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第5章 AIと静春と旅立ち 学級裁判編Ⅱ

 

学級裁判 再開

 

(事件の犯人は春川さんだった。)

 

(春川さんは言った。覚悟を決めた…と。何を犠牲にしてでも、ゲームを終わらせる…と。)

 

(春川さんの言う犠牲…まさか…)

 

 

1. キーボの利権

2. 春川の命

3. 全員の命

 

 

 

「キーボ君、こんな時に冗談言うなら…これから あなたのことを某下まつ毛 生徒会役員みたく、空気ヨメ男と呼ぶよ。」

 

(く…くうきヨメお?)

 

 

back

 

 

 

 

「春川さん。キミが言ってる犠牲…それは まさか、ここの全員の命…ですか?」

 

「はあ!?」

 

「首謀者を見つけるためにクロになった。そういうことですか?」

 

「……。」

 

「クロとして卒業する時、おそらくコロシアイの首謀者が現れる。春川さんはクロとして生き残り、現れた首謀者を殺そうとしていた…そういうことかい?」

 

「……違うよ。」

 

「私は…クロになって、首謀者と2人で…また新しいゲームに参加する。」

 

「そして…そこで、今度こそ終わらせる…。」

 

「何を…言ってるんですか?」

 

「ワケ 分かんねーこと言ってんじゃねーぞ!テメーは…クロ…そうなんだな!?」

 

「首謀者を おびき出すためにタマさんを殺し、卒業しようと計画を立てていたんじゃないのかい?」

 

「……違う。」

 

「昨日の夜…私は格納庫に呼び出されたんだよ。“首謀者”からね。」

 

「首謀者…から?」

 

「そう。あれは、11時前。モノクマが私の部屋に手紙を運んで来たんだよ。」

 

「宵の口から丑三つ時まで24時間営業!モノクマ運送だよ!」

 

「そこには、『格納庫に来てね。首謀者より』…そう書いてあった。」

 

「あの手紙…ですか。」

 

「私は…すぐに暗殺者の研究教室でクロスボウを組み立て、矢を持って格納庫へ向かった。」

 

「首謀者を殺す気マンマンだったということか。」

 

「…11時頃…格納庫に着いたよ。その時は…シャッターは開いてた。…でも、格納庫にいたのは、タマだけだった。」

 

「首謀者は…いなかったんだ?」

 

「…そうじゃないよ。あいつが…タマが、私に手紙を出したんだよ。」

 

「……え?」

 

「あいつは、私に言ったんだよ。『自分が首謀者だ』って…。」

 

「何だって?」

 

「タマさんが…首謀者だったっていうの?」

 

「まさか…春川さん。その話を聞いて…」

 

「もちろん、そんな話…すぐに信じたわけじゃないよ。」

 

 

「あんたが首謀者…?そんなこと…ただ言われただけじゃ信じないよ。」

 

「えっ?そう?」

 

「あんたの嘘なんて、あのクソ野郎と比べたら可愛いもんだよ。」

 

「えー?クソ野郎って誰のこと?ひどいなぁ。でも…」

 

「エノヨナちゃんが自殺したのが私のせいだって言ったら、どう?信じてくれる?」

 

「……!?」

 

「彼女に睡眠薬をあげたのは、私だよ。」

 

「あんた…」

 

「ハルマキちゃんが睡眠薬を盗んだ時、私たち会ったじゃない。」

 

「だから、すぐ分かったよ。あの火事を起こしたのは、ハルマキちゃんでしょ?」

 

 

「ちょ、ちょっと待って?火事って…まさか…。」

 

「2回目の裁判前の…宿舎の火事だろ…。」

 

「……そう。宿舎を火事にしたのはタマじゃない。私だよ。」

 

(宿舎が火事になった日、確かに春川さんは”超高校級の幽霊”の研究教室に行った。ボクをマネキンの上に置いて…あの時、睡眠薬を持ち出した…。)

 

(あの後、教室の外でタマさんに会った。あの時、タマさんも睡眠薬を持ち出していた?)

