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第Б章 C? U Ag ain. 裁判編Ⅲ

 

【???】

 

(その場を光が包む。光以外、何もない。音も。自分の姿も、声も。)

 

(自分が誰なのか、自分は知らない。)

 

(手を伸ばすこともできない。わたしは、ただ動けずに ここにいる。)

 

(わたしの名前は…?)

 

…………

……

(わたしの名前は、白銀 つむぎ。この世界での役割はーー…)

 

「……。」

 

(わたしは…まだ、“白銀 つむぎ”?)

 

「うぷぷぷ。」

 

(目を開けた世界は、真っ白だった。ひどく頭がボンヤリする中、モノクマの楽しげな声が聞こえた。)

 

(モノクマの姿が見えないのは…ここが『ダンガンロンパ』じゃないから…?)

 

(ーーううん、そもそも『ダンガンロンパ』も、希望ヶ峰学園も、才囚学園も…なかったんだ。)

 

「……。」

 

(そっか。『ダンガンロンパ』はない。最初から…なかった。それならーー…)

 

(また目を閉じて そんなことを考えたところで、白い光の奥から何かが聞こえた。)

 

「そ……違う…」

 

(遠くで声がする。)

 

「それは違う…」

 

(誰かが、何かを言っている。)

 

「白銀さん、目を開けてください。」

 

(今度は、すぐ隣から声がした。)

 

「うぷぷぷぷ。ただの妄想だよ。希望ヶ峰学園なんて概念すら存在しないんだ。」

 

(モノクマの声が わたしを嘲る。けれど、)

 

 

「それは違うっす。」

 

(隣からの声は、今度は確実に耳に届いた。目を開けると、そこは円形の裁判場だった。)

 

(わたしの隣で、男の子が裁判長席のモノクマを見据えている。)

 

「……。」

 

「白銀さん、無事っすか?」

 

(彼は心配げな顔を こちらに向けた。)

 

「……。」

 

「白銀さん、しっかりしてください。」

 

「……。」

 

希望ヶ峰学園はあるっす。俺たちは、そこでクラスメイトなんすよ。」

 

「……。」

 

「キミは、希望ヶ峰学園の、白銀 つむぎさんっす。フィクションや虚構の存在じゃない。」

 

「……!」

 

(頭のモヤが彼の言葉によって晴れていく。)

 

(ようやくハッキリしてきた頭が認識したのは、”いつもの裁判場”の隣の席に天海君がいることだった。)

 

「あ、天海君!?」

 

「……よかった。大丈夫っすか?」

 

「う、うん…。どうして ここに?みんなは?」

 

「みんな、ここに来ようとしたんすけど…登録された人間しか入れないみたいなんすよ。あとの2人も一緒だったんすけど…。」

 

「登録?2人?…残ってたのは天海君以外で5人だよね。」

 

「え?」

 

「妹尾さん、前谷君、夕神音さん、ぽぴぃ君、郷田君…みんなは無事なの?あれから裁判があったの?」

 

(みんなの名前を口にすると、天海君は少し驚いた顔をした。それから呟くように こう言った。)

 

「キミも…同じだったんすね。」

 

「…え?」

 

「白銀さん。俺はコロシアイの世界からじゃなくて、希望ヶ峰学園から来たんすよ。」

 

「…希望ヶ峰学園から?」

 

(何を言っているんだろう。希望ヶ峰学園も才囚学園もないはずなのに。確かに、わたし達がクラスメイトとか、そんな設定だったらしいけど…。)

 

(それよりも、彼は『コロシアイの世界からじゃない』と言った。コロシアイ世界がフィクションだったと気付いている…?)

