか。」

 

(大場の時計は8時で止まっていた。犯行時に壊れたと思っていたけど…。)

 

(大場は…私と一緒に、裏庭で思い出しライトを見つけた。ボイラー室の…地下道に続くマンホールの上にあった思い出しライト。)

 

(もしかして…。)

 

 

「あ、もう8時過ぎなんだね。雪も降ってきたし、やっぱり1度戻ろう。」

 

「……もう9時過ぎだよ。」

 

 

(昨日の朝…大場は、マンホールの先…地下道にいた…?)

 

(だとしたら、あいつの時計が止まったのはーー…)

 

 

1. 殺された時

2. 地下道のデスロードに挑戦した時

3. 麻里亜に首トンされた時

 

 

 

「キーボーイの次の就職先は、寝起きが悪い人のための走るタイプの目覚まし時計だね!」

 

「そんな仕事より、もっとボクが活躍できる場があります!」

 

 

back

 

 

 

 

「犯行時に大場の時計が壊れたわけじゃないとしたら?」

 

「えっ?」

 

「あいつの時計が止まったのは、今日の午後8時じゃない。昨日の午前9時だったんだよ。」

 

「午前だと?」

 

「昨日、私は朝 裏庭であいつを見た。その時、あいつは右腕をケガしてたみたいだよ。」

 

「あれは…朝9時ぐらいだったけど、あいつは時計を見て8時過ぎだって言ってたんだよ。」

 

「そ…そういえば、大場さん、傷だらけだったよね。」

 

「遭難者というよりは戦地負傷者って感じだったよね。」

 

「一体、彼…彼女…彼は、どこで何をしていたのだろうか。」

 

「……どこかに、モノクマのトラップがあったのかもしれないね。」

 

「あー…、そうそう、春川さんは知ってたね。裏庭のボイラー室のマンホールの下、絶望のデスロードに繋がってるんだよねー…。」

 

「……!」

 

「ま、そこが、この才囚学園の出口なワケだけどぉー…難易度ウルトラSだから〜大場さんは1人で頑張ってたのかなー…。」

 

「ちょっと待ってくれないかい?出口…と言ったかい?」

 

「そこから…出られるってこと?」

 

「は〜い…そうで〜す…。」

 

「しかも…春川は知ってたって、どういうことだ?テメー…また隠してたのかよ!?」

 

「……春川。どういうことか…話してもらおうか…。」

 

「出口を隠してた…なんて、思い出しライトを隠してたとか、動機を壊したとかと話が違うよねぇ?」

 

「……モノクマのデタラメだよ。私はボイラー室で大場と思い出しライト入りの宝箱を見つけたけど、その先に道があったなんて知らなかった。」

 

「そ、うだよね。いくら春川さんが力持ちでも…マンホールを取り外したりできないよね。」

 

「ハッ、どうだかな。」

 

「……。」

 

(私は思い出しライトを見つけた時以外、裏庭に近付いてない。モノクマは…私に”前回”の記憶があると知っている…?)

 

 

「いいの?吹雪を止めたら、春川さんの目論みもオジャンかもよ?」

 

 

(あの時、ああ言ったのも、私に記憶があると知っていたから…。)

 

(…そうだ。記憶を消したり植え付けたり…『ダンガンロンパ』は簡単にできる。私の記憶は…あえて残したのかもしれない。)

 

 

「ミステリ好きにとって、もはや意外性のある犯人なんて存在しないのさ。『ダンガンロンパ』のファンにとっても、ね。」

 

 

(1回目の裁判で、モノクマは『ダンガンロンパ』の名前を出した。……私に記憶があると…分かっていて。)

 

「春川さん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫…だよ。」

 

「ねー、ハルマキちゃん。本当に本当に出口について知らなかったの?今、言い訳 考えてたの?」

 

「…そうじゃないよ。」

 

(全員の視線が集まる。疑心に満ちた目。)

 

