日本人は本当に無宗教なのか無宗教じゃないのか?
まず、「無宗教」とは「宗教的な習慣がない」という意味ではありません。むしろ、日本人の生活には神道や仏教、さらにはキリスト教由来の文化が深く根付いています。
仏式葬儀:大半のお葬式は仏式で行われます。
結婚式:教会式が主流ですが、神前式や仏前式も根強く人気です。
これらの行事を楽しむ一方で、日本人は「特定の宗教に属している」という意識が薄いため、「無宗教」と見なされがちです。
信仰心の有無についてのNHKの調査によると、「特定宗教に対して信仰心がある」と答えた統計データは以下のようになっています。
1998年 | 2008年 | 2018年 |
32% | 33% | 27% |
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20190401_7.pdf
割合としては、日本人で信仰心がある人は30%前後。ちなみに、CNN米国人の宗教観に関する調査では、23%が無宗教と回答したそうです。その他は何かしら信仰があるとのことなので、比べると日本人は無宗教のように思えますね。
しかし、必ずしもそうなのでしょうか?私の周囲の西洋の方々は皆、「毎週日曜日に教会?まさか!教会に行くのはクリスマスくらいなもんさ」という人ばかり。人によっては、無宗教や無神論をポリシーにしてる方もいます。
「一応檀家はあるけど、敬虔ではない」「別に神様とか信じてないけどお詣り行く」日本人と同じでは?と思う今日この頃です。
いつから日本人は無宗教と見られるようになった?
日本人がいろんな宗教から考え方や慣習をいいとこ取りしているのは、他国の人から見ると不思議なのかもしれません(どの国にもあり得ることですが)。日本人が「無宗教」とされる背景には歴史的な要因があります。
1. 神仏習合と神仏分離
8世紀頃、日本では神道と仏教が融合する「神仏習合」の文化が定着しました。しかし、明治時代に神道が国家宗教として強調されると、仏教との分離政策が進みました。
2. 戦後の宗教解体
戦後の民主化により、国家神道は廃止され、宗教は政治から切り離されました。この結果、「宗教」は個人の自由な選択とされ、公的に語られる機会が減少しました。
3. 新興宗教への警戒
現代では、新興宗教への警戒心が広まり、「宗教=危険」という偏見が形成されています。このため、多くの人が宗教を公言しない傾向にあります。
【海外の反応】日本人の宗教観おもろ
「日本人って本当に無宗教なの?」「結婚式は教会で、でもお葬式は仏教?」「初詣に行くのに、宗教に興味ないの?」
こうした疑問は、海外の人々が日本の宗教観に触れるときに感じる典型的なものです。しかし、多くの外国人は日本人の柔軟な宗教観を興味深く見ています。
「倫理観は高い」宗教に縛られずとも、道徳心が高い日本社会を評価する声も。
「宗教の多様性に寛容」神道、仏教、キリスト教が同時に存在する姿が新鮮だという反応も見られます。
日本人の宗教観の柔軟さとその理由
このように、日本人は無宗教というよりは、宗教観が柔軟であるといえます。その理由には、以下のような特性が挙げられます。
アニミズム的信仰
自然や物に神が宿るという考え方が古代から存在しています。これが「八百万の神」という神道の多神教文化に繋がっています。
歴史的な多様性
仏教や儒教、西洋文化が日本に導入される中で、それらを組み合わせたり受容する柔軟性が育まれました。
信仰のプライベート化
戦後、宗教が公的な場から切り離され、信仰は個人的なものという意識が強まりました。
【海外の反応】「なぜ葬式は仏式?」「結婚式は教会?」
日本人には、長くひとつの宗教や教えを貫くという歴史がありませんでした。これらの宗教観はやはり、外国人からすると面白いようです。では、よくある「仏教と神道の違いは?」「なぜ葬式は仏式?」「結婚式は教会?」の答えと理由も見ていきましょう。
仏教と神道って違うの?
「なぜ日本人が無宗教なのか」という海外の反応とともに多いのは、「仏教と神道の違いは?」というもの。お寺は仏教、神社は神道。仏教のお寺にいるのはお坊さん、神道の神社にいるのは神主さんという知識がある人もいるでしょう。
それぞれのキーワードを箇条書きしてみましょう。
複数の神様が存在する多神教(八百万の神など)
言い伝え・神話や口承伝聞により、自然的に発生
イザナギ・イザナミが日本を作ったなどの古事記は神道のお話
神々の子孫が天皇であるとされることから以前は天皇=神様という考えだった
教典なし
七五三、初詣、神式の結婚式などが主
参考:「日本」「Japan」の語源・由来は?いつから「日本」?日本の起源は神話?
ゴーダマ・シッダールタ(釈迦・ブッダ)の教えによる
輪廻転生・生まれ変わるというのは仏教の教え
もともとは、修行により輪廻転生から解脱して極楽に行くことが目的
「経典」が教典
日本人の多くは仏教徒(敬虔ではなくても檀家あり)
そのため葬式は仏式が多い
なぜ結婚式は教会?クリスマスも祝う?
キリスト教徒でもないのに、教会で結婚式をする。長くひとつの宗教や教えを貫くという歴史がない私たちが、結婚の誓いを絶対に神式の神様に立てるという必要もなく…ブライダル業界の暗躍と若い女性たちの「西洋式がロマンチックでしょ!」という意識により一般的になった結果です。
クリスマスは、一応南蛮貿易時代に伝わったそうですが、江戸時代のキリスト教弾圧により市民に知られるようになったのは、明治期に新聞を通してのこと。日露戦争後には、信者でなくてもお祝いするようになり、だんだん現代の「サンタさんの日」や「大人たちも大騒ぎ」「家族でケーキを食べる日」になっていきました。クリスマスの広がりは完全に、「とにかく楽しそうだからやる」ということですね。
無宗教みたいな日本人にも信仰あり
ここまで日本人の宗教観を書いてきました。多神教の日本人では、お祈りや信仰する対象はひとつにする必要は昔からありませんでした。
結果として、無宗教というよりも、特定の宗教に縛られない柔軟な信仰スタイルを持っている日本人が出来上がったのでしょう。日本人の多くは、自分を「無宗教」と感じているかもしれません。しかし、生活習慣や価値観の中にも、宗教的教えが確実に息づいています。
信仰が心の拠り所となったり、「神が与えた試練なのだ」とポジティブだったりするなら、信仰心があるのは素晴らしいことだと思います。日本人も、宗教的教えに即した考え方をしている人が大勢います。ただ、それを宗教とは結び付けないだけ。これは、無宗教だといわれる日本人にも信仰が確実に存在しているということではないでしょうか。
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参考文献・論文
https://zenken.agu.ac.jp/research/47/09.pdf