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第◆章 047は∞度фぬ 学級裁判編Ⅱ

 

(哀染君が爆弾を持ち出して格納庫で爆発するよう仕向けた。現場の証拠が、それを示している。)

 

(そのことに、みんなはショックを隠しきれない様子だ。シンと静まり返る裁判場に天海君の声が響いた。)

 

「……話し合いを続けましょう。」

 

「クロを見つけなきゃいけないからね。」

 

「…おい。本当に哀染は誰かに殺されたのか?」

 

「え。」

 

「郷田お兄ちゃん…。何が言いたいの?」

 

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「……哀染が爆弾をセットして、死んだ。」

 

「爆弾の起爆は格納庫内にいないとできねぇ。クロがいたとしても、クロにも危険がつきまとう。」

 

「そうねぇ。プレス機を起爆に使うなら…プレス機の操作台でボタンを押して、急いで格納庫から出ないといけないわ。」

 

「ああ。そんな危険な殺し方をする意味が分からねぇ。それに、これまでの事件のことも考えるとよ…。」

 

「まさか…哀染クンは…自殺?」

 

 

【プレス機リモコン】→操作台でボタンを押す

【プレス機リモコン】→哀染は自殺

【ヘッドホン】→哀染は自殺

 

 

 

「確かに、それも自殺とは考えにくいアイテムのひとつ。」

 

(けれど最適解ではないってことだね。)

 

 

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「それは違うっす。」

 

「格納庫入り口近くに、プレス機のリモコンが落ちてたよ。」

 

「プレス機のリモコン?」

 

「あ!ここに来た初日にモノクマが用意していました!格納庫内どこからでもプレス機を操作できるらしいです。」

 

「それが現場にあった。つまり、犯人が操作台で操作する必要はなかったってことっす。」

 

「でも、どちらにしても格納庫内からしか操作できない?」

 

「それでも、入り口近くからなら逃げる時間を確保できるよ。」

 

「じゃあ、クロはプレス機のリモコンを操作して起爆したんだね。」

 

「でも…郷田君が言う通り、哀染君の自殺ってことはないの?それなら…おしおきもないでしょう?」

 

「あ…そ、そうですね!リモコンを使ったのも哀染先輩で…リモコンは爆風で飛ばされたんですよ!」

 

「でも…哀染お兄ちゃんが自殺なんて…。」

 

「……。」

 

「…少なくとも、哀染君の死亡推定時刻の直前まで、哀染君以外の人が格納庫にいたんだよ。」

 

「…入り口センサーの記録から分かるっすね。」

 

01:49 in

02:13 in

02:43 out

 

「01:49と02:13は哀染君と誰かが中に入った時間。02:43は、その誰かが格納庫から出た時間っすから。」

 

「…そう。この中に、いるのよねぇ。」

 

「それじゃあ…その人と哀染クンの間に何があったんだろう。哀染クンが用意した爆弾を…その人が爆発させたなら。」

 

 

(また、裁判場が一瞬 静かになる中、わたしの視界には白黒がモゾモゾ身動きしているのが映った。『今だ』と言わんばかりのモノクマに言葉を投げる。)

 

「……モノクマ、そろそろ いいんじゃない?」

 

「ん?」

 

「捜査時間に言ってたよね。爆発前の写真があるって。」

 

「……。」

 

「あー、あれ?ハイハイ。忘れてたよ。」

 

(絶対 嘘だ。)

 

(モノクマの「モノクマファイルに追加したよ」の一言で、全員が一斉にモノクマファイルを開く。)

 

(モノクマファイルには、鮮明とは言えない写真が追加されていた。そこには、プレス機を背に倒れた血塗れの青年。)

 

(白いアイドル衣装を血で汚した哀染君が写っている。)

 

「哀染君…。」

 

「あ…哀染…先輩が…。」

 

「……やっぱり、本当に…お兄ちゃんは…。」

 

(写真を一瞥して、天海君が苦々しい声を、哀染君のクラスメイトたちが落胆の声を上げた。)

 

(どんな証拠があっても、どこかで生きているという望みは捨てられない…それが、今、覆された…そんな顔だ。)

 

「クソが…!モノクマ、テメー!こんなんあんなら最初から出しやがれ!!余計に落ち込んじまっただろーが!」

 