(私は…全員を犠牲にしてでも『ダンガンロンパ』を終わらせようとしている。そんな目で見られるのも…当然だ。)

 

 

「……わたしは信じるよ!春川さん!」

 

「……!」

 

「春川さんは、信頼できる人だよ!」

 

「何の根拠があって言ってんだよ。春川は今までだってなぁ、」

 

「そんなの関係ない!信じるって、そういうものでしょ!わたしは春川さんを信じたいから信じるんだよ!」

 

「……。」

 

「春川さんは嘘なんて言わない!わたしの魂が、そう叫んでるんだよ!!」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「…………ごめん、最後のはナシ…。」

 

(エイ鮫は顔を赤くして俯いた。)

 

「読者 置いてけぼりなまま熱いバトルに突入する少年漫画みたいな演説だったね!」

 

「と、とにかく、春川さんよりモノクマを信じるなんて おかしいよ!みんなは、春川さんとモノクマどっちを信じるの?」

 

「春川さんとモノクマどちら…と言われると辛いところだね。」

 

「ああ…。モノクマは俺らを仲間割れさせてーらしいからな。」

 

「うん!ハルマキちゃんはコロシアイを止めようとしてるし、裁判でもみんなを導いてくれてるもん!そんなハルマキちゃんが嘘なんて言うはずないよ!」

 

「テメー…すぐ手のひら返してんじゃねー!」

 

 

「とにかく…ここで議論すべきは、大場さんの行動についてです。」

 

「そうだね。大場さん…出口を見つけたって、どうして わたし達に話してくれなかったんだろ…。」

 

「……大場は、昨日の朝…地下の道を発見したのかもしれないね。」

 

「一昨日、私と大場で裏庭の思い出しライトを見つけた。その時、何か気付いて…昨日の朝1人で見に行った。」

 

「マンホールの先…本当にトラップだらけの道があったなら…あいつは1人でトラップを解除してから、私たちに言うつもりだったのかもしれない。」

 

「何故そんな…。」

 

「…それだけ、トラップが危険なものだったんだよ。」

 

「あいつは…お前さんらが傷付くところを見たくなかったんだろうよ。」

 

「…大場さん…。」

 

「全く…無理するなと…言ったのにな…。」

 

「……これで大場さんの死亡時刻が8時でない可能性も出てきたわけだ。そして、彼女…彼の時計は抵抗によって壊れたわけじゃない。」

 

「そうだね。オオダイちゃんが寝てた寝室にも睡眠剤は撒いたから、オオダイちゃんは ぐっすり寝てたはずだよ。」

 

「それじゃあ、毒薬が布団に溢れてたり、瓶が割れてたりしたのは…やっぱり犯人が眠かったから…?」

 

「眠すぎて手元が狂ったってことか。」

 

「それか、犯人は余程の不器用者ということかな?」

 

「しかし、やはり無抵抗の寝ている人間に毒を飲ませるだけで、手元が狂うとは思えません。」

 

「キーボーイは眠いことなんて製造されてから今まで1度もないもんね…。」

 

「何ですか。その憐れみに満ちた目は。ボクは悔しくなんてないですからね。むしろ眠くて前後不覚になる皆さんの非合理性に同情します。」

 

「でもさー、あの瓶 手元から落としたくらいで、あんなに粉々になるかなー?」

 

「確かに、瓶には厚みがあった。叩きつけでもしない限り、あんな風に割れるとは思えないね。」

 

「……犯人と被害者の間に…物理的距離があったのかもしれねぇぜ…。」

 

(犯人と被害者に…距離があった?だとしたら、犯人は…どこから毒を飲ませた…?)

