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なぜ外国人は侍・武士が好きなの?
侍や忍者。国内外でファンの多い歴史上のグループです。
なぜ日本人だけでなく、外国人も侍や武士が好きなんでしょうか。まずは、そんな背景から見ていきましょう。
侍・武士の文化は日本固有の文化
中世から外国人にとって「日本は侍の国」でした。そのイメージは現代にも残っています。
ここまで侍が海外にも認知されるのは、サムライ文化が日本固有のものだからに他なりません。
ヨーロッパにも侍という役目に近い騎士という存在がありますが、それとも異なる人気を見せています。
日本の武士の侍道や仁義、戦いの作法などは、やはり他国とは異なり、外国人には「未知の文化」として興味を持たれやすいのでしょう。
映画・アニメで侍好き急増
何より、サムライ文化を広めたのはメディアです。『七人の侍』を皮切りに、サムライ文化は世界に知られることになりました。海外の作品でも『ラストサムライ』など、侍をテーマにした作品が人気を博しました。
また、日本が誇るアニメ作品にも、武士道や侍、忍者を描いたものがたくさんあり、若い世代のサムライファンを作るのに一役買っているようです。
心得て候の意味は了解!ありがとう おめでとうの侍・武士言葉変換
侍言葉や武士言葉というと、古めかしい印象がありますね。現代日本語を侍言葉・武士言葉に変換するとこんなかんじ。
「ありがとう」→「ありがたき幸せに存じて奉り候」「かたじけない」「あいすまぬ」
「おめでとう」→「めでたきことだ」「慶賀慶祝の至り」「誠におめでたく候」
「分かりました」→「心得て候」「分かり申した」「了解致した」「御意」 など
時代や相手により、武士の言い方にもさまざまあります。
さて、現代日本語に残る侍文化が由来の言葉はどんなものがあるのでしょうか。
侍・武士・忍者が由来の日本語【刀】
侍の武器といえば、やっぱり刀!刀を由来とする言葉は非常に多くの現代日本語に残っています。
真剣(しんけん)
「真剣に取り組む」「真剣勝負」など、真摯、真面目という現代日本語。由来は、鉄を鍛えた本身の刀。
この真剣勝負から、物事に真面目に真摯に取り組むことを表すようになりました。
諸刃の剣/両刃の剣(もろはのつるぎ)
双方を傷つける、損となる事がらやプラスとマイナスどちらの面を持つものを形容する言葉。
本来、刀は持つ本人側には刃がなく、片方だけに刃がついています。しかし、平家の宝刀「小烏丸」など、稀に自分側にも刃がついたものもあります。これらの諸刃の刀は、戦いの中で自分を傷つけかねない代物でした。
鎬を削る(しのぎをけずる)
同じ目標に向かい激しく争うこと。
「鎬」とは、刃と峰の境界の高くなった部分。激しい戦いでは、この鎬の部分が強くこすれて削れることに由来します。
反りが合わない(そりがあわない)
お互い気が合わないこと。
刀の峰の反っている部分「反り」に由来。鞘と反り具合が合わないと刀を鞘にうまく収められないことを、人間関係にたとえていいました。
助太刀(すけだち)
人に力を貸すこと。
もともとは、果たし合いや敵討ちに加勢することを指し、室町時代から用いられる言葉です。
太刀打ち(たちうち)
「太刀打ちできない=相手が強くて互角に張り合えない」という形で使われる現代日本語。「太刀打ち」とは、互角に戦うことを意味します。
語源は、小刀や短い刀に対して長い刀をいう「太刀」での打ち合い。
一太刀浴びせる(ひとたちあびせる)
一発の手痛い一撃を加えること。
もともとの意味は、文字通り1度太刀で斬りつけることでした。
火花を散らす(ひばなをちらす)
双方対立して激しく戦うこと。
もともと、石や金属がぶつかり合って飛び散る「火花」が語源。火花が散るほど、刀を激しく交える様子を表した言葉でした。
すっぱ抜く(すっぱぬく)
人の隠し事などを暴いて明るみに出すこと。
「すっぱ」とは、忍者のこと。忍者は刀をいきなり抜くことから、いきなり刃物を抜くという意味で江戸時代には用いられていました。
土壇場(どたんば)
物事の最後の、極まった状態。
「土壇」とは、土を持ってつくった壇のことで、刀の試し斬りの際に使われるものです。この刀の試し斬りに使われるのは、罪人の遺体。
土壇場=人体がバラバラに斬られる場所=人の形をしていられる最期の場所から、現代の意味になりました。
切羽詰まる(せっぱつまる)
追い詰められてどうしようもなくなる様子。
「切羽」とは、刀のつばの両側に付いた金具。これが詰まると刀身が抜けず、敵前でどうしようもなくなることに由来します。
単刀直入(たんとうちょくにゅう)
前置きを抜いて本題に入ること。
