日本語は、ほとんどの学習者にとって、文字の習得から苦労する言語です。日本語を学ぶには、ひらがな、カタカナ、漢字(総称:表記体系)の3種類の文字を知っている必要があります。
ほとんどの日本語学校や教科書では、文法を学ぶ前に少なくともひらがなが分かることを求められます。
今回は、日本語になぜ3種類の文字があるのか、その歴史や外国人への教え方をご紹介します。
3種類の文字があるのは日本語だけ!海外の反応は
日本語に対する海外の反応は、たいてい「難しい!」というものです。それは文法の複雑さやハイコンテクストな言語体系の他にも理由はさまざまありますが、まず外国人学習者が直面するのが、3種類の文字です。
参考:外国人にとって日本語は世界一難しい言語?海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ
だいたいの外国人は、3種類の文字があることに辟易しています。
以下、私がこれまで出会った外国人たちがひらがな・カタカナ・漢字を勉強しているときの反応です。
「ひらがなやっと覚えた!これで日本語の教科書が読め…ないじゃないか!」(アメリカ)
「漢字だけならまだよかった…。」(中国)
「カタカナが1番嫌い!」(イギリス)
「3種類の文字が生まれた歴史は分かる。でも、それを現在も使い続けている必要はあるのか。(いやないだろう)」(ドイツ)
「ひらがな、カタカナをやっと覚えた。文法を始めた。漢字が待ち構えていた。」(アオーストラリア)」
「ひらがなに似たカタカナ、カタカナに似た漢字もあって、訳が分からない。」(ドイツ)
「日本語の難しさは、初めは文字を覚えるところから、次は文法が難しい。後から敬語も出てくる。漢字もずっと覚えなければいけない!(キレ気味)」(アメリカ)
ヨーロッパのほとんどの言語は、ローマ字が分かれば勉強を始められる。ロシア語やブルガリア語ならローマ字とは異なるものの、30~40文字のキリル文字を覚えれば、意味は分からなくても何とか音読はできるようになる。韓国語ならハングルを知れば何とかなる。
けれど、日本語にはひらがな・カタカナ・漢字3種類の文字があります。日本語というのは、ひらがな・カタカナ・漢字が分からないと音読すらできないという非情な特徴を持っています。
なぜ日本語は3種類あるのか?歴史的な理由
日本語には、なぜ3種類の文字があるのか。それを知るには、まず日本語の歴史を知る必要があります。
【奈良時代】漢字流入と万葉仮名の確立
ひらがな・カタカナ・漢字のうち、奈良時代に使われていたのは漢字だけです。
漢字は中国から日本に入ってきた文字。漢字が入ってきた正確な時期、どんな漢字がいつ頃入ってきたかは、今もまだ調査中で、分かっていません。
参考:日本はなぜJapan?ジャパンの語源・由来とは?いつから国号「日本」なの?日本の起源は神話?
