オランダ語とは?起源と日本との関係
オランダ語とは、オランダとベルギー北部、アフリカのスリナムで話される言語。
ゲルマン語を起源とする西ゲルマン語群に属す、英語やドイツ語の仲間。特にドイツ語と多くの類似点があります。
それを体現するように、オランダ人は英語が得意。ドイツ語を話すオランダ人も多くいます。
日本語とオランダ語は似てる?
オランダ語と日本語は似ているかどうか、ですが、文法構造や単語的にかなり異なるといえます。
ただし、オランダは江戸時代にヨーロッパ唯一の貿易国であり、当時入ってきた渡来品や学問などのオランダ語は、身近な外来語として今も日本語に残っています。
開国までオランダ語は非常に重視されており、西洋の学問を学ぶために、知識人たちはオランダ語を学ぶ必要がありました。
オランダ語から日本語になった言葉|【食べ物】の外来語
さて、オランダ語から日本語になった外来語にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、貿易の要になった食べ物や飲み物。オランダから日本に伝わった食べ物は、特に私たちの身近な外来語として知られています。
意外な外来語も、たくさんあります。
Bier/ビール
ビールが初めて日本に来たとされるのは江戸時代。オランダ語やドイツ語では「ビア」と発音し、オランダ語由来の外来語として日本語に残っています。
ちなみに、初めて日本でビールを醸造したのは幕末の蘭学者といわれています。
Pons/ポン酢
食卓に並ぶ調味料・ポン酢も、実はオランダ語由来の日本語。オランダ語の「ポンス」とは、柑橘類の絞り汁のこと。
また、蒸留酒にこれらの果汁を加えたカクテル「ポンス」のことで、当時貿易の拠点だった長崎出島のオランダ商館の食卓で出されていました。
このポンスに加えていた果汁に酢酸を加えて味を整え、調味料になっていったのがポン酢。
さらに、醤油などを加えて全国の食卓に広く普及する調味料となっていったそうです。
Koffie/コーヒー
コーヒーを日本に初めて持ち込んだのはオランダ人という説が有力です。(足利時代のポルトガル人やスペイン人が伝えた説もあり)
コーヒーはオランダ商館だけに嗜まれるもので、当時の日本人受けは良くなかったことが文献に残っています。
江戸末期に活躍したドイツ人医師のシーボルトは「日本人がコーヒーをあまり飲まないのは、勧め方が悪いからだ。身体に良いことを説明すれば、もっと飲むようになる。」と言ったそうです。
Siroop/シロップ
砂糖を溶かし香料などを添加した液体状の甘味料。これも、オランダ由来で、オランダ船に乗ってきてそのまま伝わりました。
Kok/コック
料理人のことを指す「コック」はオランダ語由来、「シェフ」はフランス語由来です。
現代の日本語で「シェフ」とは、コックたちをまとめる総料理長のこと。フランス語「シェフ・ド・キュイジーヌ(chef de cuisine)/厨房のチーフ、リーダー」が語源。
オランダ語から日本語になった言葉|【貿易品】の外来語
オランダから日本に伝わった食べ物以外にも、多くの輸入品の名前もオランダ語由来の日本語として残っています。その中には、オランダのものでなくとも、ヨーロッパのものとして伝わったものも数多くあります。
Gom/ゴム
植物ゴムは身近な外来語ですが、オランダ語由来です。
江戸貿易時代に入ってきて、そのまま日本語になりました。
Glas/ガラス
江戸時代までに、ガラスのものは既に中国経由で入ってきていました。
それまでは「瑠璃(るり)」や「玻璃(はり)」などと呼ばれていました。
同じくオランダ語由来の「Diamant(ギヤマン)」もガラスのことです。
Lens/レンズ
メガネに用いられるガラス状の素材。メガネなどと共に入ってきたとされる、オランダ語由来の身近な外来語です。
Brandpunt/ピント
オランダ語で「焦点」という意味。オランダ語発音では「ブラントプント」。
「ピントを合わせる。」など、日本語と合わせても使われる非常に身近なオランダ語由来の外来語です。
Satijn/サテン
洋服の生地に使われるつるつるしたとした肌触りの良い素材。着物文化の中では真新しい生地でした。
これがオランダから日本にもたらされ、オランダ語由来の日本語として、服飾関係ではよく使われる外来語として残っています。
Haak/ホック
衣類用の留め具。ホックは着物にはないもので、オランダ船から日本にもたらされました。
Ransel/ランセル
海外から「日本のランドセルすごい」と評判のランドセル。実は、オランダ由来の日本語。