「この写真があれば、最初の『被害者は誰か』という議論は必要なかった。」

 

「本当に忘れてたのかしら?ワザとなら性格悪いわねぇ。」

 

「うるさい うるさーい!」

 

(集まる非難の目を物ともせず、モノクマは両手を掲げて捲し立てた。)

 

「裁判モノってのは、捜査 終わっても一定の謎を残さなきゃなの!後出し情報 必要なの!でなきゃオマエラ、簡単すぎだのクロすぐ分かっただの言うだろ!」

 

「これだから、産みの苦しみも知らずにメタ推理でドヤ顔してるヤツは…!」

 

「何を言ってるのかしらぁ。」

 

(モノクマのメタ発言が増えてきた。…これは、きっと6章のための布石。)

 

(ーーじゃあ、『V2』も6章で明かされる真実も”フィクション”?……前のステージにあった”世界の秘密”から考えても、そうなんだろうけど…。)

 

(『V2』と『V3』が同じ展開なのは違和感しかない。)

 

「とにかく…新しい情報が出たっすから、それを元に話し合いましょう。」

 

(もう1度、写真を眺める。胸や首を中心に血塗れの服。プレス機の台を背にした身体。彼の近くにヘッドホンやシュラスコ串が落ちている。)

 

(写真の下に記載された撮影時間は02:44。見たところダイイングメッセージらしきものは まだない。)

 

 

 

ノンストップ議論2開始

 

「あ、ねえ、この写真にはダイイングメッセージがないよ。」

 

「あらぁ?本当ねぇ。えぇと…写真の時間は02:44ね。」

 

「メッセージは哀染クンが残したという話だったけど…写真の彼に地面を彫ることができるかな?」

 

「確かにな。あれだけ硬い床に深く刻むにゃ、ある程度の力がいる。」

 

「や…やはりメッセージは別人によるものではないですか!?直前まで格納庫にいた犯人が偽装したんです!」

 

 

【入り口センサーの記録】→硬い床

【プレス機】→犯人が偽装した

【入り口センサーの記録】→犯人が偽装した

 

 

 

「つまり白銀先パイが偽装したということですね!?」

 

「…してないよ。」

 

 

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「それは違うっす。」

 

「この哀染君の写真が撮られた時間は02:44。この時点でメッセージが書かれてないってことは、誰もメッセージを偽装することはできないよ。」

 

「そういや、入り口センサーには2:43に誰かが格納庫を出てるってことになってたな。これが犯人のはずだ。」

 

「つまり…この写真の時間には犯人は格納庫を離れている?」

 

「……やっぱり、あのメッセージが書けたのは…哀染君だけってことっすね。」

 

(天海君が呟くように声を吐き出した。)

 

「じゃ、じゃあ、哀染お兄ちゃんは犯人にやられて…力を振り絞って、あたし達にメッセージを残したんだ。」

 

「一体、何があったのかしら。」

 

「哀染先輩、血塗れですね。爆発前に…犯人に傷付けられて…逃げる力もなく、爆発に巻き込まれたんでしょうか…。」

 

「哀染クンが爆弾を持ち込んだのに?それに、こんな出血で…地面を彫ることなんてできるのかな…。」

 

「そうねぇ。それに哀染君は私の子守唄の入ったプレイヤーとヘッドホンを持っていて、相手を簡単に無力化できたはずよねぇ?」

 

「……。」

 

「モノクマファイルには一次爆傷で即死としかなかった。写真じゃ、こんなに血が出てんのによ。オイ、モノクマ!この死因、嘘じゃねーだろうな!?」

 

「ハア〜。ボクを嘘吐きにしたいヤツ多すぎて、くまいっちんぐ学園長先生だよ。もちろん、モノクマファイルに嘘偽りはございませーん。」

 

「爆発で即死する前に血に塗れてようと、ドロに塗れてようと、知ったこっちゃないよ!」

 

(…そういえば、モノクマファイルには『外傷はない』という記載もなかった。前回はあったのに…というか、星君の時すら『外傷があるか不明』とあった。)

 

「でもでも、犯人は何で わざわざ格納庫を爆発させた?」

 

「そうねぇ。写真みたいに出血していたなら…ほっておくだけでも、哀染君は亡くなったはずよねぇ。」

 

