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第5章 AIと静春と旅立ち(非)日常編Ⅱ

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(チャイムと共に身支度を始める。キーボが また「しっかり寝たほうがいい」と苦言を呈したが、話半分に受け流した。)

 

(大丈夫。慣れている。目的のために、眠らないことには。)

 

(ここで、私が『ダンガンロンパ』を終わらせなければ…死んだ “あいつ”…あいつらの命が無駄になる。)

 

 

 

【校舎1階 食堂】

 

(食堂に入ると、1人以外 全員が揃っていた。)

 

「羽成田は?」

 

「見てないよ?」

 

「まだ寝ているんでしょうか?」

 

「いや…羽成田君、割と朝は早いみたいだよ。」

 

「昨日 元気なかったもんね。心配だな!」

 

「心配なテンションとは思えないが?」

 

(……”前回”と同じように病気の設定を与えられたのは、大場だった。羽成田が同じとは…考えにくいけど…。)

 

 

「世界に羽ばたく羽成田だ!覚えとけ!」

 

 

「……ちょっと見てくるよ。」

 

「あ、わたしも行く!」

 

「どうして女子って、どこでも ついて行きたがるんだろうね?闘えないくせに ついて来る嫌われヒロインみたい。私も行こっと!」

 

「行くんじゃないか。じゃあ、僕も行こうかな。」

 

「結局 全員で行くんですね。」

 

 

 

【寄宿舎 羽成田の個室】

 

「おーい、ハネゾラちゃん!生きてるー?」

 

「羽成田君、大丈夫?具合悪いの?」

 

(タマとエイ鮫が声を掛けると、ドアの向こうから声がした。)

 

「今日は部屋にいる。ほっといてくれ。」

 

(そして、また静かになった。)

 

「えっと…心配いらないってことかな?」

 

「まあ、何事もないならそれでいいよ。」

 

(その後、全員で食堂へ戻り、朝食を食べて解散した。)

 

 

 

【校舎1階 廊下】

 

「春川さん、また6階に行くんですか?」

 

(6階の研究教室へ続く扉を開けたところで、すぐにキーボから声が上がった。)

 

「そうだけど…何?」

 

「いえ…できれば、連れて行ってくれませんか?」

 

「……。」

 

「1人でいると、タマさんに絡まれて大変なので…。」

 

「……分かったよ。」

 

(正直 重いから置いて行きたいけど…仕方ない。)

 

「やはり…春川さんの肩を借り続けるのも限度がありますね。強化パーツを付ける時期かもしれません。」

 

(ブツブツ呟くキーボを乗せたまま、階段を上った。)

 

 

 

【超高校級のVチューバーの研究教室】

 

(研究教室内は誰もいなかった。私は昨日 倉庫から持ってきた包帯を拳に巻いて、色の違う床の前に立った。)

 

「春川さん?まさか、また これに挑戦するんですか?一昨日の様子からして、ここを拳で破壊するのは難しいのでは…」

 

(肩のキーボを降ろし、私は彼の声も聞かずに拳を床に叩きつけた。返ってくるのは、鈍い音と痛みだけ。それでも、何度も拳を振り下ろす。)

 

(この先に首謀者が…白銀がいるなら、私は行かなければならない。何をしてでも。何としてでも。)

 

(不可能じゃない。絶対に、やり遂げれば…可能にーー…)

 

「春川さん!もう止めてください!血が…!」

 

(キーボの止める声も気にせず、拳を打ち付ける。けれど、床板はビクともしない。徐々にその色が変化していく。…私の血で。)

 

(巻いていた白い包帯が、赤く染め上げられている。)

 

 

(その時、背後から研究教室の扉が開く音がした。)

 

「あ、春川さん…って、え?」

 

「エイ鮫さん!春川さんを止めてください!」

 

「春川さん!!ダメだよ!手がボロボロじゃない!!」

 

(エイ鮫の叫び声と共に、私は背後から抱きすくめられた。)

 

「……邪魔しないでくれる?」

 

(振り払おうと思えばできたけど、私の身体は反射的に動きを止めていた。)

 

「……。」

 

(エイ鮫が私の拳を見て絶句した。)

 

「……嫌なもの見せて悪かったね。」

 

「待って!」

 

(血で染まった右手を見せないように さっさとその場から立ち去ろうとしたところで、エイ鮫は私の腕を取った。)

 

「春川さん、手…応急処置しとこ?包帯…まだ持ってる?」

 

(心配げなエイ鮫に、私はポケットから包帯を取り出して見せた。彼女はすぐに その白い包帯を手に取り、私の腕を引いた。)

 

 

 

【校舎1階 食堂】

 

(古い包帯を取り、キッチンで手を洗う。私の手は皮が剥がれて酷い状態だった。そこに丁寧に包帯を巻きながら、エイ鮫は言った。)

 

「春川さん。お願いだから…自分の身体を大切にしてよ。」

 

「……そんなこと言ってられないでしょ。5階に首謀者がいるかもしれないんだから。」

 

「確かに、首謀者を見つけることは大切だけど…それでも…。それでも、…春川さんの体だって…大切なんだよ。」

 

