今回は、中国語と日本語の違いや、日本語から中国語になった日本語由来の言葉・逆輸入漢字を見ていきましょう。
中国語と日本語の共通点と違い・海外の反応
中国語というと、世界で最も母語話者数の多い言語。
歴史的に、今の日本語を形作った言語でもありますね。
そんな中国語と日本語はやはり似てるんでしょうか?
中国語とは?
シナ語派中国語族に属する言語。
中国・香港・マカオ・台湾などを中心に、全世界の華僑に話される言葉です。
世界の母語話者は、約15億人。
漢字の種類が膨大なため、ヨーロッパ言語話者からは「世界で1番難しい言葉のひとつ」とされています。
参考:日本語は世界で最も難しい言葉?外国人による海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ|難易度の高い言葉ランキング1位は?
日本語と中国語は似てる?
「日本語と中国語が似てるはず」と思って中国語を勉強すると、多くの人は後悔するはずです。
語順が違い、発音は日本人にとってかなり複雑、簡体字は日本の漢字と異なる…と共通点は少ない言語です。
それでも、字面が似ているためか、漢文の知識のためか、私たち日本人は中国語の短い文を読んでなんとなく意味を理解できることもあります。
例えば、以下は簡体字の文章です。
「哪里」が「どこ」を意味すると知っていれば、なんとなく意味がわかりませんか?
繁体字だと、さらに読解しやすくなります。
なんとなく分かるかもしれませんが、「校服」とは制服のことです。
もちろん、文章によっては検討も付かない中国語もありますが、日本人にとって中国語読解は、欧米人のそれよりは簡単といえます。
【語順・発音・文法】中国語と日本語の違いも多い
前述した通り、中国語は文法構造的には日本語とは全く異なる言語です。
違いを挙げるとこんな感じ。
・孤立語
・発音:音が多い
・声調という4つのアクセントがある
・漢字の読みはひとつ
・自他動詞の区別がない
日本語と中国語は似てる?海外の反応
「漢字以外似てないよ。発音は結構違うしね。」
「日本語の漢字の発音は上海や江蘇付近の方言にかなり似ていると思うよ。」
「(日本語を勉強してるけど)日本語が中国語ベースの言語とは気づかなかった。全然違うじゃないか!イタリアンパスタとナポリタンくらい違う!」
「中国語と日本語を勉強している人なら両方の言語の発音が似ているということに気づくだろうね。」
「(アメリカ系の僕からすると)中国語は文法が簡単だけど漢字が多くて大変、日本語は発音が簡単だけど文法が難しい。」
「日本人は中国語は話せなくても、漢字でなんとなく意味が分かるらしい。イタリア人がラテン語が分かるみたいなかんじかな?」
「日本語が中国語起源っていうのは嘘だろ?文法が全然違うし、共通点なんて漢字だけだよ。」
中国語でも使われる日本語由来の言葉・逆輸入漢字
さて、漢字や熟語は中国語由来!というイメージが強いですね。
たしかに、漢字は中国語からのものが大多数を占めます。
けれど、日本は外の文化を自国で変容させるお国柄。
漢字や熟語も日本独自のアレンジが加えられ、それが中国に逆輸入されていることもあるんです。
日本で作られた国字とは
国字とは、日本で作られた漢字のこと。
そのものの意味や音を「へん」「つくり」で表したものです。
例えば、「働」は、「人」が「動く」ことから作られた漢字。
「峠」は、山道で上り下りの分岐点をいうことから作られました。
日本語から中国語にもなった日本由来の言葉とは
漢字以外にも、日本語由来の中国語もあります。
その多くは、江戸時代や明治時代以降の、西洋から輸入された学問や制度・思想の翻訳日本語です。
日本では、西洋文化をいち早く取り入れるため、これらを分かりやすい日本語の言葉に訳して普及させました。
そして、明治27年(1894年)。
日清戦争に敗北した清(中国)は、近代化した日本に数千人の留学生を派遣しました。
この清の留学生が、当時の日本の書物を中国語に翻訳し、日本語のまま広まった言葉がたくさんあります。
「Telephone」の発音に漢字を当てた「泰来風」を作ったけれど「電話」の方が普及した…というような広がり方のものもあるようです。
参考:明治時代にできた英語・ドイツ語由来の翻訳語31選!明治期以前はなかった日本語の熟語
面白い!中国語と日本語で意味の違いがある言葉・漢字
漢字や多くの言葉は、中国から伝わりました。
しかし、その過程で勘違いがあったり、国内での意味が変わるなどして、日中間で言葉の意味が全然違うこともあります。
「鮪」
日本人が大好きなマグロ。
漢字は中国から伝わったものですが、中国語では「チョウザメ」。
これは、言葉が伝わった当時、「鮪とは大きな魚で…」という言葉ないし絵の説明で、日本人が「ああ、マグロか!」と勘違いしたためとされています。
参考:「日本」「Japan」の語源・由来とは?いつから国号「日本」なの?
