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Round. 2 蝶のように舞い、蚊のように刺せ(非)日常編Ⅱ

 

「ゴン太くん、キミは…バカじゃない。」

 

「紳士っていうのは…金がいるんだよ。」

 

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(チャイムの音で目が覚めた。)

 

(そういえば、このチャイムはロンドン塔の音と同じだって高橋君が言ってた。ロンドンの紳士の話もしてくれた。)

 

(高橋君も河合さんも…ゴン太は守れなかった。)

 

(悔しい気持ちで いっぱいになって、ゴン太は暫く動けなかった。)

 

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

「ゴン太さ、おっせかっただなぁ。」

 

「おはよ。寝坊か?」

 

「食事が冷めそうだった故、お先に頂戴した。」

 

「あ、うん。ごめん、遅くなって。おはよう、みんな。」

 

(ゴン太が食堂に入ると、)

 

「えっと…他の みんなは?」

 

「とっくに 平らげて、色んなところ散ってっただ。」

 

「ああ。三途河とか星とか平は急いでるみたいだったし、蔵田はキッチン篭ってるし、他の奴らも食うの早いよな。飯は ゆっくり食った方がいいのによ。」

 

「左様。目で、鼻で、舌で味わってこそ、食事。火野殿のように必ず12時きっかりに昼食をとり、35分かけて食べ続け、1度に50回噛むのが理想。」

 

「めちゃくちゃ観察されてんな。…なんか…嬉しいぜ。」

 

「嬉しいけ?気色悪いべ。だば、早食いの気持ちはオラには分がる。練習時間さ少しでも取るために かっこんでたかんな。」

 

「えっ、身体に悪いよ。」

 

「んだ。この島には師匠はいねから、かっこまなぐでも折檻されね。そんだけは助がっだ。」

 

「なんか壮絶だな…。」

 

「そうだ。獄原殿、三途河殿より伝令だ。『朝餉の後、春ノ島シアターに来られたし』」

 

「あ、そうだ!ゴン太、お手伝いするんだった。」

 

「手伝い?何の?」

 

「三途河さんがシアターでプラネタリウムを開いてくれるんだ。」

 

「三途河殿は学者でありながらエンターテイナー気質だな。」

 

「エンターテイナーとしては負けてらんねーだな、火野さ。」

 

「え?…あ、ああ。そうだな。でも、俺ァ花火の道具がねェと…何もできねーよ。」

 

「そうだべな。オラも音楽とステージがねーことには踊ろうとは思えね。」

 

「あのシアターじゃダメなのか?」

 

「ダメだ。100エーカーくれぇねぇと。」

 

「広きことウィニー・ザ・プーの故郷の如し。」

 

「あ、それなら、ゴン太も何か会を開こうか!虫さんを全身で愛でよう会と、虫さんの食べ物を食べてみよう会、どっちがいいかな?」

 

「お断り申す。」

 

「えっ。」

 

「人類には早すぎんべ。」

 

「あ、ああ…。ゴン太、気持ちは嬉しいけどさ。俺たちにャ、まだレベル高ェよ。」

 

「そうかな…。」

 

(急に元気と食欲がなくなったような みんなを心配しながら、朝ごはんを食べた。)

 

 

 

【春ノ島南 町エリア シアター】

 

「あ、ゴン太君。良かったわ、来てくれて。」

 

「今朝は、随分 遅かったじゃねーか。」

 

(朝ご飯を食べた後、急いでシアターに向かうと、星君と三途河さんが待っていてくれた。)

 

「ごめんね、2人とも。」

 

「いいえ。早速だけど、お願いしてもいいかしら?」

 

「うん!何が必要?」

 

「椅子が足りないから、悪いけど校舎から運んできて欲しいのよ。」

 

「分かった!じゃあ、行ってくるね!」

 

(ゴン太はシアターから出て、早足で歩いた。)

 

 

 

【春ノ島南 町エリア 洋服店】

 

「やあ、ゴン太君。」

 

(途中の服屋さんの前に、服を抱えた平君がいた。)

 

「平君、お洋服 持ってるの?」

 