「そうですよ。あの床板は おそらく、絶対に抜けないように作られているのでしょう。傷を作って殴り続けるのは合理的ではありません。」

 

「キーボクン、女子同士が手と手を取り合う場面に割って入ると、後が怖いよ?ホーガンでボッカンコースだよ?」

 

「うわあ!?」

 

「……。」

 

「いやー、そんなに春川さんが5階に行きたがってるなんて知らなかったなぁ!もう行ってるはずなのに、おかしいね!」

 

「……。」

 

「どういうことですか?」

 

「ボクは、どうしても5階に行きたいオマエラの願いを叶えてあげようと思って来たんだよ。」

 

「いえ、ボクが聞いてるのはーー…5階に行けるんですか!?」

 

「うぷぷ。ちょっと待ってね。」

 

(モノクマは笑い声をあげた後、姿を消した。)

 

「な、何なんだろうね?」

 

 

「くまたせ〜!」

 

「きゃあ!?は、早ッ!?」

 

「春川さんの拳の傷に免じて、5階の遺留品を持ってきたよ!」

 

(楽しそうにモノクマがテーブルに並べたのは、見覚えのある置物や実験器具に調度品。)

 

(”前回”、最原の研究教室に置かれていたものだ。)

 

「これはね、今は亡き、和戸 新始クンの研究教室予定だった部屋に置いていたものだよ!」

 

「あ、5階に行けるわけではないんだね…。」

 

「しかたないよ。5階は人が入れない立ち入り禁止区域なんだから。」

 

「モノクマは、今 立ち入りましたよね?」

 

「ボクを人と一緒にするなよー!?ボクは人なんかより、よっぽど最高で最凶で横暴で乱暴で無謀なんだからなー!!」

 

(モノクマは激昂しながら消え去った。)

 

「えっと、つまり…これは“超高校級の探偵助手”の研究教室にあったもの…ってことだよね?」

 

(最原の研究教室にあった装飾品が並んだテーブルを見下ろす。幸い、毒や犯罪ファイルなどはない。)

 

 

「これは…手帳でしょうか?」

 

(その中に、黒いメモ帳のようなものが混じっている。)

 

(最原の部屋には…こんなものはなかった。)

 

(私は その黒い手帳を手に取って開いた。そこには、几帳面な字が並んでいた。)

 

(これは…手記?)

 

 

あれは、僕が”かの名探偵”の助手を始めて、少し経った頃のことだった。

「やあ、そこに掛けたまえ。」

僕が室内に入るなり、彼は若者らしからぬ口調で言った。僕は促された通りに年季の入った椅子に腰掛け、彼に問い掛けた。

「キミがそんなに楽しそうにしているってことは、何か事件を解決したんだね。そうだろ?」

すると、彼は悠然と「そう見えるかい?」と笑った。

まるで、どこかの小説の登場人物のような口調。室内も”それらしい”調度品で揃え、彼はまさに”なりきって”いた。

お気に入りのインバネスコートを室内でも羽織っている様は一種異様なものだが、これは黙っておこう。ついでに言えば、その格好は かの探偵小説の挿絵として後から付けられたイメージのものであって、小説内では言及されていない。これも黙っておいた方が良さそうだ。

「なかなかの名推理…と言いたいところだが、和戸くん。キミは読み間違えているようだよ。」

彼は不敵な笑みを浮かべたまま続けた。

「実は、あるピアニストと僕のバイオリン合奏のリサイタルが決まってね。今日は練習をするから、キミに客第一号になってもらおうと思ったんだ。」

「へえ、キミのバイオリンがそこまで注目されているとは知らなかった。」

「残念だが、注目されているのはピアニストの方さ。たまたま同世代で少し名が売れている僕にお声が掛かったというだけだ。」

「それでもすごいことじゃないか。ぜひ、聞かせてもらうよ。」

「ああ、頼むぜ。相手は音楽界では知らない者がいない程の逸材だからね。キミがいることで僕の緊張が和らぐはずさ。」

彼はドラマや映画の”名探偵”の見よう見まねの演技で、大げさに手を振って見せた。緊張だなんて大嘘だ。彼はおそらく、僕に有名ピアニストとの圧巻の演奏を聞かせたくてたまらないのだろう。こうなった彼にとって、僕の今日の都合なんて構う価値もないものだ。僕らは、その足で練習場所に移動することになった。

道中、彼はしきりにピアニストの話をした。若くして天才だとか、見目麗しい美女だとか、ピアノに一途な本物の音楽家だとか。僕は彼の話を聞きながら、その彼女の前で殺人が起きないことだけをひたすら祈っていた。

僕らがそうして、彼女に会ったのは、桜が舞い散る木の下だった。

赤松楓さん。

それが、かのピアニストの名前だ。

 

(手記は、そこで終わっていた。)

 

「赤松…楓。」

 

「これって…和戸君の日記…なのかな?」

 

「そのようですね。……どうしました、春川さん?」

 

(どういうこと…?これが和戸のものだとすると…赤松と面識があったってこと?)

