第4章 虚の世界で人に問ひて、生かせ、呪う 学級裁判編Ⅱ
学級裁判 再開
(大場を殺した犯人は…麻里亜。麻里亜は、そう認めた。誰もが麻里亜を見つめる中、私は考えを巡らせる。)
(事件が驚くほど早く解決した…してしまった。首謀者の手掛かりも掴めず…こんなに早く裁判を終わらせるわけには…いかないのに。)
「……。」
「……。」
「……。」
「フッ…無事クロを見つけたんだ。もっと喜びな。」
「……チッ。」
「そうだよ、そうだよ。そんなに暗い顔しないでよね。それでは、ワックワクでドッキドキの時間…」
「……待って。」
(モノクマが汚く笑うのを遮って、言葉を放つ。)
「麻里亜…あんたは、本当に毒を飲ませることができたの?」
「え…?」
「あの…春川さん?」
「リボンを使ったとしても、穴の下に大場の口がくるとは限らない。そんなに上手くいくとは思えないよ。」
「……確かに難しかった。…俺には瓶から出した毒薬が よく見えてなかったからな…。」
「フム。色覚異常があるなら…液体を認識するのは難しそうだね。」
「…だが、現に大場は死んだ。……つまり、そういうことだろ。」
「それでも…不確かなことがあるなら、議論すべきだよ。」
「おやおや?春川さん、時間稼ぎタイム?少年誌の漫画じゃないんだから、無駄な引き伸ばしで つまらなくなるのは認められないよ!」
「……無駄じゃないよ。モノクマ、あんただって、裁判が早く終わりすぎたら…困るんじゃないの?」
「ど、どういうことですか?」
「……。」
「この裁判って、やっぱり見世物にされてるってことかな?」
「……不確かなことは議論すべき。それも一理あるね。じゃ、せいぜい無駄な足掻きタイムを楽しんじゃってください!」
「……。」
「……。」
「とにかく…この裁判は、まだ終わらせるべきじゃないよ。麻里亜、もう1度あんたが見たものを話してよ。」
「……。」
ノンストップ議論1開始
「見たものを話せ…か。俺の見る世界なんざ…お前さん達からすれば、信じるに値しない情報の空虚なもんさ。」
「だが、俺は確実に大場を殺すために動いた。それは真実だ。」
「お前さん達が導き出した通り、俺はエントツの横穴から寝室の天井裏に侵入した。そして、リボンを使って大場の口へ毒薬を流し込んだのさ。」
「その時、毒薬の瓶を天井裏から床に落としちまった。」
「本当に口に毒が入ってるかは分からなかったが…さっきモノクマも言ってたろ。毒薬は口にしたら、舌に色が残るって。」
「大場の舌に残った色が…俺の殺人が成功したって証拠じゃねぇか。」
「……モノクマの言った通り…お前さんは裁判を長引かせたいみてぇだな?何を企んでいる…?」
(しまった…。ここで そんな風に思わせるのは…まずい。)
△back
「それは違います!」
「大場の舌に残っていたのは、血だよ。毒薬じゃない。」
「あー、確かに。そうだったね。」
「毒によって吐血したってだけさ。」
「あの毒は血を吐く類のものじゃない。あれは体内に入ることで呼吸器系の働きを壊すものだよ。」
「大場さんの死体は確かに空気を欲するように首を抑えていなかったかい?それで、僕らも彼…彼女、彼の死因は窒息死と特定したんだったよね。」
「血を吐いたことで、器官が詰まって窒息することはあるよ。」
「……何でテメーは、ンなことばっか知ってんだよ。」
「……口に何でも詰める乳幼児を よく見てきたからね。」
「えーと…オオダイちゃんはマリユーちゃんの毒で死んだわけじゃない。ハルマキちゃんは、そう言いたいの?」
「え!そ、そうなの?春川さん。」
(………そうだ。)
(毒死の可能性が全然ないわけじゃない。けど、違う可能性だって…ある。)
「…そう…大場の死因は…毒によるものじゃないかもしれない。」
「何だと?」
「じゃあ、大場は何で死んだってんだよ?」
(前回の裁判途中から…大場は激しく咳き込むことがあった。)
「そんなの!疑われちゃうじゃない!疑われたら、みんな あたしをクロにするじゃない!そしたら、みんな死んじゃうじゃないー!!ゲッホゴッホ!」