「そうさ。三途河さんの服と虎林さんのスポーツウェアが完成したから、渡しに行くところなのさ。」

 

「すごい!もうできたんだ!」

 

「うん。2人に渡し終わったら、ゴン太君の靴に取り掛かるよ。」

 

「わあ、楽しみだな。」

 

「後回しになってしまい ごめんよ。靴より服の方が作り慣れていて。それに、紳士を目指すキミなら、レディーファーストにすべきだと思ったのさ。」

 

「うん、もちろん。ゴン太は いつでも嬉しいよ!」

 

「三途河さんはシアターにいたよね。虎林さんは見なかったかい?」

 

「ここまででは見てないよ。ゴン太が探してこようか?」

 

「ありがとう。それじゃ、見つけたら、ここに来るように伝えておくれよ。」

 

「うん、分かった。」

 

(ゴン太が頷くと、平君は右目だけパチリと閉じて笑った。)

 

 

 

【春ノ島 橋の前】

 

(春ノ島から本島に戻ろうとした時、橋の向こうから蔵田さんが走ってきたのが見えた。ゴン太の近くまで来て、彼女もゴン太に気付いてくれた。)

 

「蔵田さん、どうかしたの?」

 

「……。」

 

(息を整えた彼女は大根を掲げた。)

 

「今日の晩ごはんのデザート…ハチミツが足りない。…ので、ハチさんに もらいに行こうと思って。」

 

「えっ!」

 

「えっ?」

 

「蔵田さんも蜂さんと話せるの!?」

 

「…また話さなきゃダメ?あなたが前もらった。…ので、また もらえると思った。」

 

「え…。そ、それは やっぱり、蜂さんの大事なハチミツだもん。ちゃんと話してから、もらった方がいいよ!」

 

「……そう。」

 

(呟いて、蔵田さんが俯く。)

 

「良かったら、またゴン太が もらって来ようか?」

 

(ゴン太が言うと、蔵田さんは顔を上げて頷いた。)

 

「それは助かる。…ので、お願い。」

 

「うん!任せてよっ!」

 

(蔵田さんが本島に戻っていくのを見送った。)

 

(…なんだか、お仕事たくさんになっちゃった。どこから行こうかな。)

 

 

 校舎へ行く

 虎林を探す

 蜂の所へ行く

全部行った

 

 

 

【本島 北エリア 校舎】

 

(本島の校舎まで来た。1室に明かりがついているのが外から見えたので、その教室に入る。)

 

「あ、ゴン太先生。今朝は遅かったみたいですね。」

 

(中には桐崎さんがいた。)

 

「うん。ちょっと、支度に時間が掛かっちゃったんだ。」

 

「そうですか。…うん、そうですね。モノを食べる時は誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメですもんね。」

 

「え!?桐崎さん、みんなで食べようって提案してくれたよね?」

 

「あ、いえいえ。こっちの話なので お構いなく。」

 

「そ、そうなの?えーと、ここで何してたの?」

 

「調査ですよ。既に探索し尽くしていますが、そんな時こそ何か見つかるかもしれませんから。」

 

「クイーンの後期作品を始め、推理モノでは証拠品の後出しにより真相が180度変わります。だから、隠し通路や隠し扉が後から見つかるかと思い…。」

 

「えーと…隠されたものを探しているんだね!」

 

「ゴン太先生は?どうして ここに?」

 

「プラネタリウムのための椅子を取りに来たんだ。」

 

「プラネタリウム?」

 

「うん。三途河さんが開いてくれるんだって。」

 

(桐崎さんは「なるほど」と頷いて、教室を見回した。)

 

「ーーそれにしても、教室があるのに、授業がないのは どうしてなんでしょうね。チャイムは朝と夜しかないし。」

 

「うん、学校のチャイムみたいなのに、夜にも鳴るのは変な感じだよね。そういえば高橋君が言ってたよ。学校のチャイムはロンドン塔と同じ音だって。」

 

「高橋先生、詳しいんですね?ーー英国紳士は高橋先生の方だった?ゴン太先生の能力…動物の言葉が分かるなんて、まるっきり英国紳士の助手ですから。」

 

