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第◆章 047は∞度фぬ 学級裁判編Ⅲ

 

学級裁判 再開

 

「……。」

 

天海君が現場を偽装した。)

 

(わたしは意外な気持ちで彼の横顔を盗み見た。)

 

(なぜ?どうして?『ダンガンロンパV2』で彼が そんなことをするはずないのに。)

 

 

「ね、ねえ、つむぎお姉ちゃん!哀染お兄ちゃんは一体…誰を嘘吐きだと思ったの!?」

 

(問いかけられて、思考を隅に追いやる。天海君のことは、今 裁判を進めるのにはノイズになるだけだ。)

 

(みんなに視線を戻して、わたしは言った。)

 

「哀染君は“イレギュラー”について話してたよね。」

 

「イレギュラー…。」

 

「あ!木野先パイが画策していたという…!」

 

「あのチビ…木野が最初のステージで凶器隠したり、体育倉庫の封鎖を解いたんだったな。」

 

「それだけじゃない。木野さんは裁判を複雑化させるような事件を起こした。3つ目の事件と…4つ目の事件も。」

 

「でも…哀染君がイレギュラーを探していたというのは どういうこと?木野さんは亡くなったのよ?」

 

「哀染君は、木野さんがイレギュラーって話は信じてなかったっすからね。」

 

「そっか…。モノクマの首謀者の話を聞いて、やっぱりイレギュラーは木野お姉ちゃんじゃないって思ったのかも。」

 

「それで首謀者を探して…哀染先輩は殺されてしまったんですねっ!」

 

「……イレギュラーが首謀者かどうかは置いておいて…彼が首謀者だと思ってた人…哀染君がイレギュラーだと思った人を探せばいいんだよ。」

 

「探せば…と言ったって…。」

 

「どうやって?」

 

「みんなで、これまでの事件を振り返ってみようよ。」

 

「……。」

 

 

「初めのステージで殺されたのは、アイコお姉ちゃん。クロは永本お兄ちゃんだったね。」

 

「永本君が使った凶器はクレーン車っす。体育倉庫の凶器は使われなかったっすね。」

 

「あいつ…永本は体育倉庫の封鎖を解いたりしてねーって言った。」

 

「それで、木野サンがしたんだろうと予想したね。」

 

「…1つ目のステージの体育倉庫…イレギュラーは どうやって封鎖を解いたんだろう。」

 

「あの体育館の扉は鎖でジャラジャラにして、南京錠まで掛けた。」

 

「ああ。その鍵はオレと芥子と前谷で川に捨てたな。」

 

「木野先パイには南京錠を素手で割り開けるような力ないですよね!?」

 

「みんな ないよ!」

 

「体育倉庫の封鎖が解かれたのは…。」

 

 

1. 鍵が使われた

2. モノクマに頼み込んだ

3. 錠を こじ開けた

 

 

 

「そんなチカラのある人…相当な手練れとお見受けします!想像ですが!」

 

(ケンシロウ様的な人を想像してるのかな。)

 

 

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鍵を使ったんだよ。」

 

「だから、鍵はオレらが捨てたって言ってんだろ。」

 

「間違いないですよ。この目で しかと見ましたから!」

 

「木野さんだったら、錠を溶かしたりして外せたんじゃないかしら?」

 

「あ、宿舎には、それぞれ才能に合った道具が置かれてたよね。」

 

「ボクの部屋にはディアボロがあったよ。」

 

「…木野さんの部屋に金属を溶かすような化学薬品があって、それを使った可能性は…あるかもしれません。」

 

「……体育倉庫の錠は こじ開けられたり溶かされたような跡はなかったよ。」

 

「それに、木野さんが実験で篭りがちになったのは2つ目のステージからだったよね?1つ目のステージには、そんな薬品なかったんじゃないかな。」

 

「そういえば、木野先パイは1つ目のステージから移動する際、大荷物じゃありませんでしたね!」

 

「…イレギュラーは川から鍵を探し出して使った。そう言いたいんすか?」

 

「そんなこと、できるかなぁ?ドラマとかでは落とし物を必死に探し出して見つけて仲良くなる〜みたいなの よく見るけど。」

 

(…フィクションだから、ここでもできるよ。)

 

「じゃあ、木野が一晩 死に物狂いで川を漁ってたってことか?」

 

「服も体も汚れそうねぇ。木野さん、その日の朝にお風呂に入ったのかしら。」

 

「えーと…とりあえず、木野さんかどうかは置いておいて。2回目の事件は どうだったかな?」

 

 

「次の被害者は祝里サン。そして、クロも祝里サン。彼女は自分で胸に鎌を刺した。現場にクギで打たれたワラ人形があって…呪いの儀式みたいだったね。」

 

「祝里は呪いでモノクマを殺そうとしたが失敗した。それで、自分で死んでコロシアイを終わらせようとしたんだ。」

 

「才能証明書が嘘なら、モノクマが嘘を吐いたことにできるからねぇ。」

 

「でも、木野お姉ちゃんが現場に入ってて、モノパッドの場所とか変えちゃってたんだよね。」

 

「事件の謎は全て解けましたよね?」

 

「……ひとつ。」

 

「ひとつ、事件現場に残ったもので出どころがハッキリしないものがあったっすね。」

 

(2つ目の事件で出どころが分からなかったものはーー…)

 

 

1. ろうそく

2. ワラ人形

3. クギ

 

 

 

「やっぱり、お姉ちゃん…記憶喪失体質なの?」

 

「体質ではないよ。」

 

 

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「現場には祝里さんの呪いの儀式の跡が残ってた。ワラ人形がクギで壁に打ち付けられてて…ろうそくが立てられてたよね。」

 

「ろうそくは鉱山のものねぇ。ワラ人形は、祝里さんが最初のステージから持ってきたって話だったわね。」

 

「うん。だとしたら、クギは…どこから出てきたんだろうね。」

 