 

 

「あ、ハルマキちゃん。イキリョウちゃんの研究教室に、何か用事?」

 

「……何でもないよ。」

 

「タマさんは どうしたんですか?」

 

「暇だから1人肝試しでもしようと思って。」

 

 

「タマは、私が持ち出す直前に研究教室から睡眠薬を持ち出してたんだよ。だから、私が火事の犯人だと分かってた。」

 

「春川さん…どうして?どうして、宿舎を火事にしたの…?みんな…死んじゃうかもしれないのに。」

 

「……このゲームを終わらせるため…だよ。」

 

「……。」

 

「このゲームを終わらせるには…全滅するしか…ない。」

 

「何を言ってやがる?」

 

「どういうことですか?このコロシアイが終わるのは、クロが卒業するか、最後の2人になる時です。全滅する必要はありません。」

 

「……。」

 

「それと、タマさんが首謀者というのが分からないな。彼女は首謀者を探す素ぶりを見せていたのに…あれもフェイクかい?」

 

「それに…睡眠薬を飲んで死んだ絵ノ本さんへの自殺教唆の意味は何だい?寄宿舎を火事にしたとタマさんが嘘を言った意味も分からない。」

 

「私も…聞いたよ。そしたら…あいつは…」

 

 

「どうして…学級裁判で、嘘ついたの?あんたは、私が放火の犯人だって知ってたんでしょ?」

 

「私が首謀者だからだよ?楽しい楽しいコロシアイ。ハルマキちゃんの怪しい行動で終わったら、つまんないもん。」

 

「イキリョウちゃんに呼び出されたエノヨナちゃんを睡眠薬で自殺するよう仕向けたのも、コロシアイを盛り上げるためかな。」

 

「エノヨナちゃん、本当は夜中に呼び出されたこと、誰かに相談したかったのかもね。ちょっと突いたら話してくれたもん。」

 

「それで、私が彼女に言ったんだ。エノヨナちゃんが自殺すれば、誰もクロにならなくて すむね?って。」

 

「どう?これで、私が首謀者だって分かった?」

 

「……。」

 

「ねー、答えてよ。……”超高校級の暗殺者” 春川魔姫さん。」

 

「何…言ってるの?」

 

「私、本当の本当は”超高校級の暗殺者”なんかじゃないよ。ハルマキちゃんの肩書きを借りてただけ。」

 

「何を勘違いしてるか知らないけど…。私は暗殺者なんかじゃないよ。」

 

「じゃあ、そのクロスボウを組み立てるの、どうやったの?組み立て方、知ってたんでしょ?」

 

「……それは…。」

 

「……自分でも不思議って顔だね?でも、残念。そんな演技は通じないよ。私ね、ハルマキちゃんのこと最初から知ってたんだ。何でだと思う?」

 

「……あんたが…首謀者だからって、言いたいの…?」

 

「そう!ハルマキちゃんの動機ビデオを暗殺者から保育士の仕様にしたのも私。こんなこと、首謀者にしかできないよ!」

 

「どうする?私を殺せば、コロシアイが終わるよ?」

 

 

「ちょ、ちょっと待って!回想 何度も止めて、ごめん!でも、ちょっと待って!!」

 

「…春川さんが暗殺者?」

 

「……そうだよ。」

 

(春川さんが、ゆっくり頷いた。)

 

「タマに言われて…どうしてクロスボウを組み立てられたのか考えてた。…そして、思い出したんだ。私は…”超高校級の暗殺者”…。」

 

「…保育士ってのは、嘘だったんだな?」

 

「嘘のつもりは…なかったよ。私は、どうしてか”超高校級の暗殺者”だったことを忘れて…自分を”超高校級の保育士”だと思ってた。」

 

「……。」

 

(春川さんが”超高校級の保育士”だと名乗った時…”内なる声”が大げさなほど驚いていました。”内なる声”は、彼女の本当の才能を知っていた…?)

 

「それで、動揺したキミは…タマさんに毒薬を塗ったクロスボウを放ったんだね?」

 

「違う。私がクロスボウに毒薬を塗ってたわけじゃないよ。それに『自分が首謀者』なんて安い挑発には…もう乗らないって…思った。」

 

「思ってたんだ…けどね…。タマは…あいつの名前を出したんだ。」

 

 

「…しろがね。」

 

「……!」

 

「私は知ってるよ…全部。」

 

「あいつは!白銀は、どこにいるの!?」

 

「……言わないよ。あの人が どこにいるか、なんて。」

 

「……あんた!何で白銀を知ってるの!?」

 

 

「しろ…がね…?」

 

