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第□章 ※either killed жe♪ 学級裁判編Ⅰ

 

コトダマリスト

【モノクマファイル1】

被害者は”超高校級の翻訳家” 山門 撫子。死体発見現場はホームの山門の個室。目立った外傷は見られない。

【モノクマファイル2】

2つ目は…被害者は”超高校級のチャイニーズマフィア” リー・ファン。死体発見現場はホームの地下。死亡推定時刻は午前11時45分〜午後12時15分頃。目立った外傷は見られない。

【山門の死体の状態】

目立った外傷はなく綺麗な状態だが、左腕に数カ所 細く鋭利なもので刺された傷がある。

【ローズの死体の状態】

ホーム地下にうつ伏せで倒れた状態で発見された。服に大量の血が付着しているが、外傷は見られない。右手に”世界の秘密”の紙が握りしめられていた。

【ペン立ての花】

山門の部屋のペン立てには花が飾られていた。今朝、白銀が山門の部屋を訪れた時にはなかった。

【山門の部屋の時計】

山門の部屋のカラス時計。前谷の部屋の時計と同時刻にカラスが鳴いた。

【ローズの部屋の時計】

ローズの部屋の時計。前谷の部屋、山門の部屋の時計が鳴る20分前に鳴った。

【廊下の奥の花瓶】

廊下の1番 奥、山門の部屋の前に大きめの花瓶が飾られていた。前谷によると、死体発見前には見当たらなかったそうだ。

【天井トラップの作動時間】

天井が落ちてくるトラップが作動した時間がエスペラント語で記されている。今日の11:15と11:40に作動したらしい。

【トラップ近くの血溜まり】

天井トラップを進んだ先の部屋に血溜まりができていた。ここから血の足跡がホーム方面に続いている。おもちゃのナイフが落ちており、ローズがモンスターを倒した跡だと思われる。

【血の足跡】

ホームの外に残ったローズの足跡。トラップ方面から洞窟、ホームに向かっている。歩いたにしては歩幅が広い。

【死体発見アナウンス】

山門の死体第一発見者は白銀。その後、前谷、郷田と夕神音が発見。郷田、夕神音が山門の部屋に入ってからアナウンスが流れた。ローズの死体第一発見者は白銀。続けて現場に来た前谷、郷田、夕神音により発見後、アナウンスが流れた。

【ローズの目撃証言】

夕神音によると、ローズはモンスターの返り血を浴びた後、11時頃 洞窟に来たらしい。

【山門の目撃証言】

郷田によると、12時20分に山門の個室で本人に会ったらしい。

【持ち物検査】

山門の持ち物は万年筆と手紙、モノパッド。ローズの持ち物はモノパッドのみ。

 

 

学級裁判 開廷

 

「ではでは、最初に学級裁判のルール説明をしておきましょう。」

 

「もうルールは分かってる。さっさと始めろ。」

 

「もう!いくら4回目で飽きたからってヒドいよ!これはボクの仕事なの!この仕事を取られたら、まさにニートじゃないかー!!」

 

(『V3』の4章でもサボってたくせに…。)

 

「……。」

 

(前回の裁判が始まるまで、『V3』よりも生き残りの人数が多かった。でも…今回2人被害者が出たことで『V3』4章の事件後に人数が追いついてしまった。)

 

(4章で被害者が2人なんて。一体どうしてーー…。)

 

「議論を始めましょう。それとも、前回の裁判みたいに追加のルールがあるんすか?」

 

「……前回のは追加ルールではないよ。『1人1票』は決まっていた。聞かれたから明示したまでさ。」

 

「そうっすか。ルールに変更がないなら、議論を始めてもいいっすね?」

 

「……。」

 

「いいでしょう。せいぜい、無駄死にしないように頑張ることだね。」

 

「…頑張りましょう。ローズさんと山門さんの死の真相を必ず…必ず見つけましょう。」

 

「……そうだね。」

 

 

「被害者は女2人だ。ヤマトナデシコに、チャイナ女。」

 

「”超高校級の翻訳家”の山門サンと、”超高校級のマフィア”のローズサン。」

 

「山門さんは自室で、ローズさんは地下の通路で亡くなっていたわねぇ。」

 

「山門お姉ちゃんは体調が悪くて、ずっと部屋にいたよね。ローズお姉ちゃんは探索に出てたよ。」

 

「昼過ぎまで外を探索していたのは、ローズさん、哀染君、芥子君、郷田君、妹尾さんと俺っすね。」

 

「チャイナ女は途中で どっか行きやがったから、オレがホームに戻るついでに探した。見つかんなかったがな。」

 