「……。」

 

「祝里さんが最初のステージから持ってきた可能性もあるけど…モノクマはクギについては何も言わなかったんだよ。」

 

「祝里サンや木野サンなら作れるかも?」

 

「いや、金属の加工ができたのはオレの宿舎だった鍛冶場だけだ。あいつらは来てねぇ。」

 

「……。」

 

「ええと、白銀先パイ。これは話し合っていたら答えが出るんでしょうか?」

 

「…そうだね。これだけじゃ、まだピースが足りないみたい。それじゃ、3回目の事件はどうかな?」

 

 

「3回目の事件の被害者は木野先パイです。自分で毒を飲み、それを発見した松井先輩が木野先パイの首を締めました。」

 

「…その松井君も、裁判中に毒で亡くなったわ。クロは…佐藤君だったわね。」

 

「えっと…あの事件について考えて…哀染お兄ちゃんがイレギュラーだと思った人が分かるの?」

 

「分かるはずだよ。じっくり考えて、真実を見つけるんだよ。」

 

「……。」

 

「木野さんが毒を飲んだ茶筒っす。」

 

「え?」

 

「あの茶筒はフタが深くて、木野は それを利用したって話だったな。それが何だよ。」

 

「あの茶筒はステージに元からあったものじゃなくて…どこかからか持ち込まれたもの。天海君は そう言いたいんだよね。」

 

「……。」

 

「そういえば、見覚えがあるわねぇ。」

 

「でも、あれは事件前、3つ目のステージの道具屋にあったよね?それで見覚えがあっただけじゃない?」

 

「ううん。あれは、それより前に持ち込まれたものだよ。天海君、夕神音さん、妹尾さん、前谷君には分かるはずだよ。」

 

「あれがあったのはーー…」

 

 

1. 1つ目のステージ 給食室

2. 2つ目のステージ キッチン

3. 2つ目のステージ 牧場

 

 

 

「なかったわぁ。」

 

「断言できる?実は どこかに隠れていたのかも?」

 

「いいえ。なかったわぁ。」

 

 

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2つ目のステージ宿屋キッチンにハーブティーがあったよね。ハーブティーが入っていたのは、あの茶筒だよ。」

 

「あ…。そうね。私はローズさん達とハーブティーを淹れた時に見たわ。」

 

「あ、あたしも。前谷お兄ちゃんと哀染お兄ちゃんとキッチン入ったから……。」

 

「自分も、その前からキッチンに入ってたので見てます。すみません!今まで気付きませんでした!!」

 

「俺も…クラスメイトの動機が発表された時に白銀さんとキッチンに入ったっすね。」

 

「で、その茶筒が何だってんだよ。」

 

「木野サンが たまたま茶筒を使っただけ…だよね?」

 

「……。」

 

「そうだとしても、それもイレギュラーの行動のひとつだと哀染君が思っていたのかもしれないよ。じゃあ、4回目の事件については、どうかな?」

 

 

「前のステージだな。まず、ヤマトナデシコが発見された。体調が悪かった あいつは…オレらを地下に行かせるために木野の薬を飲んだ。」

 

「実際には薬といっても、安楽死薬だったのよねぇ。そして…その山門さんを助けようとしたローズさんも…亡くなったわ。」

 

「山門先パイは自室で、ローズ先パイは地下で発見されました。第一発見者は白銀先パイですよね?」

 

「……4回目の事件は木野お姉ちゃんがクロってことになったよね?や、やっぱり…イレギュラーは木野お姉ちゃんなんだよ!」

 

「わ、びっくりした。」

 

「何だテメー、急に大声出しやがって!死んだヤツらの話すんのが辛くなってきたなら言え!休憩するぞ!」

 

「……。」

 

「つむぎお姉ちゃん、もう止めようよ!哀染お兄ちゃんがイレギュラーだと勘違いした人がいたとしても…今回も、おしおきなんてないんだよ!!」

 

「せ、妹尾先パイ?どうしたんですか?」

 

「あからさまに様子が変ねぇ。」

 

「……4回目の事件には、おかしいことがあったんだよ。」

 

 

1. 第一発見者が何かを隠している

2. ローズが持っていた『ハトドケイ』のメモ

3. ローズの部屋に隠されていた山門の遺書

 

 

 

「……そう。全て おかしかったんだよ。」

 

「つむぎお姉ちゃん…?」

 

「……そうでしょ?天海君?」

 

「……。」

 

(わたしが隣に視線を向けると、彼は苦々しい顔を浮かべた。)

 

「おかしいことなんてないよ!」

 

「妹尾先パイ、どうしたっていうんですか?」

 

「何か知ってるの?」

 

「え?そうなの?」

 

「まさか…テメーが哀染にイレギュラーだと勘違いされたのか!?」

 

「……ちが、」

 

 

「…ローズさんが残したという『ハトドケイ』のメッセージっす。」

 

「え?」

 

「あ、自分が前回の捜査時間に白銀先パイの目を盗んで、ローズ先パイの手から抜き取ったペン書きのメッセージですね!!」

 

「胸を張るな胸を!で 天海、メッセージが何なんだよ。」

 

「…鳥が出てくる時計をハト時計と言いますが、ローズさんの国ではカッコウ時計なんすよ。」

 

「そういえば、ローズさん言ってたわねぇ。『カッコウが鳴いた』って。」

 

「そ、それが?ローズお姉ちゃん達の事件は解決したんだよ!今さら そんなウンチク言われたって面白くないから!ワクワクゲラゲラなんだから!!」

 

「妹尾さん、落ち着いて。面白そうになってる。」

 

「……。」

 

「ローズさんが『ハトドケイ』と書くのは おかしいんすよ。あのタイプの時計をハト時計と呼ぶのは、この国でだけっすから。」

 

「あ?何でだよ?」

 

「理由は後から山門さんに聞いたんすけど、カッコウは閑古鳥…時計を売る際に閑古鳥が鳴くと良くないからだそうっす。」

 