首謀者の名前だよ。」

 

「首謀者の名前?君は首謀者の名前を知ってるのかい?」

 

「どうしてですか?」

 

「……。」

 

(彼女は再び目を伏せて、瞼を落とした。そして、また顔を上げて、ゆっくり口を開いた。)

 

「私は、過去にも…このコロシアイに参加したから。」

 

「は!?」

 

「過去にも、こんなコロシアイが…?」

 

「……春川さん…前回のコロシアイについて…話してくれる?」

 

「……。」

 

「あんた達に会う前にも、私は この才囚学園に閉じ込められてコロシアイに参加させられたんだよ。今と同じ…”超高校級”が集められてた。」

 

「今と同じルールでコロシアイが起こり…私と…首謀者含め5人が最後の裁判まで生き残った。」

 

「参加者の1人…白銀 つむぎが首謀者だと暴いたところで、私たちは…犠牲者を決めたんだよ。」

 

「犠牲者?」

 

(なぜか彼女は、こちらを伺う様子を見せた後、言った。)

 

「今 思うと…次のコロシアイにも参加させられる犠牲者…。それで、私と…もう1人は、また今回のコロシアイに参加させられたんだよ。」

 

「犠牲者になったら…次のコロシアイに参加…させられるの?」

 

「もう1人というのは?君と…もう1人ここにコロシアイ経験者がいるのかい?」

 

「……。」

 

「たぶん…最初にモノクマに殺された奴だよ。雰囲気が少し変わっていて…よく分からなかったけど…。」

 

「……なるほど。だから春川さんは、この学園や首謀者について、よく知っていたんですね。」

 

「私は…ずっと続くこのコロシアイを終わらせたい。こんなコロシアイ…。」

 

(春川さんが俯いた。けれど、彼女の肩にいるボクには、その表情がよく見えた。強い意志を感じさせる表情だった。)

 

「春川さん…。」

 

「驚いたな…。こんなコロシアイが…過去にもあったなんて。」

 

「…おい、タマは自分を首謀者だって言ったんだろ。春川が首謀者を殺したっつーことじゃねーのか。」

 

「タマが首謀者なら、この学級裁判が行われているのは…おかしいよ。あいつが…首謀者の協力者だったんだよ。」

 

「タマさんが…?そんなはず…。」

 

「そんなはずねーなんて…言えねーよ。オレらは、互いについて大して知らねーんだからな。」

 

「………。」

 

「……。」

 

「…春川さん。格納庫での話の続きをお願いします。タマさんが首謀者を知っていた…というところから。」

 

「…そうだね。私は、タマに問いただしたよ。どうして首謀者を知ってるのかって。でも、あいつは聞いただけじゃ答えなかった。だから…」

 

「私は…格納庫の中にいるタマにクロスボウを構えた。そして、脅しだけじゃ口を割らない様子だったから…急所を外して、クロスボウを撃ったんだよ。」

 

「でもーー…」

 

 

「ッ…ひ、ひどいよ!ハルマキちゃん!ほ、本当に撃つなんて!」

 

「これ以上 痛い目をみたくなかったら、早めに吐くことだね。」

 

「痛いよー、痛いよー!……はは、」

 

「あははははは!やっちゃったね!ハルマキちゃん!!」

 

「!?」

 

「暗殺者の研究教室の武器には全部、サンタの研究教室にあった毒を塗っておいたんだ!今、キミは私を殺した!」

 

「な、何を…」

 

「キミが放った矢の毒が原因で…私は死ぬ。これで…キミがクロだね。ハルマキちゃん。」

 

 

「タマさん自身が毒薬を塗っていたということですか?まさか…クロスボウの矢を赤く塗っていたのは…毒の赤いギラギラを目立たせないために?」

 

「そんな…!」

 

「自分が死ぬかもしれないのに…なぜ そんなことを?」

 

「分からない。私は確認するために格納庫に入ろうとしたんだけど…」

 

「だけど…何だよ?」

 

「そこで、格納庫の中のエグイサルが動いたんだよ。エグイサルがシャッターを閉めて…私は格納庫には入れなかった。」

 

「エグイサル…あの、ロボットが…?」

 

「そのせいでシャッターが歪んで…外の操作パネルでは開けられなかった。パネルを壊して入れないかとも思ったけど…やっぱり…無理で。」

 