「郷田君とは入れ違いになってたわねぇ。わたしはホームすぐの洞窟にいて、途中でローズさんと郷田君が来たわ。」

 

「ホームにいたのは、山門さん、白銀さん、前谷君ね。

 

「は…はいっ。自分は白銀先パイに続いて山門先パイの死体を見つけ、皆さんを呼びに行きました!」

 

「わたしは山門さんを発見して すぐ地下に向かったよ。そこで…ローズさんの死体を発見したんだ。」

 

「私たち…前谷君と郷田君と地下に向かったのは、山門さんを発見して少し経ってからだったわねぇ。…放心しちゃって。」

 

「俺たちは発見アナウンスで山門さんのホームに戻ったっす。山門さんの部屋で死体を発見した時、ローズさんのアナウンスがあって地下へ向かったっす。」

 

「クソ…ッ、何で2人も…!誰が2人も殺しやがった!?」

 

「お、落ち着いてください!1人の犯人じゃない可能性もあるんですよね?」

 

「そうだね。2人が同一人物に殺されたとは限らないよ。死因も記載されていなかったし。」

 

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「2人の死因の記載はない。撫子は自室で、ローズは地下の通路で倒れていたんだよね。」

 

2人の死因が同じなら、同一犯と言えそうだけど…。」

 

「山門お姉ちゃんに首を絞められたり、殴られたり刺された跡もなかったよね。血も出てなかったよ。」

 

「逆にチャイナ女は血塗れだったな。」

 

ローズさんは刃物で刺された可能性あり…ってことかな?」

 

 

【モノクマファイル2】→2人の死因が同じ

【山門の目撃証言】→ローズは刃物で刺された

【ローズの目撃証言】→ローズは刃物で刺された

 

 

 

「……つむぎ。適当なことを言うものじゃないよ。」

 

「うう…普通に怒られるのが地味に1番こたえるよ…。」

 

 

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「それは違うっす。」

 

「確かに、ローズさんは血塗れだったけど…それはモンスターの返り血だったんだよ。」

 

「そうねぇ。11時過ぎくらいにローズさんと会った時、血塗れで走ってたわぁ。」

 

「その時はピンピンしてたんだね。」

 

「間違いないの?でも…それを見たのは夕神音さんだけ?」

 

「間違いないわよ。嘘も吐いてないわ。」

 

「…夕神音さんの証言は間違いないはずっすね。」

 

「うん。その時間にローズさんが血塗れでピンピンしてたことは、2つの証拠が物語っているよ。」

 

 

1. 【山門の死体の状態】と【天井トラップの作動時間】

2. 【血の足跡】と【ペン立ての花】

3. 【血の足跡】と【天井トラップの作動時間】

 

 

 

「……物語らないね。恥ずかしがり屋な証拠なのかもしれないね。」

 

「…そ、そんな天然 見せられたって、ときめいたりしないんだからね!」

 

(なぜか妹尾さんの顔が赤い。)

 

 

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「天井トラップ前からホームまでの間には、血の足跡が残ってたんだ。天井トラップ付近でモンスターを倒して、ホームまで走った跡だよ。」

 

「ホーム辺りで足跡は薄くなっていましたが…歩幅からして、走ったという話でしたね。」

 

「うん。なんならツーステップの足跡もあったよ。」

 

「何で そんなにルンルンなんだろ。」

 

「時間が11時過ぎは正確なの?」

 

天井トラップの作動時間から間違いないと思うよ。あのトラップは、トラップが作動して天井が落ちた時の時間が記録されるらしいんだよね。」

 

「今日の作動時間は11:15と11:40だそうです。」

 

「ローズさんは、あのトラップについて、よく知らなかったっすからね。ボタンを長押しで進むということも分かってなかったんでしょう。」

 

「チッ…行きに しっかり教えてやりゃよかったな。」

 

「11:15…この時間の後、ローズが通ったってことだね。」

 

「そうねぇ。そのくらいに大きい音がしたのよ。」

 

「さすがに、歌ってる美久の集中力でも、トラップの音は気になったんだね。それじゃあ、次の11:40は…?」

 

「オレだ。チャイナ女を探しに行ったがトラップのせいで足止めを喰らってた。1人で何とか走りきれねーかと思ったが無理だった。」

 

「そりゃ そうでしょ。」

 

「…とにかく、ローズさんの服の血は彼女のものではないっすね。」

 

「ローズの死因も分からないってことだね。」

 

 

 

ノンストップ議論2開始

 

「ローズさんの体に目立った外傷もなかったわよねぇ。」

 