 

 

1. 天井裏

2. クリスマスツリーの下

3. 暖炉の中

 

 

 

「ど、どうして、そんなところから?」

 

(どうしてだろう…。)

 

 

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天井…犯人は、天井から毒を飲ませたのかもしれない…。」

 

「あの寝室の天井は、それぞれ天井裏から板が外せるようになっていて、そこには人の頭大の穴がありました。」

 

「そこから毒薬を口に運んだ…ということですね。その際、天井から誤って瓶を落として、瓶は割れたのかもしれません。」

 

「ハア!?天井から毒薬を溢して大場に飲ませたってのかよ?」

 

「えっと…結構 難しいんじゃないかな?確かに、たくさん布団に溢れた跡があったけど…。」

 

「そうですね。被害者の口に入れようとするには、無理がありますが…。」

 

「……なるほど、“あれ”を使えば…あるいは難しいことではないのかもしれない。」

 

(”あれ”か…。現場のログハウスで、事件前後で変化したものがあった。それは…)

 

 

1.【大場のハンカチ】

2.【色の変わったリボン】

3.【ログハウスの造り】

 

 

 

「論破より証拠。『よく考えて、証拠を つきつけろ』ということだね。」

 

「論より証拠…ではありませんか?」

 

 

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プレゼントのリボンだよ。犯人はそれを使ったんじゃないの。」

 

「ツリーの下のプレゼントの包装。1つだけ、リボンの色が赤く変色したものがありました。」

 

「それが何だよ?」

 

「あのリボンは大腸2人分くらい長いんだよ。犯人は、天井からリボンを垂らし、毒薬をリボンに伝わせる形で被害者の口に運んだんじゃないかい?」

 

「似たケースを、昔のミステリで読んだんだけどね。」

 

「そうそう〜…新しいトリックなんて早々 生まれないんだよ〜…だいたいは既存のパクリってね〜…。」

 

「言い方も発言もやる気がないね…。でも、それなら白いリボンが変色してたのも分かるね!」

 

「あの毒薬、かき氷のイチゴシロップ並みに着色料 使ってるからね。だから、リボンも着色されたみたいだね…。」

 

「飲んだら、かき氷 食べた時みたいに舌が蛍光色の赤でギラギラ光るから、おすすめだよー…。」

 

「かき氷のイチゴ食べてもギラギラには ならないけど…。」

 

「しかし…天井裏に どうやって入るかが問題じゃねぇか?」

 

「……。」

 

「どうですか?春川さん。あのログハウスの構造で、どうやって天井裏に入ったのでしょう。」

 

 

1. 喉から

2. 熱から

3. エントツから

 

 

 

「あ?『テメーの風邪は どこから?』って話でもしてんのか?」

 

(してないね…。)

 

 

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エントツだよ。」

 

「エントツからだぁ?」

 

「でも、あのエントツって、暖炉までは降りられないんだよね?」

 

「確かに、エントツから暖炉まで人が降りることはできないよう、網状に仕切りがありました。でも、途中 横穴があるんです。」

 

「犯人はエントツの横穴から進入し、大場がいた寝室の天井裏に入ったんだよ。」

 

「しかし、暖炉の炎は ずっと燃え盛っていた。煙の吐き出し口であるエントツに入るなんてことは、難しいんじゃないかな?」

 

「横穴はエントツから、1mほどの所にありました。慣れていれば…できないことはないでしょう。」

 

「でも、かなり火や煙に慣れてないと無理だろうね。そんなことしたら、煙のせいで涙が止まらなくなっちゃうよ。」

 

「……。」

 

 

▼天井裏には入れたのは?

 

 

 

「春川さん!合理的に考えれば分かるはずです!ゆっくり、落ち着いて、慎重に考えてください!!」

 

(…耳元がやかましい。)

 

 

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「キミしかいません!」

 

麻里亜…天井裏に入れるのは、あんただけだよ。」

 

「……フッ。そうかい。」

 

「あ?テメーが犯人か?」

 

「えっ…そ、そうなの?」

 

「そっかー、マリユーちゃんならエントツからの不法侵入も慣れてるし、常に泣いてる顔だから煙が目に染みてても分かんないよねー!」

 