「え?ど…どうだろう?」

 

「どうですか?高橋先生の意志を受け継いで、英国紳士たるシルクハットを被ってみては?」

 

「えっと…平君が現代には合わないって言ってた…よね?」

 

「では、眉毛を「三」にしてパブで酒を浴びるほど飲み、二枚舌外交というのは?これも英国紳士の嗜みです!」

 

「そ、そんなの紳士じゃないよ!」

 

「いえいえ、ゴン太先生。世の中には色んな種類の紳士がいるんです。ヘンタイという名の紳士もいるんですから。」

 

「変態?蝶さんとか蜻蛉さんのこと?」

 

「あ、いやいや、生物界の変態ではなく…。」

 

(桐崎さんに色んな紳士がいることを教えられた。)

 

 

 

【春ノ島南 町エリア シアター】

 

(ゴン太が椅子を抱えて戻ると、三途河さんが出迎えてくれた。)

 

「ありがとう、ゴン太君。助かったわ。」

 

「ううん。お安い御用だよ。」

 

「ふっ、ふふ!ゴン太君のボキャブラリーが、増えてるっ、わね!」

 

「うん。イーストック君が色々 教えてくれたんだ。今までは、自分の周りの言葉しか知らなかったから。」

 

「そうなのね。ゴン太君はスポンジみたいだわ。素直な分、覚えがいいのね。」

 

(三途河さんは嬉しそうに笑ってくれた。ゴン太も嬉しく思いながら、辺りを見回す。)

 

「あれ?星君は?」

 

「放送ルームにいるわよ。」

 

「放送ルーム?」

 

「ええ。廊下を挟んで隣にあるの。そこからシアターに音声が流せるのよ。プラネタリウムの映像も隣で操作するわ。」

 

「へえ、そうなんだ。」

 

「他にも、照明やスモークや爆破機能も隣にあるわよ。」

 

「ば、爆破!!???」

 

「ぶーー!!冗談よ!あるわけないわっ!ふふふ!」

 

(楽しそうな三途河さんと明日のことについて話した。)

 

 

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(虎林さんを探すためウロウロしたけれど、なかなか見つからない。本島の寄宿舎から声が聞こえた気がしたので、そちらへ向かった。)

 

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 保健室】

 

「ねーねー、何してたのー?ねー?」

 

「トラっち、ウザ〜ww」

 

(中には虎林さんと野伏君がいた。)

 

「あ、ゴン太ー!」

 

「助けてゴンちゃん!トラっちマジヤバい!」

 

「えっ!?」

 

「よっしゃ、ゴン太!捕まえて!!

 

「えっ!?わ、分かった!!」

 

(野伏君がゴン太のいる入口に走ってきて、虎林さんが叫ぶ。彼女の声に反射的に応えて野伏君を捕まえようと手が動いた。)

 

「残念!ボッシュート!!」

 

(ーーけれど、するりと野伏君はゴン太の手を避けて部屋を出て行ってしまった。)

 

「ああ〜、行っちゃった。」

 

「ご、ごめん。どうかしたの?」

 

「あ、謝らないでー。全然ゴン太は悪くないよー!野伏が何か後ろ手に隠してたから、何か知りたかっただけ。」

 

「そうだったんだ。」

 

(そう言いながら、虎林さんが腕を掻いている。)

 

「虎林さん、腕…どうかしたの?」

 

「うーん、なんか痒くて。に刺されたのかなーと思って。虫さされの薬 探しに来たんだ。」

 

「蚊さんに!?大変だ!!!」

 

「ひょわっ。」

 

(ゴン太が慌てて虎林さんの腕を取ると、虎林さんはビックリした顔で固まってしまった。)

 

「蚊さんがいるなんて知らなかったよ!先に『血を吸わないで』って、お願いしておけば良かった!」

 

「む…虫に刺されただけだよ?」

 

「で、でも!蚊さんは悪い病気を持ってきちゃうこともあるんだ!国によっては注意しなきゃいけなくて、特に ここがどこかも分からないからーー…」

 