「あらぁ。それも忌み言葉の一種かしらぁ。」

 

「えっと…それで、天海先輩は、あのメッセージはローズ先パイによるものじゃないと…?」

 

「え…どうして前回の裁判中に言わなかったの?」

 

「ローズさんが山門さんに聞いて知っていて、この国の言葉で書いたのかと思ってたんす。でも…」

 

(天海君が、ひどく言いづらそうな顔をする。)

 

「あのメッセージを書いたのがローズさんじゃない場合…イレギュラーが書いた可能性がある。哀染君も、そう考えたんだよ。」

 

「…そんなの!嘘だよ!!」

 

「妹尾先パイ…?」

 

「おい、ローズ以外が書いたメッセージって…オレ達が死体を発見してから前谷がメッセージを見つけるまで そんなことできるヤツいねーだろ!?」

 

「うん。死体発見後、2人ペアになったから。…まさか、あのメッセージは前谷クンの自作自演?」

 

「ち、違いますよ!そんなことーー…」

 

 

「1つ目のステージの体育倉庫。2つ目のステージのクギ。3つ目のステージの茶筒。そして、4つ目のステージのメッセージ。」

 

「……。」

 

「その中に真実が隠されているんだよ。」

 

「……白銀さん。」

 

(隣から、天海君の深呼吸の音が聞こえた。)

 

(彼は わたしに視線を向ける。その瞳には覚悟が宿っていた。)

 

「哀染君がイレギュラーだと思っていた人物は…誰ですか。」

 

 

▼哀染が首謀者と疑った人物は?

 

 

 

「そ、そんな、彼/彼女が疑われているなんて…!耐えられない…!」

 

(外の世界のコメントは いらない。)

 

 

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「イレギュラーは…ローズさんの死体を発見して前谷君がメッセージを発見するまでにメッセージを死体に握らせたことになるっす。」

 

「もし、前谷君じゃないとすると…死体の第一発見者以外…いないっす。」

 

「えっと…あの、自分じゃないです…けど…。」

 

「それに、3つ目のステージで使われた茶筒は2つ目のステージにあったハーブティーの茶筒だったっす。つまり…」

 

ハーブティーを持ち込んだ人…ってこと?」

 

「2つ目のステージで鍛冶場が使えたヤツ…。」

 

「その人が…最初のステージで体育倉庫の封鎖を解いた?」

 

「……。」

 

「……。」

 

「白銀さん。もし…この中にイレギュラーがいるとしたら…キミしかいないっす。」

 

「……。」

 

(みんなの視線を受けて、わたしは”過去”の裁判を思い出していた。)

 

(あの時の”白銀 つむぎ”は、まともな反論をしなかった。『よく分からない』を貫いた。)

 

(ーーこの”白銀 つむぎ”は?)

 

 

「白銀さん。どうっすか?」

 

(どうすべきか、答えは まだ出ない。そのまま、わたしは口を開いた。)

 

「前回、イレギュラーはローズさんの死体を発見した時、2枚の紙を右手から抜き取った。1枚は”世界の秘密”が書かれた紙。」

 

「『ヒロインは退場しなければならない』という?」

 

「うん。そして、もう1枚は…山門さんが郷田君に残した遺書。」

 

「えっ!?自分がローズ先輩の部屋のハト時計から見つけた遺書ですか?」

 

「本当は、地下にローズさんが持っていってたんだよ。あの遺書は一部で、後半に防犯シャッターの使い方とか、死体発見を遅らせる指示があったんだ。」

 

「ええと…でも、『ハトドケイ』のメッセージと遺書の破り跡はピッタリ一致した…けど…。」

 

 

「簡単だよ。白紙の便箋と山門さんの遺書を重ねて破る。それから、白紙の便箋の破った後半部分にハトドケイと書いてローズさんの手に持たせたんだ。」

 

「ハトドケイは筆跡が分からないような書き方をして、ね。」

 

「あ…カタカナ…だったわねぇ。」

 

「外国人にとってカタカナは意外と難しいらしいっす。漢字圏のローズさんが俺たちにメッセージを残すなら…漢字の方が自然っすね。」

 

「うん。筆跡を誤魔化すためだったからね。イレギュラーは、みんなが地下に来るまでにローズさんが持つ紙を回収し、『ハトドケイ』の紙を握らせた。」

 

「そして、捜査時間にローズさんの部屋を調べるフリをして遺書の前半部分をハト時計の中に隠したんだ。」

 

 

(わたしは机の反対側の時計を見上げた。)

 

(前谷君が まだ背を向けているのを確認して、そっとローズさんの手から抜き取った紙を取り出した。)

 

「……。」

 

(紙を手にしたまま考えながら、わたしは時計に手を伸ばした。)

 

 

「あの遺書…続きがあったのか…。おい、それ どこやったんだ!」

 

「前の裁判中ずっと持ってたけど…あのステージの部屋に置いてきたよ。『ハトドケイ』と書いたペンと一緒に。」

 

「……。」

 

「ローズさんは持ち物チェックの時にペンを持ってなかった。でも、ステージの部屋にあったのは鉛筆だったよね。」

 

「イレギュラーはステージにペンやハーブティーを持ち込んだ人物。妹尾さんは、それに気が付いたんだよね。」

 

「だから、様子が…。」

 

「…お姉ちゃんがイレギュラーなんて嘘だよ!イレギュラーなんて…誤解なんでしょ?哀染お兄ちゃんが誤解してたってだけなんでしょ!?」

 

「……。」

 

「哀染君にバレちゃったのは、計算外だったかな。本来なら、もっと遅くにバレるものだったんだろうし。ヒントを残しすぎたよ。」

 

「……お、姉ちゃ…。」

 

「テメー!マジなんだな!?」

 