 

(思考を巡らせている中、天海君が続けた。)

 

「白銀さん。この世界はーー…」

 

「ストーップ!ネタバレ禁止!!」

 

(ーーけれど、モノクマによって彼の声は掻き消された。)

 

(ネタバレ?ネタバレって何?既に全ての真実が明かされたはずなのに。)

 

「さて、人数も増えたことだし、学級裁判を開廷します。いつもの、真実を紐解く、裁判をね。」

 

(学級裁判が始まる…?どうして?『ダンガンロンパ』はないはずなのに。)

 

(1人パニックに陥っていると、モノクマが説明を始めた。)

 

 

 

学級裁判 開廷

 

「オマエラには…というか、白銀さん。キミには、この世界の真実を解き明かしてもらいます。」

 

「真実を導き出した上で正しい決断できなければ、クラスメイトもろとも即死亡!頑張ってね。」

 

「え、えーと…。」

 

「こらー!いつまでNOW LOADING…状態なんだー!」

 

「そ、そんなこと言ったって…。」

 

(ついていけずにいるうちに、”いつもの音”が聞こえてきた。)

 

 

 

ノンストップ議論1開始

 

「この世界はフィクションさ。」

 

「フィクションなんかじゃないっす。」

 

「希望ヶ峰学園はフィクション世界の存在…つまり誰かの妄想なんだよ。」

 

「俺たちは希望ヶ峰学園の生徒っす。」

 

「だーかーらー!それがフィクション上の設定なんだって!」

 

「希望ヶ峰学園なんてフィクション…というのすら妄想で、概念すらも存在しないんだよ!」

 

 

【首謀者の記憶】→希望ヶ峰学園は概念すら存在しない

【ダンガンロンパ】→希望ヶ峰学園は概念すら存在しない

【参加者名簿】→希望ヶ峰学園は概念すら存在しない

 

 

 

「それは違うっす。」

 

(”今まで”通り、天海君が そう言った。そして、言葉を続ける代わりに わたしを見た。)

 

(わたしは軽く頷きを返して、半信半疑のまま言葉を吐き出した。)

 

希望ヶ峰学園は存在する…?」

 

「論破するのに疑問形て。」

 

「白銀さん。希望ヶ峰学園は確かに存在します。キミも俺も、そこの生徒っす。」

 

「それじゃあ…ここは…。」

 

「記憶を持ったキミなら、ここまで言えば分かるでしょ!」

 

(……わたしの記憶は、『ダンガンロンパ』の記憶だけど…。それじゃあ…。)

 

「ここはプログラム世界…?“現実世界”からプログラム世界に入った…?」

 

「そうそう。プログラム世界うんぬんより、”現実世界”からというのがミソですね。」

 

「わたしも…現実世界のキャラクター…なの?」

 

「キャラクターじゃないっすよ。キミは存在する。間違いなく、現実世界で”超高校級のコスプレイヤー” 白銀 つむぎさんっす。」

 

「身体的に かなり無理したコスプレも、早着替えもできないけどね。」

 

「白銀さん。みんな待ってるんすよ。キミの帰りを。」

 

「みんな…?みんなって…。」

 

「もちろん、俺たちのクラスメイトっす。最原君、赤松さん、真宮寺君…」

 

(天海君は、わたしが『V3』のキャラクターだと思っていた人たちの名前を口にした。)

 

「みんな…生きてるんだね。」

 

「もちろんっす。このプログラム世界に俺が来たのも…入間さんは もちろん、左右田君や不二咲さんのおかげもあるんすよ。」

 

「左右田君に不二咲さん…?」

 

(他の『ダンガンロンパ』シリーズのキャラクターだと思ってた人たちも…ってこと?)

 

「さて、白銀さん。”キミ”なら分かるんじゃない?天海君の言う”現実世界”が、どんな世界なのか。」

 

(希望ヶ峰学園。超高校級。『ダンガンロンパ』の首謀者の記憶を持つ”わたし”なら分かる。)

 

(”現実世界”とはーー…)

 

 

 

閃きアナグラム スタート

                 成                計   

             育                              画

 

繋がった!

 

 

 

(希望ヶ峰学園で歴代シリーズのキャラクター達が存在する。まるで『V3』おまけモードである育成計画みたいだ。)

 

(ーーううん、わたしが育成計画だと思っていたものは…現実だった?)

 

(そうだ…あの記憶は…育成計画のものだ。)

 

 
(でも…正直なところ謎解きは得意じゃない。脱出ゲームも苦手だし。
 
 
(…わたし、脱出ゲーム苦手なんだっけ。これは…どの記憶?)
 
