Round. 3 愚人は夏の虫(非)日常編Ⅱ

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Round. 3 愚人は夏の虫(非)日常編Ⅱ

 

(朝、目が覚めて食堂に向かう途中、窓から元気のない背中が見えた。)

 

 

【本島南エリア 夏ノ島の橋前】

 

(1度 建物を出て、食堂の裏側に回る。彼は本島から夏ノ島に渡る橋の前にいた。)

 

「火野君?」

 

(ゴン太が声を掛けると、彼の肩が大きく揺れた。)

 

「ゴ、ゴン太。お、おはよう。早ェな、今日は。」

 

「おはよう。どうかしたの?」

 

「何でもねェ。ここからでも夏を感じられるか、立ってただけだ。」

 

「そうなんだ。感じられた?」

 

「いんにャ。本島は相変わらず、寒くも暑くもねェしな。」

 

(火野君が笑って言った。)

 

「ゴン太、先に食堂 行っててくんねェか?俺ァ、ちょっと海風に当たってから行くからさ。」

 

(火野君は すぐ目の前の建物を指差した。橋の前の建物は食堂とキッチンだ。壁にキッチンの通気口が見える。)

 

「うん。分かったよ。」

 

(ゴン太は言われた通り、正面玄関に向かった。)

 

(火野君が笑っていたから大丈夫なんだと思った。ーーでも、その笑顔は いつもの彼と違う気がした。)

 

 

「人によって、望みは違うということです。ですから、どうすれば その人のためになるのか、対話すればいいのです。」

 

「ただ聞くだけではありません。声なき声を聞くのです。貴方様は得意なのではないでしょうか。」

 

 

「火野君!!!」

 

「うわッ!?」

 

(華椿さんに言われたことを思い出して、ゴン太は知らずに叫んでいた。)

 

「あのね、ゴン太は…みんなを守りたい。そのために、頑張って考えたいし、みんなの笑顔を守りたい。」

 

「だから、みんなの声なき声を聞きたいんだ!」

 

「ん?ど、どういうことだ?」

 

「えっと…火野君が元気がないように見えて…。」

 

「元気だぜ?何 言ってんだ?」

 

「火野君の笑顔が…いつもと違う気がするんだ!ゴン太は目が良いから分かるんだ。それは火野君の声なき声なんだ!」

 

(火野君は しばらく、目を見開いてゴン太を見ていた。それから溜め息まじりに言った。)

 

「よく分かんねェけど…目がいいんじゃ、隠し事できねェな。」

 

「……笑わねェで聞いてくれ。」

 

「もちろんだよ!」

 

「……。」

 

「実は…俺ァ、火が怖ェんだ。」

 

「え!?」

 

「おかしな話だろ?花火師が火が怖ェなんてさ。」

 

「えっと…。」

 

「おかしいんだよ。たとえるなら、ゴン太が虫を嫌いになる…みたいなことだからな。」

 

「そんなことあり得ないよ!!!!」

 

「うおッ、た、たとえばだよ。…それくらい、火が怖い花火師なんて おかしな話なんだ。」

 

「そっか…。だから、火野君は蜂さんの近くにいた時も昨日も顔色が悪かったんだね。」

 

 

「2人とも、止めて!!」

 

「どわっ!?」

 

(ゴン太は思わず大きな声を上げた。)

 

「そこには蜂さんが住んでるんだ!こんな所で火をつけたら、煙で蜂さんが死んじゃうよ!!」

 

「ゴ、ゴン太…!」

 

「……。」

 

「2人とも、蜂さんが嫌いなの!?」

 

「だ、大丈夫だよ。ちょーっとハチミツもらおうとしただけだ。」

 

 

「いや…その時は火だけじゃねんだけど。昨日はオーブンの火の番をしながら、嫌なこと思い出しちまってさ。」

 

「嫌なこと?」

 

「…いや、忘れてくれ。」

 

「そ、そっか。でも、言ってくれて良かった!これからはゴン太が代わるから火野君は火に近付かなくて大丈夫だよ!」

 

「……。」

 

(ゴン太が言うと、火野君は難しい顔をして、また夏ノ島の方を見た。)

 

「悪ィ。俺…怖ェけど、怖ェの、治したくてさ…。花火…作ってみようと、思うんだ…。」

 

「火野君…?だ、大丈夫?」

 

(言いながら、彼の顔色が みるみる悪くなっていく。握りしめられた手が震えていた。)

 

「ゴン太…その…、少しの時間でいいからよ…見に来てくれねェか?」

 

「う、うん!もちろんだよ!」

 

(ゴン太が頷くと、やっと いつもと同じ笑顔が返ってきた。)

 

「ありがとな!おかげで踏ん切りついた。」

 

「良かった。こちらこそ、話してくれて ありがとう!」

 

(それから話をしながら2人で食堂へ向かった。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

 

(食堂には既に人が集まっていた。ゴン太たちは いつも通り全員揃うのを待って食事を始めた。)

 

「なあなあ、今日は皆どうすっぺ?オラ、ジョシカイっちゅモンしてみてぇんだが。」

 

「いいね、楽しそう。」

 

「女子会…何ですか?」

 