 

(…いや、どうせ…それだって ただの設定だ。)

 

「春川さん?」

 

「……何でもないよ。」

 

 

 

【寄宿舎 春川の個室】

 

(その後、いつも通り食事を終えて、各自 解散した。けれど、夕食の場にも羽成田は現れなかった。)

 

「春川さん、今日も…ベッドで寝ないのですか?」

 

「何?また、あんたの”内なる声”が『まだ大丈夫だ』って言ってるの?」

 

「いえ…そういうわけではないのですが…。」

 

「……あっそ。」

 

「ちょっと!春川さん、ボクはキミを心配してーー…」

 

(キーボを入れてクローゼットを閉める。そして、いつもと同じように扉前に椅子を置いて腰掛け、目を閉じた。)

 

(……和戸は、赤松を知っていた。)

 

(これも…『ダンガンロンパ』が仕組んだこと?これも…ただの設定…?)

 

 

…………

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(聞き慣れた朝のチャイム。いつも通りキーボを連れて食堂へ向かった。)

 

 

 

【校舎1階 食堂】

 

「春川さん、おはよう。手、大丈夫?」

 

「おはよう。」

 

「おはよー!そういえば、ハルマキちゃん、昨日も利き手に包帯ぐるぐる巻きしてたよね。ケガ?」

 

「…何もないよ。」

 

「なら良かった!それより、ハネゾラちゃんは また来てないの?」

 

「そうみたいだね。昨日、昼ごはんの時も晩ごはんの時も『いらねぇ』の一点張りで。さすがに、そろそろ食べないと…。」

 

「最初の事件後にも、同じようなことがあったね。あの時は…大場さんがフォースの力で引っ張り出したみたいだったが…。」

 

「フォースの力というか、力づくだったよね!」

 

「さすがに力づくは無理だから、ごはん部屋に持って行こうかな…。」

 

「大丈夫だよー。多分、時間ずらして、適当に食べてるから。」

 

「でも…。」

 

 

「大丈夫 大丈夫!動機について、ボクから彼に言伝しておくから!」

 

「うわっ。朝から出た!」

 

「さて、そろそろキミのリアクションにも飽きてきたところで、オマエラに重大発表があるよ!」

 

「なになにー?また動機の発表?」

 

「…くだらない。人数が減って正答率が高くなっているんだ。もう殺人を犯す人なんて現れないよ。」

 

「あれあれ?知りたくない?前回の裁判で春川さんが話してた首謀者について、なんだけど?」

 

「……!」

 

「うぷぷぷぷ。オマエラに、最高の真実をプレゼントするよ。春川さんが言う首謀者について。」

 

「この中に、春川さんが話していた首謀者の言うことを聞いてたヤツがいます!」

 

「……!!」

 

「……それって、どういうこと?」

 

「うぷぷぷぷ。」

 

「言うことを聞いていた人…首謀者の手先。それが…僕らの中にいるってことかい?」

 

「うぷぷぷぷぷぷぷ。」

 

「待ってよ!わたし達の中に、首謀者はいないって、前回の裁判でーー…」

 

「証明、されてないよね。私たちは着替えただけ。あくまで、ハルマキちゃんが、”モノクマに言われて” 確認したことなんだから。」

 

「それに、首謀者と首謀者の手先は違います。考えたくありませんが…モノクマ側の裏切り者がボク達の中に…。」

 

「そんな、はず…ないよ!」

 

「んー、モノクマは何で、そんな身内切りみたいなこと言うの?もう用済みだから切り捨てようってこと?」

 

「うぷぷぷぷ。」

 

「要領を得ないね。」

 

「絶対 嘘。モノクマの嘘だよ!」

 

「ボクは、嘘は言わないよ。クマ、嘘つかない。オマエラの中には、相当な嘘つきがいるみたいだけどね。」

 

「……。」

 

(いつもの嫌らしい笑いを見せたモノクマは、その場からいなくなった。)

 

 

「怖いねー。私たちの中に、首謀者の手下がいるんだってさ。」

 

「そんなの…嘘だよ。」

 

「フム。モノクマみたいなロボットが嘘を吐くというのも変な話だが…疑心暗鬼に陥らせて、殺人をさせようとしているとも受け取れるね。」

 

「そうだよ!わたし達の誰も殺人しなさそうだから、モノクマが罠を張ったんだよ!だから、何もしなければ…もう、殺人なんて起きないよ。」

 

「でも、本当に この中に首謀者の協力者がいたら?そいつがクロになって誰かを殺すかもだよ?」

 

「そう…だけど…。」

 

「問題は、それが誰なのか…だよね。どうする?1人1人キツめの尋問でもする?」

 

「拷問でもしようっていうのかい?拷問では誰が首謀者の手先なのか、分からないと思うな。痛みに弱い人間が潰されるだけだよ。」

 

「そうだよねー。暗殺者とか特殊な訓練 積んだ人間には拷問なんて無駄だし…。」

 

「ま、私は勝手に首謀者の手下を探してみようかな?みんな、手下に殺されないように気を付けてね?」

 

「ちょ、ちょっと、タマさん…!」

 

(タマは満面の笑みを浮かべて、食堂から立ち去った。)

 

「モノクマが言ったことは話半分に聞いておくとして…僕も失礼しようかな。読みたい本があるんだ。」

 

(続いて、綾小路も出て行く。)

 

「……。」

 

 

(どういうこと…?この中に、白銀はいないはず。でも…白銀の協力者が…いる?)

