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第□章 ※either killed жe♪(非)日常編Ⅰ

 

「……テメーが男だったら、一発 殴って目ぇ覚ましてやったのによ。」

 

(ううん。きっと、殴る価値もないって…そう思ったと思うよ。)

 

「白銀さん、みんなと仲直りしてよ。話し合えば、きっと分かり合えるはずだよ!」

 

(違うよ。仲直りっていうのは、”仲間”とするものなんだから。)

 

「僕は…結構この知識も記憶も気に入っているんだヨ。」

 

(…ダメだよ。とても苦しくて、辛くて、残酷な…ひどい記憶のはずだよ。)

 

「貴女と私の行動原理は同じだったのね。」

 

(同じじゃないよ。あなたの…人を想う気持ちとは。)

 

「私は諦めないよ!キミとだって、私は友だちになってみせるから!!」

 

「……あ、」

 

「絶対、諦めない!そのために、まず一言 言わせて。」

 

「……。」

 

「おっぱい!」

 

「……は?」

 

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(朝のチャイムで意識が浮上する。胸の中で「おっぱい邪魔」という変な声が聞こえた。)

 

「……?」

 

「むぐ…お姉ちゃん!いい加減 離して!!」

 

(ドンと胸を押されて、危うくベッドから落ちそうになる。)

 

「え?あ、あれ?」

 

「もお!何 寝ぼけてるの!?」

 

(肩で息をする妹尾さんが、同じベッドの上で こちらを睨む。)

 

「妹尾さん…?」

 

「もおぉ!何で、つむぎお姉ちゃんと一緒に寝てなきゃいけないの!何で、お姉ちゃんのおっぱいで窒息しなきゃいけないの!」

 

「えっと…それは、昨日 妹尾さんがベッドに潜り込んできて…」

 

「それが あり得ない!何で、あたしが そんなマネ…って、いつまでボンヤリしてるの!?起きて!!」

 

(妹尾さんの怒声に、ようやく覚醒していく。)

 

「……うなされてたみたいだけど、悪夢でも見たの?」

 

「……ううん。”クラスメイト”の夢…。」

 

(ーー都合の良い…自分勝手な夢。)

 

「……へー。クラスメイトにイジメられてたりしたの?」

 

「……ううん。”クラスメイト”みんな…優しくて…いいクラス、だったよ。」

 

「へ、へー。ジミジミなお姉ちゃんなんて、標的だと思ってたよ!」

 

(フンと息を吐いて妹尾さんがベッドから降りた。どうやら、惚れ薬の効果が切れたらしい。前より当たりが強くなっている気もするけど。)

 

「ほら!早く朝食に行こうよ!今日は、あたし達も”大富豪の家”で朝食なんだから!」

 

(妹尾さんはドアの前に立ち、そっぽを向いた。わたしの身支度を待ってくれているらしい。)

 

(わたしは慌てて起き上がり、身支度を整えた。)

 

(夢で見た顔を、聞いた言葉を、頭から追い出すように。)

 

 

 

【西エリア 大富豪の家 応接間】

 

「シロガネ、セノオ、おはようございマス!」

 

「おはようございます。」

 

(妹尾さんと”大富豪の家”の応接室に入ると、既に全員が集まっていた。手前の席に座っていた2人が手招きしてくれた。)

 

「ローズの隣、空いてイマス!」

 

「えー。お兄ちゃんの隣がよかったのに。」

 

「あ、正気に戻ったんですね。」

 

「正気って何?今まで変だったみたいじゃない。」

 

「変だったんだよ…。」

 

「へ、変じゃないもん!何で、そんな意地悪ばっかり言うの!?」

 

「ま、まあまあ。妹尾先パイ!落ち着いてください!」

 

「そうだよ。全力で つむぎを愛でる妹子も素敵だったよ。」

 

「うるせーぞ、テメーら。とっとと食うぞ。」

 

「……そうねぇ。」

 

「Fチームの朝食、本当に豪華。」

 

「……。」

 

「天海お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「…これまで、裁判が終わると新しいステージに連れてかれたっすよね。」

 

「あ、そっか。じゃあ、今回もーー…」

 

「お察しの通り!」

 

「うわ…モノクマ。」

 

「オマエラには次のステージに行ってもらいます。朝食後、町の入り口に集まってください。」

 

「おい、いい加減にしろ。何で毎回毎回、場所を移動すんだ。」

 

「毎回毎回、言わせないでよ!聞き分けが悪いヤツは嫌いなんだよ。清廉潔白で品行方正で純真無垢なヤツの次に。」

 

(モノクマは「では」と短く言って、いなくなった。)

 

「……食べたら向かいましょう。」

 

「待て。」

 

「…各自…持ってくモンを見せ合うぞ。」

 

「え?」

 

「一応だ。」

 

 