 
 

「どうして その世界から、コロシアイ世界に入ることになったの?」

 

「詳しいことは入間さん達が調査してるっすけど…ウイルスの可能性が高いっす。」

 

「ウイルス?」

 

「そうそう。オマエラは楽しい楽しい課外活動のためにプログラム世界に侵入したけど、一緒にウイルスも侵入してたらしいんだよね。」

 

「プログラム世界にウイルスって…。」

 

「既視感あるよね。でも、ハッピーな『ダンガンロンパ』とは関係ないよ。あれは需要に合わせた供給だからね。」

 

「あんまりコープスが出ない誕生パーティーとか、お笑いホラーミュージカルな時計塔とかみたいなね。ボクは需要曲線に忠実なクマなのです!」

 

「どういうことなの…?」

 

「もー、キミは情報弱者になった途端 頭が働かないなぁ。この世界は、やっぱり”超高校級”に需要も供給もないコロシアイをさせる世界だったってことさ!」

 

(……『ダンガンロンパ』じゃないけど、”超高校級”がコロシアイするのは…本当だった?)

 

「地味に大混乱だよ…。」

 

「とにかく、キミが ここにいるのは、プログラムの誤作動みたいなもんっす。」

 

「入間さん達が強制終了プログラムを組んでくれたんで、とっとと出ましょう。」

 

「えっと…強制シャットダウンってこと?…確か8人必要じゃなかったっけ?」

 

「うぷぷ。いつまでも記憶に引きずられちゃって。それは また別の話!」

 

「ここでは強制シャットダウンじゃなくて、『卒業か留年か』…みたいなのを選んでもらうよ!」

 

「それって…大丈夫なやつ…?卒業を選んだら大変なことになるやつじゃ…。」

 

「だーかーら、いつまで植え付けられた記憶に依存してんだー!!これは別モノ!卒業的なことするためには、キミの決断と あと3人の同意が必要だよ。」

 

「わたしの決断と…あと3人?」

 

「そうそう。思考力と決断力の他に、協調性も見ておきたいからね。」

 

「そんなグループディスカッション面接みたいな…。」

 

「けれども、キミ達は今たった2人!残念ですね、また来てね!って出られへんのや!」

 

「3D葉隠クン(中の人②)のモノマネ。」

 

「……。」

 

「ちなみに、同意者3人 集められないなら、キミ達は永遠に この裁判場に閉じ込められたままだよ。」

 

「……。」

 

「そんな…。」

 

「大丈夫!さすがに この場で2人でコロシアゑなんて言わないよ!学級裁判ないコロシアイなんて つまらないし。」

 

「2人 仲良く閉じ込められててくださいな!オマエラの本体が朽ち果てるまでね!アーハッハッハ!」

 

(裁判場にモノクマの高笑いが響く。その時。)

 

「え!?な、何!?」

 

(周囲が白い光に包まれた。眩しさに思わず目を閉じる。)

 

「ーー3人なら問題ないみたいっす。」

 

「問題ないって、キミ1人しかいないじゃないか。」

 

「俺は1人じゃないんすよ。」

 

(視覚が機能しない中 聞こえたのは、天海君の声。そしてーー)

 

「そうね。その通りよ。」

 

「白銀さん!助けにきたよ!」

 

(天海君とモノクマの会話に、違う声が混ざった。)

 

「え。」

 

(そこでやっと、この光が天海君が現れた時と同じようなものなのだと理解した。)

 

(光が収まり、目の前に現れたのはーー…)

 

 

「良かったわ。間に合ったみたいね。」

 

「白銀さん!天海君!無事!?大丈夫?」

 

「東条さん…ゴン太君…?」

 

(裁判場に現れたのは、『V3』でおしおきされた2人。)

 

(天海君の隣にゴン太君、わたしの正面近くに東条さんが立っていた。)

 

(2人は、確かに生きている。本当に、生きて、ここにいる。)

 

「よ、かった…。」

 

(思わず溢れた言葉は、本心だった。それが、どの”わたし”の本心かも分からないけれど。)

 

「2人ともプログラムに入るのに時間がかかったんすね。」

 

「ごめんなさい。私たちが このプログラムに参加するには、貴方より必要手順があったみたいなのよ。」

 

「うん。入間さんが言ってたよ。天海君は元々 参加してる設定だから入りやすいけど…って。」

 

「ま、演出上の都合というやつですね。」

 