「都会では女子供が集まってボリボリ菓子 貪ったり、グダグダくっちゃべったりするのをジョシカイって言うんだろ?」

 

「間違ってはないですが、なんかイメージ悪いですね。」

 

「…なら、女子会っぽい茶菓子を作る。」

 

「興味深い。手前も随伴よろしいか。」

 

「かまわね。くるモン拒まずだ。他の人たつも来たかったら来れ。」

 

「wwwwオレ、パース!夏ノ島で夏をアソビ尽くさなきゃだしww」

 

「俺も遠慮しとく。俺の知ってる女子会と違ェし。」

 

「星先生は どうします?」

 

「俺も行かねーな。行く奴で楽しくやんな。」

 

「……ゴ、ゴン…ゴゴン太は、どうする?」

 

「うん、ぜひゴン太も参加したいな!」

 

(ゴン太が言うと、女性陣も明るく了承してくれた。)

 

(朝食後、みんな それぞれ探索に向かった。ゴン太も島の虫さん達の観察を済ませて、目的地に向かうことにした。)

 

(どこから行こうかな。虫さんは どう思う?)

 

 火野の手伝いに行く

 女子会に行く

全部行った

 

 

 

【夏ノ島東 山エリア 山頂】

 

「よ、ゴン太。」

 

(山頂に着いて すぐ、小屋から火野君が呼び掛けてくれた。火野君は開け放した扉の前に こちら向きに座っている。)

 

(その近くに星君もいた。)

 

「あれ、星君も来てたんだね。」

 

「ああ。驚いたよ。星も花火作りに興味あんのか?」

 

「……いや、あんたが俺を呼んでたって聞いてたんだがな。」

 

「え?」

 

「桐崎が言ってたぞ。あんたが廊下を歩きながら『星』と何度も言ってたと。」

 

(星君が言うと、火野君は首を捻った。それから、パンと手を叩いて言った。)

 

「あ、”星”か。打ち上げ花火は星っていう入れ物に火薬を詰めて、それを更にデッカい球に入れんだ。」

 

「けど、打ち上げ花火は さすがに作るのに時間かかるから、違ェの作るつもりなんだ。」

 

「…なるほどな。じゃあ、俺は必要ねーな。」

 

「あ、でもさ、正直 手伝ってくれると有難ェんだ。」

 

(小屋から出て行こうとした星君は「やれやれ」と言いながら、ゴン太たちの近くまで戻ってきた。)

 

「で、俺らは何をすりゃいいんだ?あんたが怖がってるモンの処理か?」

 

「え?」

 

「え、星君も知ってたの?火野君が火が苦手だって?」

 

「あ、」

 

「……火が苦手か。」

 

「…言うなよな、ゴン太。」

 

「え!?星君は知らなかったの!?ご、ごめん!!」

 

「まあ、星なら…。笑わねェだろうし。」

 

「ごめん…。ゴン太、てっきり星君にも話したんだと思って…。」

 

「…いや、昨日の様子と焼死体の前での様子から、何かあると踏んでただけだ。」

 

(星君が火野君に視線を向ける。火野君は目を瞬かせた。)

 

「ーーは…はは、よく見てんだな。案外、星は世話焼きなのかもな。」

 

「あんたにとっちゃ、余計な世話だろうけどな。」

 

「……。」

 

「俺ァ、失敗したんだ…。」

 

「失敗?」

 

「……。」

 

「師匠に無断でやって…そんで……。」

 

(言いながら、火野君の手がブルブル震え出した。顔が真っ青だ。)

 

「ひ、火野君。大丈夫?」

 

「……大丈夫、じゃねェ、な。」

 

「でも…これを成功させれば、少しは恐怖心がなくなるかなってさ。」

 

「……。」

 

(体調が悪そうな火野君に休憩を挟んでもらいながら彼の手伝いをした。)

 

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【本島南エリア 寄宿舎 キッチン】

 

(ジョシカイのために、ゴン太は食堂に戻った。キッチンに入ると、蔵田さんが手を動かしながら こちらを向いた。)

 

「まだ みんな集まってない。…ので、あなたに紅茶を淹れてもらう。」

 

「紅茶?えっと…ごめん、ゴン太に上手くできるかどうか…。」

 

「紅茶は紳士の嗜み。…なので、経験しておくといい。…と、思う。」

 

「え!そ、そうなの?が、頑張るよ!」

 

「紅茶は温度と時間が大切。…なので、タイマーと温度計を使って。」

 

(蔵田さんが人の形をした温度計を渡してくれた。彼女に言われて、ポットの中に温度計を入れた。)

 

(すると、温度計から『熱い熱い熱い助げで〜死ぬ〜』という嫌な声がした。)

 

「え!?ご、ごめん!熱い感覚があるとは思わなくて!!」

 

(思わず温度計を お湯から出した。)

 

「……それは、機械音声。気にしないで。」

 

(戻したゴン太の手を、蔵田さんが押した。すると、『ぎゃああ』という長い悲鳴を上げて、温度計が静かになった。)

 

「ちょうど100℃。…これを、ポットに入れて。…から、タイマーを…」

 

(蔵田さんは冷蔵庫に磁石で貼られたタイマーをゴン太に手渡した後、思い出したように)

 