 

「どうしよう…。こんなんじゃ、みんな疑心暗鬼になっちゃうよ…。」

 

「……エイ鮫さんは、モノクマの言うことを信じないんですか?」

 

「そりゃそうだよ!だって、わたし達、今まで みんなで頑張ってきたんだよ?それなのに…そんな…。」

 

(……白銀も…そうだった。)

 

(みんなと協力しているように見せて…仲間だと信じさせて…裏切っていた。)

 

(この中に…白銀の協力者がいる。でも…誰が…?誰が白銀の協力者なの?)

 

「春川さん。あの…」

 

「……何?」

 

「えっと…春川さんは、どう思う?モノクマだって嘘 言うって、春川さんは知ってる…よね?」

 

「…知らないよ。分かるわけ…ない。」

 

(思ったより、低い声が出た。エイ鮫は私の言葉を聞くなり、眉を下げた。…が、すぐに明るい表情を見せて言った。)

 

「じゃあ、わたし他の人の様子を見てくるよ!絶対、首謀者の手先なんかいないって、春川さんを安心させるから!」

 

(そう言って、食堂から姿を消した。)

 

「春川さん。モノクマの言った言葉が本当かどうかは分かりませんが…ボク達も他の人の様子を見ておくべきだと思います。」

 

「……そうだね。」

 

(他の奴らの居場所は、モノパッドで確認できたね。)

 

 

 寄宿舎に行く

 図書室に行く

 暗殺者の研究教室に行く

全部行ったね

 

 

 

【寄宿舎 羽成田の個室】

 

(羽成田の個室前に来た。案の定、インターホンを鳴らしても、返答はない。)

 

「返答がありませんね…。もしかして、中で倒れているのでは…?」

 

「羽成田クン!大丈夫ですか!?元気なら返事をしてください!でないと、ドアを蹴破ることになりますよ!春川さんが!!」

 

「……。」

 

(キーボが大声を放つと、ドアの向こうから音がして、次いで扉が開いた。)

 

「…オレは、この通り元気だ。だから ほっとけ。」

 

「……なんか、あんたヒューヒューいってない?」

 

(羽成田の呼吸音は、明らかにおかしい。まるでー…)

 

「羽成田クン、モノクマがキミに余計なことを言いませんでしたか?」

 

「……。」

 

「首謀者の手下とかいうヤツのことか?……ンなモン、オレには関係ねーよ。」

 

「そうでしたか。くれぐれも、疑心暗鬼に陥って事件を起こそうなんて思わないでくださいね。」

 

「うるせぇよ…。マジでほっとけ。」

 

(息苦しそうな声で言って、羽成田は扉を閉めた。)

 

「羽成田クン…苦しそうでしたね。病気…でしょうか?」

 

「………。」

 

 

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【校舎地下 図書室】

 

(モノパッドを見ながら図書室に入る。中にはパッドが示す通り、綾小路がいた。彼は本に落としていた視線を私に向けた。)

 

「やあ、春川さん。何か用かな?」

 

「今朝のモノクマの言葉を鵜呑みにしていないか、様子を確認しに来たんですよ。」

 

「……キーボ君は割と明け透けな言い方をするよね。……まあ、いい。」

 

「僕は半信半疑といったところかな。みんなを信じる気持ちと、盲信は危険だという気持ちのコンビネーションといったところかな。」

 

「……。」

 

「誰かを殺そうなんてことは考えないから心配には及ばないよ。僕は今までの経験と知識から分析して、信じるべき人と事を選ぶからね。」

 

「もちろん、僕は首謀者の手先などでもない。マスターマインド…精神の師と呼ぶ人は、マスター・ヨーダと決めているからね。」

 

「…映画の影響を受けすぎではないですか?」

 

「とにかく、マルチサイドな視点から判断していくから、大丈夫。春川さんが危惧する疑心暗鬼による殺人なども起こさないよ。」

 

(綾小路は言いたいことだけ言って、手元の本に視線を戻した。)

 

「……とりあえず、次に行きましょうか。」

 

 

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【超高校級の暗殺者の研究教室】

 

「あれ?ハルマキちゃん。何か用?」

 

(タマは自分の研究教室にいた。その手には、細い矢が握られている。)

 

「タマさん!それは、矢ではありませんか!?まさか、それを武器にーー…」

 

「あはは、やだな。キーボーイ。クロスボウの矢をデコってるだけだよー。」

 

(彼女が言う通り、タマは赤い蛍光塗料を矢に塗りたくっている。)

 

「赤い方が、ずっと可愛いと思うんだよねー!暗殺者って、赤くて可愛いから血に染めたいって人も多いらしいけど、私は賛同できないかなー。」

 

「血の色って変色するし、可愛くないんだよね。」

 

「他の暗殺者は可愛く飾るために凶器にするってことですか…?狂気じみていますね。」

 

