これまで、日本語化した意外な外来語をご紹介してきました。
英語から日本語になった言葉や英語由来の日本語は多いものの、「意外!」と思うことは存外少ないですね。
なぜでしょうか?
「意外!」と思う○○語由来の外来語↓↓
英語由来の日本語は多く「意外な外来語」は少ない
ご存知の通り、私たちの生活の中には、外国由来のもの、外国からきた食べ物、外国語由来のものが数多くあります。
その中でも、英語圏からきたものや英語由来のものは星の数ほど…と言っても良いでしょう。
英語から日本語になった言葉は多い!
「ラストスパート頑張ろう!」
「タイムを計ります。」
「クリニックに通ってるんだ。」
「ちょっとスピード落として。」
挙げ出すとキリがないほど、英語は日本語の中に入ってきています。
今ではビジネス語で「カタカナを言ってなんぼ」という人もいますね。
「担当5人アサインしといて。」
「思い切ってコストリダクションしましょう。」
「コンバージョンしなきゃ意味ないよ。」
このように、英語から日本語になった言葉は日常に浸透したものからそうでないものまで、非常に多くあります。
英語の発音と違うカタカナ語、英語と意味の違う英語由来の日本語も多いですね。
「カタカナ苦手」という英語圏の日本語学習者が多いのは、このためです。
参考:外国人にとって日本語は世界一難しい言語?海外の反応・文法や発音からくる理由まとめ
「意外な外来語」は意外と少ない英語由来の日本語
「ストレスって英語なんだぜ。」
「リサイクルって英語なんだぜ。」
こう言われて「意外!」と感じる人は少ないでしょう。
「煙草ってポルトガル語なんだぜ。」
「お転婆ってオランダ語なんだぜ。」
これならどうでしょう。意外でしょう?
漢字で書かれたものが、実は外来語だと言われると、誰しも意外だと感じます。
なぜ英語由来の日本語に「意外な外来語」が少ないのか。
それは、英語から日本語になった言葉は漢字ではなくカタカナ表記のものがほとんどだからです。
西洋からの外来語をカタカナ表記し出すのは、明治時代頃から。
じわじわ広がりを見せていたカタカナ表記は、大正時代・昭和には外国からの一般的となり、外国からの新たな言葉に漢字を当てることはほぼなくなりました。
ただし、西欧の人名や地名などは、漢字表記のまま使われることもありました。
さらに、戦後「カタカナ表記のルール」が体系化して作られました。
以下は、「意外な外来語」ではありませんが、英語由来の日本語の翻訳語です。
明治時代に欧米から輸入された考え方や制度は、明治政府や学者によって、日本人に分かりやすいように日本語訳されました。
参考:明治時代にできた英語・ドイツ語由来の翻訳語31選!明治期以前はなかった日本語の熟語
これにより、当時輸入された外来語は日本語に形を変えて、現代に残っています。
英語由来の日本語は、音をそのままに漢字の当て字を使うというよりはカタカナ表記や日本語翻訳されたものが多いため、「意外」な外来語が少ないのでしょう。
英語から日本語になった言葉とは?英語由来の「意外な外来語」
「意外な外来語」は少ない英語ですが、いくつかの言葉は、「実は英語の言葉だよ」というと驚かれるものもあります。
諸説あるものも含めて見ていきましょう。
gallery→画廊
絵を展示したり購入したりする施設を指す画廊。
英語の「gallery」またはフランス語の 「galerie」の当て字であるという説があります。
book keeping→簿記
簿記といえば、会計や経理に必要な知識・手法・資格ですね。
家計簿のような単式のものも指しますが、ビジネスではほぼ複式簿記をいいます。
これは、英語由来の日本語であり、英語の「book keeping」に音を合わせたものとされています。(諸説あり)
それまで単式簿記だった日本に西洋式複式簿記をもたらしたのは、福沢諭吉。
アメリカのテキストを翻訳したことで、複式簿記が全国に広がりました。
Savile row/civil coat→背広
今でいうスーツを指す背広。
英語由来の日本語説は、以下の通り。
ロンドンの紳士服店街「Savile row(サヴィ・ロウ」が訛った説。
市民服 civil coat(シヴィル・コート)が訛った説。
スコットランドの「Cheviot hill(チェビオット・ヒル)」が訛った説などなど。
その他、背面に縫い目がなく、背幅がゆったりとした仕上げのためという説、中国語語源説などもあります。
hearts→ハツ
