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相撲とは?その起源と由来・歴史
相撲用語は実は私たちの日常会話の中でもよく使われています。まずは、相撲の起源と言葉の由来、歴史を見ていきましょう。
相撲とは、古くから行われている力比べ。土俵の上で、力士同士が組み合って戦うものです。
古来から続く伝統の「国技」とされていますが、その起源や由来はどのようなものでしょうか。
日本の相撲の起源
日本における相撲の起源は、神話の世界の言い伝えからとも言われています。
8世紀に記されたとされる古事記や日本書紀の中にある力くらべの神話や、宿禰(すくね)・蹶速(けはや)が起源という説も。
平安時代には既に、朝廷行事「相撲節会」が開催され、武家社会になっても続けられました。この頃の相撲は、その年の農作物の収穫を占う祭りの儀式という神事的意味合いが強かったようです。
その後、江戸時代に入ると、相撲を職業とする人たちが現れ、定期的に興行されるようになります。一般庶民の娯楽として、相撲の人気が高まり、今日の「日本固有文化としての大相撲」の基礎が確立されていきました。
相撲のルーツ・由来は?相撲はどこから生まれた?
相撲は身ひとつでできることから、相撲のルーツを絞ることは不可能です。
しかし、日本の相撲の元となったものは、大陸から渡って来たとされます。後漢時代(約1800年前)の中国の墓には、相撲のまわしとマゲによく似た格好の格闘技の選手が描かれています。
さらに、約4000年前の古代エジプトの王墓には、2人の選手が腰をつかみ合い、足を掛けようとする相撲にもよく似た絵が残されています。
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相撲の漢字の語源は?「角力」「角抵」って何?
日本語の相撲の語源は、形容詞の「すまふ」。
「争う/抵抗する」という意味の「すまふ」の連用形「すまひ」が名詞化して「相撲」と漢字が当てられました。この他に「角力」「角抵」などの漢字が当てられることもありました。
「相撲」「角力」「角抵」はかつて「すまい」と発音されており、今のように「すもう」と発音するようになったのは室町時代から。
相撲はなぜ女人禁制なのか?
数年前、急病人救護のために土俵に入った女性に対し「土俵から出てください」と行司が言ったことが話題になりましたね。
かつては、日本中に女人禁制の山や寺社仏閣がたくさんありました。海外でも、山岳クラブや特定の集会、フィルハーモニーなどは女人禁制でした。
相撲の世界で女人禁制が確立したのは、明治時代。明治維新により廃止されそうになっていた相撲を「伝統的宮廷行事」「神事である」と強調するために、後付けで女人禁制としたのです。
なぜ「神事である=女人禁制」なのか?それは、神道では女性不浄説の考えがあったから。
ちなみに、現在、相撲協会は神道の考え方を根拠とした女人禁制を否定しています。
相撲でなぜ座布団を投げるのか?
相撲中継などを見ていると、座布団が舞うシーンをよく見かけます。なぜ座布団を投げるのか。
それは、明治時代の大相撲でご祝儀代わりに羽織や帽子を投げていたことに由来します。
当時はひいきの力士に、自分の屋号を書いた物を投げ(投げ花と呼ばれました)それを力士が返しに行ったとき祝儀を渡すというシステムでした。
このシステムは、両国国技館が完成した1900年代には禁止になっていますが、土俵に褒美を投げ入れる習慣は、座布団を投げるという形で今も残っているそうです。
日常会話で使われる相撲用語・相撲由来の言葉
相撲由来の言葉・相撲から生まれた言葉は、歌舞伎由来の言葉と同じく非常に多いものです。
これもやはり、庶民の娯楽言葉は浸透しやすいという特徴ゆえでしょう。
相撲用語は現代日本語の日常会話でもよく使われます。
参考:伝統芸能・歌舞伎由来の日本語30選|歌舞伎の語源・英語は?十八番の読み方は?