「…これは、音が大きすぎるから、モノパッドで時間を測っておいて。」

 

「う、うん…。」

 

(ゴン太にモノパッドを出すように促してタイマーを入れた。)

 

(それから、蔵田さんは美味しい紅茶の淹れ方を教えてくれた。そして、話し終えるとキッチンの扉の方へ向かう。)

 

「私は漁に出る。…ので、後は お願い。」

 

(蔵田さんが出て行って少しして、食堂への扉の向こうから話し声が聞こえ出した。)

 

「蔵田殿はカニ漁に向かった。残すはゴン太殿のみだな。」

 

「っ!!!、っ!!」

 

「虎林先生!?急に垂直に飛び退いて、どうしましたか!?刺客ですか!?敵襲ですか!?」

 

「うう…違、アタシ…最近おかしいんだ。」

 

「体調が お悪いので?」

 

「たすかに大分おかしいべなぁ。」

 

(そっか、もうジョシカイが始まってるんだ。声を掛けておこうかな。)

 

(あ、でも、紅茶は落ち着いて淹れるって蔵田さんが言ってた。)

 

(紅茶を淹れてる時の大きな声は紳士的じゃないのかもしれない。は、早く お茶の用意をしないと…。)

 

(そんなことを考えながら、時間になるのを待つ。その間も、みんなは食堂で お喋りしている様子だった。)

 

「ほら、女って、よく力が強い人や体が大きく逞しい男に惹かれるでしょ?」

 

「好みによるところと理解している。」

 

「強い子を作るために強いオスを求めるというのは本能的にあるかもしれませんね。」

 

「でも…アタシは力を存分に活用する人より力があるのに優しく包み込む人の方が…あ、えと…、」

 

「その…す、好きなんだよね。掴まれた手が超優しかったとか、全然 痛くなかったとか。」

 

「何の話ですの?」

 

「女子会らしい話題だべ!恋バナってヤツだべな!?」

 

「コ、コイ!?違う違う!優しい人が魅力的って話!!アタシ、権力や財力とかで人を好き勝手できるって奴大嫌いだし!」

 

「だいたいの奴みんな そうだべ。」

 

「浮気は男の本能って言うヤツ嫌いだし!少子化対策で一夫多妻を挙げるヤツ気持ち悪いし!」

 

「だいたいの女みんな そうだべ。」

 

「家族を守り抜く愛持たぬ者をいとうも、また女の本能。ミュンスター再洗礼派王国は儚き夢。」

 

「良かった!虎林先生、調子 出てきましたね!話の本筋が全く見えなくて安心します!」

 

「結局、貴女様は何が仰りたいのです?」

 

「だから、アタシ、変なのー!病気かもしんないのー!!」

 

「ええ!?た、大変だ!」

 

「へえぁ!?ゴ、ゴン太!!?」

 

(ゴン太はポットを持ったまま、思わずドアを開けていた。)

 

「病気なら医務室に行く!?ゴン太が運んでいくよ!」

 

「あわわわわわ。」

 

「どこか痛いところはある?それか、熱がある?風邪かな?」

 

「あわわわわわわ。」

 

「ゴン太、頑張って看病するよ!ゴン太は風邪ひいたことないけど、勉強するよ!」

 

「あわわわわわわわ。」

 

「虎林先生、また様子が変ですね。石けんのCMみたいになってます。」

 

「奇妙奇天烈摩訶不思議。」

 

「スポンサーが泡石けんの会社だったのかもしれませんよ。」

 

「何で誰も分かんねんだべ。」

 

(みんなと賑やかに過ごした!)

 

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【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

(夕方になると、いつも通り、みんな食堂に集まっていた。カレーの良い匂いが食堂に漂っている。)

 

「あれ、今日カニって言ってなかった?」

 

「カニは獲れなかったみてぇだ。残念だべ。」

 

「うん。カニは獲れなかった。…ので、夏野菜カレーにした。」

 

「だども、フグは獲れたんでろ?」

 

「やべーwwその漁、一攫千金 狙えんじゃね?ww」

 

「…でも、フグ調理師の資格は地域の役所に出す必要がある。…ので、ここが どこか分からない以上、私は捌けない。」

 

「役所に出したら捌けるんかーいwwそんなのテキトーで良くね!?」

 

「外国である可能性もある故。」

 

「うんうん。どうせ捌くなら ふるまうためじゃなくて、コロシアイのためにしてほしいんだよ。」

 

「うわっ、モノクマ!」

 

「…何の用だ。」

 

「ツレないなぁ。ボクは煮え切らないオマエラのためにクマ肌脱ぎに来たのさ。」

 

「一肌脱げ。」

 

「パンパカパーン!これから、うるさくねーヤツら…即ち死んだヤツらの お部屋公開します!」

 

「死んだヤツら?」

 

「そうそう。死んだヤツの部屋は開かなくなってたでしょ?でも、今日から大公開!」

 

「ぷらいばしぃのすんがいだべ。」

 

「…プライバシーの侵害。」

 

「いいのいいの!死人に口なし、人権なし。っていうでしょ?」

 

「あ、これ別に動機ってワケじゃないからね。勘違いしないでよね。このコロシアイは、いつもと違うんだからね。」

 