「うーん、今のは100点中53点ってところだよ。キーボーイ。」

 

「ダジャレを言ったわけではありません!」

 

「……タマ。あんた、首謀者の手先を探すって言ってたけど…。」

 

「うん!手先を暴けば、首謀者を引っ張り出せるかもしれないからね!」

 

「何か手立てがあるんですか?」

 

「うーん、まだ考え中かなー。私のコケた頭じゃ考えられることなんて限られてるからねー。」

 

「え!?その髪の色は苔なんですか!?」

 

(どうでもいい やり取りが続きそうなので、私はその場を後にした。)

 

「意外と…タマさんも普通に見えましたね。」

 

「……。」

 

 

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【校舎1階 食堂】

 

(全員、モノクマの言うことに大きく動揺はしてないように見えた。)

 

(そのことに安堵しつつ、食堂で夕食のために人が集まるのを待つ。私のすぐ後に入って来たのは、エイ鮫だった。)

 

「あ、春川さん。」

 

(エイ鮫は、そもそも モノクマが言ったことに懐疑的だったから…大丈夫だと思いたいけど…。)

 

「春川さん、大丈夫?」

 

「…何が?」

 

「今朝のモノクマの言ったこと…気にしてたから。」

 

「…それは、そうでしょ。」

 

「大丈夫だよ!わたし、みんなの様子を見て回ったけど、タマさんも綾小路君も いつも通りだったもん。誰も首謀者の手先なんて、思えないよ!」

 

「……。」

 

「だから、春川さん…」

 

(エイ鮫が言い掛けたところで、タマと綾小路が食堂に入って来た。)

 

「あ、みんな。羽成田君は…また来ないんだね。わたし、さっき声掛けたけど、返事してくれなくて…。」

 

「ハネゾラちゃんなら大丈夫だよ!後で食べに来ると思うから。私が声掛けた時は『うっほほ〜い!今日はカレーだカレーだ!』って大喜びしてたもん。」

 

「いや…噓だろう。」

 

「今日はカレーでもないですしね。」

 

(4人で静かな食卓を囲み、夕食を食べ終えた私は宿舎へ戻ろうと校舎を出た。)

 

 

 

【寄宿舎前】

 

「春川さん、待って!」

 

(宿舎前で、走って追いかけて来たエイ鮫に呼び止められた。)

 

「何?」

 

「あの…春川さん。少し話さない?」

 

(前にも…こんなことあったね。)

 

「……いいけど、何?モノクマの話?」

 

「あ、ううん。春川さんと、2人で話したいって思って…。」

 

「エイ鮫さん!ボクもいますよ!」

 

「うん。だから、今日はキーボ君抜きで、女子会というか…しゃべり場というか…から騒ぎしない?」

 

「ええ!?」

 

「春川さんに…話したいことがあるんだ。ダメ?」

 

(エイ鮫が真剣な表情を作って言うので、私はキーボを寄宿舎前の茂みに降ろした。)

 

「ちょっと!春川さん!こんな所にボクを置き去りにする気ですか!?」

 

「すぐ戻るから待ってなよ。」

 

「ごめんね?キーボ君。」

 

(そして、エイ鮫の背を追って再び校舎に入った。)

 

 

 

【校舎1階 食堂】

 

「もう誰もいないね。2人きりになるの、じ、実は初めて…だよね。ドュフフ…。」

 

「そのオッサン笑い止めて。」

 

「あ、ごめんね?つい…。」

 

「それで、話したいことって何なの?」

 

「それは……」

 

(ふいに、エイ鮫の周囲の空気がピリッと緊張したのが分かった。)

 

(その瞬間、緊張が移ったように、私の背中も強張った。この感じ…対峙した相手との緊張感。これを…私は知っている。)

 

(これは…命のやり取りの場で何度も経験した緊張感…。)

 

(エイ鮫は、キーボを連れて来させなかった。私と2人きりになりたがっていた。)

 

(まさかーー…。)

 

 

「ここから出たら、友達になってください!」

 

「……は?」

 

(緊張で顔を強ばらせたままのエイ鮫が言い放ったのは、そんな言葉だった。)

 

「だ、だから…ここから出た暁には、ぜひ、わたしめと友達から始めて…じゃない、友達になってください…!」

 

(なぜか、お辞儀の姿勢で握手を求めるように手を突き出して。)

 

「…何それ。何で今…そんなこと言うの?」

 

「外に出るためのモチベーションだよ!絶対 外に出るって思ってるけど、でも…不安になることもあるから。」

 

「だから、外に出たら これをしようって決めておけば、モチベーションを保てると思って。ね?外に出たら、みんなで、遊ぼうよ。」

 

「一緒にメイドカフェで萌え萌えジャンケンとか、富士の樹海でサバゲーとか、レストランメニュー全部 食べなきゃ帰れまテン!とかしようよ!」

 

(遊びが特殊すぎる気がするけど……)

 

「………。」

 

 

「ここから出たら、みんなで友達になろうよ!」

 

 

(ずっとエイ鮫に感じていた既視感…それは、白銀によるものじゃない。確かに、顔や言動は白銀に似てるけど…この既視感は…。)