「証拠隠滅じゃないでしょうか!全部 吹っ飛ばしちまえ!といった感じで!!」

 

「だとしたら、ずいぶん投げやりなクロだな…。哀染が爆弾を持ち込んだんだろ?たまたま爆発しちまったんじゃねーのか?」

 

「…事故ってこと?哀染お兄ちゃんが妙ちくりんな道具と爆弾を格納庫に持ち込んでたから…。」

 

「……。」

 

「1つ、哀染君の持ち物か分からないものがあったっすね。」

 

(哀染君のものか、わたし達が分からなかったもの。それは…。)

 

 

1.【ヘッドホン】

2.【焦げたボール】

3.【音楽プレーヤー】

 

 

 

「……それは、哀染お兄ちゃんの持ち物だって話だったよね?お姉ちゃん。お耳にギュウギュウに詰まった呪いのイヤホン、取ろうか?」

 

「くぎゅう…。」

 

 

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「天海君が言ってるのは…格納庫にあった、焦げたボールだよね。」

 

「そ、そういえば…あれ、何だったんだろ?前に格納庫を調べた時はボールなんてなかったよ。」

 

「うん、あれは、このステージにあったものだよ。」

 

(そして、セオリー的に わたし達が1度は目にしているもののはず。)

 

 

 

閃きアナグラム スタート

    ス                  ボ

                  ー                          テ

ニ                                                               ル

 

閃いた!

 

 

 

テニスボールだと思う。」

 

「テニスボールだぁ?」

 

「ボクがショーで使った?」

 

「テニスボールが、どうして現場に?」

 

「スカッシュでもしてたんでしょうか?」

 

「ラケットもないのに?」

 

「じゃ、じゃあ壁打ちキャッチボールとか!」

 

「激しく動いた後なら死亡推定時刻を偽装できるって、ローズさん言ってたわよ。」

 

「だから、何なの そのローズお姉ちゃんの物騒な知恵袋シリーズ。」

 

「ええと…哀染クンの死亡時刻をゴマかすためにボールを使った…?」

 

「夜中なんて誰もアリバイがないっすから…それは考えにくいっすね。」

 

「なら、ボールを何に使うんだよ?」

 

「……。」

 

(現場にあったボールは特殊な使い方がされた。考えられるのはーー…)

 

 

1. ラケットなしスカッシュをするため

2. ジャグリングをするため

3. 脈を止めるため

 

 

 

「ああ、ボールひとつで何だってできる。ボールだけが友達ってヤツもいるからな。」

 

「『ボールは友達』と『愛と勇気だけが』が混ざってない?」

 

 

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「ボールは…脈を止めるために使われたんじゃないかな。」

 

「脈を止めるって…?」

 

「圧迫止血法だな。出血を止めるためによくやる。」

 

「血を止める?」

 

「うん。テニスボールを脇に強く挟み込むと脈が止まるんだ。死んだフリでよく使われる手法だよ。」

 

(”超高校級のテニスプレイヤー”のためのボールが そんな使われ方をするなんて、チームダンガンロンパも思ってなかっただろうけど。)

 

「死んだフリって……え?で、でも、首とか胸とか触ったら死んでないの、すぐ分かるよね?」

 

「た、確かに!」

 

「まぁ…死んだフリに使うとしたら、一か八かって感じはするっすね。」

 

「言ってはならないことを言ったね!ミステリのお約束を馬鹿にしたね。そんなの上手くいくのはフィクションぐらい。ご都合主義も大概にせいって。」

 

「そこまでは言ってない。」

 

「…それなら、首や胸を触らないようにしたらいいんだよ。」

 

「首も胸も触らないって…それじゃ、つむぎお姉ちゃんを気持ち良くさせられないじゃん!」

 

「何の話!?……えーと、写真を見てよ。哀染君は首も胸も血塗れだよね。」

 

「だから何だ?」

 

「ああ…もし目の前で倒れた人が この状態なら、無意識に血を避けて手首で脈を取るかもしれないっすね。」

 

「あ?何 言ってんだ?首と胸が血塗れなら止血のために首と胸を抑えんだろ。」

 

「えーと…特殊な訓練を受けた人以外の話で…首元の脈や胸の鼓動を確認したくても、そこが汚れてたら、手で脈を取るよね?」

 