(朝食を終えて、荷物を揃えた わたし達は、また応接間に集合した。各自 荷物をテーブルに広げる。)

 

「オレは持ち物はねぇ。携帯しろって言われたモノパッドくらいだ。」

 

「あたしは最初のステージにあった詩集と筆記用具とモノパッド、この家で見つけた便箋。あと…つむぎお姉ちゃんのペンダント。」

 

「ワタシも持ち物、モノパッドだけ。キノミキノママ!」

 

「俺もモノパッドくらいっすね。」

 

「ボクも…もう大道芸の道具は持って行かない…。」

 

「私は…もらった手紙も持っていくわ。」

 

「自分もモノパッドと哀染先輩からの手紙の返事を持って行きます!!」

 

「わたしはモノパッドと万年筆、報告書で使った便箋と封筒です。」

 

「…ボクが1番 荷物が多いね。」

 

(そう言う哀染君の前には、見覚えのあるヘッドホンと取っ手だけのシンプルなシュラスコ串、モノパッド。そして見覚えのない小型の機械がある。)

 

「テメー。何だ、こりゃ。」

 

「ヘッドホンは圭クンの処刑の後に、この串は ここみの処刑の後に、裁判場に落ちてきたものだよ。」

 

「……。」

 

「音楽プレイヤーは…2つ目のステージの牛から出てきたものっすね。」

 

「…うん。みんなのこと、ステージのことを胸に刻みたくて。…持っていってもいいかな。」

 

(哀染君がチラリと郷田君を見た。)

 

「勝手にしろよ。別に没収するために見せろっつったワケじゃねー。」

 

「ありがとう。……つむぎはハーブティー持って行かないんだね。」

 

(わたしの前に置かれたペン、ネイル用品、ハンカチ、便箋、モノパッドを見た哀染君が言った。)

 

「あ…うん。さすがに、もうハーブティーは…いいよね。」

 

「……そうだね。」

 

 

 

【東エリア 町の入り口】

 

(持ち物を確認した後、全員で町の入り口まで やって来た。そこには既にモノクマが待っていた。)

 

「みなさん、お集まりのようで!それでは、次のステージに ご案内しましょう!」

 

(モノクマは全員が揃ったことを確認して、楽しそうに言い放った。ここに来てすぐ跡形もなくなった町の入り口が開いている。)

 

(入り口には石の扉があり、ゆっくりと開いていく。そして、モノクマは そのまま全員をドアの先へ押し込んだ。)

 

(その先に、地面はなかった。)

 

「え!?」

 

「……!」

 

「きゃああああ!つむぎお姉ちゃん!!」

 

「落ちる…!」

 

 

……

 

(結構な高さから落ちて、死を覚悟した。事故で転落死なんて最悪だ、と。)

 

(ーーけど、生きている。全員が落ちた先には黄色い花が敷き詰められていて、それがクッションになったらしい。)

 

(現実なら、あり得ない。でも『地下物語』なら…フィクションなら十分あり得る。)

 

「みなさん、ケガはないっすか?」

 

(誰よりも早く起き上がった天海君が、みんなに声を掛ける。あちこちで、みんなが答えるのを聞きながら、わたしも起き上がった。)

 

「ドアの先の崖から落ちて…この花がクッションになって助かったんだね。」

 

「クソが!全員ケガはねぇんだな!?」

 

「そうだね。不思議なことに。」

 

「あんなに高くから落ちたのに!!」

 

「摩訶不思議。」

 

「黒ヒゲ危機一髪デス!」

 

「……この崖を登ることはできないっすね。この通路…奥に進んでみましょう。」

 

(狭くて薄暗い道を進むと、石でできた大きな扉があった。)

 

 

 

【いせきのいりぐち】

 

(慎重にその扉を開けると、目の前にモノクマが立っていた。そして、”花のような笑顔”で言葉を発した。)

 

「ハロー!ボクはモノクマ!クマのモノクマさ!」

 

「知ってイマス。」

 

「ニューステージへようこそ!ここは、とある人気ゲーム49作目の舞台をオマージュした場所だよ!」

 

(49作目…やっぱり、全然覚えてない。)

 

「…この先は遺跡なんすね?」

 

「そうでーす!気を付けてね。遺跡といえば、デンジャラスゾーン!」

 

「これがインディな冒険譚なら冒険家はスーパーマンだけど、ミステリのトレジャーハンターなんて殺されるか殺す役だからね。」

 

「俺はトレジャーハンターじゃないっす。」

 

「ハイハイ。じゃ、死なないように頑張って。」

 

(モノクマが去った後、先頭を行くと言う天海君の後を みんなで追った。)

 

 

(先に進むと、看板があった。アルファベットらしき文字が並んでいる。どこかで見た字面だ。)

 

「山門さん、これ、読んでもらってもいいかな?」

 

「……。」

 

「山門さん?」

 

