Round. 2 蝶のように舞い、蚊のように刺せ 非日常編
(放送ルームの床は赤く染まっていた。)
(さっきまで、ここで笑っていたはずの三途河さんの血だ。)
(そして、その三途河さんは うつ伏せに倒れて動かない。)
「わああ…これは惨い。知ってる人間の大量の血を間近で見るのは初めての人が多いよね。お気の毒に。」
「……なんてこと。」
(いつの間にか、モノクマと華椿さんが その場にいた。)
「……また起こっちまったってことだな。」
「…本気かよ。また…学級裁判……するのかよ。」
「…い、イヤだよ。」
「どんだけイヤだろうと、やるったらやるの!わがまま言わないの!」
「…と、いうわけで、前回と同じの配りまーす。」
(モノクマが前回と同じように、モノクマファイルを渡してきた。それを受け取ったゴン太の手は震えていた。)
「あ、動機の発表なかったじゃんって思ってる人いる?うぷぷ。これ、いつもとは違うから。」
「な、何を言ってるんですか?」
「気にしない気にしなーい!とりまモノクマファイル確認しとくっしょ。」
(指先の震えが止まらない。ゴン太は震える手でモノクマファイルを操作した。)
(『被害者は、”超高校級の天文学者” 三途河 明日見。死体発見現場は春ノ島シアターの放送ルーム。)
(死因は刃物で背面を刺されたことによる出血性ショック死。』)
「えっと…三途河さんは刃物で刺されて死んだってことだよね。」
「そうだね。出血多量で亡くなったということだね。」
コトダマゲット!【モノクマファイル】
「ど、どうしましょう?」
「どうするって、どうしょうもねぇべ。」
「やるっきゃないよね。あの残酷な学級裁判。」
「前回は犯人を見つけられたが…今回 犯人を間違えれば…」
「みんな。…が、あの おしおきをされて死ぬ。」
(みんなが不安そうな声を上げた。ゴン太は何も言えなかった。)
(前回、高橋君が殺されて、河合さんは おしおきされて死んだ。あれは現実だった。)
(それが とても怖かった。)
「私、みんなにも笑って欲しいわ。みんなの笑顔を守りたくて、夜空の鑑賞会やプラネタリウムを開催するの。」
(三途河さんは、みんなの笑顔を守るためにプラネタリウムを開催してくれた。)
(ゴン太も、みんなを守りたい。)
「とりあえず、また2人で捜査すればいいよね?」
「え…で、でも。」
(桐崎さんが言いにくそうにしながら、華椿さんを見た。)
「……わたくしが何か?」
「あー、キリちゃんはハナハナ疑ってんのねwwだから2人になんのはゴメンm(._.)mっとww」
「……。」
「い、いえ!そういうわけではなく…。」
「なく。…は、なさそう。」
「ま、この状況で、疑うのは しょうがないよね。もしオレらの中に犯人いたら密室殺人だし。」
「みっしつ…?」
「密室殺人…誰も入ることができない部屋で人が殺されることですね!」
「左様。三途河殿は放送ルームに、我々はシアター側にいた。そして、その間の扉は閉ざされ施錠されていた。」
「そうそう、オレらにとっては確かに密室殺人だよねー。でもさ…」
(野伏君は小さく笑った。)
「ハナハナの居場所によっては密室殺人じゃなくなっちゃう的な?」
「え、えーと…。どういうこと?」
「んーwwとりま、ハナハナはオレとコンビにするし、それなら良くね?」
「は、はあ。気を付けてくださいね?」
「……。」
「あ、いえ…ハナから疑ってるわけじゃ…。花だけに。」
「疑ってるわけじゃ…なくなくなくない。」
「よし!そうと決まれば、調べちゃお!」
(みんなが2人3人のグループになって散って行く。)
(ゴン太も近くの星君に声を掛けようとしてーー固まってしまった。)
(星君が三途河さんを見ながら、怖い顔をしていたから。)
(ゴン太には、その顔が悲しそうにも悔しそうにも怒っているようにも焦っているようにも見えた。)
「ほ、星君…?」
「………。」
「星君!」
「……!」
「何だ?」
「えっと、またペアで色々…捜査しようってことになったよ。」
「…ああ。そうか。よろしく頼む。」
(短く言って、星君は黙ってしまった。)