(そこまで言って、虎林さんの腕を見た。)

 

「あ…。よ、良かった…。これは、蚊さんに刺されたんじゃないと思うよ。」

 

「……え?何で…?」

 

「ゴン太は目が良いから蚊さんみたいな細い針の跡も見えるんだけど、虎林さんの腕には針の跡がないよ。」

 

「…そーなんだ。じゃ、植物とかで、かぶれたのかな。アタシ、虫に刺されやすいから…てっきり。」

 

「そういえば、三途河も肌弱くて かぶれやすいって言ってたよ。女子トーク的な?でも、ほんと、アタシ虫に狙われやすくてさ。ハチとか…こぞって襲ってくるんだ。」

 

「アタシはクマかって感じ。あ、モノクマってクマじゃん?ハチに頼んで倒してもらえないかな?ハブVSマングースみたいな。」

 

(虎林さんが急に早口で話し出して、ゴン太は聞くのが やっとだった。)

 

「と、虎林さん、平君が探してたよ。お洋服が もうできたんだって。」

 

(ゴン太が言うと、虎林さんは いつもの笑顔を見せてくれた。)

 

「えー!?あんな冗談みたいな注文で こんな早くできるんだ!?どうせならダイエット効果付きとか注文しとけば良かった!」

 

「三途河は どんなものでも貫く矛でも貫けないベルトって注文してたんだよ!矛盾だよね!ゴン太も、靴 作ってもらうんでしょ?」

 

「今のうちに色々 注文したら?履いたら瞬足で走れるようになりたいとか。履いたら天使の羽みたいに軽いとか。履いたら やめられない止まらないとか。」

 

(虎林さんが たくさん話してくれた!)

 

 

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(蜂さんにミツを分けてもらって本島に向かった。)

 

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 キッチン】

 

「蔵田さん。蜂さんにミツ、もらってきたよ。」

 

「ありがとう。」

 

(蔵田さんは食材の並んだキッチンを指差した。ゴン太は分けてもらったハチミツを そこに置いた。)

 

「これで…できる。」

 

(蔵田さんが持っている大根じゃなくて、ハチミツに向かって呟いた。)

 

「何を作るの?」

 

「ハチミツは万能。…なので、何でも作れる。」

 

(それから蔵田さんは料理の名前を呟き始めた。今日のメニューを考えてくれてるのかもしれない。)

 

(集中してるし…こういう時、キッチンを出た方がいいんだっけ?)

 

(高橋君とキッチンに入った日を思い出しながら、ゴン太はキッチンの外に出た。)

 

 

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(春ノ島と本島を行ったり来たりしていたら夕方になっていた。)

 

(よく考えたら、行ったり来たりしないで、まとめて用事を済ませれば良かった。)

 

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

(食堂に入ると、華椿さん以外の全員が集まっていた。)

 

(ーーそういえば、今日は忙しくて華椿さんのところに行けなかった。ご飯を食べたら、プラネタリウムのこと誘いに行こう。)

 

「ウェーイwww今日も ごちそうじゃーん!」

 

「七面鳥の丸焼き、大根サラダとクヌーデルズッペとデザートはショコラータ。…を、召し上がれ。」

 

「半分ぐらい何言ってんのか分からねェが、美味そうだな。」

 

「美味けりゃ名前は何でもいいべ。特に このチョコケーキ楽しみだぁ。オラ、こんなん食ったことねっだよ。」

 

(たくさん並んだ料理。その中で蔵田さんがデザートだと言ったものを指差して伊豆野さんが笑った。)

 

「デザートはチョコレートと卵だけで作った。…ので、濃厚な味。」

 

(ーーあれ?デザートに蜂さんのミツは使わなかったのかな?)