「あっ、はい。……これは…ドイツ語ですね。『殺せば自由になれる』と書いてあります。」

 

「クソ…。」

 

(…ずいぶん危険なことが書いてある。クレームで済まないかもしれない。翻訳版で修正が入ることを祈ろう。)

 

「山門さん、こっちは何て書いてあるっすか?」

 

(天海君が次の部屋への進路の壁に書かれたアルファベットじゃない謎の文字を指差した。)

 

「『ボタンを押して進め』です。ヒンズー語ですね。」

 

「そうっすか。このボタンでしょうね。」

 

(言って、天海君は壁にある2つのボタンのうち、左のボタンを押した。すると、次の部屋の入り口からカチリと音がした。)

 

「緑頭、テメッ…!危ねーかもしれねーだろ!もっと慎重になりやがれ!」

 

「…すみません。でも、これで通れるみたいっすよ。」

 

 

(彼を先頭に更に進む。次の部屋で待ち構えていたのはモノクマと、特徴的な形のマネキンだった。)

 

「やあ!オマエラは…この地底の世界に落ちて来たばかりだね。じゃあ、さぞかし戸惑ってるだろうね。」

 

「何なにナニ何。」

 

「どうしようもなく救いがたいほど絶望的に無知なオマエラに、この世界のルールを教えてあげよう!」

 

(モノクマは いつもの笑いを浮かべながら、全員にナイフを手渡してきた。)

 

「このおもちゃのナイフで、そのマネキンを倒してみなよ!」

 

「え?これを倒せばいいんですか?では…」

 

(みんながナイフを片手に立ち呆ける中で、前谷君だけが動いた。彼は右手に握るナイフをマネキンに向けーー…)

 

「え!?き、切れた!?おもちゃのナイフなのに?」

 

(ナイフは深くマネキンに突き刺さった。そして、鮮血が溢れて地面を汚した。)

 

「ちょ…!何やってんの!前谷お兄ちゃん!!」

 

「で、でも、マネキンを倒せと…」

 

「…これ、本当にマネキンなの?」

 

「うぷぷ。とってもリアルでしょ?ボクからのプレゼントだよ。」

 

(モノクマは心底 楽しそうに説明を始めた。)

 

「この世界のルールとは、『殺すか殺されるか』だよ。出会ったモンスターは必ず討伐してください。”にげる”も”みのがす”も認めないよ!」

 

「……。」

 

「モンスター?」

 

「モンスターが出マス?」

 

「そうですよ。このステージには、野菜やらカエルやらのモンスターがいます。モンスターが戦いたがってなくても、必ず倒さなきゃダメだからね。」

 

モンスターを倒さなかったら、全員 おしおきです!せいぜい頑張ってね!」

 

「おい!待ちやがれ!カエルがいるってことは…ヘビもいんのか?」

 

「はて?どうだったかな?」

 

「ざけんなっ!!カエルが生息するようなとこには、だいたいヘビもいんだよ!!毒ヘビいたら どーすんだ!」

 

「ゴウダ、落ち着け。ヘビくらいワタシ倒しマス。噛まれても、毒 吸い出してやりマス。」

 

「うぷぷ、天海クンは特にヘビ注意だね!天の海に旅立つことにならないように!テンカイだけに!」

 

「ペイズリー!霊能力バトルロイヤルの見どころは…隠れ山ちゃん!」

 

(モノクマはネタバレにならない微妙なネタバレを吐きながら消えた。)

 

「ど、どうしますか!?ヘビと闘えって…。」

 

「ヘビ…じゃなくて、モンスター。」

 

「闘えと言われマシタら闘いマス。ヤッタロウヤナイカイ。」

 

「心強いね。」

 

「あ、安心してください!みなさんは自分が守ります!!」

 

「そんなガクガクブルブルで言われてもなぁ。」

 

 

(全員で次の部屋に進む。すると、大きめのカエルみたいなモンスターが、わたしの目の前に飛び出してきた。)

 

「……これが、モノクマが言ってたモンスターだね。」

 

「おい、テメー、何 落ち着いてやがる!?下がれ!!」

 

(慌てたように わたしの前に立った郷田君がカエルを蹴り飛ばした。可哀想なカエルは1mほど吹っ飛び、ひっくり返る。)

 

「おい!デカブツ!止め刺せ!」

 

「えっ…!?じ、自分ですか!?」

 

「ワタシがしマス!!」

 

(前谷君の近くで倒れるカエルにナイフを突き立てたのは、ローズさんだった。カエルは小さく断末魔の声を上げて息絶えた。)

 

「……。」

 

「何て顔してマスか、シロガネ。殺さなければ、殺されマス。タタカエ、タタカエ。デス。」

 

「分かってるよ。大丈夫。」

 

「…無理もないよ。つむぎ。」

 

(わたし…どんな顔してたんだろう。緊張した顔?驚いた顔?)