(3人の会話とモノクマの言葉が右から左に抜けていく。理解できずにいる わたしに気が付いたように、東条さんが気遣わしげな視線をくれた。)

 

「白銀さん、ケガはないかしら?」

 

「え。う、うん。東条さんとゴン太君こそ…ケガはないの?」

 

「えっ?」

 

「……2人とも、本当に生きてるんだよね?」

 

「え!?ど、どうしたの?」

 

「無理もないわ。コロシアイなんてものがあったんだもの。」

 

「え?みんなにも…コロシアイの記憶があるの?」

 

(交互に東条さんとゴン太君の顔を見て、最後に天海君の顔を うかがう。わたしの視線を受けて、彼は頷いた。)

 

「白銀さんが経験したコロシアイとは それぞれ違うんすけど…。」

 

「あー!もう!だから、すぐネタバレするんじゃない!”超高校級のネタバレイヤー”か!」

 

(それぞれ違う…?『V3』の記憶じゃないってこと?)

 

(それに…天海君とゴン太君と東条さん。このメンバー。育成計画。これって…)

 

 

1. 文化祭

2. 年末試験

3. ダンジョン攻略

 

 

 

「白銀さん…。記憶が混乱しているみたいね。」

 

「大丈夫だよ!ゆっくり思い出してくれたらいいからね。」

 

(2人にまで記憶喪失キャラみたいに扱われた…。)

 

 

back

 

 

 

「これは…希望ヶ峰学園の年末の試験…なのかな。」

 

「そうっす。俺たちはキミの年末試験のサポートっすよ。」

 

「ええ。私たちは、友人として貴女のサポートを申し出たのよ。」

 

「だから、力になりたいって思ってたのに…こんなことになって…。」

 

「えっと、ちょっと待って?年末の試験って、もっと違う感じだったよね?」

 

「今年は少し趣向が変わったんすよ。全員プログラム世界に入って…という趣旨だったっす。」

 

「ええ。試験者とサポートそれぞれ、プログラムに入ったのだけれど、ウイルスのせいで全員 違うプログラムに飛ばされてしまったのよ。」

 

「違うプログラム?」

 

「そう。それで希望ヶ峰学園の生徒みんながプログラムから戻ってこられず昏睡状態という事件になったんだけれど…」

 

「希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件(小規模)だね。」

 

「1ヶ月ほどで、早い人はプログラムから脱して目覚めることができたわ。遅くても、半月ほどで学園のほとんどの生徒が目を覚ました。」

 

「けど、クラスで白銀さんだけ なかなか目覚めなくて…心配だったよ。」

 

「わ、わたしだけ…?」

 

「うぷぷぷぷ。どんだけ引きこもりたいんだって話だよねー。」

 

「だから入間さん達に頑張ってもらったのよ。白銀さんがプログラムを脱するようなシステムを入れてほしいって依頼して…。」

 

「東条さんが…人に依頼?」

 

「ええ。みんなにもアイデアを たくさんもらったわ。白銀さんがおしおきされないようなプログラムは、獄原君のアイデアよ。」

 

「おしおきされないプログラム…?」

 

「うん。入間さんは もちろん、アイデア豊富な王馬君や、機械と話せそうなキーボ君に相談したりしたんだ。ゴン太はバカだけど…一生懸命 考えたよ。」

 

「……ゴン太君が自分で考えて…。」

 

「他のクラスの人たちも力を貸してくれたんすよ。」

 

「天海君が…人に頼って…。そっか。」

 

(希望ヶ峰学園の年末試験のプログラム。それとは異なる世界に飛ばされた生徒たち。)

 

(目が覚めた みんなと、目覚めない わたし。)

 

 

 

ブレインサイクル 開始

 

Q. ウイルスによって生徒が飛ばされた違うプログラムとは?

1.ハッピーなトロピカル世界

2.ヒャッハーな世紀末世界

3.エクストリームなコロシアイ世界

 

Q. 目覚めた人たちの共通点とは?

1.髪が長く、背が高い

2.弱点を克服し、成長している

3.才能を磨き、キャリアアップしている

 

Q. コロシアイ世界から脱する条件は?

1.生存フラグを立たせて生存する

2.生存フラグを立たせず生存する

3.クロとして完全勝利する

 

繋がった!