「山門お姉ちゃんも腕に傷があったくらいで後は綺麗だったよね?」

 

「……前回の木野さんみたい。」

 

「えっと…今回も…同じということですか?」

 

「……今回も。死因は毒…なのかしら。」

 

 

【モノクマファイル1】→目立った外傷はなかった

【山門の死体の状態】→山門の死因は毒

【廊下の奥の花瓶】→山門の死因は毒

 

 

 

「それが死因と どう関係する?」

 

「証拠に揺さぶりを掛けただけだよ。…反応も手応えもなかったけど。」

 

 

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「それに賛成っす。」

 

「山門さんの死因は毒とか…何らかの薬物だったんじゃないかな。」

 

「どうして?」

 

「山門さんの腕にあった傷…あれは何か細くて鋭いものを肌に刺したような跡だったよ。先端に毒を塗っておけば、毒殺できるから。」

 

「けど、現場には毒らしきものも注射器なんかもありませんでした。」

 

「注射器じゃない可能性もあり。」

 

「山門お姉ちゃんに、もともと傷があったっていうのは?ないかな?」

 

「それはねーな。昨日 見た。」

 

「え。見たって。」

 

「郷田お兄ちゃん…?」

 

「あ?変な誤解すんなよ。あいつの脈取ったり、状態を診ただけだ。」

 

「郷田先輩は医者の才能もあったんですか?」

 

「……ねーよ。」

 

「…郷田クンは看病に慣れてる。」

 

「おい、余計なこと言うな。とにかく、昨日は腕に跡はなかったんだ。事件に関係があんだろ。」

 

「山門さんの腕には跡が残っていた。…けど、ローズさんにはなかったっすね。」

 

撫子とローズの死因は違うのかな。」

 

「そうなると…同一犯じゃない可能性も高くなるのかしら?」

 

「もし同一犯が2人を殺すなら、何か理由があったはずっすからね。2人 殺したら、その分 証拠が残りますから。」

 

「同一犯じゃない可能性も高いってことだね。」

 

「でも、それなら…この中に2人クロが?」

 

「2人も人殺しがいるってことになっちゃうよ…。」

 

「……今回のクロは、後に死んだ人を殺したクロだったっすね。」

 

「山門さんとローズさん。後に亡くなった人を殺したクロを探すってことよねぇ。」

 

「モノパッドによると…ローズの死亡推定時刻は、11時45分から12時15分頃だね。」

 

「山門サンの死亡推定時刻については記載なし。」

 

「どちらが先に死んだか…犯人の心理から考えるのは どうかしら?」

 

「心理?どういうこと?」

 

 

 

ノンストップ議論3開始

 

「犯人は…まず、誰を狙うか考えるはずよねぇ。できるだけ、殺しやすい人を。」

 

「私だったら…病床の山門さんを狙うわ。」

 

「テメー…。」

 

「例えばよ。銃なしの対多人数戦なら弱い奴から狙えってローズさんも言ってたわ。犯人2人の場合、最初の犯人Aが そう考え山門さんを殺害した。」

 

「後に犯人になるBも同じことを考えた。けれど、山門さんは既に死んでいた。」

 

「このままじゃ自分はクロになれない。それで…ローズさんを殺したんじゃないかしら。」

 

撫子が先に殺された。美久は、そう言いたいんだね。」

 

 

【山門の目撃証言】→山門が先に殺された

【ローズの目撃証言】→山門が先に殺された

【山門の部屋の時計】→山門が先に殺された

 

 

 

「一生懸命 考えけど…ダメだったかしら。」

 

「ううん。胸いっぱいのダメを抱えながら行こう!」

 

 

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「それは違うっす。」

 

「郷田君、あなたなら知ってるはずだよね?」

 

「あ?」

 

「捜査時間に、あなたは12時20分に山門さんの部屋に昼ご飯を届けた。そう言ってたよね。」

 

「ああ。ヤマトナデシコは、その時点で生きていた。」

 

「…あ!ローズ先パイの死亡推定時刻に山門先パイは生きてたってことですね。…どうして気付かなかったんだろう。」

 

「……。」

 

「でも、モノクマファイルの死亡推定時刻は正しいのかな?推定時刻は推定でしかない…とか言わないよね?」

 

「だーかーらー!スキあらばボクを嘘吐きにしようとしないでよ!!モノクマファイルの死亡推定時刻は絶対です!」

 

「死体を冷やしたりして死亡時刻を ごまかすって聞いたけど…それは どうかしら?」

 

「夕神音サンの知識が偏ってきている件。」

 