「まず動揺して脈を取ったりもできないわぁ。」

 

「うん。それが普通。」

 

「というより…さっきから急に何の話なんですか?まるで…」

 

「まるで哀染お兄ちゃんが死んだフリでもしてたみたいに聞こえるけど…。」

 

「……。」

 

(ーーそうだ。哀染君が爆弾の他にもテニスボールも持ち込んでいたなら。)

 

「哀染君は、自分を死んだように見せかけたんじゃないかな。テニスボールを使って。」

 

「はああ?何言ってやがるんだ!?」

 

「死んだように見せかけたも何も…写真の時点で哀染先輩は死にかけてるじゃないですか!」

 

(裁判場に動揺の声が響く。みんなが真相に近付いたのを感じて、わたしは深呼吸した。)

 

「今回、モノクマファイルには『外傷がない』とか『外傷があったかは不明』とかも書かれてなかったんだよ。」

 

「前回は…山門さんやローズさんのは書いてあったのに。これは、外傷があるかないかモノクマは隠したかったってことじゃないかな。」

 

「でも、つむぎお姉ちゃん。外傷があるとかないとか、隠すとかフリとか…意味 分かんない。」

 

 

 

ノンストップ議論3開始

 

「外傷を隠すも何も、哀染お兄ちゃんは血塗れじゃない。身体からドバドバ血が出たってことでしょ?」

 

「それとも、哀染お兄ちゃんがアイドルらしからぬ妄想でモンモンして鼻血ブーッて噴いたっていうの?」

 

「いや、鼻血で あんな致死量の出血はねぇよ。」

 

「まさかのマジレス。」

 

「死んだフリも無理よ。輸血パックや動物の血で偽装できるならまだしも、血を偽装できるものもないわ。」

 

「…それもローズサンの知恵袋?うん、スタジオみたいな部屋にもなかったよ。」

 

 

【5階の薬品】→致死量の出血

【5階の薬品】→血を偽装できるものはない

【メカメカしい部屋の爆弾】→血を偽装できるものはない

 

 

 

「死を偽装…なんだかミステリーみたいね。恋はミステリー、人は胸に寂しい謎を隠して生きている…。」

 

「JASRAC…と言いたいところだけど、今更感がすごいから『愛されるよりも愛したい』もお願い!」

 

 

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「それは違うっす。」

 

「確かに、輸血パックとかはなかったけど…5階のノスタルジックな部屋の薬品棚のひとつに、生臭くてドロっとした血の色の薬品があったよ。」

 

「写真の血に見えるものが その薬品の可能性はあるっすね。」

 

「うん。5階の薬品棚から確かになくなってたからね。」

 

「そうだったのねぇ。」

 

「で、でも、そんな薬品も薬品を入れた容器も現場に残ってなかったよね?」

 

「爆発してるからな。粉々だろうな。」

 

「でも…その偽装は犯人の仕業?それとも…哀染クンが…?」

 

「それはーー…」

 

 

1. 哀染

2. クロ

3. 第三者

 

 

 

(あれ…?何の話だったっけ?)

 

(…こんなモノタロウみたいなキャラ設定じゃなかったはずだよね。考え直そう。)

 

 

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「哀染君だよ。爆弾の貸出機に残ったIDと同じものが薬品棚のにも残っていたから。」

 

「哀染お兄ちゃんのIDだっていうの?」

 

「爆弾を持ち込んだと考えられるのは哀染君だから…薬品を持ち出したのも、彼のはずだよ。」

 

「えっと…哀染先輩は何がしたかったんでしょう!?自分たちを欺くため…なわけはないし。」

 

「モノクマの写真がなければ俺たちは爆発前の哀染君の状況も知ることはできなかったはずっすからね。」

 

「っつーことは…」

 

「哀染クンの血の偽装は…格納庫で会った相手のために…?」

 

「哀染君…何を考えていたのかしら?」

 

(裁判場を、また重苦しい沈黙が支配した。何度目だろう。被害者の行動の意味を推測できずに、みんな黙り込んでいた。)

 

(そんな中、)

 

 

「……分かりましたよ。」

 

(真剣な声が裁判場に静かに響く。彼の珍しい声色に、妹尾さんが戸惑いの表情を見せた。)