「ことわざにもあるでしょ?辛い時は だいたい寝不足、悲しい時は だいたい空腹、血を吐く病気も だいたい気のせいって!」
「ゴホ…こんな状況で必要なのは、優しく美しいママじゃない!強く逞しく屈強な男だ!だから、大吾郎は益荒男の中の益荒男になって、みんなを守る!」
(それに、顔色が悪かったし…ひどい発汗もあった。)
「あんた…すごい汗だよ。顔色も良くない。」
「え?そんなことないよ!!大吾郎は今まで病気や怪我をしたことがないんだ!とっても健康で頑丈なんだから!」
「無理してるでしょ。さっさと戻って休むよ。」
「大丈夫だって。春川さんを持ち上げることだって…ゲッホォ!」
(そして…吐血。)
(……私は”前回”も、同じ症状の奴を見ている。)
(大場の死因は…)
閃きアナグラム スタート
う
び し
▼閃いた
「大場は…病死だよ。」
「病死だぁ!?」
「そういえば、大場さんは時々 咳き込んでいることがありましたね。」
「吐血したのは…病気のせいで?」
「昨日から熱が引かなかったのも何らかの病気によるものかい?」
「んー、でも、それだけだと、『死ぬほどの病気』の根拠としては弱いかもね。」
(大場の死因が病気だった。その根拠は…ある。)
「いいよね〜ロボットは。病気も何にもない!なんだよね?」
「お化けの歌のように言わないでください!」
△back
「大場の寝室のゴミ箱からは、血の付いたハンカチが見つかってるよ。色からして、かなり時間が経っていた。」
「ベッドやオオダイちゃんの口の血は まだまだ鮮血って感じだったよね。」
「つまり、大場さんが死ぬよりずっと前に血が流れたということですね。」
「事件の前から…血を吐いていた…?それなのに、彼…は出歩こうとしていたのかい?」
「大場さん…ずっと……無理してたんだね…。」
「あの野郎…。」
「………。」
「じゃあ、体調 悪い中、雪の中や地下のデスロードってのを駆けずり回って、オオダイちゃんは死期を早めちゃったんだね!」
「……。」
「えっと…病死の場合…誰がクロになるのかな…?」
(この世界で病死した大場。誰かが殺したわけでも、自殺したわけでもない。それなら、クロになるのは……。)
1. キーボ
2. 大場本人
3. 首謀者
「何で そーなるのですか!!」
「…古いネタだな。」
「え!?」
△back
「首謀者…だよ。」
「首謀…者?」
「このコロシアイの首謀者。そいつが、大場を病気にしたんだよ。」
(”前回”……、”あいつ”を病気という設定にしたのは首謀者…そして、『ダンガンロンパ』だ。)
(白銀は、そう言った。だから、きっと…今回もーー…)
「え、え?首謀者って、モノクマのこと?」
「モノクマは殺人に関与しないはずじゃなかったかい?」
「その通り!ボクを殺人に関与する無能運営者と一緒にしないでよね!」
「…ハルマキちゃんは、モノクマを裏で操る首謀者ってのがいるって思ってるんだね?どうして、そう思ってるの?」
「……モノクマは ただのロボットだよ。誰かが操ってるとしか思えない。」
「『ただのロボット』というは問題発言ですが…同感です。モノクマはコロシアイ運営のプログラムに沿って動いているようです。」
「人間のくせに生意気な!勝手に分かった気になってるのならオーバーライト!上書きしちゃうんだからっっ!」
「キーボ君は人間じゃないけど…。」
「………つまり、モノクマのプログラムを組んだ首謀者が、どこかにいるということです。」
「しかし…大場を病気にしたのが首謀者だと、どうして言い切れるんだ?」
「あ、大場さんって風邪ひいたことないって言ってたよ。それなのに、急に病気になるのは…おかしいよね。」
「……病死した被害者のクロが首謀者であれ何であれ、首謀者さえ見つければ、きっと…こんなコロシアイは終わるよ。」
「……なるほどな。」
「よーし!じゃあ、その首謀者を見つけよー!」
「……で?その首謀者っつーのは、どうやって見つけんだ?探しに行きゃいいのか?」