江戸時代末期に、幕府が導入する洋式軍隊の使用するバックパックを、オランダからもたらされたものにしたことがランドセルの起源とされています。オランダ語呼称の「背負うバッグ」=ランセルがなまって「ランドセル」になったといわれています。
明治以降の洋式軍隊となった陸軍の歩兵にもこの革製のバックパックが採用されました。
通学鞄としてランドセルが初めて利用されたのは、1885年頃の学習院でのこと。
現在のランドセルの形で広く普及され出したのは戦後、高度経済成長期を迎えた昭和30年以降のことです。
Marmot/モルモット
テンジクネズミの通称。動物名としてだけでなく、「実験体」を表す比喩にも使われるオランダ語由来の日本語です。
Orgel/オルゴール
楽曲を演奏する機械楽器。
1852年、江戸深川の見世物小屋でオランダ人が公開したのが日本で初めてのオルゴール演奏とされています。
後に小林伝次郎という時計職人が、オランダから持ち込まれたものを研究し、日本で初めてオルゴールを作ったという記録があります。
Kop/コップ
飲み物用の容器。ポルトガル語の「Copo/コップ」から来たという説もあります。
Schop/スコップ
土を掘るとき用いる道具。
オランダ語発音では「スホップ」。ちなみに「Shovel/ショベル」は英語です。
Doek/ズック
学校の上履きや靴を「ズック」と呼ぶことがあります。今では死語かもしれませんが、これも実はオランダ語から日本語になった言葉。
本来のオランダ語では、「ドゥーク」、織物という意味です。
オランダ語から日本語になった言葉|【学問・知識・その他】の外来語
Kompas/コンパス
円を描くための製図用具。
ヨーロッパでは古代ギリシアから定規とともに使われていました。オランダから日本に入ってきたため、オランダ語由来の日本語として残っています。
Elektriciteit/エレキテル
江戸時代に活躍した平賀源内の摩擦起電機「エレキテル」は、オランダ由来の発明。
江戸時代の貿易で日本にもたらされたものを源内が復元したといわれています。
オランダ語の意味は、電気や電流のこと。
Blik/ブリキ
鉄鋼を加工した板。オランダ語発音で「ブリク」。
江戸時代に言葉とともに入ってきた説が有力です。
Retort/レトルト
「レトルト」というと、レトルトカレーやレトルトパウチなど特殊なプラスチック製の袋に入った、調理済みの食品を思い描くでしょう。
実は、オランダから江戸時代には「レトルト」は入ってきていたのです。…といっても、このオランダ語「レトルト」とは、加圧過熱殺菌をする釜のこと。
今のレトルトパウチ食品は、アメリカの宇宙食品開発の過程で発達したものです。
Asbest/アスベスト
健康被害などでもよく話題に挙がる石綿。
江戸時代には既に入ってきたオランダ語由来の日本語です。
Mes/メス
日本では医療で使う刃物。オランダ語では、ナイフという意味です。
ちなみに、欧米で医療従事者が使うメスは「scalpel/スカルペル」、または「lancet/ランセット」と呼ばれます。
Ontembaar/おてんば
お転婆と漢字が当てられることからオランダ語であることが意外な外来語。
ですが、「手に負えない」というオランダ語由来の日本語です。
日本では、女性に使う言葉で、「恥じらいもなく活発な様子」を指すようになりました。
Zontag/ドンタク
オランダ語で日曜日は「ゾンタフ」。
週休2日以前、土曜日に半日仕事をすることを「半ドン」と言いましたが「半分日曜日=半分ドンタク=半ドン」と変化したものだそう。
福岡最大のお祭り「博多どんたく」もこれに由来します。
Letter/レッテル
「レッテルを貼る」という言葉があるように、日本語ではステレオタイプと同義で使われる外来語。
オランダ語発音で「レテル」といい、文字やラベルを指します。
オランダ語由来の日本語は身近な外来語として残っている言葉ばかり!
江戸時代、日本にとってオランダがヨーロッパ唯一の貿易国であった時代は、200年続きます。
オランダは、もともと商売で栄えていた自国文化はもとより、ヨーロッパ各国の化学、医学、知識などの学問を渡来品や兵器と共に輸出していました。日本人の西洋観の第一歩が、オランダ人だったわけです。
フランス革命や産業革命が起こった18世紀といえば、ヨーロッパの天地がひっくり返った激動の時代。そんな中やってくるオランダの渡来品や知識は、日本人からすれば全てが真新しく、驚くべきものでした。
だからこそ、今も身近な外来語として、オランダ語があちこちに残っているのでしょう。
今回ご紹介したのは、オランダ語から日本語になった言葉のごく一部。
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