Round. 5 教会とカネの音と私(非)日常編Ⅰ

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Round. 5 教会とカネの音と私(非)日常編Ⅰ

 

「オレは嘘つきだからね。」

 

(……君の嘘には、理由があったはずだよ。今のゴン太は、知ってるよ。)

 

「学級裁判に余計な感情なんかいらないからね。必要なのは論理的な思考だけ。」

 

「分かったら、ゴン太も ちゃんとやれよ!真相に辿り着くために論理的に反論しろよ!」

 

「頭を使って、ちゃんと反論しろってことだよ!」

 

「ゴン太 早くしろよ!言い逃れでも言い訳でも何でもしてみろよッ!!」

 

「どうして、お前は そんなにバカなんだ!!」

 

(うん、ゴン太は本当に…。だから、……君は自分で考えるように言ってくれたんだね。)

 

「みんなを この地獄から救いたいなら、いっそ何も知らない内に楽にしてあげるしかないよ。」

 

(ーー知ってるよ。みんなのために嘘を吐く、みんなのために悪者になろうとする…君を。)

 

「ゴン太…!やっぱり…オレも…!!」

 

(でも非情になりきれない、優しい…君を。)

 

 

(目が覚めた。)

 

(頬に温かいものが伝う。それが涙だと気付いて、ゴン太は指で拭った。)

 

(夢を見ていた気がする。けれど、内容が思い出せない。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

「おはよう、みんな。」

 

「おはようございます。」

 

「今日も良い天気だべな。」

 

「おはよーす。」

 

「今日も張り切っていきましょー…。」

 

「……ああ、そうだな。」

 

(みんなは既に食堂にいて、挨拶してくれたけど、元気がない。)

 

(それもそのはず。裁判後の朝は、それまでよりも人数が減ってしまったことを実感する。)

 

「おはっくま〜。あれ?これだけ?ずいぶん少なくて、名前 覚えられない系の書き手がラクだねー。」

 

(そんな雰囲気の中、モノクマが小首を傾げながら現れた。)

 

「みーんな、死んじゃいましたもんねー!結構サクサク死んでますねー!スペランカーかっての!」

 

「…そんなことを言いに来たわけじゃねーだろ。」

 

(嫌な笑い方をするモノクマを星君が睨む。モノクマは気にしない様子で、また笑った。)

 

「そうそう。いつも通り、エリア開放イベントですよ。朝食後、北エリアの校舎裏に集まるように。」

 

「はー、校舎裏かー。ケンカやイジメやコクハクの現場に立ち会わんようにしないとねww」

 

「オラたつしかいねぇのに、立ち会うわけね。」

 

「いいえ。殺人鬼が どこかに潜んでいる可能性もあります。」

 

「殺人鬼1人ではケンカもイジメもコクハクもできないのでは…?」

 

(そんな話をしながら朝食を終え、みんなで校舎に向かった。)

 

 

【本島北エリア 校舎裏】

 

(モノクマに促された通り、島の北側の校舎裏まで やって来た。そこでモノクマは高らかに言い放った。)

 

「それでは、最後の島に ご案内しましょう!その名も…!」

 

冬ノ島でしょう?推理するまでもないですよ。」

 

「オマエラが実際に島に足を踏み入れて観測しない限り、冬ノ島であるともないとも言えないんだよ!」

 

「そんな何とかのネコみたいな…。」

 

「シュレディンガーの猫!悪魔の証明!メアリーの部屋!ブラッディメアリー!最近のゲーオタが使いたがる用語集!」

 

「聞き覚えないものと都市伝説混じってましたけど。」

 

(モノクマと桐崎さんが そんな話をしている間、ゴン太は近付いてくる島を見ていた。)

 

「お、島、来たじゃん。」

 

「寒いんだろなぁ。あったけぇもん持ってくりゃ良かったべ。」

 

「冬ノ島沖で漁ができたそうですが、島自体が動いてしまうと漁業区画も変わってしまいそうですね。」

 

「はーい、次の島の名は…なんと……冬ノ島でーす!館と教会しかない島を楽しんで!」

 

「結局 冬ノ島なんじゃないですか!」

 

(いつの間にか現れた橋とゴン太たちを残して、モノクマは消えた。それを合図に、全員で橋を渡り始めた。)

 

 

【冬ノ島南】

 

「急に冷えてきましたね。」

 

「冷えるも何も、一面 真っ白でねぇか!」

 

「やっべ!パウダースノーじゃん!?スノボしてー!」

 