「私は…その場から立ち去ることしかできなかったんだよ。それから一晩中、首謀者を探し回った。けど…やっぱり、どこにも白銀はいなかった。」

 

「驚いたな。あんな大型ロボットが動いたなんて。」

 

「あれは、中に入らなければ操縦できないとモノクマは言ってましたが…。」

 

「タマは…首謀者と繋がっていた。だから…エグイサルを操れたんだよ。」

 

「……それが、この事件の真実だよ。」

 

(彼女の声が、裁判場の壁に消える。)

 

「……何はともあれ…今回も早期解決となってしまったね。この結果は…残念だよ。」

 

「……。」

 

 

「待って、春川さん。」

 

(諦めたような、落胆したような声が上がる中、エイ鮫さんが強く声を上げた。)

 

「春川さんは、首謀者を倒すためにクロとして卒業したいって言ったよね?」

 

「……そうだね。」

 

「それなら…わたし達が、春川さんに投票しないって、手段もあるよ。」

 

「……。」

 

「は?何を言ってやがる?」

 

「……まさか、ワザと投票を間違えるってことですか?」

 

「このデスゲームを終わらせるために…僕らに犠牲になれと?」

 

「春川さんが続けてコロシアイに参加させられたように、こんなコロシアイが続いてるんだよ?でも、春川さんが生き残れば…」

 

「春川さん…。あなたが、このコロシアイを止めてくれるんでしょ?」

 

「……。」

 

(また、静まり返る裁判場。ボクには、俯いた春川さんが顔を歪めるのが見えた。)

 

(春川さんを選べば…他の皆さんの命は助かります。けれど…おそらく本当に2人になるまでーー…)

 

(そこで、1つの疑問が浮かんだ。)

 

 

「モノクマ。」

 

「んー?何だい?1/12 キーボクン?」

 

「フィギュアみたいに言わないでください!このコロシアイの人数に、ボクは含まれていないんですよね?」

 

「確かに…キーボ君を参加”者”と数えるのは、おかしいね。裁判場に席もないし。」

 

「…引っかかる言い方ですが、仕方ありません。」

 

「…でも、投票画面にはキーボ君のボタンもあるよね。」

 

「えっ?そ、そうだったんですか!?」

 

「そうそう。”その”キーボクンは、厳密に言うと参加者じゃないからね。」

 

「でも、一応 自我的なものがあるような感じに定義できなくもなくなくないから、それをキーボクンの投票ボタンにしてるんだよ。」

 

「どういうことですか!?」

 

「キーボクンを『道具として使う』のはアリにしようかなって思ってね!」

 

「道具として!?」

 

「あーはっはっは!過去の参加者からしたら超羨ましい状況だよ?道具として誰かを殺して、意中の相手を卒業させることができるんだから!」

 

「一体どこの誰が羨ましがるんですか!!」

 

「キーボ…あんた、参加者かどうかなんて聞いて…どうしたいの?」

 

「ボクが参加者に入っていない場合…そして、この裁判で正しいクロを選択した場合の生き残りは…3人です。」

 

「…!3人じゃ…裁判にならない。」

 

「え?……あ、確かに。」

 

「誰かが殺しを働いた時点で、生き残り どちらがクロか明らかだ。裁判をするまでもない。」

 

「つーか、校則には2人になった時点で終了ってあったろ。とにかく殺したモン勝ちになっちまうぞ。」

 

「やだなぁ。その辺は考えてるよ。生き残り3人に拳銃一丁 持たせてバトルロワイアル!」

 

「は!?」

 

「そ…その展開って、まさか、おお…」

 

「…なーんてことは、させないから安心しなよ。」

 

「な、何だ…。そっか…。」

 

「安心はできませんよ。春川さんの過去の話から分析するに…その生き残りは、次回のコロシアイに参加させられる可能性があります。」

 

「次のコロシアイ…?ばんなそかな…。」

 

「春川が本当のこと言ってるかなんて…分かんねーぞ。」

 

「そんなフィクション作家のシナリオみたいな嘘、言えるはずないよ!春川さんは、本当のことを言ってるよ!」

 

「……。」

 

「その場合、今回のアジェンダは『クロを見つける』だけじゃない。『今後の自分達の命運を決める』ものだということだね。」

 

「難易度上がること言うなよな…。」

 

