外国人が間違えやすい日本語の表現・混乱する日本語は
母語話者からすると気付きにくいですが、日本語は他の言語と異なる点が多々あり、難しい言語です。
参考:外国人にとって日本語は世界一難しい言語?海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ
外国人が混乱する日本語や間違えやすい日本語の表現、発音はたくさんあります。
中でも、外国人に多い誤用は、母語に引っ張られることによる間違い。
例えば、「薬を飲む」という文は、母語に引っ張られてこんな風に言われることがあります。
中国人「薬を食べる。」
アメリカ人「薬を摂る。」
スペイン人「薬を摂る。」
ドイツ人「薬を摂る。」
今回は中国語話者、韓国語話者、英語圏の話者それぞれに多い誤用をご紹介していきます。
外国人が間違えやすい日本語の表現【中国人】
中国語は、SVOの語順、発音の多さなど、近しい言語のようでかなり遠い言語です。
さらに、大陸で使われる簡体字は、日本に伝わった漢字と全く異なるものがほとんど。
中国人が間違えやすい日本語は、文法の間違いや表記の間違いです。
中国人が間違えやすい日本語①時制
中国語話者が間違えやすい、混乱する日本語文法は、時制。
中国語は動詞を活用して過去形を作ることがないため、難しいようです。
×「2年前結婚する時から、名前を変えました。」
○「2年前結婚した時から、名前を変えました。」
上の「結婚する時」という文も違和感は少ないですが、明らかな間違いも起こるので、毎回訂正が必要です。
×「雨が降る時に、傘をさしました。」
○「雨が降った時に、傘をさしました。」
また、現在進行形や完了形の「~ている」などもかなり難しいようです。
中国人が間違えやすい日本語②助詞(自動詞・他動詞)
どの言語にも言えますが、外国語の助詞の使い分けは非常に難しいものです。
外国人が混乱する日本語、外国人が間違えやすい日本語文法も、助詞の使い分けです。
特に、中国語話者に多いのは、自動詞他動詞の区別ができていないことによる助詞の間違い。
(自)「アサガオが育つ。」(他)「アサガオを育てる。」
(自)「ドアが開く。」(他)「ドアを開ける。」
中国語には自動詞と他動詞の使い分けがないため、非常に多い間違いです。
中国人が間違えやすい日本語③形容詞
中国人が間違えやすい日本語のひとつは、形容詞(イ形容詞)に「の」を入れるというもの。
このような誤用は、「可爱的狗=可愛い犬」のように、中国語では「的(ダ)」=「〜の」を使って表すためです。
ほぼ全員1度はする非常に多い間違いなので、形容詞が初めて出てきたら要注意。
中国人が間違えやすい日本語④漢字表記
ご存知の通り、中国語も日本語も漢字を使う言語です。
漢字は中国から渡ってきたため、意味や形が似ています。
そんな中国語話者にとって「似ているからこそ間違える」のが、漢字表記です。
例えば、「愛」を「爱」で表すなど。
中国本土では、1951年から誰もが読みやすく書きやすい文字を使うため、漢字を崩した簡体字が使われています。
台湾では日本の漢字に似た繁体字が使われていますが、こちらも要注意。
「愛」の字が一見同じに見えても、日本では重ならないところが重なっていたりします。
余談ですが、「働」という漢字は、日本から中国に逆輸入された漢字です。
中国人が間違いやすい日本語⑤中国語名詞
×「あなたの生日はいつですか?」
○「あなたの誕生日はいつですか?」
×「どんな顔色が好きですか?」
○「どんな色が好きですか?」
×「あなたは美国出身ですか?」
○「あなたは米国出身ですか?」
中国語と日本語に共通点があるが故に、中国人が間違えやすい日本語というものもあります。
中国語と全く同じ単語を使う日本語は多いもの。
その分、「これも同じじゃないの?」と中国語の単語を使う間違いはよく見られます。
参考:中国語でも使われる日本語由来の漢字とは?日本語と中国語はやっぱり似てる!中国語との語順・発音・面白い意味の違い
参考:厚切りジェイソンのWHYネタに日本語教師が答えてみた|厚切りジェイソンの人気動画・日本語勉強法とは
外国人が間違えやすい日本語の表現【韓国人】
韓国語は、SOVの語順、意味を持つ言葉+接頭語・接尾語という文法規則があり、日本語と似ている言語です。
そのため、韓国語話者の日本語で文法上の間違いは他言語話者より少なめです。
が、やはり違いはありますので、間違えやすい例を見ていきましょう。
韓国人が間違えやすい日本語①生物・無生物主語
いる(生物)ある(無生物)の区分は韓国語にありません。
そのため、韓国語話者が間違えやすいのは「あります/います」の言い間違いです。
韓国人が間違えやすい日本語②助詞
韓国語では、「~が好きだ」「~と会う」が、「を」に相当する言葉と接続するため、間違いがたびたびおこります。
これらの助詞は、韓国語話者が間違えやすい日本語の表現です。
韓国人が間違えやすい日本語③絶対敬語
日本語のように、「父が頂く。」「佐藤(←上司)は席を外しております。」とウチとソトを区別した敬語を相対敬語といいます。
一方、韓国語は、年長者や上司に対してウチソト関わらず敬語を使う絶対敬語。
韓国語話者が混乱する日本語は、このウチソトの関係を交えた敬語表現です。
韓国人が間違えやすい日本語④あげもらい
あげもらい(授受表現)は、外国人にとって難しいものです。
