日本語を教える上でいつも思うのは、日本についてさまざまな文化や知識を知っておく必要があるということです。
日本語を勉強する人にとって、教師は「日本代表」。
日本のことなら何でも知ってるに違いない!という気持ちからか、さまざまな質問が飛んできます。
だからこそ、我々「日本代表」は日々、外国人が興味のありそうなものに対して、幅広くアンテナを貼っておく必要があります。
日本の歴史や伝統文化は、まさにその代表でしょう。
今日は日本史のお話をしていきます。
いつから日本は生まれたの?神話が起源の日本国
日本の起源は?日本人のルーツは?と聞かれると、多くの日本人はうまく答えられません。
参考:日本語の起源が韓国語説って本当?日本は多言語国家?起源不明の日本語の謎分析!海外の反応も
謎なのは民族や言語だけではありません。
日本というのは、建国からしてとてもあいまいな国なんです。
「ずっと日本」の長い歴史を持つ国
私たちにとって、日本が2000年「日本」であり続けたのは普通のことです。
けれども、これは世界的に見ればすごいことです。
例えば、ヨーロッパでは自国の歴史を学んでいても、いつ間にか一部または全部が他国のものになっていたり…ということも多いもの。
これは世界史の教科書の資料です。
他国がコロコロ変わる中、日本は微動だにせずそこにありますね。
もちろん、国内では権力や領地争いがあり、権力者が朝廷だったり幕府だったりという歴史はありました。
しかし、武士の時代でも天皇は変わらずいました。
権力が移っただけで、「国」が変わったわけではありませんでした。
他国から侵略の影響がない国というのはアジアではなかなか珍しいことです。
日本が小さな島国にも関わらず他国からの侵略を免れた理由は、大陸から離れた島国であったこと、ヨーロッパから遠いことが挙げられます。
日本誕生は神話世界にあり?日本の神話起源説
日本建国についての詳しい起源は分かっていません。
712年に成立した『古事記』、720年に成立した『日本書紀』は、大和王権が作った国家の歴史を記したもの。
ここには、イザナキとイザナミという神が海をかき混ぜて日本列島が生まれたとか。
アマテラスが隠れてまた出てきたとか。
八俣(やまた)のオロチを退治したとか。
私たちがよく知る日本神話が書かれています。
初代天皇とされる神武天皇は、カムヤマトイワレビコつまり神々の末裔であると。
紀元前660年2月11日に即位し、日本が建国されたのだと。
大和政権は神々を天皇の先祖とすることで、人々を支配する力を得たかったのでは、というのが多くの研究者の認識です。
日本が「国」として認められたのはいつ?
では、日本の本来の起源はどこからなのでしょうか。
「日本」という国号が使われる前であれば、中国の後漢(25~220年)の歴史書に初めて「倭」についての記述があります。
また、邪馬台国の卑弥呼について記載のある『魏志』倭人伝では、238年頃に卑弥呼が「親魏倭王」に任じられ、金印を授けられたと書かれています。
外国から「国」として認識された初めての出来事ですね。
なぜ日本は日本というのか?いつから?国号日本の起源
さて、私たちの住む日本はなぜ日本というのでしょうか。
いつから日本という国号が使われ出したのでしょうか。
日本という名前はいつから?国号「日本」の起源
日本はいつから「日本」なのか。
国号「日本」が登場したのは、700年頃 と推測されています。大化の改新の頃説、689年頃説などもあります。
701年には正式国号として定められ、702年には中国に認められているとの記述も。
中国の歴史書『隋書』では「倭」、『旧唐書』では「倭」と「日本」が使われ、『新唐書』からは「日本」のみ使われています。
つまり、中国が「隋」から「唐」になる頃に、「日本」という国号が生まれたと考えられます。
694年には藤原京、710年には平城京都市への移動があったこの時代は、都市計画や律令制整備など、国内が大きく変動した時代。
このような国内の動きに合わせて、国号が変えられたと考えられています。
日本はなぜ日本というのか?国号「日本」の由来
さて、では、日本はなぜ日本というのか?
その由来には、聖徳太子か遣隋使の派遣とともに送った手紙がキーだとされています。
『日出処天子至書日没処天子無恙・・・(日出処(ひいずるところ)の天子、書を日没する処の天子に致す・・・)』
歴史で誰もが見たことのある一文ですね。
聖徳太子が隋の皇帝に送り、当時皇帝だった煬帝はこれを見て憤慨したというエピソードは有名です。
中国の歴史書には、「日出処(日の出る国)」=「日の本(ひのもと)」が由来となって、「日本」という国名に変えたのではないかされています。
中国側からの推測ですよね。
はい、これも、決定的な由来を示す国内の書物は見つかっていません。
「Japanジャパン」の起源と由来
日本の英語名はJapan(ジャパン)。
ドイツ語ではJapan(ヤーパン)、フランス語ではJapon(ジャポン)、スペイン語ではJapon(ハポン)、イタリア語ではGiappone(ジャポネ)。
どれも似通っているため、語源はひとつと考えられますね。
初めてヨーロッパの文献に日本が登場するのは13世紀末頃。
マルコ・ポーロが『東方見聞録』で、「黄金の国」日本を紹介しています。
この中で、日本は「ジパング (Zipan, Zipangu, Cipangu) 」と記載されています。
しかし、マルコ自身は日本を訪れておらず、日本の記載は中国滞在中に中国人から聞いたもの。
この頃、中国での「日本」の発音はさまざまでしたが、マルコは「ジーペン」という発音を聞いたのではないかというのが有力な説です。
「ジーペン」を「ジパング」と聞き間違えて、ヨーロッパに広がったと考えられます。
日本は建国も言葉も全て起源が曖昧だった
さて、記事を書いておいてなんですが、結局日本の起源については、謎だらけ。
日本人とは?→ルーツが多くてこれとは言えない。
日本の建国はいつ?→神話に基けば紀元前660年。第三者目線の文献はなし。
他国に「国」と初めて認められたのは?→238年頃、邪馬台国。場所は不明。
国号「日本」の由来と起源は?→諸説あり。
日本語の起源は?→不明。
ザッとあげてもこれだけ「よく分かってないもの」があるんですね。
日本人が断定を嫌い、曖昧な日本語をよく使うのも、こうした曖昧な日本の起源に由来するのかもしれません。
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