「おはようございます」「こんにちは」挨拶の語源・由来とは
挨拶はコミュニケーションの第一歩。
各国に様々な挨拶言葉があるように、日本語にもたくさんの挨拶がありますよね。
それぞれの語源や由来はどんなものなのでしょうか?
挨拶の語源と由来
そもそも、「挨拶」とは何でしょうか。
「挨」は「押す(心を開く)」、「拶」は「迫る(心に近付く)」と言う意味。
「挨拶」は、禅の「一挨一拶(いちあいいっさつ)」が語源。
相手に言葉を投げかけて、その反応で悟りの深さを見ることです。
ここから、問答や返答、手紙にも使われる言葉となっていきました。
「おはよう」「おはようございます」
「おはよう」は、朝早くに会った相手への「お早いですね。」と言う言葉が由来。
「早い」の連用形「はやく」がウ音便化し、接頭語の「お」が付きました。
「こんにちは」
「こんにちは」は、日中に会った人へ「今日(こんにち)は、お元気ですか。」「今日は、ご機嫌いかがですか。」などが略されたもの。
したがって、「こんにちわ」は間違いです。外国人がよくする間違いですが、語源を教えると誤用が減ります。
「さようなら」「さよなら」
「さようならば、これにてごめん。」「さようならば(名残惜しいですが)お別れしましょう。」が略され「さようならば」のみで別れの挨拶に。
さらに「さようなら」「さよなら」と短くなったものが、近世以降一般化しました。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」の語源である「ご機嫌」は、現代と同じ意味。
「ご機嫌よくいらっしゃいますね。」「ご機嫌よくいらしてください。」が由来です。
「ご機嫌良く」がウ音便化して「ご機嫌よう」に変化、近世後期によく使われるようになります。
参考:漫画アニメの中国人はなぜ「あるある」言う?お嬢様は「ですわ」?博士キャラは「~のじゃ」?
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」は、「休みなさい」という命令表現が語源。
寝る前の挨拶として一般化しました。
「さらば」
「さらば」は、「さようなら」より古い言葉で、中世以降から別れの挨拶として使われました。
「然り」の未然形+仮定の「ば」に由来。
「さようならば」と同じく、「そうであるなら」の意味。
「あばよ」
「あばよ」の語源については諸説あります。
「さらば」を真似た幼児言葉「あば」「あばあば」に由来し、終助詞「よ」が付いたという説。
「さあらばよ」「さらばよ」の略とする説。
「また逢はばや」からとする説。
「案配よう」の略とする説。
「ありがとう」「いただきます」感謝・謝罪の語源と由来
出会った人への挨拶の他に、感謝や謝罪を表す挨拶にも面白い語源と由来があります。
「ありがとう」や「いただきます」の他に、日常会話で頻繁に登場するものを見てみましょう。
「ありがとう」「ありがとうございます」
「ありがとう」の語源はポルトガル語…ではなく、形容詞「有り難い」の連用形「有り難く」がウ音便化したもの。
もともとは、「めったになく、おそれ多い」の意味。
人の好意や喜ばしいことに対して、「めったにないこと」と感謝する気持ちを表す言葉となりました。
「おかげさまで」
「おかげさまで」は、神仏の加護を「お陰」ということに由来。
偉大なものの恩恵や庇護を受けるという意味に接尾語「さま」が付いて、挨拶の言葉になりました。
「おかげさまで元気です。」などの略語です。
「おめでとう」
「おめでとう」は、形容詞の「めでたい」の連用形「めでたい」がウ音便化し、接頭語「お」が付いた祝いの言葉。
「めでたい」の語源は、動詞「愛でる」。
「めで」に、「程度が甚だしい」という意味の「いたし」が付いた「めでいたし」が変化した形です。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」は、許可を意味する「免」に、尊敬語の「ご」が付いた「ご免」が由来。
この形は鎌倉時代頃から使われていました。
「ごめんなさい」という形で使われるのは明治時代頃からです。
「すみません」
「すみません」の由来は、動詞の「済む」。
「済む」の連用形「すみ」に丁寧の助動詞(未然形)「ませ」+打ち消しの助動詞「ぬ」の変化「ん」。
本来は、「満足しない/納得しない」という意味。
参考:「すみません」は正しい敬語?意味と成り立ちは?「すいません」との違いは?「なぜ日本人はすぐ謝る?」の謎を日本語から解説
「いただきます」
「いただきます」は、高い身分の人に物を「いただく」ことに由来。
物をもらう時に高く掲げて受け取った様子から「いただく」とされました。
「いただく」の連用形「いただき」+「ます」で、「つつしんで飲食する」意味で使われるようになっていきました。
「ごちそうさま」「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」は、豪華な食事を意味するご馳走が語源。
したがって「ごちそうさま」とは、食事をふるまってくれた相手に「ご馳走になりまして」とお礼の気持ちを込めた言葉です。
「もしもし」「ただいま」声かけや掛け声の語源と由来
挨拶というよりは、相手への呼びかけになりますが、「もしもし」や「ただいま」の語源や由来はどのようなものでしょうか?
