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第6章 左様ならば、ダンガンロンパ 学級裁判編Ⅲ

 

学級裁判 再開

 

(裁判場に現れた2人は、それぞれ裁判席の前に立った。和戸がいた席と、絵ノ本がいた席。”前回”と同じ、2人の席に。)

 

「最原…夢野…。生きてたんだね。」

 

「春川さん、頑張ったね。1人で大変なことをさせて…ごめん。」

 

「久しぶりじゃのう。…あまり眠れていないみたいじゃな。」

 

「感動の再会…の時間はないよ。君たちに聞きたいことが山ほどある。」

 

「そうだ!テメーら、キーボに話してたんだろ?どうして、首謀者の居場所を伝えなかったんだよ!」

 

「発言が制限されてたからね。僕らの存在や所在を話せなかったんだ。」

 

「自分が”内なる声”を担当している時にキーボが見たものしか、知ることはできなかったしな。」

 

「キーボ君は、視聴者のカメラじゃなくて、君たちのカメラだったということか…。」

 

「そうじゃ、ハルマキよ。キーボが言ったことはウチの魔法的な助言を勝手に科学やらマジックやらに繋げただけで、ウチは魔法しか使えんからな?」

 

「……どうやら…本物…みたいだね。」

 

(夢野の言葉に、肩の力が抜けた。)

 

 

「それで、何で あんた達は首謀者と一緒になって、キーボに声を掛けてたの?”前回”…何があったの?」

 

「そうか…ハルマキは、その記憶がないんじゃな。」

 

「僕たちが投票放棄を選んだ後、キーボくんが”希望”に投票した。ここまでは…覚えてる?」

 

「…うん。」

 

「その映像はオレ達も見た。テメーらは、投票放棄で処刑されたんじゃなかったのか?」

 

「投票が終わった後、白銀さんが延長戦を申し出たんだ。」

 

「延長戦?」

 

(私は、思わず白銀を見た。白銀は不敵に笑って、高らかに言い放った。)

 

「そう!今回は新作『ダンガンロンパ』じゃない、視聴者なしのリアルガチ対決!V3の最後の視聴者を参加者にした、完全な勝者を決めるコロシアイ!」

 

「希望と絶望の陣営の他に、投票放棄という陣営が追加された、今までにない展開だもの。このまま終わりにしたら、もったいない!」

 

「それで、V3の才囚学園のコンピューターから、また新たに この才囚学園を作ったんだよ!」

 

「オマエラは、V3の世界から、この世界に入ってきたってワケ!」

 

「新たな才囚学園の参加者は、希望を選ぶのか?絶望を選ぶのか?それとも…記憶を残した春川さん達 投票放棄陣営の勝利か?」

 

「この裁判で雌雄を決する!そこで投票放棄陣営の勝利なら、わたし達の負けって約束でね!」

 

「だから、投票放棄による おしおきは一旦、中止。最原君と夢野さんには、春川さんのサポート役のサポートをお願いしたんだよ!」

 

「…新しいコロシアイに…私達が乗ったっていうの?」

 

「……どちらにしても、モノクマ達は春川さんとキーボくんを次の『ダンガンロンパ』の参加者にしようとしていたんだ。」

 

「その時は…これまで通り、記憶はリセットされる。けれど、ここなら投票放棄の陣営…春川さんは“前回”の記憶を保持したまま参加できる…。」

 

「もし投票放棄陣営が勝利したら、それを『ダンガンロンパ』の視聴者の総意とする。そういう条件だったんだ。」

 

「それで…僕ら、元・視聴者が参加させられたのか。」

 

「視聴者の声は絶対だからね!国民に総意を問う!ってやつだよ。」

 

「無能な政治家がよくやる手だね。大口株主でもないのに重大決定を担えるなんて、オマエラは とても幸せだね!」

 

「それで…ハルマキは『次で終わらせる』と…。」

 

「春川が…。」

 

「………。」

 

 

「すまん…。ウチは…賛成してしまった…。」

 

「おしおきが怖かったんだよね?命を使うとか言いながら。」

 

「………。」

 

「夢野さんは、そういうキャラだからね。大丈夫!あなたみたいな人がいなかったら、リアルフィクションにならないもん。大事なキャラだよ!」

 

「……すまん。ハルマキ。お主ばかりに大変な役目を押し付けてしまった。」

 

「……そもそも、私がやるって決めたんでしょ。あんたが謝ることないよ。それに…その分、あんたは”内なる声”を頑張ったんでしょ。」

 

「ハ…ハルマキぃ〜!」

 

「寛容だな。さすがオレが惚れた女だ。」

 

「惚れ…こやつは何を言っとるんじゃ?」

 

「無視していいよ。それで…あんた達は、ずっと地下道の先にいたの?」

 

「うん、今回はエレクトハンマーもなかったし、地下道へ行こうとするとモノクマの邪魔が入ったからね。」

 

「さっき白銀さんがトラップを解除して出て行ったのを追って来たんだ。」

 

「すぐには裁判場に入れんかったがのう…。」

 

 

「……あんた達は、キーボの緊急停止ができたの?」

 

「んあ?どういうことじゃ?」

 

「手乗りキーボ君は今回、ちょこちょこ緊急停止してるんだよ。」

 

「夢野…あんたが、3回目の事件前に、キーボを緊急停止させたの?」

 

「んあ!?ウチは、そんなことしとらんぞ!?ウチも眠い目を擦って、キーボのカメラを凝視しとったわ!」

 

「じゃが…確かに、3回目の事件前、キーボのカメラは突然 真っ暗になって、ウチは何もできんかった。」

 