「スノーボードができるような山はなさそうだがな。」

 

「そうですか…。スノボ趣味の推理作家に あやかって、『白銀ジャック』ごっこしたかったのに。」

 

(みんなの言う通り、島に入って すぐ寒さを感じた。一面 銀世界だ。)

 

「橋を隔てただけで、これだけ温度差があるなんて…いえ、もはや慣れました。」

 

「モノクマの言う通り、館エリアと教会エリアがあるようですね。」

 

(華椿さんが言いながらモノパッドを開く。それに倣ってゴン太もマップを見た。)

 

(ーーどこか見覚えのあるマップを。)

 

「ふーん。あとは森と、川もあんのね。つーか、ゴンちゃん、足 寒くね?」

 

「え?」

 

「あ、そうですね。ゴン太先生、裸足じゃないですか。何か履いた方が良いですよ。」

 

「あ、大丈夫だよ!紳士は足の皮が厚いんだ!」

 

「前に…河合さんも言ってたよ。紳士は面の皮っていうのが厚くて心臓が毛むくじゃらなんだって。」

 

「なんか嫌な紳士だべな。」

 

「マジで、タイランに靴つくってもらえなくて残念だったねー。」

 

「ここで漁もできっなら蔵田さにカニ鍋さ作ってもらっただにな…。」

 

「……うん。そうだね。」

 

(河合さん。平君。蔵田さん。そして、イーストック君。)

 

(学級裁判でクロだった人たち。)

 

 

「紳士をやるには金がいる。覚えておくといい。」

 

「華椿君は私を使って高橋君を排除した。そういうことじゃないかな?」

 

「たぶん…ボクは河合さんと同じだ。」

 

「オレンジの片割れを探していた。」

 

「…私と同じ人がいるかもしれない。」

 

「あなたが解いた絵。虫の漢字を付けて完成した絵図。蛤…それがーー…」

 

 

(おしおき前、みんなが言っていたことが蝿さんみたいにグルグル頭の中を回っている。)

 

「ーーとにかく、ここを探索するか。」

 

(星君が言うと、みんな散り散りになった。)

 

(ゴン太も行こう。ーー館から行こうかな。)

 

 

【冬ノ島西 館エリア】

 

(冬ノ島の西側には大きな屋敷がある。屋敷の北は森が広がっているみたいだ。)

 

(屋敷の中に入った。玄関ホールは広くて、暖かい。)

 

(同じ階に、食堂とトイレ、サロンがある。地図によると、階段を登れば屋上に行ける。)

 

(食堂、トイレ、サロンを見た後、屋上の階段を上がった。屋上のドアを開けると、金色の髪が見えてドキっとした。)

 

「……あ。」

 

「あ、ゴン太さ。」

 

「……。」

 

「ゴン太さ?どうかしただか?」

 

「…何でもないよ。」

 

(伊豆野さんの金色の髪と、誰かの髪が重なった気がしたから。)

 

「ここも寒ぃべな。ゴン太さは大丈夫だか?」

 

「うん、大丈夫だよ。伊豆野さんは1人?」

 

「いんにゃ。」

 

(呆れたような顔になって、彼女は屋上の一点を指差した。開いたままの小さな建物の扉の先に華椿さんが見える。)

 

「華椿さ、先に あっこ調べてんだ。オラがケガすたらいげねっづって。」

 

(どうやら、中は倉庫らしい。近づくと華椿さんが振り向いた。)

 

「伊豆野さん、ご安心を。ここには危険はなさそうでーー…あら、獄原さん。」

 

「危険はなさそうなんだね。良かった。」

 

「ええ。ソリに使えそうな板があるだけです。」

 

「……そっか。」

 

「何もなかったべか?んだば、さっさと中に戻るべ。寒くて仕方がね。」

 

「伊豆野さん!中で お待ちなさいと言いましたのに!貴女様は身体が資本でしょう?」

 

「オメさが探索してる間に自分だけヌクヌクできねっだろ。」

 

「なんという連帯感…!その心が あの舞いを生むのですね!ううっ!」

 

「だー!そんなことで感動しねーでけろ!!ゴン太さも、裸足で無理しねーようにな。」

 

(伊豆野さんは、彼女の周りを公転する華椿さんと屋上から出ていった。)

 

(2人が仲良くなって良かった。)

 

(ーーそんな気持ちで和むところなのに、ゴン太の心臓は落ち着かない。)

 

(冷えた屋上の地面が、倉庫の道具が、向こうに見える望遠鏡が、ゴン太を責め立てているように感じた。)