また、不思議な掛け声「オーエス」「どっこいしょ」なども見ていきましょう。
「もしもし」
「もしもし」は、「申す」の連用形「申し申し」に由来。
江戸時代に「申し申し」と「もしもし」が併用され、電話が普及し始めた明治時代以降に電話での呼びかけとして一般化しました。
「ただいま」
「ただいま」は、「ただいま帰りました。」の略。
「只今」とは、「たった今」という意味ですが、一部分が独立して挨拶の言葉になりました。
「どっこいしょ」
「どっこいしょ」の語源は、諸説あります。
相撲の攻撃を受け流す時に発する「どこへ」「どっこい」由来説が有力。
ちなみに、「どすこいどすこい」は、「どっこいどっこい」が東北訛りになったものとされています。
「オーエス」
綱引きや棒引きの際になぜか「オーエスオーエス」と言いますが、「オーエス」は、フランス語由来。
フランス語のかけ声「oh hisse(オゥイー)」が語源とされています。
「hisse」は旗や帆を引き揚げる「hisser」の命令形で、海軍を通して広まったそうです。
「フレーフレー」
「フレーフレー」は、英語の「hurrah」に由来。
もとは「万歳」の意味で、英語圏でも応援や歓喜したときの感嘆詞として使われます。
日本で「フレーフレー」が運動会などで用いられるようになるのは、大正時代から。
「拝啓」「敬具」「草々」手紙の挨拶の語源と由来
手紙には、その国によって書き方やマナーがあります。
日本では、かしこまった書き方で「拝啓」「敬具」、「前略」「草々」などを使用しますね。
これらの語源や由来は何でしょうか。
「拝啓」
「拝啓」は、「拝啓仕り候(はいけいつかまつりそうろう)」「寸楮拝啓(すんちょはいけい)」に由来。
「謹んで申し上げます。」の意味です。
「拝啓」のみで手紙の書き出しに使われるのは明治時代中期から。
「敬具」
「敬具」は、「拝啓」と同じく「謹んで申し上げます。」という意味の手紙の結び。
「拝啓」とセットで使われるのは、大正時代から。
「かしこ」
「かしこ」は、女性からの手紙の結びに用いる言葉。
「畏れ多い」という意味の「畏し」が語源です。
「草々」
「草々」も、手紙の結びの言葉。
「草」は大まかでぞんざいなさま。
「急いで走り書きをした」という意味です。
「前略」などとセットで使われます。
日本語の挨拶は略語がいっぱいだった
「こんにちは」は「今日はご機嫌いかが」の略。
「さよなら」は「さようならばお別れしましょう」の略。
「ただいま」は「只今帰りました」の略。
このように、どちらかというと大事な部分が切り取られた形で挨拶になったものが多くあります。
参考:なぜ日本語には主語がないのか?主語・目的語を省略する3つの理由
大切なことを略したり、本来の意味と変化させて使っていたり、結局は挨拶も変化してきた日本語のひとつなのでしょう。
日本語教師としては、日本企業でお偉いさんや上司や先輩が嫌がらない日本語を教えなくてはいけないものの、正直「言葉は生きてるんだから!」と反論したくなる日本語マナーも多いものです。
なぜ大正時代から、拝啓敬具はセットになったのでしょうか?
明治時代は、拝啓草々が使われついましたよね?
夏目漱石の書簡にも、拝啓…草々の手紙が載っていました。