「3回目だけではないぞ。2回目の事件の夜も、キーボのカメラが停止した時があった。」

 

「…2回目も?」

 

「2回目は、夜中に市ヶ谷が雄狩を殺した事件だな。」

 

「首と右手はピラニア水槽、プールに左手が切り離されて置かれていたね。あの時…火災報知機の音が鳴ったかどうか議論になった。」

 

「けれど…キーボ君の記憶はあやふやだったね。」

 

(確かに…あいまいな返事をしてた。)

 

 

「キーボはそんな音 聞いてないんだよね?昨日の夜から今朝までは、充電中だったわけでもないから、もし音がしたならーー…」

 

「……。」

 

「キーボ?」

 

「あ、はい。犯人が夜時間のプールでブザー音が鳴ると知っていて、睡眠薬を盛ったとしても…春川さん達3人が起きる可能性が高いですね。」

 

「そうじゃなくて、テメーは聞いてないんだろって話してんだよ!

 

「え?あ、そうですね。聞いていない、はずです。」

 

 

「夢野さん…だったね。君は関与してなかったんだよね?」

 

「しとらんぞ!」

 

「僕らがキーボくんに干渉できるのは、声だけだよ。それは…白銀さんも同じはずだ。夢野さんが”内なる声”を担当する間、僕は彼女を見張ってたから。」

 

「キーボの緊急停止は…あんた達も白銀も関係なかったってこと?けど、さっき白銀は言ったんだよ。殺しが起こるように、キーボは動かされていたって。」

 

 

「……。」

 

「白銀さん。キミは今、”超高校級の模倣犯コスプレイヤー“じゃない。地下生活で、そう言ってたよね。」

 

「さっきもンなこと言ってたぞ。」

 

「最原君、ここでは、春川さんが主人公なんだよ?」

 

「…春川さん、どうかな。白銀さんは、ずっと僕たちと地下にいた。そして、白銀さんは”超高校級の模倣犯コスプレイヤー“じゃない。これは…どういうことだと思う?」

 

(白銀は”超高校級の模倣犯コスプレイヤー“じゃない…”前回”と違う。そして…さっきモノクマは、明らかにおかしなことを言っていた。)

 

「今回 首謀者がいたのは絶望のデスロードの先ではありませーん。」

 

 

1. 白銀は2人いる

2. 最原・夢野が白銀の共犯者

3. 首謀者は別にいる

 

 

 

「春川さん、今のキミなら…真実に辿り着けるはずだよ。」

 

「頑張れ!頑張るのじゃ!ハルマキ!」

 

 

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「今回…首謀者は別にいた…?」

 

「な…何じゃとぉ!?」

 

「そう。恐らく…首謀者は他にいる。……考えたくないことだったけど。」

 

「そりゃそうじゃ!ただでさえ、白銀もおるというのに…まだ他にも首謀者がいるなぞ…!」

 

「おいモノクマ!テメー、また嘘つきやがったな!テメーは首謀者が白銀だって…!」

 

「ボクは『首謀者が白銀さん』だなんて、一言も言ってないよ。”春川さんが話した首謀者”について言ったことはあるけども。」

 

「言葉の綾も、ここまでくれば屁理屈だね。首謀者が他にいるなら…この、白銀 つむぎは何なんだい?」

 

「うーん、何だろう?首謀者のサポート?春川さんのサポート役のサポートがいたから、対抗して。」

 

「わたしとしては、プロデューサー気分だったんだけどなぁ。」

 

「しかし…学園内のどこにも首謀者が隠れていられる場所はなかったはずだよ。一体、首謀者は どこに…」

 

 

「ちなみに、首謀者の方は、今朝の裁判直後に裁判場にお越しいただいております!」

 

「……!」

 

「…マジかよ。オレらと入れ違いになってたのか…。」

 

(どういうこと?首謀者は学園内に隠れていた…でも、人が隠れられる場所はないはずだ。)

 

(保育士の研究教室の隠し部屋には、タマが出入りしていた。5階には、人は立ち入れない。地下道の先には、最原たちがいた。)

 

「……春川さん。首謀者が、誰にも見つからずに隠れられる場所は…5階だけだ。」

 

「はあ!?5階には痕跡なかったんだろ?」

 

「20日間、飲まず食わずで…というのは考えにくいよ。いくらフィクション…であっても…ね。」

 

「………。」

 

「そうだよ。人がいた痕跡はなかった。でも…それが必要なければ……。」

 

「な、何を言ってるんじゃ?」

 

「モノクマは言ってたね。『5階に“人は”立ち入れない』って…。」

 

「……人は?…まさか、この投票画面…彼も参加者…だったのか?」

 

 

▼首謀者の正体は?

 

 

 

「おい…さすがに意味 分かんねーぞ。…オメーとの結婚生活に自信がなくなってきた。」

 

「成田離婚になりたくなければ、考え直してくれないかな?」

 

(そもそも結婚するつもりもない…。)

 

 

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「あいつしか…いないよ。」

 

キーボ…。」

 

「キーボだと!?」

 

「キーボじゃとぉ!?」

 

(夢野と羽成田が同時に叫んだ瞬間、また裁判場が暗くなる。明かりがついて現れたのは…私たちが よく知る、等身大のロボットの姿だった。)

 

「………。」

 

「ピンポンピンポーン!テーブルテニス!今回の首謀者は、1/1 キーボクンなのでした〜!」

 

「……。」

 

「なになに?初めまして。または、お久しぶりです。ボクは、“超高校級の絶望ロボット” キーボです。…だってさ!」

 

「キーボ…。」

 

「キーボ!ど、どうしたんじゃ!しっかりせい!」

 

「…。」

 