「春川さんをクロとして処刑しても…生き残りは死ぬか、永遠にコロシアイに参加させられる…かもしれない。」

 

「で、でも…春川さん以外に投票すれば…春川さんが、このコロシアイを終わらせてくれる。そうなんだよね?」

 

「……。」

 

(春川さんが静かに頷いた。)

 

 

「じょ、冗談じゃねーぞ!」

 

「オレは死ぬワケにいかねーんだ!オレだって…」

 

「そうだね。春川さんの言うことが全て本当かどうか…それを示す証拠もない。」

 

「……。」

 

(裁判場が再び沈黙に包まれた。)

 

(無理もないでしょう…。正しいクロを指摘しても、待っている結末が、外に出られるというものではないなら…。)

 

「……オレは…、オレは春川に投票するぞ…。」

 

「そ…そんな…。」

 

「…次に待ち受ける運命が何であれ…春川さんの言葉を全て鵜呑みにして投票をオンパーポスに間違えるというのは…僕には選択しかねるよ…。」

 

(一拍 置いて、綾小路クンが続けた。)

 

「こういうのは…どうかな?春川さんの意志は僕らが絶対に継ぐよ。生き残って、僕らがコロシアイを終わらせる。」

 

「………。」

 

「だから……」

 

(彼が言い淀むのを見た春川さんが息を吐いた。ボクには、その肩から力が抜けていくのが、よく分かった。)

 

「……分かった、よ。」

 

「春川さん…?」

 

「その代わり…絶対にコロシアイを…『ダンガンロンパ』を終わらせて。」

 

「……『ダンガンロンパ』?」

 

「それって…?」

 

「うぷぷ、”前回”の裏コンセプト…先天的ヒロインの殺意で始まり、後天的ヒロインの殺意で終わる。」

 

「春川さんは見事に後者の役目を果たしてくれました!……さて、議論が終わったようなので、始めましょうか?」

 

「……。」

 

「だ、ダメだよ、みんな!春川さんに投票したりしたら…!」

 

「キーボ。後は…頼んだよ。」

 

(春川さんが、小さな声でボクに言った。)

 

「……。」

 

(春川さんは…ボク達に託そうとしている。コロシアイを終わらせることを。)

 

(ボク達は、投票しなければならない。この事件のクロは、タマさんを殺した犯人は…春川さん…なんだから…。)

 

 

1. それは違うぞ!

2. それに賛成だ!

 

 

 

(…ノイズが聞こえた気がします。)

 

 

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誰かの声がした。)

 

(ーーいや、声がしたわけじゃない。”内なる声”による言葉を、ボクの文字認識が音声にしただけだ。)

 

(”内なる声”が、僕に訴えている。)

 

(この事件には、隠された別の真実があると…!)

 

「ワックワクでドッキドキのーー…」

 

 

「モノクマ。議論は、まだ終わっていません!さっきの春川さんの話には、まだ おかしい点があります!」

 

「え…。」

 

「もう議論は尽くしたはずだが?」

 

「……春川で…決まりなんじゃねーのかよ…。」

 

「……ううん!まだ、まだだよ!まだまだまだまだァ!だよ!!」

 

「春川さんは、エグイサルがシャッターを閉めたと言いましたね?つまり、シャッターの外からクロスボウを放った。違いますか?」

 

「……そうだよ。」

 

「では、格納庫には入っていない。そうですね?」

 

「そうだよ。」

 

「それなら、おかしいです。春川さんの証言と、現場にあったもの…それに矛盾が生じます!」

 

(格納庫に入っていないという春川さん。その証言と矛盾する証拠はーー…)

 

 

1.【プレス機】

2.【入り口センサーの記録】

3.【現場の黒いケース】

 

 

 

「キーボ…もういいんだよ。私は…もう……」

 

(しまった…!春川さんが”肩の荷を下ろしたい”というような顔をしている…!)

