
日本人はなんでも擬人化する!もはや擬人化してないものはないって海外の反応を見たんですが、マンガやアニメ、ゲームの影響ですか?

そうですね。サブカルチャーの面で顕著に現れています。が、結構どこの国でもあることですよ。

え?そうですか?

まあ、現代日本の擬人化は特徴的ですけれどね。国や刀や艦隊、サファリアニマル、競走馬…。

他にも、鉄道、細胞、年号も「日本人に見つかった結果」可愛く擬人化されてますよね!

私は国同士の風刺画が興味深いと思いますね。日清戦争や日露戦争などを題材にした、近代歴史の教科書に載っているアレです。
海外の反応を見ていると、しばしば、「なぜ日本人はなんでも擬人化するの?」「日本人はすぐ擬人化する」「擬人化してないものはない」などの意見を見ることがあります。ここでは、これらの海外の反応やそもそも擬人化とは何なのか。本当に日本でのみ擬人化が盛んなのか。どうして日本で擬人化がよく行われるのかの理由を見ていきましょう。海外の擬人化の例、鳥獣戯画や国・動物の擬人化などのアニメもご紹介していきます。
海外の反応「日本人が擬人化してないものはない」
「日本人はなんでも擬人化する」というイメージが海外にあるのはご存知でしたか?japanizing beam(擬人化光線)なんてネットミームも存在します。まずは、擬人化大国日本に対する海外の反応を見ていきましょう。

海外の反応は、日本での反応とそう変わりませんね。

「すごい!いいね!好き!」という人と「おいおい(笑)いい加減にしろ」という人、ですね。
「擬人化光線」Japanizing Beamとは
なんでも擬人化する日本に対する海外の反応はさまざまです。しかし、日本といえばアニメや漫画大国。これらのメディアと絡み合ったひとつの文化としての擬人化は、世界でも「日本といえば」と認知されるものとなっています。
数年前にネット上で「Japanizing Beam」というハッシュタグが流行しました。これは、擬人化キャラクターのビフォーアフターをビームを放つキャラクターを挟んで貼り付けるもの。

例えば、日本刀の写真→スペシウム光線をうつウルトラマンの画像→刀剣乱舞のキャラクターの絵というものです。
日本(の擬人)化ビームに当たれば、なんでも萌え化するという風刺として、有名になりました。このように、日本人=「なんでも擬人化する」「擬人化してないものはない」というイメージは覆せない事実になっています。
擬人化とは?日本のアニメの例一覧
そもそも、擬人化とは何なのでしょうか。実は、最近よく聞く「国の擬人化」「サファリアニマルの擬人化」「競走馬の擬人化」とは少し違う意味があります。
擬人化とは、人間でないものを人間に見立てて表現すること。つまり、ものや動物を美少女や青年に描くことだけが擬人化ではないということです。

子ども向けアニメの話す時計やぬいぐるみも、絵本に出てくる二足歩行の動物も「擬人化」されたものなんですね。
擬人化アニメ・マンガ例一覧
こう聞くと、日本以外でも擬人化は絶対行われていますし、受け入れられているはずです。しかし、海外の反応は「日本人はなんでも擬人化する」というもの。これは、近年のアニメやマンガのイメージによるものでしょう。
擬人化のアニメやマンガ、ゲームなどをザッと挙げても、これだけのものがあります。
とあるレンタルショップで「擬人化」と検索すると、なんと580件ヒットしました。それだけ、擬人化の作品は存在しているということですね。それでは、擬人化アニメについて、いくつか詳しい例を見ていきましょう。
動物擬人化の決定版『けものフレンズ』
日本語を勉強する外国人に人気のアニメ『けものフレンズ』。
参照:アニメで日本語を覚えた外国人の勉強法とは?アニメで日本語覚えるおすすめの作品10選
サファリに住む動物たちが可愛いらしい少女の姿で描かれています。彼女たちはその動物と同じ特性を持つ「フレンズ」として紹介されます。個性的で可愛いフレンズがたくさん登場するとにかく可愛いお話です。
国の擬人化現代版『ヘタリア』
昔から行われてきた国擬人化の現代代表『ヘタリア』。ある国の人々のステレオタイプや歴史、言語などの特徴を1人の人物として擬人化しています。
イタリアは社交的で女好き、ドイツはまじめで堅物、日本は大人しくて曖昧、イギリスは紳士で皮肉屋…などなど。個性豊かな世界の国々が登場し、「何となく世界情勢も分かった気になれる」のがありがたい作品です。
人体で働く細胞の擬人化『はたらく細胞』
擬人化は人体の内側でも起こります。「勉強になる」と話題になった『はたらく細胞』は、赤血球や白血球など、体内で活動する細胞を擬人化した作品。
名前の通り、キャラクターたちは働く世代の人物として描かれています。難しい病気や回復のメカニズムが分かりやすくなる作品です。