「無駄だよ。ボクは希望を捨てたロボット。絶望こそ至宝。希望なんてものは男子高校生の部屋のゴミ箱のちり紙だよ…だってさ。」

 

「嘘 言うな!今の短い時間で、そんなに話せるわけないじゃろ!」

 

「このキーボ…デケェな。手乗りの方に慣れてるからか…。」

 

「考えたくなかったよ。キーボくん、キミが…首謀者をさせられているなんて。」

 

「……。」

 

「このキーボ君、機能停止してないかい?」

 

「時間がなかったからね。絶望のキーボ君は生まれて間もないし、キャラクターが定まってないんだ。とりあえず、今は寡黙モードなんだよ。」

 

「でも、待って。こいつがキーボなら、はじめに死んだ あいつは誰だったの?」

 

「……。」

 

「あれは、私様の片割れ的なサムワンよ…だってさ。」

 

「片割れ?」

 

「そう!これは希望と絶望、そして投票放棄のデュエル!そのために、”希望”のキーボ君っぽい人と”絶望”ロボット・キーボ君に分かれたんだよ。」

 

「キーボ君っぽい人…とは何じゃ?」

 

「手乗りのキーボが作られる前…キーボに似た人間がいたんだよ。モノクマに…殺されたけど。」

 

「キーボ君っぽい人は、キーボ君の双子か何かだと思ってくれればいいよ。」

 

「ほら、神様と大魔王が分離する感じ!どんな作品でも わたしの【推しの子】は双子だからね。」

 

「どうせ春川さん達も、彼については覚えてないんだから。深く考えても答えなんて出ませんよ。」

 

「その彼を殺したっていうのはルール違反じゃないのか。真剣勝負なんて言っておきながら…モノクマが殺人に関与するのは明らかな不正だ。」

 

「うぷぷぷぷ。残念!“世界を用意した側”なら、見せしめ要員として消費してもいいルールなのです!おかげで、ボクも痛い目を見たことがあったよ。」

 

「あのキーボに似た男も、あんた達の一味だったってこと?」

 

「…。」

 

「本人に その自覚があったかは知らないんだお。でも、このコロシアイのためにボクとセットで作られたんだお。2人で1体って感じだお…だって!」

 

「嘘つけぃ!キーボは そんな語尾ではなかったじゃろ!」

 

「そして、また そんな短い時間に話したとは思えないね。」

 

「……時間がなかった…。」

 

「え?」

 

「白銀さんとモノクマは、このコロシアイを始めるまでに時間がなかったと言ってたね。」

 

「それが何だよ?」

 

「確かに、ウチらが投票放棄を選んで間も無く始まったんじゃ。時間がなかったのは、その通りじゃろ?」

 

「そう。時間がなかったんだよ。けれど、このコロシアイでは…あるもの”が新たに作られている。…そう僕らは思い込んでいた。」

 

「あるもの?」

 

「春川さん、何だと思う?このコロシアイと53回目で、最も異なるものって。」

 

(53回目と…違うもの。それは…)

 

 

1. 舞台

2. 動機

3. 登場キャラクター

 

 

 

「それは…間違い探しレベルでしか変更されてなかったよね?」

 

「ぐっ!耳と心の臓が痛い!」

 

「……。」

 

 

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キャラクター…だよ。」

 

「……キャラクター?」

 

「そう。時間がなかったのに、あんた達…キャラクターは新たに作られた。」

 

「うぷぷぷぷ。新たに…ねぇ。」

 

「…僕らは前回の視聴者というベースがあったから、そう時間は掛からなかったんじゃないかな?」

 

「さっきも言ったけど、あんた達と”前回”の視聴者の人格は全く別物だよ。」

 

「『ダンガンロンパ』が人の成長を見せたかったのなら…キャラクターは時間をかけて作ったはずだよ。」

 

「まあ…本当は、これ、新作『ダンガンロンパ』じゃないし、視聴者いないんだけどね。」

 

「……。」

 

「僕らは ここに来る前、こんな紙を地下で拾ったんだ。」

 

「あ?名簿か?そりゃ、オレ達も見つけたぜ。誰と誰が関係があったか…そういう設定があったかの名簿だろ。」

 

(最原が、私たちに見せた紙。それは、捜査時間に羽成田が見つけた名簿。けれど、その名簿とは異なる部分があった。)

 

 

(今回の参加者の隣に数字が書かれていて…キーボと白銀の名前が消えかけている。)

 

「お主ら、この数字に何か心当たりはないのか?」

 

「僕の名前の横の38?ないよ、全く。」

 

「オレもだ。49なんて、不吉な数字に覚えはねぇ。」

 

「この数字は…今回の参加者の数字だけ見ていたら解けないよ。」

 

「………。」

 

(まさか…名前の横の数字は…)

 

 

1. 希望が峰学園の何期生か

2. 何番目の『ダンガンロンパ』か

3. 実は何歳なのか

 

 

 

「うぷぷぷぷ。どこかで聞いたような話題だね。」

 

「そうだっけ?まあ、夢野さんが53期生とか53歳とかだと、ロリっ娘ファンからクレームきそうだよね。」

 

「ウチは とうに1億を超えているんじゃが?」

 

 

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「まさか…何番目の『ダンガンロンパ』か…?」

 

「これは、今回の参加者が…どの『ダンガンロンパ』に登場したか…それを表す数字…?」

 

「……は?」

 

「そう。天海君の横にある“52”。これは、52回目のコロシアイにも参加したということだよ。」

 

「ん?では、なぜ こやつらの横にも書いてあるのじゃ?」

 

「…僕たちも、過去にコロシアイに参加している…と言いたいのかい?」

 