ハツといえば、牛・豚・鶏の心臓でやきとりメニュー。
英語でいう「heart」。
この複数形「hearts」がなまって、ハツと呼ぶようになったそうです。
肉食を忌避していた日本らしく、肉の部位は外国語由来が多め。
しかし、鶏肉は食べられていた日本でハツに相応する部位の名前があったのではないか?という疑問もありますね。
ちなみに、焼き鳥が生まれたのは平安時代とされています。
平安時代、豊作を祈願する京都・伏見稲荷の参道で、スズメを捕まえ、串に刺して食べたのが起源だそう。
tongue→タン
焼肉で人気の牛タン。
これも、舌を意味する「tongue」からきている英語由来の日本語であるという説があります。
実は、牛タン焼きとは洋食をアレンジして作られたもの。
戦後仙台にも駐留していた米軍が食べ残した牛のタンとテールを、有効活用したことによります。
仙台の焼き鳥店「太助」の初代店主が、洋食のタンシチューから着想を得て、薄切りのタンを塩焼きにする調理法を考案。
高度経済成長期になって、東京からのサラリーマンが増えたことで東京でも話題に。
hormone→ホルモン
焼肉の内臓系全般を表すホルモンの起源については2つの説があります。
1つは、体内ホルモン系の英語「hormone」が語源であるという説。
もう1つは、大阪で「捨てるもの=放(ほ)るもん」が語源であるという説。
ちなみに、ホルモンを食べるようになったのは、戦後。
食糧難の時代で牛肉や豚肉は禁制品となる中、ヤミ市で牛豚の内臓を焼いて食べさせる店が登場。
次第に人気を集めるようになりました。
これが元祖焼肉の「ホルモン焼き」です。
okra/オクラ
和食に使用されることもあり、和のイメージを持つ人もいるでしょうが、オクラは外来語。
英語の「okra」の音からきた英語由来の日本語です。
エジプトでは紀元前から栽培されており、アメリカ経由で江戸時代末期に日本に入ってきました。
当初オクラは食用というよりは花の観賞用で、一般家庭の食卓に上がるようになったのは1970年代になってから。
食べるようになったのは比較的最近のことなんですね。
ちなみに英語の「okra」の語源はエジプト言語起源説、ガーナのトゥイ語起源説などがあります。
読める?英語由来の漢字になったカタカナ語
前述した通り、意外な英語由来の日本語というのは、「意外と」少ないものです。
理由は、英語が本格的に入ってきたのが、明治時代になってからでしたね。
「外来語はカタカナにしよう」と変わっていったのは明治期からで、大正時代になると外来語はカタカナ表記されることの方が多くなりました。
さらに、戦後定められた常用漢字とカタカナ表記のルールにより、外来語=カタカナ表記になったのです。
現在海外から入ってくる外来語は全てカタカナ…というわけです。
さて、近代に大量に入ってきた英語由来の言葉のうち、地名や人名などの固有名詞は依然として漢字で表記されることも多々ありました。
以下の当て字、どれくらい読めますか?
漢字で当てられた英語の言葉【地名】
国名、都市名などは、南蛮貿易時代から少しずつ入ってきていました。
上に挙げたのは、全て英語圏を含む国名や地域の当て字。
いくつ分かったでしょうか?
答えは…
①ヨーロッパ ②イギリス ③ロンドン ④アメリカ ⑤ニューヨーク ⑥ハリウッド
漢字で当てられた英語の言葉【人名】
ヒント:英語圏出身の人名。
人名も、古いものは既に南蛮貿易時代に(またはそれ以前に中国経由で)伝わり、漢字が当てられていました。
上に挙げたのは、英語圏の人名の当て字。
いくつ分かったでしょうか?
④はヒトラーと誕生日の近い近現代の人物ですが、漢字が当てられています。
答えは…
①シェイクスピア ②エジソン ③リンカーン④チャップリン
英語から日本語になった言葉が増加したのは近代~現代
「今から英語・外来語を使わずに会話しましょう」
そう言われて完璧に話せる自信はありますか?
簡単そうに思えますが、15分話せたらすごい方。
それくらい、英語由来の言葉は日本語になって、私たちの生活に入ってきています。
今、さまざまな言葉が英語のまま使われたり、意味が変わって普及されたり、形を変えて日本語になっていたりしますね。
今起こっていることと同じことが、(主に)明治時代から続いてきたわけです。
今後どんどん英語が入ってきたら、数十世紀先には英語が尽きるかもしれませんね(笑)
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