 

 

 

「希望ヶ峰学園のプログラムに入ったウイルス。そのせいで…みんなはコロシアイ世界に入っちゃったんだね。」

 

「うん。みんな…そこでコロシアイをさせられたんだ。」

 

「メンバーは卒業生を含めた希望ヶ峰学園の生徒からランダムで選ばれたみたいっす。でも、おそらく俺と白銀さんは同じメンバーだったんでしょう。」

 

「私の時は…ほとんど知らない人だったわ。」

 

「うん。ゴン太も。星君と一緒だったけど、他の人は知らない人だったんだ。」

 

「うぷぷぷぷ。そのコロシアイプログラムこそ、希望ヶ峰学園の年末試験だったのかもね。さすが絶望の学園!」

 

「そんなはずないっす。」

 

「そうだよ。入間さんもウイルスによるバグだって言ってたよ!」

 

「そして、みんなはコロシアイから脱することができた。たぶん、コロシアイを生き残ることが条件だったんだ。」

 

「だから、わたしのプログラムに おしおきされないシステムを入れてくれたんだね。少しでも生存率を上げるために。」

 

「そうっすね。ただ…不二咲さんによると、ただ生き残るだけじゃダメみたいっす。」

 

「え、そうなの!?やっぱり、ゴン太の考えじゃ足りなかったんだ…!」

 

「ううん。ゴン太君が自分で考えてくれたことこそ、答えだったよ。」

 

「みんな、わたしが知る”みんな”だけど…確かに違うところがあるもの。」

 

(ーーそう。目の前の彼らは まるで、”コロシアイを経て成長したキャラクター”だ。)

 

「自分の中の“何か”を変えてコロシアイを生き延びる。ゲームで言えば、生存フラグを立てること。それが、プログラムから脱する条件だったんだね。」

 

(わたしが言うと、モノクマは「大正解!」と飛び跳ねた。)

 

「だから、地味な人が地味なままだと合格でないわけ。」

 

「というか、白銀さんの場合、実際どんなキャラなのか何が成長すべき点なのかすら分かんなくなっちゃって、ドン詰まりだったわけ。」

 

「……。」

 

「おそらく…キミは何度も違うコロシアイを体験させられてたんすよ。プログラムの中で何度も復元されて。」

 

「そうそう。『47は無限大 死ぬ』ってね。」

 

(蘇る超高校級…か。)

 

 

「じゃあ、コロシアイで…今まで一緒だった みんなは…。」

 

「全員NPCだよ。天海クンも含めてね。」

 

「……そっか。天海君以外も全員、現実では無事なんだね。」

 

「はい。俺たちの”仲間”は、みんな生きてるはずっすよ。」

 

「うぷぷ。そんなこと言って、天海クンのコロシアイも悲惨だったんだってね。」

 

「……。」

 

「キミは初っ端から信頼する人を失ったんだって?それで一時は再起不能になったとか。」

 

「最終的には、黒幕役 含めて12人の仲間を失ったんだって?12って、天海クンにとっては13より不吉な数字なんだね。」

 

「キミは、これからも12人の仲間の死に顔を思い、1人 十字架を背負って生きていくんだよね!」

 

「……1人じゃないっす。その中で俺は人に頼ることも覚えたんすよ。」

 

(モノクマの揶揄を天海君は力強く振り切った。モノクマは「チェッ」と小さく吐いてから今度は東条さんに笑みを向けた。)

 

「東条さんは依頼を受ける度、その依頼主が死んでったんだっけ?呪われたメイドだね!依頼されないと死んじゃう系メイドとしては死活問題じゃない?」

 

「……。」

 

「滅私奉公…確かに、それも大切よ。けれど、今は私の心にも耳を傾けることにしているわ。」

 

「……。」

 

「ゴン太クンは確か…推理ができなさすぎて虫に聞いてたんだって?うぷぷぷぷ。虫さんがカメラで撮ってくれてたらいいのにねぇ!」

 

「……。」

 

「ゴン太はバカだけど…それでも、みんなや虫さんと話し合って…自分で少しだけ考えられるようになったんだ。」

 

「……。」

 

(モノクマの言葉を歯牙にも掛けない様子の みんなに、モノクマは「あっそ」と短く返した。)