「いや、オレは過去に こんなコロシアイ、参加してねーぞ!」

 

「もちろん、僕もそうだよ。」

 

「前回 “超高校級の生存者”だった天海君も、52回目の記憶はなかったよ。」

 

「まさか…そんなこと…が。」

 

「あ、ありえねーだろ…。」

 

「……。」

 

「いいえ、あり得るのです!…だってさ!」

 

「そう!過去の参加者は、春川さんだけじゃないんだよ。羽成田君も綾小路君も、『ダンガンロンパ』経験者だったんだよ!」

 

「そんなの…知らねーぞ。」

 

「うん。知らないだろうね。もちろん、あなた達だけじゃない。」

 

「エイ鮫さんも、タマさんも、麻里亜君も、大場さんも、壱岐さんも、朝殻さんも、絵ノ本さんも、市ヶ谷さんも、雄狩さんも、和戸君も。」

 

「哀染クンも、ね。別にライターが今 考えた『1章被害者は過去のコロシアイに名前がある者』なんて後付け設定ではなかったのでした〜。」

 

「どういうことだ!?オレらは、前回のコロシアイの視聴者だったんだろ?」

 

「過去に『ダンガンロンパ』に参加していた僕たちは生き残り、また『ダンガンロンパ』を視聴していた…ということかい…?」

 

「前回の視聴者の中に過去の参加者がいたとして…13人も集まるとは思えないよ。」

 

「そうじゃな…。ただでさえ、前回のラスト…視聴者は かなり少なかったはずじゃ。」

 

「そもそも、生存者だからって外に簡単に出られると思わないでよね。オマエラは、『ダンガンロンパ』のフィクションキャラクターなんだから。」

 

「……クソ。どういうことだよ。」

 

「……。」

 

「ん?では、またまた問題だぜぇ!テメーらは一体、何者なのかってなぁ!…だってさ。」

 

「ヒントは、死んだ人たちの遺言…かな?」

 

(羽成田や綾小路…今回の参加者は…。)

 

 

1. 新しく作られたキャラクター

2. “前回”の視聴者ベースのキャラクター

3. 復元された過去のキャラクター

 

 

 

「そうか。春川…もういい。疲れたならオレが肩 貸すから、ちょっと休め。」

 

「いいや、思考放棄は愚策だよ。疲れた時こそ、甘い物でも食べて脳をフル回転させるんだ。」

 

(…甘やかされてるね。)

 

 

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「今回の参加者も…『ダンガンロンパ』の過去のコロシアイに参加したキャラクター。それが…復元されて、ここにいる?」

 

「その通り!春川さんとキーボ君以外の54回目参加者は、復元されたキャラクター!ただの復元データに過ぎないんだ!」

 

「…っ、嘘だ!また さっきと言ってること違うじゃねーか!」

 

「僕らは『ダンガンロンパV3』の視聴者。そう言っていたよね?」

 

「………。」

 

「あなた達は、『ダンガンロンパ』のキャラクター。でも、中の人は…前回のコロシアイ視聴者。そういうことだよ。」

 

「どういうことだよ!?」

 

「……”内なる声”が聞こえていたのは…手乗りのキーボ君だけじゃなかったんだね。」

 

「んあ?」

 

「キミ達 参加者も、何か声が聞こえてたんじゃない?」

 

「あ?聞こえてねーよ。ンなもん。」

 

「機械のキーボ君と違って、みんなはデータとはいえ人間だもの。心に響く声は、『自分の心の声だ』と感じるんじゃないかな?」

 

「……。」

 

「キミ達は自分の心の声に操られていた過去の復元キャラクター。操り人形だったんだ…だってさ。」

 

「…僕ら…は、操られていた?」

 

「な、何だよ。ふざけんなよ!」

 

「あなた達は自分で行動してるつもりで、シナリオに忠実に動くマリオネットだったんだよ。」

 

「さっき言ったオーディションで、クロの殺人方法が決まってから、過去のキャラクターの中で使える才能のキャラクターが選ばれて復元された。」

 

「その後、クロ以外もシナリオに合わせて復元されたんだ。そして、前回の視聴者が、みんなの”内なる声”を担当してコロシアイをさせてたんだよ!」

 

「誰も操ってないNPCも1人いたけどね。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「絶望しちゃったぁ?もっと絶望的なことを言えば、アンタらは、このコロシアイが終わる時、この世界に取り残される存在なんだ〜★…だって。」

 

「ふ…ざけんなよ…。」

 

「結局…何をしても、僕たちは脱出できないんじゃないか。」

 

「うぷぷぷ。それなら…もう投票しちゃう?」

 

「……そうだね。ここにいる全員が投票を放棄するなら、今度こそ『ダンガンロンパ』は終わるよ!そして…この才囚学園は崩壊する。」

 

「ここでしか生きられない、復元されたデータである羽成田クンと綾小路クンもろとも、跡形もなく消滅します!」

 

「……。」

 

「……。」

 

(羽成田と綾小路は俯き黙り込んでいる。)

 

「もちろん…最原君、春川さん、夢野さん。あなたたちだって、ここで死ぬことになるよ。」

 

「……そんなの、私たちには…もう脅しにならないよ。」

 

「そ、そうじゃ!1度、覚悟は決めたんじゃからな!」

 

「……そう。異論がないなら、投票を始めよっか!モノクマーー…」

 

 

「…まだだ。」

 

(白銀がモノクマに声を放ったところで、落ち着いた声が裁判場内に響いた。)

 

「まだ…投票を焦る必要はないよ。まだ、解き明かされていないことがある。」

 

「解き明かされていないこと…?」

 