(いつも通り分からない言葉を放ってモノクマは消えた。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 個室前】

 

(夕食後、ゴン太たちは寄宿舎の部屋の前に やって来た。モノクマが言った通り、開かなかった部屋が開いている。)

 

(高橋君、河合さん、三途河さん、平君の部屋。そして、もう2部屋。)

 

「えっと…あ、そっか。最初に亡くなっていた2人の分の部屋もあったんだ。」

 

「え。それって…仲間だったってことですか?」

 

「…“超高校級”だったのか?」

 

「アタシ達、みんな そうだし…可能性は高そうだよね。」

 

「とりま、手分けして調べとくっしょw」

 

(いくつかのグループになってゴン太たちは、まず高橋君の部屋に入った。)

 

(高橋君の部屋はゴン太たちと変わらない。シャワールームとトイレがあって、簡単な机とベッドがある。)

 

(ベッドの枕側には、ゴン太の部屋と同じ箱がーー…)

 

「あれ?この箱…。」

 

「この部屋にも箱あんじゃん。」

 

「あ、本当ですね!」

 

「だが…どういうことだ?」

 

「え?どうしたんです?」

 

「ゴン太の部屋の箱には名前が書いてあったんだけど…高橋君のには書いてないよ。」

 

「え?」

 

「俺のにも書いてあったな。」

 

「あ、はい!そういえば、ボクの箱にも、名前がありました。」

 

「んー、書き忘れ?ww」

 

(ゴン太は箱のフタに手を伸ばした。)

 

「あれ?開いてる…。」

 

(思ったような抵抗はなく、箱のフタが開いた。でも、)

 

何もないですね。」

 

(中には何も入ってなかった。)

 

「箱の中 気になる感じ?じゃ、他の個室も見てみようぜww」

 

(それから、平君と河合さんの個室でも箱を調べ、鍵が開くこと、中身が空であることを確認した。)

 

「何か意味があるのかな?」

 

「…死んだら開くってことなのかもしれねーな。」

 

「な、なるほど!」

 

「タカちゃんの箱にだけ何も書かれていなかったのは何なんだろね?」

 

「さあな。あいつの才能が分かってなかったからか?」

 

「え?」

 

「…箱には才能も書いてあったろ?」

 

「あ、そうですね!」

 

「へいへーい!では次、行ってみようww」

 

(三途河さんの部屋も みんなの部屋と同じだ。ゴン太は三途河さんの名前と超高校級が書かれた箱に手を伸ばした。)

 

「ーーあれ?三途河さんの箱は開かない…。」

 

「ええ!?ゴン太先生なら殺人チョップで破壊できませんか?」

 

「そ、それは…できるだろうけど、紳士は殺人チョップなんてしないよ!」

 

「…下手に壊すのは危険かもしれねーぞ。」

 

「殺人チョップは見たい気もするww」

 

「あ、見たい?」

 

「おぎゃ、モノクマ!」

 

「そんなに見たいなら仕方ないなぁ。ちょっとだけよ?」

 

「え…殺人チョップを!?」

 

「違う違う!三途河さんの箱の中身は何だろな?ってこと!前回被害者の彼女のは特別に見せたげるよ!」

 

(そんなことを言ったモノクマは箱を「パッカーン」と言いながら開けた。中に入っていたのはーー…)

 

「…貝殻ですね。」

 

(1枚の貝殻。そして、その貝の内側に字が書いてある。この漢字は、最近 覚えた。)

 

「『』…。」

 

「平…?前回 事件を起こした平のことか?」

 

「たぶん…。」

 

「えっと、えっと…これ、平先生に殺されるという予言じゃないでしょうか。」

 

「予言ww」

 

「みんなの箱の中も貝で、そこに書いてあるのかもしれません!箱の中身を見れば誰に警戒すべきか分かるのでは!?」

 

「クールじゃねーな。予言なんてもので未来が分かるわけがない。」

 

「そ、そうですか?いや でも、ミステリの登場人物はシナリオに転がされる身ですが…。」

 

「どっちみち、オレらのは開けられないかんね。んじゃ、最後は最初に発見された2人の部屋、行ってみようw」

 

(野伏君に言われて、2部屋の内 1部屋に入る。やっぱり中はゴン太の部屋と変わらない。)

 

「箱は どうです?」

 

「えっと…この箱も開かないみたい。名前や超高校級も書いてないよ。」

 

「え?どういうことですか!?」

 

「わっかんないなー。何で、箱 開くヤツと開かないヤツがいんの?」

 

「名前が書いてないのは…俺たちと会ってなかったからか?」

 

「んじゃ、次、行ってみよ〜!」

 

(最後に残った部屋に入る。)

 

「箱〜のなっかみ〜は何だろな〜!」

 

「えっと…やっぱり、開かないみたいだよ。でも名前はある…。『“超高校級のハンター”』名前は…えっと、」

 

狩野 銃子かのう じゅうこ…だな。」

 

「こっちは名前、あるんかーいww」

 

「おそらく女性ですね。焼死体は男性らしかったので、ここは西の灯台の内臓がない死体の方の部屋なんでしょう。」

 

「簡単な推察だよ、ワトソン君。名前で性別は一目瞭然ですからね。」

 

