私は「日本人が英語が苦手なのは当然のこと」と常に主張しています。「日本人は英語苦手」といわれる理由は以下の記事でもご紹介してます↓↓
さて、今日はなぜ英語が共通語になったのかというお話。実は英語が共通語として認識されるようになったのは、さまざまな要素が偶然的に重なったからだということはご存知でしょうか?
今回は、英語がなぜ・いつから世界共通語になったのか、そのメリットとデメリット、英語以外の世界共通語・エスペラント語や日本の公用語を英語にすべきかなどを見ていきましょう!
英語の成り立ちはいつから?英語史・歴史
まずは簡単に英語の歴史を見ていきましょう。簡単に書くとこんなかんじ。
4世紀 |
ゲルマン人の大移動(アングロ・サクソン人が大ブリテン島へ) ゲルマン語から初歩的な英語が出現 |
9世紀 |
デンマーク(デーン人)が大ブリテン島へ侵攻 古期ノルド語(デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語の起源)から日常単語が出現 ゲルマン語文法が徐々に簡易化 |
12世紀 |
ノルマン人のイングランド征服により貴族階級の公用語がノルマン・フランス語に |
14・15世紀 |
100年戦争によりフランス語が公用語としての地位を失う
英語に不足していた語彙がフランス語・ラテン語から流入
ゲルマン語にあった名詞の性や格変化がなくなる
語順が格を決めるように簡素化 |
近代 |
印刷技術によりスペルを統一 英語にない単語が16世紀~ラテン語、ギリシア語、標準フランス語から流入 |
現代 |
英語圏(イギリス、アメリカなど)の植民地支配により英語を公用語とする国は50か国以上に 戦後、世界の共通語に |
英語は周辺地域からの影響を受けて成り立っていることが非常によく分かりますね。
ゲルマン語やノルド語が基礎になっていることを見ると、ドイツ語圏や北欧の人々が英語が得意なのは至極当然のことといえます。
なぜ?いつから共通語?理由は簡単
さて、こんな英語が共通語になった理由は、一言で言ってしまうとこうです。
2. 英語圏の力が強かったから
世界共通語が英語の理由1: 簡単である
歴史で紹介した通り、英語はゲルマン語を簡易化したもの。ゲルマン語の特徴を残したドイツ語などと比べると、文法がかなり簡略化され、習得しやすい言語です。
と思った方も正解です。我々日本語話者にとって、文法構造も発音も異なる英語は難解。
この「簡単」には、(ヨーロッパ人にとって)が入ります。ノルド語やフランス語、ラテン語の単語も入っているため、ヨーロッパでは習得されやすいわけですね。
世界共通語が英語の理由2:英語圏が力を持っていた
英語が力を持った1番の理由は、英語圏の2大国が力を持っていたためです。その2大国とはもちろん…
『20世期最大の産業大国』と言われるアメリカ
イギリスは産業革命以降、経済的に世界をリード。さらに、各地にイギリス領を増やし、英語を公用語として統治することも多くありました。
一方、イギリスから独立したアメリカは、イギリスから世界覇権を引き継ぐ形で台頭します。
→調子に乗りすぎて世界恐慌
→植民地のない国に大打撃
→WWⅡ
→冷戦
→ソ連崩壊によりアメリカ未だ強し
という怒涛の流れの中、冷戦下で疲弊していたとはいえ、アメリカの経済力は他の追随を許しませんでした。グローバル企業を各地に構えていたのもアメリカの会社です。
こうして戦後、 グローバル企業で英語が話されることが多かったり、公用語として英語を話す国が多かったりという理由で英語=世界共通言語 と見なされるようになったのです。
英語以外の国際共通語エスペラント語とは?
人工的な国際共通語
言語オタクが最終的に行き着く先と言われているのが、約130年前に世界の人々の共通語を目指して人工的につくられたエスペラント語です。話者は世界に200万人。
1887年、ロシア語を話すユダヤ人家庭で生まれ育ったラザーロ・ルドヴィーコ・ザメンホフが創案しました。
エスペラント語の目的は世界平和
エスペラント語が作られた目的は世界平和です。なぜ言語が世界平和なのか?