「哀染君は最初から わたしを疑ってたみたいなんだ。だから、わたしの動向を1人で見張ったり、妹尾さんや前谷君に聞いたりしてた。」

 

「…そういえば…前のステージの話の時、白銀先パイについても色々…。」

 

「彼は、ずっと わたしを観察してたんだよ。わたしを…首謀者だと思って。」

 

「……。」

 

「わたしは格納庫に呼び出されたんだ。深夜にモノクマに部屋をノックされて、格納庫に行くよう誘導された。」

 

「誘導というか、哀染クンがいるよって言っただけなんだけども?彼に頼まれた深夜の簡単なオシゴトさ。」

 

「格納庫で彼は、わたしをイレギュラーだと言い当てたんだ。」

 

 

「やだなぁ、哀染君。わたしがイレギュラーなんて…そんなことあるはずないよ。」

 

「つむぎ。キミは前回の事件を最初から知ってたんじゃないのかな?」

 

「……どういう意味?」

 

「『ハトドケイ』のメッセージだよ。ローズは自分の部屋の時計をカッコウだと言っていたんだよね?なぜ彼女は あのメッセージを残せたんだろう。」

 

「ローズは光太クンが時計を入れ替えたことなんて知らなかっただろうに。」

 

「さあ…前谷君が時計を入れ替えた時、ローズさんは どこかに隠れてたはずだから…部屋に前谷君が入るのを見たのかも。」

 

「……防犯シャッターはキミが開けたんじゃないの?」

 

「え?」

 

「キミが撫子の死体を発見する直前まで、ローズと撫子の部屋の間の防犯シャッターは降りていたはずだ。」

 

「光太クンによると、死体発見の直前にキミと廊下を出た時も撫子の部屋の前の花瓶を見なかったそうだからね。」

 

「そして、シャッターを開けたのはキミしかいない。でも、それを裁判中に言わなかったのは…裁判を面白くしたかったからじゃないの?」

 

「……確かに、時間稼ぎしたかったローズさんにシャッターを開ける理由はないけど。わたしじゃないよ?前谷君の記憶違いかも…」

 

「……それに、あの紙。『ハトドケイ』の方は4つ折りの跡があった。撫子の遺書は2つ折りだったのに。」

 

「あの便箋は2つ折りで封筒に入れるものだ。『ハトドケイ』の方が4つ折りだったのは、封筒を持たない人間が持っていたってことだよ。」

 

「つむぎ。キミが、4つ折りでポケットに入れていたみたいにね。」

 

「……。」

 

「すごい記憶力だね。あなたの方が、よほど腕利きの探偵って感じだよ。」

 

「怪しい人を見つけるより、怪しい人を絞って その行動を追っただけだから、特に記憶力があるわけじゃないよ。」

 

「…ずっと わたしを怪しんでたんだ。」

 

「確信したのは、前回の裁判だよ。これまでの裁判より、キミが断定的に話していて裁判を誘導していたからね。」

 

「全部を知っていたわけじゃないよ。シャッターが閉じていることや山門さんの遺書全部を知っていたから、みんなより情報量は多かったけど。」

 

「つむぎ。イレギュラーは、キミだね。」

 

「キミは1つ目のステージの動機発表の時から様子が変だった。ボクらの記憶がなかったり。モノクマと2人だけで話していたり。」

 

「……聞いてたの?」

 

「聞こえてはないよ。でも、あの日から…キミの様子を ずっと見てた。」

 

「不思議なんだ。あの日から、急にキミが別人のように見えて。キミの中から急に恐怖が消え去ったみたいだったから。」

 

「…残念ながら、動機発表より前の あなた達との記憶がないんだよね。」

 

「……でも、ステージが進むにつれて、死への恐怖やコロシアイへの嫌悪感が戻ったみたいだった。どうして?」

 

「”キミ”は一体…何者なの?」

 

「……同じ言葉を返したいかな。隠した感情を読み取れるなんて、チートすぎるもの。エスパーなのかな?」

 

「人の観察が得意なのも、アイドルの才能なんだよ。特に、ボクには笑顔検知みたいな機能があってね。」

 

「キミは本当に、つむぎなの?」

 

「わたしは、”白銀 つむぎ”だよ。」

 

「……その瞳。」

 

「もう、キミは つむぎじゃないんだね…。」

 

 

「そう言って、哀染君はヘッドホンをした。そして、子守唄で わたしは眠っちゃったんだ。」

 

「そこから先は…みんな、もう知ってるよね?」

 

「起きたら目の前に哀染君が血塗れで…。」

 

「それで…白銀サンは格納庫を出て…。」

 

「プレス機が作動して爆弾が…。」

 

「う、嘘だよっ!だって、3つ目の事件で木野お姉ちゃんが茶筒を使ったのって偶然でしょ!?」

 

「……3つ目のステージに移動する時…白銀さんは木野さんと一緒だったっすね。」

 

「そう。わたしは森で木野さんに会った。そこで、彼女に茶筒のこと話したんだ。」

 

「何で…?木野さんが事件を起こすって分かっていたの?」

 

「その時、木野さんは毒キノコを持っていたからね。でも、もちろん確信があったわけじゃないよ。誰が次の事件に関係するか考えて、タネを蒔いただけ。」

 

「クソ…!」

 

「えっと…白銀さんが持ってきたハーブティー、茶筒に入ってなかったわよねぇ。」

 

「ハーブティーはジップロックに入れてたからね。3つ目の動機発表の次の日に道具屋に置いたんだ。あの日は朝から茶筒を持っていたからね。」

 

「……俺がキミに話しかけた時…すか。」

 

 

「これ、何に使うんだっけ?」

 

「どうかしたんすか?」

 

「うわあ!?」

 

(突然、真後ろから声を掛けられて、わたしは手にしていた物を取り落とした。振り向けば、天海君が立っている。)

 

「何を見てたんすか?」

 

「うん、これ何に使うのかなと思って…。」

 