 

(瞬間 寒気と頭痛を感じて、慌てて館の中に戻った。それから、教会側に向かうために館を出た。)

 

 

(館から一本道で教会エリアに行けるみたいだ。北側の森を一瞥して、東への道を進んだ。)

 

(川に掛かる簡素な橋を渡って少し行くと、小さな教会が見えた。)

 

 

【冬ノ島東 教会エリア】

 

「あ、ゴン太先生!ここも寒いですね!」

 

(冷え切った教会内には桐崎さんがいた。)

 

「オレもいるよーーww」

 

(死角から野伏君も現れて、ちょっと びっくりした。)

 

「2人とも、何か見つかった?」

 

「んー、何かっつーか?」

 

「物が多すぎて。この世の全てを置いてきた…みたいな空間です。」

 

「あるべきはずの時計はないんだけどね〜ww」

 

(2人が言う通り、教会内はゴチャゴチャに置かれたダンボールと重ねられた本で壁が見えないほどだ。)

 

(奥の方にオルガンらしきものが見えるけれど、それもダンボールや物に埋まっていて先が見えない。)

 

「スネークが好きそうなダンボールの中に電化製品、おもちゃ、園芸用品、ファッション用品…まるでデパートです。」

 

「ブラックライトにルミノール試薬!スイッチを入れた瞬間 常夏、切った瞬間 極寒になる石油ストーブ!」

 

「持ってると金が入ってくる置物とか、家事便利グッズとか、シルクの単物とかね。清貧とは無縁の教会らしいわww」

 

「あ、ゴン太先生、シルクハットもありますよ!被ります?紳士の証。」

 

(桐崎さんがゴン太に紳士的な帽子を被せてくれた。)

 

「オレ的には寒々しい足元の方、どうにかして欲しいわw ってか、ゴンちゃん的には養蚕業ってありなワケ?」

 

「え?どういうことですか?」

 

「だって、シルクって、蚕のマユから取るヤツっしょ?」

 

「ああ…!歴史でも勉強しますね。過酷な労働だったとか…。」

 

「…過酷なのは人だけじゃないよ。」

 

「え?」

 

「蚕さんはね、人工的に”作られた”虫さんなんだ。繭のためだけに育てられて…繭を作ったら殺されちゃうんだ。」

 

「もし、繭から出られても…口が退化してて、ご飯を食べられない…。外の世界では生きていけない虫さんなんだ。」

 

「まるでオマエラみたいだね。」

 

「うわっ、モノクマ!」

 

(突然モノクマが教会内に現れて、桐崎さんが飛び上がった。)

 

「オレらみたいって、どゆこと〜ww」

 

「そうだよ。どうしてゴン太たちが蚕さんと同じなの?」

 

「えー、だって そうじゃん。コロシアイのために~…で、外の世界に出られないんだから。」

 

「今だって、働きもせずグダグダ生きてるじゃーん。」

 

「閉じ込められてるからです!外に出たら立派に生きていきますよ!超高校級の才能を使うなり家業を継ぐなりして!」

 

「そーそー!はやく出せー!ww」

 

「何で半笑いなんですか!」

 

「ゴン太たちは外でも自分たちで生きていけるよ。蚕さん達と同じじゃない。」

 

「やれやれ、思春期の自立心ゆえの反抗的態度ほど見ていて滑稽なものはないよ。全然 自立できてないくせに。」

 

「そんな お子ちゃまゴン太クンに、大人の階段!虫の妖精を闘わせるメスキングカードを贈呈しましょう。」

 

「え?む、虫さん?」

 

「ダメです!ゴン太先生!それは背中に刺青ある人がドハマりしたやつ!大人のムシキングです!」

 

(モノクマが手にしたカードは桐崎さんのガードにより見ることはできなかった。)

 

(モノクマが消えたタイミングで桐崎さんと野伏君が外に出たので、ゴン太も教会を後にした。)

 

(冬ノ島から出ようと1人で歩いていたけれど、ふと北の森を調べていないことに思い当たった。)

 

(行ってみよう。あそこには、“何か”ある気がする。)

 

 

【冬ノ島北 森】

 

(森は木と雪しかなかった。けれど、木々の間から小柄な背中が見えた。)

 

「あれ?星君。」

 

「……ゴン太か。」

 

「星君も ここを調べていたんだね。」

 

(星君が ゆっくり振り向く。ゴン太の言葉に短く「ああ」と返してくれた。)

 

「…何か見つかった?」

 