 

「みんな。明日の午前中にシアターでプラネタリウムを開催するわ。こぞって参加してちょうだい。」

 

(食事をしながら、みんなに三途河さんが声を掛けた。)

 

「ああ、朝にゴン太が言ってたやつか。」

 

「ゴン太先生が昼にバタバタしてたやつですね!」

 

「野伏が医務室でゴソゴソしてたやつだね!」

 

「そんなの関係ねぇ!!笑笑笑笑www」

 

「ゴソゴソとは?」

 

「いやー?何かオモロイもんないかなと思ってウロウロしてただけ。トラちゃんは?虫に刺されたとこ大丈夫なワケ?」

 

「あー、うん。蚊に刺されたって言ったらゴン太、血相 変えちゃってさー。」

 

「人類を最も死なせている生物は蚊だからね。ウエストナイル熱や日本脳炎は怖いわよ。ちなみに、日本人がウイルス発見の先駆者だから日本脳炎らしいわ。」

 

「なじょして三途河さ、そんなこつ知ってんだべ?」

 

「時が時なら私も医者よ。天文学で病気を診る時代もあったんだから。」

 

「…とんでもない時代。」

 

「それが昔の医療だ。呪術や占いが用いられるのは普通、トイレの空気や尿が病に効くと宣った医師もいる。近代でさえロボトミーなど狂った手術もあった。」

 

「そうそう。そんなだから、主人公に別人格 生まれて、国民的CVに絶望感付与されちゃったんだよ。」

 

「トモダチゲームで絶望するし、ピンクの丸い奴でディスカバリー中に絶望しちゃうんだよ。」

 

(いつの間にか会話にモノクマが入ってきて、みんなが驚いた顔をした。)

 

「何しにきたんですか!」

 

「うぷぷ。教えてやろうと思って。」

 

「…何を?」

 

「過去のコロシアイの統計的に、イベントの最中は殺人の狙い目だってね。」

 

「な、な、なな何だってえええぇー?ww」

 

「不穏なこと言うでねぇ!」

 

「た、確かに、パーティーやショーで演説中に狙撃!とか、乾杯した酒に毒が!とかありますけど!」

 

「パーティー会場の停電中に刃物でグサー!とかマジックショーの最中に死体がっ!とかありますけど!」

 

「そんなことあるのか…?」

 

「フィクションの話である。日常で そんな事態には陥ろうはずがなし。」

 

「そうだね。ならないよね。でも、これって(非)日常編なんだよ。フィクションなんだよ。」

 

「訳の分からないことを言いにきたのかな?」

 

「いえいえ、今のは余談。本当は、こんなナゾを持ってきたんだ。」

 

「ナゾ?」

 

「こ…これは、紳士がナゾ解きを強要される例のやつですね…!」

 

(モノクマが笑って取り出したのは、ポスターのような大きな紙。そこには、絵が描いてあった。)

 

(花や木の多い森や町、海の絵。そして、その至るところに漢字が書いてある。)

 

「これ何ぞやー?」

 

「このナゾを解いて、オマエラの持ち物と紐付けたら、自分のやるべきことが見えてくるはずさ。」

 

「やるべきこと…?」

 

「うぷぷぷぷ。」

 

(モノクマは楽しそうに言って、いなくなった。)

 

「な、何だったんだろう。」

 

「ナゾって言ってたけどよ、意味分かんねェよな。」

 

「空に『文』と『葉』、木の葉に『咼』、池に『主』、海に『合』、地面に『義』?」

 

「いや、池のは『主』ではなく『圭』。空のは『葉』でなく『枼』…常用漢字ではない。意味は薄いものや3枚の葉という意味だ。」

 

「空の『文』『枼』、葉の『咼』、池に『圭』、海の『合』、地面の『義』だね。」

 

「数も関係しているんでしょうか。『義』は10個、『合』は8個、他は3個ずつですね。」

 

(みんなが難しい顔で「うーん」と考え込んだ。そんな中、ゴン太には閃くものがあった。)

 

「えっと…虫さんじゃないかな?」

 

「え?」

 

「空と木と地面の漢字の横に虫さんがいたら、虫さんとかの漢字になるよね。」

 

「なるほど…『蚊』『蝶』『蟻』。木の『蝸』、池の『蛙』、海の『蛤』。生物の名前だ。」

 

「ゴン太、すごい!」

 

「ああ!なんだ、漢字も分かんじゃねェか!」

 