 

(ーーショックを受けた顔?)

 

「もー!メソメソ辛気臭い顔してないで進むよ!」

 

(妹尾さんに手を掴まれて引っ張られた。)

 

「あ、妹尾さん。俺が先頭を行くんで…。」

 

「はーい。頑張ってね、天海お兄ちゃん。」

 

(そして、無抵抗の怯えたモンスターを倒しながら進んだ。ところどころに知らない言語で書かれた注意書き付きトラップを かいくぐりながら。)

 

(モンスターの返り血でドロドロになった頃、モノパッドの地図で宿舎と示す一軒の家に辿り着いた。)

 

 

 

【ホーム】

 

「よく ここまで生きて辿り着いたね!ここはホーム。今日からオマエラの家だよ。ご褒美のカタツムリパイはいかが?」

 

「…そんなの誰も食べないよ。」

 

(一軒家の前の枯れ木 近くに待ち構えていたモノクマが、わたし達を見て笑った。)

 

「…ここが俺らの宿舎すか。」

 

「そうそう。ホームはトラップもモンスターもない安らぎの家だよ!ついておいで。」

 

(モノクマに促されて家に入る。見覚えのある民家に、あちこちカメラやモニターが取り付けられている。)

 

「玄関入って右の廊下にオマエラの部屋が並んでるよ。キッチンは、あちら。食欲がある人は、ご飯を食べるといいよ!」

 

(お腹は減ってるけど…食べる気にならない。)

 

(それより、今は血を洗い流したい。右手に付いた血を、一刻も早く。)

 

(みんなに続いて、わたしは廊下の先の部屋に向かった。)

 

(白い壁の長い廊下。その1番 奥に大きめの花瓶か飾られている。廊下を挟んで男女別に部屋が並んでいる。)

 

(みんなが自身の部屋を確認する中、郷田君が全員に呼びかけた。)

 

「2時間後に全員でメシだ。食いに来なかったら叩き起こしに行くからな。」

 

(彼がフンと鼻を鳴らして一室に入って行くと、みんなも部屋に入って行った。)

 

 

 

【ホーム 白銀の個室】

 

(少し埃っぽい整頓された個室。ベッドと机に、クローゼット。机には鉛筆が入ったペン立てのみ。壁には前のステージで見たような時計が掛けられている。)

 

(前の宿屋の宿舎と違って、今回は鍵も掛かる。チェーンロックもあるようだった。おそらく、全室そうなんだろう。)

 

(クローゼットには、今 着ているのと同じセーラー服。それを取り上げて、シャワールームに向かった。)

 

(乾いた血を早く洗い流したかった。)

 

(最初は戸惑っていたけど、結局ナイフを使ってモンスターを殺した。無抵抗の体を裂く感覚。死を前にした悲鳴。飛んできた血の温かさ。)

 

(ーー初めてじゃない。)

 

(わたしは、知っている。)

 

 

「最高に、つまらなかったよ。」

 

(揺れる影が言った。冷たい声で。でも、その後「次回作はマシなもんにしてよね。平和すぎて誰も観ないし死なないやつ。嘘だけど。」と明るい声。)

 

「テメー!ふざけんなよ!超国宝級のオレ様が…責任 取りやがれ!」

 

(また、影が言った。その後「許して欲しけりゃ土下座しやがれ」と小さな声。)

 

「白銀さん!女子といえど容赦しません!一度 成敗いたします!」

 

(『一度』じゃ済まない。その言葉を、わたしの口は告げられなかった。)

 

「つむぎには天罰が下るね〜。これからは、がんばってポイント貯めないといけないね〜。」

 

(これからって…何?)

 

「フッ…あんたも俺と同じ馬鹿野郎だったってことか。まあ…信念があったなら、あんたは戻れるんじゃねーのか?」

 

(戻れるわけがない。戻っていいはずがない。)

 

(わたしは…また都合の良い夢を見ている。わたしを叱咤する”みんな”。未来を示す言葉。)

 

(ユラユラ揺れていた影は、やがて1つにまとまり、天海君の形になった。彼は こちらを光のない目で見ている。)

 

「……キミ…だったんすね。」

 

(彼が1歩こちらに進む。彼の頭から血が噴き出した。また1歩 進む。顔全体に血が流れ落ちた。また1歩。ボタリと地面に血が落ちた。)

 

「白銀さん。キミは……」

 

 

「……!」

 

(夢の中の彼が手を伸ばしてきたのと、『ピンポーン』と音が鳴ったのは同時だった。)

 

「テメー!メシには来いって言っただろうが!!」

 

(扉を開けた瞬間、怒声に耳を殴られた。寝惚けた脳が少しずつ働き始める。)

 

「郷田くん、白銀さんも疲れているでしょうから…声を落としてください。」

 