「ローズさんが色々と教えてくれたのよ。」

 

「死亡時刻をズラすのがローズお姉ちゃんの経験談じゃないといいね…。で、モノクマ、どうなの?死亡時刻って、絶対ぜーったいなの?」

 

「絶対だよ。検死、科学捜査、司法解剖なしの世界でモノクマファイルが間違ってるなんて、あり得ないよ。」

 

「ローズさんの死亡時刻は間違いない…山門さんは少なくとも その時間は生きてたってことっすね。」

 

「…チャイナ女が殺された後、ヤマトナデシコが殺されたってこと…か?」

 

「でも、同一犯でも犯人が違ったとしても、ローズさんを初めに狙う理由って何かしら?」

 

「確かに、山門お姉ちゃんなら ともかく、ローズお姉ちゃんはピンピンシャンシャンツーステップダンダンだったんでしょ?」

 

「それは色々 考えられる。山門サンを、殺害しようと部屋まで出〜かけたら、目論見、見つかり、ゆうか〜いローズさん。…だったのかも。」

 

「そういえば、ローズお姉ちゃんは落ちてくる天井のトラップを通ったんだよね。あそこ、1人じゃ通り抜けられないのに、どうやって?」

 

「それは、たぶん…」

 

 

1. モノクマがボタンを押した

2. 被害者がボタンを押した

3. 誰かが嘘を吐いている

 

 

 

「え?分からないの?こんなの、ゴリラでも分かるのに?目指すはバスケで全国優勝だー!」

 

「そっちのゴリラ!?」

 

 

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モノクマだよ。そうだよね、郷田君。」

 

「……あ?またオレか?」

 

「お兄ちゃん、何ボヤボヤしてるの?」

 

「何でもねーよ。」

 

「郷田君がトラップを抜けた時は、モノクマがボタンを押したんだよね?」

 

「…ああ。」

 

「私も音は聞いたわよ。ローズさんに会ってから暫くして、また天井トラップが作動した音が聞こえたわぁ。」

 

「あのトラップってホームに近かったもんね。」

 

「歩いて5分。それに、遺跡内は音が響く。」

 

「郷田君はトラップから真っ直ぐホームへ向かったんすか?」

 

「ああ。そのままキッチン行って昼メシをヤマトナデシコの部屋に持っていった。……それが12時20分だな。」

 

(思い出すように話す郷田君。が、彼の話が終わらない間に天海君の静かな声が響いた。)

 

「……それは おかしくないっすか?」

 

「ああ?何も面白ぇことなんてねーだろ。」

 

「その おかしいじゃないっすよ。……白銀さん。」

 

「え。」

 

「おかしいところ…キミなら分かるんじゃないっすか?」

 

「ええと…。今の郷田君の発言と矛盾するのはーー…」

 

 

1.【ローズの部屋の時計】

2.【天井トラップの作動時間】

3.【山門の部屋の時計】

 

 

 

「それの何が矛盾なんだよ。」

 

「ほら…時計の針をホコ、盤面をタテに見立てて…さ。」

 

(すごい顔で睨まれた。)

 

 

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「郷田君、今の発言は天井トラップの作動時間と矛盾してるよ。」

 

「あ?」

 

「あなたが通ったのは、11時40分くらいなんだよね?」

 

「そんくらいだな。細かい時間は覚えてないけどよ。」

 

「それなら、山門さんの部屋に12時20分に辿り着いたというのは時間が掛かりすぎっす。あのトラップからホームまで、そんなに時間は掛からないっす。」

 

「確かに…トラップから撫子の部屋まで30分以上かかるのは変だね。」

 

「料理は いつの間にか準備されてるから、用意するのにも時間かからないよね?」

 

「知るかよ!オレは嘘なんざ吐いてねーぞ!!」

 

「ま、まさかとは思いますが…郷田先輩…。」

 

「何だ!?オレがヤマトナデシコを殺したとでも言いてーのか!?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着こう。いったん、ゆっくり話し合おう!」

 

「トラップの時間は正しいのかしら?」

 

「モノクマは嘘が吐けないっすから間違いないと思うっす。」

 

「郷田クン…。」

 

「……オレは嘘なんて言ってねーぞ。オレは12時20分にヤマトナデシコに会ってんだ。」

 

「絶対12時20分なの?」

 

「メシ持ってった時、ヤマトナデシコの部屋の時計を見たんだよ。間違いなく12時20分だった。」

 

「部屋は すぐ出たのよねぇ?」

 

「ああ。メシだけ届けて、そっから黄色女とトラップ近くを探索してたろ。」

 