この頃の漢字は、漢文として用いられる他に、本来の意味ではない仮名の役割として使われていました。これを、万葉仮名といいます。
例えば、こんなものがあります。
止利=トリ
情(こころ)八十一=こころにくく※9×9=81だから
山上復有山=出(いで)※山上にまた山を重ねる
【平安時代】ひらがなの確立
ひらがなは、貴族を中心に漢字を崩して使うようになったため生まれたものです。
万葉仮名を草書体(崩して)で書いたことで生まれる。
安→あ 以→い 宇→う 衣→え 於→お
漢字が男の文字とされていたため、ひらがなは女の文字とされる。
【平安時代】カタカナの確立
同じく平安時代、お寺で仏典訓読の際、早く書くために使われたのが、カタカナです。
その字の一部だけを書く速記記号として利用される。
阿→ア 伊→イ 宇→ウ 江→エ 於→オ
【中世】仮名遣いのルールが作られる
平安時代後期に活躍した藤原定家は、仮名遣いのルールを決めました。
例えば、「藍」に対して「あゐ」「あい」「あひ」3つの表記がありましたが、「あゐが正しい!」というように、これはこう書くべき!を決めました。
さらに、戦国時代にはポルトガル人宣教師たちが日本語表記に革命を起こしてくれ(たとされてい)ます。それまで、文字表記の濁点( “)半濁点( °)を書くことがなかった日本人の庶民から日本語を学ぶ中で、「パピプペポ」のような半濁音を付けるようにしたのはポルトガル人とされています。
【近世~現代】仮名遣いの基準が確立
江戸時代、定家の仮名遣いルールの誤りを正した契沖仮名遣いが登場。濁点・半濁点は、江戸時代に一般化していきます。
明治時代になると、文字表記のルールが正式に定められるようになります。仮名遣いは、契沖仮名遣いを基盤とする歴史的仮名遣いというものに決まりました。
また、小学校ができたことで、いくつもあったひらがな・カタカナが1音につき1文字となりました。
さらに戦後、現代のかなづかいの仕方など、今のルールが定められました。
なぜ日本語は3種類あるのか?使い分けの理由
歴史的に漢字→ひらがな・カタカナが生まれたことはわかりましたね。
では、なぜ新しい文字が生まれた時点で漢字がなくならなかったのか。どこかのタイミングでひらがな、漢字、カタカナどれか1つに統一されなかったのか。
日本で、漢字を簡単にしたひらがなやカタカナだけの言葉にならなかったのはなぜでしょうか?
それはズバリ、日本語がどこまでが1語か分かりにくい言語であるから。よく使われる例を見てみましょう。
これはどういう意味でしょうか?「ナイスな椅子」?「nice nice」?
こんなとき、ひらがな・カタカナ・漢字で「ナイスな椅子」なら椅子のこと、「ナイスナイス」だと何かを褒めている。つまり、1語を分かりやすくするために、漢字を今も使用し、ひらがなカタカナと使い分けているのです。
3種類の文字 どう教える?外国人への教え方
「日本語を学びたい!」
嬉しいことに、コロナ下でも(だからこそ?)新たに日本語を勉強したいという外国人は増えています。けれど、「学びたいから先生1から教えてください!」と言われても、私たち日本語教師は少し困るわけです。
3種類の文字【順番】外国人の教え方
私たち日本人は学校で、ひらがなを学び、次にカタカナ、漢字というように学んでいきました。ひらがなやカタカナが作られた歴史からは逆光した学習法ですが、これが今日の学校の順番として一般的です。
では、外国人の日本語学習ではどうでしょうか。どの順番がいいのか。
これには、絶対的な答えがありません。ここでは、それぞれの特徴とメリットデメリットを見ていきましょう。
小学校と同じく、ひらがなから入る場合。
多くの外国人向けの学校で、この方法が取られています。
【メリット】スムーズに教科書を進められる(ほとんどの教科書はひらがな+漢字ふりがなを使用)
【デメリット】漢字を覚えにくい
まれにカタカナから教える日本語学校も存在します。
【メリット】漢字の書き順を教えやすい(カタカナと形が似ており、書き順も基本が同じ)
【デメリット】教科書に進みにくい
国内ではほぼありませんが、中国語圏で中国語を使って日本語を教える場合、漢字からひらがな・カタカナを教えることがあります。
【メリット】ひらがな・カタカナの成り立ちが分かりやすい
【デメリット】日本語の本を読み進めることができない
それぞれ、メリットデメリットが存在します。
ひらがなカタカナ漢字3種類の使い分ける外国人はすごい
私たち日本人は、幼い頃からひらがな・カタカナ・漢字を見て、使い分けてきました。日本語を学びたい外国人にとってはここが第一の関門。
ともすれば、外国人に対して「漢字はまだしも、ひらがなやカタカナが分からないのは幼稚じゃない?」と思ってしまうことがあるかもしれません。しかし、彼らは母語ではない3種類の文字を覚えんとする人であることをお忘れなく。
私たちも簡単な外国語すら出てこないときもありますし、お互い温かい目で言語習得できればいいですよね。
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日本語が書くと読むがちがうくにがむずかしです、これがぜんぼよみましたいぱいことがわかりました。ありがとうございました。☺️さよなら☺️