「…ごめん。シャワーの後、眠っちゃったみたい。すぐ行くから。」

 

「いや、だめだ。今から、オレ達と来い。」

 

「……分かった。」

 

 

…………

……

 

(それから、郷田君たちに連れられてホーム内のリビングで夕食を食べた。みんな疲れ切っていたせいか、静かな夕食会だった。)

 

(ポツリポツリと会話もあったけれど、わたしは どうしても、天海君の方を見ることができなかった。)

 

(1人になって、ベッドに身を沈ませる。体は疲れ切っているのに、頭がグルグルしているせいか眠気はやって来ない。)

 

(記憶が混乱している。2つ目のステージで植え付けられた記憶のせいだ。チームダンガンロンパの”わたし”の記憶。白銀 つむぎの記憶。)

 

(『V3』の記憶と、クラスメイトの記憶。)

 

(もう、どっちでもいいから…消して欲しい…。)

 

 

…………

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

『ポッポーポッポー』

 

(朝のチャイムで目を覚ました。いつの間にか意識を失っていたらしい。)

 

(朝のチャイムに次いで鳴き声を放つハト時計の音を聞きながら、ゆっくり起き上がり支度をした。)

 

 

 

【ホーム リビング】

 

(昨晩と同じリビングに行くと、みんな集まっていた。)

 

「つむぎお姉ちゃん、おそーい!」

 

「う、うん。ごめんね。」

 

「とりあえず食うぞ。」

 

(郷田君の合図で、みんな朝食を食べ始める。顔色が悪い人が数名いるけど、おそらく わたしも人のことは言えない顔をしている。)

 

(温かい食事を囲む中で、天海君が切り出した。わたしは彼の顔を見ないように彼の胸のシルバーペンダントを眺めた。)

 

「今日の探索っすけどーー…白銀さん、どうかしたんすか?」

 

「え?いや、何でもないよ。今日の探索についてだよね。」

 

「1人で外に出るのは危険ですね!」

 

「トラップいっぱい。モンスターいっぱい。」

 

「このホームも調べる必要があるよね。二手に分かれるのは どうかな?」

 

「職業分担デスね!」

 

「…はい。俺は外を探索するっす。」

 

「外のトラップの注意書きは各国語で書いてありましたね。わたしも行きます。」

 

「ヤマト先生が行くなら、ワタシも行きマス!」

 

「いや、スーツ女はダメだ。」

 

「…スーツ女って山門さんのこと?」

 

「テメー、最近 体調よくねーだろ。」

 

「えっ…。」

 

「そうだったの、山門お姉ちゃん?」

 

「そんなことーー…」

 

「オレには分かんだ。スーツ女は家にいろ。つーか、女どもは家にいろ。男で外を探索する。」

 

「そうですね!女性は危険な外に出るべきではありません!!」

 

「しかし、トラップが…」

 

「大丈夫っすよ。トラップは覚えてますんで。」

 

「じゃあ、オトコは外。」

 

「ワタシ、外の方がショウに合いマス。連れて行きまショウ。」

 

「ダメだ。」

 

「どうしてデスか!ここは女性が働きニクイ国29位中27位カ!?」

 

「郷田君。えーと…気分転換に外出たい人もいるんじゃないかな?」

 

(わたしが言うと、彼は渋い顔をして口を閉じた。そして、険しい顔のまま苦々しげに頷いた。)

 

「……仕方ねーな。」

 

「言っときマスけど、アナタよりワタシの方が強いデスからね。置いて行きマス、コウカイスンゾ。」

 

(フンと鼻を鳴らすローズさんと不満げな郷田君の応酬を聞きながら朝食会は進み、朝食後。)

 

「それじゃあ、ホーム内の探索は頼んだっす。」

 

(軽食を携えた男性陣とローズさんがリビングを後にした。ホームに残った女性陣も探索を開始した。)

 

 

(とりあえず、モノパッドで地図を開く。地図にはホーム内の表示しかされない。今まではステージ内 全部が映っていたけれど、今回は違うらしい。)

 

(ホームの地図は、玄関ホールとリビング、キッチンと各個室のみのシンプルなものだった。)

 

(玄関ホールから続く廊下に全員の部屋が並んでいる。廊下の左右に8部屋ずつ個室が配置された16室。これまで死んだ人の部屋は空き部屋で入れない。)

 

 

(各個室から玄関ホールを通ってリビングがあり、リビングはキッチンと繋がっているようだ。)

 

(今までのステージも、探索の中で首謀者の部屋や隠し通路などを見つけることはできなかった。)

 

(このステージは…どうなんだろう。)

 

 

 リビングを調べよう

 キッチンを調べよう

 玄関を調べよう

全部見たね

 

 

 

【ホーム リビング】

 

「……。」

 

(朝食が片付けられたリビングには夕神音さんが残っていた。彼女は部屋の隅の暖炉の火をボンヤリと眺めている。)