(星君の様子も心配だけど…とりあえず捜査しなきゃ。虫さんは、どこを調べたいかな。)
▼全部見た
(三途河さんは放送ルームの機械やモニターに突っ伏す形で倒れている。辺りは血だまりになっていた。)
「……。」
「モノクマファイルから、たくさん血が出て…って話だったよね。」
「…ああ。出血死だな。」
「三途河さんのベルト…取れちゃってるね。」
「今朝 締めてたベルトだな。激しく争ったのか?」
(三途河さんの服は乱れていた。ベルトが外れて、服も はだけて腰のあたりを中心に血で真っ赤になっていた。)
「あれ?」
「…どうした?」
「三途河さんの背中が赤くなってる。」
「そりゃ、これだけ血が出てるんだ。赤くもなるだろうよ。」
「ーーあ、本当だ。ごめんね、三途河。ちょっと見せて。」
「わっ、と、虎林さん!」
(ゴン太たちが死体を見ていた後ろから虎林さんが現れて、服を捲り上げた。)
「わ、わあ、だ、ダメだよっ!紳士は女性の肌を見ちゃいけないんだ!」
(ゴン太が慌てて手で目を覆った。)
「ねえ、見てよ。三途河の腰から背中にかけて、全体が真っ赤なの。日焼け…じゃないし。これって、かぶれ?」
「アタシも、植物とかで かぶれやすいんだけど、そういえば三途河も そうだって言ってたよ。」
「ーーって、ほら、ゴン太、ちゃんと見て!星も!目 逸らしてないで!」
「……。」
「うう、ご、ごめん。」
(恐る恐る彼女の方を見る。そこには服を捲られた女性の背中があって、思わず目を逸らしてしまった。)
(でも、その時 虎林さんの手が震えていたのも見えてハッとした。)
(女性に怖いことをさせるなんて紳士失格だ。)
「ご、ごめん、虎林さん!ゴン太がするから。」
(虎林さんの手を取って、彼女の代わりにゴン太が三途河さんの服の裾を掴んだ。)
「…三途河さん、ごめんね。」
「……。」
(そっと三途河さんを確認すると、痛々しい傷口のある腰から背中全体にかけて赤くなっていた。)
コトダマゲット!【死体の状態】
(三途河さんの服から手を離す。…と、視線を感じた。)
「虎林さん、どうかした?」
「…ゴン太、手…離してくれる?」
「あ…ご、ごめん。」
「ううん…大丈夫。」
(握ったままだった虎林さんの手を離すと、彼女は後ずさる。)
「ゴン太、星、何か見つけたか?」
(虎林さんと調査していたらしい火野君がゴン太に話しかけてきた。それと同時に、虎林さんは火野君の後ろに隠れてしまった。)
「うん。三途河さん、背中が真っ赤になっちゃってるんだ。」
「え?ーーほ、本当だな。刺されたところが痛々しいな…。」
(火野君の顔も前回より緊張している。)
「凶器は落ちてるナイフだよな。べったり血が付いてるし…プラネタリウム中に三途河を刺して、現場にナイフを残して去ったってことか。」
「う、うん。」
「しかも…三途河も抵抗したのか、服も乱れてるしな。ナイフ自体は小さいけど、随分 深く刺さったみてェだ…。痛かったろうな…。」
コトダマゲット!【現場のナイフ】
「……。」
「な、何だァ?虎林、やけに静かだな。」
「何でもない。」
△back
(放送ルームを見回す。学校の放送室と似ている。部屋の一面に放送の機械がたくさんある。)
「ここの鍵は掛かっていたよね。」
「…ああ。三途河が掛けたのか…何らかの方法で犯人が掛けたのか…。」
「え?犯人が?」
「このタイプの鍵なら外から掛ける方法はあるかもしれねーな。」
(そう言って星君は入り口の鍵を見た。よくあるタイプの回して掛ける鍵。ゴン太が壊しちゃったせいで、今は入り口に立て掛けられている。)
「犯人が三途河さんを刺して、ドアから出た後で、鍵を掛けたってこと?どうやってーー…」
「可能性は少ないですよ。」
(入り口近くを調べていた桐崎さんが言った。)
「星先生、これ…ここの鍵ですよね?」
(桐崎さんが部屋の壁に掛けられた鍵を指差した。しっかりした鉄製の鍵。星君は「確かに ここの鍵だ」と答えた。)
「このドアには、ほとんどスキマがないんです。ここの鍵の厚みではスキマから通せません。鍵を掛けた後に室内に戻す術がないんです。」