「そうねぇ。時計がなかったから、時間は正確には分からないけど。250番を歌った辺りで郷田君と合流したわぁ。」

 

「毅クン。撫子に会った時、何か変わったことはなかった?」

 

「あ?……いや。そうだな。」

 

「何?歯切れ悪いよ?」

 

「だいぶ体調 悪かったみてーだ。チェーンロック掛けてたし、何も言わなかったしな。」

 

「え?チェーンロック?」

 

「ああ。珍しくチェーンロックなんざ掛けてたから問いただしたが、メシ受け取るだけで あいつは何も言わなかった。」

 

「何も?撫子が?」

 

「頭からシーツ被ってたしな。だから、オレは ゆっくり寝ろって言ってーー…」

 

「え?ちょ、ちょっと待ってください。シーツですか?」

 

「ドアを開けた山門サンはシーツを被ってた?」

 

「ああ。頭からシーツ被って、顔しか見えねー状態だった。」

 

「カオナシ状態ってことだね。」

 

「いや、顔はあった。」

 

「あ、ごめん。そういう話をしたわけじゃないんだ。」

 

「郷田君。キミが山門さんの部屋で見た人物は、顔以外 見えなかったんすね。」

 

「だから、そう言ってんだろ。」

 

「それなら…別の可能性が出てくるっす。」

 

「別の可能性?」

 

「被害者の部屋にいたシーツを被った人物。発見したのは郷田君で、会話はなかった。その人はーー…」

 

 

1. 故人の可能性

2. 宇宙人の可能性

3. 別人の可能性

 

 

 

「ここに来てから白銀さんと目が合わないっすけど…俺なんかしたっすかね?」

 

「……。」

 

(ネイルイベントの時みたいな顔をしている。)

 

 

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「郷田君が見たシーツの人は…山門さんじゃなかったのかもしれないよ。」

 

「はあ!?」

 

「2つ目のステージの…祝里さんの事件の裁判で郷田君は言ってたっすね。顔全体を認識できないって。」

 

「相ぼう失認…あなたは山門さんを顔で認識できたわけじゃないんだよね。」

 

「あ…。た、確かに。」

 

「……ヤマトナデシコの部屋に女がいたら、それはヤマトナデシコだろ。」

 

「そうかしらぁ?」

 

「毅クン、顔全体は把握できなくても、パーツは見えているんだよね?その人物の目の色や形は?撫子と同じだった?」

 

「いちいち覚えてねーよ。人間 覚えんのは、1番 苦手なんだ。」

 

「音や匂いは…どうかな?呼吸のリズムや匂いで、人は見分けられる。」

 

「テメーとは違うんだ。ンなことできっかよ。」

 

「………。」

 

(吐き捨てるように言った郷田君。一瞬、裁判場は静かになった。けれど、)

 

 

「できるよ。」

 

「あ?」

 

(ぽぴぃ君が閉じていた目を開いて言った。とても静かで、真剣な声色だった。)

 

「キミは顔を判別できないけど、体調が悪い人や無理をしている人が分かる。」

 

「……ぽぴぃ君?」

 

「このコロシアイでだけじゃない。ボクは知ってるよ。郷田クンは…誰かの痛みや苦しみに気付いて、手を伸ばし助けようとする人だ。」

 

「キミは…ボクにも手を伸ばしてくれた。叱ってくれた。心配してくれた。」

 

「……。」

 

「ボクは匂いや音で、人も物も見る。キミは?キミは…どうなの?」

 

「……。」

 

「教えてほしい。……ボクは、キミのようになりたいから。ちゃんとキミを思い出したいから!」

 

(ぽぴぃ君の声が響く中、郷田君は黙ったまま視線を落とした。何かを思い出しているような表情で。)

 

「な、なんだー!?唐突に、青春モノの起承転結の”転”の部分が始まってる!?もー!ボンヤリしてたら、これだよ!」

 

「自称裁判長のくせに、裁判中にボンヤリボヤボヤしないでよ!」

 

「……郷田君。どうっすか?」

 

「キミが山門さんの死亡時刻に言及しなかったのは何か違和感があったから…でしょ?きっと、キミは何かに気付いているはず。」

 

「…思い出せねーんだよ。」

 

「ゆっくりでいいわ。思い出して ちょうだい。」

 

「はい、ゆっくりで。でも、できるだけ早く お願いします…!」

 

「出ました!ゆっくりASAP矛盾!山が多いのにヤマナシ!サスティナビリティ掲げる24時間営業の古着屋!『容姿は気にしませんが太ってる人は嫌です』!」

 