 

「そ、そんな…前谷お兄ちゃんが…やかましくないなんて…。」

 

「妹尾先パイ…自分は哀染先輩に信じていただいた自分を信じます…。自分たちなら絶対…必ずや真実に辿り着けると。」

 

「哀染先輩が自分たちに言ってるんですよ。協力して真実を見つけ出せ…と!!うおおおおおー!!!」

 

「あ。やっぱり やかましかった。」

 

「で?何が分かったんだよ。」

 

(前谷君は大きな身体を反り返らせて自信満々に言った。)

 

「自分は哀染先輩のクラスメイトだから分かりました…。」

 

「哀染先輩は…相手に血を見せて驚かせようとしたんですよ。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……えーと…どうして?」

 

「やはりアイドルの本分じゃないでしょうか。人を笑顔にしようという。ほら、人は驚きすぎると笑うしかありませんから!」

 

「…それは人によらない?」

 

「笑顔にすんなら、哀染も違うやり方を選ぶだろ。夜中に死んだフリ見て笑顔になるヤツなんていねーよ。」

 

「ボクなら満面の笑みですけどね。」

 

「きっと哀染先輩は相手を笑顔にさせたかったけど、笑顔のさせ方を360°間違えた お茶目な天然さんだったんですよ!」

 

「そして…相手は笑顔どころか、気絶してしまった。つまり、哀染先輩と一緒に格納庫にいたのは女性です!」



「……。」

 

「……。」

 

「天然は前谷クンじゃないかな?」

 

「……前谷君。そう思う理由も聞いていいかな?」

 

「え?ほら、血を見て気絶するなんて女性らしいというか…。」

 

「……。」

 

「血を見て気絶するのは女性って…本当に そうかしら?」

 

「前谷お兄ちゃんってホント、何にも分かってないよね。」

 

「ホギャア!」

 

「現代の男女どちらが血に慣れてるかなんて言うまでもないからね。『血を見て気絶する女』ってフィクションだけだよね。」

 

「……。」

 

「前谷お兄ちゃんが自信を持てるのは体の強さと優しいところだけで、推理力じゃなさそうだね。」

 

「ありがとうございます!」

 

「後半部分 聞いてた!?」

 

「でも、血の偽装が相手を驚かせるため…というのはあるかもよ?」

 

「相手を驚かせて隙をつくとかか?」

 

「いえ、哀染君には子守唄があったっす。相手の隙をつくなら子守唄だけで十分っすよ。」

 

「血の偽装までする必要はないはずよねぇ。」

 

「…あ!そうですね、気絶させるまでもないです!」

 

「……。」

 

 

「子守唄と血の偽装は、別のタイミングで行われたんじゃないかな。」

 

「…どういうことっすか?」

 

「例えば、格納庫に来た人を哀染君が子守唄で眠らせた。その後、その人が目を覚ましたら、目の前に血塗れの哀染君がいて、脈がない。」

 

「ーーそんな時、みんななら どうする?」

 

「誰かを呼びます!!」

 

「…そうだな。もし死んでると確認したら…人を呼ばなきゃならねぇだろうな。」

 

「……うん。1人なら怖くて…その場を離れる…と思う。」

 

「……。」

 

「その場を離れさせるために、哀染君が死んだフリをしたというのかしら?」

 

「でも、すぐ その場を離れるかなんて…分からないよ?」

 

「すぐ離れるかどうかは…関係なかったんだよ。」

 

「……。」

 

(哀染君の目的は相手を格納庫から出すことだった。それによって、プレス機が作動して爆発が起こるようにしたのなら。)

 

(ある意味、人を組み込んだルーブゴールドバーグマシンだ。)

 

「……。」

 

「人が格納庫から出ることで、自動で爆弾が爆発する装置があったとしたら?」

 

「え?何それ?」

 

「そんな装置あったんですか!?」

 

「それはーー…」

 

 

1. シャッターセンサーにプレス機リモコンを設置

2. シャッター開閉ボタンにプレス機リモコンを設置

3. プレス機操作台にシャッター開閉ボタンを設置

 

 

 

「プレスって、いいよね!5章!って感じ!歴代プレスヒロインのおせんべいとか出したら売れるんじゃないかな!」

 