「どっちっすか?この茶筒っすか?」

 

 

「……祝里さんが呪いに使ったクギは…郷田君の宿舎でキミが作ったものっすね。」

 

「うん。シュラスコ串からね。」

 

「シュラスコ串から?」

 

「2つ目のステージに移動した初日の夜 祝里さんとレストランで話した後、使えると思ってシュラスコ串を数本取っておいたんだ。」

 

「それから、郷田君の宿舎の鍛冶屋でシュラスコ串を加工した。クギみたいにね。」

 

「はあ?オレはテメーがアクセサリー作ってるとこ見てーー…!」

 

「それは2日目だよ。1日目に、祝里さんの話を聞いて すぐ、クギを作っておいたんだ。才能を聞いた時、事件に使われるって思ったから。」

 

「でも!あのキッチンの物は20時間しか持ち出せなかったんだよ!?それに、次の日にあたし達 本数も確認したじゃん!」

 

「あ、そうですね!キッチンのチェックリストの数とシュラスコ串の数は同じでした!!確かに少なくなっていた気はしましたが!」

 

「それは簡単だよ。シュラスコ串を持っていった時、チェックリストを書き換えたの。」

 

「あのボードのチェックリストの字は簡単に消えるものじゃなかったはずよ?」

 

「道具があれば できなくはないよ。わたしは、これを使ったんだ。」

 

 

1. コーヒー

2. ネイルリムーバー

3. 無水エタノール

 

 

 

「そんなモンで、どうやって書いたモン消せるっつーんだ!」

 

「うん、かけて拭けば消せるけど…今は実物がないから実践できないかな。」

 

 

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「白銀さんが持っていたネイルリムーバーっすね。」

 

「そういえば…ネイル用品ずっと持ってたわねぇ。」

 

「うん。1つ目のステージの宿舎にネイル用品があったからね。何かに使えると思って持ってきてたんだ。」

 

「つまり…2つ目ステージ初日の夜 祝里さんと話した後、キッチンからシュラスコ串を数本 持ち出し、リストを書き換え、郷田クンの宿舎でクギ作り?」

 

「そう。シュラスコ串はシンプルなタイプだったから、何とか加工できたんだ。」

 

「…でも、20時間以内にキッチンに戻すっていうルールは!?クギみたいに加工したって、戻さなきゃなんでしょ?そんなタイミングなかったはずだよ!」

 

「……翌朝クラスメイトの動機発表がされたっす。そして、白銀さんと俺はキッチンでクラスメイトについて話した。その時…キッチンに隠したんすね。」

 

「うん。次の日の夕方までなら20時間 経ってないからね。天海君がキッチンを見回してる間に、分かりにくいところに隠したんだ。」

 

 

(厨房の中は昨日と変わらない様子だった。天海君が周囲を見回しながら言った。)

 

「昨日は厨房に入らなかったんすけど、結構 広いっすね。これなら料理するのも楽しそうっす。」

 

「…天海君は、料理上手だったもんね。スペック高すぎるラノベ主人公みたい。というか2か月に1度『お兄ちゃんの日』に妹と会える兄キャラみたい。」

 

(彼の視線とは異なる方を見ながら、あいづちを打つ。彼が こちらを向いたのを合図に、右手を頬に当てて『思い出を懐かしむ人』の顔を作った。)

 

 

「そして、祝里さんとキッチンに入った時、分かりやすいところに戻した。彼女が気付くように。」

 

 

(祝里さんとキッチンに入る。祝里さんがキッチンの一点を見つめるのを確認して、呟いた。)

 

「これ…。」

 

「美味しいよね。いくらでも飲めちゃうよ。」

 

(わたしは目の前のハーブティーの黒い茶筒を手に取った。祝里さんも笑って袖を まくった。)

 

 

「…良かったよ。ちゃんと、わたしが作ったものが活用されて。最初の事件では、やったこと無駄になっちゃったし。」

 

「最初の事件…。」

 

「町中や小学校に凶器を隠したり、体育倉庫を封鎖したことねぇ。」

 

「凶器を隠したのは、わたしじゃないよ。わたしが最初の事件でしたのは、体育倉庫の封鎖を解いたことと、哀染君を殺そうとしたことだけ。」

 

「えっ…。」

 

「哀染先輩を…?」

 

「わたしが動かなきゃいけないのかなって思ったからね。その日 一緒だった哀染君を殺そうとしたんだ。」

 

「凶器もトリックも考えてなかったから、結局 永本君に先を越された形になったけどね。」

 

「クソッ…!な、何でだよ!?テメーは、何で…」

 

「そんなに外に出たかったの?」

 

(みんなの視線は困惑に満ちている。そんな視線を振り払うように首を振った。)

 

「イレギュラーの目的は、裁判を面白くすること。それが、わたしの役割なんだよ。」

 

「面白く…それが、キミの得になる?そんなの…そんなの まるで…」

 

「そ、そうですよ、そんな首謀者みたいな!!」

 

「……。」

 

 

(わたしは みんなに不敵に笑いかける。『V3』と同じ。同じ笑顔で。)

 

「何 笑ってやがる!?」

 

「どうして…?お姉ちゃんは…今までも裁判で あたし達を導いて…くれて…。」

 

「白銀先パイは…自分たちを引っ張ってくれました…!」

 

(みんなの顔も『V3』の時と同じ。信じた人に裏切られた人の顔だった。)

 

「冗、談でしょ?この場を和ませる…。ここを無理に舞台にしなくていいんだよ?自分を殺して楽しませるショーは楽しくない…から…。」

 

「そうよねぇ。貴女がなんて、信じられないわ。私たちの役割は黒幕が降りるまで人々を魅せることよね?」

 

(信じたくないという懇願の顔だった。)

 

「5階の犯罪ファイルで…裁判を引っ張る人間は黒幕じゃなかったっす。」

 

「犯罪ファイル…?」

 