もとは、本来の刀と脇差の二本差しではなく、1本の刀または単独で敵陣に斬り込むことを指します。
抜き打ち(ぬきうち)
予告なしに行う物事。
刀を抜いて、構えることなくいきなり斬りかかることに由来。相手に準備をする暇を与えないことが転じて、現代の意味に変化しました。
真打ち(しんうち)
芸能の世界で、他より遅れて登場して演目を務める人物。
刀には真打ちと影打ちがあり、真打ちは出来の良い刀のこと。
鞘当て(さやあて)
ちょっとした意地の張り合いで2人が争うこと。
武士同士の刀の鞘が当たった(またはわざと当てた)ことで起こるケンカが由来。
元の鞘に収まる(もとのさやにおさまる)
一度仲違いした者が元の親しい間柄に戻ること。
刀の反りが合って鞘に上手く収まることが由来。江戸時代からよく使われるようになります。
身から出た錆(みからでたさび)
自分の悪行が自身に返ってくること。ここでいう「身」とは「刀身」。
手入れを怠った刀身には錆が生じ、いざというときに役に立たないことのたとえ。
研ぎ澄ます(とぎすます)
神経や感覚を鋭く敏感な状態にしておくこと。
刀を研いで一点の曇りもない澄んだ状態に仕上げることが由来。
目抜き/目貫(めぬき)
目貫とは、刀の柄の中央部に添えられる飾り。
うっとり
ある物や人に心を奪われて見つめてしまうときの表現。
「金袋着(うっとり)」とは、刀の目貫部分に金の薄板をはめ込む技法のこと。金を移しとる「移し取り」が変化した形です。
とんちんかん
物事のつじつまが合わず、ちぐはぐな状態、またはそんな人。
数名の刀鍛冶で1本の刀を打つ際に、息が合わず「とん、ちん、かん」という音が聞こえたことに由来。
折り紙付き(おりがみつき)
権威のある人や団体から信頼できる物・人として認められること。
ここでの折り紙とは、本物と認められた刀に発行された鑑定書のこと。
参考:日本語じゃなかった!実は英語由来の意外な外来語集|英語から日本語になった意外な外来語とは?
焼きを入れる(やきをいれる)
現代日本語では、喝を入れてしゃんとさせるという意味。
刀の鍛錬の過程で、泥で包んだ刀身を火の中に入れた後に一気に水で冷やすことを「焼き入れ」といいます。これにより、刀の刃がさらに硬くなることに由来して、人相手に使われる言葉となりました。
付け焼刃(つけやきば)
にわか仕込みで間に合わせの技術や知識のこと。
焼きを入れる正式な刀の鍛錬をせず、一見焼き入れをしたかのように研いだり手入れした刃「付け焼き刃」が語源。
侍・武士・忍者が由来の日本語【矢・槍・矛・銃】
侍や武士の武器は刀だけではありません。槍や矛、弓矢などの伝統的な武器から生まれた言葉、戦国時代で使用された火縄銃由来の言葉もあります。
七つ道具(ななつどうぐ)
何かをするのに大事なひとそろいの道具。
もとは、武士が戦場に行くときに身につけた7つの道具をいいました。具足・(短い)刀・太刀・弓・矢・母衣・兜のことです。
図星(ずぼし)
相手の思っていることを当てること。
矢の的の中心の黒点「図星」が語源。図星を狙うことから、狙い所や急所の意味に転じていきました。
的を射る(まとをいる)
的確に要点をとらえること。
弓や鉄砲の目標である「的」を射ることに由来。
的外れ(まとはずれ)
見当外れなこと。
弓や鉄砲の目標である「的」から外れることに由来。
矢面に立つ(やおもてにたつ)
「矢面」とは、敵の矢が飛んでくる正面のこと。
そこに立ちはだかることから、非難・抗議・質問などが集中する立場に身を置くことをいうようになりました。
矢継ぎ早(やつぎばや)
続けざまに物事を行うこと。
「矢継ぎ」とは、矢を放った後に次の矢を用意すること。その動作が早いことが語源です。
手薬練を引く(てぐすねをひく)
十分に用意して待ち受けること。
松脂を油で煮て混ぜた「薬練(くすね)」に由来。薬練を弓に塗ると強度が増し、戦いの前に手で塗って戦いに備えたことが語源。
伸るか反るか(のるかそるか)
成功するかどうかはわからないがやってみること。
もともとは、矢作りの用語。竹を型にはめて乾燥させる矢作りで、型から出すまで竹がまっすぐ伸びているか反っているか分からないことに由来。竹がまっすぐ伸びていたら思う方向に飛びやすい矢ができます。
矢も盾も堪らず(やもたてもたまらず)
気持ちをどうしても抑えきれないこと。
矢で攻めても楯で防いでも、敵の攻撃の勢いを止められないことに由来。
楯突く(たてつく)
素直に従わず反抗すること。
楯を地面に突き立てて、刀や槍、矢の攻撃を防ぐことが語源。
一本槍(いっぽんやり)
たったひとつの手段・方法のこと。
戦で、槍一突きで勝負を決めることに由来。一突きで勝敗を決することが転じて、「ひとつだけの手段」「得意技」となり、さらに「ひとつの手段で押し通す」という意味になりました。