「ブッブー!裁判途中の退席は認めないよ。トイレ以外はね!」
「なら、全員 同じタイミングで もよおすから、トイレに行かせてくれないかい?」
「3分以内に戻って来るなら、いいよ?」
「エレベーター往復で終わるじゃねーか!」
「……今から探すことはできねーってことかい。」
(この学園内に首謀者は…白銀は いる。どこかに隠れているのか…それとも…)
「ハ、ハルマキちゃん…。何で そんな怖い顔してるの?まさか、この中に…私たちの中に首謀者がいるーとか、言わないよね?」
「……!」
「え?」
「……マジで、どういうことだよ。」
(……この中に白銀がいるとしたら…コスプレしているはず。そいつを見つけ出すために……。)
1. 春川の制服を着させる
2. 拷問にかける
3. 好みのタイプを聞く
「ど、どういうこと…?わたし達の中に首謀者…?そんな…ありがちなデスゲームみたいな…。」
「デスゲームを ありがちというのは、どうかと思います!」
△back
「……私の服、あんた達は着られる?」
「………は?」
「もしかしたら、それで…この中に首謀者がいるか…分かるかもしれない。」
「何を突然 素っ頓狂なことを言ってるんだい?」
「ああ…どうしちまったんだ?首謀者がいたとして…お前さんの服と、何の関係があるんだ?」
「えっと…そもそも、首謀者が この中にいるなんて…考えたくないんだけど…。」
「それに、春川さんの服 着られるのなんて、タマさんと麻里亜君だけだよ。ほら…わたしじゃウエスト…絶対 入らないし。」
「あと、個人的にはカメラ回したいくらいだけど、羽成田君と綾小路君が現役女子高生の脱ぎたて制服 着たりしたら、完全に有罪だよね?」
「生々しい言い方すんな!着ねーよ!」
「こんなこともあろうかと思って、オマエラのサイズで春川さんの制服作っておきました〜!」
「何でだよ!?」
「ねえ、ハルマキちゃん。さすがに意味 分からないんだけど。どうして、ハルマキちゃんの格好したら首謀者が見つかるの?」
「……。」
「春川さん、もしかして…事前にモノクマに聞いていたんじゃないですか?」
「みなさん、モノクマが そんなものを用意していたということは、こうなると踏んでいたということです。」
「おそらく、春川さんはモノクマに聞かされていた。制服を着られない者が首謀者だ…と。違いますか?」
「……そうだよ。」
「何だー、そっかー。いきなりモノクマとの怪しい連携 見せつけられちゃったかと思って焦ったよー!じゃ、さっさと着替えよー!」
「え、え?本当に?この中に首謀者が いるなんて……。」
「…でも、実は春川さんのブレザー可愛いなって、ずっと思ってたんだよね。着られるなら願ったり叶ったりだったりして…。」
(そんなことを言いながら、女子たちはモノクマの手から制服を受け取った。)
「いや、待てよ!女の制服なんて誰が着るか!何でテメーらの目の前で女装しなきゃなんねーんだ!」
「ヒェ!ハネゾラちゃん、私たちの目の前で着替えるつもり?やめてよ。有罪判決 待った無しだよ?」
「だから着替えねーって言ってんだろ!!」
「……僕も抵抗があるな。着替える意味が全く分からない。」
「フッ…俺も同感だ。」
「でも、わざわざモノクマが用意したんだもん。何か理由があるはずだよね?」
「それで首謀者がいないって本当に証明できるなら、やってみてもいいかもねー。」
(女子たちが言うが、男子たちは渋い顔を崩さない。そんな中、麻里亜が私を見た。)
「…そもそも、春川。お前さんは どうして、この中に首謀者がいると思ったんだ?」
(麻里亜の言葉により、全員が探るような視線を私に寄越す。)
「確かに…モノクマが首謀者の操るロボットだと想像はしていても…この中に首謀者がいるなんて想像もつかなかったよ。」
「何で大事な仲間を疑ったりしたんだろうねー?」
「疑う…とかじゃないよね?春川さん。」
「……。」
(ようやく、掴んだチャンスだ。首謀者がこの中にいるなら、絶対に暴いてみせる。たとえ…)