 

「夕神音さん。」

 

「……。」

 

「夕神音さん?」

 

「…あらぁ。白銀さん。」

 

「どうしたの?ずっと ぼーっとしてたけど…。」

 

「……いつものことよ。」

 

(夕神音さんはボンヤリと火を眺めながら懐から見覚えのある封筒を出した。そこから、これまた見覚えのある二つ折りの便箋を取り出す。)

 

「……この手紙、どうしようかしら。」

 

「それ前のステージの”大富豪の家”にあったものだよね。わたしも何枚か持ってきたよ。」

 

「…これは松井君が書いた手紙よ。」

 

(そう言って彼女は2つに折られていた便箋を開いた。)

 

「……前の裁判で、わたし達も読んじゃったよね。確か…楽譜になってるところは暗号なんだったっけ?」

 

「ええ。私の歌を愛している。だから共犯関係を結んで、一緒に ここを出よう…そう書いてあるわ。」

 

「……。」

 

(共犯関係のくだりがなければ情熱的なラブレターだ。)

 

「やっぱり…私は歌ったりしない方がいいんだと思ってねぇ。」

 

「そ、そんなことないよ。夕神音さんは”超高校級の歌姫”なんだからーー…」

 

「いいえ。最初の事件も、前回の事件も、私の歌がなければ起こらなかったのよ。」

 

(歌わなくても…起きたと思う。)

 

「手紙…燃やそうと思ったけれど、やめておくわ。読み返す度に強固な決意を思い返すから。」

 

(…強固な決意を抱いちゃったんだ。)

 

 

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【ホーム キッチン】

 

「つむぎお姉ちゃん。何?あたしに用?」

 

(キッチンには妹尾さんがいた。わたしが「探索に来た」と言うと、なぜか食事中のハムスター型に頬を膨らませた。)

 

「ここは何もないよ。冷蔵庫にも全然 食材ないし!」

 

「そっか。」

 

「食材ないのに、いつの間にか食事が用意されてるのは不思議だよねぇ。キラキラ魔法みたい。」

 

(ーー夢野さんの魔法…では もちろんなくて、ゲームだから。)

 

「チョコレートはあったよ。……お姉ちゃん、ケーキ好き?」

 

「え?」

 

「ケーキ好きかって聞いてるの!つむぎお姉ちゃん、昨日から ずーっとボヤボヤしてる!」

 

「ごめん。」

 

「別に!ずーっと前からボヤボヤパヤパヤしてたからいいけど!それで?」

 

「え?あ、ケーキ?好きだよ。」

 

「…ふーん。」

 

「もしかして…作ってくれるの?」

 

(信じられない気持ちで妹尾さんを見ると、彼女は人相が変わるほど顔をしかめた。そして顔を真っ赤にして怒り出した。)

 

「「はあ!?つむぎお姉ちゃんのためじゃないんだから!お兄ちゃん達のついで!!お兄ちゃん達って女の子の菓子1つでホイホイコロリだからね!」

 

「キッチンの黒い紳士みたいに言わなくても…。でも、うん。女子のお菓子攻撃は効果はバツグンだ!だよね。天海君も甘いの好きだったと思うよ。」

 

「……。」

 

「妹尾さん?」

 

「お姉ちゃんのバカ!どうせ、あたしなんて男に尽くしてないと何もできない可愛い妹って思ってるんでしょ!!」

 

「えっ、何で!?」

 

(いわれのない罵倒を浴びせ、彼女はキッチンを飛び出して行った。)

 

 

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【ホーム 玄関】

 

「白銀さん。何か見つかりましたか?」

 

(玄関ホールには山門さんがいた。壁や棚を調べていた彼女は、わたしに気が付いて振り向いた。)

 

「山門さん、ここは何かあった?」

 

(わたしが尋ねると、山門さんは玄関ホールや個室のある廊下の白い壁を見て溜め息を吐いた。)

 

「いえ、まだ発見はありません。そちらの地下は まだ見ていないので、これから行こうかと。」

 

「じゃあ、わたしも一緒に行くよ。」

 

 

(玄関ホールから地下に続く階段を降りる。地下に降りて長い廊下を進むと、邪魔が入った。)

 

「うえのおへやで遊びましょうね。」

 

「どういうことですか?この先も進める道があったように思いますが。」

 

(問いかけてもモノクマは答えない。)

 

「山門さん。聞いても無駄みたい。とりあえず、戻ろう?」

 

(玄関ホールに戻るとモノクマは消え…わたし達は再度 地下に降りては戻され降りては戻されを繰り返した。)

 

「最後はモノクマ、何も言わなかったね。」

 

「そうですね。けれど、地下に何かがあることが分かりました。」

 

「うん。ーーって、山門さん。顔色 悪いよ?」

 

「…少し疲れたようです。」

 

