ロシア語とは?日本語と似てる?違いと共通点
ロシア語は、スラブ語派東スラブ語群に属する言葉。
主にロシアで話される言語で、その他 ベラルーシ、カザフスタンなどでも公用語とされています。ウクライナやバルト三国、モルドバなど旧ソ連加盟国の一部でも話されています。
参考:
ロシア語と日本語は似てる?共通点は?
世界一の国土を持つロシア。日本や中国など東アジアにも近いエリアもあります。
北海道の上辺りの土地も含めれば、最も日本に近いのはロシアと言えないこともないですね。
日本人に最も馴染み深い外国語や外来語は英語。英語で使われるのは、ラテン文字(ローマ・アルファベット)です。
一方、ロシア語は「キリル文字」という、私たちからすると、独特の文字を使います。ロシア語を勉強するなら、まずこの文字から勉強する必要があるため、他のヨーロッパ言語よりも難易度が上がります。
ただし、日本語とロシア語にも共通点はいくつかあります。
・母音が5つ(ただしロシア語は母音を表す文字が10つある)
・主語を抜いても会話が成り立つ
・語順が厳格ではない
ロシア語は、英語や中国語と同じくSVOの言語です。が、SOVにしても間違いではないようです。
いくつかの似ている点はあるものの、日本語や英語にない発音がある点、文字表記に馴染みのない点を考えると、ロシア語は日本語と似ていないといえます。
日本語とロシア語どっちが難しい?
答えるまでもありませんが、日本語話者にとってどっちが難しいかと言えば、もちろんロシア語です。
ロシア語は他のスラブ語と同じく文法形体が複雑。表記がわたし達にとって見慣れないキリル文字であることからも、日本人の習得が難しい言葉のひとつです。
スラブ語はインド・ヨーロッパ属という分類に入り、ヨーロッパ諸語との関連性がある言語です。そのため、英語を含めたヨーロッパの言葉が母語の人にとっては日本語の方が難しいでしょう。
反対に、日本語と似た文法体系で単語も似たものが多い韓国語話者にとってはロシア語の方が難しいと言えます。
参考:世界で一番難しい言語は日本語?1番難しい言語ランキング
上でも紹介している通り、「世界一難しい言語」は、「何人から見て」という視点が必要です。
ロシア語から日本語になった言葉【労働運動・仕事】
ロシア語から日本語になった言葉は、英語やドイツ語、フランス語などに比べて少数です。
しかし、共産主義国家だったことから、労働運動に関する用語がロシア語のまま日本に入ってきました。「ロシア語由来の日本語」という点で、より意外な外来語が多いかもしれません。
агитпункт/アジト
「敵のアジト」など、漫画やドラマくらいでしか使わない言葉ですが、ロシア語から日本語になった言葉です。ロシア語では「агитпункт(アギトプンクト)」。
もともとは、反社会的指導の扇動司令部または、労働争議やストライキを行う集会所のこと。現在では、隠れ家など広い意味で使用される意外なロシア語由来の外来語です。
кампания/カンパ
募金と同じように使われる「カンパ」は、ロシア語由来の日本語。ロシア語の「кампания(カンパニア)」の略です。
ロシア語の「カンパニア」は、政治的な活動や闘争を意味します。
特に、その目的を達成しようとする組織的な活動のこと。目的を達成するために必要な資金調達活動が強調され、資金集めの意味で使われるようになりました。
комбинат/コンビナート
ロシア語で「コンビナート」というと、「結合」という意味。転じて、「複合企業体」を表すようになったロシア語由来の日本語です。
1928年から旧ソ連が、生産の効率化を図るために関連する工場を地域に結集して、複合的生産システムを確率したことで広まりました。
Норма/ノルマ
日本語辞典によると、「ノルマ」とは、「労働の基準量」。これも、ロシア語から日本語になった言葉のひとつ。
ロシア語の「ノルマ」も、社会主義的に平均値が重要視された上での所定の量・平均値という意味です。
ロシアではニュートラルな意味ですが、(実際に使用される)日本語ではネガティブな意味で使われる言葉ですね。
ロシア語から日本語になった言葉【食べ物】
外国から来た言葉が日本語の外来語になりやすいのは、やはり食べ物。ロシア語から日本語になった言葉は少ないものの、ロシアの食べ物の一部やそのロシア語由来の日本語が定着しています。
ロシア料理が日本に広まった時期などは断定できませんが、ひとつの転機となるのが1858年~函館に設置されたロシア領事館敷地内のハリストス正教会。このハリストス正教会で、ロシア料理を学んだ五島英吉は、後に函館の老舗レストラン「五島軒」の初代コック長を勤め、一般の日本人がロシア料理を知る機会を作りました。
また、ロシア革命が起きた20世紀初頭には、多くのロシア人が国外に脱出。一部は日本にやってきて、ロシア料理を広めるのに一役買いました。
さらに、第二次世界大戦後には、中国東北部で学んだロシア料理を帰国後広めた日本人も多くいます。
икра/イクラ
ロシア語発音では「イクラー」。ロシア語から日本語になった言葉の中でも、意外な外来語の代表例ですね。