英語圏には視点の違うあげもらい表現がありますが、韓国語にはないようです。
その分、韓国語話者が間違えやすい表現でしょう。
さらに、この表現は自分の子どもなど、近しい人も「自分」の視点として使い分けます。
○「息子がもらう。」
○「父が山田さんにあげる。」
韓国人が間違えやすい日本語⑤完了形「~ている」
英語でいう「have done」の形は、全て過去形で表す韓国語には存在しません。
英語を勉強している人なら完了形の考え方は知っているはずですが、それでも韓国語話者が間違えやすいのは、日本語の「~ている」という表現です。
「私は結婚しています。」
「〇〇大学を卒業しています。」
「レポートは書いています。」
「彼が家に来ています。」
現在進行形「ている」と形が同じであるため、混乱する日本語文形です。
外国人が間違えやすい日本語の表現【英語圏】
英語圏の人々にとって、日本語は最も難しい言語のひとつです。
言語体系も使用する文字も、発音も違う、非常に難しい言葉。
逆にいえば、私たちにとって英語はかなり難しい言葉ですね。
参考:日本人は外国語・英語が苦手?話せない?その理由は?比較言語学・発音から徹底検証
外国人にとって日本語は世界一難しい言語?海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ
全く異なる言語であるため、さまざまな間違いが見られますが、特に間違えやすい日本語の例を見ていきましょう。
英語圏の人が間違えやすい日本語①敬語・待遇表現
外国人が混乱する日本語の代表といえば、敬語表現です。
英語にも丁寧な言葉や待遇表現は存在しますが、日本語ほどややこしいことはないでしょう。
丁寧語・尊敬語・謙譲語など、敬語を使いこなすことは、非常に難しいことです。
上の例「おしりですか?」は、「ご存知ですか?」と言いたかったところ、「お決まりですか」と同じように「知る」の丁寧語を作ったことによる間違いです。
「おちちはいますか。」は、家に訪問または電話し、「御父上(お父さま)はご在宅ですか。」ということを言いたかったのでしょう。
その他、尊敬語・謙譲語を使う場面でうまく使えず、相手をムッとさせてしまったという話をよく聞きます。
英語圏の人が間違えやすい日本語②音が結び付く
英語圏の人が間違えやすい日本語の発音です。
上記の「ほの」とは何でしょうか。これはアルファベット表記にするとわかります。
「hon (w)o」の「n」と「o」が結び付いた間違いです。
つまり、「本を読みます」が「ほの読みます」のように繋がってしまったんですね。
英語では、「It’s a ~」を「イッツ・ア」ではなく「イッツァ」のように前の音と次の音が結びつけて発音することが多いです。
しかし、その要領で日本語の音を発音すると、意味が通らなくなってしまいます。
カナ1文字で1つの拍というのは、日本語特有のものです。
これが身につくまで、意外と時間がかかります。
英語圏の人が間違えやすい日本語③形容詞
母語に引っ張られて形容詞や動詞を間違えるのは、日本人でも英語を話すときに多いことでしょう。
特に、英語の形容詞はこの表現の違いが多いためか、混乱するようです。
英語圏の人が間違えやすい日本語④重文の作り方
これは英語圏の人だけでなく、全ての外国人が間違えやすい日本語表現。
正しくは、「それは高いので、買えません。」ですね。
「それは高いです。」と「買えません。」を重文にする場合、「です」を取る必要があります。
「それは高かったです。」と「買えませんでした。」のように過去の場合も、同様です。
×「それは高かったですので、買えませんでした。」
○「それは高かったので、買えませんでした。」
英語圏の人が間違えやすい日本語⑤オノマトペ
ドロドロのオムライス…美味しくなさそうですね。
「トロトロのオムライス」なら、美味しそうな印象を受けます。
「ふわふわ」「キラキラ」など、オノマトペは外国人学習者にとって本当に難しいものです。
覚えようと思っても、ニュアンスを理解しにくいのが難しさの理由でしょう。
漫画でニュアンスパターンを掴むというのもおすすめですね。
【2021年】日本語を勉強している外国人におすすめの漫画15選|人気マンガから無料教科書サイトまでご紹介
外国人が混乱する日本語の表現
外国人が混乱する日本語の表現、紛らわしい日本語はたくさんあります。
なんの気なしに使ってしまうと、質問攻めにされます(笑)
すみませんには、謝罪以外にも呼びかけ・感謝・許可などの意味がありますね。
これらは外国人には理解されにくく、全て謝罪のように聞こえる場合があります。
「大丈夫」「結構」も、全く異なる意味があります。
結局良いのか悪いのか?外国人には分からない場合があります。
あげもらいの表現は元々難しいものです。
さらに、この言い方は、もらうの?あげるの?くれるの?と混乱します。
「行ってあげる」「してやる」「見ておく」「来てみる」などは、一見動詞が2つあるような形ですね。
どちらの意味が強いのか、なぜ「あげる」「やる」が付くのか外国人にとっては混乱する言い方です。
いわゆるうなぎ言葉ですね。
そのまま英語にすれば「I`m a eel.」となり、かなり不思議な言い回しに感じるようです。
なんだか可愛い?外国人の日本語の表現・言い間違い
もしかすると人の間違いを笑うな!と怒られてしまうかもしれませんが…
私は外国人の日本語の間違いが好きです!