「お前の名前、ゴンベーじゃんww」

 

(狩野さん。ゴン太たちと会う前に、灯台で死んでしまっていた女性。)

 

 

「西の灯台の死体。切り刻まれた被害者。わたくしは…その犯人を知っています。…高橋さんです。」

 

 

(華椿さんは高橋君が殺したと言っていたけどーー…)

 

「イェーガーの家がーー!!」

 

「うわあ!まだ いたんですか!なぜ急に 今や誰もが知ってるハンターのドイツ語を叫びながら!?」

 

「じゃ、これ知ってる?狩猟犬は英語でハウント。ドイツ語で犬はフント。つまりハンターのフントはハウントなのさ!」

 

「やめてください!おそらく語源的に同じだから面白くも何ともないギャグを言ってくるのは やめてください!!」

 

「ねぇ、知ってる?“99 schlecht Naturシュレヒト ナトゥアー は、間違いドイツ語じゃなくてルクセンブルク語なんだって。」

 

「モノクマの趣味は新作の誤字を見つけて笑うことだけど、間違いじゃなくて残念!代わりに他の間違いを笑ってるんだって。」

 

「豆しば調で性格最悪なこと言わないでください!100個もエンディングあったら、そりゃ間違いも起こるでしょ!」

 

「さあ、このゲームブックにも たくさんの誤字脱字、文法の間違いが隠れているぞ!そちらも楽しんでね!」

 

「……モノクマ、何の用だ?」

 

「お察しの通り、ここは最初に発見された2死体のうち、臓器を抜かれてた方の部屋だよ。と、教えにきてやったのさ。」

 

「ちなみに、オマエラが さっきいた部屋は、死んだ後に焼かれてた方の部屋だよ。」

 

「2人はオマエラと同じ…この島に突然 集められ、秒で殺されてしまった可哀想な”超高校級”だったのです!」

 

「そうだったんだ…。2人とも…いったい誰に?」

 

「華椿によると、この部屋の狩野は高橋に やられたらしいが…。」

 

「まさかゲーム開始前に殺人が起こるとは思ってなくてさ。しかも2件も…チキショゥメェ!って気分になったよ。」

 

「これだから慣れてるヤツって厄介なんだよ。ルールの開示を工夫すべきだったね。」

 

(モノクマはブツブツ言いながらいなくなった。)

 

(それから、情報を共有して、ゴン太たちは自分の個室に戻った。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 獄原の個室】

 

(殺されていた2人も超高校級だった。ゴン太たちと同じだった。)

 

(会って話してみたかった。どんな人たちだったんだろう。)

 

(ゴン太は…2人のことも…守れなかったんだ。)

 

(顔も分からない仲間を想像しながら、ゴン太は目を閉じた。)

 

…………

……

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

(朝のアナウンスが鳴って、ゴン太は身支度を終わらせ、食堂に向かった。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

「みんな、おはよう。」

 

「おはようございます。」

 

「よ、おはよ。」

 

「朝食の準備。…は、できてる。…ので、手伝って。」

 

(既に食堂にいた人たちと朝食を準備している間に、全員が集まったので食事を始めた。)

 

「あ、あのさ…今日は みんな、何する予定?」

 

「オラ、また海さ行くだ。鬼のいぬ間のこの機会に素潜りの世界大会記録を塗り替えてぇ。」

 

「鬼のいぬ間に目指す高き志…感銘を受けた。その生き証人となろう。」

 

「なになに?2人はビーチ行ってなろう系?ならオレも午後はビーチ行こっかなww」

 

「私は漁に出る。…今日こそカニ祭り。」

 

「ボクは本島の調査を続けます。メタ的に何か見つかるとしたら、ここですから!」

 

「まだ調査 続けてたんだーwwでも、調べ尽くしたけど何もなかったくね?」

 

「ええ、ですから、今日は星先生と華椿先生にも協力いただきます。」

 

「初耳ですが。」

 

「今 言いましたからね。」

 

「…….。」

 

「俺ァ、花火の準備の続きをするぜ。今日はカニ祭りの後、花火大会だ!」

 

「やったぁ!…あ、…あの、ゴゴご、ごゴン太は?」

 

「えっと…今日は夏ノ島に行った後、本島にいようかなと思ってるよ。」

 

「え?ゴン太先生も本島調査ですか?」

 

「ううん。初めに死んでた2人…狩野さんと、もう1人名前が分からない人がいた所に行ってみようと思ってるんだ」

 

「そっか…。そうだね。……2人の御供えになるもの…作っておこうかな。」

 

(そんな話をして、みんな解散した。)

 

(ゴン太も今日の予定を虫さんに話して、夏ノ島に向かった。)

 

 

【夏ノ島東 山エリア 山頂】

 

(山頂に着いた。昨日と同じように、開け放した小屋から火野君が声を掛けてくれた。)

 

「よお、ゴン太。」

 

「火野君、ごめんね。ゴン太の足音、うるさかったかな?」

 

「いや…火薬 使ってるから、人の気配に気を付けてるだけだよ。人の動きで飛んじまうこともあるし。」

 

「気にしすぎかもしんねェけどさ、火薬とかが服に付かないようにな。自分が立ち上がるのも最小限にしてるんだ。」

 