「……いや、特に何も見つからなかった。」

 

「そっか…。」

 

「……冷えるから、俺は先に戻るぜ。」

 

(言って、星君は素早く その場からいなくなった。)

 

(星君、さっき何かを後ろ手に隠したような…。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 獄原の個室】

 

(冬ノ島の探索を終えた全員で夕飯を食べて、部屋に戻った。)

 

(何故か、冬ノ島の風景に見覚えがある。あそこを歩いていると胸がザワつく。)

 

(ーーゴン太、どうしちゃったんだろう。)

 

(不安な気持ちを抱えたまま、ゴン太は目を閉じた。)

 

…………

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(よく眠れないまま、朝時間になってしまった。)

 

(いつも通り、枕元の箱が開かないことを確認して、身支度を整えた。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

(食堂には既に全員が集まっていた。その中心に星君がいて、みんな どこか神妙な顔をしていた。)

 

「おはよう、みんな。どうしたの?」

 

「星先生が話したいことがあると…。」

 

「ホッシーが人殺しちゃった⭐︎みたいな顔すっから、オレらも伝染っちゃった的な?」

 

「……全員 揃ったな。」

 

(星君がゴン太を見て、食卓の上に冊子を置いた。)

 

「何ですの?それ。」

 

「昨日、冬ノ島の森で発見した。」

 

(昨日の帰りに星君が隠したもの…かな?)

 

(ゴン太は冊子を手に取った。そこには、数ページに渡って漢字とカタカナの読みづらい文字が並んでいた。)

 

16人中8人ハ、クロ候補生デアル。
内、死亡者ノ犯罪歴ハ以下ノ通リ。
切リ裂キジャック…推定殺人数15人
人肉解体業者…推定解体数38人
デマゴーグ…推定自殺教唆数59人
武器商人…推定武器販売総額1.6億円
運ビ屋…推定密輸総額5800万円

 

「…クロ候補生?」

 

「何だべ、これ?」

 

“16人中8人”ねー。」

 

「……その数字、イーストック先生のメモにも書いてありました。」

 

「…よく分かりませんね。」

 

「……俺たちに関係がないと思えるか?」

 

「えっ。えっ!?ボ、ボク達のことってことですか!?」

 

「16人…確かに、最初に2人死んだ奴含めたら16人だべが…。」

 

「ここに書いてあんのがオレ達のこと?だとしたらヤバくね?16人中8人が犯罪者とかww」

 

「ったらこと、あるはずねーべ。オラたつ高校生だべ?」

 

「……実際、わたくし達の中から殺人を犯す者が現れましたが。」

 

「これが本当だとしたら…16人の中に切り裂きジャック…?とかがいたってこと?」

 

「切り裂きジャックとは、ロンドンに現れた連続殺人鬼のことですね。」

 

「……狂気的な殺人鬼でしたよね。娼婦を殺した上、死体を切り刻んでいたという…。」

 

「さっすがー、名前が似てるだけあって、詳しいねーww」

 

「ボ、ボクじゃないですよ!?名前は似てますが、関係ないですからね!?」

 

「切り裂きジャックは、お前だーとか言ってねーわw つか、死亡者のってあるし、死んだヤツってことじゃね?」

 

「え?え、誰だべ?今まで死んだ奴ん中に、んな おっかねぇ奴いただか?」

 

「えっと…このデマゴーグ?っていうのは?」

 

「いわゆるデマ…偽情報を意図的に発信する者のことですね。これも…死んだ人たちの中にいるということですか…。」

 

「誰が誰だったんかは なんとなく想像できるとして…」

 

(野伏君が意味ありげに笑った後、真剣な顔で言った。)

 

「これが本当に私たちのことならば、問題は、犯罪者が あと2人生きているということでしょう。」

 

「……。」

 

「2人…?全部で8人ならば、あと3人では?」

 

「1人はハナハナっしょ?仕事ができない仕置人さん?ww」

 

「うっ…。馬鹿になさらないで。わたくしは仕事ができないが故に、殺人歴はありません(まだ)!!」

 

「よしんば犯罪歴が残っていたとて、住居不法侵入の後あっさり捕まって『道に迷った』と誤魔化した15回のみ!」

 

「悲しい叫びだなぁ。」

 

「……や、やっぱり…ゴン太先生、推定懲役348年の喧嘩屋だったんですか?」

 

「ええ!?ゴン太はケンカなんてしないよ!!紳士は人を傷つけたりしないんだ!」

 