「な…何じゃ、それは?」

 

「それは…白銀さん、キミの正体についてだ!」

 

「…はぁ?わたしの正体?」

 

「そうだ。僕は、思い違いをしていたんだ。」

 

「犠牲者になった春川さんが”超高校級の生存者”…キーボくんは視聴者代表…キミは首謀者として次のコロシアイに参加する。」

 

「…そう僕は思っていた。」

 

「……。」

 

「でも…違ったんだね。キーボくんが、今回 首謀者だったことで確信したよ。」

 

「最原…どういうこと?」

 

(最原の言うことが掴めず、私は最原を凝視した。最原は「うん」と小さく言ってから続けた。)

 

「ずっと引っかかってたんだ。天海くんが“生存者特典”で残したメッセージの”2人”という言葉。なぜ、2人という言葉を出したのか。」

 

「校則にあったから…ではないのか?」

 

「…ううん。きっと彼は、未来の自分に向けて伝えておきたかったんだよ。」

 

「……。」

 

「えー!?何を何をー!?エッチな話ー!?…だって。」

 

「……彼と共に52回目から53回目のコロシアイに参加した人物がいたことを。そうじゃないのか?白銀さん。」

 

「…何を言ってるの?」

 

「ど、どういうことじゃ?何を言ってるんじゃ!?」

 

52回目の”2人”…?」

 

(53回目…首謀者の白銀と生存者の天海。それは…この54回目のキーボと私と同じだ。)

 

「まさか…」

 

「白銀さん、キミはーー…」

 

「わたしはチームダンガンロンパの一員だよ!」

 

(最原の言葉を遮り、白銀が高らかに言い放った。)

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「わたしは、『ダンガンロンパ』を作った1スタッフだよ!」

 

「『ダンガンロンパ』のために、ちょっと  きわどい撮影も甘んじて受ける社畜系会社員!」

 

「視聴者の目が汚れちゃうだけだったろうけど…お上の命令は絶対だからね。」

 

「53回目に出られるって知った時は嬉しかったなぁ!2度とできない経験だもん!」

 

「あんたは、”前回”の53回目にしか参加してないっていうの?」

 

 

「当たり前だよ!スタッフが参加するなんて、異例中の異例だからね!」

 

「製作陣側が出演者…テンサイ監督のアウトロー映画みたいじゃない?」

 

「最原君。主人公お得意の妄想でどんなことを考えてるかは知らないけど…」

 

「わたしは『ダンガンロンパ』を作ったスタッフ以外の何者でもないんだよ。」

 

 

【オーディション通知】→『ダンガンロンパ』を作ったスタッフ

【ダンガンロンパV3エンドロール】→『ダンガンロンパ』を作ったスタッフ

【和戸の手記】→『ダンガンロンパ』を作ったスタッフ

 

 

 

「社員証を『つきつける』!弁護士バッジのごとく!」

 

「そんな得意げに見せられても…」

 

 

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「それは違うぞ!」

 

(今までの小型キーボに変わるように、最原が声を上げて、こちらを見た。私は最原と視線を合わせて、言葉を続ける。)

 

「あんたがチームダンガンロンパの一員なら、何で『ダンガンロンパV3』のエンドロールに あんたの名前がないの?」

 

「あんたの名前があるのは、キャスト欄だけ。あんたの扱いは、私たちと大して変わらない。」

 

「あー、それ?どこかで、エンドロールが動機の殺人事件があったなぁ。」

 

「んあ!?ぜ、全然 平気そうじゃな!?」

 

「当たり前だよ。わたしは名前を売りたいわけじゃないんだから。エンドロールに名前がなくても、他のスタッフを恨んだりしないよ。」

 

 

「それなら…どうして?」

 

「……何かな?」

 

「前回、53回目では…キミの思惑通り、キーボくんは希望に投票したんだ。どうして、延長戦なんて申し出たの?」

 

「……それを解き明かすのが、探偵なんじゃないかな?」

 

「何が真実で何が嘘なのか。あいまいでミスティが本作の売りなんだ。被害者と加害者の線引きが難しいようにね。」

 

「いや…何となく、想像はついてるよ。今回と53回目のコロシアイ、キミの目的は同じだったんだ。」

 

「コロシアイをさせること…じゃろ?」

 

「この話の前に…みんな、最初の動機を思い出して欲しいんだ。53回目も今回も最初の動機は、初回特典…そして、タイムリミットだったね。」

 

「それが どうかしたのかな?」

 

「…どうして、タイムリミットを設定したの?」

 

「そうだよ…殺しが起こるタイミングが設定できるとしたら…あんな動機は必要ないはずだよ。」

 

「…タイミングを設定できたのは、今回だけで、53回目は違ったのかもよ?」

 

「し、しかし、タイムリミットがなくても…殺しを働く者は、現れたはずじゃ。」

 

「そう。例えば…53回目なら真宮寺くん。彼が殺しを働くには、時間制限は邪魔でしかない。けど…白銀さん。キミは、あえて そう設定したんだ。」

 

「何のために?」

 

赤松さんを動かすためだよ。最初の裁判のクロ役として。」

 

「……。」

 

「1章のクロがまさかの冤罪!なかなか気まぐれドラマティック!…だってさ。」

 

 

「……白銀さん。このコロシアイには、才能が使われる。そうだよね?」

 

「そうだよ。コロシアイには、殺人や偽装の過程で才能が使われているんだ。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「ほらほら、羽成田クン、綾小路クン、いつまでも黙ってないで!ただでさえ本家キャラに喰われて印象 薄いんだから!今回を振り返って!」

 