 

「はぁー、つまんないなぁ。もっと狼狽えて、絶望してくれなきゃノルマ達成にならないよ。」

 

 

「ま、絶望は”白銀さん”が見せてくれたし、これから見せてくれることでしょう!」

 

「………。」

 

「どういうことかしら?強制終了プログラム…試験修了に必要な人数は集まったわよ。」

 

「そうだよ!早く白銀さんを解放して!」

 

「はいはい。オマエラの裁判席の投票画面を見てみなよ。」

 

(モノクマに言われて、投票画面を凝視する。そこには『修了』と『追試』のボタンが映し出されていた。)

 

「刺激も面白みも生きがいもない”現実世界”に戻るなら『修了』、エキサイティングなコロシアイを続けるなら『追試』を選んでね。」

 

「試験者である白銀さんとサポートの3人が同じ選択でなければ、修了とは認められないけどね。」

 

 コトダマゲット!【修了】【追試】 

 

(モノクマが いやらしい笑い声を上げ続けている。それに反論するように、東条さんが口を開いた。)

 

「誰か1人でも意見が違えば修了にならないのね。けれど、そんなことは問題にはならないわ。」

 

「そうだよ!ゴン太たちも白銀さんも、コロシアイなんて選ばない!」

 

「うぷぷぷぷ。どうかな?白銀さんは長きに渡る引きこもり生活でコロシアイフリークに成り果ててるかもしれないよ?」

 

(モノクマが、にやけ顔を こちらに向ける。わたしは きっぱりと否定の言葉を言い放った。)

 

「成り果ててないよ。」

 

(確かに、『V3』の首謀者の記憶だけなら、そうだったかもしれない。でも…今は。)

 

「わたしは、このコロシアイ世界を出るよ。」

 

「……。」

 

「やっぱりかぁ。そんな気はしてたんだよね。でも、残念。その選択で、オマエラ全員、プログラム世界からも”現実世界”からもいなくなるんだね。」

 

「…どういうことっすか。」

 

「『修了』を選ぶと、存在を抹消されるんだよ。このプログラム世界での存在を。そして、”現実世界”ではデータ抹消により死ぬ。」

 

プログラム世界の死と”現実世界”の死が連動する。いくつかのコロシアイと同じだね。」

 

「……そんなこと、入間さん達は言ってなかったっすよ。」

 

「…そうね。ハッタリじゃないかしら。」

 

「うぷぷ。おしおきという、いっちばん大事なシステムを いじったせいかもね。それで強制終了プログラムがイカれたんじゃないの?」

 

「そ、そんな…、ゴン太のせいだっ!」

 

「……ゴン太君、落ち着いて。たぶん、嘘だよ。」

 

「嘘かどうかは『修了』を選べば分かるさ。」

 

(動揺を隠した わたしの声に気付いたらしい。モノクマは嘲笑うように、わたしの目の前に躍り出た。)

 

 

 

理論武装 開始

 

「どうしたの、白銀さん。何度も死んでるのに、まだ死ぬのが怖い?」

 

「キミは『ダンガンロンパ』のためなら死んでもいいんじゃなかったの?だから嬉々としてコロシアイに参加してたんだろ?」

 

「あ、でも途中から死ぬのが怖いって感じだったよね?毒を盛られた時はブルブル震えてたね!」

 

「かと思ったら、5章では あっさり処刑を受け入れるような姿勢でさ!」

 

 

「キャラがブレにブレてたぞー!」

 

「…というワケで、何回 死んでも死ぬのが怖い白銀さんは、賭けに のれるのか!?」

 

「ここから出たら、99.999% 死ぬ!」

 

「不完全再現のブレブレコスプレイヤーに、0.001%の奇跡も幸運もありはしないのさ!」

 

 

 ○運 △幸 ×の □超高校級 

 

これで終わりだよ!