「うるせーぞ!!集中させろ!!今 思い出してんだよ!」

 

「郷田クン…。」

 

(郷田君は頭を押さえて目を閉じた。そして、しばらく黙った後、言った。)

 

「…歩き方だ。」

 

「歩き方?」

 

「歩き方が違った…。あれは…ヤマトナデシコじゃねぇ。」

 

「確かっすか?」

 

「ああ。そうだ。あの時、何か変な感じがしたんだ。間違いねぇ。チェーン外してメシを受け取って机に置いた時…歩き方がヤマトナデシコと違った。」

 

「そんな些細なこと覚えてられるものでしょうか!?」

 

「舐めんなよ。オレはジムリーダーだぞ。顔は見てねーが、動きは見てる。」

 

「その肩書き謎すぎるんだよね。」

 

「でも、歩き方は千差万別だから、一理あるよ。」

 

「そうねぇ。ローズさんも跡をつけられたら歩き方を変えろって言ってたわぁ。」

 

「あ、警察の捜査でも使われているのをドラマで観たよ。」

 

「郷田君。キミが見た人物の歩き方は どんなものだったんすか?」

 

「足の着地に違和感があった。足音を消すような歩き方だ。」

 

「……。」

 

(足音のない歩き方か。前のステージで そんな話をした。)

 

(でも…それってーー…。)

 

 

▼郷田が見た人物は?

 

 

 

「…どういうことですか?」

 

「そのツジツマを、これから合わせるんだよ!」

 

「なるべく早くお願いします…!」

 

 

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「郷田君が見たのは、ローズさんだよ。」

 

「ローズさん?」

 

「ローズさんは足音を殺して歩くクセがあった。……佐藤君が前に言ってたよ。」

 

 

「前谷さんは、女性と話して緊張すると口元を押さえるクセがある。ローズさんは、お家柄か足音を殺して歩くクセがあるよね。」

 

 

「……そうっすか。」

 

ローズさんが山門さんの部屋にいたってこと?」

 

「いや、そもそも あいつがチャイナ女のわけがねぇ。モノクマファイルが おかしくなる。」

 

「そ、そうだよ。ローズお姉ちゃんは12時15分には死んでたはずでしょ?」

 

「モノクマファイルが間違っていたのかな?」

 

「モノクマの不正発見?」

 

「……ハア。もう、オマエラは すぐクマを疑う。クマを疑うヒマがあったら、汝の隣人を疑え!!」

 

「疑えって…やっぱり郷田お兄ちゃん、嘘言ってるの?」

 

「オレは嘘なんて吐いてねーぞ。間違いなく、12時20分だ。」

 

「けど、郷田君って あまり記憶力に自信があるわけじゃないわよねぇ?」

 

「舐めんなよ。オレは数字には強いんだ。間違いねぇ。」

 

「白銀さん。どうっすか?ローズさんの死亡時刻は遅くても12時15分。けれど、郷田君がローズさんに会った時の時計は12時20分を指していたっす。」

 

「それはーー…」

 

 

1. 郷田が嘘を吐いている

2. ローズは郷田に会った瞬間死んだ

3. 時計がズレていた

 

 

 

「ここまで言っても…分からないっすか。」

 

(聞いたことがあるようなないようなフレーズだ…。)

 

 

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時計がズレてたっていうのはどうかな?」

 

「え?」

 

「捜査時間、ローズさんの部屋で14時の時計が鳴ったんだけど、20分後くらいに山門さんの部屋の時計が鳴ったんだよ。」

 

「そ、そうでしたっけ…?」

 

「20分?時計が鳴るには中途半端。部屋の時計は1時間おきに鳴る仕様。」

 

「20分 時計が狂ってたっつーことだな。」

 

「時計は同じ時間に鳴るはずだものねぇ。ローズさんの部屋のハト時計が正確で、山門さんの部屋のカラス時計はズレていたってことよねぇ。」

 

「あ?いや、そりゃ おかしいだろ。よく考えやがれ。」

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「チャイナ女の死亡時刻は遅くても12時15分。」

 

「オレがヤマトナデシコの部屋で見た時計は12時20分。そこに いたのはチャイナ女の可能性がある。」

 

「もし、オレが見たヤマトナデシコの部屋の時計がズレていたなら、あの部屋の時計は実際よりも進んでたってこった。」

 

「うん。ローズさんの部屋の時計が鳴って20分後に山門さんの部屋の時計が鳴ったんだよ。」

 

 

「いや、それが おかしいだろ。テメーが捜査時間に聞いたっていう時計の順番は逆のはずなんだよ。」

 