(最悪だよ。)

 

 

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「プレス機を昇降させるリモコンをシャッターの開閉ボタンに付けるんだよ。上下を反対にして。」

 

「ああ!?どういうことだ?」

 

「リモコンはボタンを押すと裏側にボタン部分が押し出される構造だったよ。だから、それがシャッター入り口の開閉ボタンに重ねられていたら…。」

 

「格納庫から出るために押したボタンで、プレス機が作動するのね。」

 

「リモコンを上下反対に取り付ければ…格納庫のシャッターを開けた人間がプレス機の『降』ボタンを押したことになるっすね。」

 

「えっ…それって。」

 

「犯人は…それを知らずに格納庫から出るためにボタンを押した…?」

 

「何だそりゃ!?一体、誰がンなイタズラしたんだよ!?」

 

「……イタズラなんかじゃないよ。これは、綿密に計画されたことなんだから。」

 

 

▼ボタンを偽装したのは?

 

 

 

「えーと、えーと…何でどうして?混乱してるよ。」

 

「奇遇だね。わたしもだよ…!」

 

 

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「哀染君しかいないよ。爆弾を持ち出したのは彼なんだから。」

 

「もう…訳わかんないよ…。」

 

「つまり、どういうことなの?」

 

「……。」

 

「哀染君は誰かと格納庫で会い、その人物はプレス機を作動させて爆弾を爆発させた。でも、それは哀染君自身が仕組んだことだったんだよ。」

 

「哀染君は格納庫で待ち合わせた人物を子守唄で眠らせた後、プレス機に爆弾を設置し、シャッターを閉じた。」

 

「そして、シャッターの開閉ボタンにプレス機のリモコンを設置した。さらに、薬品を自分に撒いてテニスボールを脇に挟み、死んだように偽装した。」

 

「やがて眠らされた人物が起きて哀染君を発見する。その人はシャッター『開』ボタンを押して外に出たけど…それはプレス機の『降』ボタンでもあった。」

 

「…そして……爆発で哀染先輩は…」

 

「……。」

 

「そんなの…おかしいよ。そんな分かりにくいこと…なんで哀染お兄ちゃんがするの?」

 

「そうだ!死んだフリして殺されるって…何なんだよ!?意味が分からねぇ!つーか、そいつが犯人なら完全にハメられてんじゃねーか!」

 

「哀染先輩は人を陥れるような人じゃありませんよ!」

 

「……。」

 

「哀染君が一連の行動を起こしたなら…理由があったはずだよね。」

 

(それが、今回の動機なんだ。)

 

 

1. “嘘吐き”を暴き出そうとした

2. 目立とうとした

3. 5章らしい被害者になろうとした

 

 

 

「何を言ってるか…分からないっすね。」

 

(過去イチ苦々しい表情で。)

 

 

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「哀染君は嘘吐きを探してたんだよ。」

 

「嘘吐き…?」

 

「モノクマが言っていた…首謀者?」

 

「正確には、モノクマは『首謀者がいる』とは言ってなかったけど…。哀染君は、”嘘吐きさん”を暴き出そうとしたんじゃないかな。」

 

「そいつが本当に首謀者だったかどうかは置いておいて…ね。」

 

(モノクマが わたしを見ながらニヤニヤ笑ってから、肩をすくめた。)

 

「ハアー。また このパターン。何回やっても5章が似たようなパターンになるのは書いてるヤツの技量不足ですね。」

 

(5章は真実に近付くための章だからね。)

 

「おい、どういうこった。哀染は怪しいヤツを呼び出して、そいつに殺されるように仕向けたっつーことか?」

 

「ダイナミック自殺だったって言うの…?でも…一体、誰が…?」

 

「まさか、クロは自分の犯行に気付いていないのでは?みなさんの中に、心当たりがある方はいらっしゃいませんか!?」

 

「爆発が起こってるのに、気付かないはずないじゃん。」

 

「それに、その人が本当に首謀者だったりしたら…絶対 自首はしないわよねぇ。」

 

「で、でも!もし、この裁判で犯人が首謀者なら…一石二鳥です!ポジティブシンキングですよ!」

 

「それってポジティブかな。」

 

「……。」

 

 

「えーと、えーと、犯人が分かりそうなものは…」

 