 

 

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「春川さんは、シャッターを通っていない。つまり、シャッター入り口のセンサーにはカウントされていないはずです!」

 

「けれど…確かに、22時頃から23時45分にかけて4回…格納庫への出入りがあるようだが?」

 

22:05

22:32

23:03

23:45

 

「はい。22:05と22:32のカウントがタマさんのものだとしても、センサーの記録が多いんです。」

 

「…それは、私もおかしいと思ったけど…。故障か…クロスボウの矢が感知されたのかと思ってたよ。」

 

「わざわざモノクマが渡してきた証拠です。故障はないでしょう。それに、センサーは”人”の出入りを記録する。そうモノクマは言っていました。」

 

「……春川がカウントされてたってだけだろ。」

 

「ううん。きっと、春川さんの他にも、犯行時間 前後に格納庫への出入りがあったんだよ。」

 

「……。」

 

「私が格納庫に行ったのは、夜時間11時頃だったよ。」

 

「23:03にも記録があるね。誰かが格納庫までの通路に隠れていて、春川さんはそれに気付かなかった…そういうことかな。」

 

「そんなはずないよ。行きに誰にも見られてないことを確認しながら進んだからね。注意して見てたけど、廊下に隠れてる奴なんていなかった。」

 

「後をつけるような真似もできないよ。」

 

「何でンなこと言いきれんだよ?」

 

「私の才能だよ。私は…”超高校級の暗殺者”だった。誰かが後をつけて来たのなら、すぐに分かったはずだよ。」

 

「…でも、時間からして、格納庫の建物内に春川さんやタマさん以外がいたはずだよね。どこにいたんだろう?」

 

(第三者が隠れられる場所…それは…)

 

 

1. シャッターの操作パネル後ろ

2. 廊下のくぼみ

3. 格納庫内

 

 

 

「……つまり、第三者はキーボ君ほど小さな人物ということかい?」

 

「ボクではありません!」

 

 

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格納庫内しかありません。」

 

「……格納庫内だあ?」

 

「春川さん、よく思い出してください。キミが格納庫前にいた時、格納庫の中に他の人の気配はありませんでしたか?」

 

「……。」

 

「……エグイサル。」

 

「え?」

 

「タマは…エグイサルを操る装置を…持っていなかった。」

 

「え?え?何のこと?」

 

「タマがエグイサルを操ることは…できなかったかもしれない…。リモコンとか…何も機械を持っていなかったから。」

 

「エグイサルはリモコン式なのかい?」

 

「少なくとも…”前回”は乗り込むとか…リモコンで操ることしかできなかったよ。」

 

「まさか…誰かが、エグイサルに乗っていた?」

 

「…でも、あのエグイサルの操縦は そんなに簡単なものじゃない。私は”前回”、エグイサルに乗ったけど…前進したり簡単な操作しかできなかったよ。」

 

「けど、昨日エグイサルはシャッターを掴んで降ろしたんだよ。それは…みんなが できることじゃない。」

 

「指の1本1本をキーボード操作するハンドシミュレーション…くらいの難易度なのかな?」

 

(エグイサルを動かした人物…もし、この中にいるとしたら…。)

 

 

▼エグイサルを動かせるのは?

 

 

 

「エグイサルはボクの子供たちのために作った乗り物なんだけどね。操縦は、なかなかに大変だよ?」

 

「機械操作レベルがおじいさんのキーボクンには到底操れないね!」

 

「捜査時間にも言いましたが、それは おじいさん差別です!」

 

 

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「キミしかいません!」

 

羽成田クン。キミなら、エグイサルを操ることができたんじゃないですか?」

 

「………は?」

 

「…え?え!?羽成田君!?」

 

「タマさんや春川さんだけじゃなく…君も格納庫にいたのかい?」

 

「ああ!?ふざけんな!いねーよ!何だクズ鉄…オレが犯人だって言いたいのか?」

 

「ボクはクズ鉄ではありません!ですが、パイロットの羽成田クンなら、あのエグイサルも操れるはずです!」

 

「知らねーよ!ンなことで犯人にする気か!?」

 

「羽成田君、落ち着いて?まだ犯人だって言ってるんじゃないよ。」

 

「チッ。なら、鉄。ちゃんとした根拠を聞かせやがれ。」

 

「何度も言ってますが、素材で呼ばないでください!」

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「何だってオレが格納庫にいたってんだ!?」

 

「オレは格納庫になんざ行ってねぇ!」

 

「ずっと昨日は部屋にいたんだからな!」

 

「だいたい、タマに隠れて格納庫のエグイサルに入れるワケねーだろ!?」

 

「エグイサルは、タマさんが撃たれた直後に動いています。タマさんもエグイサルの中にいる人物について、知っていたのではないでしょうか。」

 

 