「た、たまたまだよ。虫さんの漢字は覚えているから…。」

 

「なー?マジ感激リスペクトだわー!で、これが何なん?」

 

「えーと…。ご、ごめん。そこまでは分からないよ。」

 

「持ち物に紐付けたら…と言ってたな。俺たちの持ち物なんざ、いつの間にか待たされてたモノパッドくらいだが。」

 

「んだな。意味 分がんね。」

 

「…大した意味はないのかもしれないね。」

 

「じゃ、とりま放置系?」

 

「うう…。私、気になります…!」

 

「解けない謎も数日 置けば、すんなり解けることもある。ゆるりと考えようぞ。」

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもの。…かも、しれない。」

 

「それよか、サンズっち。明日の予定は?」

 

「ドゥドゥドゥドゥ…ッ!変な呼び方し、ないでっ骨が折れるわっぐふ!…とにかく、明朝 参加自由よ。後で華椿さんにも声を掛けておくわ。」

 

「うん、いいね。前回、華椿が河合を操って高橋を排除したーみたいな話もあったけど、仲間ハズレは良くないもんね!」

 

「……華椿さんを呼ぶのは危険じゃないかい?」

 

「あ…そ、そうですよ!あの人 呼んだら、それこそ本当に刃物でグサー!とかなるかもしれません!」

 

「え…でも、」

 

「じゃ、とりまハナちゃんは呼ばないってことで!解散!!」

 

「把握。」

 

「可哀想な気もすっけど…仕方ねェか。」

 

(ゴン太が何か言う間もなく、みんなは席を立った。)

 

…………

……

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

(翌朝、食堂に入ると、そこには5人しかいなかった。)

 

「よっす!ゴンちゃん、うつかれースww」

 

「ゴン太、おはよ!」

 

「おはようございます。」

 

「今日も よく晴れているな。」

 

「ご飯はできてる。…ので、召し上がれ。」

 

(いつもなら全員が揃う時間だ。ここ2、3日と同じように、華椿さんはいないけどーー…)

 

「三途河さんと星君、虎林さん、伊豆野さん、平君は?」

 

「三途河と星は今日のプラネタリウムのために さっさと行っちまったぞ。」

 

「平先生と虎林先生は、三途河先生に渡すものがあるって先に行きました。」

 

「伊豆野さんは?」

 

「…は、差し入れをプラネタリウムに持って行った。」

 

「我らも食事を頂いたら、シアターに参ろうぞ。」

 

「ウェーイwww」

 

(朝ごはんを たくさん食べた!)

 

 

 

【春ノ島南 町エリア シアター】

 

「みんな、御足労いただき、ありがとう。」

 

(朝ごはんを食べてシアターに行くと、先に来ていた みんなが迎えてくれた。)

 

「見て見て、みんな!三途河、超かわい〜でしょ?おニューの服だよ!」

 

「新しく仕立てた甲斐があったよ。正しく、ベイビーの美しさを引き立ててくれている。」

 

(三途河さんを指差した虎林さんが楽しそうに言った。)

 

「うん、三途河さん、とても似合ってるよ!」

 

「えっ…。」

 

「マジで?ゴンちゃん、違いが分かる系??」

 

「えっと…いつもと同じじゃね?」

 

「全然 違うよ、ベイビー。寒色の色みを少しだけ弱くしてるんだ。」

 

「そうそう。それに、特製のベルトでウエストが3mmも細くなるんだよ!」

 

「間違い探しでねーか!」

 

「ぶふーーっ!あまりデザインを変えないように お願いしてたのよ。」

 

「デザインを変えられると困る人もいますからね!」

 

「つーか、今 着替えてたん??タイラン、生着替え拝んでた系?ww」

 

「タイランとはボクのことかい?」

 

「一式 昨日もらっていたんだけどね、さっきベルトだけ受け取ったのよ。」

 

「美しくベルトを締めるには、力がいるからね。虎林さんにも お手伝いいただいたのさ。」

 

「万力で締め上げたよ!」

 

「確かに。中世のコルセットは数人がかりで締めていた。あまり身体にいいことではないが…。」

 