「新聞」
中国語で新聞とは、「ニュース」のこと。
もともと、唐時代の「南楚新聞」に見られるように、中国で新聞とは、「新しく聞いた話」です。
日本でも同じ意味で用いられていましたが、1868年「newspaper」の訳語として「新聞」が使われ、元の意味より強くなっていきました。
「工作」
中国語で「工作」とは、「一般的な仕事」を指します。
日本では図画工作やスパイ工作といった使われ方をしますね。
なぜ図画工作を意味するかの理由は不明ですが、スパイ活動については戦中にできた意味合いではないかとされています。
昭和初期、中国語の「工作」が、日本の軍事関係の新聞記事に頻繁に現われ、「裏の/陰で行なわれるもの」というイメージがつきました。
「手紙」
今はあまり使われない単語だそうですが、中国語で「手紙」は「トイレットペーパー」。
もともと、中国語も日本語も「手紙」とは「手元に置いて使う紙」。
中国ではこれが転じて「トイレで使う紙」に。
日本では、手元に置いていた紙に書きつけた文に由来、または「手」が「文書」を表すことに由来して、今日の手紙になったようです。
「勉強」
中国語で「勉強」とは、「無理をすること」。
日本でも本来は、気が進まないことを仕方なくするという意味でした。
明治時代以降、無理をしてでも知識を得ることが美徳とされたため、「勉強=学習」の意味合いが強くなりました。
「愛人」
以前も取り上げたことがありますね。
中国語で「愛人」といえば、「愛する人」。
日本語にも同じ意味があります。
しかし、太宰治が小説の中で妾の女性に「愛人」と発言させたことを皮切りに、文豪たちがこぞって不倫相手を愛人と表記。
今では新たな意味が一般的になりつつあります。
「老婆」
中国語では「妻」。
俗語ですが、多くの世代で認知され、使われる言葉です。
中国語でも、昔は「老婆=年配の女性」でした。
北宋時代の貴族の詩の一節に「ずっと家事一切をつかさどっている妻」を「老婆」と表現するくだりから、自分の妻を表現するようになったといわれています。
日本国内での意味の変化だけでなく、中国国内でも意味の変化が起こる良い例ですね。
中国語と日本語は違いもありつつ密接な関係にある
いかがでしたか?
この他、中国語と日本語で違う言葉は山ほどあることでしょう。
あなたはこれらの違いをどう思いますか?
日本語を学ぶ中国語話者は、稀に「違うじゃないか!」「日本語は中国語と同じ意味にすべきだ!」と思うこともあるようです。
けれど、この違いは興味深く、面白いこと。
中国語と日本語で違いのある言葉を調べてみると、非常に面白い歴史的背景が見えるはずですよ!
次回記事:侍や武士の言葉・文化由来の日本語|武士が起源・語源の言葉とは?