 

 

 

「………。」

 

「わたしは確かに…幸運を呼び寄せる力どころか…完全再現の才能すらないけど…0.001%に賭けることはできるよ。」

 

「0.001%なんてないのと同じだけど?オスの三毛猫が生まれる確率より低いんだよ!四ツ葉のクローバーが自然発生する並みの確率なんだよ!?」

 

「この裁判の前、わたしは幸運を分け与えてもらったんだよ。」

 

「彼の”超高校級の幸運”は…人に分け与えることができるんだって。」

 

 

「白銀、お前が希望を諦めなければ…オレの幸運を分け与えることができる。」

 

「永本く…」

 

「オレの分まで生きてくれよ。」

 

 

(希望を諦めなければ…か。もっと早く、思い出せばよかった。)

 

「彼の才能なら、0.001%の可能性だって…変わるんじゃないかな。普通ありえないラッキースケベの遭遇率が99.999%になるくらいなんだから。」

 

 

「才能が証明する通り、夕神音さんの子守唄は本当にシャモジさえ眠らせるし、永本君はラッキースケベ遭遇率99.999%なんだよ!」

 

 

「……彼っすか。」

 

(彼の言葉やモノクマが言ったことを思い出していると、天海君も頷いた。)

 

「ぐぬぬぬ…。さすが白銀さん。そこまで”幸運”の才能を信じきっちゃうなんて。絶望という名の希望に微笑んじゃうタイプだね。」

 

「モノクマ、わたしは…ここから出るよ。いつまでもプログラムの中でコロシアイしてるわけにはいかないから。」

 

「……な、何をーー?」

 

(モノクマの表情に焦りが見え隠れし始めた。)

 

「ちょっと、白銀さん!キミは楽しんでたじゃないか。首謀者の記憶を持つキミなら、何度でもコロシアイを楽しめるなんて最高のご褒美だろ?」

 

(なおもモノクマは食い下がる。わたしの目の前で両手を掲げて喚き散らした。)

 

「もっともっとコロシアイを楽しもうよ!絶望的に希望に溢れた物語!キミが紡ぎたいのは、そんな物語なんだろ!」

 

「物語には終わりがあるんだよ。」

 

「………!」

 

(言うと、モノクマの動きが止まった。そして、急にシュンと小さくなってーーポツリと呟くような声で反論し始めた。)

 

 

 

反論ショーダウン 開幕

 

「白銀さん。ボクだって…ボクだってモノクマ”役”なんだよ。」

 

「ボクだって…この世界を作った汚い大人が『見た目も声も劇的に可愛いのに絶望的に残酷なマスコットを作ろう』って言っただけで生まれた存在なんだ。」

 

「ボクだって…キミと同じなんだよ。」

 

「……。」

 

 

「……天海クン、お兄ちゃん。ボクを見つけ出してよ。置いてかないで。1人にしないで。」

 

「東条さん、依頼でも何でもするからお願いだよ。ボクのために、ここに残って…。」

 

「ゴン太クン、ボクは実はモノクマムシっていう虫なんだよ。可愛くて可哀想な虫さんを見捨てるの?」

 

「みんな…ここでボクと一緒にいてよ!」

 

 

【追試】→ここでモノクマと一緒にいる

【修了】→ここでモノクマと一緒にいる

 

 

 

「モノクマが…妹…?俺の?」

 

「い、依頼…。」

 

「モノクマみたいな虫さん…確かに会ったことある気がする…!」

 

「みんな、気を確かに!特に天海君!!」

 

 

back

 

 

 

(本気か演技か よく分からないモノクマの演説に、みんな黙り込んでいる。)

 

「………。」

 

(『ダンガンロンパ』はないとモノクマは言った。これは何の意味もないコロシアイだと。)

 

(何の意味もない、プログラム世界でのコロシアイ。)

 

(そんなの…間違ってる。)

 

「モノクマ、あなたが何と言おうと、わたしは ここを出るよ。」

 

「……そう。」

 

(声も態度も小さくなったモノクマが俯いてーー…)

 

(邪悪に顔を歪めて笑いながら、顔を上げた。)

 

「せっかく、いたいけなクマの演技までしてやったのに!0.001%に賭けて お陀仏を選ぶなんて、キミは実にバカだね!うぷぷぷぷ。」

 

「………。」

 

「ぷぷぷぷ!」

 

(さも楽しげに、いつもの笑いを続ける。そんなモノクマに、わたしは声を投げかけた。)

 

「あなたも、一緒に出ようよ。」

 

「ぷぷ……ぷ?」

 