「いんにゃ。捻挫で腫れてても骨折してても包帯きつく巻いてりゃ痛みに気付きにくいけぇ、締めつけは大事だぁ。」

 

「それは大事にしない方がいい。…ような、気がする。」

 

「ぶふっ!!そう、ね!!でも、私は締めつけがある方が好きなのっ。ぐふ。」

 

「…やれやれ。三途河。そろそろ始めねーか?」

 

「あはは、また余計な話しちゃったわねっ!みんなの時間を無駄にしちゃう!!ーーでは、皆さん。朝も早よから夜の星空を お楽しみください。ふふっ。」

 

(そう言って、三途河さんは隣の放送ルームに続くドアから出て行った。しばらくして、室内のスピーカーから機械の音がして、)

 

『皆さん、空いている席に どうぞ。』

 

(三途河さんの声がした。みんなが近くの席に座ると、スピーカーから爆発みたいな音がした。)

 

「な、何だ!?爆発か!?」

 

「そんなっ…!確かに春は爆発の季節ですけど!今年は長野の天体観測機が爆破されそうではありますが!」

 

「だいじょぶだぁ。三途河さの笑い声だよ。」

 

『ブポハ!!ごめん…なさい!緊張の余り吹き出しちゃったわ。』

 

「特殊な緊張の仕方だね。」

 

「家畜には笑ったような顔で緊張を誤魔化す習性があるものもいる。…ので、特殊じゃないのかも。」

 

『世の中には座ってはいけない椅子がたくさんある中、すんなり座ってくれて ありがとう。』

 

「特殊な椅子…ヘパイストスの手作り拷問椅子、必ず不幸になるという英国バズビーズチェアなどか。」

 

「ワクさん宛のマッサージチェアも忘れちゃいけませんよ!」

 

『ブホォー!』

 

「ねーねー、早く早くー!」

 

「そうそう。朝っぱらから集まったんだから、さっさと始めてくんね?…つって、どうせ暇だし、ゆっくりでいいよww」

 

『そうね。じゃあ、星君。』

 

「ああ。」

 

(星君が呼びかけに応えた後、シアター内の電気が消えた。)

 

(そして、天井だった所には一面の星空が広がっていた。)

 

「す、すごい…!」

 

『ふふっ、ゴン太君…驚いているわね。』

 

『みんな、この星空の中で一際 輝く星を見てちょうだい。それが火星…マーズよ。ローマ神話の軍神マルスから取られたの。』

 

『ちなみに、3月…marchの語源もマルス。興味深いわよね。』

 

「んー?何で3月ー?」

 

『ふふ。聞かれると思ったわ。昔の人にとって、3月は寒い季節が明けて戦争に行く季節だったのよ。」

 

「ふむ。農耕も3月から始まるとされる。マルスが農耕の神とも言われる所以か。」

 

『今お見せしているのは、南ヨーロッパの冬の空。けど、私たちの国の北東部でも全く同じ夜空が見られるのよ。』

 

(それから、三途河さんは冬の空の説明をしてくれた。そして、秋の空、夏の空がゴン太たちの上に現れた。)

 

『これが春のーー…」

 

(三途河さんが言って、不自然な沈黙があった。)

 

『……ごめんなさい。何でも、…ぐっふ…ッ!』

 

(しばらくして、三途河さんが そう言った。けれど、続けて大きな音がした。)

 

「な、何だ!?今度こそ爆発か!?」

 

「何で そんな爆発させたいのwwまたサンズっちの爆笑音じゃね?」

 

「笑った声。…には、聞こえなかった。」

 

「んだな。倒れたみてぇな音だっただ。」

 

「様子が変だったから、見に行ってみた方がいいかもね。」

 

(みんながザワつく中、スピーカーからは何も聞こえない。そして、天井の星空も消えて真っ暗になった。)

 

(嫌な予感がして、ゴン太は思わず立ち上がった。三途河さんが大丈夫か確認しなければ、と。)

 

 

「……?」

 

(ーーこんな感じ…前にもあったような。)

 