(たとえ、嘘を…吐いてでも。)
「……。」
「図書室に、隠し扉があったんだよ。」
「隠し扉…ですか?」
「図書室の棚が動いて…その奥に隠し扉が現れた。棚で隠してたってことは…モノクマじゃない、私たちの中の誰かが通るために作ったってことだよ。」
「……だから、テメーは何で そういうことを黙ってたんだよ。」
「春川さんと一緒に行動していたボクも知りませんでしたが…。いつ、見つけたんですか?」
「……あの時は まだ、キーボが作られてなかった。和戸と見つけて…みんなを疑心暗鬼に させないために、黙ってたんだよ。」
「………。」
「そう…だったんだ…。」
「へー。どうりで、ハルマキちゃんの私たちを見る眼光が妙に鋭いと思ったー。」
「……そんなモンがありゃぁ、確かに俺らを疑いたくもなるな。」
「…制服を着れば、その疑いは晴れるんだよね?それなら、わたしは着るよ!みんなも着ようよ。みんなを信じて、みんなに信じてもらうために!」
「……チッ。着りゃいいんだろ!」
「だがな、オレは そんな格好晒すのはゴメンだぞ。裁判場の外で着替えるだけだ。」
「…まあ、そうだね。それで首謀者でないと証明できるなら。」
「……どうにでもなれ。」
「じゃあ、着替えたら私を呼んで。」
「……バカか、テメー。女に見られたくねーから、外 行くって言ってんだよ!絶対 来んなよ!」
「では、ボクが確認しますよ。それで、着られた人は首謀者じゃないってことで 良いんですよね?」
「……。」
「どうしました?ボクは彼らを しっかり見届けます。”内なる声”も声高に そう言ってますからね。」
「…制服を着た奴にアレルギーが出てないか、確認しておいて。」
「……分かりました。」
(男たちは裁判場から出て行き、エレベーターホールへ向かった。そこで、タマがモノクマを見た。)
「モノクマ、他の誰かに着替え見られるのは嫌なんだけどな。」
「おや?ここには女子しかいないじゃない?」
「この裁判が見世物なら、男の人にも見られるかもしれないってことでしょ?こんな栄養失調の鶏ガラみたいな体 見られたくないよー。えーん。」
「見世物だなんて、一言も言ってないのに。じゃあ、その隅でコソコソ着替えるといいよ!」
(モノクマが裁判場の隅を指差した。エイ鮫とタマは、そこで着替えを始める。)
(……白銀と背格好や雰囲気が似ているエイ鮫。火事について嘘を吐いたタマ。2人は着替えに対して反対はしなかった。)
(そしてーー…2人は着替えを終えた。)
(アレルギーは……出ていない。タマが「これでいい?」と言い、エイ鮫と共に私へ向き直る。)
「……うん…。悪かったね…首謀者かどうか、試すようなことして。」
(2人は私の言葉に二言三言 返して、また自分の服に着替えた。彼女たちが着替えを終えた頃、男たちの声がして男子連中も戻って来た。)
「春川さん。ボクは この目でしかと見ました。アレルギーを発症した人は いません。」
「……そう。」
(全員、アレルギーが出ない。…みんな白銀じゃないってことだ。…それなら、白銀は一体どこにいるの?)
「たく、マジで最悪だ。嫌なモン見た。」
「そりゃ、お互い様だぜ。もう2度とゴメンだな。」
「フム。僕は、女性が いかに寒く心もとない思いをしてオシャレを楽しんでいるのか知ることができたから、悪くない経験だったよ。」
「マジかコイツ。……で?オレらの中に、首謀者はいるのかよ?」
「この中に首謀者は いないと思うよ。……変なこと言って悪かったね。」
「……テメーが しおらしいのは気持ちわりーな。」
「まあ、当然の結果じゃない?首謀者ってのが本当にこの中に隠れてて、制服着て分かるなら、モノクマが制服 用意してるの自体おかしな話だもん!」
「た、確かに…!」
(そうだ……。モノクマが、わざわざ白銀のコスプレを暴くはずがない。それに…。)
(白銀は”前回”の参加者のコスプレは できなかった。…完全なフィクションじゃないからって。今回も、そもそもコスプレできなかった…?)