「ゴメンなさいゴメンなさい!言ってみただけです…!」

 

「怯える必要はありません。これも、モノクマが用意した罠。貴方様方の中に犯罪歴がありそうな人もいませんし。」

 

「そっかなー?でも、ホッシーは、これがオレらのことだと思ったんだよね?」

 

「……俺は見せておく必要があると判断して見せただけだ。」

 

(星君は短く言って、食堂を後にした。その背中を眺めながら、ゴン太は数日前のことを思い出した。)

 

 

「俺は人殺しなんだよ。」

 

 

(もしかして、星君ーー…)

 

「あららー。見つかっちゃったかー!」

 

「モノクマ…!」

 

(突然、目の前にモノクマが現れた。モノクマは冊子をパラパラ捲りながら、ゴン太を見た。)

 

「どう?意外な事実だった?」

 

「事実…?」

 

「何?コレはマジのマジで、オレらのことってこと?」

 

「信じるか信じないかは自由だよ。でも、本当なら、15人も殺した殺人鬼さんが早々に死んで良かったね〜。」

 

「15人…冊子の切り裂きジャックのことですか!?早々に死んだんですか?」

 

「うん。早々も早々。曹操もビックリの早々さだったよ。」

 

「何を言っているのか意味が分かりませんね。」

 

(モノクマが言う殺人鬼ってーー…。)

 

▼殺人鬼の正体は?

   

 

 

 

「うぷぷ。ゴン太クン、ここは裁判場じゃないんだからテンション間違えないでね。いやー、思い出すなぁ…」

 

「自称弊社社員が『君は生き延びることができるか…』ってシリアスに宣伝しようとして失敗したことを。」

 

「ボクは生き延びることができるかぁ!?って、Wガンダム語るイオリ少年みたくV2生存者を語り出しちゃってね。」

 

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「彼しか…いないよ。」

 

高橋君。1番 最初の学級裁判で被害者だった…彼しか。」

 

「大正解!覚えてる?えーと…名前は高橋クン?ーーだっけ?ほら、特徴のないのが特徴みたいな子!」

 

「華椿さが高橋さの殺人現場を見たっち言ってただな。」

 

「ええ。西の灯台で亡くなっていた…”超高校級のハンター” 狩野さんを捌いていたところですね。」

 

「う…殺害した女性の内臓を取り出していた本家と同じですよ…。気持ち悪いことに。」

 

「さっすが、詳しいねww」

 

「だ、だから、名前は関係ありませんから!…というか、やはり華椿先生の見たものは本当だったということです?」

 

「…まだ信じていただけていなかったのですね。」

 

「うんうん。狩野さんを殺したのは、彼で間違いないよ。」

 

「ほ、本当に…?」

 

「これまでボクは嘘は言ってこなかったでしょ?」

 

「妙なことは山ほど言ってただがな。」

 

「ボクは、このコロシアイの運営者だからね。嘘吐けないんだよ。ま、言いまつがいくらいはあるけどね。」

 

「あの高橋クンってのは、『才能が欲しすぎて殺人やってみた』を極めし、激ヤバドキューン少年だったのです!」

 

「うぷぷ。『才能が欲しすぎて違法実験の被検体になってみた』と、どっちがヤバいんだろうね?」

 

「…あのー。も、もしかして、東の灯台で発見された…焼死体の人も高橋先生に殺されたんですか?」

 

「ん?だども、あの焼死体は手口が全く違ったべな。」

 

「ええ。殺されて、しかも焼かれていました。同一犯と考えるのは早計かと。」

 

「で、でも…。それじゃあ、あの死体の人は誰に殺されたんですか?」

 

「ねえねえ、焼死体 焼死体って、呼びにくくない?えっと〜、彼の名前は何だったっけ?たしか…」

 

「えっ、名前ネタバレありなんですか?」

 

「モノモノ、前 言ってたじゃん?相上 旺あいうえ おう(仮)っしょ?www」

 

「そういや、そんな ふざけた名前付けてただなぁ。」

 

「あ、そうそう。命名・ボクのイカした名前があったんだった。相上 旺クンも、殺されたんだよ。”クロ候補生”に。」

 

「そのクロ候補生とは何ですか?」

 

「候補生は候補生だよ。それ以上でも以下でも以北でも以南でもありません!せいぜい考えを巡らすことだね!」

 

(ピシャリと言い放った後、いつも通り嫌な笑いを残して、モノクマはいなくなった。)

 

(8人のクロ候補生…高橋君が切り裂きジャック…。)

 