「あの犯罪ファイルは…おそらく過去のコロシアイの記録。記録にあった黒幕と…キミが黒幕という話は、どーにも噛み合わないっす。」

 

(天海君が苦々しい顔のまま呟いた。目前で見据えられて、心臓が嫌な音を鳴らした。)

 

(ーー『V3』と同じじゃないこともあるけど、この際 無視してしまおう。)

 

 

「…天海君は知ってるはずでしょ?哀染君の死体を最初に発見したのは…あなたなんだから。」

 

「え!?」

 

「どういうこと?」

 

「……。」

 

「あなたは爆発の後に郷田君より先に格納庫に行ったはずだよ。」

 

「……モノクマが俺の部屋をノックしたんす。それで、格納庫に行くように誘導されたんすよ。」

 

「誘導したわけじゃないけどね。夜中に部屋をノックする簡単なオシゴトですよ。」

 

「哀染君がモノクマを使った。わたしが呼び出された時と同じだったんだね。」

 

「おそらく、俺は哀染君の計画の目撃者役だったんでしょう。」

 

「あなたは5階の道具を使って、トイレ側から格納庫に入ったんだよね。」

 

「…はい。シャッターが閉じて開かなかったんで急いで5階からロープとかクライミング道具を持ってきて…」

 

「トイレ側の穴から入ると…そこには黒焦げの死体があったっす。そして…俺はダイイングメッセージに気付いた。」

 

「ダイイングメッセージ…。」

 

「爆発前の写真から、間違いなく哀染君が書いたものっす。そしてダイイングメッセージには…」

 

(天海君が、わたしを見据える。彼の厳しい声を聞きながら、わたしは考えても仕方のないことを考えた。)

 

(これが『V3』の裁判なら良かったのに。と。)

 

「哀染君が書いたダイイングメッセージは…『47』っす。」

 

「47?」

 

「元素番号47…Ag。です。」

 

「銀?…銀の和名は白銀…だったな。」

 

「哀染君は…白銀さんの名前を残してたってこと?」

 

「……白銀さん。哀染君のメッセージは…キミを指していたっす。」

 

(その言葉は、瞳は、わたしから逸らされることなく放たれた。)

 

「……あなたが追求してくれるなら本望だよ。」

 

「ああ!?何 言ってやがる?」

 

「哀染君は天海君ならメッセージを読み取ってくれると…正しいクロを指摘してくれると思ってメッセージを託したんだよ。」

 

「でも…でも、メッセージは47じゃなかったんでしょ!?なんか、変な数字と『Lh』みたいな!そんなの天海お兄ちゃんの見間違いじゃん!!」

 

 

(天海君が少し俯く。歯を食い縛る音が こちらまで聞こえた。)

 

「……俺が足したんすよ。持ってたピッケルで…数字を。」

 

「え…。」

 

「天海君が…?」

 

「な、何で…?」

 

「…あ!白銀先パイを庇うためですね!?」

 

「テメー…クロ間違ったら…オレ達は みんな…。何でだよ!?」

 

「……。」

 

(それが この事件の天海君の役割だったとしたら…設定だったとしたら…“あれ”の意味も分かる。)

 

「そんなの、簡単だよ。天海お兄ちゃんは…あたし達 全員より、つむぎお姉ちゃんをーー…。」

 

「違います。その時は…白銀さんがクロだなんて、考えられなかったんす。だから、裁判のノイズになるかもしれないと思って…。」

 

「……それでも、」

 

「それでも、あなたらしくないよね。」

 

「オマエが言うのかー!!…と、誰もツッコまなさそうなので代弁します。」

 

「……。」

 

「そうっすね。でも…あの夢が…もし…もし、本当なら…。」

 

「……。」

 

(おそらく、天海君は…”あれ” を思い出している。単にコロシアイだけだと暗くなるからラブコメ展開入れとこうってだけじゃない。こうなるための意味があった。)

 

(裁判を複雑化させる役割が…彼にも割り当てられていたんだ。)

 

(合点がいって、わたしは ゆっくり息を吸った。そして、みんなに言葉を投げかけた。)

 

 

「みんな。哀染君が首謀者と疑ったイレギュラーも、ダイイングメッセージの謎も解けたよ。この事件のクロ…分かったよね?」

 

「……。」

 

(みんなに向けた視線を天海君に戻す。『V3』の時と同じように、首謀者らしい笑顔で。)

 

「天海君、この事件のクロは誰かな?」

 

「……この事件のクロはーー…」

 

(彼が口を開く。肩の力を抜きかけた時、思いもかけない言葉が彼の口から飛び出した。)

 

 

 

理論武装 開始

 

「この事件のクロは…被害者の哀染君っす。」

 

「彼は爆弾を格納庫に設置し、死んだと見せかけて白銀さんに引き金を引くよう仕組んだっす。」

 

「白銀さんはシャッターに設置されているのがプレス機のリモコンボタンだと気付かずに押しただけ。」

 

「この裁判で導き出すべきクロは…哀染君っす。」

 

「……何 言ってるの?わたしがボタンを押したのは間違いないんだよ。」

 

 

「前回の裁判を思い出してください。」

 

「前回は実際に安楽死薬を飲んだ山門さんやローズさんじゃなくて、その状況を作った木野さんがクロ扱いになったっす。」

 

「それは、故意が過失に勝るというモノクマの言葉から導き出された結論っす。」

 

「つまり、今回も…白銀さんの過失より、その状況を作った哀染君の故意が裁かれるはずなんすよ。」

 

 

 ○では △過 ×ない □失 

 

これで終わりだよ!