「それで?」
「……何?」
「ハルマキちゃんが首謀者じゃないっていうのは、どうやって証明するの?」
「……。」
「今のところ、キミが1番 怪しいんだけど?」
「確かにね。大場さんの病気の話から、突然 女装させられるとは。」
「春川さんが、首謀者のはずないよ!」
「……春川は隠し扉のことを隠してたし、地下の脱出口を知ってたかもしれねーんだぞ。」
「…だが、春川が首謀者だとしたら、『この中に首謀者がいる』なんて言わないだろう。」
「議論が真っ二つに割れているようですなぁ!それでは、皆さま お待ちかね!我が才囚学園が誇る変形裁判場…」
「えっ?何?」
(モノクマが例のフレーズを声高に言ってーー…)
「…は、都合により、休止させていただいております。またの ご利用を、お待ちしております。」
(モノクマが静かな声を出し、裁判場も特に変形することはなかった。)
「な、何なの?」
(”前回” みたいなのはないらしい。モノクマに、訝しげな視線が集まった。)
「しょうがないでしょ!時間がなかったんだから!それに、ここで それをしても意味ないの!つまんないの!やりようがないのー!」
「何を言ってるんだい。訳が分からないな。」
「モノクマの言動が理解不能なのは、いつものことです。」
「ああ。それよりも、春川だ。」
「……。」
「春川は、さっきからモノクマと同じくらい意味不明なことを言ってやがる。テメーが首謀者じゃねーのか。」
「……私は首謀者なんかじゃない。」
「そっか!分かった、信じるよ!」
「はあ?」
「そうだよ!春川さんが首謀者なんて、ありえないもん!」
「首謀者が自ら首謀者の存在を仄めかすのは、おかしいと思わねぇかい?」
「…まあ、確かにね。」
「ほら、ハネゾラちゃん。今は、とりあえず信じるところから始めてみようよ。首謀者は、この中にいるんじゃなくて、学園のどこかに隠れてるんだよ!」
「……ハッ…そーかよ。じゃあ、オレらの中に首謀者が いねーってんだな?それなら、どこにいるってんだよ?」
(首謀者が隠れているとしたら…。)
1. 図書室の隠し扉の先
2. 校舎4階の暗闇
3. 校舎5階のどこか
「ああ?何の根拠があって、ンなこと言ってんだ?やっぱりテメーは怪しすぎんぞ!」
(まずいね。考え直そう。)
△back
「…校舎の5階だよ。」
「外から見たら、校舎は5階、6階がありそうなのに…モノクマは解放しなかった。」
「そうだね。確かに、今までは順番にフロアが開いていたのに、妙だね。」
「モノクマが言うには、5階には死亡者の研究教室しかなかったとのことでしたね。」
「確か…和戸君と、哀染君…あと、モノクマに殺された彼、だったよね。」
(”前回”…5階には最原と天海…それから白銀の研究教室があった。)
「羽成田…あんた、校舎5階に影を見たって言ってたよね。」
「ああ。吹雪の中だったからな。見間違えただけだと思ったんだが…、5階で何かが動いたんだよ。」
「それが見間違いじゃないなら…5階は開いてないから、わたし達以外の誰か…首謀者ってこと?」
「そう。首謀者は5階にいる。私たちのコロシアイを傍観してるんだよ。」
「おい、モノクマ。5階を開放しろ!首謀者ってヤツをぶん殴る。」
「野蛮だなぁ。5階は開かないってば。研究教室の持ち主がいないんだから。」
「この事件のクロが首謀者なら…ぶん殴るまでもねぇさ。」
(この事件のクロは、病気の原因を作った首謀者。これで…白銀を引きずり出せる。白銀を倒して…『ダンガンロンパ』を……)
(………?)