「それに、ドアノブにピッキングなどの跡もありません。この部屋には窓もないし、ヒモや磁石などで掛けられるタイプでもないですね。」
「ええ!?じゃ、じゃあ、どうして鍵が掛かってたの!?」
「考えられるのは…実は鍵は掛かってなかったとか…。」
「え!?鍵は掛かってたよ?」
「…本当ですか?よくあるんですよ。実は密室じゃなかった密室殺人。その場合、犯人は、そこを密室だと言い張った人です。」
「えっと…。」
「つまり、ゴン太先生!あなたです!!」
「ええ!?ゴ、ゴン太は犯人じゃないよ!」
「はい、そうですね。ボク達はプラネタリウムに参加してたわけですから、完全なアリバイがあります。ボクらの中には犯人はいません。」
「あ、冗談か。よ、よかったよ。」
「前回 容疑者だったゴン太先生が また容疑者というのも変ですから。いや…どうなんでしょう。毎回 疑われる不運すぎる人も…」
(そのまま桐崎さんはブツブツ独り言を言い始めてしまった。)
「ど…どうしよう、星君。もしゴン太が鍵が掛かっていたって勘違いしてたら。」
「……やれやれ。このドアの鍵は掛かった状態で破壊されているぞ。あんたがドアを壊す前から鍵は掛かってたってことだろう。」
「あんたや他の奴らが鍵が掛かっていたように後から細工した可能性もなくはねーが…可能性は薄いと思うぜ。」
コトダマゲット!【放送ルームの鍵】
(もう1度、グルリと室内を見回した。すると、天井の近くに大きい通気口があって、さらに その近くに蜘蛛さんがいるのに気が付いた。)
「あれ…この蜘蛛さん、どうしたんだろう。」
「……おい、獄原。今は、虫に かまけてる場合じゃねーと思うぜ。」
「う、うん。えっと、星君。あの通気口はシアターの方に繋がってるのかな。」
「…ああ。特に いじっちゃいなかったがな。」
(あの蜘蛛さん…。通気口から出てきたみたいだ。でも、どうしてだろう。巣を張ったら獲物が掛かるまで動かないタイプの蜘蛛さんなのに。)
(通気口は小学生くらいなら這って進めそうな大きさだ。蜘蛛さんの巣を作るのには大きすぎたのかもしれない。)
コトダマゲット!【放送ルームの蜘蛛】
△back
(だいたい放送ルームの中は調べられたかな?)
「星先生は三途河先生のアシスタントをしていたんですよね?お話を伺っても?」
「あ…そ、そうだよね。」
「星、この現場で何か気になることねェか?」
「…いや、殺人現場になったこと以外、俺と三途河が準備した時と変わりはねーな。」
「そっか…。三途河さんに変わったところ…もなかったよね。」
「ああ。直前まで放送してたもんな。」
「つまり、シアターでプラネタリウムに参加していた人には犯行は不可能ですよね。みんなシアター側にいたんですから。」
「あれは間違いなく三途河が放送してたんだよね?」
「少なくとも、放送ルームの設備には録音機能はないそうだぜ。」
コトダマゲット!【放送ルームの設備】
「そういや、星以外も朝、先に こっち来てるヤツいたよな?」
「そういえば…虎林さんも、ゴン太たちより早く来てたよね。」
「えっ!?」
(ゴン太が聞くと、虎林さんは大きな声を出した。それから、とても小さい声で言った。)
「うん…。楽屋に差し入れ…じゃないんだけど、その辺に咲いてる花を摘んで持って来たんだ。あ!あの、花摘むって普通に、言葉のままの意味で…」
「大丈夫ですか、虎林先生。いきなり大人しくなって…。」
「当然だよ。こんな状況だもん。ゴン太にできることなら何でも言ってね。」
「……っ!……あ、ありがと。」
「虎林が朝一番に来た後、伊豆野が やって来た。蔵田が作った差し入れとやらを届けに来たらしい。」
「差し入れ?」
「レモンのハチミツ漬けだ。」
「運動しねェのに?」
「ハッ!?そのハチミツが毒入りだったのでは!?トリカブト入りハチミツを…」
「いや、その場にいた全員で食ったから、それはねぇ。」
「うん。アタシも伊豆野も食べたよ。」
「そ、そうですか…。トリカブトと他の毒を混ぜて毒殺時間を変えるって…見たことあったのに…。」
「朝は平も来てたんだよな?」
「ああ。レモンのハチミツ漬けを食ってる時、平が来た。」