「……新始は人を動かして事件を起こした。あいつは…1人じゃ何もできねーとか言ってたな…。エイ鮫も…カメラやプレス機 使って現場を偽装した。」

 

「市ヶ谷さんも、壱岐さんも、麻里亜君も…才能によって事件を起こしたり、偽装を図っている…ね…。」

 

「東条は…メイドとしてウチの手伝いの間に準備をしておったな。真宮寺は…民俗学的に価値ある日本刀や『かごのこ』を使って…。」

 

「獄原は、昆虫学者としてロープの使い方に長けてるって言ってたね。……百田は、宇宙飛行士だから、エグイサルを…あそこまで操れた。」

 

「うん。それに百田くんは人をよく見てた…だから、台本1つで王馬くんを演じられたんだよ。宇宙飛行士はコミュニケーションが大事って言ってたし。」

 

「……百田が言ったこと全てが、王馬の本心とは思えんがのう。」

 

「うんうん。百田君は、岩柱並みの人間観察能力があったんだよ。……で?最原君は何が言いたいのかな?」

 

「……赤松さんは?」

 

「赤松さんの殺人ギミックに、赤松さんの才能は関係ない!キミは最初から、自分で天海くんを殺すつもりだったんだ!赤松さんの殺人を偽装コスプレして!」

 

「……わたしが?何でそんなことを?」

 

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「キミは最初から、僕らに首謀者を暴かせるために、初めの事件を設定したんだ。」

 

「首謀者の部屋で天海くん殺しの証拠を見つけさせて、隠し通路から犯行が可能な人物を絞らせる。」

 

「そして…僕らに、それを暴かせたんだ!」

 

「ま、待て!では…キーボが学園を破壊するのも、隠し通路や思い出しライトのロッカーが見つかるのも…こやつの想定内じゃったということか!?」

 

「やだな。首謀者の部屋で証拠を見つけたのは、みんなの力だよ!前に最原くんが言った通り、首謀者の部屋に入られるなんて思わなかったからね。」

 

「大事な証拠だもん。すぐには片付けられなかったんだよ。」

 

 

【事件後の痕跡】→初めの事件を設定した

【オーディション通知】→すぐには片付けられなかった

【事件後の痕跡】→すぐには片付けられなかった

 

 

 

「春川さんが黒髪赤目のツンデレ猫目美人だから、変なこと言われても許すよ!わたしは白銀だからね!」

 

「…何 言ってんのか理解できない。」

 

 

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「それは違うぞ!」

 

「今回もそうだったけど…”前回”も、事件後は死体が どこかに消えたんだよ。血痕や他の証拠と共に…。」

 

「その気になれば、すぐ消せたのに…あえて首謀者の部屋に残してたってことじゃないの?」

 

「……。」

 

「そうだ。キミは、最初の事件を暴かせたかった。最後の裁判で『トイレに行った』と わざわざ証言したのも、そういうことだろ。」

 

「………。」

 

「もう1度 聞くよ。キミはーー…」

 

 

「正解だよ!さすが、真実の先に辿り着く 元・主人公だね!!」

 

「……え?」

 

「な、何なんじゃ?ほ、本当に そうなのか?」

 

「あんたは…どうしてーー…」

 

「だって、『ダンガンロンパ』はゲームなんだよ?完全犯罪やられたら、ゲームにならないんだよ!」

 

「主人公が真実を暴いて、悪を追い詰める証拠品と論破ポイントを提供する。そのために、わたしは行動してたんだよ!」

 

「それに、首謀者の部屋の証拠は本当に消せなかったのかも?王馬クンが集めた証拠品も、そうなのかも?そういうシステムだったのかも?しれないね?」

 

「な、何で、お主が あやふやなんじゃ!」

 

「ここだけの話しちゃうと…制作側も、希望を勝たせたかったからね。絶望に打ち克つ希望!これが、みんなが望む『ダンガンロンパ』だから!」

 

「……。」

 

「絶望絶望絶望絶望絶望…だってさ。」

 

「白銀さん。何で…そんなに……いや、」

 

(最原は1度 唇を噛んで、また白銀を見据えた。)

 

 

「今朝の…5回目の事件で、モノクマが『春川さんは後天的なヒロインだ』って言ったよね。」

 

「僕は、その意味を ずっと考えてたんだ。53回目のコロシアイで、白銀さんは僕を主人公だと言ってたから。」

 

「え?なになに?ボクのヒロインは赤松さんだけだ!って?」

 

「やだなぁ、最原君。主人公とヒロインが結ばれないパターンもあるんだよ?ほら、悟空とブルマとか。白銀会長と藤原さんとか。」

 

「あ、わたしが白銀とか藤原とか言うと色々ややこしくなるかな?」

 

「んあー!ややこしくなるから余計なことを言うな!」

 

“主人公は みんな”だったんだよ。…百田くんが言った通りにね。だから、僕らは最後の学級裁判で、全員が”主人公”になった。」

 

「…そうだね。便宜上の主人公は最原君。でも…アメリカの高校ミュージカルみたいに『みんなスター!』でもいい!そんなシナリオだったんだよ!」

 

「それで、6章…6回目の捜査で、みんなに主人公してもらったんだ!」

 

「探偵の捜査!ロボットの戦闘!暗殺者の情報収集!マジシャンの脱出魔法!そして、コスプレイヤーの偽証コスプレ!ってね!」

 

「裁判でも、そうだよ。みんな、主人公になったでしょ?」

 

「……キミは?」

 

「キミは、いつ学級裁判で主人公になったの?」

 

「……。」

 

「あのね、わたしは首謀者なんだから、学級裁判で主人公できるわけないんだよ。」

 