(ダメだ。混乱して、よく分からない。)

 

(でも、本当に…あの高橋君が狩野さんを殺したんだ…。)

 

 

「……本当に虫の言ってることが分かるってこと?ゴン太くん、それが本当なら、凄いことだよ。」

 

「その口グセは止めた方がいいんじゃないかな。努力ができる人間は…バカじゃない。」

 

 

(彼は、ゴン太を勇気付けてくれた。彼のおかげで、ゴン太は考えることを止めずに、ここまで来られた。)

 

(でも…彼は記憶を失っていた。だから、殺人の記憶がなかったから…本当の高橋君じゃなかったのかな。)

 

(高橋君は…本当は どんな人だったんだろう。)

 

(沈んだ気持ちのまま朝食を食べた。みんなも、どこか緊張した様子で朝食を終え、それぞれ散り散りになった。)

 

(ゴン太の足は、知らず東の灯台へ向かっていた。)

 

 

【本島東エリア 灯台】

 

(灯台の前まで来た。そこには、星君がいた。少し気まずそうに、彼は視線を俯けた。)

 

「星君。こんな所で どうしたの?」

 

「……焼死体と高橋の死体は ここにあったなと思ってな。」

 

「そっか。ゴン太も、そうなんだ。」

 

「そうか。」

 

「………。」

 

「………。」

 

(星君は顔を緊張させたまま黙っている。ゴン太も何を言っていいのか分からず黙っていると、)

 

「……何も聞かねーのか。」

 

(星君がポツリと呟いた。)

 

「……星君が話したくないことは…聞かないよ。」

 

(ゴン太が言うと、星君は口を緩めた。)

 

「そんなこと、前も言ってたな。」

 

「えっ。」

 

「前回の事件前だ。その言葉に胡座をかいて、あんたに何も話してなかったことを後悔したのさ。」

 

「えっと…?」

 

(ゴン太が混乱していると、星君は「明日」と続けた。)

 

「明日、全て話す。少し時間をくんな。内側を曝け出すのには慣れてねーんだ。」

 

「う、うん。」

 

(明日、星君のことを教えてもらったら…そしたら、星君を笑顔にできる方法が分かるかな。)

 

(それから、星君は「じゃあな」と短く言って、寄宿舎の方へ戻っていった。ゴン太は灯台の下を眺めた。)

 

(この場所に横たわった高橋君を思い出しながら。)

 

(ーー高橋君。高橋君は狩野さんを殺してしまった。そして、西の灯台に放置した。どうして そんなことをしたの?)

 

(もっと色んな話ができたら良かった。もっと早く、高橋君を知っていたら…止めることができたかもしれない。)

 

(高橋君が死ぬ前、焼死体も ここで発見された。モノクマの言い方から、彼を殺したのは高橋君じゃない。)

 

(彼を殺したのは…本当に どこかに隠れた殺人鬼だったのかな。)

 

 春ノ島に行く

 夏ノ島に行く

 秋ノ島に行く

全部見たね

 

 

 

【春ノ島南 町エリア 洋服店】

 

(春ノ島の空気は今日も暖かい。ゴン太は嬉しそうな虫さんを見ながら町エリアの洋服店まで来た。)

 

「……獄原さん。」

 

「華椿さん。伊豆野さんと一緒じゃないんだね。」

 

「わたくしが彼女に付きまとっているような言い方は おやめください。ずっと背後に控えていたら、撒かれてしまったのです。」

 

「もし、何か起こった場合、お守りせねばならぬというのに。」

 

(華椿さんは そんなことを言いながら、少し眉根を上げてゴン太を見た。)

 

「獄原さん、今朝のこと…どう思いますか?」

 

「今朝のこと…クロ候補生の話だよね。」

 

「ええ。平さんは、仕込み武器で三途河さんを殺しました。」

 

「うん…。」

 

「何故そんなものが高校生に作れたのか不思議でしたが、彼の家業が仕立て屋だけでないなら…可能かもしれません。」

 

「家業…?華椿さんみたいに?」

 

「ええ…。わたくしと同じく、彼も家業を叩き込まれたのかもしれません。いわゆる…裏家業を…。」

 

「裏家業…?」

 

(ゴン太が問い掛けたけれど、彼女は1人でブツブツと考え始めてしまった。)

 

「彼の客人は世界中から…特に南米人が多かったとか。南米の気候や文化にスーツのイメージがなかったのですが…。」

 

「スーツではなく、別の何かを売っていた…?顧客が南米人なら、スペイン語やポルトガル語が堪能なのでしょうか。」

 