「えっと…でも、エントツなんか入ったら服スス汚れが大変なことになるんじゃない?」

 

「僕らが眠っている間に、彼なら宿舎に戻ってスペアの衣装に着替えることもできたはずだね。問題にはならないさ。」

 

「そうだな…。だが、お前さんら、まだ見落としていることがあるぜ…。」

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「エントツから天井裏に入って犯行に及んだ…か。」

 

「エントツに登るためにはログハウスから出て裏側に周り、屋根に登らなけりゃなんねぇ。」

 

「俺は見ての通りのナリだ。自分の身長3倍の高さまで跳躍は…さすがにできねぇよ。」

 

「ログハウスの裏側には背が高い木も生えてた。それを利用すれば…できなくはないはずだよ。」

 

 

「いいや、そもそも、その雑木林まで犯人が辿り着けていたはずもねぇのさ。」

 

「俺たちが今、雪の中で暮らしてることを忘れてるようだな。雪ってのは、色んな痕跡を残す。」

 

「大場の死んだ20時頃、雪は止んでたんだぜ?」

 

「俺がログハウス裏からエントツに登ったってんなら…足跡が付くはずだぜ。」

 

 

【大場のジィ-SHOCK】→足跡が付くはず

【事件時の天候】→足跡が付くはず

【キーボの写真】→足跡が付くはず

 

 

 

「…しっかり矛盾を見極めてもらおうか。俺の発言が…今までの議論や状況と食い違ってるってんならな。」

 

「……。」

 

 

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「その言葉、斬らせてもらいます!」

 

「大場の時計については、さっき話し合ったはずだよ。」

 

「大場さんのジィ-SHOCKは8時を示していましたが、犯行と関係ありません。吹雪が止んだ19時より前に犯行が行われたなら、足跡は付きません。」

 

「……。」

 

「今のところ、エントツから天井裏に入れたのは俺だけ…そこから推測してるだけのように見えるがな。」

 

「犯行が可能な奴は、俺以外にもいるはずだ。例えば、睡眠剤が効かねぇ奴…とかな…」

 

「睡眠剤を撒いて、ログハウスの外でスノーマン作ってた私もだねー!」

 

「……麻里亜 以外で…考えられないんだよ。」

 

「え…どうして?」

 

「タマが やったことがなければ、今回の事件は単純だった。でも、犯人は1つ不自然な行動を取ってるんだよ。」

 

(そうだ。犯人は、明らかにおかしな行動を取っている。)

 

 

1. プレゼントの箱3つを持ち出したこと

2. キーボを緊急停止させたこと

3. 睡眠剤のゴミをゴミ箱に捨てたこと

 

 

 

「あ、それは私がやったことだね!キーボーイ、複雑に考えすぎじゃない?」

 

「キミが紛らわしいことをしたせいで、複雑になってるんですよ!」

 

 

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「犯人は…犯行前にプレゼントを3つも持ち出してるんだよ。赤と青と緑…全ての包装のプレゼントを。」

 

「確かに。どうしてだい?毒薬の入った赤いものだけ持って行けばいいものの…。」

 

「…ただ犯人が慌てて懐に3つを忍ばせたってだけさ。そんなモンに理由なんてねぇはずだ。」

 

(……それは…これまでの麻里亜の言葉から推測できる。)

 

 

「ワシにとっては…赤いサンタも黒いサンタも、そんなに変わりはせんよ。…白いニコラウスとは変わるがな。」

 

「外側ノブの血か…よく そんなものが見えたのう。」

 

「あの赤鼻の雪だるまか…。」

 

 

「さてと…じゃあ、春川。お前さんの筋ってもんを、見せてもらおうか。」

 

 

 

理論武装 開始

 

「犯人が3種類のプレゼントを持って行った。」

 

「それと俺が犯人だと、どうやって結びつけられるってんだ?」

 

「犯人は、お前さん達がログハウスに帰ってから眠るまでの間にプレゼントを持ち出した。」

 