一生懸命話す姿に嬉しくなるし、外国人の誤用から日本語について新たな発見をすることも多いからです。
ここでは、私が実際体験したり、ネットで見つけた外国人たちの面白い日本語間違いをまとめました。
「気持ち良くないので今日は休む」
※気持ち悪い=気持ち良いの否定形という認識から生まれた日本語。
「すみませーん!おカンチョウお願いしまーす!」
※母語に「ジャジュジョ」の音がない学習者は「ジョ」が「チョ」になることがある。
「ハピバスデ!加齢を楽しんで」
※母語にこんな言い方がある可能性?
「東京で死んでるんですね!」
※「住んでる」と言いたかった。母音(舌の位置)の間違い?
「君、コワイね!」
※「かわいい」と言いたかった。初級では音が似てることから間違うことがたまにある。
「あなたはとてもかわいそうな人ですね!!」
※「可愛らしい人」と言いたかったが、「らしい」と「そうだ」が同じ役割(伝聞形)だということを思い出し付けてしまった。
「(居酒屋で)『とりあえずビール』はありますか?」
※「とりあえずビール!」を銘柄だと思ったのでしょう。
「頼んでもないチャンス、嬉しいです」
※「願ってもない」と言いたかった。「頼む」は相手がいて成り立つ動詞のため、「頼んでもない」とすると相手をカチンとさせる言葉になります。
「とてもじゃないが楽しい」
※「とても楽しい」が「とてもじゃないが~」の構文に引っ張られた。
「私、夏のアレが好きです。アレ、ふりん!私は不倫が好きです!」
※「ふうりん」のように、伸ばす音を聞き取れない外国人は多いです。
「分かった途端に教えて」
※「as soon as」を「=途端に、するやいなや」と訳したことで起こる間違い。
「とても適当な服ですね!」
※適当は適切という意味だが、口語では「何も考えていない」という意味で使われることの方が多い。褒めるときは「素敵な」「かわいい」などの形容詞が良い。
「(ココイチで)じゅうからください」
※「中辛」と言ったつもりが、1番辛い10辛が来た。悲劇。
「君は昨日何したん?」
※突然の関西弁。友達と話すとき「何したんですか。」から「ですか」を取ると思ったらしい。
「(水を頼もうとして)お味噌ください!」
※単なるいい間違い?ザ行の発音が出来ずサ行で代用する外国人も多い。
外国人が間違えやすい日本語の表現は多種多様
外国語を話そうとするとき、出身国や母語に引っ張られる場合が多いもの。
母語にはないけれど日本語にはある特徴や、母語とは違う日本語の特徴というものが、日本語習得の邪魔をしてしまうことが多いのです。
誤用というものは、歓迎されるものではありませんが、母語の特徴を改めて教えてくれるものだと思います。
外国人が混乱する日本語は、その学習者の言語との違いが分かってとても興味深いですよ!
目の前の外国人が日本語を間違えても、そんな視点から訂正してあげるとよいかもしれません。
前回記事:日本語は世界で最も難しい?外国人による海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ|難易度の高い言葉ランキング1位は?
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「それは高いですので、買えません」<-その文章は文法的には間違いないと思います。
電車内や駅内などそういう文章「危ないですから、黄色い点字ブロックのうちにお下がりください」、「この先、電車が揺りますので、ご注意ください」よく聞きます。その他に、工事用看板や(日本の政府が出した)管用看板では表示されているのを見ることがあります。
以前、これに関して私の先生に聞いてみまして、非常に硬い表現なので、あまり使わないほうがいいと教えて頂きましたが、ということで文法は問題ないと伝えました。
私は外国人として日本の会社で努めておりますので、お客様と会話中でどのように話せばいいかと考えており、その場合でしたら一番安全なのは「~ますので」や「~ですから」と結論しました。