槍玉に挙げる(やりだまにあげる)
大勢の中から特定の人を選んで攻撃の目標にすること。
槍で人を突き刺して高く掲げて、手玉のように操ることをいいました。
横槍を入れる(よこやりをいれる)
他の人が話をしたり何かしているときに、第三者が口を出したり邪魔をしたりすること。
戦場で両軍が戦っているときに、別の一隊が槍で突きかかる「横槍」が語源。
矛先(ほこさき)
攻撃の目標や方向のこと。
両刃の刀に柄のついた「矛」を敵に向けることをたとえたのが由来。
口火を切る(くちびをきる)
真っ先に物事を始めること、そのきっかけとなること。
火縄銃の爆薬に着火するための「口火」が語源。
火蓋を切る(ひぶたをきる)
物事に着手すること。これも、火縄銃に由来する言葉。
「火蓋」は火縄銃の安全装置のことで、そのふたを切ることは、火縄銃に点火し戦いが始まることを意味しました。
侍・武士・忍者が由来の日本語【戦】
武器以外にも、戦の中で登場し、現代日本語の語源となっている言葉もたくさんあります。
合言葉(あいことば)
前もって打ち合わせておいて、仲間かどうか確認するときにつかう秘密の言葉。
戦場で敵味方区別するために使われていました。
一番乗り(いちばんのり)
誰よりも早く目的地に着くこと、誰より早く何かを成し遂げること。
戦で敵陣や敵の城に1番早く攻め入ることをいいました。
先駆け(さきがけ)
物事のはじめとなること。
戦場で敵陣に真っ先に攻め込むこと、またはその人に由来。先駆けの一番乗りは、大きな手柄が得られました。
出張(しゅっちょう)
ビジネスマンの行う出張も、もとは侍たちの戦いが語源。
戦いのために他の場所に赴くことをいいました。
出馬(しゅつば)
現代日本語では、選挙に立候補すること。
もとは文字通り、馬に乗って出かけること。転じて、戦場に出向くこと→選挙を戦場に見立てて立候補するという意味に変化していきました。
先鋒(せんぽう)
戦で軍隊の先頭に立って進む兵士のこと。室町時代頃から使われています。
名乗りを上げる(なのりをあげる)
自分の名前を言うこと、参加の意志を表明すること。
鉄砲伝来以前の伝統的な戦いは、自分の名前や身分を相手に告げた後の一騎打ち。この名前を告げることを「名乗り」と言いました。
一騎打ち(いっきうち)
一対一で戦うこと。
「一騎」は馬に乗った1人の兵士。お互い名乗りを上げてから、一対一で戦う手法は、鉄砲伝来まで主流な戦いでした。
内幕(うちまく)
外からは分からない内部事情のこと。
戦場で陣中に張った幕のうち、内側の幕のこと。
裏を掻く(うらをかく)
相手の予想と反対のことをすること。
槍や矢が通すはずのない鎧や盾を貫いて裏側までとどくことに由来。本来なら、そんなことにはならないけれど、鎧に不備があれば不覚をとる。つまり、相手の油断をつくという意味合いもあります。
影武者(かげむしゃ)
敵を欺くために大将の格好をした身代わりの武士に由来。
現代日本語では、このままの意味と、黒幕や首謀者を意味することもあります。
一旗揚げる(ひとはたあげる)
地位や財産を得るために新しく事業などを立ち上げること。
戦場で武士が家紋のついた旗を掲げたことに由来。
旗色(はたいろ)
物事の成り行きのこと。「旗色が悪い」というように使われます。
戦場で敵味方の印として旗を掲げ、旗の数などで戦況が分かったことに由来。
錦の御旗(にしきのみはた)
自分の主張を正当化し、権威づけるための名目。
もともとは、赤の錦地に月と日を刺繍した旗。現代の意味は、明治維新の際に官軍が旗印としたことに由来します。
兜を脱ぐ(かぶとをぬぐ)
相手の力量を見て、「とても叶わない」と降参すること。
武士が戦場で兜を脱いで降参したことに由来。
軍配を上げる(ぐんぱいをあげる)
試合や競争で勝利の判定をすること。
武将が戦場で指揮をするのに使う軍配団扇が語源。
参考:相撲由来の言葉15選|相撲/角力の起源は?漢字の由来と語源は
侍・武士・忍者が由来の言葉は慣用表現が多い
「もう侍も忍者もいないんですよ」と言うと、外国人は実にガッカリした顔をします。
けれども、侍の魂は現代日本語にもまだ生きています。そんな話をすると、ガッカリ顔の外国人たちも少しはテンションを取り戻してくれます。
侍や武士の文化から来た日本語は、たとえが多く、慣用表現がほとんどですね。こういう日本語を話す人を見ると、日本人でも外国人でも「日本語使いこなしているな」と尊敬します。
前回記事:中国語でも使われる日本語由来の漢字とは?日本語と中国語はやっぱり似てる!
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