 

赤松…。)

 

「ダメ…かな?」

 

「………いいよ。」

 

「春川さん…!」

 

(私がエイ鮫の右手に触れると、彼女は嬉しそうに私の手を握った。)

 

「あ、ごめんね。春川さん、右手ケガしてたんだった。」

 

(エイ鮫が少し慌てた様子を見せた後、笑う。幸せそうに。)

 

「………。」

 

(今いる奴の中に、白銀はいない…。)

 

(でも…白銀の協力者がいる…かもしれない。)

 

「春川さん…?どうかした?」

 

(エイ鮫…は……)

 

 

「意見が言えなくなったのって…春川さんが迷ってるってことだよね?それなら、わたしは その迷いを一緒に背負いたいんだよ!」

 

「春川さんは1人じゃないよ!わたしもいるし、キーボ君もいる。みんなが一緒だからね!」

 

「暗いところよりも、春川さんを失う方が怖いよ。」

 

「そんなの関係ない!信じるって、そういうものでしょ!わたしは春川さんを信じたいから信じるんだよ!」

 

「確かに、首謀者を見つけることは大切だけど…それでも…。それでも、…春川さんの体だって…大切なんだよ。」

 

 

「………。」

 

「あんた…今朝、モノクマが言ったことは嘘だって言ったよね。何で、そう言い切れるの?モノクマは、これまでに嘘は吐いてなかったみたいだけど。」

 

「え?」

 

「モノクマ、嘘ついてたでしょ?前回の裁判で。」

 

「前回?」

 

「モノクマ、春川さんが地下の通路を知ってたって、嘘ついたんだよ?そんなモノクマの言うこと信じられないよ。」

 

「……。」

 

「だから、今朝 言ったことも、モノクマの嘘なんだよ。」

 

「……私を信じてるから…モノクマが嘘を吐いたって…言ってるの?」

 

「え?どうしたの?」

 

「私が…本当に地下道を知らなかったかなんて…あんたには、分からないのに?」

 

「やだな。モノクマなんかより、春川さんを信じるのは当たり前でしょ?」

 

「…前の裁判で、私は嘘なんて言わないって…そう言ったよね。あんたの魂が、そう叫んでるって…。」

 

「そ、そのフレーズは忘れて!あの時は必死だったから、つい 熱くなっちゃって…」

 

 

「…違うんだよ。」

 

「え?」

 

「私は…本当は嘘ばっかりだったんだよ…。」

 

「春川さん?」

 

「本当は…あのボイラー室の地下道のことも知ってたし、図書室の隠し通路も…嘘だった。」

 

「……。」

 

「…理由が、あるんだよね?」

 

(私は静かに頷いた。)

 

「話してくれる?」

 

「……私は、このコロシアイを終わらせたい。ここにいる誰よりも…。」

 

「…うん。」

 

「私は、あんた達と出会う前から、この学園のことを知ってたんだよ。」

 

「え…。」

 

「私が、コロシアイに参加するのは…2回目、だから。」

 

 

「私は…”前回”のコロシアイで生き残った…“超高校級の生存者”なんだよ。」

 

(私が言うと、エイ鮫は目を大きく見開いた。)

 

「前回…?それも、このコロシアイと同じだったの?」

 

「そうだよ。初めに、タイムリミットの動機が発表されて…1人が殺されて、1人が処刑された。」

 

(質問責めにあうと思っていたけれど、意外にもエイ鮫は私の顔を見つめて黙って聞いている。それを確認して、話し続けた。)

 

「次は…動機ビデオを見た1人が殺人を犯して…殺された被害者の死体はピラニアに食われた。」

 

「3回目の動機は…今回と違うけど…3回目は2人被害者が出て…4回目では雪の中で事件が起こった。」

 

「5回目の、事件…は…」

 

(そこで、言葉が詰まった。)

 

「春川さん…。」

 

(エイ鮫がギュッと私の手を握る。包帯のない、左手を。)

 

「5回目の事件で…私は参加者の1人を首謀者だと思って……殺そうとして…それで…」

 

「”あいつ”が…私のせいで、クロになった。」

 

「……あいつ?」

 

「………。」

 

「あいつは…孤立していた私を勝手に引っ張って、助手だとか言って…いつも強引で…真っ直ぐで…いつも、」

 

(”あいつ”の笑顔が浮かぶ。ここに来てから、思い出さないようにしていた、あの笑顔。)

 

(何もかもを明るく照らすような、あの笑顔。)

 

(悲しい気持ちじゃなくて…感謝の気持ちで見送った。そう…最後の裁判の前は、そう思えたのに…。)

 

(視界がボヤける。鼻がツンとする感覚に、慌てて目を閉じた。)

 

「春川さん…。」

 

「その人が大好きだったんだね。」

 

「なんっ…」

 

(思わず顔を上げる。エイ鮫の言葉が予期していないものだったから。あまりにも優しくて、穏やかな声だったから。)

 

「照れなくていいよ。春川さん、可愛い。」

 

「…殺されたいの?」

 

「えぇ!?」

 

「……冗談だよ。」

 