それは、エスペラント語が生まれた当時に当然のように行われていた言語統制による差別や嫌悪感、憎しみを意識していたのでしょう。
そこで、生まれたのがエスペラント語です。国家Aが第一言語として使っている言語を支配下Bの人々が学ぶことで共通語にするのではなく、新たな言語を全ての人が第二言語として学び共有することを理想としたのです。
現在もエスペラント語は、国際平和への架け橋として世界各国で注目され続けています。
エスペラント語の文法
エスペラント語の特徴は、文法規則が少なく、簡単になっていること。例えば、不規則な語形変化や文字と一致しない発音などはありません。誰でも学びやすく、不平等性を排除した言語だと言えます。
世界共通語・英語のメリットとは
世界共通語にはメリットもあれば、デメリットもあります。世界共通語が存在するメリットは、挙げるだけでキリがないほどあるでしょう。
・世界中の人と話ができる
・世界基準で経済活動が可能
・世界基準の教育を受けられる、受けさせられる
・他国の人を支援できる、他国の人から支援を受けられる
・文化の違いや考えの違いを知ることができる などなど
世界の歴史を改めて見ると、民族の違いが多くの争いを生みました。民族の違いとは、人種の違いであり、宗教の違いであり、考え方の違いであり、言葉の違いです。何者か分からない相手は恐ろしいものです。
この垣根を越えられるものは、共通語の最大のメリットではないでしょうか。
世界共通語・英語のデメリットとは
世界共通語のデメリットとはどのようなものでしょうか。
・英語を話せない人々が弱者になりやすい
・固有の言語・文化が消える可能性がある などなど
世界共通語のデメリット1:英語弱者が生まれる
まず、第1のデメリットは、英語弱者の存在です。
英語が得意な人や英語母語話者が「あの国の人は英語を話せない。ダメだね!」なんて言っているのを聞いたことがありませんか?英語母語話者が「あいつの英語ヤバイww」なんて言っているシーンを見たことはありませんか?
英語が世界共通語とされたことで、英語が苦手=劣っているという認識を持つ人が現れました。
また、英語が話せない、読めないことで情報弱者になりやすいという面もあります。
世界共通語のデメリット2:英語支配による言語と文化の消失
2つ目は、英語支配によって固有の言語や文化が失われる可能性です。帝国主義時代の欧米列強国は、植民地を増やし、自国語を現地人に話すよう強要することもありました。
では、現代で言語や文化が消失するなんてことはあるんでしょうか。
20世紀の今、多様な言語や文化は保護されるべきとされます。そんな中でも、少数言語や消失の危機にある文化は世界中にいくつもあります。
世界共通語である英語絶対主義が、今後言葉や文化を衰退させてしまう可能性があるのは否定できません。
例えば、英語のみを子どもに強要しすぎて、日本に住んでいるのに日本語ができない…なんてことがあると問題かもしれません。
参考:無料でできる幼児の英語教育!初期投資0円で子どもをバイリンガルに育てるには
日本の公用語を英語にすべきか?
昨今では日本で英語を公用語にすべきという意見を聞きますね。確かにグローバル社会においてメリットはありますが、世界共通語におけるデメリットをしっかり把握しておく必要があります。
言語学者、民俗学者、歴史学者などはデメリットの方を強く感じています。
英語公用語化のデメリット1:子どもの言語能力の低下
日本の公用語を英語にした場合、これから生まれてくる子ども達は3歳以前のかなり早期から日本語と英語どちらも聞いて育つことになります。
一見効率が良さそうに聞こえますが、子どもにとって「どちらが日本語でどちらが英語か分からない」状態になるため、これまでの子ども達より日本語能力が低下していくことでしょう。
英語公用語化のデメリット2:日本語による文化が崩れる
日本に興味のある外国人の多くは、日本人は空気を読んで相手を慮る民族だと考えています。この文化を育てているのは日本語であるという論文もあります。なぜなら、日本語は最も大切な部分を最後に話すから。
「わたしは本を読みました」「わたしは本を読みませんでした」のように、否定形なども最後まで聞かなければ分からないため、私たちは無意識に相手の表情や話し方、文脈から考えて相手が何を話そうとしているのか予測して会話しています。
さらに、日本語は文脈を読む(主語目的語などを省略して話す)高コンテクストな言語。この相手を観察し、文脈を考えて会話することで、私たちは知らず知らずのうちに、空気を読む力を鍛えているそうです。
もちろん、英語にも文脈を読む力は求められますが、もし英語オンリーで育った場合、日本人なのに日本人とのコミュニケーションで違和感やすれ違いがある…という状態になりかねません。
そんな人が日本人の半数になったらどうでしょうか?この国の文化や国民性は薄れてしまいます。ここは本当に日本?状態かもしれません。
英語=世界共通語の理由は簡単だから?
なぜ英語が共通語になったか。その理由は、①簡単だから② 英語圏の力が強かったからです。
「世界の共通言語は英語」というのは、公的機関(例えば国連など)で定められているわけではありません。多くの人が世界で意思疎通に使用できる【共通語】として、英語が確立しているということです。
歴史や、英語のメリットが偶然的に(または必然的に)重なって、英語は世界共通語になりました。
【共通語】という言葉について興味がある方は、以下の記事もご覧ください。
前回記事:日本人は外国語が苦手?本当に?その理由は?比較言語学から徹底検証
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