商業化されたものの他にも、個人運営のホームページやpixivなどのイラスト投稿サイトでも、擬人化作品はよく見られます。

『ヘタリア』も最初は個人運営のサイトだったんですよね!
日本だけじゃなく海外でも!国旗ボールも擬人化のひとつ
アニメやマンガの影響で、「日本=擬人化好き」「擬人化してないものはなし」という海外の反応が広がっていますが、冒頭でも述べた通り、擬人化とは、「人間でないものを人間のように描く」ことです。いわゆる擬人化作品でなくても、『DRAGON BALL』『NARUTO』『ONE PIECE』にも擬人化したキャラクターは登場します。

『くまのプーさん』や、『ミッキーマウス』『機関車トーマス』『ピーターラビット』なども言ってしまえば、擬人化作品です。
また、国を人として描く風刺画は海外でもよく見られます。大戦中のポスターなどは典型例ですね。国旗を模した球体の「ポーランドボール」なども有名です。国旗を模した各国のキャラクターがそれぞれのお国柄に即した言動をするものですね。
近年では『インサイド・ヘッド』(人間の感情である喜びや悲しみなどを擬人化)などのように、従来とは異なる擬人化作品も海外で登場しています。
日本と海外の擬人化の違いは?
世界で行われる擬人化。しかし、世界で一般的に行われるのは、アニメーションや童話などに代表されるような、動物が人のような行動をしたり言葉を話したりというもの。
一方、現代日本のものは、事物を美少女化・美青年化しているという点でかなり特徴的といえるでしょう。『けものフレンズ』『艦隊これくしょん』などは、いわゆる「萌え」と融合し、可愛らしい少女たちの姿で描かれています。また、美少年・美青年キャラクターの多い『ヘタリア』や『刀剣乱舞』などは、女性人気の高い作品です。
『はたらく細胞』のように、事象としては難しい内容を擬人化して、わかりやすく描くことに成功した例もあります。

難しい内容でも、人同士の関わりに置き換えることで分かりやすく表現できます。
このように、現代日本でいう「擬人化」とは、動物やものが人の姿をし、そのものに合った特性とキャラクター性を持つというものです。多くは、可愛い女の子やかっこいい男性に擬人化され、そのキャラクター性が売りになっています。
なぜ日本人はなんでも擬人化するのか?その理由
世界で行われている擬人化ですが、なぜ日本ばかりが「なんでも擬人化大国」になりつつあるのでしょうか。日本人が擬人化を受け入れやすい理由を見ていきましょう。実は、日本の擬人化は、日本の歴史と深く結びついています。
日本の擬人化の歴史は鳥獣戯画から
近年の「萌え」とは異なる、本来の擬人化の歴史は、安時代末期から鎌倉時代初期に描かれたとされる『鳥獣戯画』までさかのぼります。『鳥獣戯画』は、兎や猿、蛙などが水遊びをしたり、宴会したり、人間っぽく描かれた絵巻です。また、江戸時代の画家・歌川国芳の『猫のすずみ』や『かえるづくし』などは、擬人化作品として有名です。
このように、絵巻やポンチ画(後の漫画)では、古くから動物が人間のようにふるまう擬人化が表現されてきました。他国との関わりが強くなってくると、国や国の代表を人として扱う風刺画も多く見られるようになります。

「イギリス人と日本人が握手する様子を描く日英同盟」や、「朝鮮戦争で釣り糸を垂らす日本人と中国人」など。

教科書に載ってたやつだ!
また、難解な仏教文学を大衆化するために擬人化が使用される例もあります。特に、平安時代後期には大衆のための仏教が生まれ、それまでの「それなりに教養がある人しか修行できない、極楽に行けない」という仏教から「金や学がなくても、修行しなくても唱えればOK」と信仰が形を変えていきました。これ以降、仏教文学では、難しい仏教の教えを簡単に伝えるため、たとえ話や擬人化が用いられました。『今昔物語集』『沙石集』では、動物や草木、抽象的な記号や観念を擬人化し、その話から仏教の教えを読み取るお話が広まりました。