(ゴン太の声が届かなくなっていたので、ゴン太は、そっと その場を離れた。)

 

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【夏ノ島東 海エリア 船着場】

 

(夏ノ島は、今日も暑い。蝉さんの元気な声が山の方から聞こえる。)

 

(ゴン太はビーチ沿いに進んで、船着場の小屋に入った。中で伊豆野さんが椅子に腰掛けていた。)

 

「伊豆野さん。」

 

「うわっ…!な、なんだべ、ゴン太さか。」

 

「ど、どうしたの?」

 

「華椿さかと思っただよ。せっかくピッタリ離れねぇのを撒いただに。」

 

「あ…そ、そうなんだね。」

 

「あ、勘違ぇしねぇでくろ。嫌ってるわけじゃねっからな。」

 

(慌てたような伊豆野さんは少し顔を赤くして言った。)

 

「ただ、慣れねんだ。オラが好きでねぇオラを好いてくれるっつぅのに…。」

 

(ゴン太が何を言おうか考えていると、伊豆野さんは明るい声色で話を切り替えた。)

 

「ここにいっと、蔵田さのカニ料理を思い出すべ!あんりゃ、美味がった。」

 

「そうなんだ。実際は卵で作ってたんだよね。」

 

「…ああ。あん人は全員の好みも分がっでたんだ。だがら、料理だけじゃなぐ、人が好きなんだ。そう思ってただ。」

 

「思ってた…って、そうじゃないって…思うの?」

 

「分がんね。蔵田さ、オラたつが家畜に見えてたそっだかんな。」

 

「……。」

 

(一瞬しんみりした空気が流れて、伊豆野さんは「腹減った」と言って本島に戻っていった。)

 

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【秋ノ島東 文化エリア 図書館】

 

(秋ノ島に来た。池の蜻蛉さんを観察して、ゴン太は図書館の入り口に向かった。…ところで。)

 

「うわぁっ!?」

 

「あ、ゴメン!桐崎さん、大丈夫?」

 

(中から走ってきた桐崎さんと ぶつかって、彼女は倒れてしまった。ゴン太だったら避けることもできたのに。)

 

「ケガはない?ゴメン、ゴン太、ボーッとしてたんだ。」

 

「いえ、いえ!だ、大丈夫です!!」

 

(ゴン太が手を差し出したけれど、彼女は その手を取らずに自分で立ち上がった。)

 

「あ…じゃ、じゃあ、ボクは これで。」

 

(そのまま、そそくさと どこかに走っていってしまった。)

 

(ーーどうしたんだろう。…あ、そっか。さっきの話があったから…桐崎さんはゴン太を怖がってるんだ。)

 

(寂しい気持ちになったけど、仕方ない。あの高橋君が殺人鬼だったんだから、疑心暗鬼になるなと言う方が難しい。)

 

(図書館の中は事件の痕跡がなくなり、綺麗になっていた。血の跡は消えて、隠し研究室にあったという死体もない。)

 

(研究室の隠し扉である本棚が開いたままだ。誰か、事件後に ここに来たのかな。)

 

(机の上には変わらず乱雑に薬品や器具が置いてある。一目で毒と分かる薬品Aと無毒の薬品Bのビン。)

 

(その近くに置かれた無色透明の液体が半分くらい入った小瓶は机上に散らばる空の小瓶と同型同色だ。)

 

(傍の棚の目立たない所に、ライトが落ちているのを見つけた。その隣にも無色の液体が半分くらい入った小瓶がある。)

 

「このライト…冬ノ島の教会で見たものかな…?」

 

(桐崎さんが「ブラックライトだ」と言ってたものだ。さっき彼女が落としたのかもしれない。)

 

(後で渡そうとライトを上着のポケットに入れた。)

 

「……。」

 

(ここで死んでいたイーストック君。彼は、ゴン太に たくさん言葉を教えてくれた。本を読むように勧めてくれた。)

 

(ゴン太を殴って蘇りの薬の実験体にしたなんて…そのために虎林さんも殺してしまったなんて、信じられない。)

 

(ーーでも、信じられない事件が たくさん起きた。)

 

(もしかしたら、イーストック君も…『犯罪歴がある人』だったのかな。)

 

「やあ、ゴン太クン。さっきぶり。」

 

(考えていると、モノクマが何もない所から現れた。ゴン太が「何の用?」と問うと、いつも通り笑った。)

 

「見ての通り、貸出機を取り外したから報告に来たよ。」

 