「三途河の おニュー服のベルト持ってきたんだよ。上映前に着けときたいって三途河が言ったから、アタシも締め上げるの手伝ったんだ。」
「2人がかりで締め上げるって、昔のコルセットみたいですね。」
コトダマゲット!【星の証言】
「他には、何か気になることとか…変なこととかなかったか?何で三途河が殺されちまったんだ?」
「そ、それは さすがに、星先生に聞いても分からないのでは…。」
「………。」
(星君が俯く。ゴン太からは彼の表情が全然 見えない。)
「星君、大丈夫?」
「…ああ。大丈夫だ。」
「体調が悪いんじゃない?それなら大変だよ!少し休んだ方が…!」
「いや…。必要ねーよ。それより、ここ以外も見ておいた方がいいんじゃねーか?」
「そ、そうだね…。」
(そうだ。放送ルームの外も見ておかなきゃ。虫さんは どこから調べたいかな。)
▼全部見た
【町エリア シアター】
(放送ルームの隣、シアターに来た。少し前まで夜空を映していた天井は、今は白かった。)
(ちょっと前まで…あんなに綺麗だったのに。)
(上を見上げていたら、放送ルームに繋がる通気口が見えた。隣と同じように、天井近くに大きめの穴が空いていて、簡単な格子がしてある。)
コトダマゲット!【通気口】
(入り口近くに戻ると、壊れたドアの前にイーストック君と平君がいた。)
「ゴン太君、星君。シアターも鍵が掛かっていたんだよね。」
「うん。それで、ゴン太がドアを壊しちゃったんだ。」
「確かに、このドアは廊下側から鍵が掛けられていて、シアター側からでは開かなかったようだ。このドアも鍵が掛かったまま壊れてしまっている。」
「我々は死体発見後、誰より早く ここに来たから、誰も触っていないはずだ。」
コトダマゲット!【シアターの鍵】
「プラネタリウム中に反対の玄関ドアから出入りした人はいなかったよね。」
(放送ルームに行くドアとは反対の玄関ホールへのドアを見た平君が言った。)
「…ああ。玄関ホールは明るかったからな。誰かが少しでも扉を開けりゃ、光で気付くはずだ。」
「つまり、プラネタリウムの放映中に参加した者は移動していないということ。」
「三途河さんがいた放送ルームも内側から鍵が掛かっていたんだよね。なら、ボクらはシアターも放送ルームも入ることが難しい状態だった。」
「そんな中、三途河殿は刺された…か。」
「……答えは簡単さ。」
「ああ。恐らく。」
(そうやって頷き合う2人の顔が青ざめていた。)
「2人とも…大丈夫?」
「大丈夫と言えば嘘になる。けれど、やらねば。生きねば。」
「前回より ずっと顔色が悪いから…ゴン太、心配だよ。」
「そう言う獄原殿の顔の青さたるや。」
「う…うん…。ゴン太も…かもしれない。」
「…無理もない。前回は…初めての事件では現実感はなかった。けど、今回は…知っているんだ。どうやって おしおきされるのかを。」
(前回の おしおき。河合さんの表情を思い出した。)
(犯人を間違えたら…みんなが ああなってしまう。ーーううん。間違えなかったとしても…また…。)
「……さすがの星君も、今回は顔つきが違うね。今までは かなり冷静だったけれど。」
「フッ…。違いねーな。」
(やっぱり、みんなから見ても、星君の様子が違うんだ。でも、2回目だから、みんな前回以上に緊張している。当然だ。)
(星君も…そうなのかな。)
△back
【町エリア シアター 廊下】
(放送ルームを出た廊下の右はシアター、左の道は まだ行ったことがない。)
「星君、こっちは何があるの?」
「…勝手口があったな。」
「そっか、調べてみようか。」
(途中まで歩いたところで背の高いロッカーがあった。)
「……ロッカーだ。」
(どうしてか分からないけど、何か引きつけられる気がして、扉を開けた。)
(中には掃除用具などが入っているだけだった。)
「星君、この中に人が入って隠れたりーー…」
(星君の方を振り向いたら、星君がハッとした顔になった。)
「だ、大丈夫?」
「……ああ。いや…何だ?ロッカーを見ていたら…変な感じがした。それだけだ。」
(星君も?)