 

 

 

「……。」

 

「わたしが、哀染君の死体を発見して すぐ逃げたって…本気で思ってる?」

 

「……。」

 

「……あ。」

 

「白銀先パイなら…念入りに調べると思います。」

 

「なんなら、死んだフリくらい見抜きそう。」

 

「哀染君はテニスボールを使って脈は止めてた。でも…死んだフリの演技なんて、わたしには通じないよ。」

 

「哀染君が死んだフリをしたのも、シャッタースイッチにプレス機のリモコンが取り付けられてるのも…。」

 

「わたしは、全部 知った上で、彼の作戦に乗ったんだよ。」

 

「はあ!?どういうことだ?」

 

「わざわざ開けたシャッターを格納庫の外側から閉めたのも、気付いてたからだよ。シャッターが開いてたら、爆発の時 危ないからね。」

 

「あ…そうね。現場のシャッターは閉じてたから…爆発があるって知っていたはずだわ。」

 

「ちなみに、わたしは暗い道を通って寄宿舎に戻ったよ。目撃者役がいる可能性が高いし。だから、天海君とも鉢合わせなかったでしょ?」

 

「……。」

 

「過失じゃなくて、故意。ここで裁かれるのは、わたしの故意だよ。」

 

「それに…哀染君は それも承知の上で、この作戦を決行したんだと思う。」

 

「承知の上…?」

 

「哀染君は、わたしが死んだフリに気付くと分かった上で、今回の計画を立てたんじゃないかな。」

 

「えええ!?」

 

「わたしが首謀者なら、哀染君の作戦に乗って、事件の引き金を引く。彼は…分かってたんたんだよ。」

 

(再び裁判場が静かになる。それに安堵して、わたしはモノクマに向き直った。)

 

「モノクマ。結論は出てるよ。投票をーー…」

 

「まだっす。」

 

「……え。」

 

「まだ、道があります。」

 

「哀染君が狙った”イレギュラー”…首謀者を狙った目的っす。」

 

「……彼が首謀者を狙った理由…。」

 

 

1. 首謀者になり代わりゲームの主導権を握る

2. 首謀者を窮地に立たせモノクマに嘘を吐かせる

3. 首謀者を倒してコロシアイを終わらせる

 

 

 

「……白銀さん。」

 

(ふざけている空気じゃない。)

 

 

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「哀染君の目的は、首謀者をクロにして…モノクマに嘘を吐かせること。」

 

「え?え??」

 

「この裁判のクロについて、モノクマが嘘を吐けばコロシアイは終わるっす。」

 

「モノクマが嘘を吐いたらコロシアイは終わり。そう約束したから…?」

 

「そうだね。首謀者が死んだところでコロシアイは終わらない。コロシアイを終わらせるには、モノクマに嘘を吐かせることだよ。」

 

(『V3』の記憶が鮮明に蘇る。最初の事件。事件の結末。それを暴いた”彼ら”の表情。)

 

(吐き気に気が付かないフリをして、わたしは また不敵な笑顔を貼り付けた。)

 

 

「わたしがモノクマに嘘を吐かせれば、このコロシアイは終わるかもしれないね。」

 

「……本当かよ?」

 

「それなら…お願いよ。白銀さん。」

 

「……。」

 

「白銀さん。これまで亡くなった人がクロだと…そうモノクマに嘘を吐かせる手も残ってるんすよ。それなら、キミが生き残ることもーー…」

 

「あ!そ、そうだよ!お姉ちゃん!このままクロなら、おしおきされちゃうよ!?」

 

「コロシアイが終わって、おしおきもない。ウィン-ウィンでハッピーエンド。」

 

「……。」

 

「ーーまあ、これはキミが本当に首謀者なら…の話っすけどね…。」

 

「……。」

 

(この事件のクロはーー…)

 

 

▼この事件のクロは誰?

 

 

 

(懇願するような表情を向ける みんなに、わたしは満面の笑みを向けた。)

 

「コロシアイは終わらないよ!こんなことくらいで終わらせるわけないんだから!!」

 

「お姉、ちゃん…。」

 

「だいたい、こんな真実が分かった状態でモノクマに嘘なんて言わせられないよ!視聴者が黙ってないからね!!」

 

「視聴者…?」

 

「誰かが…見ているの?」

 

(みんなが戸惑う中に、6章で明かされるであろう真実の伏線を投げ込む。)

 

「そもそも、見ての通り、わたしが完全にモノクマを操ってるわけじゃないしね。嘘を吐かせるなんて無理なんだよ。」

 

(物語を終わらせる材料を見つけてほしいと願いを込めて。)

 

「コロシアイは続くんだよ!みんなが絶望するまで!!」

 

(絶望の先の希望まで。)

 

 

「…っていうか、そんな提案をする時点で、あなた達の負けだよ?」

 

「負け…だと?」

 

「だって、みんなが わたし以外に投票した時点で、わたしはモノクマに嘘を言わせる理由なんてなくなるんだから。」

 

「あ…そうだ…。ボクら…シロ全員が おしおきされるだけ…。」

 

「……あ!!」

 

「……。」

 

「そんな賭けで みんなの命を危険に晒すなんて、やっぱり天海君らしくないよ。」

 

「……そう…すね。」

 

(今度こそ、結論が出た。わたしは、再度モノクマに投票の合図を送ろうとした。)

 

(ーーけれど。)

 

「あたし…投票しない。」

 

「ーーは?」

 

「つむぎお姉ちゃんに投票なんてしないもん!!」

 

「……モノクマ。」

 

「必ず誰かに投票してね。投票放棄なんてウルトラアルティメットエクストリーム阿呆なことをした人には、死が与えられちゃうんだからね。」

 

「……!」

 

「妹尾さん。さっきも言ったよね。たとえ何があっても、真実に向かって突き進む。それができる人が…コロシアイを終わらせられる。」

 

「…でも!」

 

「わたしが、あなた達にコロシアイをさせてたんだよ?仲間が死んでいく中、あなた達が悲しんで、苦しんで、絶望しているのを見て、影で笑ってたんだよ?」

 

「そんな わたしのために、あなたは死んでくれるの?無意味に?無駄死になのに?コロシアイを観てる人を喜ばせるスパイスになるために?」

 