(そこで、大きな不安が のし掛かる。首謀者が…白銀が死ねば『ダンガンロンパ』は終わるのか…と。)
「えー、本当に そういう展開になるの?いいのかなー、本当に?よーく考えてね。」
(モノクマがニヤニヤしながら こちらを見ている。)
「……あのさ、首謀者に投票するとしてもさ。投票ボタン、ないじゃない?」
「おい!モノクマ!首謀者への投票は どうすんだよ!」
「そんなこと言われてもー、そんな急にシステムは変えられないよ。」
「クソッ、汚ねーぞ!!」
「うん。ていうか、このルールで縛られたコロシアイに、投票できない人がクロってこと、あり得るのかな?」
「コロシアイにはルールがある。これは…ゲームなんだよ。」
「それなら、投票できない人間がクロだとしたら、フェアじゃない。フェアじゃないゲームなんて、見ている側からしたら面白くないよ。」
「それって、やっぱりクロは投票できる人の中にいるってこと?」
「やっぱりオレらの中にクロがいるってことか?」
「今までに死んだ人にも投票できるから、その場合も考えるべきなのかもしれないね。」
(死んだ奴の誰かが白銀という可能性…。だとしたら、死んだと見せかけて、首謀者が生きている。”前回”見た過去のコロシアイでもあったように。)
「その前に、1つ明確にしとかなきゃいけないんじゃない?」
「何のことだい?」
「オオダイちゃんは、本当に病死だったのか?ってことだよ。」
「え?だ、だって、それは さっき話し合ったよね?」
「大場の舌には毒の跡がなくて、血が付いてた。吐血の原因は毒じゃねぇ。しかも、事件前から大場は血を吐いてたんだろ。」
「うん。でも、オオダイちゃんが毒を摂取しなかったとは限らないよね?」
ノンストップ議論2開始
「……タマ、どういうことか、話してくれねぇか。」
「オオダイちゃんの死因が毒か病死か、ちゃんと考えようってことだよ。」
「だから、それは さっき話したじゃねーか!」
「大場さんの口内は赤い血がベッタリだったが…蛍光色のギラギラなどは付いていなかったよ。」
「大場さんは、毒 飲んでないってことだよね?1回目の事件と違って注射器とかも なかったし…飲む他に毒を摂取できないはずだよ。」
「やれやれ、ロボットに病気はないし毒も効かない。アンフェアだね。」
「あれ?ボクを殺す計画を立てていませんか?大丈夫ですか?」
△back
「それは違います!」
「……あの毒薬は、飲む他にも…吸引摂取でも効果があるんだよ。」
「…吸引?」
「つまり、経口摂取以外でも、吸うだけでも、毒を摂取する可能性があったということか。」
「……フッ。そうかい。」
「水と、睡眠薬と、毒。あのプレゼントの中身には共通点があったんだよ。モノクマが言ってた通り、ね。」
「うぷぷ。それは、自分で確認してね。プレゼントの中身には共通点があるから、心して掛かるように。」
(3つのプレゼントの…共通点…か。)
ブレインドライブ 開始
Q. プレゼントの共通点とは?
1. 依存性が低い
2. 揮発性が高い
3. 転校生がエグい
Q. 大場の死因は?
1. 『ダンガンロンパ』による病死
2. 毒薬を吸ったことによる毒死
3. 地雷を踏んだことによる爆死
Q. この事件のクロは?
1. 白銀 つむぎ
2. 大場 大吾郎
3. 麻里亜 郵介
▼繋がった
「………。」
「……春川さん?」
「……3つのプレゼントには、共通点があった。それは…揮発性の高さ。」
「揮発性?」
「蒸発しやすいということだね。」
「タマさんは睡眠薬の揮発性の高さを利用して、みなさんを眠らせました。」
「そういえば、あの水も温めようとしたら、すぐ蒸発しちゃったよね…。」
「揮発性の高い飲み水…?アルコールでも入っていたのかな。」
「そんな味は…しなかったのに…。」
「……フッ、お前さんら。今 大切なのは、そんなことじゃねぇだろ。春川、大場の死因を言ってやってくれ。」
「大場の死因は、毒を飲んだことじゃない。毒を吸ったことなんだよ。」
「それって……。」
「つまり、オオダイちゃんは、天井から布団や床に溢れた毒を吸って、呼吸できずに死んだってことだね。」
「…何だよ、首謀者が どうの言ってたのは、何だったんだよ。」