「はいはい!この話は、もう いいかな?白銀さんの正体については、彼女もボクらも分かりませーん!」

 

「赤松さんのヒロインオーラに当てられて融解するスノーマンみたいなオタクが、万が一にでも過去ヒロインとかだったら、ある意味 絶望的でいいけどね!」

 

「白銀さんのアレも”模倣”だったなら大爆笑モノだよね!本当、大馬鹿やってくれたものだよ。」

 

「…そうだ。キミとモノクマは同じ『ダンガンロンパ』側でありながら、繋がっていなかった。モノクマとモノクマーズが一枚岩でなかったように…。」

 

「あれ?最原君は『モノクマを操るのは江ノ島さんしかいない!』派?」

 

「……先天的なヒロインの殺意で始まり、後天的なヒロインの殺意で終わらせる…それは前回だけじゃなくて、シリーズを通してだったんじゃないのか?」

 

「最原君は妄想力たくましいね。主人公だからかな?」

 

「主人公は妄想力が たくましくて、覗きの経験があって、パンツを集める。こう聞くと、ほとんど変態だね。」

 

「キミは、僕らにコロシアイを終わらせるように動いてたんじゃないのか!」

 

「コロシアイを…終わらせる…?」

 

「白銀が…?」

 

「天海くんの事件の証拠。なぜか隠し部屋の外に作った思い出しライトを作る教室。…それに、キーボくんのアップデートパーツ。」

 

「そうじゃないと、説明が付かないことも多いんだよ。」

 

「だから、どれもゲーム的に仕方ないんだってば。ある程度 分かりやすくしないといけないの。」

 

「キーボ君がロボットの才能を認めて破壊活動を始めなければ、希望エンドにもならないし。」

 

「いや、キミはコロシアイを終わらせようとしていたんだ!キーボくんの目を通して!でも、それが失敗したから…だから、延長戦を申し出たんだろ!」

 

「キミだけじゃない。もしかしたら、これまでの”黒幕”も…コロシアイを終わらせるために動いていたのかもしれない…。」

 

「……もしかしたら、江ノ島 盾子すらもーー…」

 

「…あのさ。」

 

(最原の言葉を遮って、白銀が冷たい声を放った。)

 

「ヴィランに夢見るのは勝手だけど、わたし達まで巻き込むのは止めてくれるかな?」

 

「……。」

 

「わたし達は、誇りを持って、あなた達にコロシアイをさせてるんだよ!コロシアイは楽しいの!最高で最凶のエンターテイメント!」

 

(白銀が高らかに笑う。その目は、狂気を孕んでいた。)

 

「『ダンガンロンパ』は、みんなに愛されている!スタッフにも!視聴者にも!出演者にも!!」

 

愛も夢も希望もない終結なんて認めない!絶対絶対、終わらないんだから!」

 

 

「……。」

 

「さて、それでは、今度こそ投票に移るわよ!…だって。」

 

「みんなは、希望か絶望を選ぶ?……それとも、投票を放棄する?」

 

「希望を選ぶなら、また犠牲者に全てを託してね。2人の犠牲者は、次のコロシアイに…残りは、この世界から出られるかも?」

 

「データである羽成田クンと綾小路クンは出られたと思った瞬間、消えてなくなるかもしれないけどね!」

 

「……。」

 

「そして…絶望を選ぶなら、人数が増えて賑やかになった この才囚学園でコロシアイを続けてもらいます!」

 

「……。」

 

「じゃ、じゃが、白銀は希望を、キーボは絶望を選ぶんじゃろ!それでは…」

 

「安心して。わたしとキーボ君には、今回 投票権がないから。」

 

「……。」

 

「……どうして?あんたは、希望を勝たせたいんじゃないの?」

 

「わたしとキーボ君の票があると、フェアじゃないからね。」

 

「……白銀さん、キミは……」

 

「ノイズのない視聴者の総意で決めて欲しいんだよ!次の『ダンガンロンパ』も、みんなに望まれて、新しい舞台とキャラクターで展開したいからね!」

 

「……。」

 

「どうすんだぁ!?絶望のコロシアイを続けんなら、生きていられるぜェ!もう殺しなんて起きなくて、平和に一生ここで過ごせるかもしれねぇ!」

 

「けれど…希望を選ぶなら……犠牲者の2人には、また『ダンガンロンパ』に参加してもらいます…新しいコロシアイの舞台で…絶望的に…だってさ!」

 

「……ンなモン…どう転んでも…」

 

「絶望じゃないか……。」

 

「……。」

 

「ボクは絶望させるためにやってるからね…だって。」

 

(私たちの答えは…決まっている。でも…。)

 

 

「……春川さん。」

 

「最原…。」

 

「僕らは…彼らと一緒にいたわけじゃない。前に僕がキミにしたような”お願い”は…僕からはできない。」

 

「ウチは…今度こそ覚悟を決めたぞ。じゃから…ハルマキ。すまん、頼む。」

 

(最原と夢野が、2人の男たちに目を向ける。私は、最原と夢野に頷いてみせた。)

 

(そして、羽成田と綾小路の顔を見た。血の気が引いて、真っ青になった…2人の顔を。)

 

「そんな目で…見んなよ。……オレだって…オレだって、こんなクソみてーなコロシアイを終わらせてぇよ!」

 

「けど、頭の中で声がすんだよ!『希望だ』って!!オレの声でだ!」

 

「…僕もだよ。今までも きっと…こうやって、”前回”の視聴者に僕らは誘導されていた。この投票で…僕らが投票放棄を選ぶことはできない…よ。」

 

「……。」

 

「まあ、希望派が多いのは当然だよね。希望エンドの方が、視聴者もスッキリするから。だからこそ、制作側も希望エンド目指して頑張るんだ。」

 