(思わず、物騒な言葉が口をついて出たので訂正した。溢れそうだった涙は、いつの間にか引っ込んでいた。)

 

「というか、あんた…こんな話、信じるの?」

 

「信じるよ。春川さんの言葉なら、『パンダの白黒は実はペンキ』とか言われても信じるよ。」

 

「…そんなことは言わないけど。」

 

「そうだよね。……ありがとう。」

 

「…何で…礼を言うの?」

 

「話してくれたから。だから、ありがとう。春川さんは、それで首謀者を探してたんだね。」

 

(エイ鮫は、心底 安堵したように笑った。)

 

「…首謀者は、”前回”は図書室に隠し扉を作って出入りしてたんだよ。”前回”、私たちは…首謀者を暴いたんだけど……」

 

 

(そこで、言葉は途切れた。)

 

(主謀者は暴いたけれど、この世界はフィクションで…『ダンガンロンパ』を終わらせられず、今回コロシアイが始まった。それを言ったら…)

 

(私が、全員の命を犠牲にしてでも『ダンガンロンパ』を終わらせたいなんて…言ったら……)

 

「春川さん?」

 

「………。」

 

「いいんだよ、春川さん。全部を無理に話さなくたって。」

 

「…エイ鮫。」

 

「もし…また、話せる時が来たら…話してくれればいいんだよ。わたし、今とても嬉しいんだ。」

 

「ごめんね。春川さんにとって、辛い話だったのに。でも…春川さんが、わたしに話してくれたのが嬉しいんだ。」

 

「……エイ鮫。このことは…まだ他の奴らにはーー…」

 

「うん。分かってるよ。黙ってる。春川さんと、わたしだけの秘密。」

 

「ねぇ、良かったら いつか…春川さんの好きな人について、聞かせてくれる?」

 

「……。」

 

「大切な人を思い浮かべてると、勇気が出てこない?頑張って脱出しようって、思えるから。」

 

「だから、いつか…話せるようになったら…話したくなったら、2人で恋バナしよ?」

 

(エイ鮫が笑いながら言う。そして、彼女は胸元のペンダントを握った。)

 

「わたしにもいるんだ。大切な人。とっても、大好きな人。」

 

(そういえば…エイ鮫のペンダントは、どこかで見たことがある。…どこで見たんだろう?)

 

 

「そうだ!ねぇ、春川さん。」

 

「……さっきの、ここから出たら友達っていうの…あれ、ナシにして!」

 

「……は?」

 

「ここから出たら…なんて、よく考えたら完全に死亡フラグだもん。」

 

「何 言ってんの?」

 

「今、ここで、友達になって!」

 

「……よく分かんないんだけど…。」

 

「外に出たら友達っていうのもいいけど、今 友達になって、春川さんと色んな所に行くのを目標にしたい!…ダメかな?」

 

「…変なの。」

 

(自然と、ため息が漏れた。ため息と共に「いいよ」と小さく吐き出すと、エイ鮫は溢れんばかりの笑顔を見せた。)

 

「やった!ありがとう!!今から、わたしと春川さんは友達だよ!」

 

「よーし!これから、何があっても、わたしが春川さんを守るからね!」

 

「それなら、兄弟の盃を交わさなきゃ!『生まれた時は違えども!』ってしないと!」

 

「……兄弟にはなれないでしょ。」

 

 

(そんなことを話している間に、夜時間が近くなってきた。)

 

「え!?もう こんな時間?大変!食堂は夜時間 封鎖だったよね。」

 

(エイ鮫は食堂の時計を一瞥して、慌てた声を上げる。)

 

「そうだね。」

 

(テラス側から出ようとする私とは反対に、エイ鮫は校舎側のドアへ向かって行く。)

 

「春川さん。わたし、研究教室に用があるから、また明日ね!おやすみなさい!」

 

(そして、上機嫌に外に出て行った。)

 

 

 

【寄宿舎 春川の個室】

 

(宿舎の前に置いてきたキーボが姿を消していた。私が辺りを見回しながら宿舎の部屋の前に来ると、その小さな身体が見えた。)

 

「あ、春川さん!遅かったじゃないですか!」

 

「あんた、ここまで1人で来たの?」

 

「ええ。なかなか春川さんが戻って来ないので、とりあえず屋内に入ったんですよ。」

 

「けど、部屋には入らずだったんだね。」

 

「それはそうでしょう。ボクは鍵を持っていないんですから。」

 

(持っていたところで、入れなかったと思うけど…。)

 

 

(キーボと部屋の中に入る。キーボを机に乗せて一息つくと、睡魔が襲ってきた。長らく、ちゃんと寝ていなかったから…。)

 

「キーボ、少しだけ…仮眠を取るよ。2時間くらい。それまで…外の様子、見ててくれない?」

 

「…!はい、分かりました!」

 

(私が言うと、キーボは安心した様子で、力強く頷いた。)

 

……

 

「ちわーす!モノクマ運送でーす!」

 

(久しぶりにベッドに横になって目を閉じていた私の耳に、嫌な声が入ってくる。)

 