「本当…せっかく、もう誰も死なないと思ったのにねー。」
「な、何か、まだ見落としがあるんじゃないかな!?首謀者を見つけて、終わらせればーー…」
「春川、キーボ。頼んだ。」
「………。」
クライマックス推理
「事件が起きたのは、ここが雪に覆われて3日目。私たちは食料も少なくて体力も限界に達していた。」
「大場さんとタマさんは体調を崩して寝室で休んでいました。……タマさんは仮病だったわけですが。」
「事件直前にロッジから出たのは犯人のみ。ロッジに残った人間は、タマが揮発性の高い睡眠剤を部屋に撒いてたせいで、眠ってしまった。」
「犯人は、ロッジのエントツの横穴から大場の部屋の天井裏に侵入し、リボンに毒を伝わせて口に入れる形で大場を毒殺しようとした。」
「しかし、そう上手く口に毒を運ぶことはできませんでした。焦った犯人は、毒薬の瓶を天井裏から部屋の床に落としてしまいました。」
「犯人の計画は失敗したかに思えた…けれど、毒は揮発性の高い物質だった。だから…大場は毒を吸って…死んだ。」
「その間、タマさんは部屋の外で雪だるま…いえ、スノーマンを作っていました。黒いニンジンで鼻を作って。」
「正直、この事件は単純すぎた…。犯人が本気で”バレないように”考えたとは…思えないくらい。」
「この事件の犯人は…“超高校級のサンタクロース” 麻里亜 郵介クン。…キミです。」
「……。」
「まあ…そういうことだ。みんな、悪かったな…。」
「でもさー、やっぱり納得いかないよ。」
「あ、や、やっぱり、犯人が違うってこと?」
「そうじゃなくてー、マリユーちゃんの行動が。」
「わざわざ分かりやすく殺すんじゃなくて、最初から自供してくれたら良かったのに。そしたら、捜査時間も首謀者探しができたかもしれないでしょ?」
「……今さら何言ってやがる。」
「本当は、ちょっと期待してたんじゃない?『みんなを騙して、自分だけは外に出られるかも』って。」
「そんな言い方…!」
「……フッ。そうかもな…。」
「麻里亜君…。」
「俺は…どうしてだか『自供はできねぇ』って思っちまったのさ。…それは、心のどこかで…そういう気持ちがあったからなのかもしれねぇ。」
「軽蔑してくれ。俺は…所詮その程度の人間ってことだ…。」
(静かな声に、誰も一言も発せなかった。そして、)
「それでは、お待たせしました!ワックワクでドッキドキの、投票ターイム!!」
(モノクマが投票タイムを宣言し、麻里亜に全員分の票が集まった。)
学級裁判 閉廷
「分かってたことだけど、大正解!”超高校級のママ” 大場 大吾郎クンを殺したクロは、”超高校級のサンタクロース” 麻里亜 郵介クンでしたー!」
「ブヒャーッヒャッヒャッヒャ!自分はクロじゃなかったかも!おしおきされないかも!そーんな淡い希望を見せられて、裏切られる!」
「いいね いいねー!もはや様式美だよ!春川さんは、無事 麻里亜クンの絶望を深めることに一役買いましたー!」
「あれ?こんなこと、前にも言った気がするなぁ?ま、気のせいだね!」
「………。」
「春川…そんな顔するな。俺が大場を殺しちまったのは事実だ。覚悟なんざ、毒薬を手にした時から持ってたさ。」
「人は いずれ死ぬ。それが早ぇか遅ぇかの違いだけだ。俺の死に意味なんざねぇよ。」
「……違ぇだろ。早くても遅くても…その中で、どれだけのことをしたかが重要なんだ。」
「意外。ハネゾラちゃんが そんなこと言うなんて。」
「でも…羽成田君の言う通りだよ…。麻里亜君はこれまで…色んな子に愛と夢と…希望を与え続けてきたんだよ。」
「そうだね。君は十分、自分に誇れる人生を送ってきたはずだよ。」
「……俺は、その人生の最後に、とんでもねぇ悪事を働いたってわけさ。自分の行いを…心の底から呪うよ。」
「こんな所だが…お前さん達と会えたことだけは…後悔したくねぇ。……ありがとな。」
「麻里亜君……。」
「それでは、お楽しみの時間と参りましょう!”超高校級のサンタ” 麻里亜 郵介クンのために、スペシャルな おしおきを、用意しましたー!」
「……。」
「…俺は…、なん、だ?この記憶…は?」
「……マリユーちゃん?」