「ごめん、郷田君が そんなこと言ってたよね。部屋で休んでて!」

 

「……白銀さんも顔色が悪いですよ。」

 

「……寝不足なだけだよ。」

 

「……。」

 

「とりあえず、山門さんは少し休んでて!男の子たちとローズさんが帰ったら呼ぶから!」

 

(心配げな山門さんを廊下の奥、大きい花瓶が飾られた壁まで押して、彼女の部屋の目の前まで来た。…ところで、わたしは気付いた。)

 

 

「あれ?何このスイッチ。」

 

「え?」

 

(よく見ると、各部屋 扉と扉の間に、それぞれスイッチが付いている。かなり低い位置にある上、壁紙と同じで真っ白なので今まで気付かなかった。)

 

「お…押してみようか?」

 

「…トラップかもしれませんよ?」

 

「でも、モノクマが『ホームは安全』って言ってたよね。」

 

「そ、そうですが…。」

 

(少し躊躇いを見せる山門さんに「大丈夫」と頷いてスイッチを押す。と、天井から白い壁が降りてきた。)

 

(その壁は、廊下の1番 奥の部屋前にいた わたし達を閉じ込めた。)

 

「と、閉じ込められた…?」

 

「これは…防火シャッターでしょうか。」

 

「ううん。防犯シャッターだよ。」

 

「うわ、また出た。」

 

「ホームは狭いからね!もし殺人鬼が出た時でも、これが あれば安心でしょ?」

 

「……犯人との間に壁を作ることができるってこと?でも、犯人もスイッチを押して入ってくるんじゃないの?」

 

「押したスイッチの反対側スイッチを押さないと壁はオープンしないよ。逃げるなら手前のスイッチを押して、シャッター向こう側に逃げることだね。」

 

「え。今、ここのスイッチ押しちゃったよ。オープンのスイッチはシャッターの向こう側ってこと?」

 

「この壁は元に戻せないということですか?」

 

「今回は特別に戻してあげるよ。ここで飢え死にされても迷惑だし。ちなみに、今ので山門さんの部屋前のはclose専用になってしまいました。」

 

「じゃあ、隣のローズさんの部屋側がopenスイッチなんだね。」

 

「そうそう、次回からは壁が降りきる前に、壁の向こう側に移動してね!各個室の間に防犯シャッターがあるので、どうぞ ご活用ください!」

 

(モノクマが消えてシャッターが開いた。本格的に疲れた顔になってしまった山門さんが部屋に入るのを見送った。)

 

 

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【ホーム リビング】

 

(この家にも、やっぱり隠し通路などはなかった。)

 

(4つ目のステージ…4章。物語は佳境に入っている。ここから6章まで一気に駆け抜けてーー)

 

「……。」

 

(自然と ため息が漏れた。また、”クラスメイト”達の顔が脳裏にチラつく。)

 

「もし…例えば。ここで、わたしが動けば…?」

 

(呟いた時、鳥の声がした。見ると、”びっくりするほど近い距離を飛んで渡らせてくれる鳥”みたいな鳥がハト時計のように夕方の時刻を示している。)

 

(次いでドアが開き、顔色が悪いままの山門さん、不機嫌なままの妹尾さん、ボンヤリしたままの夕神音さんも入ってきた。)

 

(さらに暫く経って、男子たちも入ってきた。その服は血まみれだった。)

 

「お、おかえり…。それ、大丈夫?」

 

「モンスターの返り血です!何もありません!!」

 

「いや、デカブツ。テメーはケガしてんだろ。クソが。手当てすんぞ。」

 

(郷田君が前谷君を連れてキッチンの方へ歩いて行った。)

 

「またモンスターが出たの?前谷お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「うん、光太クンはモンスターの動きを止めるために進んで前に出てたから…。」

 

「まるでニクカベでした。でも、マエタニはトドメ刺しマセン。汚れ仕事はワタシの仕事デシタ!」

 

「ローズさん、すごいわ。」

 

「でも、途中からモンスターが出てこなかった。地形やトラップは、昨日と うってかわって初見のステージ。」

 

「えっ…。そ、そうだったんですか。大丈夫でしたか?」

 

「蘭太郎クンがトラップの注意書きを読んでくれたからね。」

 

「…一応、俺も世界中 回ってますんで。」

 

「とりあえず、シャワー浴びて夕食デス!」

 

(みんなとキッチンから戻った前谷君と郷田君はリビングから出ていった。けれど、すぐまた全員がリビングに集まった。いつの間にか用意されていた夕食を囲む。)

 

「適度なエクササイズで腹ペコです。」

 

「適度と言えないハードワーク。」

 

「うん。確かにハードだったね。今日は ゆっくり眠れそうだよ。」

 

「さすが、哀染先輩は どんな時でも快眠ですね!!」

 