(火野君が手元に綺麗に整頓された道具類を見せてくれた。「これで立ち上がらなくていいんだぜ」と笑いながら。)

 

「立ち上がらなくていいくらい集中してたんだね。ゴン太、やっぱり邪魔しちゃったよね。」

 

「何 言ってんだ?俺が頼んだんだぜ?見に来てくれってな。ありがとな!」

 

(火野君が満面の笑顔で言うので、ゴン太も嬉しくなった。)

 

「良かった。火野君の笑顔を守れたんだね。」

 

「え?」

 

「あ…三途河さんが言ってたんだ。みんなの笑顔を守りたいって。」

 

「へェ…確かに、あいつは…そんな風に行動してたな。…たまにイラッとしたけど。」

 

「ゴン太も…みんなの笑顔を守りたいんだ!」

 

「そりゃ、いいや。」

 

(火野君が またニカッと笑う。その手に掲げたのはーー…)

 

手持ち花火、完成だ!」

 

「わ、すごい!できたんだね!」

 

「ああ!これで、今夜は笑顔の華が咲くだろうよ!晩飯の後、花火大会だ!」

 

「楽しみだよ!」

 

「本当に…ありがとな。ゴン太。」

 

「え?」

 

「お前が知っててくれたから…俺は、こうして戦えた。正直…火薬の匂いだけでも怖ェくらいだったけど…。」

 

「お前に話したおかげなんだ。頑張れたの。」

 

「火野君…。」

 

「って、まだ、花火大会を成功させてもいねェけどな!手持ち花火とか考えるだけで怖ェけど…見ててくれよな!」

 

(また笑った火野君に、ゴン太は元気良く返事した。)

 

「ゴン太は本島に戻るけど…火野君は?」

 

「んー、まだ飯時には早ェよ。12時には食堂 行くけどよ。もう少し作業して、片づけてから降りるさ。」

 

(そんな会話をしていると、一匹の虫さんが小屋の中に入ってきた。)

 

「はは。ここ、人より虫の方が来んだぜ?この虫、昨日から5回は見たよ。」

 

「ヒトリガさんだね。」

 

「ヒトリガっていうのか?花火みてェに華やかな羽だな。」

 

「うん、この羽は綺麗なだけじゃなくて、ヒトリガさんを守ってるんだ。」

 

「虫さんを食べる鳥さんは こういう羽の虫さんに毒があるって知ってるから。」

 

「へェ…。虫も食べられないように自衛してんだな。しっかりしてんな。」

 

「でも、ヒトリガさんは灯りが好きで…夜に自分から火の中に入っちゃうこともあるから、ちょっと心配かな。」

 

飛んで火に入る夏の虫ってやつか。」

 

「え?」

 

 

「飛んで火に入る夏の虫…いえ、夏の星ね!」

 

 

(火野君が三途河さんと同じことを言ったので驚いた。火野君はというと、ゴン太を見て困った顔をしていた。)

 

「悪い。火に入る虫なんて…気を悪くしたか?」

 

「…ううん。同じこと…三途河さんも言ってたから。」

 

「…三途河が。そうか…。これは、無謀なことに首を突っ込んで、結果 死ぬ…みたいな諺だったよな。」

 

「そうなんだ。本当に、ヒトリガさんみたいだね。」

 

「……俺ァ、今は あっちの言葉が好きだな。穴に入んなきゃ虎の子は掴まんねェってヤツ。」

 

「……?」

 

「男たる者、心頭滅却すれば火もまた涼し!だ!」

 

「えっと…。」

 

「あ、男なら…なんて、今は流行んねェよな。紳士たる者…?」

 

「紳士は火の中も涼しいってこと?」

 

「まあ、そんな感じか?…それより、花火は見るだけじゃ つまんねェからな。みんなでできる花火も作っとくぜ。」

 

「ありがとう!」

 

(火野君と花火や虫さんについて しばらく話した!)

 

 

【夏ノ島北 橋前】

 

(山を降りて、本島への橋の前に着くと、ビーチで泳ぐ人たちが見えた。)

 

(そっか、ビーチは夏ノ島の北西側だから、北側にある橋からビーチが見えるんだ。)

 

(伊豆野さんが海に潜り、タイマーを持ったイーストック君が時間を測っているように見えた。)

 

(しばらくすると、2人はゴン太に気付いて手を振ってくれた。)

 

「おーい!獄原さ!おーい!!」

 

「やはり!ワールドレコードは侮れん!!」

 

「お茶の間では無理だったべ!本腰入れて記録更新してやっからな!!」

 

「束の間とか片手間と間違えているのやもしれんが、お茶の間の『間』は時間のことではない!!」

 

(手を振り返したけど、タイマーの音が大きすぎて、2人の叫ぶ声は よく聞こえなかった。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎】

 

(本島に戻って、ゴン太は灯台を目指した。)

 

(途中で、星君と華椿さん、桐崎さんの背中が見えた。…と思ったら、みんなが同時に振り向いた。)

 

「獄原。」

 

「ゴン太先生、お一人ですか?」

 

「灯台に行くと言ってましたもんね。」

 

「うん。3人は どこへ行くの?」

 

「もちろん、校舎です!何かあるとすれば、校舎ですから。」

 