「やっぱ、あのダイイングメッセージだろ。」

 

「でも、全部 哀染君が仕組んだなら…もう少し分かりやすく教えてくれてもいい気がするわよねぇ。誰も解けないメッセージは あまり意味がないわぁ。」

 

「確かに。伝わらない文章ほど残念なものはないよね。」

 

(ーーそうだ。あのメッセージには…まだ謎が残されている。)

 

「……。」

 

(わたしは、モノクマファイルを開いてメッセージを確認した。)

 

(画面の表示と共に、また違和感に襲われる。捜査時間に感じた違和感。その正体に気付いた途端、才囚学園に戻った日の記憶が蘇ってきた。)

 

 

「トリプルセブンってなんだ。」

 

「え?それはセブンがトリプルでーー…」

 

「だから、トリプルって何か聞いてんだ。」

 

「嘘でしょ、郷田お兄ちゃん。」

 

「郷田クンの弱点は英語。仕方ない。」

 

「うるせーな。ステージとかシルバーとかはヤマトナデシコに聞いて知ってる。」

 

「トリプルセブンは これっすよ。『7』が3つ揃う…ここのカジノのスロットは5つ揃える必要があるんすけど。」

 

(そう言って、天海君は机の上にあったシャーペンと紙でトリプルセブンを図に描いて見せた。)

 

「あ?何だ こりゃ?」

 

「あ、これは海外の書き方ですね。」

 

「ああ、そうっすね。向こうだと『1』と間違えやすいのでーー…」

 

 

「……。」

 

(あのメッセージが…哀染君じゃなくて、第三者のメッセージだとしたら?)

 

(ーーそうだ。メッセージは ところどころ太さが違う。まるで、元々あったメッセージの上から彫ったみたいに。)

 

(だとしたら、誰かが爆発後…シャッターが閉じた後に、格納庫内に入ってメッセージを偽装したことになる。)

 

(ーーでも、格納庫に入ることなんてできる?入り口のシャッターが開かないのに。)

 

(それに、格納庫の入り口付近は真っ黒になっていたから、足跡も残るはず。現場にはそれらしい足跡なんて残ってなかった。)

 

「……。」

 

(ーーううん。1人だけ…それができた人がいる。)

 

 

 

ブレインサイクル 開始

 

Q. 爆発後に格納庫に入れた人物の侵入経路は?

1.トイレ側の天井付近の穴

2.シャッターの隙間

3.隠し通路

 

Q. 格納庫内に侵入した時、何を使った?

1.シュラスコ串などのキッチン用品

2.彫刻刀などのクラフト用品

3.ピッケルなどのクライミング用品

 

Q. メッセージを偽装したのは?

1.哀染 レイ 2.天海 蘭太郎 3.妹尾 妹子

 

繋がった!

 

 

 

「……。」

 

(ダイイングメッセージの『7』…あれは、前谷君が言ってた海外での書き方だ。)

 

(それに、あのメッセージの太さが違った理由。それは きっと、哀染君が残したメッセージの上から彫ったから。5階のクライミング道具で。)

 

(たぶん、哀染君がメッセージを彫ったシュラスコ串が見つからず、自分の持っていた道具を使うしかなかったんだ。)

 

(だから、シュラスコ串の残骸を見つけた時ーー…)

 

 

「これ…こんなところにーー…」

 

 

(クライミング道具やロープ、専用シューズを使えば、爆破でデコボコになった格納庫のトイレ側の壁を登って、格納庫内に入ることができる。

 

(そんなことができるのはーー…)

 

 

「……。」

 

(隣の天海君を盗み見る。彼は口を引き結んで黙っている。)

 

(やっぱり…あのメッセージに手を加えたのは…彼だ。)

 

(どうして、そんなことを?彼が、この事件に関わっているってこと…?)

 

「……。」

 

(でも、天海君はクロじゃない。)

 

(ーーこれは、『ダンガンロンパV2』なんだから。)

 

(彼がクロじゃないことは、わたしが よく知っている。)

 

(この状況からクロを示す。哀染君の行動…彼の思惑から探ればいい。)

 

(ジワリと手のひらに汗が滲む。わたしは真っ直ぐモノクマを見据えた。)

 

 

 

学級裁判 中断

 

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