「寝不足のヤツは今日こそ早く寝ろよ。あと、スーツ女。」

 

「……。」

 

「体調悪いヤツは起きてくんな。メシくらい部屋に持ってってやる。」

 

「わたしは大丈夫です。」

 

(郷田君の鋭い視線に、穏やかだった山門さんが珍しくピシャリと言い放った。)

 

「ゴウダ。アナタ、チンピラみたいデス。オイ、ヤマト先生に口出シテンジャネェゾ、コラ?」

 

「テメーの方がチンピラみてーだろ!」

 

「まあまあ、落ち着いて。」

 

「そうだよ。ごはんは楽しくモリモリ食べようよ!」

 

「…ローズさん達は大変だったものねぇ。たくさん食べてねぇ。」

 

 

「それで…外には手掛かりはあった?」

 

「残念ながら、発見はなかったっす。」

 

「……そっ…か。」

 

「……。」

 

「でも、トラップ変わっていマス!外に何かありますのショウコ。」

 

「なるほど。ホームも…地下には何かありそうです。」

 

「地下?」

 

「あ、そうだね。玄関ホールから地下への階段があるでしょ?何回か地下へ行こうとしたんだけど、モノクマに邪魔されるんだ。」

 

「それは…何かありそうだね。モノクマが探索の邪魔してくるなんて初めてだよ。」

 

「呼ばれて飛び出て〜!」

 

「…呼んでないって。」

 

「おやおや?白銀さん、驚きの悲鳴もなければツッコミも気怠げ?けだるきいせかい?」

 

(モノクマが絶妙なタイミングで現れた。もはや驚く元気も出ない。そんな わたしに、モノクマは やれやれと首を振った。)

 

「何しにきたのって顔だね?今回の動機を教えに来てやったんだよ。朗報だね。」

 

「動機でしょ?どこが朗報なの?」

 

「朗報だよ!この世界の真実が、地下に隠されているんだから!!」

 

「……!」

 

「……世界の真実?」

 

「そう。どうしてオマエラはコロシアイに参加しているのか。どうやってオマエラは連れてこられたのか。そんなことが分かっちゃうかもね!」 

 

「クソが!なら、今から地下 行くぞ!」

 

「しかーし!ボクは地下に行くオマエラの邪魔をします。必ず。確実に。オーバーキル気味に。」

 

「うう…。絶対 行かせないぞ!って意気込みを感じるよ…。」

 

「それなら、どうして動機なんですか?」

 

「うぷぷぷぷ。ボクは日がな一日、青春ど真ん中の高校生たちのシケた生活を監視する仕事に就いているんだけどね。」

 

「誰のせいで湿気ってると思ってるんですか!」

 

「……カメラで、モノクマは地下に行く人を見てるんすね。」

 

「そう。いわゆるニートも羨む超ニート級のクマなんだけど、地下への監視カメラなんて見てらんない瞬間もあるんだ。」

 

「この国のヒト、ニートの使い方 間違ってイマス。」

 

「地下への監視カメラを見ない瞬間…?」

 

「うん!それは、殺人が起こってからの瞬間さ!だって、まず死体がある場所を随時 観察して、死体発見アナウンスを流さなきゃいけないし。」

 

「犯人が どのように動くか見ておかなきゃいけないし、並行して捜査パートでオマエラに提供する公正な証拠も保存しておかなきゃいけないからさ!」

 

「ま、証拠は犯人の行動によっては保存が難しい場合もありますが!」

 

「とにかく、殺人が起こって死体発見されるまでの時間、ボクは萌えない監視カメラからは目を離すんだ。」

 

「つまり、地下階段のカメラも現場にならない限り見ない!地下に行き放題!世界の真実を知りたくば、誰か殺してみなさいな!ってこと。」

 

「……。」

 

(世界の真実。それって…この世界がフィクションで、みんながゲームのキャラクターってこと?)

 

(それを…4章で暴露する?)

 

「質問がないようなので、ボクは風と共に去りぬ!さよならドビュッシー。おやすみラフマニノフ。こんにちは赤ちゃん。」

 

(モノクマは すきま風の音と共に消えた。みんな困惑しながらも夕食を終え、就寝のために部屋に入って行った。)

 

 

 

【ホーム 白銀の個室】

 

(部屋の扉を閉めずに、わたしは机のそばの椅子を薄く開いたドアの前に置いた。そして、ドアの外に向かって腰掛けた。)

 

(今、ここで…わたしが動いたら…どうなる?例えば…)

 

(例えば、わたしが前谷君を見張っていたとしたら。)

 

(『ダンガンロンパ』の殺しにはルールがある。4章は身体の大きいキャラが関わってくる。)

 

(ーーもし、わたしが彼の側を離れなければ…『ダンガンロンパ』は どうなるんだろう。)

 

(……コロシアイが起こらなかったり…するのかな。)

 

 

 

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