「……。」

 

「投票放棄を選ぶのは…今じゃないよ。」

 

(みんな黙り込んでいる。悲しそうな、悔しそうな、怒っているような、泣いているような、そんな表情だ。)

 

「天海君。最後に、事件のまとめをお願いするよ。」

 

(黙り込んだままの天海君に向かって言うと、彼は ようやく口を開いた。)

 

 

 

クライマックス推理

 

「事件が起きたのは深夜。哀染君は犯人を格納庫に呼び出したっす。彼は、犯人こそコロシアイの首謀者だと睨んでいた。それで ある計画を立てた。」

 

「それは、首謀者をクロにして、モノクマに嘘を吐かせることっす。」

 

「まず、犯人を呼び出した哀染君は、音楽プレーヤーに入れていた子守唄で犯人を眠らせたっす。」

 

「次に犯人が目覚めた時…その目の前には、哀染君の血塗れの姿があったっす。けれど、彼は生きていた。」

 

「彼は5階にあった薬品をばら撒き、脇にボールを挟み、脈を止めたっす。」

 

「格納庫で目覚めた犯人は、哀染君の姿を確認し、シャッターの開閉ボタンと重ねられたプレス機の降ボタンを押して、その場から立ち去った。」

 

「プレス機には爆弾が置かれていて、プレス機が作動することで爆発した。哀染君は、爆発までの時間に犯人を示す数字を残したっす。」

 

47…銀を表す数字を。けど…現場を見た俺は…それを隠蔽してしまった。クラスメイトが犯人だなんて…あり得ないと思った…から。」

 

「ーーキミが。キミが言うことが本当なら…。哀染君がクロに仕立てたのは…」

 

「このコロシアイの首謀者は……キミっす。“超高校級のコスプレイヤー” 白銀 つむぎさん。」

 

 

 

「ありがとう、天海君。ーー大正解だよ!」

 

(楽しげに言ってみせると、みんなの表情に絶望が広がったような気がした。)

 

(ーーこれで、お役御免かな。)

 

(モノクマを促すと、すぐに投票が始まった。もちろん投票放棄を選ぶ人は現れず、満場一致でクロが決まった。)

 

 

 

学級裁判 閉廷

 

「うぷぷぷぷ…。あーっはっはっはっ!おめでとう〜!!ぶっぷぷ!大正解だよ!うぷぷ!!」

 

「”超高校級のアイドル” 哀染 レイクンを殺したクロは、”超高校級のコスプレイヤー” 白銀 つむぎさんでしたー!ぷふっ…ぶひゃひゃひゃひゃ!」

 

「うるせぇ!笑うな!!」

 

「ね、ねえ、首謀者でも何でもいいから!つむぎお姉ちゃん、死ななくていいでしょ!?もうコロシアイなんて止めようよ!」

 

「そうねぇ…。たとえ首謀者が本当でも…貴女が死ぬところなんて見たくないわ。」

 

「というか、首謀者が本当ならルールを変えられるでしょ?」

 

「そ、そうですよ!ルールは自分!って言っていいんですよ!」

 

(この期に及んで、なお お人好しな面々に、わたしは黙ったまま笑いかけた。口々に何か続けていた みんな、黙り込む。)

 

「……白銀さん。」

 

「天海君、安心して。”あなたのクラスメイトの白銀 つむぎ”なんて、わたしが首謀者として隠れミノにしただけの記憶だよ。」

 

「……。」

 

「あなたが知る”白銀 つむぎ”なんて、いなかったんだよ。」

 

「……。」

 

(わたしが言うと、彼は口を開いて、また何か言いかけた。けれど。)

 

「うぷぷぷぷ。白銀さんには何度でも、∞度でも死んでいただきましょう!おしおきタ〜イム!!」

 

(楽しそうな笑い声と共に、その時間は やって来た。モノクマが例のスイッチを叩き、軽快な音楽が聞こえてきた。)

 

(みんなの視線を背中に受けながら、わたしはモノクマが指す道を歩いた。)

 

(『V3』の おしおきも含めて、厳しく正しく遂行されることに期待して。)

 

 

 

第◆章 047は∞度фぬ 完

第б章に続く

 

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※ここから白銀がモノクマに嘘を吐かせる工作をしたら?

 

(真理が何よりも尊い訳ではない。真実が何事にも優先する訳でもない。)

 

(ーーそれを言ったのは、どんなフィクションの、どんなキャラクターだったっけ。)

 

「この事件のクロは…あの人だよ。」

 

(わたしは、モノクマを真っ直ぐ見据えながら言った。わたしの視線を受けたモノクマはニヤニヤと笑みを漏らしている。)

 

(そして裁判が進み…)

 

 

(ーーその人に票が集まった。)

 

(あとは…モノクマが『大正解』と叫ぶだけ。それで、モノクマは嘘を言ったことになる。)

 

(ところが、)

 

「ん〜残念!不正解!!」

 

(パネルクイズの司会者みたいなモノマネをして、モノクマは笑った。)

 

「え…?」

 

「この事件の真のクロの勝利!!シロは全員おしおきで〜す!」

 

「ちょっと待って!ど、どうして…!?」

 

「おしおきタ〜イム!」

 

「ちょ…」

 

(裁判場に響くみんなの声。悲鳴。嗚咽。怒声。驚愕と恐怖と無念と、絶望の顔。)

 

(それらが この場から全てなくなった時、わたしの足は機能を忘れたように力が抜けた。ただただ1人、うずくまっていることしかできない。)

 

「うぷぷ。おめでとう!キミのひとり勝ちだよ!そんな風に うずくまってないで喜びなよ!」

 

(手が震える。全身から血が抜けたように温度を感じない。胸と胃の不快感で吐きそうだ。)

 

(喉はカラカラに渇いているのに、頬を伝うものは、しばらく止まりそうになかった。)

 

 

 

BAD END

 

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