平安後期…学校で覚えさせられましたね。法然とか一遍とか…。

その時代です。貴族向けではない武士階級や庶民のための仏教ですから、より分かりやすい教え方が必要でした。
そして、この文化は現代にも続き、2000年頃からアニメやマンガのサブカルチャーと結びつき、さまざまなものを人として描く「現代の擬人化」が登場。今もなお人気を博しています。擬人化は平安時代から存在し、最近流行の擬人化と深く関係があります。長い歴史があることも、日本人がなんでも擬人化する理由のひとつでしょう。
「全てのものに魂が宿る」アニミズム信仰
世界的に見ても、日本人は擬人化を受け入れやすいお国柄といえます。その理由は、「森羅万象すべての物に魂が宿る」というアニミズム的信仰によるもの。
八百万の神が信じられてきた多神教の日本では、物には魂が宿る=人間のような心を持つと信じられてきました。山や川など、自然そのものが信仰の対象。「森羅万象全てに神が宿っている」「長く使われた物に付喪神が宿る」などの考え方がごく自然にされます。
このように、日本人は古来より「全てのものに人間のような魂がある」と信じてきました。これが、日本人が擬人化を受け入れやすいひとつの理由となっています。

米や梅干し、トイレにも神様がいる国ですもんね!

日本人に比べ、一神教が身近な欧米では万物に神が宿るという考えは違和感のあるものだそうです。

ちなみに産業革命前後では「動物は人と違って苦痛を感じない(から酷使して良い)」という考え方すらあったそうです。

え…。欧米の方が動物愛護が盛んなイメージですが…。

黒い歴史がある方が後世で改めるんでしょうね。日本では「全てに魂が宿る・生命は生まれ変わる」という考えから、欧米ほどの虐待はありませんでした。

でも、今はアジアの方が鈍感になっちゃってるんですね…。
ちなみに、このアニミズム信仰は「クリスマスに騒いで正月は初詣、葬式にお坊さんが来る」日本の宗教観にも深く結びついています。興味があれば、下記記事ものぞいてみてください。
参考:なぜ日本人は無宗教なの?初詣は神道式?葬儀は仏式?その理由は?
アニメなどサブカルチャー文化
古来より存在した擬人化文化は、2000年代から日本で独自の進化を遂げました。そして、世界でも日本のサブカルチャーが人気を集める中、日本の萌え擬人化コンテンツも広がっていきました。動物、食べ物、乗り物、その他の日用品、細胞、軍艦、刀、国家、国旗、和暦、曜日、蔑称に至るまで擬人化してきた日本人。「擬人化してないものはない」という海外の反応もうなずけますね。

蔑称の擬人化ってなんですか…。

2010年頃有名になりましたね。日本人の蔑称である中国語「日本鬼子(rìběn guǐzi)」を「ひのもとおにこ」という女の子に擬人化したんです。

日本人のメンタル…。そういえば、「令和」になったときも、暦の擬人化キャラクター「令和ちゃん」が出てきましたね。
ちなみに、人→擬人化キャラクターとしての擬人化というジャンルもあるそうです。偉人やテロリストなどを擬人化(萌えキャラ化)したものだそうです。これを見つけた時は、さすがに「人→人も擬人化…?」と首をひねりました。
海外の反応「擬人化してないものはない」は正しい
これまで見てきた通り、「日本人はなんでも擬人化する」「擬人化してないものないヤバイww」といった海外の反応は当然のものだといえます。
しかし、これらの擬人化は、私たち日本人からすると(少々行きすぎることもあっても)受け入れにくいものではありません。私たちは幼いうちから、童話や昔話、アニメやマンガで(本来の意味である)擬人化に触れてきました。さらに、勉強をわかりやすくするための擬人化キャラクターにも出会ってきました。
萌えキャラ化した擬人化を好きになる日もあるかもしれません。なんでも擬人化する日本人をとことん楽しむのも良いかなと思う今日この頃です。


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