「最初の彼が見せしめ要員だったの、希望派が多いから調整するって理由もあったんだよね。」

 

(視聴者の声か、自分自身の声か……こいつらは、分からなくなってる。それなら……)

 

 

1. 視聴者に訴える

2. 成長したキャラクターに訴える

 

 

 

「……。」

 

「……。」

 

(……視聴者なんかに…私たちの気持ちは分からない。)

 

 

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(もう1度、私は羽成田の顔を見た。)

 

「……あんたは言ったね。私が好きだ…って。その あんたの変化は、視聴者の声のせいなの?」

 

(私が言うと、羽成田は勢いよく顔を上げた。)

 

「違ぇ!オレがテメーを愛してるのはオレ自身の心だ!」

 

「……そんな こっぱずかしいこと、よく真顔で言えるのぉ。」

 

「それなら……」

 

「私が好きだって言うなら…ここで……一緒に死んでよ。」

 

「……。」

 

(私の言葉に、羽成田は一瞬 停止した後、ボソリと呟いた。)

 

「すげぇ殺し文句だな。」

 

(そして、口の端を持ち上げて、ニヤリと笑った。)

 

「……愛する女にンなこと言われちゃ…カッコつけるしかねぇな。」

 

「いいぜ。春川、テメーに殺されてやるよ。」

 

「……そう。」

 

 

(羽成田から視線を逸らし、私は綾小路を見た。)

 

「あんたは…世界の色んな物語に触れてきたんでしょ。」

 

「……文学だけじゃないさ。人の歴史、戦争の歴史…芸術も道具も機械も…僕が”史実だと思っていたもの”…全て吸収するつもりで学んできたよ。」

 

「それなら…あんたには、分かるよね。世界が…どれほど人の死をエンターテイメントにしてきたか。」

 

「……。」

 

「その中で、当事者は…いつも苦しみ、もがいてる。……それがフィクションであっても、苦しい気持ちも辛い気持ちも…本物だったでしょ?でも…」

 

「人の死をエンターテイメントにする歴史を終わらせる。あんたには…それが できるんだよ。」

 

(綾小路は、私の言葉を静かに聞いていた。そして、口元に手を当てて考える仕草を取った。)

 

「…………フム。」

 

「これは、フィクション世界からエンタメ界への反逆。その歴史の第一歩…いや、第二歩目ということだね。」

 

(考え込むように俯いていた綾小路が顔を上げた。それを見て、最原と夢野が安堵の表情を浮かべた。)

 

「……。」

 

「そろそろ いいかな?投票を始めても?」

 

「……ああ。」

 

「…決めたよ。」

 

「…始めて。」

 

 

(モノクマが投票タイムを告げる。私は、もう1度みんなの方を見た。)

 

(羽成田は、笑っている。顔面蒼白で弱々しい笑顔だけど。)

 

(綾小路も、今にも倒れそうな顔色だ。私と目が合うと無言で頷いた。)

 

(夢野は、”前回”と同じく、小刻みに震えているように見えた。けれど、その瞳には”前回”と同じように、強い光が宿っている。)

 

(最原は、目を閉じていた。目を閉じて、この空白の時間が終わるのを、ただ待っていた。)

 

(私も彼に倣い、目を閉じた。そして…)

 

(投票時間の終わりを告げたモノクマが、投票結果を発表した。)

 

 

 

学級裁判 閉廷

 

(投票は……されなかった。)

 

(絶望にも、希望にも…1票も入らなかった。)

 

(私たちは……全員が投票放棄を選んだ。)

 

 

「こ、これで…どうなるんじゃ?」

 

(夢野が戸惑いがちに口を開いた後だった。)

 

(……『ダンガンロンパ』が終わる音が聞こえ始めた。)

 

 

 

第6章 左様ならば、ダンガンロンパ 完

エピローグへ続く

 

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「第6章 左様ならば、ダンガンロンパ 学級裁判編Ⅲ【創作ダンガンロンパV4if/創作論破】danganronpa」への2件のフィードバック

  1. 隠れモノクマV4ver.

    う、う、うわああぁぁぁ…前回から追えてなくて2話一気に読んだのですが2分に1回は鳥肌が立つ衝撃展開でした…!面白すぎます!!
    “春川さんの言う首謀者”の言い方に全く疑問を抱いていなかったので、まさかの首謀者の正体が特に驚きました…!
    今までの論破シリーズに則って前回の参加者が出てくる胸熱展開もファンにはたまらないですね!
    あとハルマキちゃんと一緒に死んでよ発言良すぎます…全然関係ない私まで投票を放棄しようという気持ちになりました(?)

    つむつむのことでまだ気になることも残っているのでエピローグ楽しみに待っています♪

    ところで作者様!今回のお話で7〜51作目の登場人物の1部が判明?したのであと12作は創作論破を作れそうですね!
    V4完結したらまたロスに陥りそうなので、もし気が向いたらぜひ……(;ω;)

    1. トラウマウサギ

      わああ〜!!たくさんご感想ありがとうございます!モノクマの言い方、首謀者、6章組勢揃い、ハルマキの投票放棄の説得は特に熱い気持ちを込めて書いたので本当に嬉しいです!
      12作…!やりたい…笑 実はV3キャラが好きすぎたけれど本家キャラを簡単に死なせたくないがために始めた創作論破で、V2とV4やってしまったらもう終わりかな…と思いつつ既に創作論破ロスに陥っておりまして……昨日からV2世界に放り込まれた首謀者つむつむ妄想をしておりました…。もし構想が形になればぜひ書きたいと思ってますので……。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございました!

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