「オレが事件前に見たままなら、ヤマトナデシコの部屋の時計が他より20分 進んでるはずだ。」

 

「チャイナ女の部屋の時計の後、ヤマトナデシコの部屋の時計が鳴んのは おかしいんだよ。」

 

「ヤマトナデシコとチャイナ女の部屋の時計が入れ替えられでもしねー限りな。」

 

 

【廊下奥の花瓶】→部屋の時計が入れ替えられた

【トラップ近くの血溜まり】→部屋の時計が入れ替えられた

【山門の部屋の時計】→部屋の時計が入れ替えられた

 

 

 

「入れ替えトリック…人や物、場所の入れ替えは王道だよね。100万回 見たよ。」

 

「それは素直にスゲーな。」

 

 

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「少なくとも、山門さんの部屋の時計は入れ替わってないはずだよ。山門さんの部屋の時計はカラスで、捜査時間も それは変わってなかったから。」

 

「え?山門先パイの部屋には、ハト時計がありましたよね?」

 

「山門さんの部屋にあったのは、ハト時計じゃなくて、カラスの時計だよ。」

 

「ああ。そうだったな。」

 

「捜査時間も同じだったよね。でも、2つの時計は時間が違ったんだよね。」

 

「え?あれ?」

 

「郷田君、キミが山門さんの部屋で時計を見た時、中の鳥は確認できなかったんすよね?」

 

「ああ。時間が半端だったしな。」

 

「あの時計、鳥以外の見た目は同じだから、判別は難しいね。」

 

「…俺の部屋の時計は鳥じゃなかったっすよ。」

 

「オマエラの部屋には、それぞれ向かい合う部屋で同じ鳥の時計を用意していますが?」

 

「私の部屋はスズメだったわ。」

 

「あ…ボクの部屋も。向かい合う部屋だからだね。」

 

「えっと…あたしの部屋、女の人だったけど。」

 

「…それは、俺の部屋と同じっすね。」

 

「そうそう。時計の種類は8種類で、この世に2つしかない特別性だよ!ちなみに、天海クンと妹尾さんの部屋の鳥の種類はウグイスです!」

 

(ウグイス嬢…。)

 

「とにかく、向かい合う部屋で同じ鳥の時計なんだね。」

 

 

「ローズさんの部屋の鳥はハトだったわねぇ。」

 

「あ、確かに。捜査時間に確認しました。でも、ローズ先パイはカッコウって言ってましたよね。」

 

「……。」

 

「夕神音さん。ローズさんの部屋の鳥…何色だったっすか?」

 

「えーと…色は覚えてないわねぇ。」

 

「でも、鳴き声は覚えてるわ。確か、こんな感じよ。」

 

(夕神音さんが時計の鳥の声を再現する。見事なモノマネだった。けれど…)

 

「なんだか…ちょっと違和感があるね。」

 

「うんうん。とても上手だけど、ハトとは違う。」

 

「そうっすね。おそらく、ローズさんの部屋の時計はカッコウだったんすよ。」

 

「カッコウ?」

 

「ええ。別名、閑古鳥っすね。」

 

「”閑古鳥が鳴く”って、よく聞くわねぇ。」

 

「不穏な言葉だな。」

 

「カッコウとハトは似てますが、別モノっすよ。」

 

「…でも、ローズさんの部屋に捜査時間にあった時計はハト時計だったよ。白い鳥で、わたしの部屋のハト時計と同じだったもん。」

 

「ちょ…ちょっと待ってください!前はカッコウ時計があったローズ先パイの部屋に、捜査時間はハト時計があったってことですか?」

 

「…ローズさんの部屋の時計が入れ替えられていたってことっすね。」

 

「しかも、つむぎの話によるとローズの時計は20分時間が進んでいた。これは、どういうことだろう?」

 

「怪しいね。」

 

「怪しいですか!?だ、誰かが時計をあげただけでは?」

 

「ンな ややこしいモン、犯人以外の誰が渡すんだよ!?」

 

「被害者の山門さんがローズさんに渡した可能性はないのかしら?」

 

「それはないっす。ローズさんの文化圏で、大きい時計のプレゼントは縁起が良くないっすから。」

 

「そういえば、そんなこと言ってたね。天海君がハト時計を持ってるって話してた時…」

 

 

「…白銀さんも欲しいっすか?」

 

「あ、いやいや、大丈夫!お気持ちだけで!お気遣いなく!!」

 

「そうです!イケマセン!時計 贈る、ヨクナイ。」

 