(突然 頭を押さえた麻里亜が、また顔を上げた。そしてーー)
「……違う!俺たちは、ただの駒にすぎねぇ!こんなモンに、意味なんざねぇんだ!」
「え?」
「どういうこと?」
「もうコロシアイを起こすな!これ以上 死人を出すな!」
「麻里亜、詳しく話して!どういうこと?」
「はーい、うっせーうっせーうっせーわ!そんな時には どうするの?そう!おしおきターイム!」
「自分の声に耳を貸すな!自分の記憶に縋るな!絶対に、自分に負けるな!!」
「麻里…!」
(声を枯らすほどに訴え続ける麻里亜の姿は、すぐに裁判場から消えてなくなった。)
おしおき
“超高校級のサンタクロース” 麻里亜 郵介の処刑執行
『ワンス・アポン・ア・タイム』
麻里亜 郵介は、色のない大雪の町を1人歩いていた。
ーーいや、1人じゃない。何故か1羽の鳥が自分の肩で羽を休めている。指をそっと差し出せば、鳥は自ら頰を擦り付けてきた。
1人と1羽で しばらく歩いていると、頭巾を被った少女が雪に埋もれながら何かを探していた。少女に問えば、「おばあちゃんのお見舞いに花を探している」と彼女は言った。
かついでいた『白い』袋から、『色とりどり』と書かれた花束を取り出し少女へ差し出す。少女は少し顔を曇らせた後、こちらに礼を述べて去って行った。
貧しい木こりの少年に、『金』と書かれたおもちゃをやった。
寒空の下、マッチを擦る少女に、自分が纏う『赤い』服をやった。
そうしている内に、袋の中は空っぽに、着ている服は下着のみになった。震えて弱っている鳥を胸元で温めながら進む。
路地裏に、生き倒れた少年と少女がいる。おそらく兄妹だろう。大丈夫かと問えば、彼らは「幸せを探して旅をしている」と弱々しく言った。少し考えて、自らの腕で温めていた弱った鳥を彼らに託した。『青』と書かれた、その鳥を。兄妹は大いに喜んだ。口元からヨダレを流しながら。
そこに現れた『白黒』と書かれたスーツを着たモノクマ。奴は自分の姿を見るなり涙を流し、手を叩き、称賛の言葉を放った。そして、自分を表彰して、銅像を作るとセッティングを始めた。
表彰式には多くの人々が集められた。モノクマから渡された表彰状を渋々受け取った途端、四肢を固定された。
そしてーー。
煮え滾る熱い胴を足に塗りたくられる。足が千切れるような激痛に、声にならない声が漏れた。胴は足から体に、腕に、顔に塗り付けられ、最後に…その呼吸は、奪われた。
…………
……
…
かの銅像は大変豪華で、ピカピカ光る胴、シルクの服、目玉と服のボタンは宝石。手に持つ袋の中には美しい装飾品が入れられていた。
人々は、自らよりも子供たちの未来を想う彼の姿にいたく感激しーー争って銅像が身に付ける価値あるものを奪い合った。残された像の装飾は剥がされ、胴は手垢と汚れで すっかり黒く変色していた…。
「………。」
「麻里亜クン…。」
「……もう…嫌だよ。こんなこと、絶対…。」
「これで、10人目…だね。」
「……。」
「……。」
(今度こそ、首謀者を見つけられると…尻尾を掴んだと思った…。)
(今度こそ、白銀を引きずり出して…『ダンガンロンパ』を終わらせられるって…。)
(………。)
(白銀を引きずり出して…それで、本当に『ダンガンロンパ』は終わるの…?)
第4章 虚の世界で人に問ひて、生かせ、呪う 完
第5章へ続く
4章もとても面白かったです!
これだけ早く犯人が分かるってことは本当は違う人なんだろうなぁと思っていたのでびっくりしました。おしおきもV3らしいエグめの内容で最高です…
綾小路くんの「全員でもよおすからトイレに行かせてくれ」発言が面白くて大好きでした笑
おしおきされていった子達の不穏な発言などまだまだ気になるところが沢山あるので、これからも楽しみにしています!
コメントありがとうございます。びっくりして頂けたこと、おしおきエグいと言って頂けたこと、キャラの発言を好きだと言って頂けたこと、とても嬉しいです!!
そろそろ散らかした伏線を回収していきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。いつも励みになってます!本当にありがとうございます!