コトダマゲット!【廊下のロッカー】
「ゴン太さ、星さ。」
「2人でロッカーを見つめてた。…けど、何かあった?」
「あ、ううん。何でもないよ。」
(廊下の先に、伊豆野さんと蔵田さんがいた。)
「確か、そっちは勝手口があるんだよね。」
「んだ。」
「…でも、開かない。」
「え、そうなの?鍵が掛かってるのかな。」
「んにゃ。建てつけが悪いみてぇだ。押しても引いても開きゃしねぇ。」
「事件と関係がある。…かもしれない。」
「…そこはプラネタリウムをやる前から使えなかったぞ。準備の時に三途河と設備を色々 調べた時も開かなかった。」
「…そうだったんだ。」
(建て付けが悪いドア…これも どこかで最近 聞いた気がする。)
コトダマゲット!【勝手口のドア】
「プラネタリウム上映中に被害者は襲われた。…から、侵入者は勝手口から入った。…と思った。」
「それが無理だったら…犯人はずっと この建物ん中いたっつーことでねーか?」
「え!?」
「んだろ?だって、ここの正面玄関から放送ルームにはシアター通ってしか行けねーべ。んで、シアターにはオラたつがいた。」
「…しかも、シアターから放送ルームに行くドアは鍵が掛けられていた。勝手口も開かない。…それなら、犯人は どこから現れた?」
「そ、そっか!ずっと建物の中にいれば、犯人も入れるんだね!」
「つまり…シアターにいなかった人間が犯人だ。そう言いてーのか?」
「他に誰がいるんだべ?」
「他の可能性。…例えば、被害者の放送がニセモノだった。…ら、可能性はある。」
「いんにゃ。プラネタリウムの放送は三途河さの生声だ。」
「そうなの?」
「んだ。オラの耳に間違いはね。人の発声には独特のリズムがあんだ。」
「たとえ獄原さがモノマネ名人で、星さとか、やまづら ごーいちとか、ふぐやま まさへるとかのモノマネしても、オラには わがる。」
「ゴ、ゴン太は星君たちを真似してないよ!?」
「例えばの話だぁ。」
「プラネタリウム放送は本物。…と、いうこと?」
「んだな。オラ、踊りの練習は録音に合わせるこつ多いけんども、本番は生演奏や生声に合わせて踊る。そんなん聞き分けんのも得意だぁ。」
「す…すごい!」
「…相当、耳に自信があるみてーだな。」
「ダンスは音楽を使ったスポーツだかんな。耳は大事だ。デケェ音で音楽 聞くのも、イヤホンやヘッドホン使うのも禁止されてたぐれぇだ。」
「だから、オラにとって三途河さは生まれて初めての かしましさだっただよ。」
(伊豆野さんが寂しそうに言った。やっぱり、その顔も前回より緊張しているように見えた。)
△back
【町エリア シアター 外】
(虫さんを追いかけると、シアターの外に出てしまった。)
「おっほ、ゴンちゃん。それに、ホッシー、やほー!」
「……。」
(シアターの正面玄関の前に野伏君と華椿さんがいた。)
「第一容疑者はオレが見張ってっから、大丈夫だよw安心して捜査しといてww」
「容疑者?」
「そうそう。そりゃ、そーでしょww」
「わたくしは犯人ではありません。プラネタリウムに参加してないからといって疑うのは おやめください。」
「あ、そうだね。華椿さんは今朝、どこにいたの?」
「…わたくしは ずっと部屋におりました。」
「それを証明する人はいないけどーww」
「部屋にいたら、死体発見アナウンスが聞こえたので、ここに参上したのです。」
「本当かなーww」
「茶々を入れるのは およしなさい。」
「とにかく、わたくしは今朝まで貴方様方が どちらにいるのかすら、知らなかったのです。」
「そ、そうだったんだ。ごめん。」
「……。」
「でも、それを証明するのはムリっしょ?」
「……。」
「…そこにあるカメラは どうだ?」
(星君がシアターの前の電灯に取り付けられたカメラを指差した。)
「あ、あんな所に…。でも、カメラは島中どこでもあるみたいだけど…。」
「あのカメラは他のカメラとは違うようだぜ。」
「本当だ。宿舎とか他のところのカメラと違うみたいだね。」
「カメラに敏感なんて犯罪者みてぇww」
「……。」