(そうだ。ショーをしてくれた友だちが魚に食べられちゃったんじゃないかって…でも、それはショーの”えんしゅつ”だった。)

 

「ほ、星君…これって何か演出なの!?」

 

(みんながザワザワしているので、ゴン太は大きい声で星君に聞いた。)

 

「いや、長すぎる!こんなのは予定にねーぞ!」

 

(星君の少し大きい声も返ってくる。音が反響する上に暗闇で星君の場所は分からなかったけれど。)

 

「ど、ど、どうしましょう!?真っ暗で何も見えませんが!?」

 

「ほ、星君!電気は どこ!?」

 

「扉の右側だ!」

 

(右…こっちかな。)

 

(前回の裁判後、左右は覚えた。ゴン太は右側の壁を探って、スイッチのようなものに触れた。…けれど、電気は点かない。)

 

「あれ!?スイッチ押したのに、電気が点かないよ!?」

 

「落ち着け!獄原、ドアを開けてくれ!」

 

(言われて、手探りでドアを辿り、ドアノブを持った。けれど、鍵が掛かっているようだった。)

 

「あ、開かないよ!」

 

三途河が廊下側から鍵を掛けたんだ!そんな鍵、あんたなら壊せるはずだ!」

 

(言われた通り、開かないドアを思い切り押してみた。紳士的ではないかもしれないけど、金属が壊れる音がして、ドアは開いた。)

 

(ドアが開いて、ようやく少しだけ明るくなった。真っ暗な廊下の向こうのドアから漏れる光のおかげだ。)

 

「その灯りが点いてる部屋が放送ルームだな。」

 

「よっしゃ、とりま、サンズっちとこ行くっきゃないっしょ?」

 

 

 

【春ノ島南 町エリア シアター放送室】

 

(薄暗い廊下を進み、みんなで放送ルーム前に移動した。ゴン太が放送ルームのドアを押すと、また抵抗を感じた。)

 

「こっちも…鍵が掛かってる。」

 

「マジか。鍵 開けらんねーのかよ?」

 

「鍵が掛かってる。…なら、三途河さんは絶対 中にいる。」

 

「おーい、三途河ー!!起きてるー!?」

 

「何かあったんだべかー?返事してくろー!!」

 

「…本当に、どうしたんだろう。」

 

「死んじゃってたりして。」

 

「ああ、誰もが考えていても言わなかったことを!?縁起でもない!やめてください!」

 

(嫌な予感が強くなる。ゴン太は慌てて、持っていたドアノブに力を込めた。また嫌な音が鳴って、ドアが開く。)

 

(一瞬、光が眩しくて何も見えなかった。けれど、)

 

「あ…。」

 

(次に見えたのは、真っ赤な部屋。)

 

(ーーさっきまで、楽しそうに星の説明をしてくれていたのに。)

 

(放送ルームの中で血を流し倒れている三途河さんは、ピクリとも動かない。)

 

(悲鳴が響く。そんな中、モニターにモノクマが映ったのが見えた。)

 

(前回に続く2回目の死体発見アナウンスは、しっかり聞き取ることができなかった。)

 

 

 

非日常編へ続く

 

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「Round. 2 蝶のように舞い、蚊のように刺せ(非)日常編Ⅱ【創作ダンガンロンパ/創作論破/獄原ゴン太V3】」への2件のフィードバック

  1. 更新ありがとうございます!
    V3の2章目を思い出す流れとあんまりしゃべらない星くんを心配してたら三途河さんが…泣
    そういえば本家ロンパでもその章で才能に関係する建物とか出てきた人はいなくなりやすかったな…と思い出しました。
    真っ赤な部屋って操作がかなりキツそう〜と思いつつ、非日常編も楽しみにしていますね♪

    1. トラウマウサギ

      コメントありがとうございます!>その章で才能に関係する建物とか出てきた人はいなくなりやすい。ギクーッ、そんなことないデスヨ?計画的に考えていたらその前から建物出したりできますから、この作品は計画的じゃないとかそんなことはないデスヨ?などと滝汗状態です笑 いつもありがとうございます!

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