「…モノクマッ。せっかく春川さんが寝たんですから、静かにーー…」

 

「もう起きたよ…。」

 

「お休みのところ、すみまっせーん!お届け物お持ちしましたー。」

 

(ボンヤリする思考に、モノクマの声がガンガン響く。時計を確認すると、23時前だった。)

 

(頭を振ってベッドサイドから顔を覗かせるモノクマを睨む。その前足には、手紙らしき封筒が挟まっていた。)

 

「確かに お届けしました〜。モノクマ運送でした〜。」

 

(私が届け物とやらを受け取ると、モノクマは立ち去った。霞む視界の中で、封筒を開けて中を確認した。)

 

(その内容に、眠気は吹き飛んだ。)

 

 

「え!?春川さん?ど、どこに行くんですか!?」

 

(私は、キーボの声を背にしながらも、一目散に その場所に走った。)

 

…………

……

 

(春川さん…遅いですね。)

 

(ボクの体内時計は午前0時を回っている。それでも春川さんが戻って来ない。)

 

(どうしましょう。この体で探すのは難しいですが…みなさんを呼ぶことくらいはできるでしょうか。)

 

(そこまで考えて、机の下を見下ろした。)

 

(……やはり、ここから飛び降りるのは無謀ですね。)

 

(仕方なく、ボクは目を閉じて、”内なる声”に耳を傾けた。)

 

…………

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(そして、長い夜時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。)

 

(春川さんは、結局、戻って来ませんでしたね。何かあったんでしょうか。)

 

(しかし…ボク1人では、この机から降りることもままなりません。)

 

(その時、春川さんが出て行って少し開いたままの扉の外を通り過ぎる影があった。ボクは慌てて彼の名を呼んだ。)

 

「綾小路クン!すみませんが、ちょっといいですか!!」

 

「…おや、キーボ君。どうしたんだい?春川さんは?」

 

「それが、昨日 出て行ったきり、帰っていないんです。一緒に探してくれませんか?」

 

「僕に君が運べるとでも?」

 

「では、せめてボクを机から降ろしてくれませんか?」

 

「…やれやれ、留守中の女性の部屋に入るのは気が引けるが…。」

 

(綾小路クンはさして気にしない様子で中に入り、呻きながらボクの体を机の下に降ろした。)

 

「春川さんの居場所は…モノパッドは部屋に置きっぱなしらしいね。どこに行ったのか、心当たりはないのかい?」

 

「それが…手紙が届けられて、それを見た瞬間、飛び出して行ったんです。」

 

「手紙…?…それなら、格納庫にいるんじゃないかな?」

 

「格納庫ですか?どうして?」

 

「モノパッドにはタマさんが格納庫にいるとある。彼女と待ち合わせでもしていたんじゃないかな。」

 

(そういえば、昨日 春川さんとエイ鮫さんに置いて行かれた時、タマさんが格納庫方面に走って行くのを見ましたね。それに…。)

 

「……では、格納庫を見に行ってみましょう。」

 

「君の歩調に合わせて行くのは…何というか、疲れそうだね。」

 

「…先に行ってくれても構いませんよ。」

 

 

 

【格納庫 シャッター前】

 

(かなり時間が掛かったが、何とか格納庫の前まで辿り着いた。)

 

「……階段でキーボ君を手伝ったせいか、腕が痛いよ。荷車でもあれば良かったね。」

 

「荷物扱いしないでください!」

 

「怒らないでくれよ。…おや、シャッターが開いてるね。」

 

(歪んだシャッターが中途半端に開いている。シャッターのすぐ向こうに、あの巨大なロボット…エグイサルがあるのが見えた。そして…)

 

(そして、ボク達は発見した。エグイサルの足下に倒れる、制服を血で汚した姿を。)

 

(事切れて動かなくなった、その女性の死体を。)

 

 

 

非日常編へ続く

 

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「第5章 AIと静春と旅立ち(非)日常編Ⅱ【ダンガンロンパV4if/創作ダンガンロンパ/創作論破】danganronpa」への4件のフィードバック

  1. 更新ありがとうございます!
    あまりに衝撃的&続きが気になる終わり方で、思わずえーーっと声が出てしまいそうになりました笑
    残っている女性みんな退場したらまずいキャラばかりなような…でもみんな何かしらのフラグを立ててるような……本当に気になります…!

    あんまり何回もコメントしてもプレッシャーになるかなぁと思っていたのですが、励みになっているとのお返事が嬉しかったのと続きが気になりすぎてまたコメントしてしまいました(>人<;)

    1. トラウマウサギ

      いつもありがとうございます!プレッシャーだなんてとんでもない!「書いてもいいんだ!」という勇気になってます!
      特に続きが気になると言っていただけて本当に嬉しいです◎みんなのフラグ立てた甲斐がありました!毎週更新を目標にしてますので、また覗いていただければ幸いです!

  2. 女性…どの!?怖すぎる…
    既視感のあるペンダントはV3一章被害者か…?
    いつも楽しく読ませていただいてます!次回も楽しみです!!

    1. トラウマウサギ

      おお…考察いただけて嬉しい…!いつもご覧いただきありがとうございます!

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