日本でこの言葉が使われ出したのは、大正時代。それまで日本では、サケの卵巣から取り出した筋子とそれをばらした(現在のイクラ)を区別する名称はありませんでした。
ただし、ロシア語の「イクラー」は、サケだけでなく魚卵をほぐしたものすべてを指します。
Борщ/ボルシチ
ロシア語由来の日本語のうち、ロシア語から日本語になった外来語・食べ物の代表。
ロシア語では「ボルシュ」に近い発音。
これを日本に伝えたとされるのは、ワシリー・エロシェンコという、ウクライナ人ロシア作家です。幼少期に盲目となった彼は、大正3年に盲目でも自活できると聞きつけ来日。創業したての新宿中村屋と深い繋がりを持つことになります。
彼が日本に滞在したのは大正10年までの短い時間でしたが、エロシェンコの影響もあって、中村屋の店員の制服がロシア民族衣装ルパシカになり、ボルシチやピロシキが発売されました。
пирожки/ピロシキ
ピロシキも、ロシア語由来の日本語・食べ物の名前の代表です。小麦粉を練った生地で具を包んで焼いた(または揚げた)ロシアやウクライナ、ベラルーシの郷土料理。
ピロシキをロシア料理代表として広めたのが、昭和20年代渋谷のロシア料理店「ロゴスキー」。大戦中に満州のロシア人街に住んでいた店主が、本場のロシア料理を再現したレストランです。
бефстроганов/ビーフストロガノフ
こちらもロシア料理の代表。ロシア語由来の日本語代表ですね。直訳すると「ストロガノフ風(流)牛肉料理」。
起源には諸説あり、ストロガノフ家の当主が考案した説、ストロガノフ家のコックが誤ってソースを焦がしたことで誕生した説、年老いて歯の抜けたストロガノフ伯爵のためにビーフステーキの代用として考案された説などなど。
водка/ウォッカ
ロシア語発音で「ウォトカ・ヴオトカ」。直訳すると「お水ちゃん」。アルコール度数の非常に高い、ロシア近隣国民の燃料ですね。
ロシア語で「вода/水」に可愛らしい愛称を示す「к」をつけた名前だそう。
ウォッカの起源は、12世紀頃。「ロシア語から日本語になった言葉」というのが定説ですが、ウォッカ自体の起源はロシア説とポーランド説で意見が割れています。
ロシア語から日本語になった言葉【その他】
こうしてみると、ロシア語から日本語になった言葉というものは多く感じますね。労働関係や食べ物の他にも、ロシア特有のものなどがロシア語由来の日本語として残っています。
тундра/ツンドラ
寒冷地のロシアならではの言葉も、ロシア語から日本語になった言葉として使われるようになりました。
「ツンドラ」といえば、永久凍土。ロシア語で、地下にある一年中溶けない氷が広がる極寒地帯のこと。
Тро́йка/トロイカ
「トロイカ」はロシア語で「3」のこと。日本では、ロシア民謡やフィギュアスケートの技名として知られています。
печка/ペチカ
日本でペチカというと、ロシア式の暖炉。北海道など寒い地方の人がよく知るロシア語から日本語になった言葉ですね。
元々は北欧地方の暖炉で、17世紀に確立された煉瓦造りの暖炉がロシアへ輸入されました。この暖炉がロシアで改良されたものがロシア式ペチカ。
日本での普及は、1880年頃の北海道での導入から。その後大戦中も改良されたものを満州で習い、終戦後に帰国した人々によって普及されていきました。
сивуч/セイウチ
ロシア語から日本語になった言葉のうち、意味が同じではない意外な外来語は多いもの。
一説によると、セイウチは「сивуч(シヴィーチ)」が語源のロシア語由来の日本語。ただし、ロシア語の「シヴィーチ」は、「トド」を指しているため、伝わる過程でなんらかの誤解があったものと考えられます。
Катюша/カチューシャ
女性のヘア用品「カチューシャ」もロシア語から日本語になった意外な外来語のひとつ。ロシア語で「カチューシャ」といえば、女性名「エカテリーナ」の愛称。
1914年に帝国劇場で、レフ・トルストイの『復活』が演じられたことが起源とされています。『復活』のヒロイン、カチューシャ・マースロワを演じたのは、28歳だった女優の松居須磨子。
彼女は、役作りの上で「どうすればロシア女性が表現できるか」と考えた末、ロシア伝統の頭飾り「ココシニク」に似た簡易なヘアバンドを使用しました。これは当時としては斬新で、次第に「カチューシャが付けていた髪飾り」が「カチューシャ」として普通名詞化していったということです。
ロシア語から日本語になった言葉は意外なものが多い
ロシアは地理的に、ある意味では最も近い国です。しかし、ロシア語は文字表記が見慣れないキリル文字ということもあり、あまり馴染みがない言語といえます。そんなロシア語から日本語になった言葉は意外なものが多いです。今後、海外の料理ブームなどでもっと増えていく可能性もありますね!
歴史が違えば、ロシア語由来の日本語はもっと多かったかもしれません。ぜひその他の意外な外来語についても調べてみてくださいね!
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