「でも、モノクマ見せてくれるかな?」
「もちろん、見せたげるよ。」
「呼ばれて飛び出て〜」
「モノクマ、本当?見せてくれるの?」
「……あれ?誰も驚かない。やっぱり動体視力とか勘のいいヤツってのは、突然 現れても驚いてくれないんだな。ちぇっ。」
「何をブツブツ言ってんのか知らないけど、見せてくれんなら早くしてくれね?」
「ハイハイ。よっこいしょういち。」
(モノクマがシアターの建物前の電灯に取り付けられたカメラを持ってきた。そして何か操作をしてからゴン太たちに見せた。)
(そこには、今朝の写真が映っている。下の方に時間も書かれていた。)
「朝 最初の写真は…星君と三途河さんだね。」
「…ああ。その後、虎林、伊豆野、平の順で中に入ってるな。」
「そんで、その後 来たのがハナハナ以外のオレら全員ね。」
「そして、アナウンス後に来た わたくしも映っていますね。」
「あ、本当だ!この時間は発見アナウンスの15分後だね!」
「ハナハナの犯行、偽装工作後ってことだね!」
「ですから決めつけないでくださいまし!」
コトダマゲット!【防犯カメラ】
△back
『時間になりました。学級裁判を始めます!』
(色んなところからモノクマのアナウンスが響く。)
「前回と同じ…本島の校舎に行くんだよね。」
「ああ…そうみてーだな。」
「……。」
(星君の顔色は変わらず悪い。)
(ゴン太もだ。前回よりも、ずっと…ずっとずっと…怖いと思ってる。)
「星君、みんな…前回より怖いんだよね。」
「……。」
「前回、河合さんの…おしおきを見て…ゴン太は何もできなかった。でも…。」
「ゴン太は…みんなを守りたい。三途河さんみたいに、みんなの笑顔を守りたい。」
(ゴン太が言うと、星君は口を笑った形にしてくれた。)
「…そうかい。」
(でも、その表情は笑顔からは遠いものだった。)
【本島北エリア 校舎 玄関】
(校舎の玄関に全員が集まった。)
(前回と同じように、みんなが集まると玄関の赤い扉が開いた。)
(エレベーターホールに進み、エレベーターに乗り込む。)
(2回目の学級裁判。1回目の結末を見てしまったから、余計みんな緊張している。知ってしまった。どんな風に…おしおきされるのかを。)
(それでも…三途河さんを殺した犯人を見つけないといけない。)
(犯人を見つけないと、みんな死んじゃうんだ。)
(ゴン太も、ちゃんと考えるよ。生き残るために。)
(この…命懸けの学級裁判で。)
コトダマリスト
被害者は、”超高校級の天文学者” 三途河 明日見。死体発見現場は春ノ島シアターの放送ルーム。死因は刃物で背面を刺されたことによる出血性ショック死。
死体はうつ伏せに倒れており、ベルトが外され、背中が はだけていた。腰から背中全体にかけて、かぶれにより赤くなっていた。
死体近くに落ちていた小型ナイフ。大量の血痕が付着している。
シアター正面玄関への出入りを写したカメラ。今日現場に来た全員の姿が撮られている。華椿以外は事件前、事件後 発見アナウンス15分後に華椿の姿が写っていた。
廊下から放送ルームへの扉。事件時は内側から鍵が掛けられていた。
星によると、放送ルームの設備には録音機能はないそうだ。
放送ルームの壁にいたクモ。通気口内にいたと思われる。本来は1度巣を構えたら動かない種。
シアターから放送ルームに向かう廊下に続くドア。事件時は廊下側から鍵が掛けられていた。
シアターと放送ルームを繋ぐ通気口。どちらも天井近くにあり、簡単な格子がしてある。小学生くらいなら通り抜けられそうだ。
放送ルームと勝手口の間にあるロッカー。一般的な清掃用具が入れられている。
勝手口は建て付けが悪く、使えない。星によると、プラネタリウム上映前から使用できなかったとのこと。
プラネタリウム上映前に虎林、伊豆野、平がシアターに訪れた。虎林は花を、伊豆野はレモンのハチミツ漬けを差し入れに、平はベルトを渡しに来たらしい。
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