勇み足(いさみあし)
相手を土俵際まで追い詰めながら、勢い余って自分の足が土俵の外に出てしまい負ける判定を示す相撲用語。
痛み分け(いたみわけ)
片方の力士がケガなどで取り組みを続けられず、棄権する引き分けを示す相撲用語。
「痛み分け」は、相撲由来の言葉として、日常会話にも残っています。現代日本語では、ケンカや議論で違いに痛手を負いながら未決着に終わった場合に使われます。
大一番(おおいちばん)
相撲用語では、優勝に直接関係する大事な取り組みのこと。
現代の日本語では、他のスポーツや仕事、行事などでも使われる言葉です。ニュースやインタビューなどで使われる相撲由来の言葉ですね。
押し(おし)
日常会話では、「あの人は押しに弱い」「押しが強すぎて引く」などのように、意見を貫く姿勢を表します。
これは、相撲用語の決まり手「押し出し」に由来した言葉。土俵の外に相手を押し出す、最もよく見る決まり手のことです。
同じ土俵に乗る(おなじどひょうにのる)
「土俵」とは、相撲をするための円形の俵で囲んだ場所。
現代日本語では、同じ場所で活動すること、同じ立場に立つことをいいます。「同じ土俵に乗らない」もよく使われますね。
肩透かし(かたすかし)
相撲用語の「肩透かし」とは、相撲の立ち合いで、前に出てくる相手を、体を開き(肩口をはたいて)かわすこと。
相手の意表をついて気勢をそぐという意味の言葉として日常会話にも残っています。現代日本語では「肩透かしを喰う=ひょうしぬけだ」のように使われます。
がっぷり四つ(がっぷりよっつ)
「がっぷり四つ」とは、実力のある力士同士が上手と下手を取り合い胸を合わせた状態を指す相撲用語。実力のある者同士が真正面から取り組む様子をいいます。
現代日本語の日常会話でそう耳にすることがなくなった言葉ですが、一定の年代の人たちが時折使う相撲由来の言葉です。
変わり身(かわりみ)
日常会話では「あの子は変わり身が早い」などのように、情勢・事情を素早く判断して対応することを表す言葉ですね。相撲用語の「変わり身」とは、立ち合いに出ると見せかけてとっさに横に変えること。
相撲で「変わり身がはやい」なら勝ちやすいイメージですが、現代日本語で「変わり身がはやい」というと若干ネガティブな意味を含むことが多いですね。相撲由来の言葉のうち、意味が変化していないものの、使い方の変化が見られる言葉です。
軍配が上がる(ぐんぱいがあがる)
「軍配」とは、武将が戦の指揮を取るのに使ったうちわ型の道具。
参考:侍や武士の言葉・文化由来の日本語|武士が起源・語源の言葉とは?
相撲では行司が持っている道具を指します。勝負が決まったときに、行司が勝った力士に向かって軍配を掲げることに由来します。
「軍配が上がる」とは、勝敗が決まること。「軍配を上げる」とは、審判役が勝利の判定を下すこと。
仕切り直し(しきりなおし)
相撲用語では、立ち合いの構え(両手を下ろす)を「仕切り」といいます。また、立ち合いの呼吸が合わずに、互いに「仕切り」をやり直すことを「仕切り直し」と呼びます。
私たちが日常会話で使う物事を初めからやり直すという意味の由来となった言葉です。
序の口(じょのくち)
「序の口」とは、相撲番付の最下位に位置する地位を表すこと。
現代日本語では転じて、始まったばかりという意味で使われます。「これはまだまだ序の口だ!」なんてセリフは、相撲から生まれた言葉なんですね。
独り相撲(ひとりずもう)
「独り相撲」とは、神社などの神事で精霊相手にとる相撲の儀式。
現代日本語では、誰もまともに相手をしていないのに1人意気込んで、結果何も得られないという意味の言葉です。
日常会話でも「君の独り相撲には付き合ってられないよ」などのように使いますね。
懐が深い(ふところがふかい)
日常会話で「あの人は懐が深い人だ」というと、心が広く寛容だという意味の言葉です。これも相撲用語由来の、相撲から生まれた言葉です。
相撲で「懐が深い」というと、長身で腕が長い力士のまわしを取るのは難しいことを指します。
胸を借りる(むねをかりる)
相撲用語で「胸を借りる」は、番付の下位の力士が上位者に稽古の相手をしてもらうこと。
転じて人に世話になることを表す言葉として、日常会話で使われるようになりました。
脇が甘い(わきがあまい)
相撲では、ひじを体に締め付けていないとまわしを取られてしまい、相手に有利な組手になります。
この状態を「脇が甘い」といわれますが、防御が不完全な状態や詰めが甘い状態全てに使われるようになりました。
相撲由来の言葉は日常会話でよく使われる
いかがでしたか?相撲用語由来の言葉は、これほど日常会話で使われています。
特に、相撲の特徴ゆえんか、勝負事に使われる言葉が多いですね。
長い歴史の中で現在の大相撲に形を変えた相撲界。
現在、相撲協会は「伝統を守る」姿勢を貫いていますが、百年後、二百年後は何らかの変化が起きているかもしれません。
前回記事:伝統芸能・歌舞伎由来の日本語30選