「そういうものですか?」

 

「はい!ボク1人じゃ見つけられなくても、3人寄れば文殊の知恵!脱出の手がかりがあるはずです。」

 

「はりきってるね。」

 

「はい!星先生のATフィールドの解除法を見つけましたから!」

 

「……言ってる意味が分からねーんだが。」

 

「ズバリ!助けて星先生!お願い大作戦です!!困ってる人を見捨てられない下町人情ってやつですね。」

 

「………。」

 

「……あんなこと言ってますが?」

 

「勝手に想像させておけ。」

 

(楽しそうな桐崎さん、少し疲れた顔の星君、華椿さんと別れて灯台に向かった。)

 

 

【本島中央エリア 灯台】

 

(西の灯台まで やって来た。灯台の扉を開けたまま、今は何もない”彼女”が倒れていた所を眺めた。)

 

(ここで、”超高校級のハンター” 狩野さんを発見した。ゴン太と高橋君で。真っ暗な中、高橋君がライトを付けて…)

 

 

「あ、そうだ。モノクマに渡された電子パッドのライトでーー…」

 

「ありがとう!明るくて見やすくーー…」

 

「うわぁあああ!」

 

 

(あの驚き方は演技には思えなかった。けど…。)

 

 

「…それなら、記憶喪失だったという、あの男の話が本当だったということです。」

 

 

(華椿さんは…ああ言ってた。高橋君は記憶を失ってたから…狩野さんを殺したことを忘れてた?)

「………。」

 

(見つけるのが遅くなって ごめんね…狩野さん。)

 

(心の中で呟いて、ゴン太は その場を後にした。)

 

 

【本島中央エリア 東灯台】

 

(東の灯台前に来た。)

 

(ここで高橋君が見つかる前…同じように、焼かれた死体が見つかった。)

 

(たぶん、男性だと言ってた。彼については、名前も才能も分からなかった。)

 

(ーーもし生きていたら、彼と どんな話をしていたんだろう。)

 

(そんなことを考えた。)

 

 

【本島南エリア 寄宿舎 食堂】

 

「お、ゴンちゃん!」

 

(1時すぎに、ゴン太は昼ごはんのために食堂に来た。そこには野伏君がいた。)

 

「野伏君。お昼は もう食べたの?」

 

「イェース!イエスイエスイエス様!オレは今日も2番乗りだったよw」

 

「2番?」

 

「うぇーい。1番はヒーノーだよ。さっきオレが ここ来た時、食べ終わってた。」

 

「そっか。火野君は ご飯の時間を大切にしていたもんね。」

 

「んで、花火大会のこと聞いたぜー⭐︎晩飯の後は花火でフィーバー!打ち上げ花火はねーらしいけど、仕方ねー!」

 

(楽しそうな野伏君は「海で泳いでくる」と出口の方へ走っていった。)

 

(食堂には今は誰もいない。けれど、キッチンに行くと蔵田さんが用意してくれた人数分の昼食があった。)

 

「わあ、今日は お肉だ。」

 

(ラップされた1人分の豚肉の生姜焼きとサラダと小鉢を お盆に載せて食堂の席に座った。)

 

(虫さんと ゆっくり食べよう。)

 

(しばらく ゆっくり ご飯を食べていたけれど、なかなか みんなは来なかった。)

 

(火野君と野伏君以外、まだ昼ごはんを食べてないってことだよね。お腹が空かないのかな?)

 

(星君たちは校舎の調査で忙しいのかな?海に行ったイーストック君と伊豆野さんは お弁当を持っていたのかな?)

 

(蔵田さんは漁って言ってたけど、あと少しで戻るかな?虎林さんには会わなかったけど、どこにいるのかな?)

 

(そんなことを考えながら、食堂の窓から夏ノ島に続く橋を見た。)

 

(ーーその奥に煙のようなものが見える。)

 

「え!?」

 

(夏ノ島と本島を繋ぐ橋の向こう。その山の辺りから煙が出ている。)

 

(慌てて、本島から夏ノ島へ向かう橋を渡った。)

 

 

【夏ノ島北 橋前】

 

「おー!ゴンちゃん、緊急事態っぽい!」

 

「今しがた気が付いたのだが…火事のようだ。」

 

「山火事は おっがねぇぞ!早く消化すに行ぐべ!」

 

(橋を渡った先には、ビーチの浜茶屋から駆けてくる3人がいた。)

 

(さっきまで泳いでいたのか、びしょ濡れで、簡単な上着だけ羽織って手に消火器を持っていた。)

 

「ゴンちゃん来てくれたなら助かるわ。コレ、よろ!」

 

「うん、任せて!」

 

(ゴン太は野伏君に渡された消火器4つを両脇に抱えて、煙の方へ走った。火事は山エリアの方だ。)

 

 

【夏ノ島東 山エリア 遊園地】

 

(山エリアの山頂の手前。ゴン太は誰よりも早く、火事になった遊園地に辿り着いた。)

 

「ひ、ひどい。」

 

(木やマネキンに燃え広がった火を消しながら遊園地の奥へと進んだ。)

 

(すると、目の前に燃え盛る建物が現れた。)

 

ホラーハウスだ。)

 