「つまり、誰にも気付かれねぇほど素早く動く必要があった。」

 

 

「時間がなけりゃ、箱を間違える可能性もある…。」

 

「それで…3つのプレゼントボックスを掻っさらって行きやがったんだよ。」

 

「他に、3つプレゼントを持って行く理由があるっていうのか?」

 

 

 ○覚 △常 ×色 ◽︎異 

 

これで終わりだよ

 

 

 

「あんたは…色を知覚できない。違う?」

 

「……。」

 

「あ…そういえば、タマさんが作った雪だるまの鼻…ニンジンだったけど、赤とかオレンジじゃなかったよね。」

 

「それを…麻里亜は赤鼻だと言ったな。」

 

「それだけではありません。麻里亜クンはタマさんが寝ていた寝室を調べていたのに、タマさんが捨てた包装紙が2色だと気付きませんでした。」

 

色覚異常…か。赤と緑の区別が付かないというものだね。」

 

「……フッ。そんな簡単なモンじゃねぇさ。」

 

「え…。」

 

うろの世界とでも言おうか。お前さんらにとって色は感覚だろうが、俺にとっては知識ってだけさ。」

 

「サンタの服は赤、クリスマスツリーは緑…それは俺にとって、知識で覚えておくものってだけ…。」

 

「…大場に飲ませようとして零しちまった毒薬のシミも…大場が吐いたっていう血のシミも…俺には実際 何色かすら分かってねぇのさ。」

 

「”飲ませようとした毒薬”…ねぇ…。」

 

「じゃあ、やっぱりテメーが犯人か。」

 

「箱の色によってリボンの形が違うから…3つの箱を持ち出して、中身を確認したんだね。」

 

「ああ…悪ぃな。だましてて。」

 

「どうして…?どうして、あなたは…。」

 

「おかしいよねー?マリユーちゃんにとっては、こんな雪山 屁でもないはずなのに。」

 

「そうだね。君は雪にも慣れていただろうし、小柄だから そこまで食料が必要だったとも思えない。」

 

「ハッ…。ンなもん、クロになって外に出たかっただけだろ。」

 

「それにしては…麻里亜クンの行動は、かなりシンプルでしたね。」

 

「ねー、マリユーちゃん。教えてよ?どうして今日、オオダイちゃんを殺したの?」

 

「………。」

 

「私は子どもじゃないんだよ?」

 

「……違いねぇ。俺は ただ、早く…終わらせなきゃなんねー。そう思っただけさ。」

 

「どういうこと?」

 

「……病人、負傷者が相次いで出た。食料も体力も足りねぇ。」

 

「マリユーちゃん、私が仮病 使ったから焦っちゃったんだねー。」

 

「……それだけじゃねぇさ。図体がデカい大場が動けないとなれば…食料確保は絶望的だからな。」

 

「確かに…怪我人が栄養の足りない状態なのは…まずい。」

 

「チッ…。そんな理由かよ…。」

 

「あいつは言ってたろ?『死んでもいい。みんなを守るためなら』ってな。だから、望み通り…逝かせてやろうって思ったのさ。」

 

「そんなの…!」

 

「ああ。罵ってくんな。俺は自分可愛さで仲間を殺めた殺人犯さ…。」

 

「……。」

 

「おい、モノクマ。いつまでダレてんだ。」

 

「……おやおや、今回は ずいぶん早いね。…よし。おしおきの時間となれば、やる気 出さなくちゃだね。」

 

 

「オマエラ!準備はいいかな!?」

 

「思い出すなー、これまでの最短記録を。風のようにクロだと暴かれた あいつを…。何も、あいつ自身が風にならなくても良かったのに…。」

 

(モノクマが笑顔で まくし立てる。)

 

(まただ…。このまま裁判が終われば…『ダンガンロンパ』に、また1人 殺される。)

 

(私は拳を強く握ったまま、モノクマを睨み付けた。)

 

 

 

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