「ンなもん、単なる憶測だろーが!」

 

「パイロットだから、オレがエグイサルを操れただあ?」

 

「パイロットだからって、どんな機械でも操作できると思ったら大間違いなんだよ!」

 

「オレがエグイサルの中にいたって根拠がねーだろ!」

 

 

【プレスされていた物】→エグイサルの中にいた根拠がない

【落ちていた錠剤】→エグイサルの中にいた根拠がない

【引き金の血痕】→エグイサルの中にいた根拠がない

 

 

 

「…よし。テメーは1度、プレス機に挟まりてぇようだな。」

 

(生体認証が働くかは気になりますが…羽成田クンは緊急停止ボタンを押してくれなさそうですね。)

 

 

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「その言葉、斬らせてもらいます!」

 

「エグイサルの中には、白い錠剤が落ちていました。数日前、倉庫からなくなったものだと思われます。」

 

「……それが、何だよ。」

 

「あれは、キミの薬ではないですか?」

 

「……オレが病気だったとでも言うのか?」

 

「羽成田クン、キミは最近、体調が悪そうでしたね。特に、呼吸が困難そうに見えました。今は落ち着いているようですが…。」

 

「……。」

 

「そういえば…。羽成田…あんた、ぜん息みたいな呼吸してたよね。」

 

「ぜん息?パイロットに呼吸器疾患があるというのは少し考えにくいが…。」

 

「……。」

 

(羽成田クンの呼吸困難…前からだったとは考えられない。そして、モノクマは倉庫で言っていた。)

 

 

「昨日ここの薬を大量に持っていったのはオマエラかー!?」

 

 

(薬が倉庫から持ち出されたのは…前回の事件の翌日。彼の不調はーー…)

 

 

1. 前回の事件の毒によるもの

2. 心的ストレスによるもの

3. アレルギーによるもの

 

 

 

「それは違…って、ごめん。人の体調について、キーボ君が分かるはずないよね。」

 

(ロボット差別でしょうか…?)

 

 

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「キミは…前回の事件が起こった時、被害者の大場さんと同じ寝室で寝ていましたね。」

 

「……大場が吸った毒だね。あの毒の特徴は、揮発性が高いことだった…。」

 

「え!?ま…まさか…。羽成田君…」

 

「君は…前回の事件から毒に侵されていたのかい?」

 

「……チッ。」

 

「キミは、前回の事件時に少量ながら毒を吸っていた。」

 

「それで…死に至らずとも、呼吸器に異常を来していた。…パイロットとしては致命的だね。」

 

「でも、今は元気そうで良かったよ。治ったんだね。」

 

「……。」

 

「何が良かった…だよ。これから処刑される人間に。」

 

「……。」

 

「…処刑…君がクロ…。そう認めるのかい?」

 

「ハッ…。そうだよ。」

 

「…オレの体調が戻ったのは、タマが持ってた解毒剤を飲んだからだ。」

 

「解毒剤…?」

 

「タマさんは、解毒剤を持ってたということですか?」

 

「ああ。あいつは、前回の捜査時間に毒薬入りのプレゼントボックスの1つから見つけたって言ってた。」

 

(…あの時ですね。)

 

 

「オオダイちゃんの部屋から見つかった毒薬は、このクリスマスツリー下のプレゼントの中身だったよね。」

 

「赤い箱の中身が全て毒薬でしたね。」

 

「よーし、全部の箱 開けてみよー!」

 

 

「……じゃあ…今は、その薬を飲んで、元気になれたんだね。」

 

「君は…その解毒剤を奪うために、タマさんを殺害したのかい?」

 

「……オレは春川とタマが話している時、ずっとエグイサルの中にいた。…それが答えだ。」

 

「…詳しく話して。」

 

「やだね。」

 

「え…。」

 

「言ったろ。情報は金だ。けどな、今から死ぬオレは、テメーらに情報を落とす義理なんてねーんだ。」

 

「キ…キミは、まだ そんなことを言ってるんですか!」

 

「……当たり前だ。死んだ後のことなんて知るかよ。」

 

「……。」

 

(羽成田クンは、フンと鼻を鳴らして黙り込んだ。ボクは何と言っていいか分からず、春川さんを見つめた。)

 

(春川さんは、羽成田君を見ながら何かを考え込んでいる様子だった。)

 

 

 

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