(正面玄関近くのドアへ消火器を向けてみたけれど、火は激しく、ゴン太には とても消せそうにない。)

 

「うえー…めちゃくちゃ燃え盛ってんな。こりゃ、消火器数個じゃ消せねーわ。」

 

(いつの間にか、背後から追いついた野伏君が言った。彼も2つ消火器を抱えてきてくれたみたいだ。)

 

「どうしよう!?早く消さないと!」

 

「っても、オレらだけじゃムリゲーすぎ。」

 

(野伏君は冷静な声を出して、それから大きく息を吸った。そしてーー)

 

「助けてーー、モノクマーー!!!」

 

(ゴン太も びっくりするぐらい大きな声で、モノクマを呼んだ。モノクマが現れたのは、その直後だった。)

 

「呼んだ?」

 

(何もない所からニュルッとモノクマが現れた。それから、燃える建物を見て「うわあ」と気の抜けた声を出した。)

 

「ねーねー、めっちゃ燃えてんだけど。ヤバくね?」

 

「ヤバいね。」

 

「山ん中で他にも燃え移ったら被害甚大じゃね?」

 

「甚大だ。」

 

「夏ノ島全島が焼けちゃったらマズくね?」

 

「そりゃマズい。」

 

「お前なら すぐ消火できたりしねーの?」

 

「できるよ。」

 

「いつ消火すんの?」

 

「今でしょっ。」

 

(モノクマが言って、建物の中に消えた。そして、次の瞬間。)

 

「あ、火が…。」

 

「鎮火〜ww」

 

「モ、モノクマが消したのかな?」

 

「だろうね。古いネタに乗りながら。」

 

(そんなことを話していると、後ろから伊豆野さんとイーストック君の声がした。)

 

「おぉい、ゴン太さ!野伏さ!」

 

「2人とも、健脚 甚しい。もう鎮火させたのか。」

 

(2人は荒い息で、抱えていた消火器1つを下ろした。)

 

「モノクマが消火したんだよ。」

 

「モノクマが。成程。彼奴にとって、ここは固有資産か。」

 

「全焼しちゃったみたいだけどね。」

 

「ホントに…困ったもんだよ。火災保険で また太っちゃう。」

 

(いつの間にかモノクマが戻っていた。)

 

「基礎とかは無事だからね。とりあえず建物が崩れる心配はないよ。換気もしたし、中を探索したけりゃ どーぞ。」

 

(そして、笑いながら消えた。)

 

「んじゃ、行ってみよ〜。」

 

「何でだべ?もう鎮火したんだ。用はねぇはずでろ?」

 

「でも火事とか、事件性感じね?」

 

「…高温乾燥地帯なら自然発生的な山火事は多いものだが?」

 

「ピンポイントで この建物だけ全焼してんのに?ww」

 

「そ、そっか、モノクマが何か仕掛けたのかもしれないよね!」

 

「んー…ま、そゆことww」

 

「よし、じゃあ行こう!」

 

 

【夏ノ島東 山エリア ホラーハウス】

 

(薄暗かったはずのホラーハウスは屋根が燃えたせいか前より明るい。けれど、床も壁も真っ黒だった。)

 

「ひでぇだな。」

 

「しかし、ここは無人。誰もいない化け物屋敷が火元でーー…」

 

(そう言ったイーストック君の言葉が止まる。その視線の先に、人型の何かがあった。)

 

「…あっ!」

 

「……これ、」

 

「ーーマネキンじゃね?」

 

(遊園地に置かれていたマネキンの1つ。焦げて黒くなっている。)

 

「びっくりした…。誰かが焼かれちゃったのかと思ったよ。」

 

「………。」

 

「………。」

 

(そのマネキンからゴン太が視線を外すと、みんなが部屋の隅を見て固まっているのが見えた。)

 

「?どうかしたーー…」

 

(「の」と言う前に目に入ったのは、また焦げて黒くなったマネキンだった。)

 

(ーーいや、違う。マネキンじゃない。人形じゃないシルエット、特有の匂い。これをゴン太は知っている。)

 

『死体が発見されました。発見現場の夏ノ島東   山エリアのホラーハウスに集まってください!』

 

(アナウンスが どこか遠い所から響いた。)

 

 

非日常編へ続く

 

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コメント

  1. 匿名 より:

    更新ありがとうございます!
    こんなにいい雰囲気で過ごせてるのにとうとう今回の章の被害者が出てしまうんですね泣
    船やら橋やら色んな仕掛けが出てきたので捜査が難航しそうで心配だけど楽しみです♪

    あと勘違いだったら申し訳ないんですけど、超高校級のハンターってもしかして前作へのコメントから採用してもらえた?と1人で大喜びしてました……!

    • トラウマウサギ より:

      コメントありがとうございます!
      捜査も難航、ゴン太・星君の動かしにくさ(生存フラグの立てにくさ)に難航していますが、コメントを励みにさせていただいています(感謝)
      気付かれてしまいましたか…はい、ハンターのアイデアも頂戴しました。さすがダンロンファンは察しがいい…(すみません、コメント欄に書こうと思って忘れていました;;)貴方様のコメントやアイデアのおかげで完走できそうです。いつも本当にありがとうございます!

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