(わたしの言葉は腹のセンサーに届いたようだ。が、上手く解析できなかったのか、モノクマは笑うジェスチャーのまま固まった。)

 

「あなただって、一緒に出られるんでしょ?あなただって、希望ヶ峰学園にいたはずんだから。」

 

「………。」

 

「そうね。ええ。モノクマもいたわ。」

 

「ロクなことはしてなかったっすけどね。」

 

「大丈夫!モノクマだって、ひとりぼっちにはならないよ!みんなで外に出られるはずだから!」

 

「……。」

 

(しばらくモノクマは黙り込んだ後、小首を傾げた。)

 

「ボクも…?ボクと那由多の分身たちも?」

 

「うん……って、ナユタもアソウギも1度に目覚めたら困るけど…。とりあえず、置いてかれたくないなら一緒に行けばいいんじゃないかな。」

 

「……ボク、最後に被害者ヅラして良いヤツキャラになる敵キャラが大嫌いなんだけど。ボクが そんなキャラに成り下がるなんてなくない?」

 

「キャラ崩壊っていうか…アイデンティティの崩壊っていうか。自分を嫌いになるっていうか。」

 

「挫けない~キミを見ると何だ~か、自分のこと~嫌いになりそうで~っていうか。」

 

「だから、歌わないでーー…って、いいのか。誰も見てないし。」

 

「とにかく、大丈夫だよ。あなたは何があっても自分が何より大好きでしょ。」

 

「そうだよ!だからこそのジレンマだよ!!矛盾を突くゲームで、今まさに矛盾してるの!」

 

(しばらくモノクマは頭を押さえて「ハアハア」と痛くも痒くもなさそうな声を出していたーーが、)

 

 

「ーーま、いっか。」

 

(頭を上げると、あっさりと言い放った。)

 

「昨日の友は今日の敵ってヤツだね!大衆が好きなヤツだ。『ダンガンロンパ』ファンにも、そういう需要の声はあった…という記憶がボクにもあるよ。」

 

「昨日の敵は今日の友でしょ。というか、ファンの声に媚びるスタイルは いかがなものかと思うよ。それを公式に ぶっこむファンもマナー違反だし。」

 

「明智に恋人を!とか…ホームズを復活させろ!とか…作家が渋々それを受け入れたなんて話 聞くと、アレルギーとは違うブツブツ出るっていうかーー…」

 

「白銀さん、落ち着いてください。」

 

「……良かったわ。いつも通りの白銀さんね。」

 

「うん!良かったよ!」

 

「えー…ではでは、こんなの『ダンガンロンパ』じゃないコールが聞こえてきそうなくらいの、黒幕あっさり降伏パターンで お開きにしようか。」

 

(間伸びした声を出して、モノクマが投票を促した。)

 

(深呼吸を ひとつしてから、わたしはボタンを押した。)

 

(『修了』の文字が選択されて淡く光る。天海君、東条さん、ゴン太君も投票を終えたらしく、顔を上げて わたしに笑いかけてくれた。)

 

 

 

学級裁判 閉廷

 

「はーい、おめでとう!これにて、白銀さんは長きに渡る追試地獄から抜けられまーす!」

 

「『ダンガンロンパ』らしくねーなって思った?誰かが裏切ると思った?残念!ここは『ダンガンロンパ』じゃないのでしたー!!」

 

「ちなみに、白銀さんの試験担当のボクも、晴れて追試から脱せます。」

 

「え。あなたも追試だったの?」

 

「試験者が合格するまで帰れないなら、試験監督は もっと帰れまテン!」

 

「あとは、0.001%の奇跡が本当になることを祈って……解散!!さよならドビュッシー、おやすみラフマニノフ、こんにちは赤ちゃん!」

 

(緊張感のない声でモノクマが言うと同時に、裁判長の木槌で おしおきスイッチのようなボタンを押した。その瞬間、爆音と共に裁判場は炎上した。)

 

(データの抹消って…こんな物理的な…。まさか再三 爆発オチって言ってたのは、このため?)

 

(頭の中で そんなツッコミを入れているうちに、わたしの意識は暗転した。)

 

 

 

第Б章 C? U Ag ain. 完

Re:Ч/ローグへ続く

 

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