【意思】と【意志】の違いとは
前回、【意志】は明治時代にできた翻訳語だと紹介しました。
同音異義語の【意思】と【意志】の違いを見ていきましょう。
【意思】の意味と例
思考、気持ち、頭の中で考えていること
英語:intention, mind
類義語:思考・所存・意識・意欲
ぼんやりした考え、クリアな考えどちらも含む
「君の意思を尊重します。」
「日本人はあまり意思表示をしない。」
「意思の疎通がうまくできていなかった。」
【意志】よりも思考が弱い場合がある
明治時代に、哲学用語として造られた翻訳語【意志】と混同して使われました。
現代の日常会話でのコミュニケーションでは、【意思】を使うことが多いでしょう。
【意志】の意味と例
対象がある積極的な思考
英語:will(明治時代の『哲学字彙』にて紹介されたwillの翻訳語)
類義語:志向・意欲・自発
「今年こそはダイエットを成功させるという意志を固める。」
「強い意志を持ち、彼は一歩を踏み出した。」
「患者と医師の意志疎通は問題なかった。」
「患者の意志を確認した。」
【意思】よりも強い思考
近代では哲学・心理学用語として用いられました。
医療の世界では【意志】を使います。
例えば…
働いてないAさんが「そろそろ働こっかなぁ~でもなぁ~」という場合は【意思】。
「よっしゃ働くぞ!」と求人を探している場合は【意思】でもあり【意志】でもあります。
より明確な志望動機があり、心からその会社に入りたいと願う場合は【意志】です。
したがって 【意志】の方が、思考や対象への気持ちが強い といえます。
法律用語における【意思】と【意志】
明治時代中期に混同が見られたものの、【意思】は法律用語、【意志】は心理学・哲学用語+日常会話の用語と区別されていました。
今日では、【意思】は法律用語+日常会話でよく用いられ、【意志】は哲学・心理学の他、医療用語でよく用いられる用語です。
法律用語【意思】とは
1. 民法上は、表示行為の直接の原因となる心理作用、すなわち、欲求ないし承認、特に権利義務の変動に向けられたものをいう。
2. 刑法上は、自分がしようとする行為に対する認識をいう。「犯意」と同じ意味に用いる場合もある。
【意思】【意志】と【遺志】の違い
同じく同音異義語の【遺志】とはなんでしょうか。
【遺志】の意味と例
故人が果たせず残した志のこと
「父の遺志を継いで、政治家になる。」
「板垣退助の遺志とは、どんなものだったのだろう。」
【意思】【意志】が生きているものの考えである一方、【遺志】は必ず生きていない人の考えを指します。
【意思】【意志】と【意向】の違い
似た漢字と意味の熟語に【意向】があります。
【意向】の意味と例
心の向かうところ
このようにしたらどうかという考え
思わく、今後の展望
「相手の意向を確かめる。」
「そちらのご意向を伺いたく存じます。」
まとめ
- 【意思】と【意志】の違い
【意思】は、思考。日常会話や法律用語として使われる。
【意志】は、積極的な思考。哲学・心理学の他、医療現場で使われる。
- 【遺志】は、故人の志。
- 【意向】は、今後の展望。
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