「…取り外した?」

 

(言われて研究室入り口に目を向ける。確かに、前回の事件前に取り付けられていた機械がなくなっていた。)

 

「うん。前回の裁判でも言った通り、貸出しのルールを守らないヤツもいたからね。貸出機は撤去しました。」

 

「0時以降にイーストック君が薬品Bを持ち出す時、貸出機を通さなかったんだよね。」

 

「うん、イーストッククンだね。薬品BかAかXか知らないけど、無断で持ち出ししちゃってさ。」

 

「あ、そうそう。彼が作った薬は、事件後に机の上に置いておいたよ。彼が生きた証と、死んだ記念に。」

 

「……。」

 

「ブヒャヒャヒャヒャ!それじゃ、そんなわけだから。」

 

(言いたいことだけ言って、モノクマはいなくなる。静かな室内にキリギリスさんーーカネタタキさんの声が響いた。)

 

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【本島北エリア 冬ノ島の橋前】

 

(もう1度、冬ノ島も見ておこうと思って、橋の前に来た。すると、向こうからゴン太の名前を呼ぶ声が聞こえた。)

 

「よーす、ゴンちゃん。」

 

「野伏君。」

 

「ゴンちゃんも、冬ノ島の探索?変わったところは、隣の島と繋がる橋ができてるだけっぽかったぜ?」

 

「え、それって、夏ノ島と春ノ島が繋がっていたみたいに?」

 

「そ。本島の北が冬ノ島、東が春、南が夏、西が秋なワケじゃん?春と夏、夏と秋、秋と冬、冬と春。」

 

「で、それぞれ移動できる橋できてたわ。本島 戻らんでも、グルッと移動できんねww」

 

「そうなんだね。」

 

(ゴン太が返すと、野伏君は急に調子を変えて、こう言った。)

 

「…ゴン太君。貴君は、今朝の話を どう思われた?」

 

「今朝の話…クロ候補生の話だよね。華椿さんとも話したよ。」

 

「他に話した者は?」

 

「えっと…星君も伊豆野さんも直接その話題は出さなかったよ。桐崎さんは…ゴン太を怖がってるみたいで…。」

 

「あー、ゴンちゃん、イレギュラーとか言われてたもんなww」

 

「あれ、本当に みんなのことだったのかな。」

 

「さ〜ね〜。でもさ、それだと納得できると思わね?これまでのクロって、ちょっとナゾだったし?」

 

「ナゾ?」

 

「そ。馬術部のドローンとか、服屋の仕込み武器とか、グルメの毒味ホイル焼きとか、ブンヤの人体実験とか。」

 

「いくら”超高校級”でも おかしくね?って思ってたけど〜、みんなが犯罪者集団なら、納得いくかな〜みてーな?」

 

「………。」

 

「ま、これは あくまでオレの意見!別に犯罪歴あろうとなかろうと、ゴンちゃんは気にしないっしょ?」

 

「……え?」

 

「犯罪歴があろうと、仲間!ゴンちゃんは言いそうだと思ったんけど?」

 

「あ、う、うん…。そうだね。」

 

(そっか。もし、犯罪歴のことが本当でも…ゴン太たちは仲間だ。)

 

「それがゴンちゃんの紳士道なん?」

 

「え?」

 

「ん?あ、具体的なビジョンはない系?」

 

「えっと…ゴン太は紳士になりたいんだ。」

 

「うん。だから、その紳士って何なんだろうね?」

 

「えっと…?」

 

「一口に紳士っつっても色々あると思うワケ〜。昔の貴族階級とか?身なりに厳しいとか?女に優しいとか?」

 

「ゴンちゃんの目指す紳士が何なのかって思ってさ。でも、混乱させんなら止めとくわ。忘れてちょんまげ〜ww」

 

(野伏君は笑いながら行ってしまった。その後ろ姿を眺めながら、ゴン太は呆然とした。)

 

(ーーゴン太が目指す紳士。あまり考えたこと…なかったかもしれない。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 獄原の個室】

 

(その後 今日のことを共有しながら、みんなで夕食を食べて、各自 個室に戻った。)

 

(夕食の席も、どこか緊張感ある空気が流れていた。)

 

 

「明日、全て話す。少し時間をくんな。内側を曝け出すのには慣れてねーんだ。」

 

 

(星君…。明日、どんな話をしてくれるんだろう。)

 

(彼の言葉がグルグル頭を回っている。その内、ゴン太は微睡んでいた。)

 

 

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