「え?何で?」

 

「忌み言葉ですね。言霊信仰に起因するもので、中国語で大きい時計を贈ることと『死者を弔う・親の死に水を取る』という言葉は同じ発音なんです。」

 

「エンギが悪い!」

 

 

「山門さんは、それを知っていたっす。他の人なら ともかく…山門さんがローズさんにハト時計を贈るはずはないっすよ。」

 

「そもそも、山門さんの部屋にあったのはカラス時計っすから、ハト時計をあげようがないっす。」

 

「じゃあ、やっぱり犯人がローズお姉ちゃんの時計とハト時計を交換したの?」

 

「チャイナ女の時計を入れ替えて、犯人に何の得があんだよ。」

 

「時間差トリックなら犯人のアリバイ作り?」

 

「犯人とは限らないですよ!」

 

「でも、事件と無関係とも思えないわねぇ。」

 

「……。」

 

「つむぎ、時計を交換した人に心当たりはある?」

 

 

▼ローズの部屋の時計を交換したのは?

 

 

 

「そ、それは違うと思います…!」

 

「……うん。わたしも、ちょうど そう思ってたところなんだ。」

 

 

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「ローズさんの時計をハト時計と交換したのは…前谷君。あなただよね。」

 

「ち、違います!!」

 

「捜査時間にローズさんの部屋の時計はハトになってた。でも、前谷君の部屋の時計はハトじゃなくなってたよね。白い鳥じゃなくて、グレーだったし。」

 

「じ、自分は、ローズ先輩の部屋と時計を入れ替えたりしていません!」

 

「えっ。お兄ちゃん、何その汗。やめてよ?前谷お兄ちゃんが犯人でしたーとか、言わないでよ?」

 

「違いますって!」

 

「でも、向かい合う部屋の鳥の種類は同じなんだよね?わたしの部屋もハト時計だったからーー…」

 

「えっと…白銀さんが時計を入れ替えることもできたってことかしら?」

 

「えっ。」

 

「…ハト時計を交換できたのは白銀サンか前谷クン?」

 

「ちょ、ちょっと!唐突にジロジロつむぎお姉ちゃんを疑わないでよ!前谷お兄ちゃん、何でローズお姉ちゃんの部屋の時計とハト時計を交換したの?」

 

「だから、違うんですって!!」

 

「どうして嘘言うの!?前谷お兄ちゃんが犯人だから!?」

 

「違うんですよ!」

 

「8種類の鳥の時計が2部屋ずつ。ハト時計があったのは、白銀さんと前谷君の部屋、2部屋だけってことっすけど…。」

 

「ええと…わたしではないよ。信じてもらえないかもしれないけど、確かに前谷君の部屋の時計は事件前後で変わってたよ。」

 

「それを見た人は他にいない?」

 

(みんな、口を つぐむ。そりゃそうだろう。捜査時間に時計に注目していたのなんて、わたしと もう1人くらいだ。)

 

「そ、そんなの おかしいよ!つむぎお姉ちゃんが無意味にシコシコそんなことするはずないもん!」

 

(一瞬、数名の視線が疑いの目として わたしを捉えた。その時、)

 

「違います!!白銀先パイの部屋には、変わらずハト時計があるはずなんです!!!」

 

(耳をつんざく大音声が裁判場に響き渡った。)

 

「えっと…つまり…。」

 

「テメーが時計を交換したってことだな!?」

 

「……!」

 

「やっぱり!何でローズお姉ちゃんの部屋の時計交換したの?」

 

「だから、自分はローズ先パイの部屋の時計と交換なんてしてませんって!」

 

「…どういうこと?」

 

「もう!嘘ばっかり!カッコウの方が格好良いから盗っちゃったんでしょ!?早く認めないと、前谷お兄ちゃんが犯人にーー…」

 

「自分が交換したのは!山門先パイの部屋の時計なんです!!」

 

(また、彼の大声が裁判場に響いた。)

 

「えーと…前谷君。山門さんの部屋の時計と、前谷君の部屋のハト時計を交換したってこと?」

 

「…はい。」

 

「この期に及んで意味の分からねー嘘言ってんじゃねー!」

 

「嘘じゃないんです!!自分は!確かに!山門先パイの部屋のカラス時計とハト時計を交換したんです!!」

 

「ワケが分からないよ。どんどん分からくなるよ。」

 

(みんな、困惑の表情を前谷君に向けている。わたしは前谷君から視線を外し、モノクマを見た。)

 

(モノクマは、わたしのことなんか目に入っていない様子で、楽しそうに笑っていた。)

 

 

 

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